(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】重合性化合物、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、硬化物、レジスト用組成物、及びレジスト膜
(51)【国際特許分類】
C08G 59/14 20060101AFI20230531BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20230531BHJP
G03F 7/025 20060101ALI20230531BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
C08G59/14
C08F299/02
G03F7/025
G03F7/027
(21)【出願番号】P 2022569817
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2021043093
(87)【国際公開番号】W WO2022130921
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020207389
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】今田 知之
(72)【発明者】
【氏名】長江 教夫
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-007758(JP,A)
【文献】特開2020-117612(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017013(WO,A1)
【文献】特開2007-162027(JP,A)
【文献】特開2021-008410(JP,A)
【文献】国際公開第2021/181958(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103694430(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08F 299/02
G03F 7/025、7/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される重合性化合物。
【化1】
[上記一般式(1)中、Xは芳香環構造及び重合性不飽和基を有する構造部位を示す。また、上記一般式(1)中の3つのXはそれぞれ同一構造であってもよいし、異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(1)中のXが下記一般式(2-1)、(2-2)、(2-3)、又は(2-4)で表される構造部位である請求項1に記載の重合性化合物。
【化2】
[上記一般式(2-1)~(2-4)中、Yは直接結合、エーテル結合、又はアミド結合であり、Zは重合性不飽和基を有する構造部位であり、R
1は脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である。
前記
一般式(2-1)~(2-4)中、mは1~5の整数、nは0~4の整数であり、m+nは5以下である。pは1~7の整数であり、qは0~6の整数であり、p+qは7以下である。
上記一般式(2-1)~(2-4)中に複数存在するR
1及び(Y-Z)基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記一般式(2-2)及び(2-4)において、R
1及び(Y-Z)基はナフタレン環のいずれの炭素原子に結合していてもよい。]
【請求項3】
トリヒドロキシベンゼンとエピハロヒドリンとの反応生成物(A)と、重合性不飽和基含有芳香族化合物(B)とを反応原料とする請求項1又は2に記載の重合性化合物。
【請求項4】
前記重合性不飽和基含有芳香族化合物(B)が、重合性不飽和基含有フェノール性化合物(B1)又は重合性不飽和基含有芳香族カルボン酸化合物(B2)である請求項3に記載の重合性化合物。
【請求項5】
トリヒドロキシベンゼンとエピハロヒドリンとの反応生成物(A)、重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)、及び、前記反応生成物(A)と前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)を結節する芳香族化合物(D)を反応原料とする請求項1又は2に記載の重合性化合物。
【請求項6】
前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)が、重合性不飽和基含有脂肪族ハロゲン化物(C1)であり、前記芳香族化合物(D)がカルボキシ基を有するフェノール性化合物(D1)である請求項5に記載の重合性化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の重合性化合物、
光重合開始剤、及び
有機溶剤を含有する、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の重合性化合物を含有するレジスト用組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のレジスト用組成物を硬化したレジスト膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性化合物、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、硬化物、レジスト用組成物、及びレジスト膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、そのパターン加工は益々の微細化が求められ、ArFエキシマレーザー光(193nm)を用いたフォトリソグラフィーにおいては、プロセス材料の光学的特性の利用やプロセス機器の改良によって、光源の波長に由来する本質的な解像限界を凌駕するものとなっている。
【0003】
フォトレジストの分野ではより微細な配線パターンを形成するための方法が種々開発されており、そのうちの一つに多層レジスト法がある。多層レジスト法では、基板上にレジスト下層膜や反射防止膜などと呼ばれる層を1層乃至複数層形成した後、その上に通常のフォトリソグラフィーによるレジストパターンを形成し、次いで、ドライエッチングにより基板へ配線パターンを加工転写する。多層レジスト法の技術において重要な部材の一つが前記レジスト下層膜であり、該下層膜にはドライエッチング耐性が高いことや、光反射性が低いことなどが要求される。また、レジスト下層膜は溶媒希釈の状態で製膜されることから、レジスト下層膜用の樹脂材料は汎用有機溶剤に可溶である必要がある。
【0004】
また、近年の超微細化された配線パターン形成はダブルパターニングやマルチパターニングとよばれる複数回の露光とエッチングを繰り返す工程が多用されており、該下層膜には前プロセスで作製した微細なパターンを穴埋めしたうえで平滑な次工程作製面を形成する重要な役割も担っている。このため、下地材料に使用されるレジスト下層膜材料は微細空間への高い浸潤性も求めれている。
【0005】
また、旧来のレジスト下層膜用のフェノール水酸基含有化合物としてアントラセン骨格含有化合物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載されているアントラセン骨格含有化合物は硬化塗膜における光反射率が低く反射防止膜としての特性は優れるが、分子サイズと広い芳香族電子雲によるπ-π相互作用により微細空間への浸潤性が低い。
【0008】
本発明は、微細空間への浸潤性に優れると共に、光学特性や耐エッチング性、硬化性、溶剤溶解性等にも優れることにより、超微細化された配線パターン形成に用いることができる重合性化合物を提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、超微細化された配線パターン形成に用いることができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0010】
また、本発明は、超微細化された配線パターンを形成することができるレジスト用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記一般式(1)で表される重合性化合物である。
【化1】
[上記一般式(1)中、Xは芳香環構造及び重合性不飽和基を有する構造部位を示す。また、上記一般式(1)中の3つのXはそれぞれ同一構造であってもよいし、異なっていてもよい。]
【0012】
また、本発明は、トリヒドロキシベンゼンとエピハロヒドリンとの反応生成物(A)と、重合性不飽和基含有芳香族化合物(B)とを反応原料とする重合性化合物である。
【0013】
また、本発明は、トリヒドロキシベンゼンとエピハロヒドリンとの反応生成物(A)、重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)、及び、前記反応生成物(A)と前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)を結節する芳香族化合物(D)を反応原料とする重合性化合物である。
【0014】
また、本発明は、前記重合性化合物、光重合開始剤、及び有機溶剤を含有する、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。
