(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】内視鏡用スネア
(51)【国際特許分類】
A61B 17/32 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
A61B17/32 528
(21)【出願番号】P 2019148785
(22)【出願日】2019-08-14
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000153823
【氏名又は名称】株式会社八光
(73)【特許権者】
【識別番号】000110147
【氏名又は名称】トクセン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 清一
(72)【発明者】
【氏名】吾妻 聖臣
(72)【発明者】
【氏名】新田 瞬
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
(72)【発明者】
【氏名】山下 博之
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0242804(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0018385(US,A1)
【文献】特表2019-509847(JP,A)
【文献】国際公開第2002/083009(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0206878(US,A1)
【文献】特開2017-136188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースと、
前記シースの延在方向に沿ってスライド可能に前記シース内に挿通されたケーブルと、
スネアワイヤとを備え、
前記スネアワイヤの延在方向における一方端及び他方端は、ループを形成するように前記ケーブルの延在方向における一方端に接続されており、
前記スネアワイヤは、前記スネアワイヤの延在方向に直交する断面視において、第1辺と、前記第1辺に連なる第2辺と、前記第1辺と前記第2辺とにより形成された角部とを有しており、
前記角部は、前記ループの内側に向いて
おり、
前記角部は、面取りされている、内視鏡用スネア。
【請求項2】
前記角部は、前記ループの一部又は全部にわたって、前記スネアワイヤの延在方向に沿って連続的に形成されている、請求項1に記載の内視鏡用スネア。
【請求項3】
前記ループは、第1部分と、前記ループの幅方向において前記第1部分と対向している第2部分とを有しており、
前記角部は、前記第1部分及び前記第2部分のいずれか一方に形成されている、請求項1又は請求項2に記載の内視鏡用スネア。
【請求項4】
前記第1辺と前記第2辺とがなす角度は、30°以上90°以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の内視鏡用スネア。
【請求項5】
前記スネアワイヤは、前記スネアワイヤの延在方向に直交する断面視において、三角形形状を有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の内視鏡用スネア。
【請求項6】
前記三角形形状の一辺の長さは、0.1mm以上0.4mm以下である、請求項5に記載の内視鏡用スネア。
【請求項7】
前記ループは、前記ループの先端に位置する突起部を有している、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の内視鏡用スネア。
【請求項8】
前記ループの形状は、拡開した状態において、円形、楕円形、涙滴形、菱形及び六角形のいずれかである、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の内視鏡用スネア。
【請求項9】
前記スネアワイヤは、単線のワイヤである、請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の内視鏡用スネア。
【請求項10】
前記スネアワイヤは、超弾性合金製のワイヤである、請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の内視鏡用スネア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用スネアに関する。より特定的には、本発明は、内視鏡の鉗子チャネルを通して体内に挿入され、消化管内のポリープ等の組織を捕捉・切除する内視鏡用スネアに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の鉗子チャネルを通して体内に挿入された内視鏡用スネアによるポリープ等の切除術は、ループ状に形成されたスネアワイヤによりポリープ等の根元を絞扼し、当該スネアワイヤに高周波電流を流して行われることが一般的である。しかしながら、この切除術は、切除部位の熱傷が粘膜下層まで及ぶことにより血管が破綻し、後出血につながることがあるため、術後に長時間の観察が必要になる場合がある。
【0003】
そのため、大きさが小さい(例えば、10mm未満程度)ポリープ等に対しては、通電を行うことなく、ポリープ等の根元の絞扼のみによりポリープ等の切除を行うコールドポリペクトミーが選択されることがある。コールドポリペクトミーは、粘膜に限局された切除であるため、切除直後の出血はあるものの、後出血の危険性が低く、相対的に安全性が高く、治癒が早い治療法として認知されている。
【0004】
