IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大陽日酸株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-圧力変動吸着式ガス分離装置 図1
  • 特許-圧力変動吸着式ガス分離装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-02
(45)【発行日】2023-06-12
(54)【発明の名称】圧力変動吸着式ガス分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/047 20060101AFI20230605BHJP
   C01B 23/00 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
B01D53/047
C01B23/00 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021214396
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2022-11-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 正也
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/055035(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/116623(WO,A1)
【文献】特開2006-061831(JP,A)
【文献】特開2002-137909(JP,A)
【文献】特開2003-192315(JP,A)
【文献】特開2003-071231(JP,A)
【文献】特開2002-126435(JP,A)
【文献】特開2004-000819(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146211(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/12
C01B 15/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の成分を含有する原料ガスから圧力変動吸着式ガス分離方法を用いて前記成分を分離し、回収する装置であって、
1以上の前記成分に対して易吸着性を有し、他の前記成分に対して難吸着性を有する吸着剤を充填する、1以上の吸着筒と、
前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、
前記吸着から導出される易吸着性の前記成分を貯留する易吸着成分貯留槽と、
前記原料ガス貯留槽又は易吸着成分貯留槽から導出されるガスを圧縮し、前記吸着筒に供給する圧縮機と、
前記圧縮機と前記吸着との間に位置する第1流路と、
第1分岐点において、前記第1流路から分岐し、前記第1分岐点と前記易吸着成分貯留槽との間に位置する第2流路と、
前記第2流路に位置する第1開閉装置と
第2分岐点において、前記第1流路から分岐し、前記第2分岐点と前記原料ガス貯留槽との間に位置する第3流路と、
前記第3流路に位置する第2開閉装置と、を備え、
前記第1開閉装置の内部から前記第1分岐点までの経路の容積が、前記圧縮機が1分間に吸引するガス容積の0.1体積%以下である場所に、前記第1開閉装置が位置し、
前記第2開閉装置の内部から前記第2分岐点までの経路の容積が、前記圧縮機が1分間に吸引するガス容積の0.1体積%以下である場所に、前記第2開閉装置が位置する、圧力変動吸着式ガス分離装置。
【請求項2】
前記第1分岐点と前記吸着筒との間の前記第1流路の容積が、前記圧縮機が1分間に吸引するガス容積の1体積%以下である場所に、前記第1分岐点が位置する、請求項1に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
【請求項3】
前記第2分岐点と前記吸着筒との間の前記第1流路の容積が、前記圧縮機が1分間に吸引するガス容積の1体積%以下である場所に、前記第2分岐点が位置する、請求項2に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
【請求項4】
2以上の成分を含有する原料ガスから圧力変動吸着式ガス分離方法を用いて前記成分を分離し、回収する装置であって、
1以上の前記成分に対して易吸着性を有し、他の前記成分に対して難吸着性を有する吸着剤を充填する、1以上の吸着筒と、
前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、
前記吸着筒から導出される易吸着性の前記成分を貯留する易吸着成分貯留槽と、
前記原料ガス貯留槽又は易吸着成分貯留槽から導出されるガスを圧縮し、前記吸着筒に供給する圧縮機と、
前記圧縮機と前記吸着筒との間に位置する第1流路と、
第1分岐点において、前記第1流路から分岐し、前記第1分岐点と前記易吸着成分貯留槽との間に位置する第2流路と、
前記第2流路に位置する第1開閉装置と、
前記吸着筒と前記原料ガス貯留槽とを接続する第3流路と、を備え、
前記第3流路の一端は前記吸着筒に直接接続されており、
前記第1開閉装置の内部から前記第1分岐点までの経路の容積が、前記圧縮機が1分間に吸引するガス容積の0.1体積%以下である場所に、前記第1開閉装置が位置する、圧力変動吸着式ガス分離装置。
【請求項5】
前記第1分岐点と前記吸着筒との間の前記第1流路の容積が、前記圧縮機が1分間に吸引するガス容積の1体積%以下である場所に、前記第1分岐点が位置する、請求項4に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
【請求項6】
2以上の成分を含有する原料ガスから圧力変動吸着式ガス分離方法を用いて前記成分を分離し、回収する装置であって、