【0015】
また、本発明は、前記重合性化合物を含有するレジスト用組成物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微細空間への浸潤性に優れると共に、光学特性や耐エッチング性、硬化性、溶剤溶解性等にも優れることにより、超微細化された配線パターン形成に用いることができる重合性化合物を提供することができる。
【0017】
また、本発明によれば、超微細化された配線パターン形成に用いることができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【0018】
また、本発明によれば、超微細化された配線パターンを形成することができるレジスト用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1において得られた重合性化合物(1)のGPCチャート
【
図2】実施例1において得られた重合性化合物(1)の
1H-NMRチャート
【
図3】実施例1において得られた重合性化合物(1)の
13C-NMRチャート
【
図4】実施例1において得られた重合性化合物(1)のFD-MSチャート
【
図5】実施例2において得られた重合性化合物(2)のGPCチャート
【
図6】実施例3において得られた重合性化合物(3)のGPCチャート
【
図7】実施例4において得られた重合性化合物(4)のGPCチャート
【
図8】実施例4において得られた重合性化合物(4)の
1H-NMRチャート
【
図9】実施例4において得られた重合性化合物(4)の
13C-NMRチャート
【
図10】実施例4において得られた重合性化合物(4)のFD-MSチャート
【
図11】実施例5において得られた重合性化合物(5)のGPCチャート
【
図12】実施例6において得られた重合性化合物(6)のGPCチャート
【
図13】実施例7において得られた重合性化合物(7)のGPCチャート
【
図14】実施例7において得られた重合性化合物(7)の
1H-NMRチャート
【
図15】実施例7において得られた重合性化合物(7)の
13C-NMRチャート
【
図16】実施例7において得られた重合性化合物(7)のFD-MSチャート
【
図17】実施例8において得られた重合性化合物(8)のGPCチャート
【
図18】実施例9において得られた重合性化合物(8)のGPCチャート
【
図19】比較例1において得られた重合性化合物(1’)のGPCチャート
【
図20】比較例2において得られた重合性化合物(2’)のGPCチャート
【
図21】比較例3において得られた重合性化合物(3’)のGPCチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態において、重合性化合物は下記一般式(1)で表される。
【化2】
[上記一般式(1)中、Xは芳香環構造及び重合性不飽和基を有する構造部位を示す。また、上記一般式(1)中の3つのXはそれぞれ同一構造であってもよいし、異なっていてもよい。]
【0021】
前記一般式(1)中のXは、芳香環構造及び重合性不飽和基を有する構造部位であれば、その具体構造は特に限定なく、多種多様な構造を取り得る。前記一般式(1)で表される本実施形態の重合性化合物は、トリヒドロキシベンゼン由来構造を有し、かつ、3点の分子末端において芳香環構造及び重合性不飽和基を有することにより、微細空間への浸潤性に優れると共に、光学特性や耐エッチング性、硬化性、溶剤溶解性等にも優れる化合物となる。
【0022】
前記一般式(1)中のXは、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性の観点から、好ましくは下記一般式(2-1)、(2-2)、(2-3)、又は(2-4)で表される構造部位である。
【化3】
[上記一般式(2-1)~(2-4)中、Yは直接結合、エーテル結合、又はアミド結合であり、Zは重合性不飽和基を有する構造部位であり、R
1は脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である。前記構造式中、mは1~5の整数、nは0~4の整数であり、m+nは5以下である。pは1~7の整数であり、qは0~6の整数であり、p+qは7以下である。上記一般式(2-1)~(2-4)中に複数存在するR
1及び(Y-Z)基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記一般式(2-2)及び(2-4)において、R
1及び(Y-Z)基はナフタレン環のいずれの炭素原子に結合していてもよい。]
【0023】
前記一般式(2-1)~(2-4)中、Zは、重合性不飽和基を有する構造部位である。重合性不飽和基としては、例えば、アルケニル基やアルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。中でも、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性の観点から、好ましくは炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数2~6のアルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基であり、より好ましくは炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数2~6のアルキニル基である。
【0024】
前記一般式(2-1)~(2-4)中、mは1~5の整数、pは1~7の整数である。中でも、微細空間への浸潤性や、光学特性、耐エッチング性、硬化性、溶剤溶解性等の諸性能のバランスに優れる化合物となることから、m及びpの値が1~3であることが好ましく、1であることが特に好ましい。前記一般式(2-1)においてmの値が1である場合、(Y-Z)基の結合位置は、前記一般式(1)においてXが結合している酸素原子に対し、パラ位であることが好ましい。前記一般式(2-2)においてmの値が1である場合、(Y-Z)基の結合位置は、カルボニル基に対しパラ位であることが好ましい。前記一般式(2-2)においてpが1である場合、(Y-Z)基の結合位置と、前記一般式(1)においてXが結合している酸素原子の結合位置は、ナフタレン環の1,6-位、2,6-位、2-7位にあることが好ましく、2,6-位にあることがより好ましい。前記一般式(2-4)においてpが1である場合、(Y-Z)基の結合位置と、カルボニル基の結合位置は、ナフタレン環の1,6-位、2,6-位、2-7位にあることが好ましく、2,6-位にあることがより好ましい。
【0025】
前記一般式(2-1)~(2-4)中、R1は、脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である。前記脂肪族炭化水素基は直鎖型でもよいし、分岐構造を有していてもよい。また、シクロ環構造を有していてもよい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基等が挙げられる。前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。中でも、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性の観点から、好ましくは炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、n或いはqの値が0であることがより好ましい。
【0026】
前記重合性化合物は、どのような方法にて製造されたものであってもよく、その製造方法は特に限定されない。前記重合性化合物の製造例として、以下2例を挙げる。
[製法例1]
トリヒドロキシベンゼンとエピハロヒドリンとの反応生成物(A)と、重合性不飽和基含有芳香族化合物(B)とを反応原料とする製造方法。
[製法例2]
トリヒドロキシベンゼンとエピハロヒドリンとの反応生成物(A)、重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)、及び、前記反応生成物(A)と重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)を結節する芳香族化合物(D)を反応原料とする製造方法。
【0027】
前記製法例1について説明する。前記製法例1は、具体的には、トリヒドロキシベンゼンをエピハロヒドリンと反応させて前記反応生成物(A)を得る工程(1-1)、及び前記反応生成物(A)を重合性不飽和基含有芳香族化合物(B)と反応させて前記重合性化合物を得る工程(1-2)、を有する重合性化合物の製造方法である。
【0028】
前記工程(1-1)は、トリヒドロキシベンゼンをエピハロヒドリンと反応させて前記反応生成物(A)を得る工程である。
【0029】
前記工程(1-1)は、目的とする前記反応生成物(A)の収率の観点より、トリヒドロキシベンゼンとエピハロヒドリンを第4級オニウム塩及び/又は塩基性化合物の存在下で反応させる工程(1-1a)と、前記工程(1-1a)で得られる反応物を、塩基性化合物の存在下で閉環させる工程(1-1b)とを有することが好ましい。
【0030】