特許文献1に記載の内視鏡用スネアにおけるスネアワイヤは、断面視において、三角形形状又は四角形形状を有しているが、当該三角形形状又は当該四角形形状の辺が、スネアワイヤによって形成されるループの内側に向いている。このことを別の観点から言えば、特許文献1に記載の内視鏡用スネアにおけるスネアワイヤの切除面は、平面により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コールドポリペクトミーにおいては、スネアワイヤでポリープ等の根元を絞扼することのみによってポリープ等の切除が行われるため、スネアワイヤには、剪断力が要求されることになる。しかしながら、特許文献1の内視鏡用スネアにおけるスネアワイヤは、切除面が平面により構成されているため、ポリープ等を切除する際の剪断力に改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、ポリープ等を切除する際の剪断力が改善されたスネアワイヤを有する内視鏡用スネアを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る内視鏡用スネアは、シースと、シースの延在方向に沿ってスライド可能にシース内に挿通されたケーブルと、スネアワイヤとを備える。スネアワイヤの延在方向における一方端及び他方端は、ループを形成するようにケーブルの延在方向における一方端に接続されている。スネアワイヤは、スネアワイヤの延在方向に直交する断面視において、第1辺と、第1辺に連なる第2辺と、第1辺と第2辺とにより形成された角部とを有している。角部は、ループの内側に向いている。
【0009】
上記の内視鏡用スネアでは、角部が、ループの一部又は全部にわたって、スネアワイヤの延在方向に沿って連続的に形成されていてもよい。
【0010】
上記の内視鏡用スネアでは、ループが、第1部分と、ループの幅方向において第1部分と対向している第2部分とを有していてもよい。角部は、第1部分及び第2部分のいずれか一方に形成されていてもよい。
【0011】
上記の内視鏡用スネアでは、第1辺と第2辺とがなす角度が、30°以上90°以下であってもよい。
【0012】
上記の内視鏡用スネアでは、スネアワイヤが、スネアワイヤの延在方向に直交する断面視において、三角形形状を有していてもよい。上記の内視鏡用スネアでは、三角形形状の一辺の長さが、0.1mm以上0.4mm以下であってもよい。
【0013】
上記の内視鏡用スネアでは、ループが、ループの先端に位置する突起部を有していてもよい。
【0014】
上記の内視鏡用スネアでは、ループの形状が、拡開した状態において、円形、楕円形、涙滴形、菱形及び六角形のいずれかであってもよい。
【0015】
上記の内視鏡用スネアでは、角部が、面取りされていてもよい。上記の内視鏡用スネアでは、スネアワイヤが、単線のワイヤであってもよい。上記の内視鏡用スネアでは、スネアワイヤが、超弾性合金製のワイヤであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係る内視鏡用スネアによると、ポリープ等を切除する際のスネアワイヤの剪断力を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】内視鏡用スネア10でのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。
【
図3】ループ31が縮径された状態における内視鏡用スネア10の平面図である。
【
図4】内視鏡用スネア10Aにおけるスネアワイヤ3の平面図である。
【
図5】内視鏡用スネア10Aの第1変形例におけるスネアワイヤ3の平面図である。
【
図6】内視鏡用スネア10Aの第2変形例におけるスネアワイヤ3の平面図である。
【
図7】内視鏡用スネア10Aの第3変形例におけるスネアワイヤ3の平面図である。
【
図8】内視鏡用スネア10Bでのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。
【
図9】内視鏡用スネア10Bの第1変形例でのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。
【
図10】内視鏡用スネア10Bの第2変形例でのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。
【
図11】内視鏡用スネア10Cでのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。
【
図12】内視鏡用スネア10Dでのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0019】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態に係る内視鏡用スネア(以下「内視鏡用スネア10」とする)の説明を行う。
【0020】
<内視鏡用スネア10の構成>
図1は、内視鏡用スネア10の平面図である。
図1に示されるように、内視鏡用スネア10は、シース1と、ケーブル2と、スネアワイヤ3と、手元操作部4とを有している。内視鏡用スネア10は、内視鏡の鉗子チャネル(図示せず)を通して体内に挿入されて用いられる。
【0021】
シース1は、管状の部材である。すなわち、シース1は、内部が中空になっている。シース1は、第1端1aと、第2端1bとを有している。第1端1a及び第2端1bは、シース1の延在方向におけるシース1の端である。第2端1bは、第1端1aの反対側の端である。
【0022】
