(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】固体電池の製造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20230605BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20230605BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230605BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230605BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230605BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230605BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/62 Z
H01M10/0562
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019017932
(22)【出願日】2019-02-04
(62)【分割の表示】P 2015529982の分割
【原出願日】2013-08-28
【審査請求日】2019-03-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-28
(32)【優先日】2012-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘール, サブラーマンヤ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン, ジョセフ ジー., セカンド
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】山田 正文
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/060350(WO,A1)
【文献】特開2009-277381(JP,A)
【文献】特表2006-503416(JP,A)
【文献】特開2007-5279(JP,A)
【文献】特開2010-15782(JP,A)
【文献】特開2011-165410(JP,A)
【文献】国際公開第2012/053359(WO,A1)
【文献】特開2010-272344(JP,A)
【文献】特開2010-135090(JP,A)
【文献】特開2011-81915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電池を製造する方法であって、
正電極材料のグリーンシートを用意すること、
セパレータ材料のグリーンシートを用意すること、
前記正電極材料のグリーンシート及び前記セパレータ材料のグリーンシートを共に積層させ、積層グリーンスタックを形成すること、
前記積層グリーンスタックを焼結させ、正電極及びセパレータを含む焼結スタックを形成すること、
負電極を前記焼結スタックに積層すること、並びに
シリコンまたは窒化銅の層を前記負電極と前記焼結スタックとの間の界面に組み入れること、
を含み、前記負電極がリチウム金属電極である、
方法。
【請求項2】
前記正電極の表面に正極集電体を堆積することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記正電極材料のグリーンシートは連続シートであり、かつ前記セパレータ材料のグリーンシートは連続シートである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記正電極材料のグリーンシートが、正極集電体に付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記正電極材料のグリーンシートは、
Li(Mn,Co,Ni)O
2材料、及び
バインディングポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記正電極材料のグリーンシートは、電子電導性添加物を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記セパレータ材料のグリーンシートは、
純粋なイオン導電体材料、及び
ポリマーバインダを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記純粋なイオン導電体材料は、Li
7-xLa
3Zr
2-xTa
xO
