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特許7288607精製されたセメント原料の製造方法、及び、精製されたセメント原料の製造装置
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  • 特許-精製されたセメント原料の製造方法、及び、精製されたセメント原料の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】精製されたセメント原料の製造方法、及び、精製されたセメント原料の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/38 20060101AFI20230601BHJP
   C04B 7/60 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
C04B7/38
C04B7/60
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019175589
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021050123
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】門野 壮
(72)【発明者】
【氏名】新杉 匡史
(72)【発明者】
【氏名】岡田 豊
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158324(JP,A)
【文献】特開2019-108251(JP,A)
【文献】特開2020-157230(JP,A)
【文献】特開2018-118888(JP,A)
【文献】特開2018-118229(JP,A)
【文献】特開2013-134085(JP,A)
【文献】特開平10-273349(JP,A)
【文献】特開平10-216670(JP,A)
【文献】特開2013-013843(JP,A)
【文献】特開昭49-102717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属成分含有セメント原料と、塩化アンモニウムである塩化物とを混合することにより、混合物を得る混合工程と、
前記混合物を200℃以上1200℃未満で加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された前記混合物を水で洗浄することにより、精製されたセメント原料を得る洗浄工程とを備え、
前記アルカリ金属成分含有セメント原料が、建設発生土、一般廃棄物の焼却灰、及び、セメントキルンから排出された排ガス中のダストから選択される少なくとも1つである、
精製されたセメント原料の製造方法。
【請求項2】
前記混合工程では、前記アルカリ金属成分含有セメント原料100質量部に対して、前記塩化物を10質量部以下の割合で含む、前記混合物を調製する、請求項1に記載の精製されたセメント原料の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程では、前記アルカリ金属成分含有セメント原料と、前記塩化物を含む廃棄物とを混合することにより、前記混合物を得る、請求項1又は2に記載の精製されたセメント原料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製されたセメント原料の製造方法、及び、精製されたセメント原料の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルカリ金属成分含有廃棄物をセメント原料として用いるために、アルカリ金属成分含有廃棄物を、塩素成分含有廃棄物と共に焼成炉で焼成することにより、前記アルカリ金属成分含有廃棄物に含まれるアルカリ金属を塩化物として揮発させて、アルカリ金属成分含有廃棄物に含まれるアルカリ金属の濃度を低減させることが実施されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-013843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、アルカリ金属成分含有廃棄物におけるアルカリ金属の濃度を低減する方法として、特許文献1の方法とは別のさらなる方法が求められ得る。
しかし、特許文献1の方法とは別のさらなる方法は、これまで十分には検討がなされていない。
また、廃棄物以外のアルカリ金属成分含有セメント原料についても、アルカリ金属の濃度を低減する方法が求められ得る。
【0005】
そこで、本発明は、セメント原料におけるアルカリ金属の濃度を低減させて精製されたセメント原料を製造し得る、精製されたセメント原料の製造方法、及び、精製されたセメント原料の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る精製されたセメント原料の製造方法は、アルカリ金属成分含有セメント原料と、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び、塩化アンモニウムからなる群より選ばれた1種以上の塩化物とを混合することにより、混合物を得る混合工程と、
前記混合物を200℃以上1200℃未満で加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された前記混合物を水で洗浄することにより、精製されたセメント原料を得る洗浄工程とを備える。
【0007】
ここで、本発明に係る精製されたセメント原料の製造方法の一態様は、前記混合工程では、前記アルカリ金属成分含有セメント原料100質量部に対して、前記塩化物を10質量部以下の割合で含む、前記混合物を調製する。
【0008】
また、本発明に係る精製されたセメント原料の製造方法の他態様は、前記混合工程では、前記アルカリ金属成分含有セメント原料と、前記塩化物を含む廃棄物とを混合することにより、前記混合物を得る。