前記重合性化合物の反応原料に用いられるトリヒドロキシベンゼンは特に限定されないが、原料の入手の容易性の観点から、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、及び1,3,5-トリヒドロキシベンゼンからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0031】
前記エピハロヒドリンとしては、特に制限されないが、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β-メチルエピクロロヒドリン、β-メチルエピブロモヒドリン等が挙げられる。これらのエピハロヒドリンは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記第4級オニウム塩としては、例えば、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩等が挙げられる。これらの第4級オニウム塩は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0033】
前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、メチルトリエチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、トリブチルメチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、フェニルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、フェニルトリエチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリブチルアンモニウムカチオンの塩化物塩、テトラメチルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオンの臭化物塩等が挙げられる。
【0034】
前記第4級ホスホニウム塩としては、例えば、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、メチルトリフェニルホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン、エチルトリフェニルホスホニウムカチオン、ブチルトリフェニルホスホニウムカチオン、ベンジルトリフェニルホスホニウムカチオンの臭素化物塩等が挙げられる。
【0035】
これらの第4級オニウム塩の中でもテトラメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオンの塩化物塩、テトラブチルアンモニウムカチオンの臭化物塩が好ましい。
【0036】
また、前記第4級オニウム塩の使用量としては、反応が良好に進行し、また生成物中への残留を低減できる観点から、前記トリヒドロキシベンゼンとエピハロヒドリンとの合計質量100質量部に対して0.15~5質量部の範囲であることが好ましく、0.18~3質量部の範囲であることがより好ましい。
【0037】
前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらの塩基性化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0038】
また、前記塩基性化合物の添加量としては、反応が良好に進行し、また生成物中への残留を低減できる観点から、前記トリヒドロキシベンゼンが有する水酸基1モルに対して0.01~0.3モルの範囲であることが好ましく、0.02~0.2モルの範囲であることがより好ましい。
【0039】
前記第4級オニウム、前記塩基性化合物は、それぞれ単独で用いることも、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記工程(1-1a)の反応は、主に前記トリヒドロキシベンゼンが有する水酸基にエピハロヒドリンが付加する反応である。前記工程(1-1a)の反応温度としては、20~80℃の範囲であることが好ましく、40~75℃の範囲であることがより好ましい。前記工程(1-1a)の反応時間としては、0.5時間以上であることが好ましく、1~50時間の範囲であることがより好ましい。
【0041】
また、前記工程(1-1a)の反応は、必要に応じて有機溶剤中で行っても良い。前記有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホン;ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、ガンマブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0042】
前記有機溶剤を用いる場合、その使用量は、前記トリヒドロキシベンゼンとエピハロヒドリンとの合計100質量部に対して、5~150質量部の範囲であることが好ましく、7.5~100質量部の範囲であることがより好ましく、10~50質量部の範囲であることがさらに好ましい。
【0043】
前記工程(1-1b)は、前記工程(1-1a)で得られる反応物を、塩基性化合物の存在下で閉環させる工程であり、前記工程(1-1a)で得られる反応物をそのまま、あるいは、系中に存在する未反応のエピハロヒドリンや反応溶媒の一部または全部を除去してから、前記工程(1-1b)を行ってもよい。
【0044】
前記工程(1-1b)で用いる塩基性化合物としては、上述の塩基性化合物と同様のものを用いることができ、前記塩基性化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0045】
前記塩基性化合物の使用量は、特に制限されないが、前記トリヒドロキシベンゼンが有する水酸基1モルに対して、0.8~1.5モルの範囲であることが好ましく、0.9~1.3モルの範囲であることがより好ましい。前記塩基性化合物の添加量が0.8モル以上であると、前記工程(1-1b)の閉環反応が好適に進行しうることから好ましい。一方、前記塩基性化合物の添加量が1.5モル以下であると、副反応を防止または抑制できることから好ましい。なお、工程(1-1a)で塩基性化合物を用いる場合は、前記工程
(1-1a)で用いる量も含めて上述の使用量とすることが好ましい。
【0046】
前記工程(1-1b)の反応温度としては、20~120℃の範囲であることが好ましく、25~80℃の範囲であることがより好ましい。反応時間としては、0.5~8時間の範囲であることが好ましく、1~5時間の範囲であることがより好ましい。
【0047】
前記トリヒドロキシベンゼンとエピハロヒドリンとの反応生成物(A)のエポキシ当量は、微細空間への浸潤性や、硬化性に優れる前記重合性化合物を得る観点から、98~196の範囲であることが好ましく、105~140の範囲であることがより好ましい。なお、本明細書において、エポキシ当量はJIS K 7236に記載の方法によって測定する。
【0048】
前記工程(1-1b)を行った後、必要に応じて得られる反応生成物の精製等を行うことができる。
【0049】
前記工程(1-2)は、前記反応生成物(A)を前記重合性不飽和基含有芳香族化合物
(B)と反応させて前記重合性化合物を得る工程である。
【0050】
前記重合性不飽和基含有芳香族化合物(B)は、重合性不飽和基を有する芳香族化合物であり、前記反応生成物(A)が有するエポキシ基と反応する基を有するものであれば特に限定されない。前記反応生成物(A)が有するエポキシ基と反応する基は、反応性や製造の簡便性等の観点から、好ましくはカルボキシ基又は水酸基である。すなわち、前記重合性不飽和基含有芳香族化合物(B)は、重合性不飽和基含有フェノール性化合物(B1)又は重合性不飽和基含有芳香族カルボン酸化合物(B2)であることが好ましい。
【0051】
前記重合性不飽和基基含有フェノール性化合物(B1)は、例えば、下記一般式(3-1)又は(3-2)で表される化合物等が挙げられる。
【0052】
【化4】
[上記一般式(3-1)、(3-2)中、Yは直接結合、エーテル結合、又はアミド結合であり、Zは重合性不飽和基を有する構造部位であり、R
1は脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である。前記構造式中、mは1~5の整数、nは0~4の整数であり、m+nは5以下である。pは1~7の整数であり、qは0~6の整数であり、p+qは7以下である。上記一般式(3-1)、(3-2)中に複数存在するR
1及び(Y-Z)基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記一般式(3-2)において、R
1及び(Y-Z)基はナフタレン環のいずれの炭素原子に結合していてもよい。]
【0053】
前記一般式(3-1)、(3-2)中の各記号は前記一般式(2-1)、(2-2)中のものと同義であり、R1の具体例や好ましいもの、m、n、p、qの好ましい値等は、前記一般式(2-1)、(2-2)中のものと同様である。
【0054】
前記一般式(3-1)においてmの値が1である場合、(Y-Z)基の結合位置は水酸基に対しパラ位であることが好ましい。前記一般式(3-2)においてpの値が1である場合、(Y-Z)基の結合位置と水酸基の結合位置は、ナフタレン環の1,6-位、2,6-位、2-7位にあることが好ましく、2,6-位にあることがより好ましい。
【0055】
