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特許7288553プラズマ処理装置、データ解析装置及び半導体装置製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置、データ解析装置及び半導体装置製造システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
H01L21/302 103
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022542720
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2021026384
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野坂 峻大
(72)【発明者】
【氏名】白石 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鹿子嶋 昭
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-186539(JP,A)
【文献】特表2005-536075(JP,A)
【文献】特開2014-179474(JP,A)
【文献】特開2014-22621(JP,A)
【文献】特開平4-229620(JP,A)
【文献】特開2000-331985(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103903951(CN,A)
【文献】特表2019-522725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記試料が載置される試料台とを備えるプラズマ処理装置において、
モニタされたプラズマの発光のスペクトル波形である第一のスペクトル波形と第二のスペクトル波形を比較して求められた、前記第一のスペクトル波形と前記第二のスペクトル波形の一致度を基に前記モニタされたプラズマの中の元素または分子が特定される分析部をさらに備え、
前記第二のスペクトル波形は、前記元素または前記分子に対応し重み係数が乗じられたスペクトル波形であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記分析部により、前記一致度が閾値より小さい場合、前記元素または前記分子に係る情報が出力されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記分析部により、前記一致度が小さくなるように前記重み係数が調整されることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記一致度が閾値より小さい場合、前記分析部により、前記第二のスペクトル波形のピーク波長が抽出されるとともに前記抽出されたピーク波長の発光強度と重み係数を基に寄与度が演算され、
前記寄与度は、前記抽出されたピーク波長の発光強度に占める各々の前記元素または各々の前記分子の大きさを示す指標であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプラズマ処理装置において、
前記元素または前記分子と前記寄与度が前記ピーク波長毎に表示される表示部をさらに備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
モニタされた前記プラズマの発光のデータを出力し前記プラズマの発光の強度を露光時間により調整する分光器をさらに備え、
前記第二のスペクトル波形の一部の波長における発光強度がオーバースケールしている場合、前記分析部により、前記オーバースケールした第二のスペクトル波形が第三のスペクトル波形と入れ替えられ、
前記第三のスペクトル波形は、前記オーバースケールした第二のスペクトル波形より前記露光時間が短い前記第二のスペクトル波形が演算されたスペクトル波形であり、
前記演算は、前記オーバースケールした第二のスペクトル波形より前記露光時間が短い前記第二のスペクトル波形の露光時間により、前記オーバースケールした第二のスペクトル波形の露光時間を除した値を、前記オーバースケールした第二のスペクトル波形より前記露光時間が短い前記第二のスペクトル波形に乗じる演算であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記分析部は、前記一致度を基に元素または分子が選択されるエレメント選択部を具備することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
モニタされたプラズマの発光のスペクトル波形である第一のスペクトル波形と第二のスペクトル波形を比較して求められた、前記第一のスペクトル波形と前記第二のスペクトル波形の一致度を基に前記モニタされたプラズマの中の元素または分子が特定される分析部を備え、
前記第二のスペクトル波形は、プラズマの中の元素または分子に対応し重み係数が乗じられたスペクトル波形であることを特徴とするデータ解析装置。