12(xは0より大きく、1以下)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記負電極の表面に負極集電体を堆積することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記正電極材料のグリーンシートはセグメント化されたシートであり、かつ前記セパレータ材料のグリーンシートはセグメント化されたシートである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記固体電池はリチウム伝導性固体電解質とLiNbO
3でコーティングされるLiCoO
2活物質とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記セパレータ材料のグリーンシートはドープされたLi
7La
3Zr
2O
12ガーネット固体電解質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記セパレータ材料のグリーンシートは硫化物系の固体電解質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記硫化物系の固体電解質はLi
10GeP
2S
12である、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記セパレータ材料のグリーンシートはドープされたLi
7La
3Zr
2O
12ガーネット固体電解質及び硫化物系の固体電解質からなる群から選択された材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記負電極を前記焼結スタックに積層することは、前記負電極と前記焼結スタックとをピンチローラに通すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記シリコンまたは窒化銅の層はシリコンの層である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記シリコンまたは窒化銅の層は窒化銅の層である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
固体電池を製造する方法であって、
正電極材料のグリーンシートを用意すること、
セパレータ材料のグリーンシートを用意すること、
前記正電極材料のグリーンシート及び前記セパレータ材料のグリーンシートを共に積層させ、積層グリーンスタックを形成すること、
前記積層グリーンスタックを焼結させ、焼結スタックを形成することであって、前記焼結スタックは、正電極とセパレータとを含む、焼結スタックを形成すること、
負電極を前記焼結スタックに積層すること、
並びに
シリコンまたは窒化銅の層を前記負電極と前記焼結スタックとの間の界面に組み入れること、
を含み、前記セパレータ材料のグリーンシートは硫化物系の固体電解質Li
10GeP
2S
12を含み、前記負電極はリチウム金属電極である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体として参照により本明細書に組み込まれている、2012年8月28日出願の米国特許仮出願第61/694,198号の利益を主張する。
【0002】
本発明の実施形態は、概して、Liイオン電池に関し、より具体的には、正電極、セパレータ及び負電極のスタックを形成するために、「グリーンテープ」積層及び焼結処理を用いて製造される固体Liイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
現世代のLiイオン電池は、安全性の観点からは固体電解質の方が好まれるであろうが、液体電解質を用いている。現世代のLiイオン電池は、多孔性セパレータにより分離される正電極及び負電極並びにイオン導電性マトリクスとして用いられる液体電解質から成る。これらのLiイオン電池の中で、液体電解質は、可燃性であり、他のセル構成要素と反応するので、安全上の危険を意味する。負電極が正電極とショートすることは、火災を引き起こす可能性がある。ショートは、(a)製造中に導入されるセル中の導電性アスペリティ又は粒子、(b)セルの動作中に一方の電極から他方の電極へ成長するデンドライト、及び(c)過熱によるセパレータの縮小、のうちの一つ又は複数により引き起こされうる。ショートを防止するために、先進的な構造を組込みうる厚く強固なセパレータ、例えば、セラミックナノ粒子を含浸又はコーティングしたセパレータ、を有するセルが、現在設計されている。また、セル中での電解質と他の活物質との間の反応は、名目上等しいセルが、容量の経時劣化について異なる速度を持つことに帰結しうる。