(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】基板支持装置および成膜装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20230605BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20230605BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20230605BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230605BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230605BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C14/04 A
C23C14/50 F
H05B33/10
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2020081874
(22)【出願日】2020-05-07
(62)【分割の表示】P 2018200151の分割
【原出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】10-2017-0161794
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593075418
【氏名又は名称】株式会社アオイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 一史
(72)【発明者】
【氏名】細谷 映之
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-120740(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0061230(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0130576(KR,A)
【文献】特開2017-155338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/683
C23C 14/50
C23C 14/04
H05B 33/10
H10K 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部を支持するための複数の支持部を含む基板保持ユニットと、
前記複数の支持部の上方に設けられ、前記基板を吸着するための静電チャックと、を備え、
前記複数の支持部は、前記基板の第1の辺を支持する第1支持部材及び第2支持部材を含み、
前記基板を支持した状態で、前記第1支持部材の基板支持面と前記静電チャックとの間の距離が、前記第2支持部材の基板支持面と前記静電チャックとの間の距離と異な
り、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は、それぞれ、弾性部材を含んで構成され、
前記第1支持部材の弾性部材の弾性係数が、前記第2支持部材の弾性部材の弾性係数と異なる
ことを特徴とする基板支持装置。
【請求項2】
前記基板保持ユニットを、前記基板の水平面に沿った第1方向、
前記基板の水平面に沿い、かつ前記第1方向とは交差する第2方向、並びに、前記水平面に垂直な第3方向に駆動する駆動手段を備える
ことを特徴とする請求項1
に記載の基板支持装置。
【請求項3】
前記第1支持部材の基板支持面の高さと、前記第2支持部材の基板支持面の高さとの差は、0.1mm以上であり、かつ、1.0mm以下である
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の基板支持装置。
【請求項4】
前記複数の支持部は、前記基板の第1の辺に対向する第2の辺を支持する第3支持部材及び第4支持部材を含む
ことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の基板支持装置。
【請求項5】
前記静電チャックは、マトリクスと、前記マトリクスの内部に埋め込まれた複数の電極モジュールと、を含む
ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の基板支持装置。
【請求項6】
前記基板支持面にはフッ素コーティングがなされている
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の基板支持装置。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の基板支持装置と、
前記基板にマスクを介して成膜を行う成膜源と、を備える
ことを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板支持装置および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、フラットパネル表示装置として有機EL表示装置が脚光を浴びている。有機EL表示装置は自発光ディスプレイであり、応答速度、視野角、薄型化などの特性が液晶パネルディスプレイより優れており、モニタ、テレビ、スマートフォンに代表される各種携帯端末などで既存の液晶パネルディスプレイを早いスピードで代替している。また、自動車用ディスプレイ等にも、その応用分野を広げている。