1以上の前記成分に対して易吸着性を有し、他の前記成分に対して難吸着性を有する吸着剤を充填する、1以上の吸着筒と、
前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、
前記吸着筒から導出される易吸着性の前記成分を貯留する易吸着成分貯留槽と、
前記原料ガス貯留槽又は易吸着成分貯留槽から導出されるガスを圧縮し、前記吸着筒に供給する圧縮機と、
前記圧縮機と前記吸着筒との間に位置する第1流路と、
第1分岐点において、前記第1流路から分岐し、前記第1分岐点と前記易吸着成分貯留槽との間に位置する第2流路と、
前記第2流路に位置する第1開閉装置と、
第2分岐点において、前記第1流路から分岐し、前記第2分岐点と前記原料ガス貯留槽との間に位置する第3流路と、を備え、
前記第1開閉装置の内部から前記第1分岐点までの経路の容積が、前記圧縮機が1分間に吸引するガス容積の0.1体積%以下である場所に、前記第1開閉装置が位置し、
前記第1分岐点が、前記第2分岐点よりも前記吸着筒に対して近い、圧力変動吸着式ガス分離装置。
【請求項7】
前記第1分岐点と前記吸着筒との間の前記第1流路の容積が、前記圧縮機が1分間に吸引するガス容積の1体積%以下である場所に、前記第1分岐点が位置する、請求項6に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
【請求項8】
前記第2分岐点と前記吸着筒との間の前記第1流路の容積が、前記圧縮機が1分間に吸引するガス容積の1体積%以下である場所に、前記第2分岐点が位置する、請求項7に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力変動吸着式ガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路、液晶パネル等の半導体製品を製造する工程では、希ガス雰囲気中で高周波放電によりプラズマを発生させ、該プラズマによって半導体製品もしくは表示装置の各種処理を行う装置が広く用いられている。このような処理において使用される希ガスとして、従来はアルゴンが用いられてきたが、近年はより高度な処理を行うためにクリプトンやキセノンが注目されている。しかし、クリプトンやキセノンは、原料となる空気中の存在比及び分離工程の複雑さから極めて希少で高価なガスであるため、使用済みの希ガスを回収し、再利用することが極めて重要となる。なお、希ガスを再利用するためには、少なくとも99%以上の濃度が求められる。
【0003】
ここで、キセノンやクリプトンを分離する装置としては、キセノンまたはクリプトンと、不純物である他成分とを含む原料ガスを、キセノンやクリプトンに対して易吸着性で、不純物である他成分に対して難吸着性の吸着剤を充填した吸着筒に流し、易吸着成分であるキセノンまたはクリプトンを吸着剤に吸着させ、難吸着成分である不純物をキセノンやクリプトンと分離するとともに、吸着剤に吸着したキセノンまたはクリプトンを吸着剤より脱離させて高濃度で回収する方法がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、直列に接続した2本の吸着筒(上部筒、下部筒)に原料ガス貯留槽の原料ガスを加圧して流し、易吸着成分であるキセノンまたはクリプトンを吸着し、難吸着成分である不純物を分離する工程aと、易吸着成分貯留槽に充填されたキセノンまたはクリプトンを加圧して下部筒に導入し、これの空隙に残る難吸着成分である不純物を上部筒に導出し、上部筒において易吸着成分であるキセノンまたはクリプトンを吸着し、上部筒より難吸着成分である不純物を回収する工程bと、下部筒を減圧し、易吸着成分であるキセノンまたはクリプトンを吸着剤より脱離させて易吸着成分貯留槽に回収する工程cと、上部筒を減圧し、吸着剤に吸着した成分を脱離させて下部筒に導入し、さらに下部筒より流出したガスを原料ガス貯留槽に回収する工程dと、先に回収した難吸着成分である不純物を上部筒に導入し、易吸着成分であるキセノンまたはクリプトンを吸着剤より脱離させて下部筒に導入し、さらに下部筒より流出したガスを原料ガス貯留槽に回収する工程eとを備え、これらの工程a~eをシーケンスに従って順次行う分離方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献1には、吸着筒の下部筒に、原料ガス貯留槽の原料ガスを加圧して導入する流路と、易吸着成分貯留槽のガスを加圧して導入する流路と、上部筒と接続する流路と、原料ガス貯留槽に減圧して排出する流路と、易吸着成分貯留槽に減圧して排出する流路が位置し、各流路にガス流れを制御するバルブが設けられた装置が開示されている。そして、特許文献1に開示された装置では、下部筒とこれらの流路に設けられたバルブの間に、バルブを接続するために必要となる配管が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-61831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された分離方法及び装置には、以下の課題がある。
上述した工程aでは、特許文献1の図1中に示すように、原料ガス貯留槽1から下部筒10Bに導入された原料ガスが、下部筒10Bから、易吸着成分貯留槽2に接続する配管L9に設けられたバルブV12と下部筒10Bとの間の配管に流入する。
次いで、上述した工程bでは、易吸着成分貯留槽2の易吸着成分ガスが、配管L4を通じて下部筒10Bに導入される。しかしながら、上述した配管L9のうち、バルブV12と下部筒10Bとの間であって、バルブV12の近傍には、易吸着成分ガスが流れないため、原料ガスが存在し続ける。