このことは、アンバランスが、直列スタックの利用可能な容量を減少させ、安全性の問題に帰結しうる、例えば、異なる容量を有するセルのスタックによる電池の中の幾つかのセルの過充電は、過充電されたセルの初期故障又は熱暴走を引き起こしうるので、直列スタックを困難にする。これらの潜在的問題は、今日の電池において、以下のように、対処されている:(1)圧力解放通風孔及びスイッチ、並びにPTC(正温度係数)電流リミッタといった安全要素をセルの中に組み入れることによって;(2)電池パックエレクトロニクスにより電池パックをモニタすること、例えば、温度、各セル又は並列セットの電圧、全スタック電圧及び全パック電流をモニタすること;及び(3)保護用電池収納装置及び、時には能動的冷却を用いることによって。これらの手段の全てが、費用を追加し、セル及びパックレベルでのエネルギー密度を低下させる。
【0004】
今日の液体電解質セルに関連する上記問題を回避することができる不燃性の固体電解質を有するLiイオン電池に対する要求が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、概して、Liイオン電池などの固体電池構造、製造方法、電池を製造するための手段に関する。活物質、導電性添加物、ポリマーバインダ及び/又は固体電解質の混合物が、グリーンテープ、グリーンディスク又はグリーンシートを作るために、ロールツーロール又はセグメント化されたシート/ディスクプロセスで、型取りされ又は押し出し成形される、グリーンテープ法を用いて、一つ又は複数の電極及びセパレータが、各々成形されうる。本発明の固体電池のための製造方法は、グリーンテープ/ディスク/シートのセパレータ及び電極(複数可)の積層及び焼結を含みうる。本方法の実施形態は、拡張容易であり対費用効果が高く、大量生産に適することが期待される。
【0006】
本発明の幾つかの実施形態によれば、固体電池を製造する方法は、正電極材料のグリーンシートを準備及び/又は用意すること、セパレータ材料のグリーンシートを準備及び/又は用意すること、正電極材料のグリーンシート及びセパレータ材料のグリーンシートを積層し、積層グリーンスタックを形成すること、及び積層グリーンスタックを焼結させ、正電極及びセパレータを含む焼結スタックを形成すること、を含みうる。本方法は、負電極材料のグリーンシートをセパレータ材料のグリーンシートに積層させることを、更に含んでよく、積層グリーンスタックは負電極材料のグリーンシートを更に含み、セパレータ材料のグリーンシートは正電極材料のグリーンシートと負電極材料のグリーンシートとの中間にあり、そして焼結スタックは負電極を更に含み、セパレータは正電極と負電極との中間にある。代替の実施形態は、リチウム電極などの負電極を焼結スタックに積層することを含みうる。更に、集電体(複数可)が、正電極の表面上に堆積されてよく、実施形態において、負電極の表面上に堆積されてよい。実施形態において、正電極材料のグリーンシートは、Li(Mn,Co,Ni)O2材料及びバインディングポリマーを含みうる。実施形態において、セパレータ材料のグリーンシートは、Li7-XLa3Zr2-XTaXO12(0≦x≦1)などの純粋なイオン導電体材料及びポリマーバインダを含みうる。実施形態において、負電極材料のグリーンシートは、Li4Ti5O12材料及び/又はグラファイト材料及びポリマーバインダを含みうる。
【0007】
その他の実施形態によれば、本明細書に記載される方法により固体電池を製造するための処理システムが、構成される。
【0008】
本発明のこれら及び他の態様及び特徴は、添付の図と併せて本発明の具体的な実施形態に関する以下の記載を読めば、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、固体電池製造プロセスの概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、固体電池セルの断面図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、固体電池を形成するためのプロセスフローである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態が、図面を参照して詳細に説明されるであろう。これらの図面は、当業者が本発明を実施できるように本発明の例示として提供される。特に、以下の図および例は、本発明の範囲を単一の実施形態に限定することを意図するものではなく、記載または図示されている要素の一部または全てを入れ替えることによって、他の実施形態が可能である。さらに、本発明のある要素が、既知の構成要素を使用して部分的または完全に実施できる場合、そのような既知の構成要素のうち、本発明の理解に必要な部分のみが記載され、そのような既知の構成要素の他の部分に関する詳細な記載は、本発明を不明瞭にしないように、省略される。本明細書では、単数の構成要素を示す実施形態は、限定的と見なされるべきではない。むしろ本発明は、本明細書に別段の明示がない限り、複数のその同じ構成要素を含む他の実施形態を包含することが意図されており、逆も同様である。さらに、出願人は、そのように明示しない限り、本明細書または特許請求の範囲内のいかなる用語も、一般的でないまたは特殊な意味を有するとされることを意図しない。さらに、本発明は、本明細書において例示として参照される既知の構成要素に対する現在既知の均等物および将来知られることとなる均等物を包含する。
