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特許7288896ウェハ保持デバイス及び投影マイクロリソグラフィシステム(projection microlithography system)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-31
(45)【発行日】2023-06-08
(54)【発明の名称】ウェハ保持デバイス及び投影マイクロリソグラフィシステム(projection microlithography system)
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20230601BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 521
G03F7/20 503
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020514268
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 EP2018075173
(87)【国際公開番号】W WO2019057696
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】102017216679.7
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ フライマン
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-135935(JP,A)
【文献】特表2008-533475(JP,A)
【文献】特開2009-009127(JP,A)
【文献】特開2009-124139(JP,A)
【文献】特表2017-504001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明デバイス、投影レンズ、及びウェハ保持デバイスを備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置であって、
前記照明デバイスは、該投影露光装置の動作中にマスク(409)を照明するよう設計され、前記マスクは結像対象構造を含み且つ前記投影レンズの物体平面に配置され、
前記投影レンズは、前記物体平面を像平面に結像するよう設計され、
前記ウェハ保持デバイスは、マイクロリソグラフィ投影露光装置の動作中にウェハ(205、416)を保持するウェハ保持デバイス(200、415)であって、異なる回転位置に位置決め可能な前記投影レンズの歪み又は波面収差を測定する少なくとも1つのセンサを備え、
前記像平面で並進変位可能な回転ステージ(210、220、230、420)が前記ウェハ保持デバイス(200、415)上に配置され、前記少なくとも1つのセンサが前記回転ステージによりビーム経路内の異なる回転位置に配置可能であることを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置において、前記少なくとも1つのセンサは、歪み測定用の少なくとも1つの直線格子(261、311)を含むことを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置において、前記少なくとも1つのセンサは、波面測定用の少なくとも1つの2次元シアリング格子(251)を含むことを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置において、前記少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つのタイコグラフィマスク(271)を含むことを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置において、前記少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つの面測定強度検出器を含むことを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置において、さらに、前記物体平面で並進変位可能な別の回転ステージ(110、120、410)が設けられ、少なくとも1つの測定構造を含む測定マスク(111、121、251、261、271、311、411)が、前記別の回転ステージにより前記マスク(409)の代わりにビーム経路内の異なる回転位置に位置決め可能であることを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項7】
請求項6に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置において、前記別の回転ステージ(410)は、前記マスク(409)を保持するよう設けられたマスク保持デバイス(408)上に配置されることを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項8】