その結果、上述した工程cにおいて、上述した配管L9のうち、バルブV12と下部筒10Bとの間であって、バルブV12の近傍に存在する原料ガスが、易吸着成分貯留槽2に排出される。原料ガスに含まれる難吸着成分は、易吸着成分貯留槽2の易吸着成分ガスの不純物であるため、分離した易吸着成分の純度を低下させる要因となる。特に、原料ガスの難吸着成分の濃度が高いと、上述した配管L9のうち、バルブV12と下部筒10Bとの間の容積が少なくても、純度を低下させる要因としては非常に大きい。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高純度の易吸着成分を回収できる圧力変動吸着式ガス分離装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 2以上の成分を含有する原料ガスから圧力変動吸着式ガス分離方法を用いて前記成分を分離し、回収する装置であって、
1以上の前記成分に対して易吸着性を有し、他の前記成分に対して難吸着性を有する吸着剤を充填する、1以上の吸着筒と、
前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、
前記吸着筒から導出される易吸着性の前記成分を貯留する易吸着成分貯留槽と、
前記原料ガス貯留槽又は易吸着成分貯留槽から導出されるガスを圧縮し、前記吸着筒に供給する圧縮機と、
前記圧縮機と前記吸着塔との間に位置する第1流路と、
第1分岐点において、前記第1流路から分岐し、前記第1分岐点と前記易吸着成分貯留槽との間に位置する第2流路と、
前記第2流路に位置する第1開閉装置と、を備え、
前記第1開閉装置が、前記第1分岐点寄りに位置する、圧力変動吸着式ガス分離装置。
[2] 前記第1分岐点が、前記吸着塔寄りに位置する、[1]に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
[3] 第2分岐点において、前記第1流路から分岐し、前記第2分岐点と前記原料ガス貯留槽との間に位置する第3流路と、
前記第3流路に位置する第2開閉装置と、をさらに備え、
前記第2開閉装置が、前記第2分岐点寄りに位置する、[1]又は[2]に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
[4] 前記第2分岐点が、前記吸着塔寄りに位置する、[3]に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧力変動吸着式ガス分離装置は、高純度の易吸着成分を回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態である圧力変動吸着式ガス分離装置の構成を示す模式図である。
図2】本発明の第2実施形態である圧力変動吸着式ガス分離装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
<第1実施形態>
先ず、本発明の第1の実施形態である圧力変動吸着式ガス分離装置を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態である圧力変動吸着式ガス分離装置50の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態の圧力変動吸着式ガス分離装置(以下、単に「PSA装置」ともいう)50は、2以上の成分を含有する原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽1、易吸着性の成分(易吸着成分)を貯留する易吸着成分貯留槽2、難吸着性の成分(難吸着成分)を貯留する難吸着成分貯留槽3、圧縮機4、圧縮機5、下部筒10B,11B、上部筒10U,11Uの4つの吸着筒、経路L1~L17、及び開閉弁V1~V15を備えて、概略構成されている。本実施形態のPSA装置50は、2以上の成分を含有する原料ガスから圧力変動吸着式ガス分離方法を用いてこれらの成分を分離し、それぞれ高濃度のガス成分として回収する装置である。
【0014】
原料ガス貯留槽1、易吸着成分貯留槽2、及び難吸着成分貯留槽3は、いずれも気体成分(原料ガス、易吸着成分、及び難吸着成分)を貯留することが可能な容器である。これらの容器の形状や大きさ(容量)は、特に限定されるものではなく、供給量、回収量等に応じて、適宜選択することができる。また、これらの容器の材質は、貯留する気体によって腐食しない材質であれば、特に限定されるものではない。
【0015】
原料ガスは、2以上の成分を含有する混合ガスである。混合ガスとしては、2以上の気体成分を含有するものであれば、特に限定されない。このような混合ガスとしては、例えば、窒素ガスとキセノンとの2つの気体成分を含む混合ガスが挙げられる。
【0016】
下部筒10B、11B、及び上部筒10U、11Uは、それぞれ筒状容器の内側の空間に吸着剤が充填された吸着筒である。これらの吸着筒の形状や大きさ(容量)は、特に限定されるものではなく、供給量、回収量等に応じて、適宜選択することができる。また、これらの吸着筒の材質は、貯留する気体によって腐食しない材質であれば、特に限定されるものではない。
【0017】
下部筒10B、11B、及び上部筒10U、11Uには、それぞれ吸着剤が充填されている。吸着剤としては、原料ガス中の目的成分に対して易吸着性あるいは難吸着性を有し、目的成分以外の成分に対して難吸着性あるいは易吸着性を有するものであれば、特に限定されない。
【0018】
例えば、原料ガスが窒素ガスとキセノンとの2つの気体成分を含む混合ガスである場合、吸着剤として活性炭を用いることができる。ここで、活性炭は、平衡吸着量としてキセノンの吸着量が多く(易吸着性)、窒素の吸着量が少ない(難吸着性)という性質を持つ。
【0019】
経路L1~L17は、上述した各構成にガスを導入、又は各構成からガスを導出するガス経路である。
経路L1は、原料ガスを原料ガス貯留槽1に導入する経路である。
経路L2は、一端が原料ガス貯留槽1に接続し、他端が分岐点Tにおいて経路L3及び経路L15と接続する。すなわち、経路L2は、原料ガス貯留槽1のガスを圧縮機4へ導出するガス経路の一部である。
経路L3は、一端が易吸着成分貯留槽2に接続し、他端が分岐点Tにおいて経路L2及び経路L15と接続する。すなわち、経路L3は、易吸着成分貯留槽2のガスを圧縮機4へ導出するガス経路の一部である。
【0020】