前記重合性不飽和基基含有フェノール性化合物(B1)は、微細空間への浸潤性や、光学特性、耐エッチング性、硬化性、溶剤溶解性等の諸性能のバランスの観点から、好ましくは2-ビニルフェノール、3-ビニルフェノール、4-ビニルフェノール、2-イソプロペニルフェノール、3-イソプロペニルフェノール、4-イソプロペニルフェノール、2-アリルフェノール、3-アリルフェノール、4-アリルフェノール、4-(ヒドロキシ)メタクリルアニリド、N-(3-ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート、4-ビニル-1-ナフトール、6-ビニル-1-ナフトール、6-ビニル-2-ナフトール、7-ビニル-2-ナフトールからなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは4-ビニルフェノール、4-イソプロペニルフェノール、4-アリルフェノール、4-(ヒドロキシ)メタクリルアニリドからなる群より選ばれる1種以上である。
【0056】
前記重合性不飽和基含有芳香族カルボン酸化合物(B2)は、例えば、下記一般式(4-1)又は(4-2)で表される化合物等が挙げられる。
【0057】
【化5】
[上記一般式(4-1)、(4-2)中、Yは直接結合、エーテル結合、又はアミド結合であり、Zは重合性不飽和基を有する構造部位であり、R
1は脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である。前記構造式中、mは1~5の整数、nは0~4の整数であり、m+nは5以下である。pは1~7の整数であり、qは0~6の整数であり、p+qは7以下である。上記一般式(4-1)、(4-2)中に複数存在するR
1及び(Y-Z)基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記一般式(4-2)において、R
1及び(Y-Z)基はナフタレン環のいずれの炭素原子に結合していてもよい。]
【0058】
前記一般式(4-1)、(4-2)中の各記号は前記一般式(2-3)、(2-4)中のものと同義であり、R1の具体例や好ましいもの、m、n、p、qの好ましい値等は、前記一般式(2-3)、(2-4)中のものと同様である。
【0059】
前記一般式(4-1)においてmの値が1である場合、(Y-Z)基の結合位置はカルボキシ基に対しパラ位であることが好ましい。前記一般式(4-2)においてpの値が1である場合、(Y-Z)基の結合位置とカルボキシ基の結合位置は、ナフタレン環の1,6-位、2,6-位、2-7位にあることが好ましく、2,6-位にあることがより好ましい。
【0060】
前記重合性不飽和基含有芳香族カルボン酸化合物(B2)は、微細空間への浸潤性や、光学特性、耐エッチング性、硬化性、溶剤溶解性等の諸性能のバランスの観点から、好ましくは2-ビニル安息香酸、3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸、2-イソプロペニル安息香酸、3-イソプロペニル安息香酸、4-イソプロペニル安息香酸、2-アリル安息香酸、3-アリル安息香酸、4-アリル安息香酸、2-ビニル-6-カルボン酸からなる群より選ばれる1種以上であり、より好ましくは4-ビニル安息香酸、4-イソプロペニル安息香酸、4-アリル安息香酸からなる群より選ばれる1種以上である。
【0061】
前記工程(1-2)において、目的とする前記重合性化合物の収率の観点より、前記反応生成物(A)と前記重合性不飽和基含有芳香族化合物(B)を触媒の存在下で反応させるのが好ましい。前記工程(1-2)において使用できる前記触媒は特に限定されないが、目的とする前記重合性化合物の収率の観点より、第4級ホスホニウム塩が好ましい。前記工程(1-2)において、触媒として使用できる第4級ホスホニウム塩としては、前記工程(1-1a)で使用できる第4級ホスホニウム塩と同様のものが挙げられる。第4級ホスホニウム塩は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。前記第4級ホスホニウム塩の使用量としては、反応が良好に進行し、また生成物中への残留を低減できる観点から、前記反応生成物(A)中のエポキシ基1モルに対し、0.01~0.15モルの範囲であることが好ましく、0.02~0.10モルの範囲であることがより好ましい。
【0062】
また、前記工程(1-2)の反応は、必要に応じて有機溶剤中で行っても良い。前記工程(1-2)で使用可能な有機溶媒としては前記工程(1-1a)で使用可能な有機溶媒と同様のものが挙げられる。前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記有機溶剤の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0063】
前記工程(1-2)の反応温度としては、20~80℃の範囲であることが好ましい。前記工程(1-2)の反応時間としては、0.5時間以上であることが好ましく、1~50時間の範囲であることがより好ましい。
【0064】
前記製法例2について説明する。前記製法例2は、トリヒドロキシベンゼンとエピハロヒドリンとの反応生成物(A)、重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)、及び、前記反応生成物(A)と重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)を結節する芳香族化合物(D)を反応原料とする製造方法である。前記反応生成物(A)、前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)、及び前記芳香族化合物(D)は、3成分を一括で反応させてもよいし、順番に2段階で反応させてもよい。特に、前記重合性化合物を高収率かつ高効率で製造できることから、順番に2段階で反応させる方法が好ましい。具体的には、トリヒドロキシベンゼンをエピハロヒドリンと反応させて前記反応生成物(A)を得る工程(2-1)、前記反応生成物(A)と前記芳香族化合物(D)とを反応させる工程(2-2)、及び前記工程(2-2)で得られる反応物と前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)を反応させて前記重合性化合物を得る工程(2-3)を有する、重合性化合物の製造方法が好ましい。
【0065】
前記工程(2-1)は、前記工程(1-1)と同様である。
【0066】
前記工程(2-2)は、前記反応生成物(A)と前記芳香族化合物(D)とを反応させる工程である。
【0067】
前記芳香族化合物(D)は、前記反応生成物(A)が有するエポキシ基と反応する基、及び前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)と反応する基を有する芳香族化合物であれば特に限定されない。前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)と前記芳香族化合物(D)の組み合わせの一例として、反応性や原料の入手容易性等の観点から、前記芳香族化合物(D)がカルボキシ基を有するフェノール性化合物(D1)であり、かつ、前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)が重合性不飽和基含有脂肪族ハロゲン化物(C1)であることが好ましい。
【0068】
前記芳香族化合物(D)のうち、前記カルボキシ基を有するフェノール性化合物(D1)は、例えば、下記一般式(5-1)又は(5-2)で表される化合物等が挙げられる。
【0069】
【化6】
[上記一般式(5-1)、(5-2)中、R
1は脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である。前記構造式中、mは1~5の整数、nは0~4の整数であり、m+nは5以下である。pは1~7の整数であり、qは0~6の整数であり、p+qは7以下である。上記一般式(4-1)、(4-2)中に複数存在するR
1はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記一般式(5-2)において、R
1はナフタレン環のいずれの炭素原子に結合していてもよい。]
【0070】
前記一般式(5-1)、(5-2)中の各記号は前記一般式(2-3)、(2-4)中のものと同義であり、R1の具体例や好ましいもの、m、n、p、qの好ましい値等は、前記一般式(2-3)、(2-4)中のものと同様である。
【0071】
前記一般式(5-1)においてmの値が1である場合、水酸基の結合位置はカルボキシ基に対しパラ位であることが好ましい。前記一般式(5-2)においてpの値が1である場合、水酸基の結合位置とカルボキシ基の結合位置は、ナフタレン環の1,6-位、2,6-位、2-7位にあることが好ましく、2,6-位にあることがより好ましい。
【0072】
前記カルボキシ基を有するフェノール性化合物(D1)の具体例としては、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4-トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、7-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1,3-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3,5-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3,7-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。中でも、微細空間への浸潤性や、光学特性、耐エッチング性、硬化性、溶剤溶解性等の諸性能のバランスの観点から、より好ましくは4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸からなる群より選ばれる1種以上である。