シース1は、適度な可撓性及び剛性、低い表面摩擦抵抗並びに低い延伸性を有する材料により形成されていることが好ましい。シース1は、例えば、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等により形成されている。シース1の外径及び長さは、鉗子チャネルに挿入可能なように適宜選択される。
【0023】
ケーブル2は、ワイヤ状の部材である。ケーブル2は、第1端2aと、第2端2b(図示せず)とを有している。第1端2a及び第2端2bは、ケーブル2の延在方向におけるケーブル2の端である。第2端2bは、第1端2aの反対側の端である。ケーブル2は、シース1内に挿通されている。ケーブル2は、シース1の延在方向に沿ってシース1内においてスライド可能になっている。ケーブル2の外径は、シース1の内径よりも小さい。
【0024】
ケーブル2は、適度な可撓性及び剛性、低い延伸性並びに適度なトルク性を有する材料により形成されていることが好ましい。ケーブル2は、例えば、ステンレス鋼等により形成された金属線が複数本撚り合わされた金属撚線により形成されている。
【0025】
スネアワイヤ3は、ワイヤ状の部材である。スネアワイヤ3は、第1端3aと、第2端3bとを有している。第1端3a及び第2端3bは、スネアワイヤ3の延在方向におけるスネアワイヤ3の端である。第2端3bは、第1端3aの反対側の端である。スネアワイヤ3の第1端3a及び第2端3bは、ケーブル2の第1端2aに接続されている。この接続は、例えば、パイプ21を介したカシメ加工により行われている。スネアワイヤ3は、ケーブル2に電気的に接続されていることが好ましい。
【0026】
スネアワイヤ3は、単線のワイヤにより形成されていることが好ましい。スネアワイヤ3は、超弾性合金製のワイヤにより形成されていることが好ましい。超弾性とは、塑性ひずみが生じるほどの外力を加えた後であっても、当該外力を除けば元の形状に戻る性質をいい、超弾性合金とは、そのような性質を有する合金をいう。超弾性合金の例としては、ニッケル(Ni)-チタン(Ti)合金が挙げられる。
【0027】
スネアワイヤ3は、ケーブル2に接続されることにより、ループ31を形成している。ループ31は、拡開された状態において、シース1(第1端1a)から突出している。ループ31は、第1部分31aと、第2部分31bとを有している。第1部分31a及び第2部分31bは、ループ31の幅に沿う方向である第1方向DR1において、互いに対向している。ループ31は、さらに、突出部31cを有している。突出部31cは、ループ31の先端に位置している。ループ31の先端とは、第1方向DR1に直交する第2方向DR2において、シース1の第1端1aから最も離れた位置にあるループ31の部分である。
【0028】
ループ31は、例えば、菱形形状になっている。なお、ループ31の第1方向DR1における角が丸まっている場合であっても、ここでいう「菱形形状」に含まれる。スネアワイヤ3は、ループ31が所定の形状になるように、予め記憶付けされている。また、ループ31は、突出部31cがある部分において菱形形状から逸脱している。ループ31は、このような突出部31cを有していても、依然「菱形形状」を有しているものとする。
【0029】
図2は、内視鏡用スネア10でのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。
図2に示されるように、スネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視において、スネアワイヤ3は、第1辺32と、第2辺33と、角部34とを有している。第2辺33は、第1辺32に連なっている。第2辺33が第1辺32に連なることにより、角部34が形成されている。なお、図示されていないが、角部34は、ループ31の全部にわたり、スネアワイヤ3の延在方向に沿って連続的に形成されている。
【0030】
なお、角部34は、ループ31の全部にわたり、スネアワイヤ3の延在方向に沿って連続的に形成されていなければならないわけではない。角部34が形成されているスネアワイヤ3の部分は、スネアワイヤ3の延在方向に沿って互いに離間するように、複数配置されていてもよい。
【0031】
スネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視において、スネアワイヤ3は、例えば三角形形状を有している。この三角形形状の一辺の長さは、0.1mm以上0.4mm以下であることが好ましい。
【0032】
角部34は、ループ31の内側を向いている。なお、「角部34は、ループ31の内側を向いている」とは、ループ31により画される平面の法線と第1辺32及び第2辺33により形成される角の二等分線とがなす角度が45°を超えていることをいう。ループ31の内側を向くスネアワイヤ3の外周面がポリープ等を切除する際の切除面になるが、角部34がループ31の内側を向いている結果、角部34が、当該切除面の一部を構成していることになる。第1辺32と第2辺33とがなす角度を、角度θとする。角度θは、30°以上90°以下であることが好ましい。なお、角度θは、180°未満である。
【0033】
図1に示されるように、手元操作部4は、シース基41と、ケーブル基42とを有している。シース基41は、第1端41aと、第2端41bとを有している。第1端41a及び第2端41bは、シース基41の長手方向における端である。第2端41bは、第1端41aの反対側の端である。
【0034】
シース1の第2端1bは、シース基41の第1端41aに接続されている。シース基41は、第2端41bにおいて、把持リング41cを有している。把持リング41cは、内視鏡用スネア10の使用者がシース基41を把持するための部分である。把持リング41cには、例えば、内視鏡用スネア10の使用者の親指が挿入される。
