(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】複合ハーネス、及び複合ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/00 310
(21)【出願番号】P 2021088866
(22)【出願日】2021-05-27
(62)【分割の表示】P 2020048552の分割
【原出願日】2016-01-21
【審査請求日】2021-05-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 良和
(72)【発明者】
【氏名】村山 知之
(72)【発明者】
【氏名】江島 弘高
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】小田 浩
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-135153(JP,A)
【文献】特開2005-050719(JP,A)
【文献】特開2014-241286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体と前記第1導体を被覆する第1絶縁体とを備える複数の第1電線と、
第2導体と前記第2導体を被覆する第2絶縁体とを備える複数の第2電線がウレタン系樹脂からなる内部シースにより一括被覆されており、前記内部シースが前記複数の第1電線と接触する多芯電線と、
を備え、
前記複数の第1電線と接触する部分における前記内部シースの外周面の算術平均表面粗さRaが、
4μm以上
15μm以下である、
複合ケーブルを備
え、
車両の車輪側と車体側とを接続する、
複合ハーネス。
【請求項2】
前記複合ケーブルの端部において、前記多芯電線の端部を覆うように設けられており、前記内部シースの外周を覆うように設けられている樹脂モールドを備え、
前記樹脂モールドに覆われる部分における前記内部シースの外周面の算術平均表面粗さRaが、
4μm以上
15μm以下である、
請求項1に記載の複合ハーネス。
【請求項3】
前記複数の第1電線は、電動パーキングブレーキに駆動電流を供給するための電源線であり、
前記複数の第2電線は、車輪に搭載されたセンサ用の信号線である、
請求項1または2に記載の複合ハーネス。
【請求項4】
第1導体と前記第1導体を被覆する第1絶縁体とを備える複数の第1電線と、
第2導体と前記第2導体を被覆する第2絶縁体とを備える複数の第2電線がウレタン系樹脂からなる内部シースにより一括被覆されており、前記内部シースが前記複数の第1電線と接触する多芯電線と、
を備え、
前記複数の第1電線と接触する部分における前記内部シースの外周面の算術平均表面粗さRaが、
4μm以上
15μm以下であ
り、
車両の車輪側と車体側とを接続する、
複合ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ハーネス、及び複合ケーブルに関し、特に、車両の車輪側と車体側とを接続する複合ハーネス、及び複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両において、電動式の制動装置が用いられている。
【0003】
電動式の制動装置としては、電気機械式ブレーキ(Electro-Mechanical Brake、EMB)や、電動パーキングブレーキ(Electric Parking Brake、EPB)が知られている。
【0004】
電気機械式ブレーキは、単に電動ブレーキあるいは電気ブレーキとも呼称されるものであり、運転者によるブレーキペダルの操作量(踏力又は変位量)に応じて、車両の各車輪に備えられた専用の電気モータの回転駆動力を制御し、当該電気モータにより駆動されるピストンによりブレーキパッドを車輪のディスクロータに押し付けることにより、運転者の意図に応じた制動力を発生させるように構成されている。
【0005】
電動パーキングブレーキは、車両の停止後に運転者がパーキングブレーキ作動スイッチを操作することにより、車両の各車輪に備えられた専用の電気モータを駆動させて、当該電気モータにより駆動されるピストンによりブレーキパッドを車輪のディスクロータに押し付けた状態とし、制動力を発生させるように構成されている。
【0006】
また、近年の車両においては、走行中の車輪の回転速度を検出するABS(Anti-lock Brake System)センサや、タイヤの空気圧を検出する空気圧センサ、温度センサなどのセンサ類が車輪に搭載されることが多い。
【0007】
そこで、車輪に搭載されたセンサ用の信号線や電気機械式ブレーキの制御用の信号線と、電気機械式ブレーキや電動パーキングブレーキ用の電気モータに電力を供給する電源線とを共通のシースに収容した複合ケーブルを用い、車輪側と車体側とを接続することが行われている。この複合ケーブルの端部にコネクタやセンサ部等を一体に設けたものは、複合ハーネスと呼称されている。
【0008】
特許文献1では、複数の電源線と、複数の信号線が内部シースで一括被覆された多芯電線(被覆信号線)と、複数の電源線と多芯電線の外周を被覆する外部シースと、を備えた複合ケーブルが提案されている。
【0009】
特許文献1に記載の複合ケーブルでは、複数の電源線と多芯電線とが接触して設けられている。また、特許文献1に記載の複合ケーブルでは、内部シースおよび外部シースとしては、飛び石等によるチッピングに強く、屈曲させ易いウレタン系樹脂(熱可塑性ウレタン)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の複合ケーブルでは、多芯電線の内部シースに用いられるウレタン系樹脂は電源線との接着性(密着性)が高いため、当該高い接着性により多芯電線と電源線との相対移動が妨げられ、複合ケーブルの屈曲耐久性が低下してしまうおそれがあり、更なる改良の必要性があった。