【0009】
また、本発明に係る精製されたセメント原料の製造装置は、アルカリ金属成分含有セメント原料と、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び、塩化アンモニウムからなる群より選ばれた1種以上の塩化物とを混合することにより、混合物を得る混合部と、
前記混合物を200℃以上1200℃未満で加熱する加熱部と、
前記加熱部で加熱された前記混合物を水で洗浄することにより、精製されたセメント原料を得る洗浄部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セメント原料におけるアルカリ金属の濃度を低減させて精製されたセメント原料を製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る精製されたセメント原料の製造装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態に係る精製されたセメント原料の製造装置1は、アルカリ金属成分含有セメント原料Aと、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び、塩化アンモニウムからなる群より選ばれた1種以上の塩化物とを混合することにより、混合物を得る第1混合部2と、前記混合物を200℃以上1200℃未満で加熱する加熱部3と、前記加熱部3で加熱された前記混合物を水Cで洗浄することにより、精製されたセメント原料Dを得る洗浄部4とを備える。
【0014】
アルカリ金属成分含有セメント原料には、水に溶解し難いアルカリ金属成分が含まれていることがある。
本実施形態に係る精製されたセメント原料の製造装置1によれば、前記アルカリ金属成分含有セメント原料と前記塩化物との前記混合物を加熱することにより、水に溶解し難いアルカリ金属成分をアルカリ金属塩化物(水に溶解しやすいアルカリ金属成分)にすることができる。
そして、本実施形態に係る精製されたセメント原料の製造装置1によれば、加熱された前記混合物を水で洗浄することにより、精製されたセメント原料、すなわち、アルカリ金属の濃度が低減されたセメント原料を得ることができる。
【0015】
前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aとしては、廃棄物、セメントキルンから排出された排ガス中のダスト等が挙げられる。
前記廃棄物としては、建設発生土、一般廃棄物の焼却灰(焼却主灰等)等が挙げられる。
前記ダストとしては、EPダスト(電気集塵ダスト)、PHBダスト(プレヒーターボイラダスト)、STABダスト(スタビライザー回収ダスト)等が挙げられる。
前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aは、アルカリ金属成分をアルカリ金属の酸化物換算で、通常0.2~30質量%、より具体的には0.3~25質量%含有する。
また、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aは、ナトリウム成分を酸化ナトリウム(NaO)換算で、通常0.1~5.0質量%、より具体的には0.1~3.0質量%含有する。
さらに、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aは、カリウム成分を酸化カリウム(KO)換算で、通常0.1~25質量%、より具体的には0.2~22質量%含有する。
前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aに含まれる、水に溶解し難いアルカリ金属成分としては、アルカリ長石(正長石、微斜長石など)、斜長石(曹長石、灰長石など)、準長石などが挙げられる。
【0016】
前記塩化物は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び、塩化アンモニウムからなる群より選ばれた1種以上の塩化物である。
前記混合工程では、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aと塩化カルシウムの水和物とを混合することにより、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aと塩化カルシウムとを混合してもよい。
前記塩化カルシウムの水和物としては、塩化カルシウムの一水和物(CaCl・HO)、塩化カルシウムの二水和物(CaCl・2HO)、塩化カルシウムの四水和物(CaCl・4HO)、塩化カルシウムの六水和物(CaCl・6HO)などが挙げられる。
また、前記混合工程では、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aと塩化カルシウムの無水和物とを混合することにより、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aと塩化カルシウムとを混合してもよい。
【0017】
前記第1混合部2は、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aと、前記塩化物を含む廃棄物Bとを混合することにより、前記混合物を得る混合部であることが好ましい。
前記第1混合部2は、前記塩化物を含む廃棄物Bを用いることにより、前記廃棄物Bに含まれる前記塩化物を有効利用することができる。
前記廃棄物Bは、アルカリ金属成分を含まず、或いは、アルカリ金属成分を含んでいるが前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aよりもアルカリ金属成分の含有量がアルカリ金属換算で少ない廃棄物である。また、前記廃棄物Bは、水に溶解し難いアルカリ金属成分を含まず、或いは、水に溶解し難いアルカリ金属成分を含んでいるが水に溶解し難いアルカリ金属成分の含有量がアルカリ金属換算で前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aよりも少ない廃棄物である。