【0035】
ケーブル基42は、ケーブル2の第2端2bに接続されている。ケーブル基42は、シース基41の長手方向に沿ってシース基41に対して相対的にスライド可能に構成されている。ケーブル基42は、把持リング42a及び把持リング42bを有している。把持リング42a及び把持リング42bは、内視鏡用スネア10の使用者がケーブル基42を把持するための部分である。把持リング42a及び把持リング42bには、例えば、内視鏡用スネア10の使用者の示指及び中指(中指及び薬指)がそれぞれ挿入される。
【0036】
ケーブル基42は、端子42cを有していてもよい。端子42cは、ケーブル2に電気的に接続されている。端子42cには、高周波電流が供給される。この高周波電流は、ケーブル2を介して、スネアワイヤ3に供給される。すなわち、内視鏡用スネア10は、スネアワイヤ3によってポリープ等を絞扼するとともに、スネアワイヤ3に高周波電流を供給することによってポリープ等を切除してもよい。このことを別の観点から言えば、内視鏡用スネア10は、コールドポリペクトミー以外に用いられてもよい。
【0037】
<内視鏡用スネア10の動作>
図3は、ループ31が縮径された状態における内視鏡用スネア10の平面図である。
図3に示されるように、ケーブル基42がシース基41の第1端41a側から第2端41b側に向かってシース基41に対して相対的にスライドされることにより、ループ31は、シース1内に引き込まれ、縮径される。他方で、ケーブル基42が第2端41b側から第1端41a側に向かってシース基41に対して相対的にスライドされることにより、ループ31は、シース1から突出するとともに拡開され、
図1に示される状態に戻る。
【0038】
内視鏡用スネア10は、ループ31が縮径された状態で、内視鏡の鉗子チャネルに通されることにより、目的部位の近傍に挿入される。内視鏡用スネア10が目的部位の近傍に挿入された後、ケーブル基42をシース基41に対してスライドさせることにより、ループ31がシース1から突出して拡開される。ポリープ等の根元を拡開されたループ31内に位置させた状態で、ケーブル基42をシース基41に対してスライドさせてループ31をシース1内に引き込んで縮径させることにより、ポリープ等が捕捉・切除される。
【0039】
<内視鏡用スネア10の効果>
ループ31の内側を向くスネアワイヤ3の外周面がポリープ等を切除する際の切除面となるが、スネアワイヤ3には、スネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視においてループ31の内側を向く角部34が形成されているため、角部34が、当該切除面の一部を構成していることになる。そのため、内視鏡用スネア10においては、スネアワイヤ3の剪断力が改善されている。
【0040】
内視鏡用スネアにおいて、スネアワイヤの剪断力を改善するためには、スネアワイヤの径を小さくする必要がある。しかしながら、スネアワイヤの径を小さくした場合、スネアワイヤの剛性が低くなり(スネアワイヤのコシが無くなり)、スネアループによりポリープ等を捕捉し難くなる。内視鏡用スネア10においては、スネアワイヤ3の剪断力を高めるためにスネアワイヤ3をコシが無くなるほどに細くする必要がないため、ポリープ等の捕捉がしやすくなる。
【0041】
また、内視鏡用スネア10によると、スネアワイヤ3の剪断力が改善された結果、ポリープ等を切除するために要する緊縛力が小さくなるため、切除部位の残存組織に対する負荷を低減することが可能となる。
【0042】
角度θが大き過ぎると、スネアワイヤ3における切除面が平面に近くなるため、スネアワイヤ3の剪断力が低下する。他方で、角度θが小さ過ぎると、スネアワイヤ3の剪断力は高まるが、角部34に破損が生じやすくなり、加工も困難になる。そのため、角度θを30°以上90°以下とすることにより、スネアワイヤ3の剪断力及び加工性を保持しつつ、スネアワイヤ3の破損を抑制することが可能となる。
【0043】
スネアワイヤ3が細くなるほど、スネアワイヤ3の剪断力が高まるが、スネアワイヤ3の剛性も低くなる。そのため、スネアワイヤ3の三角形の断面形状の一辺の長さを0.1mm以上0.4mm以下とすることにより、スネアワイヤ3の剪断力を保持しつつ、スネアワイヤ3の剛性(コシ)を維持することが可能となる。スネアワイヤ3が単線のワイヤにより形成されている場合、スネアワイヤ3の剛性を高めることが可能となる。
【0044】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る内視鏡用スネア(以下「内視鏡用スネア10A」とする)の説明を行う。ここでは、内視鏡用スネア10と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0045】
<内視鏡用スネア10Aの構成>
内視鏡用スネア10Aは、シース1と、ケーブル2と、スネアワイヤ3と、手元操作部4とを有している。この点に関して、内視鏡用スネア10Aの構成は、内視鏡用スネア10の構成と共通している。
【0046】
図4は、内視鏡用スネア10Aにおけるスネアワイヤ3の平面図である。
図4に示されるように、内視鏡用スネア10Aにおいては、ループ31が、円形形状を有している。この点に関して、内視鏡用スネア10Aの構成は、内視鏡用スネア10の構成と異なっている。
【0047】
<変形例>
図5は、内視鏡用スネア10Aの第1変形例におけるスネアワイヤ3の平面図である。
図5に示されるように、ループ31は、楕円形状であってもよい。
図6は、内視鏡用スネア10Aの第2変形例におけるスネアワイヤ3の平面図である。