【0012】
そこで、本発明は、複合ケーブルの屈曲耐久性を向上できる複合ハーネス、及び複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の第1電線と、前記複数の第1電線より小径の複数の第2電線がウレタン系樹脂からなる内部シースにより一括被覆されており、前記内部シースが前記第1電線と接触する多芯電線と、前記複数の第1電線と前記多芯電線の外周に被覆されている外皮と、を備えた複合ケーブルと、前記複合ケーブルの端部において、前記多芯電線の端部を覆うように設けられており、前記内部シースの外周を覆うように設けられている樹脂モールドと、を備え、少なくとも、前記内部シースの外周面のうち、前記複数の第1電線と接触する部分、および前記樹脂モールドに覆われる部分に、凹凸加工が施されている、複合ハーネスを提供する。
【0014】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の第1電線と、前記複数の第1電線より小径の複数の第2電線がウレタン系樹脂からなる内部シースにより一括被覆されており、前記内部シースが前記第1電線と接触する多芯電線と、前記複数の第1電線と前記多芯電線の外周に被覆されている外皮と、を備えた複合ケーブルと、前記複合ケーブルの端部において、前記多芯電線の端部を覆うように設けられており、前記内部シースの外周を覆うように設けられている樹脂モールドと、を備えた複合ハーネスの製造方法であって、少なくとも、前記内部シースの外周面のうち、前記複数の第1電線と接触する部分、および前記樹脂モールドに覆われる部分に、凹凸加工を施し、当該凹凸加工を施した部分の内部シースを覆うように前記樹脂モールドを形成する、複合ハーネスの製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の第1電線と、前記複数の第1電線より小径の複数の第2電線がウレタン系樹脂からなる内部シースにより一括被覆されており、前記内部シースが前記第1電線と接触する多芯電線と、前記複数の第1電線と前記多芯電線の外周に被覆されている外皮と、を備え、少なくとも、前記内部シースの外周面のうち、前記複数の第1電線と接触する部分、および前記多芯電線の端末部分に、凹凸加工が施されている、複合ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複合ケーブルの屈曲耐久性を向上できる複合ハーネス、及び複合ケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る複合ハーネスを用いた車両の構成を示すブロック図である。
【
図2】(a)は本発明の一実施の形態に係る複合ハーネスの概略構成図であり、(b)はそのA-A線断面図である。
【
図3】外皮とテープ部材とを断面で表した複合ケーブルの破断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
(複合ハーネスを適用する車両の説明)
図1は、本実施の形態に係る複合ハーネスを用いた車両の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、車両100には、電動式の制動装置として、電動パーキングブレーキ(以下、EPBという)101が備えられている。
【0021】
EPB101は、EPB用電気モータ101aと、EPB制御部101bと、を備えている。
【0022】
EPB用電気モータ101aは、車両100の車輪102に搭載されている。EPB制御部101bは、車両100のECU(電子制御ユニット)103に搭載されている。なお、EPB制御部101bは、ECU103以外のコントロールユニットに搭載されていてもよく、専用のハードウェアユニットに搭載されていてもよい。
【0023】
図示していないが、EPB用電気モータ101aには、ブレーキパッドが取り付けられたピストンが設けられており、当該ピストンをEPB用電気モータ101aの回転駆動により移動させることで、ブレーキパッドを車輪102の車輪のディスクロータに押し付け、制動力を発生させるように構成されている。EPB用電気モータ101aには、EPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線として1対の第1電線5が接続されている。
【0024】
EPB制御部101bは、車両100の停止時に、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオフ状態からオン状態に操作されたとき、所定時間(例えば1秒間)にわたってEPB用電気モータ101aに駆動電流を出力することにより、ブレーキパッドを車輪102のディスクロータに押し付けた状態とし、車輪102に制動力を発生させるように構成されている。また、EPB制御部101bは、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオン状態からオフ状態に操作されたとき、あるいは、アクセルペダルが踏込操作されたときに、EPB用電気モータ101aに駆動電流を出力し、ブレーキパッドを車輪のディスクロータから離間させて、車輪102への制動力を解除するように構成される。つまり、EPB101の作動状態は、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオンされてから、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオフされるかアクセルペダルが踏み込まれるまで維持されるように構成されている。なお、パーキングブレーキ作動スイッチ101cは、レバー式又はペダル式のスイッチであってもよい。