【0073】
前記工程(2-2)において、目的とする化合物の収率の観点より、前記反応生成物(A)と前記芳香族化合物(D)とを触媒の存在下で反応させるのが好ましい。前記工程(2-2)において使用できる前記触媒は、前記芳香族化合物(D)の種類によっても異なるが、前記カルボキシ基を有するフェノール性化合物(D1)を用いる場合には、目的とする化合物の収率の観点より、第4級アンモニウム塩が好ましい。前記工程(2-2)において、触媒として使用できる第4級アンモニウム塩としては、前記工程(1-1a)で使用できる第4級アンモニウム塩と同様のものが挙げられる。第4級アンモニウム塩は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。前記第4級ホスホニウム塩の使用量としては、反応が良好に進行し、また生成物中への残留を低減できる観点から、前記反応生成物(A)中のエポキシ基1モルに対し、0.01~0.15モルの範囲であることが好ましく、0.02~0.10モルの範囲であることがより好ましい。
【0074】
また、前記工程(2-2)の反応は、必要に応じて有機溶剤中で行っても良い。前記工程(2-2)で使用可能な有機溶媒としては前記工程(1-1a)で使用可能な有機溶媒と同様のものが挙げられる。前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記有機溶剤の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0075】
前記工程(2-2)の反応温度としては、20~120℃の範囲であることが好ましく、80~110℃の範囲であることがより好ましい。前記工程(2-2)の反応時間としては、0.5時間以上であることが好ましく、1~50時間の範囲であることがより好ましい。
【0076】
前記工程(2-3)は、前記工程(2-2)で得られる反応物と前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)を反応させて前記重合性化合物を得る工程である。前記工程(2-3)は、前記工程(2-2)の反応混合物中に前記芳香族化合物(C)を添加して連続的に行ってもよいし、前記工程(2-2)で得られる反応物を一度単離精製してから、別途行ってもよい。
【0077】
前述の通り、前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)は、反応性や原料の入手容易性等の観点から、重合性不飽和基含有脂肪族ハロゲン化物(C1)であることが好ましい。前記重合性不飽和基含有脂肪族ハロゲン化物(C1)が有する重合性不飽和基としては、例えば、アルケニル基やアルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。中でも、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性の観点から、好ましくは炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数2~6のアルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基であり、より好ましくは炭素原子数2~6のアルケニル基、炭素原子数2~6のアルキニル基である。
【0078】
前記重合性不飽和基含有脂肪族ハロゲン化物(C1)の具体例としては、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化アリル、プロパルギルハライド、ハロゲン化アクリロイル、ハロゲン化メタクリロイルからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0079】
前記工程(2-3)において、目的とする重合性化合物の収率の観点より、前記工程(2-2)で得られる反応物と前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)とを触媒の存在下で反応させるのが好ましい。前記工程(2-3)において使用できる前記触媒は前記芳香族化合物(D)や前記重合性不飽和基含有非芳香族化合物(C)の種類によっても異なるが、前記カルボキシ基を有するフェノール性化合物(D1)及び前記重合性不飽和基含有脂肪族ハロゲン化物(C1)を用いる場合には、目的とする重合性化合物の収率の観点より、塩基性化合物が好ましい。前記工程(2-3)において、触媒として使用できる塩基性化合物としては、前記工程(1-1a)で使用できる塩基性化合物と同様のものが挙げられる。塩基性化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0080】
前記工程(2-3)においては、目的とする重合性化合物を高収率かつ高効率で製造できることから、前記塩基性化合物として炭酸カリウムや炭酸ナトリウムを用いることが好ましい。また、前記塩基性化合物の添加量としては、反応が良好に進行し、また生成物中への残留を低減できる観点から、重合性不飽和基含有脂肪族ハロゲン化物(C1)に対して0.5~2.0モルの範囲であることが好ましく、0.8~1.5モルの範囲であることがより好ましい。
【0081】
また、前記工程(2-3)の反応は、必要に応じて有機溶剤中で行っても良い。前記工程(2-3)で使用可能な有機溶媒としては前記工程(1-1a)で使用可能な有機溶媒と同様のものが挙げられる。前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記工程(2-2)と工程(2-3)とを連続的に行う場合には、前記工程(2-2)で用いた有機溶媒をそのまま用いてもよい。前記有機溶剤の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0082】
前記工程(2-3)の反応温度としては、20~80℃の範囲であることが好ましく、40~75℃の範囲であることがより好ましい。前記工程(2-3)の反応時間としては、0.5時間以上であることが好ましく、1~50時間の範囲であることがより好ましい。
【0083】
前記重合性化合物の数平均分子量(Mn)は、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性、耐エッチング耐性、硬化性の観点から、660~2,500の範囲が好ましく、800~1,500の範囲がより好ましい。なお、本明細書において、重合性化合物の数平均分子量は実施例に記載の方法で測定する。
【0084】
前記重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性、耐エッチング耐性、硬化性の観点から、660~3,000の範囲が好ましく、800~2,000の範囲がより好ましい。なお、本明細書において、重合性化合物の重量平均分子量は実施例に記載の方法で測定する。
【0085】
前記重合性化合物の多分散度(Mw/Mn)は、有機溶剤への溶解性や、微細空間への浸潤性、耐エッチング耐性、硬化性の観点から、1.00~2.00の範囲が好ましく、1.00~1.50の範囲がより好ましい。なお、本明細書において、重合性化合物の多分散度(Mw/Mn)は実施例に記載の方法で測定した数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)から算出する。
【0086】
前記重合性化合物は、分子構造中に重合性不飽和基を有することから、例えば、光重合開始剤を添加することにより活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として用いることができる。
【0087】
本実施形態の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記重合性化合物、光重合開始剤、及び有機溶剤を含有する。
【0088】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における前記重合性化合物の添加量は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の有機溶剤以外の成分の合計に対し1~99質量%の範囲であることが好ましく、5~95質量%の範囲であることがより好ましい。
【0089】
前記光重合開始剤は、照射する活性エネルギー線の種類等により適切なものを選択して用いればよい。また、アミン化合物、尿素化合物、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物、ニトリル化合物等の光増感剤と併用してもよい。光重合開始剤の具体例としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のアルキルフェノン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;チオキサントン及びチオキサントン誘導体;ベンゾフェノン化合物等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0090】