【0003】
有機EL表示装置の素子は、2つの向かい合う電極(カソード電極、アノード電極)の間に発光を起こす有機物層が形成された基本構造を持つ。有機EL表示装置の素子の有機物層及び電極層は、成膜装置の真空チャンバーの下部に設けられた蒸着源を加熱することで蒸発された蒸着材料を画素パターンが形成されたマスクを介して真空チャンバー上部に置かれた基板(の下面)に蒸着させることで形成される。
【0004】
このような上向蒸着方式の成膜装置の真空チャンバー内において、基板は基板ホルダによって保持されるが、基板(の下面)に形成された有機物層/電極層に損傷を与えないように基板の下面の周縁を基板ホルダの支持部によって支持する。この場合、基板のサイズが大きくなるにつれて、基板ホルダの支持部によって支持されない基板の中央部が基板の自重によって撓み、蒸着精度を落とす要因となっている。
【0005】
基板の自重による撓みを低減するための方法として静電チャックを使う技術が検討されている。すなわち、基板の上部に静電チャックを設け、基板ホルダの支持部によって支持された基板の上面を静電チャックで吸着させることで、基板の中央部が静電チャックの静電引力によって引っ張られるようになり、基板の撓みを低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の基板ホルダの支持部を構成する支持部材は、その基板支持面が同じ高さになるように設けられ、このような支持部上に置かれた基板は自重によって基板の中央部が撓むので、基板ホルダの支持部によって支持された基板は基板の周縁部が基板の中央部より静電チャックに近い状態で支持される。この状態で、平板形状の静電チャックを基板に向けて下降させれば、基板ホルダの支持部によって支持された基板の周縁部がほぼ同時に静電チャックから静電引力を受けて静電チャックに吸着され、基板の中央部は一番遅く静電引力を受けるようになる。
【0007】
すなわち、基板の静電チャックへの吸着が基板の周縁部から基板の中央部に向かって進むので、静電チャックと基板が充分に近くなっても基板が平らに静電チャックに吸着されるのではなく基板の中央部に基板と静電チャックとの隙間が残ってしまう。すなわち、従来の成膜装置においては、静電チャックを使っても基板の中央部と静電チャックとの隙間が依然として残り、基板を充分に平らに保持することができない問題がある。また、基板の下面の周縁部が基板ホルダの支持部によって一番強い支持力で支持されるので、すなわち、静電引力が一番強く作用するので、一番遅く静電チャックの静電引力を受けるようになる基板の中央部の撓みを基板の周縁部に向かって充分に伸ばすことができず、しわが残るようになる。
【0008】
本発明は、基板を静電チャックにより平らな形状で吸着できる成膜装置及びこのような成膜装置を用いて電子デバイスを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による基板支持装置は、基板の周縁部を支持するための複数の支持部を含む基板保持ユニットと、前記複数の支持部の上方に設けられ、前記基板を吸着するための静電チャックと、を備え、前記複数の支持部は、前記基板の第1の辺を支持する第1支持部材及び第2支持部材を含み、前記基板を支持した状態で、前記第1支持部材の基板支持面と前記静電チャックとの間の距離が、前記第2支持部材の基板支持面と前記静電チャックとの間の距離と異なり、前記第1支持部材及び前記第2支持部材は、それぞれ、弾性部材を含んで構成され、前記第1支持部材の弾性部材の弾性係数が、前記第2支持部材の弾性部材の弾性係数と異なる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板の下面の周縁部を支持するための基板保持ユニットの支持部材が互い異なる高さの基板支持面を持つように設置されることで、基板保持ユニットの支持部材によって支持された基板が静電チャックに吸着される時、基板の対向する二辺が同時に静電チャックに吸着されるのではなく、基板の対向する二辺の中で基板支持面の高い支持部材によって支持される辺側が静電チャックに先に吸着された後、他の辺側に向かって基板が順次に静電チャックに吸着される。これによって、基板の中央部の撓みを基板の周縁部の他の辺側に向かって伸ばすことができ、基板の中央部でも基板と静電チャックが間隙なく密着されるようになり、全体的に基板が静電チャックに平らにしわ無く密着されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は有機EL表示装置の製造ラインの一部の模式図である。
【
図2】
図2は本発明の一実施形態による成膜装置の模式図である。
【
図3】
図3は本発明の一実施形態による成膜装置に使われる基板保持ユニットの支持部を示す模式図である。
【
図4】
図4は本発明の他の実施形態による成膜装置に使われる基板保持ユニットの支持部を示す模式図である。
【
図5】
図5は本発明の他の実施形態による基板保持ユニットの支持部の構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は有機EL表示装置の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