経路L4は、経路L15から分岐し、下部筒10Bに接続されている。すなわち、経路L4は、圧縮機4から導出される圧縮されたガスを下部筒10Bに導入するガス経路(第1流路)の一部である。また、経路L4の下部筒10Bの一次側には、分岐点P,Rがそれぞれ位置する。
経路L5は、経路L15から分岐し、下部筒11Bに接続されている。すなわち、経路L5は、圧縮機4から導出される圧縮されたガスを下部筒11Bに導入するガス経路(第1流路)の一部である。また、経路L5の下部筒11Bの一次側には、分岐点Q,Sがそれぞれ位置する。
【0021】
経路L6は、経路L4、及び経路L5とそれぞれ合流し、上部筒10U、11Uより導出される難吸着成分を難吸着成分貯留槽3に導入するガス経路である。
経路L7は、難吸着成分貯留槽3から導出される難吸着成分を装置系外に排出するガス経路である。
経路L8は、難吸着成分貯留槽3から導出される難吸着成分を上部筒10U、11Uにそれぞれ導入するガス経路の一部である。
【0022】
経路L9は、経路L4を介して下部筒10Bに接続され、経路L17を介して原料ガス貯留槽1に接続されている。具体的には、経路L9は、経路L4(第1流路)に位置する分岐点(第2分岐点)Rにおいて、経路L4から分岐し、経路L10及び経路L17と合流する。すなわち、経路L9は、経路L4と経路L17との間に位置し、下部筒10Bからのガスを原料ガス貯留槽1に返送する流路(第3流路)の一部である。
経路L10は、経路L5を介して下部筒11Bに接続され、経路L17を介して原料ガス貯留槽1に接続されている。具体的には、経路L10は、経路L5(第1流路)に位置する分岐点(第2分岐点)Sにおいて、経路L5から分岐し、経路L9及び経路L17と合流する。すなわち、経路L10は、経路L5と経路L17との間に位置し、下部筒11Bからのガスを原料ガス貯留槽1に返送する流路(第3流路)の一部である。
【0023】
経路L11は、経路L4を介して下部筒10Bに接続され、経路L16を介して易吸着成分貯留槽2に接続されている。具体的には、経路L11は、経路L4(第1流路)に位置する分岐点(第1分岐点)Pにおいて、経路L4から分岐し、経路L12及び経路L16と合流する。すなわち、経路L11は、経路L4と経路L16との間に位置し、下部筒10Bからのガスを易吸着成分貯留槽2に返送する流路(第2流路)の一部である。
経路L12は、経路L5を介して下部筒11Bに接続され、経路L16を介して易吸着成分貯留槽2に接続されている。具体的には、経路L12は、経路L5(第1流路)に位置する分岐点(第1分岐点)Qにおいて、経路L5から分岐し、経路L11及び経路L16と合流する。すなわち、経路L12は、経路L5と経路L16との間に位置し、下部筒11Bからのガスを易吸着成分貯留槽2に返送する流路(第2流路)の一部である。
【0024】
経路L13は、易吸着成分貯留槽2に接続され、易吸着成分貯留槽2からの易吸着成分を装置系外に供給する経路である。
経路L14は、上部筒10Uと上部筒11Uとの間に位置し、上部筒10Uと上部筒11Uとの間で均圧を行う均圧ラインである。
【0025】
経路L15は、一端が経路L4及び経路L5に分岐し、これらの経路L4及び経路L5を介して下部筒10B、11Bとそれぞれ連通するとともに、他端が分岐点Tにおいて経路L2及び経路L3と接続する。すなわち、経路L15は、圧縮機4と下部筒10B、11B(吸着塔)との間に位置し、圧縮機4から導出される圧縮されたガスを下部筒10B、11Bに導入するガス経路(第1流路)の一部である。
経路L16は、一端が経路L11及び経路L12に分岐し、他端が易吸着成分貯留槽2と接続する。すなわち、経路L16は、分岐点(第1分岐点)P,Qと易吸着成分貯留槽2との間に位置し、下部筒10B、11Bからのガスを易吸着成分貯留槽2に返送する流路(第2流路)の一部である。
経路L17は、一端が経路L9及び経路L10に分岐し、他端が原料ガス貯留槽1と接続する。すなわち、経路L17は、下部筒10B、11Bと原料ガス貯留槽1との間に位置し、下部筒10B、11Bからのガスを原料ガス貯留槽1に返送する流路(第3流路)の一部である。
【0026】
圧縮機4は、経路L15に位置し、原料ガス貯留槽1から経路L2を介して経路L15に導出される原料ガス、及び易吸着成分貯留槽2から経路L3を介して経路L15に導出される易吸着成分のうち、いずれか一方を昇圧(圧縮)した後、経路L4又は経路L5を介して下部筒10B又は下部筒11Bに供給する。
【0027】
圧縮機4は、気体成分を昇圧(圧縮)できるものであれば、特に限定されない。このような圧縮機4としては、例えば、ダイアフラム式圧縮機が挙げられる。
また、圧縮機4の吐出量は、特に限定されるものではなく、気体成分の供給量、回収量等に応じて、適宜選択することができる。
【0028】
圧縮機5は、経路L13に位置し、易吸着成分貯留槽2から経路L13に導出される易吸着成分を昇圧(圧縮)した後、装置系外に供給する。圧縮機5は、気体成分を昇圧(圧縮)できるものであれば、特に限定されない。このような圧縮機5としては、例えば、ダイアフラム式圧縮機が挙げられる。また、圧縮機5の吐出量は、特に限定されるものではなく、気体成分の供給量、回収量等に応じて、適宜選択することができる。
【0029】
開閉弁V1~V15は、経路L2~L14にそれぞれ位置し、経路内の気体成分の流路を開放又は閉止する開閉装置である。
本実施形態のPSA装置50では、これらの開閉弁のうち、経路L11に位置する開閉弁(第1開閉装置)V12が、分岐点(第1分岐点)P寄りに位置する。
【0030】
ここで、開閉弁V12が分岐点P寄りに位置するとは、開閉弁V12と分岐点Pとの距離が短いことをいう。これにより、開閉弁V12と分岐点Pとの間の経路内の容積を低減できる。すなわち、下部筒10Bから導出されるガスを易吸着成分貯留槽2に導出する際、開閉弁V12と分岐点Pとの間の経路L11内に残留するガス量を低減できる。
【0031】