前記廃棄物Bとしては、一般廃棄物の焼却飛灰、溶融飛灰、除湿剤の廃棄物(使用済みの除湿剤等)等が挙げられる。
なお、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aは、前記塩化物を含まず、或いは、前記塩化物を含んでいるが前記廃棄物Bよりも前記塩化物の含有量が少ないアルカリ金属成分含有セメント原料である。
【0018】
また、セメント原料における塩素の含有量を少なくするという観点から、前記第1混合部2は、前記アルカリ金属成分含有セメント原料A100質量部に対して、前記塩化物を、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下の割合で含む、前記混合物を調製する混合部である。
また、セメント原料におけるアルカリ金属の濃度をより一層低減するという観点から、前記第1混合部2は、前記アルカリ金属成分含有セメント原料A100質量部に対して、前記塩化物を、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上の割合で含む、前記混合物を調製する混合部である。
なお、前記混合工程において、塩化物の水和物を用いる場合には、前記塩化物の量は、塩化物の水和物に含まれる水(HO)は除外された量を意味する。
【0019】
本実施形態に係る精製されたセメント原料の製造装置1は、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aに含まれるアルカリ金属成分の濃度を測定する測定部5を備えてもよい。
また、前記第1混合部2は、該測定部5での測定値に基づいて、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aと前記塩化物との配合割合を決定する混合部であってもよい。
本実施形態に係る精製されたセメント原料の製造装置1は、前記測定部5を備え、前記第1混合部2は、該測定部5での測定値に基づいて、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aと前記塩化物との配合割合を決定する混合部であることにより、セメント原料における塩素の含有量を少なくしつつ、セメント原料におけるアルカリ金属の濃度をより一層低減し得るという利点を有する。
【0020】
前記加熱部3は、前記混合物を200℃以上1200℃未満で加熱する加熱部である。
前記加熱部3は、前記混合物を200℃以上で加熱することにより、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aに含まれるアルカリ金属成分と、前記塩化物とが反応しやすくなり、その結果、セメント原料におけるアルカリ金属の濃度を低減し得る。
前記加熱部3は、前記混合物を、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上、さらに好ましくは500℃以上、特に好ましくは600℃以上で加熱する加熱部である。
また、前記加熱部3は、前記混合物を1200℃未満で加熱することにより、前記アルカリ金属成分含有セメント原料Aに含まれるアルカリ金属成分と、前記塩化物とを熱効率良く反応させることができる。
前記加熱部3は、前記混合物を、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃以下、さらに好ましくは900℃以下、特に好ましくは800℃以下で加熱する加熱部である。
【0021】
また、前記加熱部3は、前記塩化物の融点が200℃を超えている場合には、前記塩化物の融点以上の温度で前記混合物を加熱する加熱部であることが好ましい。
なお、前記加熱部3で融点が異なる塩化物を用いる場合には、「前記塩化物の融点以上の温度」とは、「融点が異なる塩化物のうち融点が低い塩化物の融点以上の温度」を意味する。
前記加熱部3は、前記塩化物の融点以上の温度で前記混合物を加熱することにより、塩化物が溶融した状態でアルカリ金属成分と接することができ、その結果、水に溶解し難いアルカリ金属成分を十分にアルカリ金属塩化物にしやすくなるという利点を有する。
【0022】
また、前記加熱部3は、前記混合物を200℃以上1200℃未満で、好ましくは10~120分間、より好ましくは10~60分間加熱する加熱部である。
【0023】
前記洗浄部4は、前記加熱部3で加熱された前記混合物を水Cで洗浄することにより、精製されたセメント原料Dを得る洗浄部である。
【0024】
また、前記洗浄部4は、前記加熱部3で加熱された前記混合物と水Cとを混合する第2混合部41と、前記第2混合部で水Cと混合された前記混合物を脱水させる脱水部42とを有する。
【0025】
また、前記洗浄部4は、水Cが揮発するのを抑制したり、前記加熱部3で加熱された前記混合物が水Cと反応するのを抑制すべく、前記加熱部3で加熱された前記混合物を十分に冷却してから水Cで洗浄することが好ましい。
前記洗浄部4は、前記加熱部3で加熱された前記混合物が好ましくは50℃以下、より好ましくは10℃~40℃、さらにより好ましくは20℃~30℃となった状態で、前記加熱部3で加熱された前記混合物を水Cで洗浄する。
【0026】
さらに、前記洗浄部4は、前記加熱部3で加熱された前記混合物と水Cとを混合し、水Cと混合された前記混合物を脱水し、脱水された前記混合物を更に水Cと混合し、更に水Cと混合された前記混合物を脱水してもよい。
また、前記加熱部3で加熱された前記混合物に散水することで洗浄してもよい。
【0027】
また、前記洗浄部4は、用いる水の総量に関し、前記加熱部3で加熱された前記混合物の質量の0.5~10倍の質量の水を用いることが好ましく、前記加熱部3で加熱された前記混合物の質量の1~5倍の質量の水を前記混合部の洗浄に用いることがより好ましい。
【0028】
本実施形態に係る精製されたセメント原料の製造装置1は、上記の如く構成されているが、次に、本実施形態に係る精製されたセメント原料の製造方法について説明する。