本発明は、基板の表面に真空蒸着によってパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に望ましく適用することができる。基板の材料としては、硝子、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選択することができ、また、蒸着材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、有機EL表示装置の製造装置は、蒸着材料を蒸発させて有機EL表示素子を形成するものであり、本発明の望ましい適用例の一つである。
【0018】
<電子デバイス製造ライン>
図1は、電子デバイスの製造ラインの構成の一部を模式的に示す上視図である。
図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば、約1800mm×約1500mmのサイズの基板に有機ELの成膜を行った後、該基板をダイシングして複数の小サイズのパネルに作製される。
【0019】
電子デバイスの製造ラインは、一般に、
図1に示すように、複数の成膜室11、12と、搬送室13とを有する。搬送室13内には、基板10を保持し搬送する搬送ロボット14が設けられている。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板を保持するロボットハンドが取り付けられた構造をもつロボットであり、各成膜室への基板10の搬入
/搬出を行う。
【0020】
各成膜室11、12にはそれぞれ成膜装置(蒸着装置ともよぶ)が設けられている。搬送ロボット14との基板10の受け渡し、基板10とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動で行われる。
【0021】
以下、成膜室の成膜装置の構成に対して説明する。
<成膜装置>
図2は成膜装置2の構成を概略的に示す断面図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を使う。成膜時に基板が水平面(XY平面)と平行となるように固定された場合、基板の短辺に平行な方向をX方向、長辺に平行な方向をY方向とする。またZ軸周りの回転角をθで表示する。
【0022】
成膜装置2は、成膜工程が行われる空間を定義する真空チャンバー20を具備する。真空チャンバー20の内部は、真空雰囲気、或いは、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気で維持される。
【0023】
成膜装置2の真空チャンバー20内の上部には、基板を保持する基板保持ユニット21、マスクが置かれるマスク台22、基板を静電引力によって吸着させる静電チャック23、金属製のマスクに磁力を印加するためのマグネット24などが設けられ、成膜装置の真空チャンバー20内の下部には、蒸着材料が収納される蒸着源25などが設けられる。
【0024】
基板保持ユニット21は、搬送室13の搬送ロボット14から基板10を受取り、保持及び搬送する。基板保持ユニット21は基板ホルダとも呼ぶ。基板保持ユニット21は基板の下面の周縁部を支持する支持部211,212を含む。支持部上には基板の損傷を防止するためにフッ素コーティングされたパッド(不図示)が設けられる。本発明の実施形態の支持部は、後述するように、基板が静電チャックに全体的に平らに吸着されることができるようにお互いに高さが異なる複数の支持部材を含む。
【0025】
基板保持ユニット21の下にはフレーム状のマスク台22が設置され、マスク台22には基板10上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを有するマスク221が置かれる。特に、スマートフォン用の有機EL素子を製造するのに使われるマスクは、微細な開口パターンが形成された金属製のマスクであり、FMM(Fine Metal Mask)とも呼ぶ。
【0026】
基板保持ユニット21の支持部211,212の上方には、基板を静電引力によって吸着して固定させるための静電チャック23が設けられる。静電チャックは、セラミックス材質のマトリックス内に金属電極などの電気回路が埋め込まれた構造を持ち、金属電極にプラス(+)及びマイナス(-)電圧が印加されれば、セラミックスマトリックスを通じて基板に分極電荷が誘導され、これら間の静電気的な引力によって基板が静電チャック23に吸着固定される。静電チャックは埋め込まれた電気回路の構造によって複数のモジュールに区画されることができる。
【0027】
静電チャック23の上部には、金属製のマスク221に磁力を印加してマスクの撓みを防止し、マスク221と基板10とを密着させるためのマグネット24が設けられる。マグネット24は永久磁石または電磁石からなることができ、複数のモジュールに区画されることができる。
【0028】
図2には図示しなかったが、静電チャック23とマグネット24との間には基板を冷却
するための冷却板が設けられる。冷却板はマグネット24と一体に構成することもできる。