なお、開閉弁V12から分岐点Pまでの間の経路L11に残留するガスの量(残留ガス量)は、開閉弁V12から分岐点Pまでの経路L11を構成する配管の容積と、開閉弁V12の内部の容積との総和となる。
本実施形態のPSA装置50では、開閉弁V12の内部から分岐点Pまでの経路L11の容積が、圧縮機4が1分間に吸引するガス容積の0.1体積%以下であることが好ましい。
【0032】
同様に、本実施形態のPSA装置50では、これらの開閉弁のうち、経路L12に位置する開閉弁(第1開閉装置)V13が、分岐点(第1分岐点)Q寄りに位置する。
【0033】
ここで、開閉弁V13が分岐点Q寄りに位置するとは、開閉弁V13と分岐点Qとの距離が短いことをいう。これにより、開閉弁V13と分岐点Qとの間の経路内の容積を低減できる。すなわち、下部筒11Bから導出されるガスを易吸着成分貯留槽2に導出する際、開閉弁V13と分岐点Qとの間の経路L12内に残留するガス量を低減できる。
【0034】
なお、開閉弁V13から分岐点Qまでの間の経路L12に残留するガスの量(残留ガス量)は、開閉弁V13から分岐点Qまでの経路L12を構成する配管の容積と、開閉弁V13の内部の容積との総和となる。
本実施形態のPSA装置50では、開閉弁V13の内部から分岐点Qまでの経路L11の容積が、圧縮機4が1分間に吸引するガス容積の0.1体積%以下であることが好ましい。
【0035】
また、本実施形態のPSA装置50では、これらの開閉弁のうち、経路L9に位置する開閉弁(第2開閉装置)V10が、分岐点(第2分岐点)R寄りに位置することが好ましい。
【0036】
ここで、開閉弁V10が分岐点R寄りに位置するとは、開閉弁V10と分岐点Rとの距離が短いことをいう。これにより、開閉弁V10と分岐点Rとの間の経路内の容積を低減できる。すなわち、下部筒10Bから導出されるガスを原料ガス貯留槽1に導出する際、開閉弁V10と分岐点Rとの間の経路L9内に残留するガス量を低減できる。
【0037】
なお、開閉弁V10から分岐点Rまでの間の経路L9に残留するガスの量(残留ガス量)は、開閉弁V10から分岐点Rまでの経路L9を構成する配管の容積と、開閉弁V10の内部の容積との総和となる。
本実施形態のPSA装置50では、開閉弁V10の内部から分岐点Rまでの経路L9の容積が、圧縮機4が1分間に吸引するガス容積の0.1体積%以下であることが好ましい。
【0038】
同様、本実施形態のPSA装置50では、これらの開閉弁のうち、経路L10に位置する開閉弁(第2開閉装置)V11が、分岐点(第2分岐点)S寄りに位置することが好ましい。
【0039】
ここで、開閉弁V11が分岐点S寄りに位置するとは、開閉弁V11と分岐点Sとの距離が短いことをいう。これにより、開閉弁V11と分岐点Sとの間の経路内の容積を低減できる。すなわち、下部筒11Bから導出されるガスを原料ガス貯留槽1に導出する際、開閉弁V11と分岐点Sとの間の経路L10内に残留するガス量を低減できる。
【0040】
なお、開閉弁V11から分岐点Sまでの間の経路L10に残留するガスの量(残留ガス量)は、開閉弁V11から分岐点Sまでの経路L10を構成する配管の容積と、開閉弁V11の内部の容積との総和となる。
本実施形態のPSA装置50では、開閉弁V11の内部から分岐点Sまでの経路L10の容積が、圧縮機4が1分間に吸引するガス容積の0.1体積%以下であることが好ましい。
【0041】
開閉弁V10~V13は、ガス成分の流路となる配管に残留するガス量を低減することが可能であれば、特に限定されない。このような開閉弁としては、ボールバルブ、ロータリーバルブ、ベローズバルブ、ダイアフラムバルブ等が挙げられる。
これらは、開閉弁内の容積を小さくできるため、好ましい。
また、ボールバルブの中でも、三方流路切替式のボールバルブは、配管容積を極めて小さくできるため、より好ましい。
さらに、ベローズバルブやダイアフラムバルブの中でも、三方分流型や複数のバルブが一つのブロックで構成される二連三方弁等のブロック型は、配管容積を極めて小さくでき、バルブの駆動耐久性も優れるため、非常に好ましい。
【0042】
また、本実施形態のPSA装置50では、上述した分岐点(第1分岐点)P、及び分岐点(第2分岐点)Rが、それぞれ経路L4の下部筒10B寄りに位置することが好ましい。
同様に、本実施形態のPSA装置50では、上述した分岐点(第1分岐点)Q、及び分岐点(第2分岐点)Sが、それぞれ経路L5の下部筒11B寄りに位置することが好ましい。
【0043】
ここで、分岐点P,Rが下部筒10B寄りに位置するとは、分岐点P,Rと下部筒10Bとの距離が短いことをいう。これにより、分岐点P,Rと下部筒10Bとの間の経路L4内の容積を低減できる。すなわち、下部筒10Bから導出されるガスを原料ガス貯留槽1あるいは易吸着成分貯留槽2に導出する際、各分岐点P,Rと下部筒10Bとの間の経路L4内に残留するガス量を低減できる。
本実施形態のPSA装置50では、各分岐点P,Rと下部筒10Bとの間の経路L4の容積が、圧縮機4が1分間に吸引するガス容積の1体積%以下であることが好ましい。
【0044】
同様に、分岐点Q,Sが下部筒11B寄りに位置するとは、分岐点Q,Sと下部筒11Bとの距離が短いことをいう。これにより、分岐点Q,Sと下部筒11Bとの間の経路L5内の容積を低減できる。すなわち、下部筒11Bから導出されるガスを原料ガス貯留槽1あるいは易吸着成分貯留槽2に導出する際、各分岐点Q,Sと下部筒11Bとの間の経路L5内に残留するガス量を低減できる。
本実施形態のPSA装置50では、各分岐点Q,Sと下部筒11Bとの間の経路L5の容積が、圧縮機4が1分間に吸引するガス容積の1体積%以下であることが好ましい。
【0045】
また、本実施形態のPSA装置50では、上述した各流路にそれぞれ濃度計を設置してもよい。
具体的な濃度計の位置としては、開閉弁V3と分岐点Rとの間の経路L4、開閉弁V12と分岐点Pとの間の経路L11、開閉弁10と分岐点Rとの間の経路L10、開閉弁V4と分岐点Sとの間の経路L5、開閉弁V13と分岐点Qとの間の経路L12、開閉弁11と分岐点Sとの間の経路L11が挙げられる。