前記光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」
(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」(Runtec社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0091】
前記光重合開始剤の添加量は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の有機溶剤以外の成分の合計に対し0.05~15質量%の範囲であることが好ましく、0.1~10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0092】
前記有機溶剤は、特に限定なく多種多様なものを用いることができる。具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルキルモノアルコール溶剤;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等のアルキルポリオール溶剤;2-エトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル溶剤;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジアルキレングリコールジアルキルエーテル溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート溶剤;1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等の環状エーテル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン溶剤;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル溶剤:ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤等が挙げられる。
【0093】
前記有機溶剤の添加量は、組成物の流動性をスピンコート法等の塗布法により均一な塗膜を得る観点から、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の固形分濃度が好ましくは5質量%以上から、好ましくは95質量%以下までの範囲となる量とすることが好ましい。
【0094】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で前記重合性化合物以外の樹脂成分、レベリング剤等の界面活性剤、充填材、顔料、密着性向上剤、溶解促進剤等を含有していてもよい。前記重合性化合物以外の樹脂成分としては、各種の
(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
【0095】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、膜厚の平坦化や、微細空間への浸潤性の観点から、界面活性剤を含有してもよい。当該界面活性剤は、半導体レジスト用に使用される公知公用のシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等はすべて使用できる。当該界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル化合物、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル化合物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル化合物等のノニオン系界面活性剤;フルオロ脂肪族基を有する重合性単量体と[ポリ(オキシアルキレン)](メタ)アクリレートとの共重合体など分子構造中にフッ素原子を有するフッ素系界面活性剤;分子構造中にシリコーン構造部位を有するシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0096】
前記界面活性剤の添加量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し0.001~2質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0097】
前記各種の(メタ)アクリレートモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有するものであれば特に制限されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート等の脂環型モノ(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の複素環型モノ(メタ)アクリレート化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物等のモノ(メタ)アクリレート化合物:前記各種のモノ(メタ)アクリレートモノマーの分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジ(メタ)アクリレート化合物;1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環型ジ(メタ)アクリレート化合物;ビフェノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート等の芳香族ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した4官能以上の(ポリ)オキシアルキレン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入した4官能以上のラクトン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ
(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物;前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体;2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基含有(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーや、ドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテルのジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。前記各種の(メタ)アクリレートモノマーは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0098】
前記各種の(メタ)アクリレートモノマーを用いる場合には、本発明が奏する効果を阻害しない量で用いることが好ましい。具体的には、本発明の重合性化合物100質量部に対する前記各種の(メタ)アクリレートモノマーの使用量が100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
【0099】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記重合性化合物、前記光重合開始剤、及び前記有機溶剤、さらに必要に応じて加えた各種添加剤を通常の方法で、撹拌混合して均一な液とすることで調製できる。
【0100】
本実施形態の硬化物は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる。当該硬化物は、例えば、レジスト下層膜として用いることができる。レジスト下層膜を形成する基板(被加工基板)としては、例えば、シリコンウェハ、アルミニウムで被覆したウェハー等が挙げられる。前記レジスト下層膜は、例えば、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を前記被加工基板や後述する他の下層膜等の表面に塗布した後、有機溶剤を除去して塗膜を形成し、当該塗膜に活性エネルギー線の照射及び加熱処理を行うことによって硬化させることにより形成できる。前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、ディップ法等が挙げられる。また、加熱温度としては、通常50~450℃の範囲であり、150~300℃の範囲が好ましい。加熱時間としては、通常5~600秒間の範囲である。
【0101】
前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0102】
紫外線としては高圧水銀灯のg線(波長436nm)、h線(波長405nm)i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)、EUVレーザー(波長13.5nm)等が挙げられる。
【0103】