蒸着源25は、基板に成膜される蒸着材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、蒸着源からの蒸発レートが一定になるまで蒸着材料が基板に飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを含む。蒸着源25は、点(point)蒸着源、線形(linear)蒸着源、リボルバ蒸着源などの用途によって多様な構成を持つことができる。
【0029】
図2に図示しなかったが、成膜装置2は、基板に蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)を含む。
【0030】
成膜装置2の真空チャンバー20の外部上面には、基板保持ユニット21、静電チャック23、マグネット24などを鉛直方向(Z方向)に移動させるための駆動機構及び基板とマスクのアライメントのために水平面に平行に(X方向、Y方向、θ方向に)静電チャック23や基板保持ユニット21などを移動させるための駆動機構などが設けられる。また、マスクと基板のアライメントのために、真空チャンバー20の天井に設けられた窓を通じて基板及びマスクに形成されたアライメントマークを撮影するアライメント用カメラ(不図示)も設けられる。
【0031】
以下、本発明の実施形態の成膜装置による成膜プロセスを説明する。
【0032】
搬送室13の搬送ロボット14によって基板が真空チャンバー20内に搬入されて基板保持ユニット21に置かれる。続いて、基板保持ユニット21に置かれた基板10とマスク台に置かれたマスク221との相対的位置の測定及び調整を行うアライメント工程が行われる。アライメント工程が完了すれば、基板保持ユニット21が駆動機構によって降りて基板10をマスク221上に置き、その後マグネット24が降りて基板10とマスク221を密着させる。このようなアライメント工程、基板をマスク上に置くための下降工程、マグネットによる基板とマスクの密着工程などにおいて、基板は基板保持ユニット21の支持部211,212と静電チャック23によって固定される。
【0033】
この状態で、蒸着源25のシャッタが開かれて、蒸着源25のるつぼから蒸発された蒸着材料がマスクの微細パターン開口を通して基板に蒸着される。
【0034】
基板に蒸着された蒸着材料の膜厚が所定の厚さに到逹すれば、蒸着源25のシャッタが閉じ、その後、搬送ロボット14が基板を真空チャンバー20から搬送室13に搬出する。
【0035】
<基板保持ユニットの支持部の高さ>
以下、
図3を参照して基板保持ユニット21の構成、特に、静電チャックとともに基板を保持する支持部211,212の構成を説明する。
【0036】
基板保持ユニット21は、支持部211,212によって基板10の周縁部を保持して搬送する手段である。
図3に図示した本発明の第1実施形態において、支持部211,212は基板の対向する二つの辺側の周縁部を支持するように設けられる。
【0037】
基板保持ユニット21の支持部211,212は、基板の対向する二つの辺中いずれかの一つの辺(第1辺)に沿って設けられる複数の第1支持部材211ともう一つの辺(第2辺)に沿って設けられる複数の第2支持部材212を含む。例えば、複数の第1支持部材211は、基板の長辺方向(Y方向、第1方向)に沿って設けられ、複数の第2支持部材212は、複数の第1支持部材211と対向するように基板の長辺方向(Y方向、第1
方向)に設置される。
図3には第1支持部材211及び第2支持部材212がそれぞれ複数の支持部材からなる構成を図示したが、本発明はこれに限定されず、第1支持部材211及び/または第2支持部材212はそれぞれ第1方向に長く延びる一つの支持部材で構成されてもよい。また、
図3には、第1支持部材211及び第2支持部材212が基板の長辺に沿って設けられることを示したが、本発明はこれに限定されず、第1支持部材211及び第2支持部材212が基板の対向する短辺に沿って設けられてもいい。
【0038】
図3(a)に図示したように、第1支持部材211の基板支持面と第2支持部材212の基板支持面は鉛直方向(Z軸方向)においてお互いに異なる高さを持つ。
図3(a)に図示された実施形態では、第1支持部材211の基板支持面が第2支持部材212の基板支持面より高く設置される。例えば、第1支持部材211の基板支持面の高さと第2支持部材212の基板支持面の高さの差は0.1mm以上1mm以下になるように設置される。高さの差が0.1mm未満になれば、第1支持部材211によって支持される基板周縁部と第2支持部材212によって支持される基板周縁部とがほとんど同時に静電チャック23に吸着される可能性があり、高さの差が1mmより大きくなれば、静電チャック23に吸着される前の基板の傾きが大きくなって基板が一方に傾く恐れがある。
【0039】
本発明の第1実施形態においては、基板の第1辺に沿って設置される複数の第1支持部材211は全て同じ高さを持ち、基板の第2辺に沿って設置される複数の第2支持部材212も全て同じ高さを持つが、本発明はこれに限定されず、複数の第1支持部材211または複数の第2支持部材212の中でも支持部の基板支持面の高さが異なり得る。例えば、基板の第1辺(例えば、長辺)に沿って設置される複数の第1支持部材211中第1辺の両角の中のいずれかの一つの角に近い支持部材211の基板支持面を他の第1支持部材211の基板支持面より高くすることができる。複数の第2支持部材212も、第2辺(例えば、長辺)の両角の中のいずれかの一つの角に近い支持部材212の基板支持面の高さを他の第2支持部材212の基板支持面の高さより高くすることができる。この場合、四角形基板の対角線上の二つの角の中のいずれかの一つの角に隣接した支持部材の基板支持面の高さが対角線上の他の一つの角に隣接した支持部材の基板支持面の高さより高くなる。