【請求項9】
ネットワークを介して半導体製造装置に接続され、プラズマの中の元素または分子を特定する分析処理が実行されるプラットフォームとを備える半導体装置製造システムにおいて、
前記分析処理は、
モニタされたプラズマの発光のスペクトル波形である第一のスペクトル波形と第二のスペクトル波形を比較して求められた、前記第一のスペクトル波形と前記第二のスペクトル波形の一致度を基に前記モニタされたプラズマの中の元素または分子を特定するステップを有し、
前記第二のスペクトル波形は、プラズマの中の元素または分子に対応し重み係数が乗じられたスペクトル波形であることを特徴とする半導体装置製造システム。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置製造システムにおいて、
前記分析処理は、前記プラットフォームに備えられたアプリケーションとして実行されることを特徴とする半導体装置製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置、データ解析装置及び半導体装置製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置などの微細形状を得るために、処理室内で生成したプラズマにより、ウェハをエッチングするエッチング装置などのプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
プラズマによる電離現象は発光現象を伴うため、プラズマを利用して処理を行うエッチング装置には、分光器を搭載し、プラズマの発する光をモニタできるようにしているものがある。プラズマの発する光をモニタすることで、例えばトラブルシューティングなどを行うことができる。分光器にて計測されたデータを以下では、発光データと呼ぶ。
【0004】
発光データは、複数の波長および時間における発光強度の値によって構成されるが、分光器により収集される波長データの個数は数千に及ぶため、この多数の波長データの中から分析対象とする波長を選択することが課題となっていた。
【0005】
特許文献1には、プラズマの発光データからエッチング処理の分析に用いる波長を特定すること(波長同定という)を実現する技術が記載されている。波長同定を行いたい発光スペクトルに対してこの従来技術を用いることで、発光データのピークの波長に対応する元素を同定することができる。
【0006】
また、特許文献2には、パターンモデルを利用して発光データのピークに割り当てられる元素を同定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6088867号明細書
【文献】特許第2521406号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載した技術では、発光データのスペクトル波形から抽出したピークの波長とピークの強度のみを利用しており、ピークの形状について対象としていないため、ピークの波長に誤った元素を割り当てる恐れがある。
【0009】
また、特許文献2に記載した技術では、一つのピークに正しい元素と、誤った元素とを二重に割り当てる場合がある。この場合、どちらが正しい元素であるかは、分析者の経験から判断する必要があり、その判断に苦慮することも想定される。
【0010】
そこで、本発明は、ピークの形状の特徴から適切な元素または分子を割り当てることができ、高精度な波長同定を行うことができるプラズマ処理装置、データ解析装置及び半導体装置製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、代表的な本発明にかかる本発明のプラズマ処理装置の一つは、試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記試料が載置される試料台とを備えるプラズマ処理装置において、
モニタされたプラズマの発光のスペクトル波形である第一のスペクトル波形と第二のスペクトル波形を比較して求められた、前記第一のスペクトル波形と前記第二のスペクトル波形の一致度を基に前記モニタされたプラズマの中の元素または分子が特定される分析部をさらに備え、
前記第二のスペクトル波形は、前記元素または前記分子に対応し重み係数が乗じられたスペクトル波形であることにより達成される。
【0012】
また、代表的な本発明にかかる本発明のデータ解析装置の一つは、
モニタされたプラズマの発光のスペクトル波形である第一のスペクトル波形と第二のスペクトル波形を比較して求められた、前記第一のスペクトル波形と前記第二のスペクトル波形の一致度を基に前記モニタされたプラズマの中の元素または分子が特定される分析部を備え、
前記第二のスペクトル波形は、プラズマの中の元素または分子に対応し重み係数が乗じられたスペクトル波形であることにより達成される。
【0013】
また、代表的な本発明にかかる本発明の半導体装置製造システムの一つは、ネットワークを介して半導体製造装置に接続され、プラズマの中の元素または分子を特定する分析処理が実行されるプラットフォームとを備える半導体装置製造システムにおいて、
前記分析処理は、