図6に示されるように、ループ31は、六角形形状であってもよい。この六角形形状は、
図1に示されるループ31の菱形形状の第1方向DR1における角を直線状としたものである。
図7は、内視鏡用スネア10Aの第3変形例におけるスネアワイヤ3の平面図である。
図7に示されるように、ループ31は、涙滴形状であってもよい。なお、ループ31の形状は、これらに限られるものではない。
【0048】
(第3実施形態)
以下に、第3実施形態に係る内視鏡用スネア(以下「内視鏡用スネア10B」とする)の説明を行う。ここでは、内視鏡用スネア10と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0049】
<内視鏡用スネア10Bの構成>
内視鏡用スネア10Bは、シース1と、ケーブル2と、スネアワイヤ3と、手元操作部4とを有している。この点に関して、内視鏡用スネア10Bの構成は、内視鏡用スネア10の構成と共通している。
【0050】
図8は、内視鏡用スネア10Bでのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。
図8に示されるように、内視鏡用スネア10Bでは、スネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視において、スネアワイヤ3は、四角形形状を有している。この点に関して、内視鏡用スネア10Bの構成は、内視鏡用スネア10の構成と異なっている。
【0051】
<変形例>
図9は、内視鏡用スネア10Bの第1変形例でのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。
図9に示されるように、スネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視において、スネアワイヤ3は、五角形形状を有していてもよい。この五角形形状は、四角形形状の一辺から角部34がループ31の内側に向かって突出している形状である。
【0052】
図10は、内視鏡用スネア10Bの第2変形例でのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。
図10に示されるように、スネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視において、スネアワイヤ3は、扇形形状を有していてもよい。なお、スネアワイヤ3の断面形状は、これらに限られるものではない。
【0053】
(第4実施形態)
以下に、第4実施形態に係る内視鏡用スネア(以下「内視鏡用スネア10C」とする)の説明を行う。ここでは、内視鏡用スネア10と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0054】
内視鏡用スネア10Cは、シース1と、ケーブル2と、スネアワイヤ3と、手元操作部4とを有している。この点に関して、内視鏡用スネア10Cの構成は、内視鏡用スネア10の構成と共通している。
【0055】
図11は、内視鏡用スネア10Cでのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。
図11に示されるように、内視鏡用スネア10Cにおいては、角部34に対して、面取りが行われていてもよい。この点に関して、内視鏡用スネア10Cの構成は、内視鏡用スネア10の構成と異なっている。
【0056】
(第5実施形態)
以下に、第5実施形態に係る内視鏡用スネア(以下「内視鏡用スネア10D」とする)の説明を行う。ここでは、内視鏡用スネア10と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0057】
内視鏡用スネア10Dは、シース1と、ケーブル2と、スネアワイヤ3と、手元操作部4とを有している。この点に関して、内視鏡用スネア10Dの構成は、内視鏡用スネア10の構成と共通している。
【0058】
図12は、内視鏡用スネア10Dでのスネアワイヤ3の延在方向に直交する断面視におけるスネアワイヤ3の断面図である。なお、
図12(A)には、第1部分31aにおけるスネアワイヤ3の断面形状が示されており、
図12(B)には、第2部分31bにおけるスネアワイヤ3の断面形状が示されている。
【0059】
図12に示されるように、延在方向に直交するスネアワイヤ3の断面形状は、第1部分31aにおいて、角部34を有している一方で、第2部分31bにおいて、角部34を有していない(例えば、円形形状を有している)。すなわち、角部34は、ループ31の一部にわたり、スネアワイヤ3の延在方向に沿って連続的に形成されている。この点に関して、内視鏡用スネア10Dの構成は、内視鏡用スネア10の構成と異なっている。
【0060】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本実施形態は、コールドポリペクトミーに使用される内視鏡用スネアに特に有利に適用されるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 シース、1a 第1端、1b 第2端、2 ケーブル、2a 第1端、2b 第2端、21 パイプ、3 スネアワイヤ、3a 第1端、3b 第2端、31 ループ、31a 第1部分、31b 第2部分、31c 突出部、32 第1辺、33 第2辺、34 角部、4 手元操作部、41 シース基、41a 第1端、41b 第2端、41c 把持リング、42 ケーブル基、42a,42b 把持リング、42c 端子、DR1 第1方向、DR2 第2方向、10,10A,10B,10C,10D 内視鏡用スネア。