【0040】
基板の下面の周縁部を支持する支持部211、212は、その基板支持面が基板保持ユニット21に対して鉛直方向(Z方向)に移動可能に設置される。このために、支持部は弾性部材を含むことができる。例えば、支持部の弾性部材は、スプリングやシリコーンゴムのような弾性部材であることができるが、これに限定されない。これについては、
図5を参照して後述する。
【0041】
静電回路(不図示)が埋め込まれた静電チャック23は、基板の上部に平らに設置される。従って、静電チャック23がターンオン(turn on)される(埋め込まれた静電回路に電圧が加えられる)瞬間には、静電チャック23と第1支持部材211の基板支持面(により支持される基板の周縁部)と間の距離が、静電チャック23と第2支持部材212の基板支持面(により支持される基板の周縁部)と間の距離より短い。
【0042】
この状態で、静電チャック23が鉛直方向(Z軸方向)に降りれば、
図3(a)に図示したように、静電チャックの下面が第1支持部材211によって支持された基板10の第1辺に沿った周縁部に先に接触するようになる。基板の第2辺側の周縁部を支持している第2支持部材212は、第1支持部材211より高さが低いので、基板の第2辺に沿った周縁部は静電チャック23と接触されず静電チャック23との間に間隙が存在する。
【0043】
この状態で、静電チャック23が鉛直方向にさらに降りたら、基板の第1辺に沿った周縁部から基板の中央部に向けて矢印Aの方向に吸着が進み、静電チャック23が第2支持
部材212の高さまで降りると、基板の中央部から基板の第2辺に沿った周縁部の方に吸着が進み、最終的に基板の第2辺に沿った周縁部が静電チャック23に吸着される。静電チャック23が第2支持部材212の高さまで降りれば、基板保持ユニット21の第1支持部材211の基板支持面と第2支持部材212の基板支持面は高さが同じくなる。
【0044】
このように、本実施形態においては、基板保持ユニット21の第1支持部材211の基板支持面と第2支持部材212の基板支持面の高さをお互いに異ならせることで(すなわち、支持部の基板支持面から静電チャックまでの距離をお互いに異ならせることで)、静電チャック23への吸着が第1支持部材211によって支持される基板の第1辺に沿った周縁部から基板の中央部を経て基板の第2辺に沿った周縁部に順次に進むことになり、基板の自重による基板の中央部の撓みが第2辺側の方に伸びながら基板全体が静電チャック23に間隙やしわなく平らに密着されるようになる。すなわち、従来の支持部と違って、基板の対向する二つの辺を支持する支持部材の基板支持面から静電チャックまでの距離がお互いに異なるので、静電チャック23が基板10の方に降りてきて最初に基板と接触される部位が対向する両辺の周縁部ではなくある一つの辺(第1辺)側の周縁部だけになり、静電チャック23の下降が続くことによって基板の中央部を経て他の辺(第2辺)側の周縁部が最終的に静電チャックに吸着されるようになるので、基板の中央部の撓みを他の辺(第2辺)側の方に伸ばすことができる。
【0045】
本実施形態においては、静電チャック23に電圧を加えターンオンさせた状態で、基板への下降を開始すると説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、静電チャック23をオフの状態で基板に向かって下降させ、基板と部分的に(例えば、第1支持部材211によって支持された基板の第1辺に沿う周縁部と)接触された状態で、静電チャック23に電圧を加えターンオンさせることで、基板吸着を行うこともできる。または、静電チャック23の下降が開始された後、基板と接触していない状態で静電チャック23をターンオンさせることもできる。このような場合にも、上述した本発明の効果を奏することができる。
【0046】
以下、
図4を参照して、本発明の他の実施形態(第2乃至第6実施形態)について説明する。
図4に図示した実施形態では、基板保持ユニット21が基板10の第1辺(例えば、長辺)側の周縁部及び第2辺(例えば、長辺)側の周縁部を支持する第1支持部材211及び第2支持部材212だけでなく、残り対向する二つの辺(第3辺及び第4辺)に沿って配置される複数の第3支持部材213及び複数の第4支持部材214をさらに含む。例えば、複数の第3支持部材213及び複数の第4支持部材214は基板の短辺方向(X方向、第1方向と交差する第2方向)に沿って配置される。
【0047】
本発明の第2実施形態(
図4(b))及び第3実施形態(
図4(c))においては、基板保持ユニット21の第3支持部材213及び第4支持部材214が第2支持部材212よりその基板支持面が高い。すなわち、
図4(b)及び
図4(c)に図示されたように、基板の4辺の中の一辺の第2辺側の周縁部を支持する第2支持部材212が残り3辺側の周縁部を支持する支持部材211、213、214よりその基板支持面が低く設置される。この場合、複数の第3支持部材213及び複数の第4支持部材214は、
図4(b)に図示したように、その基板支持面が第1支持部材211の基板支持面と同じ高さを持つこともでき(第2実施形態)、