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、10~5,000mJ/cm2の範囲であることが好ましく、50~1,000mJ/cm2の範囲であることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止または抑制ができることから好ましい。
【0104】
なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0105】
前記レジスト下層膜の膜厚としては、通常10~1,000nmの範囲であり、10nm~500nmの範囲が好ましい。
【0106】
本実施形態のレジスト用組成物は、前記重合性化合物を含有する。当該レジスト用組成物を硬化させることにより、レジスト膜として使用することができる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0108】
<ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定条件>
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件:カラム温度40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0109】
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0110】
本実施例において、1H-NMRは以下の条件にて測定した。
【0111】
<1H-NMRの測定条件>
装置:日本電子株式会社製 JNM-ECA500
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
パルス角度:45°パルス
試料濃度:30wt%
積算回数:10000回
【0112】
本実施例において、13C-NMRは以下の条件にて測定した。
【0113】
<13C-NMRの測定条件>
装置:日本電子株式会社製 JNM-ECA500
測定モード:逆ゲート付きデカップリング
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
パルス角度:30°パルス
試料濃度:30wt%
積算回数:4000回
ケミカルシフトの基準:ジメチルスルホキシドのピーク:39.5ppm
【0114】
<FD-MSの測定>
FD-MSは日本電子株式会社製の二重収束型質量分析装置AX505H(FD505H)を用いて測定した。
【0115】
<実施例>合成例1 エポキシ化物(A-1)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン126g(1.50mol)と、エピクロルヒドリン1388g(15mol)を添加し、50℃まで昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム11.2g(0.06mol)を添加し、50℃で15時間撹拌した。得られた反応液に蒸留水1000mLを注いで撹拌し、静置後に上層を除去した。残った下層に48%水酸化ナトリウム水溶液318gを2.5時間かけて滴下し、1時間撹拌を行った後、蒸留水400mLを注いで静置した。反応で生成した食塩を含む下層(水層)を除去した後に120℃でエピクロロヒドリンの蒸留回収を行った。次いで、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と略記する。)500g、水167gを順次添加し、80℃で水洗を行った。下層(水層)を除去した後、脱水及びろ過を行い、150℃でMIBKを脱溶媒することで、エポキシ化物(A-1)を得た。得られたエポキシ化物(A-1)は液状で、エポキシ当量は128g/当量であり、重量平均分子量(Mw)は370であった。
【0116】
合成例2 エポキシ化物(A-2)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン63g(0.75mol)と1,2,4-トリヒドロキシベンゼン63g(0.75mol)の混合物と、エピクロルヒドリン1388g(15mol)を添加し、50℃まで昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム11.2g(0.06mol)を添加し、50℃で15時間撹拌した。得られた反応液に蒸留水1000mLを注いで撹拌し、静置後に上層を除去した。残った下層に48%水酸化ナトリウム水溶液318gを2.5時間かけて滴下し、1時間撹拌を行った後、蒸留水400mLを注いで静置した。反応で生成した食塩を含む下層(水層)を除去した後に120℃でエピクロロヒドリンの蒸留回収を行った。次いで、MIBK500g、水167gを順次添加し、80℃で水洗を行った。下層(水層)を除去した後、脱水及びろ過を行い、150℃でMIBKを脱溶媒することで、エポキシ化物(A-2)を得た。得られたエポキシ化物(A-2)は液状で、エポキシ当量は121g/当量であり、重量平均分子量(Mw)は382であった。
【0117】
合成例3 エポキシ化物(A-3)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン126g(1.50mol)と、エピクロルヒドリン1388g(15mol)を添加し、50℃まで昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム11.2g(0.06mol)を添加し、50℃で15時間撹拌した。得られた反応液に蒸留水1000mLを注いで撹拌し、静置後に上層を除去した。残った下層に48%水酸化ナトリウム水溶液318gを2.5時間かけて滴下し、1時間撹拌を行った後、蒸留水400mLを注いで静置した。反応で生成した食塩を含む下層(水層)を除去した後に120℃でエピクロロヒドリンの蒸留回収を行った。次いで、MIBK500g、水167gを順次添加し、80℃で水洗を行った。下層(水層)を除去した後、脱水及びろ過を行い、150℃でMIBKを脱溶媒することで、エポキシ化物(A-3)を得た。得られたエポキシ化物(A-3)は液状で、エポキシ当量は114g/当量であり、重量平均分子量(Mw)は406であった。
【0118】
実施例1 重合性化合物(1)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、エポキシ化物(A-1)128g(エポキシ基1.00mol相当)、4-イソプロペニルフェノール134g(1.00mol)、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業株式会社製)18.6g(0.05mol)、ハイドロキノン0.6g(0.005mol)、及びメトキシプロパノール656gを添加し、70℃で10時間撹拌した。その後、減圧真空条件下でプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶媒を置換し、目的の重合性化合物(1)を得た。得られた重合性化合物(1)の数平均分子量(Mnは1043、重量平均分子量(Mw)は1143、多分散度(Mw/Mn)は1.10であった。重合性化合物(1)のGPCチャートを
図1に、
1H-NMRチャートを
図2に、
13C-NMRチャートを
図3に、FD-MSチャートを
図4にそれぞれ示す。FD-MSスペクトルにおける696.3のピーク、及び
1H-NMR、
13C-NMRにより、下記化合物の生成を確認した。
【0119】
【0120】
実施例2 重合性化合物(2)の合成
実施例2のエポキシ化物(A-1)をエポキシ化物(A-2)121g(エポキシ基1.00mol相当)に変更した以外は実施例1と同様の方法で重合性化合物(2)を得た。得られた重合性化合物(2)の数平均分子量(Mn)は1125、重量平均分子量(Mw)は1246、多分散度(Mw/Mn)は1.11であった。重合性化合物(2)のGPCチャートを
図5に示す。
【0121】
実施例3 重合性化合物(3)の合成
実施例1のエポキシ化物(A-1)をエポキシ化物(A-3)114g(エポキシ基1.00mol相当)に変更した以外は実施例1と同様の方法で重合性化合物(3)を得た。得られた重合性化合物(3)の数平均分子量(Mn)は1244、重量平均分子量(Mw)は1409、多分散度(Mw/Mn)は1.13であった。重合性化合物(3)のGPCチャートを
図6に示す。
【0122】
実施例4 重合性化合物(4)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、エポキシ化物(A-1)128g(エポキシ基1.00mol相当)、4-(ヒドロキシ)メタクリルアニリド(大阪有機化学株式会社製)177g(1.00mol)、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学工業株式会社製)18.6g(0.05mol)、ハイドロキノン0.6g(0.005mol)、及びメトキシプロパノール656gを添加し、70℃で24時間撹拌した。その後、減圧真空条件下でプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶媒を置換し、目的の重合性化合物(4)を得た。得られた重合性化合物(4)の数平均分子量(Mn)は1053、重量平均分子量(Mw)は1157、多分散度(Mw/Mn)は1.10であった。重合性化合物(4)のGPCチャートを
図7に、
1H-NMRチャートを
図8に、
13C-NMRチャートを