【0011】
図1~
図3は、本発明の幾つかの実施形態による、固体電池の構造、方法及び製造システムを示す。正極集電体140、正電極115、固体電解質セパレータ125、負電極130及び負極集電体135を有する、固体セル100の一例の断面図が、
図2に示される。
図2において、集電体は、スタックを越えて伸びる必要はないが、スタックを越えて伸びるように示されており、スタックを越えて伸びている部分は、タブとして使用されうる、ということに留意のこと。それぞれ正電極及び負電極上にある集電体140、135は、同じ又は異なる電子伝導体でありうる。集電体は、グリーンテープのためのキャリア基板として堆積されることができる、又は、グリーンテープのためのキャリア基板として既存の導電性材料を使用することができる。集電体のための材料例は、銅、アルミニウム、炭素、ニッケル、金属合金、その他である。更に、集電体は、任意の寸法、形状、及びミクロ/マクロ構造でありうる。概して、角柱状セルにおいて、タブは、集電体と同じ材料から形成され、スタックの製造中に形成されうる、又は後で付加されうる。正電極115及びセパレータ125は、「グリーンテープ」から形成され、共に積層され、それから、負電極130及び集電体140を付加する前に、焼結される。更に、本発明の幾つかの実施形態において、負電極もまた、セパレータ及び正電極の「グリーンテープ」と共に積層される「グリーンテープ」から形成されてよく、それから全てが共に焼結される。本明細書で説明されるように、負電極に応じて、負電極集電体135は、必要とされるかもしれないし又はされないかもしれない、ということに留意のこと。
【0012】
活物質、導電性添加物、ポリマーバインダ及び/又は固体電解質の混合物が、グリーンテープ、グリーンディスク又はグリーンシートを作るために、ロールツーロール又はセグメント化されたシート/ディスクプロセスで、型取りされ又は押し出し成形される、グリーンシート/グリーンディスク/グリーンテープ法を用いて、一つ又は複数の電極及びセパレータが、成形されることができる。セル又は電池の製造は、正電極(例えば、Li(Mn,Co,Ni)O2材料)及びセパレータ(例えば、Li7-XLa3Zr2-XTaXO12(0≦x≦1))のグリーンシートのスタックを形成すること、及びその後、バインダを除去し、活物質を焼結させ高密度化するために、加熱することから構成される。更に、負電極(例えば、Li4Ti5O12)のグリーンシートが、スタックに追加され、他のグリーンシートと共に熱処理されうる。電極又は電極スタックを高密度化するために、種々の雰囲気条件の下で、圧力、温度及び振動技術の組合せを用いることができる。加熱は、炉又は放射エネルギーによることができる。正/負極活物質と電解質(複数可)との間の電気化学コンタクトを向上させる必要がある場合、セルの全インピーダンスを低下させるために、適切な界面工学が実行されることができる。
【0013】
グリーンテープの中で活物質(例えば、LiCoO2)と混合される(そして、焼結セパレータの中に同じ結晶形で通常存在するであろう)固体電解質の例は、Li7La3Zr2O12(LLZO)ガーネット系電解質又はLi10GeP2S12などの硫化物系(Li2S/P2S5系)電解質のドープされた変形である。負電極のための適切な材料は、Li金属、グラファイト及びLi4Ti5O12でありうる。正電極のための適切な材料は、LiMn1.5Ni0.5O4、Li(Ni,Mn,Co)O2及びLi2S/CuSXでありうる。更に、(Li,La)TiO3などのイオン・電子混合伝導体もまた、電極の中に使用されうるが、セパレータには使用されないかもしれない。
【0014】
正電極「グリーン」テープのための構成要素材料は、以下を含みうる:LiCoO2などの正極活物質;例えば、E.I.du Pont de Nemours and Companyから入手可能な、ポリアクリロニトリル、様々なMCM(超小型回路材料(Microcircuit Materials))及び/又は他のLTCC(低温同時焼成セラミックス)材料などの、粒子を結合させるための厚膜セラミック構成要素のためのポリマー;並びに、任意選択で、カーボンナノチューブ、VGCF(気相成長カーボンナノファイバー)、カーボンブラックなどの電子導電性添加物、LiがドープされたLaTiO3などのイオン・電子混合伝導体、及びLi7-XLa3Zr2-XTaXO12(0≦x≦1)などの純粋なイオン導電性添加物のうちの一つ又は複数。