モニタされたプラズマの発光のスペクトル波形である第一のスペクトル波形と第二のスペクトル波形を比較して求められた、前記第一のスペクトル波形と前記第二のスペクトル波形の一致度を基に前記モニタされたプラズマの中の元素または分子を特定するステップを有し、
前記第二のスペクトル波形は、プラズマの中の元素または分子に対応し重み係数が乗じられたスペクトル波形であることにより達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ピークの形状の特徴から適切な元素または分子を割り当てることができ、高精度な波長同定を行うことができるプラズマ処理装置、データ解析装置及び半導体装置製造システムを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の概略を示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る分析部を示す模式図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るスペクトル波形データベースのテーブル例を示す図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るエレメント波長データベースのテーブル例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る全体の処理フローを示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るスペクトル波形データベース作成の処理フローを示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るスペクトル波形データベースに登録するスペクトル波形の一例である。
図8図8は、本発明の実施形態に係るスペクトル波形データベースに登録するスペクトル波形の一例である。
図9図9は、本発明の実施形態に係るスペクトル波形データベースに登録するスペクトル波形の一例である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る作業者および分析部の処理フローを示す図である。
図11図11は、Arのスペクトル波形の一例である。
図12図12は、Nのスペクトル波形の一例である。
図13図13は、COのスペクトル波形の一例である。
図14図14は、解析対象のスペクトル波形とデータベースのスペクトル波形を合成したスペクトル波形とのフィッティング結果の一例を示す図である。
図15図15は、解析対象のスペクトル波形とデータベースのスペクトル波形を合成したスペクトル波形とのフィッティング結果の一例を示す図である。
図16図16は、本発明の実施形態に係る入力画面を示す図である。
図17図17は、本発明の実施形態に係る表示画面を示す図である。
図18図18は、本発明の別な実施形態に係る分析部を示す模式図である。
図19図19は、本発明の別な実施形態に係る作業者および分析部の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。なお、本明細書において、元素または分子をエレメントと称する。
【0017】
[実施形態1]
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置1の構成の概略を説明する模式図である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理が行われる処理室2と、この処理室2内に供給される処理ガスの供給量及び速度を調節するマスフローコントローラ3と、処理室2に供給された処理ガスを励起してプラズマを生成するための高周波電力を供給するプラズマ生成用高周波電源4と、処理室2内のガスを排気する真空ポンプを含む排気装置5とを備える。また、処理室2内のプラズマが生成される空間の下方には、試料台7が配置されており、試料台7の上面には、処理対象の試料であるウェハ6が載せられて保持されている。
【0018】
エッチング処理に使用される処理ガスは、マスフローコントローラ3を介して処理室2内に供給される。プラズマ生成用高周波電源4により供給された所定の周波数(例えば2.45GHz)の高周波電力は、処理室2上方に配置された導波管等の伝播手段によって処理室内に導入される。また、処理室2の上方及び側方の外周で処理室2を囲んで配置された磁場形成手段16から、処理室2内に磁界が形成される。その高周波電力と磁界との相互作用によりガスの粒子が励起され、処理室2内にプラズマ8が生成される。
【0019】
試料台7内部には導電体製の電極が配置されており、該電極にバイアス用高周波電源9から供給される高周波電力により、試料台7またはこれの上面の載置面上に保持されたウェハ6の上面上方にバイアス電界が形成される。この形成されたバイアス電界によりプラズマ8内の荷電粒子(イオン)が誘引され、ウェハ6表面に形成された薄膜と衝突する。これによりウェハ6の表面が活性化され、プラズマ8中の反応性粒子と膜を構成する材料との化学的、物理的相互作用が促進されて、対象膜のエッチング処理が進行する。
【0020】