【0029】
本実施形態に係る精製されたセメント原料の製造方法は、アルカリ金属成分含有セメント原料Aと、塩化物とを混合することにより、混合物を得る混合工程と、前記混合物を200℃以上1200℃未満で加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された前記混合物を水Cで洗浄することにより、精製されたセメント原料Dを得る洗浄工程とを備える。
【0030】
本実施形態に係る精製されたセメント原料の製造方法では、本実施形態に係る精製されたセメント原料の製造装置1を用いて、アルカリ金属成分含有セメント原料Aから精製されたセメント原料Dを得る。
【0031】
前記精製されたセメント原料Dを、単独で、或いは、他のセメント原料とともに、ロータリーキルン等で焼成することで、クリンカーを得ることができる。
また、該クリンカーを粉砕することで、セメントを得ることができる。
さらに、該セメントと骨材と水とを混合することで、セメントモルタルや、コンクリートを得ることができる。
【0032】
セメントにおけるアルカリ金属の濃度は、JIS R 5210:2009で全アルカリとして0.75質量%以下と定められているが、本実施形態の精製されたセメント原料Dを用いれば、アルカリ金属成分含有セメント原料Aを用いても、セメントにおけるアルカリ金属の濃度のJISの基準を満たしやすくなるという利点がある。
さらに、アルカリ金属成分は、水に溶解し難いアルカリ金属成分であっても、骨材と反応すること(アルカリ骨材反応)で、コンクリートやセメントモルタルを膨張させ、その結果、コンクリートやセメントモルタルにひび割れを生じさせてしまうおそれがあるが、本実施形態の精製されたセメント原料Dを用いれば、このような膨張やひび割れを抑制しやすくなるという利点がある。
特に、アルカリ骨材反応を生じやすい骨材(例えば、オパール、クリストバライト、トリジマイト、火山ガラス、カルセドニー(玉髄)、シリケート鉱物(雲母、粘土鉱物等)等を含む骨材)を用いて、コンクリートやセメントモルタルを作製する際に、本実施形態の精製されたセメント原料Dで得られたセメントは、好適に用いられる。
【0033】
なお、本発明に係る精製されたセメント原料の製造方法、及び、精製されたセメント原料の製造装置は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る精製されたセメント原料の製造方法、及び、精製されたセメント原料の製造装置は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る精製されたセメント原料の製造方法、及び、精製されたセメント原料の製造装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例
【0034】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0035】
(試験例1)
アルカリ金属成分含有セメント原料であるEPダストにおけるナトリウム(Na)の濃度及びカリウム(K)の濃度をエネルギー分散型蛍光X線分析装置(ED-XRF)で測定した。
また、EPダストと、塩化カルシウム(CaCl)とを下記表1に示す配合割合で混合して混合物を得た(混合工程)。
次に、該混合物を下記表1に示す温度で15分間加熱した(加熱工程)。
そして、加熱した前記混合物と水とを混合させ、水が混合された前記混合物を脱水させることにより、加熱した前記混合物を水で洗浄し、精製されたセメント原料を得た(洗浄工程)。前記洗浄工程では、加熱した前記混合物の質量の4倍の質量の水を用いた。
次に、精製されたセメント原料を乾燥させ、乾燥されたセメント原料のナトリウム濃度及びカリウム濃度をエネルギー分散型蛍光X線分析装置(ED-XRF)で測定した。
そして、混合工程、加熱工程及び洗浄工程によるセメント原料におけるナトリウム(Na)の濃度の低減率及びカリウム(K)の濃度の低減率を求めた。
なお、ナトリウム(Na)の濃度の低減率が100%であることは、セメント原料のナトリウム(Na)が全て除去されたことを意味し、ナトリウム(Na)の濃度の低減率が0%であることは、セメント原料にナトリウム(Na)が全て残ってしまったことを意味する。
また、混合工程、加熱工程及び水洗工程を経ることによりセメント原料自体の質量変化が生じたが、その質量変化率を用い、洗浄工程後のセメント原料の元素分析結果を元のセメント原料相当に換算し、ナトリウム(Na)の濃度の低減率及びカリウム(K)の濃度の低減率を求めた。
結果を下記表1に示す。
【0036】
(試験例2)
塩化カルシウム(CaCl)と混合せずに800℃で加熱した態様、及び、塩化カルシウム(CaCl)と混合せず加熱もしなかった態様についても、洗浄工程を行い、セメント原料におけるナトリウム(Na)の濃度の低減率及びカリウム(K)の濃度の低減率を求めた。
結果を下記表1に示し、また、下記表2にも示した。
【0037】
(試験例3)
塩化カルシウム(CaCl)の代わりに、塩化アンモニウム(NHCl)を用いた態様についても、セメント原料におけるナトリウム(Na)の濃度の低減率及びカリウム(K)の濃度の低減率を求めた。
結果を下記表2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1、2に示すように、アルカリ金属成分含有セメント原料と、塩化物とを混合し、加熱し、水で洗浄することで、セメント原料におけるナトリウムの濃度、及び、カリウムの濃度が低減された。
したがって、本発明によれば、セメント原料におけるアルカリ金属の濃度を低減させて精製されたセメント原料を製造し得ることがわかる。
【符号の説明】
【0041】
1:精製されたセメント原料の製造装置、2:第1混合部、3:加熱部、4:洗浄部、5:測定部、41:第2混合部、42:脱水部、A:アルカリ金属成分含有セメント原料、B:廃棄物、C:水、D:精製されたセメント原料。
図1