【0015】
負電極「グリーン」テープのための構成要素材料は、以下を含みうる:Li4Ti5O12などの負極活物質;上記のような、粒子を結合させるための厚膜構成要素のためのポリマー;並びに、任意選択で、カーボンナノチューブなどの電子導電性添加物、LiがドープされたLaTiO3などのイオン・電子混合伝導体、及びLi7-XLa3Zr2-XTaXO12(0≦x≦1)などの純粋なイオン導電性添加物のうちの一つ又は複数。イオン・電子混合伝導体の使用は、グリーンテープの中の導電性添加物の必要量を減少させうる、ということに留意のこと。更に、Li4Ti5O12負極活物質の代わりに、より導電性のグラファイトが、負極活物質として使用されることができ、カーボンナノチューブ、VGCF(気相成長カーボンナノファイバー)、カーボンブラックなどの導電性添加物の量を減少させることができる。
【0016】
セパレータ「グリーン」テープのための構成要素材料は、以下を含みうる:Li7-XLa3Zr2-XTaXO12(0≦x≦1)などの純粋なイオン導電体;及び、上記のような、粒子を結合させるための厚膜構成要素のためのポリマー。
【0017】
セパレータ内の固体電解質と活物質との間の良好な界面が望まれうる。本明細書中で、良好な界面とは、セルインピーダンスを増加させない(イオンが、活物質/固体電解質の境界を横切って容易に移動できる)界面である。更に、固体電解質及び活物質は、セルの充電/放電サイクルの間に、類似の又は小さい体積変化を有するように、選択されうる。界面抵抗を低下させるために、表面官能基又は分子集団が、活物質と固体電解質との間の界面に、含められることができる。加熱ロッド、ランプ、レーザ及びマイクロ波などの源からの放射加熱、誘導性渦電流及び抵抗加熱などの電気的加熱、並びに超音波振動などによる加熱が、材料を統合し高密度化するが、電池性能を損なう可能性のある、材料に対する化学的及び/又は構造的変化を回避するために必要とされるエネルギーを供給するための有効なプロセスでありうる。更に、材料に対する有害な化学的及び/又は構造的変化から保護するための材料が、付加されうる。例えば、リチウム導電性固体電解質、Li10GeP2S12、及び不必要な副作用を防止するためにLiCoO2活物質上にコーティングされるLiNbO3の薄層を用いる全固体セル。Kamaya他、Nat.Mater.2011,10(9),682?686を参照。
【0018】
材料の特定の組合せに応じて、完全に充電されたセルの平均電圧は、負極及び正極活物質の適切な選択により操作されてもよく、セルは、電池からのより高い電圧を達成するために、直列に接続されうる。固体電解質を用いることにより、不必要な安全構成要素を除去することにより、及びセルを直列に積み重ねることによりコネクタを除去することにより、セルパッケージング空間を節約することができる。後者はまた、集電体の必要とされる厚さを減少させ、セル構成要素の80%超が活物質となることを可能にすることができる。負極集電体が、隣接するセルの正極集電体と接触するように、セルを積み重ねることにより、タブに配線を接続させる必要なく、直列接続が達成されることができ、従って、タブ作業及び配線作業の両方を除去する、ということに留意のこと。従来の液体電解質セルにおいて、直列に接続されるセルの容量における不整合は、重大な障害、時には液体電解質の圧出や火災を伴う、個々のセルの過充電又は過放電につながる可能性があるので、これは危険な行為である。しかしながら、不燃性の固体電解質は、この危険な障害モード(しかし、障害ではない)を除去する。
【0019】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、固体電池のための製造プロセスの一例の概略図を示す。
図1における例は、ロールツーロールプロセスなどの連続的プロセス、及びグリーンシート又はグリーンディスクのための直列プロセスにも適用可能である。正電極110及びセパレータ120のためのグリーンシートが準備され、それから、ピンチローラ150を用いて、共に積層される。ピンチローラ150は、加熱される。積層後、グリーンシートスタックが、炉160の中で加熱され、正電極115及びセパレータ125の焼結スタックを形成する。熱処理の間、スタックを平坦に保つ必要がある場合、炉160の中に位置する加熱されたローラ(図には示されていない)を用いて、圧力が加えられうる、ということに留意のこと。炉160の中のガス環境は、固体電解質中の金属を、所望の酸化状態に保ち、そしてまたグリーンテープから炭素質材料を除去するために、十分に高い酸素分圧を必要としうる。