可変コンダクタンスバルブ11が、処理室2内と排気装置5との間を連通する通路に配置されている。可変コンダクタンスバルブ11は、水平方向に配置された軸回りに回転して、通路の開口面積を可変に調節する複数枚の板を備えるバルブである。圧力計10は、処理室2内の圧力を測定する。圧力計10からの測定値は、基準値と比較され、その比較結果をもとに、可変コンダクタンスバルブ11の角度位置が変更され、コンダクタンスが調整される。それにより排気速度が調整されて、処理室2内の圧力は処理に適切な値に保持される。
【0021】
プラズマによる電離現象は、発光現象を伴う。プラズマ処理中に生成されるプラズマ8の発光は、処理室2の側壁の壁部材に配置された透光性部材によって構成された観察窓12を介して、モニタである分光器13により観測されてその強度が検出される。分光器13は、露光時間により発光強度の調整を行うこともできる。分光器13によって検出されたプラズマ8の発光強度に関する信号(発光情報)は、これと通信可能に配置された分析部14に送信され、保存される。分析部14では、分光器13から取得したスペクトル波形から波長同定の演算を行い、その結果を表示部15に送信する。分析部14の詳細を後述の図2にて説明する。表示部15では、分析部14から受信した波長同定の結果を表示する。なお、分析部14は、作業者が入力可能な入力装置として、例えば表示部15に、情報表示と入力が可能なタッチパネルを備える。ただし、タッチパネルの代わりにキーボード等を設けてもよい。
【0022】
図2は、分析部14の概略を説明する模式図である。データ解析装置として機能する分析部14は、スペクトル波形データベース21と、スペクトル合成演算部22と、スペクトル保存部23と、一致度演算部24と、エレメント波長データベース25と、波長同定演算部26とを有する。
【0023】
スペクトル波形データベース21は、分光器13で取得したスペクトル波形を、ガス種とエッチング材料ごとに登録(記憶)する。スペクトル波形データベース21の登録例を、図3に示す。
【0024】
スペクトル合成演算部22は、スペクトル波形データベース21に保存された1つ以上のスペクトル波形に、それぞれ重み係数をかけて1つのスペクトル波形に合成する演算を行う。
【0025】
スペクトル保存部23は、分光器13で取得した、解析対象のスペクトル波形を保存する。
【0026】
一致度演算部24は、スペクトル合成演算部22で演算された合成スペクトル波形と、スペクトル保存部23に保存された解析対象のスペクトル波形とを比較し、一致度を演算する。
【0027】
エレメント波長データベース25は、エレメント毎のピーク波長を有するデータベースであり、エレメント名(元素または分子に係る情報)とピーク波長とが対応付けて登録される。エレメント波長データベース25の登録例を、図4に示す。
【0028】
波長同定演算部26は、スペクトル合成演算部22の重み係数と、エレメント波長データベース25のピーク波長とピーク強度とを利用して、ピーク波長に対応するエレメントを同定する演算を行う。
【0029】
図3は、スペクトル波形データベース21に記憶されたデータの一例を示している。本データベースにおいて、ガス種欄21a、被エッチング材料欄21b、エレメント欄21c、波長毎の発光強度欄21d等の各フィールドが対応付けられている。
【0030】
ガス種欄21a及び被エッチング材料欄21bには、図6で示すデータベース作成処理時に行われるプラズマ処理で使用されたガス種及び被エッチング材料が格納される。エレメント欄21cには、ガス種と被エッチング材料に含まれる可能性のあるエレメントの一覧が格納される。波長毎の発光強度欄21dには、ガス種欄21aと被エッチング材料欄21bに登録された条件で行われたプラズマ処理において、分光器13で取得された発光スペクトルが格納される。ガス種欄21aと被エッチング材料欄21bとエレメント欄21cと波長毎の発光強度欄21dに対して、図6のステップ608にて登録処理が行われる。
【0031】
図4は、エレメント波長データベース25の例である。本データベースにおいて、エレメント欄25a、波長欄25b等の各フィールドが対応付けられている。
【0032】
エレメント欄25aには、ガスと被エッチング材料に含まれる可能性のあるエレメントが格納される。波長欄25bには、エレメント欄25aのエレメントの発する光の波長が格納される。
【0033】
図5は、本実施形態に係る全体の処理フローを示す図である。図5に基づく動作は、以下のステップの通りである。
【0034】
(ステップ501)
予めガス種及び被エッチング材料毎にプラズマ処理(エッチング処理)を行い、基準となるスペクトル波形データベース21を作成する。スペクトル波形データベース21の作成処理の詳細は、図6を参照して後述する。
【0035】
(ステップ502)
解析対象とする任意のプラズマ処理が行われたとき、分析部14は、分光器13で解析対象のスペクトル波形A(第一のスペクトル波形ともいう)を取得し、スペクトル保存部23へ保存する。
【0036】
(ステップ503)
ステップ502で取得した解析対象のスペクトル波形に対して、分析部14は波長同定処理を行う。分析部における波長同定処理の詳細は、図10を参照して後述する。