図4(c)に図示したように、第1支持部材211から第2支持部材212に向かって段階的に異なる高さを持つ(例えば、段階的に高さが低くなるようにする)こともできる(第3実施形態)。これによって、基板の撓み又はしわを基板支持面が一番低い第2支持部材212によって支持される基板の第2辺側に逃がせることができる。
【0048】
本発明の他の実施形態においては、基板保持ユニット21の第3支持部材213の基板
支持面及び第4支持部材214の基板支持面が、第1支持部材211の基板支持面より低く設置されることもできる。すなわち、基板の4辺の中でどの一つの辺の第1辺を支持する第1支持部材211が残り3辺を支持する支持部材212、213、214より高く設置されることができる。この場合、第3支持部材213及び第4支持部材214は、その基板支持面が
図4(d)に図示したように、第2支持部材212の基板支持面と同じ高さを持つことができる(第4実施形態)。
【0049】
本発明の他の実施形態では、四角形基板の対角線の一側を支持する(または全体的に四角形状を成すように支持部材が配置された支持部の対角線上の一側の)支持部材の基板支持面の高さが対角線の反対側を支持する支持部材の基板支持面より高さが高い。例えば、
図4(e)に図示したように、隣接する二つの辺を支持する支持部材211、213が向かい合う他の二つの辺を支持する支持部材212、214よりその基板支持面が高い(第5実施形態)。
【0050】
本発明の第6実施形態においては、
図4(f)に図示したように、四角形基板の対角線上の二つの角の中のいずれかの一つの角あたりを支持する(支持部材が四角形を成すように配置された支持部の対角線上の二つの角の中のいずれかの一つの角あたりの)支持部材の基板支持面が該当対角線の反対側の角あたりを支持する(支持部材が四角形を成すように配置された支持部の対角線上の二つの角の中の反対側の角あたりの)支持部材の基板支持面より高い。基板の周縁部を支持する残りの支持部材は前記一つの角から対角線上の反対側の角に行くにつれて、その基板支持面が段階的に低くなるように設置されることができる。
【0051】
本発明の前記実施形態では基板が四角形状を持つことを前提に説明したが、本発明はこれに限定されず、基板が四角形状ではなくても基板の対向する部分がお互いに異なる高さの基板支持面を持つ支持部材によって支持される限り、本発明の効果を奏することができる。
【0052】
本発明の前記実施形態では、静電チャック23が降りて基板保持ユニット21の支持部材211、212、213、214によって支持された基板を吸着すると説明したが、本発明はこれに限定されず、基板保持ユニット21が上昇して基板が静電チャック23に吸着されることもできる。
【0053】
本発明の前記実施形態では、基板が基板保持ユニット21の支持部211、212と基板上に設置された静電チャック23によって挟持されて固定されると説明したが、本発明はこれに限定されず、支持具と加圧具からなる別途の挟持機構(基板クランプ)を追加で含むこともできる。
【0054】
本発明の前記実施形態では、静電チャックが平板であり基板を支持する支持部材の高さが異なる構成を主に説明したが、本発明はこれに限定されず、静電チャックが段差を持って基板を支持する支持部材が同じ高さをもつ構成にしてもよい。
【0055】
このように、本発明の前記実施形態においては、基板の下面の周縁部(4辺)を支持する基板保持ユニット21の支持部の中のいずれかの一辺側または一角側の周縁部を支持する支持部材の基板支持面が、対向する他の辺側または対角線上の反対側の角側の周縁部を支持する支持部材の基板支持面と異なる高さを有するように設置することで、静電チャック23への吸着の際、基板の下面の周縁部が同時に静電チャック23に吸着されず、ある一辺側からこれと対向する他の辺側に順次に吸着が進むようになり、基板の自重による撓み又はしわを効果的にとり除くことができる。
【0056】
<基板保持ユニットの弾性体支持部>
本発明の一実施形態の基板保持ユニット21の支持部は弾性体を含んで構成される。例えば、
図5(a)に図示したように、支持部の複数の支持部材211、212、213、214それぞれは、基板支持面部30と弾性体部31を含む。基板支持面部30は基板の下面の周縁部を支持し、弾性体部31は基板支持面部30を弾性的に変位可能に支持する。
【0057】
弾性体部31に使われる弾性体としては、コイルスプリング、板スプリング、シリコーンゴムなどを用いることができるが、本発明はこれに限定されず、支持部材の基板支持面部を弾性的に変位可能に支持することができる限り、他の構成を含むことができる。
【0058】
本発明の一実施形態において、複数の支持部材211、212、213、214中、基板のある一辺(第1辺)に沿った周縁部に対応する位置に設置される第1支持部材211は、他の支持部材に比べて基板支持面部30の高さが高い。例えば、
図5(a)に図示したように、第1支持部材211の弾性体部31の長さは、第2支持部材212の弾性体部31の長さより長い。
【0059】
このような構成によって、基板保持ユニット21の支持部に基板が置かれた状態で基板保持ユニット21の上昇または静電チャック23の下降によって基板10が静電チャック23と接触する際、基板支持面部30の高さが高い第1支持部材211によって支持される基板の第1辺側の周縁部が静電チャック23の下面と先に接触して吸着される。
【0060】