また、各濃度計は、経路L4においては分岐点R寄り、経路L11においては分岐点P寄り、経路L10においては分岐点R寄り、経路L5においては分岐点S寄り、経路L12においては分岐点Q寄り、経路L11においては分岐点S寄りに設けることが好ましい。
【0046】
次に、本実施形態の圧力変動吸着式ガス分離装置50の運転方法について、説明する。
なお、以下の説明では、原料ガスとして、窒素ガスとキセノンとの2つの気体成分を含む混合ガスを用い、下部筒10B、11B、及び上部筒10U、11Uに充填する吸着剤として、平衡分離型吸着剤である活性炭を使用する場合を一例として説明する。
【0047】
本実施形態のPSA装置50の運転方法では、先ず、下部筒10B及び上部筒10Uにおいて、(1)吸着工程、(2)リンス工程、(3)下部筒減圧工程、(4)上部筒減圧工程、(5)パージ再生工程、及び(6)均圧加圧工程を行う。
【0048】
(1)吸着工程
先ず、吸着工程では、開閉弁V2,V4,V7,V9,V10,V12を閉止し、開閉弁V1,V3,V5,V14を開放して、原料ガス貯留槽1から導出される混合ガスを圧縮機4で圧縮した後、経路L15,L4を介して、下部筒10Bの下部に導入する。
ここで、下部筒10Bと上部筒10Uとは、開閉弁V5が開放されているため連通しており、ほぼ同様に圧力上昇する。
なお、原料ガス貯留槽1から導出される混合ガスは、経路L1から原料ガス貯留槽1に導入された原料ガスと、後述する上部筒減圧工程、及びパージ再生工程において下部筒10Bもしくは11Bから導出されたガスとの混合ガスである。
【0049】
次いで、下部筒10Bの下部に導入された混合ガスは、下部筒10Bの上部に進むにつれて、キセノンが吸着剤に優先的に吸着され、気相中に窒素が濃縮される。濃縮された窒素は、下部筒10Bの上部から上部筒10Uの下部に導入され、上部筒10Uにおいて、窒素中に含まれる微量のキセノンがさらに吸着剤に吸着される。上部筒10Uの圧力が難吸着成分貯留槽3の圧力より高くなった後、上部筒10Uにおいてさらに濃縮された窒素は、経路L6を介して、難吸着成分貯留槽3へ導出される。
なお、難吸着成分貯留槽3に貯留された窒素は、原料ガス中に含まれる窒素に応じた流量が経路L7から装置系外に排出され、残りの窒素が後述するパージ再生工程において向流パージガスとして使用される。
【0050】
(2)リンス工程
次に、リンス工程では、開閉弁V1を閉止し、開閉弁V2を開放して、易吸着成分貯留槽2から導出されるキセノンを下部筒10Bの下部に導入する。易吸着成分であるキセノンを下部筒10Bに導入することで、下部筒10Bの吸着剤の充填層に共吸着された窒素と、吸着剤の空隙に存在する窒素とを下部筒10Bから上部筒10Uへ押し出し、下部筒10B内をキセノンで吸着飽和とする。次いで、開閉弁V7,V8,V14,V15を閉止し、開閉弁V9を開放することで、上部筒10Uの上部から導出された窒素は、経路L14を介して上部筒11Uに送られる。
【0051】
(3)下部筒減圧工程
次に、下部筒減圧工程では、開閉弁V3、V5、V10を閉止し、開閉弁V12を開放する。これにより、上述した吸着工程及びリンス工程の間に下部筒10Bに吸着されたキセノンは、下部筒10Bと易吸着成分貯留槽2との差圧によって、経路L11及び経路L16を介して易吸着成分貯留槽2へ回収される。易吸着成分貯留槽2に回収されたキセノンは、原料ガス中に含まれるキセノンに応じた流量が、圧縮機5によって加圧された後、経路L13から製品として採取され、残りのキセノンが上述したリンス工程において並流パージガスとして使用される。
なお、下部筒減圧工程の間、開閉弁V5,V7,V9,V14が閉止され、上部筒10Uは休止状態となる。
【0052】
ここで、本実施形態のPSA装置50によれば、下部筒10Bと易吸着成分貯留槽2との間の流路(第2流路)L11に位置する開閉弁(第1開閉装置)V12が分岐点P寄りに位置しており、開閉弁V12の内部から分岐点Pまでの経路L11の容積が低減されている。これにより、吸着工程において開閉弁V12の内部から分岐点Pまでの経路L11に残存する混合ガス量が低減されるため、下部筒減圧工程において下部筒10Bから導出される高純度のキセノンを、経路L4及び経路L11を経由する際、不純物の混合量が低減される。その結果、下部筒減圧工程において、易吸着成分であるキセノンを高純度で易吸着成分貯留槽2に回収できる。
【0053】
(4)上部筒減圧工程
次に、上部筒減圧工程では、開閉弁V3,V7,V9,V11,V12,V14を閉止し、開閉弁V5、V10を開放する。これにより、上述した下部筒減圧工程の間に休止していた上部筒10Uと、減圧した下部筒10Bとの差圧によって、上部筒10U内のガスが下部筒10Bに導入される。下部筒10Bに導入されたガスは、下部筒10B内をパージした後、下部筒10Bから導出され、経路L10及び経路L17を介して原料ガス貯留槽1に回収される。原料ガス貯留槽1に回収されたガスは、経路L1から導入される原料ガスと混合された後、上述した吸着工程において混合ガスとして使用される。
【0054】
(5)パージ再生工程
次に、パージ再生工程では、開閉弁V3,V9,V12,V14を閉止し、開閉弁V5,V7,V10を開放する。これにより、難吸着成分貯留槽3に貯留された窒素が、向流パージガスとして経路L8を介して上部筒10Uの上方から導入される。上部筒10Uに導入された窒素は、上部筒10Uの下方に進むにつれて、吸着剤に吸着されたキセノンを置換脱着させる。吸着剤から脱着された比較的キセノンを多く含むガスは、上部筒10Uから導出された後、下部筒10B、経路L10及び経路L17を介して、原料ガス貯留槽1に回収される。原料ガス貯留槽1に回収されたガスは、上述した上部筒減圧工程と同様に、経路L1から導入される原料ガスと混合された後、上述した吸着工程において混合ガスとして使用される。
なお、向流パージガスとして、難吸着成分貯留槽3に貯留された窒素に代えて、上述した吸着工程において上部筒10Uから導出された窒素を用い、パージ再生工程を行っている上部筒10Uに直接導入してもよい。
【0055】