【0037】
(ステップ504)
分析部14は、ステップ503で得た波長同定の結果を表示部15に送信し、表示部15は、表示画面にエレメント名とピーク波長とエレメント毎の寄与度を表示する。寄与度は、抽出されたピーク波長の発光強度に占める各々のエレメントの大きさを示す指標である。図17に、表示例の一例を示す。
【0038】
図6は、図5に示す全体の処理フローのステップ501の詳細をフロー化して示す図である。この処理フローをガス種及び被エッチング材料毎に行うことで、データベースを作成する。図6に基づく動作は以下の通りである。
【0039】
(ステップ601)
分光器13において、プラズマの発光を計測するために設定されたn個の露光時間(t~t)毎に、n個の暗電流波形C1~Cnを取得する。ここで、露光時間はt<t<…<tとする。暗電流波形は、プラズマ処理装置1でプラズマ処理を実施していない時に取得する。
【0040】
(ステップ602)
ステップ601で設定されたn個の露光時間毎に、n個のスペクトル波形D~Dを取得する。スペクトル波形は、プラズマ処理装置1で、プラズマ処理を実施している時に取得する。
【0041】
(ステップ603)
ステップ601で設定された露光時間毎に、ステップ602で取得したスペクトル波形D~Dから、ステップ601で取得した暗電流波形C~Cを差し引いたスペクトル波形E~Eを計算する。
【0042】
(ステップ604)
ステップ605からステップ607までの繰り返し回数の初期値iを1とする。
【0043】
(ステップ605)
ステップ603で計算した、露光時間が最大のスペクトル波形Eの中にオーバースケールしている波長がなければ、ステップ608へ移行する。それ以外の場合はステップ606へ移行する。オーバースケールは、例えば分光器13の性能によって定まる。
【0044】
(ステップ606)
ステップ605で、オーバースケールしていた波長と、その隣の波長の発光強度を全て、スペクトル波形Eより露光時間の短い測定で得られたスペクトル波形En-iの発光強度に、t/tn-iを掛けてスケール合わせを行った値に置き換えることにより、新たなスペクトル波形(第三のスペクトル波形ともいう)Eを作成する。ここでは、オーバースケールしたスペクトル波形より露光時間が短いスペクトル波形の露光時間により、オーバースケールしたスペクトル波形の露光時間を除した値を、オーバースケールしたスペクトル波形より露光時間が短いスペクトル波形に乗じる演算が行われる。
【0045】
(ステップ607)
繰り返し回数iに1を加算してステップ605に移行し、オーバースケールしている波長がなくなれば、ステップ608へ移行する。
【0046】
(ステップ608)
プラズマ処理に使用したガス種をガス種欄21aに、プラズマ処理に使用した被エッチング材料を被エッチング材料欄21bに、プラズマ処理に使用したガス種及び被エッチング材料に含まれるエレメントをエレメント欄21cに、ステップ605からステップ607で作成したスペクトル波形Eをスペクトル波形Bとして波長毎の発光強度欄21dに登録する。
【0047】
ここで、ステップ605からステップ607の手順を、具体例を挙げて説明する。図7は、露光時間をtとしたスペクトル波形E図8は露光時間をtとしたスペクトル波形E図9は露光時間をtとしたスペクトル波形Eの例である。この例では露光時間を3つとしたが、2つ以上であれば露光時間はいくつでもよい。
【0048】
ステップ605において、図9に示すスペクトル波形Eの810nm付近がオーバースケールしていると判断されたときは、次のステップ606へ移行する。
【0049】
ステップ606では、オーバースケールした810nm付近の発光強度をEから抽出し、t/tをかけて置き換えることにより新たなスペクトル波形Eを作成し、次のステップ607からステップ605に戻る。
【0050】
もし、上記ステップ606で作成したスペクトル波形Eもオーバースケールしているなら、同じ処理をスペクトル波形Eで行う。このようにして、新たなスペクトル波形Eがオーバースケールしなくなるまで、ステップ605からステップ607を繰り返す。
【0051】
図10は、図5に示す全体の処理フローのステップ503の詳細をフロー化して示す図である。分析部14は以下の動作で波長を同定する。なお、表示部15のタッチパネルには、図16に示す入力画面が表示され、作業者が、表示された画面を見ながら情報の入力が可能となっている。
【0052】
(ステップ1001)
作業者は、図16に示す入力画面にて、ステップ502で取得したスペクトル波形Aに含まれるガスをガス種欄1601から選択し、それに対応する解析対象欄1602に「〇」を入力する。これにより分析部14に、解析対象欄1602に「〇」が入力されたガスが選択された旨の情報が伝達される。
【0053】
同様に作業者は、被エッチング材料を被エッチング材料欄1603から選択し、それに対応する解析対象欄1604に「〇」を入力する。これにより分析部14に、解析対象欄1604に「〇」が入力された被エッチング材料が選択された旨の情報が伝達される。ただし、被エッチング材料の選択は必ずしも必要ではない。選択後、作業者は「解析結果を表示する」ボタン1605を押すことができる。これにより分析部14に、作業者の入力が完了した旨の情報が伝達される。