【0025】
また、車両100には、ABS装置104が搭載されている。ABS装置104は、ABSセンサ104aと、ABS制御部104bと、を備えている。
【0026】
ABSセンサ104aは、走行中の車輪102の回転速度を検出するものであり、車輪102に搭載されている。ABS制御部104bは、急停止時に車輪102がロックされないように、ABSセンサ104aの出力に基づいて制動装置を制御し、車輪102の制動力を制御するものであり、ECU103に搭載されている。ABSセンサ104aには、信号線として1対の第2電線6が接続されている。
【0027】
第1電線5と第2電線6とを一括して外皮4(
図2Aおよび
図2B参照)で被覆したものが、本実施の形態に係る複合ケーブル1であり、複合ケーブル1にコネクタ等の端末部材を設けたものが本実施の形態に係る複合ハーネス20である。車輪102側から延出された複合ケーブル1は、車体105に設けられた中継ボックス106内にて電線群107に接続され、電線群107を介してECU103やバッテリ(不図示)に接続されている。
【0028】
図1では、図の簡略化のために1つの車輪102のみを示しているが、EPB用電気モータ101a、およびABSセンサ104aは、車両100の各車輪102に搭載されていてもよく、例えば、車両100の前輪のみ、あるいは後輪のみに搭載されていてもよい。
【0029】
(複合ハーネス20および複合ケーブル1の説明)
図2(a)は本実施の形態に係る複合ハーネスの概略構成図であり、
図2(b)はそのA-A線断面図である。また、
図3は、外皮とテープ部材とを断面で表した複合ケーブル1の破断面図である。
【0030】
図2および
図3に示すように、複合ハーネス20は、複合ケーブル1と、複合ケーブル1の端末部に設けられたコネクタ等の端末部材と、を備えて構成されている。
【0031】
複合ケーブル1は、複数の第1電線5と、複数の第1電線5より小径の複数の第2電線6が内部シース7により一括被覆された多芯電線8と、複数の第1電線5と多芯電線8の外周に被覆されている外皮(外部シース)4と、を備えている。
【0032】
本実施の形態では、第1電線5は、車両100の車輪102に搭載されたEPB101用の電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線からなる。
【0033】
また、本実施の形態では、第2電線6は、車両100の車輪102に搭載されたABSセンサ104a用の信号線からなる。
【0034】
ここでは、複合ケーブル1が、2本の第1電線5と1本の多芯電線8の合計3本の電線2を有している場合を説明するが、電線2の本数はこれに限定されない。
【0035】
第1導体51に用いる素線としては、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。直径0.05mm未満の素線を用いた場合は十分な機械的強度が得られず耐屈曲性が低下するおそれがあり、直径0.30mmより大きい素線を用いた場合、複合ケーブル1の可撓性が低下するおそれがある。
【0036】
第1電線5の第1導体51の外径、および第1絶縁体52の厚さは、要求される駆動電流の大きさに応じて適宜設定すればよい。本実施の形態では、第1電線5がEPB101用の電気モータ101aに駆動電流を供給する電源線であることを考慮し、第1導体51の外径を1.5mm以上3.0mm以下に設定すると共に、第1電線5の外径を2.0mm以上4.0mm以下に設定した。
【0037】
第2電線6は、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた第2導体61の周囲に、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第2絶縁体62を被覆して構成された絶縁電線である。第2導体61に用いる素線としては、第1導体51と同様に、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。
【0038】
複数の第2電線6は、撚り合された状態で一括して内部シース7に被覆されている。複数の第2電線6を内部シース7で一括して被覆したものが多芯電線8である。なお、本実施の形態では、一対(2本)の第2電線6を内部シース7で一括して被覆した2芯の多芯電線8を用いる場合を説明するが、多芯電線8の芯数はこれに限定されるものではない。また、複合ケーブル1が複数の多芯電線8を有していてもよい。
【0039】
第2電線6の外径は、第1電線5の外径よりも小さい。本実施の形態では、2本の第2電線6を内部シース7で被覆した多芯電線8と1対の第1電線5とを撚り合わせるため、複合ケーブル1の外径を円形状に近づけるという観点から、第2電線6として、第1電線5の外径の半分程度のものを用いることが望ましいといえる。具体的には、第2電線6としては、外径1.0mm以上1.8mm以下、第2導体61の外径が0.4mm以上1.0mm以下のものを用いることができる。
【0040】
複合ケーブル1では、2本の第1電線5と1本の多芯電線8が撚り合され集合体9が形成されている。2本の第1電線5と1本の多芯電線8は、互いに接触した状態で撚り合されており、多芯電線8の内部シース7が第1電線5(第1絶縁体52)と接触している。なお、例えば、多数の電線2を有する場合、複数の電線2を撚り合わせた内層部の周囲に複数の電線2を螺旋状に巻き付けて外層部を形成した多層撚りの構成となっていてもよい。
【0041】