請求項6に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置において、前記別の回転ステージ(110、120)は、前記マスク(409)を保持するよう設けられたマスク保持デバイス(408)とは別個の並進変位可能な保持デバイス(100)上に配置されることを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置において、前記測定マスク(111、411)は、歪み測定用の少なくとも1つの直線格子を含むことを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置において、前記測定マスク(121、411)は、波面測定用の少なくとも1つの2次元シアリング格子を含むことを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか1項に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置において、前記測定マスクは、少なくとも1つのタイコグラフィ用ピンホールを含むことを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のマイクロリソグラフィ投影露光装置において、前記投影レンズはアナモルフィック結像系であることを特徴とするマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年9月20日に出願された独国特許出願第10 2017 216 679.7号の優先権を主張する。この独国出願の内容を参照により本願の本文にも援用する。
【0002】
本発明は、マイクロリソグラフィ投影露光装置の動作中にウェハを保持するウェハ保持デバイス及びマイクロリソグラフィ投影露光装置に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィは、例えば集積回路又はLCD等の微細構造コンポーネントの製造に用いられる。マイクロリソグラフィプロセスは、照明デバイス及び投影レンズを備えたいわゆる投影露光装置で実行される。この場合、照明デバイスにより照明されたマスク(レチクル)の像を、投影レンズにより、感光層(フォトレジスト)で被覆されて投影レンズの像平面に配置された基板(例えばシリコンウェーハ)に投影することで、マスク構造を基板の感光コーティングに転写するようにする。
【0004】
実際には、投影レンズの歪み及び波面収差をできる限り正確に求める必要がある。
【0005】
特に、歪みの測定にはモアレ測定技術が知られており、当該技術は、投影レンズの物体平面に配置された第1格子を投影レンズの像平面に配置された第2格子(「モアレマスク」とも称する)に投影すること、及びこの機構をそれぞれ透過した光強度を(例えばカメラベースの)検出器機構を用いて測定することを含む。ここで、実際には、いわゆるアナモルフィック結像系のモアレ測定も必要とされる。ここで、アナモルフィック結像は、物体の歪んだ像を生み出し且つ相似変換にはならない(すなわち、変位、回転、鏡映、及び拡大縮小の組み合わせにより表現可能でない)結像を意味すると理解される。特殊な場合には、かかるアナモルフィック結像系は、例えば、2つの相互に異なる軸に沿って異なる結像スケールを有する投影レンズであり得る。
【0006】
投影レンズの波面収差は、シアリング干渉法を用いて求めることができる。この場合、2次元シアリング格子の形態であり測定対象の投影レンズの物体平面に配置される測定マスクと、投影レンズの像平面に配置される回折格子とを、測定マスクが回折格子に結像されるとインターフェログラムの形態の重畳パターンが生じるように整合させ、重畳パターンは空間分解検出器を用いて撮像され評価される。
【0007】
投影レンズの歪み及び波面収差を求める場合に実際に生じる問題は、例えばウェハステージの領域に変位可能なセンサ機構を含む既知の測定機構の絶対精度が不十分でしかなく、その結果として例えば、用いられた測定技術の方に製造誤差があれば測定誤差に直接つながることである。特に、上記モアレ測定で得られた測定信号は、テスト構造を含む第1格子及び/又はモアレマスクを形成する第2格子の製造誤差の影響も受けるので、適切な較正が必要となる。
【0008】
この問題を克服するために、いわゆる較正法を実行するという慣例が知られており、この方法では、図6に示すように、測定システム又は第1格子605及び第2格子608からなる格子機構に対する検査対象物の位置決めに関して相互に異なる複数の異なる測定位置で、検査対象物又は投影レンズ606が測定される。原理上、これにより、得られた測定信号又は検出平面で得られた評価結果における測定システムの成分からの検査対象物の各成分の分離が容易になる。しかしながら、ここで上記アナモルフィック結像系の測定時に生じる問題は、較正中に生じる異なる測定位置において、テスト構造の歪んだ結像の結果として(例えば回転により生じる)特定の測定位置でモアレマスクとこれらのテスト構造との間に本来存在した適合又は対応がなくなり、その結果として測定信号の正しい評価が困難又は不可能にさえなり、上記較正法が適用不可能になることである。
【0009】
実際に生じるさらに別の問題は、ドリフト効果、放射関連加熱、及びこれに伴う光学コンポーネント(特にミラー)の変形に起因して、また汚染又は層アブレーションの結果としての既存層の変化にも起因して、投影露光装置の光学結像特性が経時的に変えられ、その結果として投影レンズの上記歪み及び波面収差が投影露光装置の耐用寿命にわたって変わることである。
【0010】
従来技術に関しては、単なる例として、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び特許文献7を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第01/63233号