【0054】
(ステップ1002)
作業者の入力が完了した旨の情報が分析部14に伝達されると、分析部14は、スペクトル波形データベース21から、ステップ1001で選択したガス種をガス種欄21aに、ステップ1001で選択した被エッチング材料を被エッチング材料欄21bに含む、全ての登録された波長毎の発光強度欄21dからデータを抽出し、スペクトル合成演算部22へ送信する。
【0055】
(ステップ1003)
次に、分析部14は、スペクトル合成演算部22で、ステップ1002で抽出したスペクトル波形に、それぞれ元素または分子に対応して重み係数をかけて合成してスペクトル波形B(第二のスペクトル波形ともいう)を作成する。例えば、スペクトル波形Bは、以下の数1式で計算される。ここで、Bは合成されたスペクトル波形、nは合成するスペクトル波形の個数、Bはj番目のスペクトル波形、wはj番目のスペクトル波形にかける重み係数を表す。また、ここでは重み係数wはスペクトル波形全体で同じ値とした場合の式を示しているが、波長毎に異なる値としてもよい。
【0056】
【数1】
【0057】
(ステップ1004)
さらに、分析部14は、一致度演算部24で、ステップ502で取得したスペクトル波形Aと、ステップ1003で作成したスペクトル波形Bとを比較し、一致度を演算する。例えば、一致度は、以下のような数2式で計算する。ここで、Mは一致度の値、mはスペクトル波形の波長の個数、A及びBはスペクトル波形Aおよびスペクトル波形Bのk番目の波長の発光強度を表す。Mの値が小さいほど、スペクトル波形Aとスペクトル波形Bとが一致していることがわかる。
【0058】
【数2】
【0059】
(ステップ1005)
ステップ1004で演算した一致度の値Mが閾値以上である場合は、スペクトル波形Aとスペクトル波形Bとが十分に一致していないことを示すため、ステップ1006へ移行して、分析部14はスペクトル波形Bの処理を行う。
【0060】
(ステップ1006)
分析部14は、スペクトル合成演算部22で、スペクトル波形Bを構成する各スペクトル波形の重み係数を変更し、新たなスペクトル波形Bを作成する。ここで、重み係数は一致度の値Mが小さくなるように、例えば勾配法等を用いて変更する。
【0061】
その後、ステップ1004へ移行して、分析部14は、新たなスペクトル波形Bを用いて、一致度の値Mを再計算し、続くステップ1005にて一致度の値Mと閾値とを比較する。再計算した一致度の値Mが閾値以上である場合、ステップ1006へ移行して、分析部14は、新たなスペクトル波形Bを計算するとともに、ステップ1004,1005で同様な処理を行う。一方、ステップ1005にて一致度の値Mが閾値より小さい場合、フローはステップ1007へと移行する。
【0062】
(ステップ1007)
分析部14は、波長同定演算部26で、エレメント波長データベース25から、スペクトル波形Bを構成する波形のエレメント欄21cのデータを含む登録されたピーク波長を取得し、ピーク波長と、その近傍の波長の発光強度をスペクトル波形データベース21の波長毎の発光強度欄21dからデータを取得する。取得後、分析部14は、ピーク波長の発光強度と波形の重み係数を用いて寄与度を計算し、エレメント名とピーク波長と寄与度を出力して表示部15に送信する。エレメント名とピーク波長と寄与度は、分析対象となるプラズマ処理において使用されたガス種及び被エッチング材料に関する情報であり、エレメント名と寄与度がピーク波長ごとに表示部15にて表示される。かかる情報により、分析対象となるプラズマ処理において使用されたガス種や被エッチング材料のエレメント名を特定することができる。
【0063】
例えば、図17の表示例において、ピーク波長が294.9nmであるピーク波形では、Nの寄与度は95%であり、COの寄与度は5%である。また、ピーク波長が750.7nmであるピーク波形では、Arの寄与度は80%であり、Nの寄与度は20%である。さらに、ピーク波長が811.0nmであるピーク波形では、Arの寄与度は100%である。つまり、解析対象のプラズマ処理が行われた処理室内には、入力したガス種以外に、CO及びNが含まれていることがわかる。
【0064】
例えば、寄与度は以下のような数3式で計算される。ここで、Cは寄与度、wは重み係数、pはピーク波長近傍の波長の個数、Wはl番目の波長、Iはl番目の波長の発光強度を表す。
【0065】
【数3】
【0066】
なお、寄与度の計算とともに、数2式に示す一致度の値Mの計算をピーク波形(ピーク波長とその近傍の波長)ごとに行い、一致度の値Mの低いピーク波形を同定結果から除外することにより、同定の精度を向上させてもよい。
【0067】
図14は、解析対象のスペクトル波形とデータベースのスペクトル波形を合成したスペクトル波形とのフィッティング結果の一例を示す図である。図中の実線は、Ar+N+COの混合ガスのスペクトル波形であり、図中の破線は、図11に示すArのスペクトル波形と、図12に示すNのスペクトル波形と、図13に示すCOのスペクトル波形にそれぞれ重み係数をかけて合成した波形である。