なお、EPB101では、基本的に車両の停止時に電気モータ101aに駆動電流を供給する。これに対して、ABSセンサ104aは車両の走行時に使用されるものであり、第1電線5に駆動電流が供給されているときにABSセンサ104aが使用されることはない。そこで、本実施の形態では、多芯電線8の周囲に設けられるシールド導体を省略している。シールド導体を省略することで、シールド導体を設けた場合と比較して複合ケーブル1の外径を小さくすることができ、また部品点数を削減してコストを抑制することも可能になる。
【0042】
また、ここでは第1電線5がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給する場合を説明しているが、第1電線5は、例えば、車輪102に設けられた電気機械式ブレーキ(以下、EMBという)の電気モータに駆動電流を供給するために用いられてもよい。この場合、車両100の走行中にも第1電線5に電流が流れることになるため、ノイズによるABS装置104の誤動作を抑制するために、多芯電線8の周囲にシールド導体を設けることが望ましいといえる。
【0043】
さらに、ここでは第2電線6がABSセンサ104a用の信号線である場合を説明しているが、第2電線6は、車輪102に設けられる他のセンサ、例えば温度センサやタイヤの空気圧を検出する空気圧センサ等に用いられる信号線であってもよいし、車両100の制振装置の制御に用いられるダンパ線であってもよく、さらにはEMB制御用の信号線(CANケーブル等)であってもよい。第1電線5がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するものである場合であっても、第2電線6が車両100の停車中に使用される場合には、ノイズによる誤動作を抑制するために、多芯電線8の周囲にシールド導体を設けることが望ましいといえる。
【0044】
3本の電線2(2本の第1電線5と1本の多芯電線8)を撚り合わせた集合体9の外径は、例えば、5mm~9mm程度である。集合体9における電線2の撚りピッチは、集合体9の外径を考慮し、電線2に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。ここでは、集合体9における電線2の撚りピッチを約50mmとしたが、電線2の撚りピッチはこれに限定されるものではない。なお、電線2の撚りピッチとは、任意の電線2(第1電線5または多芯電線8)が集合体9の周方向において同じ位置となる集合体9の長手方向に沿った間隔である。
【0045】
本実施の形態では、多芯電線8の内部シース7および外皮4は、ウレタン系樹脂(熱可塑性ウレタン)からなる。ウレタン系樹脂は、飛び石等によるチッピングに強く、屈曲させ易いという特性を有しており、車両100の車輪102と車体105とを接続し繰り返し屈曲される複合ケーブル1の内部シース7および外皮4として好適である。なお、内部シース7および外皮4としては、架橋処理を施した熱可塑性ウレタンを用いてもよい。
【0046】
複合ハーネス20では、1対の第1電線5の一端部には、EPB用電気モータ101aとの接続のための車輪側電源コネクタ21aが取り付けられ、1対の第1電線5の他端部には、中継ボックス106内における電線群107との接続のための車体側電源コネクタ21bが取り付けられている。
【0047】
多芯電線8(1対の第2電線6)の一端部には、ABSセンサ104aが取り付けられ、多芯電線8(1対の第2電線6)の他端部には、中継ボックス106内における電線群107との接続のための車体側ABS用コネクタ22が取り付けられている。ABSセンサ104aは、図示しないセンサ部(センサヘッド)と多芯電線8の一端部とを覆うように樹脂モールド23aを設けることで、センサ部と多芯電線8とを一体化して構成されている。また、車体側ABS用コネクタ22は、図示しない端子部と多芯電線8の他端部とを覆うように樹脂モールド23bを設けることで、端子部と多芯電線8とを一体化して構成されている。
【0048】
このように、複合ハーネス20では、複合ケーブル1の端部において、多芯電線8の端部を覆うように設けられた樹脂モールド23(23a,23b)を備えている。樹脂モールド23は、多芯電線8の端部において内部シース7の外周を覆うように設けられている。樹脂モールド23は、例えばナイロンからなる。
【0049】
ここで、内部シース7に用いているウレタン系樹脂は、表面粗さが小さい状態においては、周囲の部材に粘着し易いという特性を有している。そのため、内部シース7が第1電線5の外周面に粘着して第1電線5と多芯電線8との相対移動ができなくなり、複合ケーブル1を屈曲した際に第1電線5や多芯電線8に過大な負荷が加わってしまうおそれがある。
【0050】
また、内部シース7に用いているウレタン系樹脂は、樹脂モールド23を設けた際に樹脂モールド23に密着しにくいという特性も有している。内部シース7と樹脂モールド23とが密着しないと、樹脂モールド23内に水分が侵入してABSセンサ104aや車体側ABS用コネクタ22が故障する等の不具合が発生するおそれがある。
【0051】
そこで、本実施の形態に係る複合ハーネス20では、少なくとも、内部シース7の外周面のうち、複数の第1電線5と接触する部分、および樹脂モールドに覆われる部分である多芯電線8の端末部分に、微細な凹凸加工(エンボス加工)を施すように構成した。本実施の形態では、加工の容易さを考慮し、内部シース7の外周面全体に微細な凹凸加工を施すように構成した。
【0052】
これにより、内部シース7の表面粘着を抑えて第1電線5と多芯電線8とが相対移動し易くなり、屈曲耐久性を向上することが可能になる。また、樹脂モールド23を形成する際の熱により微細な突起が溶融することにより、内部シース7と樹脂モールド23との接着性(密着性)を向上し、樹脂モールド23内への水分の侵入を抑制することが可能になる。
【0053】