続いて、静電チャック23と基板10との間の距離がもっと縮めば、例えば、第1支持部材211の弾性体部31は、静電チャック23からの加圧力によって弾性的に圧縮され、これによって第1支持部材211の基板支持面部30は変位、すなわち、下方に下がるようになる。第1支持部材211の弾性体部31が弾性的に圧縮されるにつれて、第1支持部材211の基板支持面部30の高さと第2支持部材212の基板支持面部30の高さとの差が小さくなりながら、基板の第1辺側周縁部から基板の中央部に向かって基板の静電チャック23への吸着が進む。静電チャック23と基板10の間の距離がもっと縮まると、基板の中央部から基板の第2辺側の周縁部に向かって基板の吸着が進む。
【0061】
静電チャック23が第2支持部材212の基板支持面部30の高さまで近接すれば、第2支持部材212によって支持される基板の第2辺側の周縁部が静電チャック23に吸着されて、この時、第1支持部材211の基板支持面部30の高さが第2支持部材212の基板支持面部30の高さと同じくなり、全体的に基板は静電チャック23に平らな状態で吸着されるようになる。
【0062】
図5(a)には、支持部材の基板支持面部30の変位軸と弾性体部31の変位軸が一致するように図示したが、本発明はこれに限定されず、基板支持面部30の変位軸と弾性体部31の変位軸とが互いに異なるように構成することもできる。すなわち、
図5(b)に図示したように、基板支持面部30の変位軸と弾性体部31の変位軸とが基板面に平行な方向において互いに離隔するように構成することもできる(すなわち、両変位軸が互いに平行になるように構成することができる)。このような構成において、基板保持ユニット21の支持部材は、基板支持面部30の変位をガイドするガイド部32をさらに含むことができる。弾性体部31は、
図5(b)に図示したように、基板が静電チャック23と接触するによって圧縮変位する構成だけではなく引張変位するように構成することもできる。
【0063】
本実施形態では、支持部材が弾性体部31を含むように構成することで、基板支持面部30によって支持された基板が静電チャックから加圧力を受ける際、基板が破損されるこ
とを防止することができ、各支持部材が製造誤差によって基板支持面部30の高さが同じではなくても全体的な支持部の機能に及ぶ影響を弾性体部31の弾性変位によって低減することができる。
【0064】
<基板保持ユニットの支持部の基板支持力>
本発明の一実施形態の基板保持ユニット21の支持部は、基板の下面の周縁部を支持するように設置されるが、この時、支持部の複数の支持部材211、212が基板を支持する支持力が支持部材によって変わるように設定されることができる。すなわち、基板保持ユニット21の支持部は、基板の対向する二つの辺の中でいずれかの一つの辺である第1辺側を支持する第1支持部材211が基板を支持する支持力と他の一つの辺である第2辺側を支持する第2支持部材212が基板を支持する支持力とがお互いに異なるように設置される。例えば、第1支持部材211が基板を支持する支持力は第2支持部材212が基板を支持する支持力より大きくなるように設定される。
【0065】
このために、
図5(c)に図示したように、第1支持部材211の弾性体部31の弾性係数を第2支持部材212の弾性体部31の弾性係数より大きくするか、第1支持部材211の弾性体部31の長さを第2支持部材212の弾性体部31の長さより長くする。第1支持部材211の弾性体部31の長さが長ければ、第1支持部材211の弾性体部31が静電チャック23からの加圧力によって弾性変位(引張変位または圧縮変位)される距離が第2支持部材212の弾性体部31が弾性変位される距離より長くなるので、結果的に第1支持部材211が基板を支持する支持力は第2支持部材212が基板を支持する支持力より大きくなることができる。
【0066】
このように第1支持部材211の支持力を第2支持部材212の支持力より大きくすることで、基板中央部の撓みを支持力が小さな第2支持部材212側の方に伸ばすことができるので、基板が全体的に静電チャック23に平らに吸着されることができるようになる。
【0067】
本発明の一実施形態では、第1支持部材211の支持力が第2支持部材212の支持力より大きくなる限り、弾性体部の弾性係数と長さは様々な他の組合せができる。
【0068】
例えば、
図5(c)に図示したように、第1支持部材211の弾性体部31の弾性係数及び長さが第2支持部材212の弾性体部31の弾性係数及び長さより大きくて長くすることができ、第1支持部材211の弾性体部31の弾性係数と第2支持部材212の弾性体部31の弾性係数は同じではあるが、第1支持部材211の弾性体部31の長さが第2支持部材212の弾性体部31の長さより長くすることもできる。第1支持部材211の弾性体部の弾性係数が第2支持部材212の弾性体部の弾性係数と同じであっても、上記したように第1支持部材211の弾性体部31の長さが第2支持部材212の弾性体部の長さより長ければ、結果的に第1支持部材211の支持力が第2支持部材212の支持力より大きくなることができる。
【0069】
また、第1支持部材211の弾性体部の弾性係数が第2支持部材212の弾性体部の弾性係数より小さくても第1支持部材211の弾性体部31の長さが第2支持部材212の弾性体部31の長さより十分に長ければ、結果的に第1支持部材211の支持力が第2支持部材212の支持力より大きくなることができる。また、第1支持部材211及び第2支持部材212の弾性体部の長さが同じであっても、弾性係数を互いに異なるようにすることで支持力の差を付与することもできる。