【0068】
図11図12図13のスペクトル波形は、それぞれ図14の実線で表すスペクトルの特徴を有しており、図14の実線と破線は、比較的良くフィッティングされているといえる。
【0069】
ただし、図14の実線と破線において、380nmから390nm付近に一致しないピークが存在する。これはCNのピークであり、NとCOを混合したプラズマでは生成される物質だが、NのみのプラズマやCOのみのプラズマでは生成されない物質である。そのため、単独ガスのみで作成したスペクトル波形データベース21には、CNのピークを持つ波形は存在しない。そこで、同定精度向上を目的として、一致しないピークを取り出して、新たにCNの波形としてスペクトル波形データベース21に登録してもよい。
【0070】
図15は、図14の破線で表すスペクトルをClとCFのスペクトル波形を合成したスペクトル波形とした場合のフィッティング結果を示す図である。図15の実線は、図14と同様にAr+N+COの混合ガスのスペクトル波形であるため、本来はガス種としてAr、N、COを選択すべきであるが、代わりにCl、CFを選択した場合の例である。この場合、重みを調整してもスペクトル波形はフィッティングされないため、本実施形態を利用することで誤った波長同定を抑制することができる。
【0071】
[実施形態2]
本実施形態は、作業者がエレメントを選択する代わりに、図18に示すように、分析部14にエレメント選択部1801を設けて自動的にエレメントを選択するものである。したがって、本実施形態では図16の入力画面は不要となる。
【0072】
エレメント選択部1801は、一致度演算部24の演算結果を参照し、結果が良くなるようエレメントを選択することができる。例えばエレメント選択部1801にディープラーニング機能を持たせることで、全データを処理せずとも、最適なエレメントを選択することが可能になる。
【0073】
図19は、本実施形態における分析部14の処理フローを示す図である。図10の処理フローと異なるステップのみ、以下に示す。
【0074】
(ステップ1001)
ステップ502で取得したスペクトル波形Aに含まれるガス種及び被エッチング材料をエレメント選択部1801が選択する。
【0075】
(ステップ1901)
ステップ1004で計算した一致度の変化量が所定値以下の場合、ステップ1001に移行し、分析部14はエレメントを再度選択し直す。その後、一致度の変化量が所定値を超えるまで、分析部14は同様な処理を行う。
【0076】
このように、本実施形態の分析部14によれば、エレメントの選択を自動的に行うことで作業者の作業負担を低減し、エレメント選択間違い等の人為的ミスを防ぐことができるため、波長同定の精度を向上させることができる。
【0077】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0078】
また、説明した実施形態の応用例として、半導体製造装置を含むラインを運用管理するアプリケーションをプラットフォーム上で実行する半導体装置製造システムが考えられる。この場合、少なくとも分析部14の分析処理機能をプラットフォーム上のアプリケーションとして処理を実行させることにより、上記半導体装置製造システムにおいて本実施形態を適用することが可能になる。
【0079】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えばプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0080】
1…プラズマ処理装置
2…処理室
3…マスフローコントローラ
4…プラズマ生成用高周波電源
5…排気装置
6…ウェハ
7…試料台
8…プラズマ
9…バイアス用高周波電源
10…圧力計
11…可変コンダクタンスバルブ
12…観察窓
13…分光器
14…分析部
15…表示部
21…スペクトル波形データベース
22…スペクトル合成演算部
23…スペクトル保存部
24…一致度演算部
25…エレメント波長データベース(元素または分子波長データベース)
26…波長同定演算部
1601…ガス種欄
1602…解析対象欄
1603…被エッチング材料欄
1604…解析対象欄
1605…ボタン
1801…エレメント選択部(元素または分子選択部)
【要約】
ピークの形状の特徴から適切な元素を割り当てることができ、高精度な波長同定を行うことができるプラズマ処理装置、データ解析装置及び半導体装置製造システムを提供する。
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記試料が載置される試料台とを備えるプラズマ処理装置は、モニタされたプラズマの発光のスペクトル波形である第一のスペクトル波形と第二のスペクトル波形を比較して求められた、前記第一のスペクトル波形と前記第二のスペクトル波形の一致度を基に前記モニタされたプラズマの中の元素または分子が特定される分析部をさらに備え、前記第二のスペクトル波形は、前記元素または前記分子に対応し重み係数が乗じられたスペクトル波形である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19