凹凸加工が施された内部シース7の外周面の算術平均表面粗さRaは、1μm以上30μm以下であることが望ましい。これは、内部シース7の外周面の算術平均表面粗さRaが1μm未満の場合、内部シース7の外周面が光沢を帯びた状態となり、表面粘着が発生してしまうおそれがあるためである。また、内部シース7の外周面の算術平均表面粗さRaが1μm未満の場合、内部シース7と樹脂モールド23とが十分に接着(密着)されないおそれがある。ここで、算術平均表面粗さRaとは、JIS B0601(2013)に準拠したパラメータ計算式により得られるものである。
【0054】
より表面粘着を抑制するという観点から、内部シース7の外周面の算術平均表面粗さRaは4μm以上であることがより好ましい。また、内部シース7の外周面の算術平均表面粗さRaが大きすぎる内部シース7の機械的強度が低下してしまうおそれがあり、また外観が明らかに劣化してしまうため、内部シース7の外周面の算術平均表面粗さRaは15μm以下であることがより好ましい。つまり、内部シース7の外周面の算術平均表面粗さRaは、4μm以上15μm以下であることがより好ましいといえる。
【0055】
内部シース7は押出機を用いた押出成形により形成される。この押出成形時の条件、すなわち押出成形時の設定温度とライン速度(樹脂の流れる速度)により、内部シース7の外周面の表面粗さをコントロールすることができる。例えば、押出成形時の設定温度をより低くして樹脂の粘度を高くすることにより、内部シース7の表面粗さをより大きくすることができる。また、ライン速度をより速く設定することにより、樹脂に作用するせん断応力をより大きくして、内部シース7の表面粗さをより大きくすることができる。押出成形時の設定温度とライン速度は、押出機のサイズ等に応じて適宜設定可能であり、内部シース7の外周面の算術平均表面粗さRaが1μm以上(より好ましくは4μm以上15μm以下)となる条件にて押出成形を行うとよい。
【0056】
また、外皮4を集合体9の周囲に直接設けた場合、外皮4として用いるウレタン系樹脂の表面粘着の影響により、外皮4と集合体9(第1電線5と多芯電線8)とが相対移動しにくくなり、屈曲耐久性が低下してしまうことが考えられる。外皮4と集合体9との間(電線2の周囲)にタルク粉体等の潤滑剤を塗布することも考えられるが、この場合、端末処理等の作業時に潤滑剤が周囲に飛散して作業性が低下してしまうという問題が生じる。
【0057】
そこで、本実施の形態では、複数の第1電線5と多芯電線8とが互いに撚り合された集合体9の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材3を備え、テープ部材3の周囲に、ウレタン系樹脂からなる外皮4を被覆するように構成した。テープ部材3は、集合体9と外皮4との間に介在し、屈曲時に電線2(第1電線5と多芯電線8)と外皮4間の摩擦を低減する役割を果たすと共に、端末処理時に外皮4から電線2を剥がし易くする役割を果たす。このように、テープ部材3を設けることで、タルク粉体等の潤滑剤を用いずとも、電線2と外皮4間の摩擦を低減し、屈曲時に電線2にかかるストレスを低減して耐屈曲性を向上させることが可能になると共に、端末処理時の作業性を向上できる。
【0058】
テープ部材3としては、第1電線5の第1絶縁体52、および内部シース7に対して滑りやすいもの(摩擦係数が小さいもの)を用いることが望ましく、例えば、不織布や紙、あるいは樹脂(樹脂フィルム等)からなるものを用いることができる。より具体的には、テープ部材3としては、テープ部材3と第1絶縁体52及び内部シース7間の摩擦係数(静摩擦係数)が、テープ部材3を設けなかった際における外皮4と第1絶縁体52及び内部シース7間の摩擦係数(静摩擦係数)よりも小さい部材を用いるとよい。
【0059】
なお、テープ部材3としては、2層以上の積層構造となっているものも用いることができる。この場合、テープ部材3の集合体9と接触する面が、不織布、紙、樹脂層のいずれかからなるものを用いればよい。例えば、テープ部材3として、紙の一方の面に樹脂層を形成したものを用い、より摩擦係数が小さい樹脂層を集合体9側として巻き付けるように構成することもできる。
【0060】
本実施の形態では、厚さ0.07mmのポリエステル系の不織布からなるテープ部材3を用いた。テープ部材3として用いる不織布の厚さは、0.03mm以上0.10mm以下とすることが望ましい。これは、不織布の厚さが0.03mm未満であると、外皮4を被覆する際に外皮4の一部がテープ部材3を透過して電線2側に到達してしまい、端末処理時の作業性が低下するおそれがあり、不織布の厚さが0.10mmを超えると、テープ部材3の剛性が高くなり複合ケーブル1の可撓性が低下するおそれがあるためである。
【0061】
テープ部材3は、その幅方向(テープ部材3の長手方向および厚さ方向と垂直な方向)の一部が重なり合うように、螺旋状に集合体9に巻き付けられる。テープ部材3が重なり合う幅は、例えば、テープ部材3の幅の1/4以上1/2以下である。
【0062】
テープ部材3の幅は、テープ部材3を巻き付けた際にテープ部材3に皺が寄らない程度の幅とすればよく、集合体9全体の外径が小さくなるほど幅の狭いテープ部材3を用いることが望ましい。具体的には、集合体9の外径が5mm~9mmである場合、テープ部材3の幅は、20mm~50mm程度とすればよい。
【0063】
テープ部材3の巻きピッチ、すなわちテープ部材3が周方向の同じ位置となる長手方向に沿った間隔(例えば幅方向の一端部同士の間隔)は、テープ部材3の幅および重なり幅により調整することが可能である。なお、テープ部材3の幅を大きくし、巻きピッチを大きくしていくと、テープ部材3を縦添えした状態に近くなり、複合ケーブル1の柔軟性が失われて曲げにくくなる。そのため、テープ部材3の巻きピッチは、50mm以下とすることが望ましい。