炉160は、通常の対流、IRランプなどの放射源、レーザ加熱、等のうちの一つ又は複数を用いて、加熱されることができる。電極の密度を増加させ、電極と活物質との間の界面インピーダンスを低下させるために、グリーンテープに圧力がかけられている間に、加熱が行われうる。負電極130が、ピンチローラ155を用いて、焼結スタックに積層される。このプロセスのための適当な負電極の一例は、Li金属膜である。Li金属電極が用いられる場合、乾燥空気環境が製造のために必要とされるであろう、ということに留意のこと。望まれるよりも低い電位での固体電解質中の金属の還元を回避し、そしてまた界面インピーダンスを低下させるために、金属リチウム負電極と固体電解質の間の界面は、Si、Cu
3N、又はLi
3-xPO
4-yN
yの薄層を含みうる。更に、炭素又は他のリチウム挿入又は合金材料が、負電極のために利用されうる。集電体140が、正電極115の表面上に堆積されうる。例えば、アルミニウム金属のPVD堆積170。更に、炭素電極などの負電極が用いられる場合、負電極集電体135もまた必要とされうる。集電体135が、例えば、銅金属のPVD堆積175を用いて、負電極130の表面上に堆積される。タブ取付けステップ、及び密封又は封入ステップが、製造プロセスを完成させる。しかしながら、連続的なロールツーロールプロセスが用いられる場合、スタックは、個々のセルを形成するために、切断されうる。プロセスが、セルエッジを不鮮明にしない、及び/又は電極のショートを引き起こさない、とすれば、機械的切断、スクライブ及び破断、レーザ切断等のプロセスが用いられうる。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態による、固体電池の製造のためのプロセスフローの一例が、
図3に与えられる。正電極材料のグリーンシートが用意される。セパレータ材料のグリーンシートが用意される。正電極材料のグリーンシート及びセパレータ材料のグリーンシートが、共に積層され、焼結される。負電極が、焼結スタックに積層される。集電体が、正電極の表面上に堆積される。更に、例えば、活性グラファイト材料が負電極として用いられる場合、集電体が負電極上に堆積されることが必要とされうる。しかし、リチウム金属が負電極のために用いられる場合、集電体は必要とされないかもしれない。上記のように、セル及び電池が、完成される。
【0021】
更に、
図1及び
図3に示されるように、セパレータ及び正電極を含む焼結スタックに負電極を積層させることに対する代替として、幾つかの実施形態において、固体電池を製造する方法は、正電極材料のグリーンシート、負電極材料のグリーンシート及びセパレータ材料のグリーンシートを共に積層させることを含みうる。ここで、セパレータ材料のグリーンシートは、負電極材料のグリーンシートと正電極材料のグリーンシートとの中間にあり、積層グリーンスタックは、その時、正電極材料のグリーンシートと負電極材料のグリーンシートを含み、その中間にセパレータ材料のグリーンシートを有するであろう。そして、焼結スタックは、正電極及び負電極を含み、その中間にセパレータを有するであろう。
【0022】
本発明の固体電気化学セルは、通常、厚さが10ミクロンから500ミクロンの間の範囲でありえ、例えば、正電極及び負電極は、各々、10ミクロンから150ミクロンまでであり、セパレータは3ミクロンから25ミクロンまでであり、集電体(複数可)は各々1ミクロンから50ミクロンまでである。
【0023】
図1に図式的に示され、そして上記のように、実施形態において、固体電池を製造するためのインラインプロセスシステムは、以下を含みうる:正電極材料のグリーンシート及びセパレータ材料のグリーンシートを共に積層させ、積層グリーンスタックを形成するように構成される、第一の積層システム;積層グリーンスタックを焼結させ、正電極及びセパレータを含む焼結スタックを形成するように構成される焼結システム;並びに、正電極の表面上に正極集電体を堆積させるように構成される第一の堆積システム。更に、インラインプロセスシステムは、セパレータに負電極を積層させるための第二の積層システムを含みうる。更に、インラインプロセスシステムは、ロールツーロールプロセスシステムでありうる。更に、インラインプロセスシステムは、負電極の表面上に負極集電体を堆積するように構成される第二の堆積システムを、更に含みうる。
【0024】