ここで、本実施形態のPSA装置50によれば、下部筒10Bと原料ガス貯留槽1との間の流路(第3流路)L9に位置する開閉弁(第2開閉装置)V10が分岐点R寄りに位置しており、開閉弁V10の内部から分岐点Rまでの経路L9の容積が低減されている。これにより、上部筒減圧工程、及びパージ再生工程において開閉弁V10の内部から分岐点Rまでの経路L9に残存するキセノン量が低減されるため、吸着工程において、混合ガス中のキセノン濃度を変動させることなく、原料ガス貯留槽1に貯留される混合ガスを下部筒10に導入できる。
【0056】
(6)均圧加圧工程
次に、均圧加圧工程では、開閉弁V3,V7,V8,V10,V12,V14,V15を閉止し、開閉弁V9を開放する。ここで、下部筒10B及び上部筒10Uにおいて均圧加圧工程が行われる際、下部筒11B及び上部筒11Uにおいて上述したリンス工程が行われる。均圧加圧工程では、リンス工程が行われている上部筒11Uから導出された窒素が、経路L14を介して上部筒10U及び下部筒10Bに導入される。
【0057】
なお、上述した「均圧加圧工程」から「吸着工程」に戻る際、開閉弁V1を開放し、開閉弁V2を閉止する。次いで、原料ガス貯留槽1から導出される混合ガスを圧縮機4で圧縮した後、経路L15,L4を介して、下部筒10Bの下部に導入する。
【0058】
本実施形態のPSA装置50では、下部筒11B及び上部筒11Uにおいても、下部筒10B及び上部筒10Uと同様に、上述した6つの工程を順次実施する。
ここで、一方の吸着筒(下部筒10B及び上部筒10U)において、「吸着工程」~「リンス工程」が行われている間、他方の吸着筒(下部筒11B及び上部筒11U)において、「下部筒減圧工程」~「パージ再生工程」~「均圧加圧工程」が行われる。
また、一方の吸着筒において、「下部筒減圧工程」~「パージ再生工程」~「均圧加圧工程」が行われている間、他方の吸着筒において、「吸着工程」~「リンス工程」が行われる。
【0059】
本実施形態のPSA装置50によれば、上述した6つの工程を、下部筒10B及び上部筒10Uと、下部筒11B及び上部筒11Uとの間で順次繰り返すことにより、窒素の濃縮とキセノンの濃縮とを連続的に行うことができる。
【0060】
なお、本実施形態のPSA装置50では、経路L1から原料ガス貯留槽1への原料ガスの導入、難吸着成分貯留槽3から経路L7を介しての窒素の排出、及び、易吸着成分貯留槽2から経路L13を介してのキセノンの導出は、上述した工程に依らず連続的に行われる。
【0061】
本実施形態のPSA装置50によれば、原料ガスから高純度のキセノンを分離回収することができる。
なお、本実施形態のPSA装置50で分離回収されるキセノンの純度としては、特に限定されるものではないが、99体積%以上であることが好ましく、99.9体積%以上であることがより好ましく、99.95体積%以上であることがさらに好ましい。
【0062】
本実施形態のPSA装置50は、半導体製品、あるいは表示装置の製造設備の一部として用いることができる。本実施形態のPSA装置50によれば、製造設備から排出される排ガスを原料ガスとし、原料ガスに含まれるキセノンを分離回収した後、高純度のキセノンを製造設備に供給できる。
【0063】
また、本実施形態のPSA装置50を上述した製造設備の一部として用いる場合、キセノンを供給する必要がない状況や、原料ガス(すなわち、製造設備からの排ガス)が流入してこない状況が頻繁に起こり得る。このような場合、本実施形態のPSA装置50では、難吸着成分貯留槽3から経路L7を介して排出される窒素、あるいは易吸着成分貯留槽2から経路L13を介して導出されるキセノンを原料ガス貯留槽1に返送することで、常に製品ガス(キセノン)を供給できる状態を維持しながら供給停止状態とすることができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のPSA装置50によれば、下部筒10Bと易吸着成分貯留槽2との間の流路(第2流路)を構成する経路L11に位置する開閉弁(第1開閉装置)V12が分岐点P寄りに位置する。これにより、開閉弁V12の内部から分岐点Pまでの経路L11の容積が低減されるため、経路中に残存するガス量を低減できる。したがって、本実施形態のPSA装置50によれば、下部筒10Bから易吸着成分(ガス)を易吸着成分貯留槽2に導出する際、キセノンへの不純物(原料ガス中のキセノン以外の成分)の混合量が低減され、高純度のキセノン(易吸着成分)を製品として分離回収できる。
【0065】
また、本実施形態のPSA装置50によれば、経路L4に位置する分岐点Pが下部筒10B寄りに位置する。これにより、分岐点Pから下部筒10Bまでの経路L4の容積を低減できる。したがって、本実施形態のPSA装置50によれば、下部筒10Bから易吸着成分(ガス)を易吸着成分貯留槽2に導出する際、下部筒10B、経路L4、経路L11及び開閉弁V12で閉塞される経路内に残留するガス量をさらに低減できる。
【0066】
本実施形態のPSA装置50によれば、下部筒10Bと原料ガス貯留槽1との間の流路(第3流路)を構成する経路L9に位置する開閉弁(第2開閉装置)V10が分岐点R寄りに位置する。また、経路L4に位置する分岐点Rが下部筒10B寄りに位置する。これにより、下部筒10Bから混合ガスを原料ガス貯留槽1に導出する際、下部筒10B、経路L4、経路L9及び開閉弁V10で閉塞される経路内に残留するガス量をさらに低減できる。
【0067】
なお、本実施形態のPSA装置50では、経路L4(L5)に位置する分岐点P(分岐点Q)が、原料貯留槽1への返送経路となる経路L17への分岐点R(分岐点S)よりも下部筒10B(11B)に対して近い構成であるため、易吸着成分ガスが分岐点R(分岐点S)を通過しない利点が得られる。しかしながら、上述した構成は一例であり、本発明はこれに限定されない。すなわち、本実施形態のPSA装置50において、経路L4(L5)における分岐点P(分岐点Q)と分岐点R(分岐点S)との位置関係は逆であってもよいし、また、クロス継手を用いることによって分岐点P(分岐点Q)と分岐点R(分岐点S)とを同じ位置としてもよい。