【0064】
なお、本実施の形態では、第1電線5がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するものであり、第1電線5に駆動電流が流れる時間が比較的短いためシールド導体を省略しているが、第1電線5の用途等に応じて、テープ部材3と外皮4との間、あるいは外皮4の外周にシールド導体を設けてもよい。
【0065】
また、本実施の形態に係る複合ケーブル1では、テープ部材3と外皮4は、最外層に配置され周方向に隣り合う2本の電線2(隣り合う2本の第1電線5、または第1電線5と多芯電線8)の外周面を通る共通の接線よりも内方に突出し、隣り合う電線2の間に入り込むように形成されている内方突出部10を有し、内方突出部10が、ケーブル長手方向に沿って螺旋状に形成されている。
図2(b)では、2本の第1電線5の外周面を通る共通の接線を符号11で表している。なお、3本以上の電線2を用いる場合、隣り合う2本の電線2の外周面を通る共通の接線は、複合ケーブル1の内周側と外周側に存在するが、ここでいう共通の接線とは、複合ケーブル1の外周側の接線をいう。また、ここでいう共通の接線とは、ケーブル長手方向に対して垂直な方向の接線である。
【0066】
すなわち、本実施の形態では、隣り合う電線2の外方の谷間部分に、テープ部材3と外皮4とが入り込んでいる。複合ケーブル1では、電線2と電線2との間における谷間部分において、電線2とテープ部材3とが接触していると共に、テープ部材3と外皮4とが接触している。
【0067】
これにより、電線2の周囲に形成される中空部を小さくし、複合ケーブル1に曲げや捩じれが加えられた際であっても座屈が生じにくくなる。また、テープ部材3が電線2間の谷間部分に入り込んでおり、かつ外皮4により径方向外方への移動が規制された状態となっているため、テープ部材3がケーブル長手方向に移動しにくくなる。すなわち、電線2と電線2との間における谷間部分において、テープ部材3が外皮4と電線2とに挟まれた状態となり、テープ部材3のケーブル長手方向の相対移動を抑制することが可能になる。
【0068】
内方突出部10の内方への突出長が短いと、座屈抑制の効果およびテープ部材3の移動を抑制する効果が十分に得られないおそれがあるため、内方突出部10の内方への突出長、すなわち、隣り合う電線2の外周面を通る共通の接線と内方突出部10の先端部との距離dは、複数の電線2のうち最も外径が大きい電線2(ここでは第1電線5)の外径の3%以上、好ましくは10%以上であることが望ましい。
【0069】
例えば、第1電線5の外径を3mmとする場合には、距離dは少なくとも0.1mm以上とすることが望ましいといえる。使用する電線2の外径にもよるが、内方突出部10を有することによる効果を得るためには、距離dが少なくとも0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上であることが望ましいといえる。なお、距離dは常に一定である必要はなく、多少の変動は許容される。
【0070】
さらに、内方突出部10の突出長が大きすぎると、端末処理時(例えば外皮4を除去するストリップ作業時)の作業性が低下してしまうおそれがあるため、距離dは複数の電線2のうち最も外径が大きい電線2(ここでは第1電線5)の外径の40%以下、好ましくは35%以下とすることが望ましい。使用する電線2の外径にもよるが、外皮4を容易に除去するという観点からは、距離dを1mm以下とすることが望ましいといえる。
【0071】
複数の電線2の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向とが異なると、テープ部材3が隣り合う電線2の谷間部分に入り込みにくくなるため、複数の電線2の撚り方向と、テープ部材3の巻き付け方向とは、同じ方向であることが望ましい。これにより、テープ部材3を集合体9に巻き付ける際に適宜な張力を付与しつつ巻き付けることで、テープ部材3を容易に隣り合う電線2の谷間部分に入り込ませることが可能になる。その後、押出被覆によりテープ部材3の周囲に外皮4を設ければ、内方突出部10が形成されることになる。
【0072】
なお、ここでいう電線2の撚り方向とは、ケーブル1を先端側(テープ部材3の重なりが上となる側)から見たときに、電線2が基端側から先端側にかけて回転している方向をいう。また、テープ部材3の巻き付け方向とは、ケーブル1を先端側(テープ部材3の重なりが上となる側)から見た時に、テープ部材3が基端側から先端側にかけて回転している方向をいう。
【0073】
また、電線2の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向とを同じ方向とすることで、端末加工をする際に、テープ部材3をほどくと電線2の撚りが自然にほぐれることになり、電線2をほぐし易くなる。これにより、ケーブル1の解体性が向上し、端末加工を行う際の作業性が向上する。
【0074】
また、電線2の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向とを同じ方向とすることで、ケーブル1に捩れが加わった際に、電線2とテープ部材3とが同調して開いたり閉じたりすることになり、捩れによる負荷を分散してケーブル1の一部分に過大な負荷が加わることを抑制でき、捩れに対する耐久性を向上させることが可能になる。
【0075】
電線2の撚りピッチを小さくすると、ケーブル1を曲げやすくなり可撓性が向上するが、撚りに余裕がなくなり捩れに対する耐久性は低下してしまう。逆に、電線2の撚りピッチを大きくすると、捩じれに対する耐久性は向上するが可撓性は低下する。本実施の形態では、捩れが加わった際に、電線2とテープ部材3とが同調して開いたり閉じたりして負荷を分散できるため、電線2の撚りピッチを小さくして可撓性を向上させた場合であっても、捩れに対する耐久性を十分に確保することが可能である。