図9に、FD-MSチャートを
図10にそれぞれ示す。FD-MSスペクトルにおける825.3のピーク、及び
1H-NMR、
13C-NMRにより、下記化合物の生成を確認した。
【0123】
【0124】
実施例5 重合性化合物(5)の合成
実施例4のエポキシ化物(A-1)をエポキシ化物(A-2)121g(エポキシ基1.00mol相当)に変更した以外は実施例4と同様の方法で重合性化合物(5)を得た。得られた重合性化合物(B-2)の数平均分子量(Mn)は1136、重量平均分子量
(Mw)は1258、多分散度(Mw/Mn)は1.11であった。重合性化合物(5)のGPCチャートを
図11に示す。
【0125】
実施例6 重合性化合物(6)の合成
実施例4のエポキシ化物(A-1)をエポキシ化物(A-3)114g(エポキシ基1.00mol相当)に変更した以外は実施例4と同様の方法で樹脂(6)を得た。得られた樹脂(6)の数平均分子量(Mn)は1256、重量平均分子量(Mw)は1423、多分散度(Mw/Mn)は1.13であった。重合性化合物(6)のGPCチャートを
図12に示す。
【0126】
実施例7 重合性化合物(7)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、エポキシ化物(A-1)128g(エポキシ基1.00mol相当)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸188g(1.00mol)、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム11.4g(0.05mol)、及びジメチルホルムアミド512gを添加し、100℃で6時間撹拌した。放冷後、炭酸カリウム166gとプロパルギルブロミド131gを加え、60℃で20時間攪拌した。次いで、MIBK500g、水200gを順次添加し、60℃で水洗を行った。下層(水層)を除去した後、減圧真空条件下でプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶媒を置換し、目的の重合性化合物(7)を得た。得られた重合性化合物(7)の数平均分子量(Mn)は1166、重量平均分子量(Mw)は1259、多分散度(Mw/Mn)は1.08であった。重合性化合物(7)のGPCチャートを
図13に、
1H-NMRチャートを
図14に、
13C-NMRチャートを
図15に、FD-MSチャートを
図16にそれぞれ示す。FD-MSスペクトルにおける97.3のピーク、及び
1H-NMR、
13C-NMRにより、下記化合物の生成を確認した。
【0127】
【0128】
実施例8 重合性化合物(8)の合成
実施例7のエポキシ化物(A-1)をエポキシ化物(A-2)121g(エポキシ基1.00mol相当)に変更した以外は実施例7と同様の方法で重合性化合物(8)を得た。得られた重合性化合物(8)の数平均分子量(Mn)は1136、重量平均分子量(Mw)は1258、多分散度(Mw/Mn)は1.11であった。重合性化合物(8)のGPCチャートを
図17に示す。
【0129】
実施例9 重合性化合物(9)の合成
実施例7のエポキシ化物(A-1)をエポキシ化物(A-3)114g(エポキシ基1.00mol相当)に変更した以外は実施例7と同様の方法で重合性化合物(9)を得た。得られた重合性化合物(9)の数平均分子量(Mn)は1339、重量平均分子量(Mw)は1552、多分散度(Mw/Mn)は1.11であった。重合性化合物(9)のGPCチャートを
図18に示す。
【0130】
比較例1 重合性化合物(1’)の合成
実施例1のエポキシ化物(A-1)をターシャリーブチルカテコールのエポキシ化物(エポキシ当量209g/当量)209gに変更した以外は実施例1と同様の方法で重合性化合物(1’)を得た。得られた重合性化合物(1’)の数平均分子量(Mn)は1000、重量平均分子量(Mw)は1050、多分散度(Mw/Mn)は1.05であった。重合性化合物(1’)のGPCチャートを
図19に示す。
【0131】
比較例2 重合性化合物(2’)の合成
実施例4のエポキシ化物(A-1)をターシャリーブチルカテコールのエポキシ化物(エポキシ当量209g/当量)209gに変更した以外は実施例4と同様の方法で重合性化合物(2’)を得た。得られた重合性化合物(2’)の数平均分子量(Mn)は956、重量平均分子量(Mw)は999、多分散度(Mw/Mn)は1.04であった。重合性化合物(2’)のGPCチャートを
図20に示す。
【0132】
比較例3 重合性化合物(3’)の合成〕
実施例7のエポキシ化物(A-1)をターシャリーブチルカテコールのエポキシ化物(エポキシ当量209g/当量)209gに変更した以外は実施例7と同様の方法で重合性化合物(3’)を得た。得られた重合性化合物(3’)の数平均分子量(Mn)は1044、重量平均分子量(Mw)は1100、多分散度(Mw/Mn)は1.05であった。重合性化合物(3’)のGPCチャートを
図21に示す。
【0133】
<評価>〔光学特性の評価〕
各実施例及び比較例で得られた重合性化合物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、不揮発分5質量%の溶液を調製した。得られた重合性化合物溶液を用い、スピンコーターを使用して1500rpm、30秒の条件でシリコンウェハ上に塗布した。100℃のホットプレートで60秒間加熱して乾燥させ、0.1μmの塗膜を得た。得られた塗膜について、分光エリプソメーター(J.A.Woollam製「VUV-VASE GEN-1」)を用い、波長193、248nmでのn値(屈折率)とk値(減衰係数)を測定した。
【0134】
〔耐エッチング性、及び微細空間への浸潤性の評価用レジスト下層膜用組成物の調製〕
各実施例及び比較例で得られた重合性化合物5質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート95質量部に加え、混合、溶解して溶液を得た。この溶液に光開始材(IGM社製「Omnirad-184」)0.5質量部と、5質量%フッ素系界面活性剤(DIC株式会社製「メガファックR-2011」)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を3質量部を加えて、混合、溶解した後、0.2μmカートリッジフィルターを用いて濾過し、レジスト下層膜用組成物を得た。
【0135】
〔耐エッチング性の評価〕
得られたレジスト下層膜用組成物を直径5インチのシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗布した後、酸素濃度20容量%のホットプレート内にて、180℃で60秒間加熱した。更に、350℃で120秒間加熱して、膜厚0.3μmのレジスト下層膜付きシリコンウェハを得た。形成したレジスト下層膜を、エッチング装置(神鋼精機社製「EXAM」)を使用して、CF4/Ar/O2(CF4:40mL/分、Ar:20mL/分、O2:5mL/分 圧力:20Pa RFパワー:200W 処理時間:40秒 温度:15℃)の条件でエッチング処理した。このときのエッチング処理前後の膜厚を測定して、エッチングレートを算出し、エッチング耐性を評価した。評価基準は以下の通りである。A:エッチングレートが150nm/分以下の場合B:エッチングレートが150nm/分を超える場合
【0136】
〔微細空間への浸潤性の評価〕
φ110nm、深さ300nmのホールパターンが形成された直径5インチのシリコンウェハを用いた以外は前記同様にレジスト下層膜付きシリコンウェハを得た。シリコンウェハをホールパターン線上で割り、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「SU-3500」)で断面観察を行い、微細空間への浸潤性を評価した。評価基準は以下の通りである。A:ホール底まで硬化物で満たされている場合B:ホール底まで硬化物が満たされていない、または一部に空隙がある場合
【0137】
〔感度の評価〕
各実施例及び比較例で得られた重合性化合物50質量部をPGMEA50質量部に加えて混合し、溶解させた。更に、10質量部の光重合開始剤(IGM製「Omnirad-184」)とフッ素系界面活性剤(DIC製「メガファックR-2011」)の5質量%PGMEA溶液3質量部を加えて混合し、溶解させた。0.2μmカートリッジフィルターを用いて得られた溶液を濾過し、感光性組成物を得た。アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分間乾燥させた。次いで、高圧水銀灯を用いて、紫外線を照射し硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜の表面を指で触り、タックがなくなった際の積算光量の最小値で評価した。評価基準は以下の通りである。
A:積算光量が50mJ/cm2以下で硬化した。
B:積算光量が50mJ/cm2超え100mJ/cm2以下で硬化した。
C:積算光量が100mJ/cm2超えでも硬化しなかった。
【0138】
各評価結果を表1に示す。
【0139】
【0140】
表1の結果から明らかなように、前記一般式(1)で表される重合性化合物を含有する組成物は、微細空間への浸潤性に優れると共に、光学特性や耐エッチング性、硬化性、溶剤溶解性等にも優れていることが判る。一方、比較例1~3の樹脂は、本発明の課題を解決できていないことが判る。