【0070】
本発明の一実施形態の基板保持ユニット21の支持部は、基板の第1辺側の周縁部を支持するように配置される複数の第1支持部材211、第1辺と対向する第2辺側の基板周
縁部を支持するように配置される複数の第2支持部材212以外に、第1辺と第2辺とを繋ぐ第3辺側及び第4辺側の基板周縁部を支持するように配置される複数の第3支持部材213及び複数の第4支持部材214を含むことができる。この際、第3支持部材213及び第4支持部材214の弾性体部31の弾性係数及び長さは、第3支持部材213及び第4支持部材214が基板の第3辺側の周縁部及び第4辺側の周縁部を支持する支持力が第1支持部材211の支持力より小さくなるように設定するのが望ましい。より望ましくは、第3支持部材213及び第4支持部材214による支持力が第2支持部材212による支持力より大きくなるように弾性係数及び/または長さを設定する。このように、支持部材の支持力を調節することで、基板10が静電チャック23に吸着される時、第1辺(例えば、対向する二つの長辺の中である一長辺)側の基板周縁部から基板の中央部を経て第2辺(例えば、対向する二つの長辺の中で他の一つの長辺)側に向かって吸着が順次に進むことができ、基板が平らに静電チャックに吸着されるようになる。
【0071】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本発明の一実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0072】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図6(a)は有機EL表示装置60の全体図、
図6(b)は1画素の断面構造を表している。
図6(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施形態にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0073】
図6(b)は、
図6(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0074】
図6(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によっては、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されていてもよい。また、第1電極64と正孔輸送層65との間には第1電極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極68と電子輸送層67の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0075】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0076】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板63を準備する。
【0077】
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0078】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャック及び基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0079】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャック及び基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
【0080】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0081】
電子輸送層67まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置に移動させて第2電極68を成膜する。
【0082】
本発明の実施形態によれば、有機EL表示素子の製造のために、多様な有機材料及び金属性材料を基板上に蒸着する装置において、基板を支持する基板保持ユニットの支持部材211、212、213、214の支持部材がお互いに異なる高さまたは支持力を持つので、基板保持ユニットの支持部によって支持された基板が静電チャックに吸着される際、基板がより平らに吸着され、蒸着工程全般的にその精度を向上させることができる。
【0083】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0084】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0085】
上記実施形態は本発明の一例を示し、本発明は上記実施形態の構成に限定されないし、その技術思想の範囲内で適切に変形しても良い。
【符号の説明】
【0086】
21:基板保持ユニット
22:マスク台
23:静電チャック
24:マグネット
30:基板支持面部
31:弾性体部
32:ガイド部
211:第1支持部材
212:第2支持部材
213:第3支持部材
214:第4支持部材