【0076】
また、テープ部材3をより容易に隣り合う電線2の谷間部分に入り込ませるために、複数の電線2の撚りピッチと、テープ部材3の巻きピッチとは、等しくされることが望ましいといえる。なお、複数の電線2の撚りピッチとテープ部材3の巻きピッチとが多少異なっていてもよく、テープ部材3の巻きピッチは、電線2の撚りピッチの±10%以内とされることが望ましい。
【0077】
内方突出部10は、ケーブル1の長手方向全体にわたって形成されていることが望ましいが、内方突出部10が途中で途切れていてもよい。つまり、ケーブル1は、その長手方向の一部において、内方突出部10が形成されていなくてもよい。例えば、ケーブル1の端末部分(端末から所定距離)においてテープ部材3の巻きピッチを変化させるなどして、内方突出部10を形成しない(あるいは内方突出部10の突出長(距離d)を小さくする)ようにし、端末処理時の作業性を向上させることも可能である。
【0078】
本実施の形態では、3本の電線2の間(谷間部分)のそれぞれに内方突出部10が形成されている場合を説明したが、これに限らず、少なくとも電線2の間(谷間部分)のうち一箇所に、内方突出部10が形成されていればよい。
【0079】
また、本実施の形態では、テープ部材3と外皮4の両方が接線11よりも内方に突出するように構成したが、これに限らず、例えばテープ部材3として比較的厚いものを用いる場合等は、テープ部材3のみが接線11よりも内方に突出する構成であってもよい。
【0080】
複合ハーネス20を製造する際には、まず、1対の第2電線6の周囲に押出成形により内部シース7を被覆し、多芯電線8を形成する。内部シース7を被覆する際には、設定温度やライン速度等の押出成形時の条件を適宜調整することにより、ケーブル長手方向にわたって内部シース7の外周面全体に凹凸加工が施された状態とする。なお、内部シース7の外周面全体に凹凸加工が施された状態となっていなくてもよいが、少なくとも、内部シース5の外周面のうち、両第1電線5と接触する部分、および樹脂モールド23に覆われる端末部分には、凹凸加工が施された状態となっている必要がある。
【0081】
その後、多芯電線8と一対の第1電線5とを撚り合わせて集合体9を形成すると共に、集合体9の周囲に螺旋状にテープ部材3を巻き付け、テープ部材3の周囲に押出成形により外皮4を被覆して複合ケーブル1を製造する。集合体9の周囲に螺旋状にテープ部材3を巻き付ける際には、適宜な張力を付与して電線2間の谷間部分にテープ部材3を入り込ませるとよい。
【0082】
その後、得られた複合ケーブル1の両端末部において、外皮4を除去して第1電線5と多芯電線8を露出させ、露出させた第1電線5の両端末に車輪側電源コネクタ21aと車体側電源コネクタ21bをそれぞれ設けると共に、多芯電線8の両端末にABSセンサ104aと車体側ABS用コネクタ22をそれぞれ設ける。ABSセンサ104aおよび車体側ABS用コネクタ22を設ける際には、凹凸加工を施した端末部分の内部シース7を覆うように樹脂モールド23(23a,23b)を形成し、内部シース7と樹脂モールド23との接着性(密着性)を確保する。以上により、複合ハーネス20が得られる。
【0083】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る複合ハーネス20では、少なくとも、内部シース7の外周面のうち、複数の第1電線5と接触する部分、および樹脂モールド23に覆われる部分に、凹凸加工が施されている。
【0084】
このように構成することで、ウレタン系樹脂からなる内部シース7の表面粘着を抑えて第1電線5と多芯電線8とが相対移動し易くなり、複合ケーブル1を屈曲した際に第1電線5や多芯電線8に過大な負荷が加わってしまうことを抑制し、屈曲耐久性を向上することが可能になる。また、樹脂モールド23を形成する際の熱により微細な突起が溶融することにより、内部シース7と樹脂モールド23との接着性(密着性)を向上させることが可能になり、樹脂モールド23内への水分の侵入を抑制することが可能になる。
【0085】
また、本実施の形態に係る複合ハーネス20では、テープ部材3と外皮4は、最外層に配置され周方向に隣り合う2本の電線2の外周を通る共通の接線11よりも内方に突出し、隣り合う電線2の谷間部分に間に入り込むように形成されており、ケーブル長手方向に沿って螺旋状に形成されている内方突出部10を有している。
【0086】
電線2の谷間部分に入り込む内方突出部10を有することにより、内方突出部10を有さない場合と比較して電線2の周囲の中空部を小さくし、ケーブル1に曲げや捩じれが加えられた場合であっても、複合ケーブル1が座屈してしまうことを抑制可能になる。
【0087】
また、内方突出部10がテープ部材3の移動を抑制するため、テープ部材3がケーブル長手方向に移動してしまうことを抑制でき、複合ケーブル1の一部でテープ部材3が重なり合い可撓性が低下してしまう等の不具合を抑制することが可能になる。
【0088】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0089】
[1]複数の第1電線(5)と、前記複数の第1電線(5)より小径の複数の第2電線(6)がウレタン系樹脂からなる内部シース(7)により一括被覆されており、前記内部シース(7)が前記第1電線(5)と接触する多芯電線(8)と、前記複数の第1電線(5)と前記多芯電線(8)の外周に被覆されている外皮(4)と、を備えた複合ケーブル(1)と、前記複合ケーブル(1)の端部において、前記多芯電線(8)の端部を覆うように設けられており、前記内部シース(7)の外周を覆うように設けられている樹脂モールド(23)と、を備え、少なくとも、前記内部シース(7)の外周面のうち、前記複数の第1電線(5)と接触する部分、および前記樹脂モールド(23)に覆われる部分に、凹凸加工が施されている、複合ハーネス(20)。