【文献】米国特許第8,547,522号明細書
【文献】米国特許第6,753,534号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0008734号明細書
【文献】国際公開第2016/169890号
【文献】米国特許第5,640,240号明細書
【文献】米国特許第5,798,947号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記背景に対して、本発明の目的は、上記問題を少なくとも部分的に回避しつつ場合によってはアナモルフィック結像系においても高精度で歪み及び/又は波面収差の測定を容易にする、マイクロリソグラフィ投影露光装置の動作中にウェハを保持するウェハ保持デバイスと、マイクロリソグラフィ投影露光装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、独立特許請求項の特徴によるウェハ保持デバイス及びマイクロリソグラフィ投影露光装置それぞれにより達成される。
【0014】
一態様によれば、本発明は、異なる回転位置に位置決め可能な少なくとも1つのセンサを備えた、マイクロリソグラフィ投影露光装置の動作中にウェハを保持するウェハ保持デバイスに関する。
【0015】
一実施形態によれば、少なくとも1つのセンサは、歪み測定用の少なくとも1つの直線格子(line grating)を含む。
【0016】
一実施形態によれば、少なくとも1つのセンサは、波面測定用の少なくとも1つの2次元シアリング格子を含む。
【0017】
一実施形態によれば、少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つのタイコグラフィマスクを含む。波面に関して低ノイズ化を可能にするために、シアリング格子(ラインパターンを含む)に加えて又はその代わりに、ここで複雑な形状の格子を用いて複雑なインターフェログラムを生成することができる。これに関しては、A. Wojdyla他著、「Ptychographic wavefront sensor for high-NA EUV inspection and exposure tools」 Proc. of SPIE Vol. 9048, 904839 (2014) doi: 10.1117/12.2048386を参照されたい。
【0018】
一実施形態によれば、少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つの面測定(areally measuring)強度検出器を含む。
【0019】
さらに別の態様によれば、本発明は、照明デバイス及び投影レンズを備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置であって、
照明デバイスは、投影露光装置の動作中にマスクを照明するよう設計され、上記マスクは結像対象構造を含み且つ投影レンズの物体平面に配置され、
投影レンズは、この物体平面を像平面に結像するよう設計され、
投影露光装置は、上記特徴を有するウェハ保持デバイスを備える
マイクロリソグラフィ投影露光装置に関する。
【0020】
一実施形態によれば、像平面で並進変位可能な回転ステージがウェハ保持デバイス上に配置され、少なくとも1つのセンサは、上記回転ステージによりビーム経路内の異なる回転位置に配置可能である。
【0021】
本発明はさらに、照明デバイス及び投影レンズを備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置であって、
照明デバイスは、投影露光装置の動作中にマスクを照明するよう設計され、上記マスクは結像対象構造を含み且つ投影レンズの物体平面に配置され、
投影レンズは、この物体平面を像平面に結像するよう設計され、
像平面で並進変位可能な少なくとも1つの回転ステージが設けられ、当該回転ステージによりビーム経路内の異なる回転位置にセンサ群を位置決め可能であり、
像平面で並進変位可能な少なくとも1つの回転ステージは、ウェハを保持するウェハ保持デバイス上に配置される
マイクロリソグラフィ投影露光装置に関する。
【0022】
本発明による回転ステージがウェハ保持デバイスに直接取り付けられることには、波面及び/又は歪み測定を比較的迅速又は頻繁に実行できるという利点がある。
【0023】
特に、本発明は、並進変位を容易にする「変位ステージ」及び(回転を容易にする)回転ステージのカスケード(直列接続又はリンクの意味で)を投影露光装置で実現するという概念を含む。この場合、特定のシステム測定技術(特に波面又は歪み測定)に適した各構造ベース測定マスクを、実際の(リソグラフィ)マスクの代わりにビーム経路に配置することができる。同時に、適当な検出器及び評価ユニットを(例えば、歪み測定用のモアレ格子又は波面測定用の2次元シアリング格子を例えばCCDカメラの形態の検出器と共に)ウェハの代わりに像平面に配置することができる。ここで、入射光が測定マスクにより目標通りに構造化され、この構造が検出器に結像され、結像された構造がそれに応じて観察される。
【0024】