更に、幾つかの実施形態において、固体電池を製造するためのインラインプロセスシステムは、以下を含みうる:正電極材料のグリーンシート、負電極材料のグリーンシート及びセパレータ材料のグリーンシートを共に積層し、セパレータ材料のグリーンシートは、負電極材料のグリーンシートと正電極材料のグリーンシートとの間にあり、積層グリーンスタックを形成するように構成される積層システム;積層グリーンスタックを焼結させ、正電極、セパレータ及び負電極を含む焼結スタックを形成するように構成される焼結システム;並びに、正電極の表面上に正極集電体を堆積するように構成される第一の堆積システム。更に、インラインプロセスシステムは、ロールツーロールプロセスシステムでありうる。更に、インラインプロセスシステムは、負電極の表面上に負極集電体を堆積するように構成される第二の堆積システムを、更に含みうる。
【0025】
現行の液体電解質Liイオン電池と比較した場合、全固体電池の幾つかの潜在的な利点は、セルの安全性の向上及び高い容積エネルギー密度を含む。全固体電池は、携帯用電子機器、動力工具、医療装置、センサ、電気自動車における用途に適することが期待され、他のエネルギーストレージ応用例においても使用されうる。
【0026】
本発明は、Liイオン電池を参照して記載されているが、他の固体電池もまた、本発明の教示と原理を用いて製造されうる。
【0027】
本発明について、本発明の特定の実施形態を参照して特に説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細に変更および修正を加えることができることが、当業者には容易に明らかになるはずである。 また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
固体電池を製造する方法であって、
正電極材料のグリーンシートを用意すること、
セパレータ材料のグリーンシートを用意すること、
前記正電極材料のグリーンシート及び前記セパレータ材料のグリーンシートを共に積層させ、積層グリーンスタックを形成すること、並びに、
前記積層グリーンスタックを焼結させ、正電極及びセパレータを含む焼結スタックを形成すること、を含む方法。
(態様2)
前記正電極材料のグリーンシートは、
Li(Mn,Co,Ni)O
2
材料、及び
バインディングポリマーを含む、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記正電極材料のグリーンシートは、電子導電性添加物を更に含む、態様2に記載の方法。
(態様4)
前記セパレータ材料のグリーンシートは、
純粋なイオン導電体材料、及び
ポリマーバインダを含む、態様1に記載の方法。
(態様5)
前記純粋なイオン導電体材料は、Li
7-x
La
3
Zr
2-x
Ta
x
O
12
(0≦x≦1)である、態様4に記載の方法。
(態様6)
負電極材料のグリーンシートを用意すること、及び
前記負電極材料のグリーンシートを前記セパレータ材料のグリーンシートに積層することであって、前記積層グリーンスタックは、前記負電極材料のグリーンシートを、前記負電極材料のグリーンシートと前記正電極材料のグリーンシートとの中間にある前記セパレータ材料のグリーンシートと共に、更に含み、そして、前記焼結スタックは、負電極を、前記正電極と前記負電極との中間にある前記セパレータと共に、更に含む、積層することを更に含む、態様1に記載の方法。
(態様7)
前記負電極材料のグリーンシートは、
Li
4
Ti
5
O
12
材料、及び
ポリマーバインダを含む、態様6に記載の方法。
(態様8)
前記負電極材料のグリーンシートは、
グラファイト材料、及び
ポリマーバインダを含む、態様6に記載の方法。
(態様9)
負電極を前記焼結スタックに積層させることを更に含む、態様1に記載の方法。
(態様10)
前記負電極がリチウム金属電極である、態様10に記載の方法。
(態様11)
前記正電極材料のグリーンシートが、正極集電体に付けられる、態様1に記載の方法。
(態様12)
固体電池を製造するためのインラインプロセスシステムであって、
正電極材料のグリーンシート及びセパレータ材料のグリーンシートを共に積層させ、積層グリーンスタックを形成するように構成される、第一の積層システム、
前記積層グリーンスタックを焼結させ、正電極及びセパレータを含む焼結スタックを形成するように構成される焼結システム、並びに、
前記正電極の表面上に正極集電体を堆積するように構成される第一の堆積システム、を含むシステム。
(態様13)
前記セパレータに負電極を積層するための第二の積層システムを更に含む、態様12に記載のインラインプロセスシステム。
(態様14)
前記プロセスシステムはロールツーロールプロセスシステムである、態様12に記載のインラインプロセスシステム。
(態様15)
前記第一の積層システムは、前記セパレータ材料のグリーンシートが、負電極材料のグリーンシートと前記正電極材料のグリーンシートの中間にあるように、前記正電極材料のグリーンシート、前記負電極材料のグリーンシート及び前記セパレータ材料のグリーンシートを共に積層するように構成される、態様12に記載のインラインプロセスシステム。