【0090】
[2]前記内部シース(7)の外周面全体に凹凸加工が施されている、[1]に記載の複合ハーネス(20)。
【0091】
[3]前記凹凸加工が施された前記内部シース(7)の外周面の算術平均表面粗さRaが、1μm以上である、[1]または[2]に記載の複合ハーネス(20)。
【0092】
[4]前記複合ケーブル(1)は、前記複数の第1電線(5)と前記多芯電線(8)とが互いに撚り合された集合体(9)の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材(3)を備え、前記テープ部材(3)の周囲に、ウレタン系樹脂からなる前記外皮(4)が被覆されている、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の複合ハーネス(20)。
【0093】
[5]前記テープ部材(3)と前記外皮(4)は、最外層に配置され周方向に隣り合う2本の前記第1電線(5)、または前記第1電線(5)と前記多芯電線(8)の外周を通る共通の接線よりも内方に突出し、前記隣り合う2本の前記第1電線(5)の間、または前記第1電線(5)と前記多芯電線(8)との間の谷間部分に入り込むように形成されており、ケーブル長手方向に沿って螺旋状に形成されている内方突出部(10)を有する、[4]に記載の複合ハーネス(20)。
【0094】
[6]前記第1電線(5)が、車両(100)の車輪(102)に搭載された電動パーキングブレーキ(101)用の電気モータ(101a)に駆動電流を供給するための電源線からなる、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の複合ハーネス(20)。
【0095】
[7]前記第2電線(6)は、車両(100)の車輪(102)に搭載されたセンサ用の信号線からなる、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の複合ハーネス(20)。
【0096】
[8]複数の第1電線(5)と、前記複数の第1電線(5)より小径の複数の第2電線(6)がウレタン系樹脂からなる内部シース(7)により一括被覆されており、前記内部シース(7)が前記第1電線(5)と接触する多芯電線(8)と、前記複数の第1電線(5)と前記多芯電線(8)の外周に被覆されている外皮(4)と、を備えた複合ケーブルと、前記複合ケーブル(1)の端部において、前記多芯電線(8)の端部を覆うように設けられており、前記内部シース(7)の外周を覆うように設けられている樹脂モールド(23)と、を備えた複合ハーネス(20)の製造方法であって、少なくとも、前記内部シース(7)の外周面のうち、前記複数の第1電線(5)と接触する部分、および前記樹脂モールド(23)に覆われる部分に、凹凸加工を施し、当該凹凸加工を施した部分の内部シース(7)を覆うように前記樹脂モールド(23)を形成する、複合ハーネス(20)の製造方法。
【0097】
[9]複数の第1電線(5)と、前記複数の第1電線(5)より小径の複数の第2電線(6)がウレタン系樹脂からなる内部シース(7)により一括被覆されており、前記内部シース(7)が前記第1電線(5)と接触する多芯電線(8)と、前記複数の第1電線(5)と前記多芯電線(8)の外周に被覆されている外皮(4)と、を備え、少なくとも、前記内部シース(7)の外周面のうち、前記複数の第1電線(5)と接触する部分、および前記多芯電線(8)の端末部分に、凹凸加工が施されている、複合ケーブル(1)。
【0098】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0099】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0100】
例えば、上記実施の形態では、第1電線5が電源線である場合を説明したが、第1電線5は電源線である必要はなく、信号線であってもよい。
【0101】
また、上記実施の形態では、外皮4を1層の構成としたが、2層以上の構成としてもよい。外皮4を2層以上の構成とし、押出被覆を複数回行うことで、複合ケーブル1の断面形状をより円形状に近づけて外観を向上することが可能になる。
【0102】
また、上記実施の形態では、複合ハーネス20が車両100の車輪102側と車体105側とを接続するものである場合を説明したが、複合ハーネス20の用途はこれに限定されず、車両以外の用途に用いられるものであってもよい。
【0103】
また、上記実施の形態では、撚り合わせた電線2の周囲に螺旋状にテープ部材3を巻き付けたが、電線2は撚り合されていなくてもよく、またテープ部材3が縦添えで巻き付けられていてもよい。
【0104】
また、上記実施の形態では、テープ部材3と外皮4とが内方突出部10を有する場合を説明したが、内方突出部10は省略可能である。内方突出部10を省略する場合、電線2の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向とを異ならせることで断面形状をより円形状に近づけ、外観の向上を図ると共に、外皮4とテープ部材3を専用のストリップ装置等でより容易に除去できるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0105】
1…複合ケーブル
3…テープ部材
4…外皮
5…第1電線
6…第2電線
7…内部シース
8…多芯電線
9…集合体
10…内方突出部
20…複合ハーネス
23…樹脂モールド