本発明による投影露光装置の構成は、実際には投影露光装置の光学結像特性が、ドリフト効果、放射関連加熱、及びこれに伴う光学コンポーネント(特にミラー)の変形、並びに汚染又は層アブレーションによる既存の層の変化に起因して、経時的に変動しやすいことを考慮に入れることができる。得られる波面収差及び該当する場合は歪み効果を考慮に入れるために、各波面及び/又は歪み測定を投影露光装置の寿命にわたって繰り返し行うことができる。
【0025】
本発明による設計で実現可能な回転により、特に、波面測定中の測定システムの非回転対称誤差の較正がさらに容易になる。この場合、本発明は、波面の付加的な方向依存性の非回転対称項又はモードの高精度測定を可能にする。これにより、方向依存性の波面誤差を補正するための変位に加えて、使用測定マスク及び/又は使用センサ機構の回転を含む較正法が容易になる。
【0026】
さらに、本発明による回転により、アナモルフィック結像系を有する投影露光装置でも測定システムの正しく且つ可能性のある(correct and possible)製造誤差を考慮に入れる較正法の実用化が容易になり、これについては以下でより詳細に説明する。
【0027】
一実施形態によれば、さらに、物体平面で並進変位可能な別の回転ステージが設けられ、少なくとも1つの測定構造を含む測定マスクが、上記別の回転ステージによりマスクの代わりにビーム経路内の異なる回転位置に位置決め可能である。
【0028】
一実施形態によれば、上記別の回転ステージは、マスク保持用に設けられたマスク保持デバイス上に配置される。この別の回転ステージがマスク保持デバイスに直接取り付けられることには、波面及び/又は歪み測定を比較的迅速又は頻繁に実行できるという利点がある。
【0029】
一実施形態によれば、上記別の回転ステージは、マスク保持用に設けられたマスク保持デバイスとは別個の並進変位可能な保持デバイスに配置される。この構成には、波面又は歪み測定で比較的高い精度を得ることができるという利点がある。
【0030】
一実施形態によれば、測定マスクは、歪み測定用の少なくとも1つの直線格子を含む。
【0031】
一実施形態によれば、測定マスクは、波面測定用の少なくとも1つの2次元シアリング格子を含む。
【0032】
一実施形態によれば、測定マスクは、少なくとも1つのタイコグラフィ用ピンホールを含む。
【0033】
一実施形態によれば、投影レンズはアナモルフィック結像系である。
【0034】
本発明のさらに他の構成は、説明及び従属請求項から得ることができる。
【0035】
添付図面に示す例示的な実施形態に基づいて本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
図2】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
図3】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
図4】本発明の一実施形態を説明する概略図を示す。
図5】本発明の例示的な用途としての、検査対象物のモアレ測定用の装置における較正法の実施を説明する概略図を示す。
図6】本発明の例示的な用途としての、検査対象物のモアレ測定用の装置における較正法の実施を説明する概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図4aは、本発明によるマイクロリソグラフィ投影露光装置の可能な設計を単に概略図で示す。EUV用に設計された投影露光装置400は、照明デバイス及び投影レンズを備える。照明デバイスは、視野ファセットミラー402及び瞳ファセットミラー403を含む。プラズマ光源及びコレクタミラーを含む光源ユニット401からの光は、視野ファセットミラー402へ向けられる。第1望遠鏡ミラー404及び第2望遠鏡ミラー405が、瞳ファセットミラー403の下流の光路に配置される。偏向ミラー406が光路の下流に配置され、上記偏向ミラーは、入射した放射線を6つのミラー431~436を含む投影レンズの物体平面の物体視野へ偏向させる。反射構造担持マスク409が、物体視野の場所にあるマスクステージ又はマスク保持デバイス408上に配置され、マスク409は、投影レンズを用いて像平面に結像され、当該像平面にあるウェハステージ又はウェハ保持デバイス415には、感光層(フォトレジスト)で被覆された基板416が位置付けられる。
【0038】
図4aによれば、投影露光装置400は、物体平面で並進変位可能な第1回転ステージ410を備える。実際の(リソグラフィ)マスク409の代わりに、この第1回転ステージ410により測定マスク411をビーム経路内の異なる回転位置に位置決め可能である。
【0039】
図4bに概略的に示すように、例示的な実施形態の測定マスク411は、相互に異なり且つ異なる目的を果たす構造を含む。ここで、「411a」と記した構造は(視野点分解(field point resolved))波面測定用であり、「411b」と記した構造は歪み測定用である。測定マスク411の交換を回避するために上記測定構造を収容することが有利だが、本発明はこれに制限されない。したがって、さらに他の実施形態では、それぞれが1つの測定構造のみを有する、又はそれぞれ波面測定用若しくは歪み測定用の複数の測定構造を有する、1つ又は複数の測定マスクを利用することもできる。
【0040】
さらに、図4aに示す投影露光装置は、投影レンズの像平面で並進変位可能な回転ステージ420を備え、この回転ステージによりウェハの代わりにセンサ群をビーム経路内の異なる回転位置に位置決め可能である。図4cの概略図によれば、このセンサ群は、波面測定用のセンサ(群421a)及び歪み測定用のセンサ(群421b)の両方を含む。
【0041】
図4a~図4cの例示的な実施形態では、第1回転ステージ410は、マスク409を保持するよう設けられたマスクステージ又はマスク保持デバイス408上に配置され、第2回転ステージ420は、ウェハ416を保持するよう設けられたウェハステージ又はウェハ保持デバイス415上に配置される。本開示のさらに他の実施形態では、第1回転ステージ410及び第2回転ステージ420を、それぞれがマスク保持デバイス408及びウェハ保持デバイス415とは別個の並進変位可能な保持デバイス上に配置することもできる。
【0042】
図1は、本発明による一実施形態をさらに別の概略図で示すものであり、この場合は回転ステージ110、120がマスク保持デバイスとは別個の(矢印方向に)並進変位可能な保持デバイス100に設けられており、そのうち一方の回転ステージ110は歪み測定用の直線格子を有する測定マスク111を含み、他方の回転ステージ120は波面測定用の2次元シアリング格子を有する測定マスク121を含む。
【0043】
図2a、2bは、本発明によればウェハの代わりに像平面に位置決め可能なセンサ群の可能な実施形態のさらに他の概略図を示す。
【0044】
図2aによれば、回転ステージ210、220、及び230がウェハ205を保持するよう設けられたウェハ保持デバイス200に位置付けられ、回転ステージ210~230のそれぞれに、歪み又は波面測定に適したセンサ群を設けることができる。図2bは、ウェハ保持デバイスとは別個であり回転ステージ250、260、270が配置された並進変位可能な保持デバイス240を有する可能な実施形態を示し、波面測定用の2次元シアリング格子251が回転ステージ250に設けられ、歪み測定用の直線格子が回転ステージ260に設けられ、タイコグラフィマスク271が回転ステージ270に設けられる。
【0045】
図3は、図示の両矢印に従って像平面で2つの相互に直交する方向に並進変位可能な保持デバイス300のさらに別の図を単に概略的に示し、回転ステージ310がこの保持デバイス300上に配置され、歪み測定用の直線格子311が上記回転ステージに設けられる。
【0046】
検査対象物のモアレ測定用の装置の設計と較正法の実施とを、本発明の例示的な用途として図5を参照して以下で説明する。
【0047】
図5によれば、光学検査対象物512又は投影レンズのモアレ測定用の装置が格子機構を備え、格子機構は、検査対象物512の上流の光ビーム経路に位置決め可能であり且つ結像対象テスト構造を含む第1格子511と、検査対象物512の下流の光ビーム経路に位置決め可能な第2格子514と、少なくとも1つの検出器515を含む評価ユニットとからなり、評価ユニットは、光ビーム経路の第2格子514の下流に位置する検出面で2つの格子の重畳により生成されたモアレ構造を評価する。第1格子511に含まれるテスト構造の生成像を「513」で示す。概して、一方ではテスト構造像513の平面と他方では第2格子514又はモアレマスクの平面とは一致するが、単に説明の便宜のために空間的に分離して図示されている。さらに、検出器515も、テスト構造像513が生成される像平面の光ビーム経路下流のできる限り近くに続くべきである。
【0048】
このとき、第1格子511及び第2格子514(すなわちモアレマスク)からなる格子機構は、いずれの場合も測定対象のアナモルフィック検査対象物又は投影レンズと組み合わせて、図6に基づいて最初に記載した較正法が容易になるように、すなわちここで得られる信号の正しいモアレ測定又は評価が、一方では上記格子機構を含む測定機構と他方では検査対象物512との間の複数の回転及び/又は変位位置で可能であるように設計され得る。いずれの場合も、検出面において、格子機構及び検査対象物512の相対位置に関して異なる少なくとも2つの(較正目的で選択可能な)測定位置について、格子機構を透過した光強度が検査対象物512による無収差結像の場合に最大であり検査対象物512の結像収差がある場合に低下するような評価結果が得られるように、第1格子511及び第2格子514が相互に整合されることによりこれが達成され得る。この目的で、第1格子511及び第2格子514の各格子周期は、第2格子514の格子周期が2つの異なる測定位置で結像系により生成された第1格子511のテスト構造の2つのテスト構造像の各周期の公倍数又は公約数に対応するように選択される。この目的で、一方では上記格子機構を含む測定機構と他方では検査対象物との間で異なる回転及び/又は変位位置を設定することができ、これは、本発明による投影露光装置において上記並進変位可能な回転ステージを用いて実施することができる。
【0049】
ここで、最初に記載した較正法は、検査対象物によるアナモルフィック結像の場合でも、その過程で得られた信号のモアレ測定又は評価が一方では上記格子機構を含む測定機構と他方では検査対象物との間の複数の回転及び/又は変位位置で実行されることにより容易になる。
【0050】
本発明を特定の実施形態に関して記載したが、例えば個々の実施形態の特徴の組み合わせ及び/又は交換により、多くの変形形態及び代替的な実施形態が当業者には明らかであろう。したがって、言うまでもなく、こうした変形形態及び代替的な実施形態も本発明に包含され、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の意味の範囲内にのみ制限される。
図1
図2a)】
図2b)】
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6