【0068】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した第2の実施形態であるPSA装置について、図2を参照して詳細に説明する。
図2に示すように、第2実施形態のPSA装置60の構成は、前述した第1実施形態のPSA装置50の構成とは、第1実施形態で示した経路L9が経路L4に位置する分岐点Rから分岐するものであるのに対し、分岐点Rではなく下部筒10Bに直接接続された経路L9’を備える点で異なるものであり、その他の構成については第1の実施形態と同一である。したがって、本実施形態のPSA装置60については、第1実施形態のPSA装置50の構成と同一の構成部分については同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0069】
経路L9’は、一端が下部筒10Bに接続しており、他端が経路L10’及び経路L17’と合流している。すなわち、経路L9’は、下部筒10Bと経路L17’との間に位置し、下部筒10Bからのガスを原料ガス貯留槽1に返送する流路(第3流路)の一部である。
経路L10’は、一端が下部筒11Bに接続しており、他端が経路L9’及び経路L17’と合流している。すなわち、経路L10’は、下部筒11Bと経路L17’との間に位置し、下部筒11Bからのガスを原料ガス貯留槽1に返送する流路(第3流路)の一部である。
【0070】
経路L17’は、一端が経路L9’及び経路L10’に分岐し、他端が原料ガス貯留槽1と接続する。すなわち、経路L17’は、下部筒10B、11Bと原料ガス貯留槽1との間に位置し、下部筒10B、11Bからのガスを原料ガス貯留槽1に返送する流路(第3流路)の一部である。
【0071】
本実施形態のPSA装置60では、これらの開閉弁のうち、経路L9’に位置する開閉弁(第2開閉装置)V10が、下部筒10B寄りに位置することが好ましい。
【0072】
ここで、開閉弁V10が下部筒10B寄りに位置するとは、開閉弁V10と下部筒10Bとの距離が短いことをいう。これにより、開閉弁V10と下部筒10Bとの間の経路L9’内の容積を低減できる。すなわち、下部筒10Bから導出されるガスを原料ガス貯留槽1に導出する際、開閉弁V10と下部筒10Bとの間の経路L9’内に残留するガス量を低減できる。
【0073】
なお、開閉弁V10から下部筒10Bまでの間の経路L9’に残留するガスの量(残留ガス量)は、開閉弁V10から下部筒10Bまでの経路L9’を構成する配管の容積と、開閉弁V10の内部の容積との総和となる。
本実施形態のPSA装置60では、開閉弁V10の内部から下部筒10Bまでの経路L9’の容積が、圧縮機4が1分間に吸引するガス容積の0.1体積%以下であることが好ましい。
【0074】
同様、本実施形態のPSA装置60では、これらの開閉弁のうち、経路L10’に位置する開閉弁(第2開閉装置)V11が、下部筒11B寄りに位置することが好ましい。
【0075】
ここで、開閉弁V11が下部筒11B寄りに位置するとは、開閉弁V11と下部筒11Bとの距離が短いことをいう。これにより、開閉弁V11と下部筒11Bとの間の経路L10’内の容積を低減できる。すなわち、下部筒11Bから導出されるガスを原料ガス貯留槽1に導出する際、開閉弁V11と下部筒11Bとの間の経路L10’内に残留するガス量を低減できる。
【0076】
なお、開閉弁V11から下部筒11Bまでの間の経路L10’に残留するガスの量(残留ガス量)は、開閉弁V11から下部筒11Bまでの経路L10’を構成する配管の容積と、開閉弁V11の内部の容積との総和となる。
本実施形態のPSA装置60では、開閉弁V11の内部から下部筒11Bまでの経路L10’の容積が、圧縮機4が1分間に吸引するガス容積の0.1体積%以下であることが好ましい。
【0077】
以上説明したように、本実施形態のPSA装置60によれば、上述した第1実施形態のPSA装置50と同様の効果が得られる。
さらに、本実施形態のPSA装置60によれば、下部筒10Bに直接接続される経路L9’を備え、下部筒10B寄りに開閉弁V10を設けることで、経路内に残留するガス量をさらに低減できるという効果を奏する。
【0078】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【実施例
【0079】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0080】
図1に示すPSA装置50を用い、下表1に示すように開閉弁を制御して、原料ガスから製品ガスを分離回収した。
PSA装置50の構成は、以下の通りであった。
・下部筒(10B、11B)、上部筒(10U、11U):ステンレス鋼80A(内径83.1mm)、吸着剤充填高さ500mm
・吸着剤:活性炭(大阪ガスケミカル株式会社社製)、各1.5kg充填
・圧縮機4:ダイアフラム式圧縮機(KNF社製、吐出量:20L/min)
・圧縮機5:ダイアフラム式圧縮機(KNF社製、吐出量:0.2L/min)
(以下、すべて0℃、大気圧下)
・原料ガス:キセノン(Xe)+窒素
・経路L1から原料ガス貯留槽1への原料ガスの導入量:2.0L/min
・易吸着成分:キセノン
・易吸着成分貯留槽2から経路L13への導出量:0.2L/min
・難吸着成分:窒素
・難吸着成分貯留槽3から経路L7への導出量:1.8L/min
【0081】
【表1】
【0082】
<実施例1>
開閉弁V10、V11、V12、V13として、ダイアフラム式二方弁(フジキン社製メタルダイアフラムバルブ;FPR-ND-71-9.52)を用い、上記表1の条件で運転した。
結果を以下の表2に示す。
なお、開閉弁V12と分岐点Pとの間の経路L11の配管容積と、開閉弁V12内の容積とを加えた総容積は、19mLであった。
また、開閉弁V13と分岐点Qとの間の経路L12の配管容積と、開閉弁V13内の容積とを加えた総容積、開閉弁V10と点Rまでの間の経路L9の配管容積と、開閉弁V10内の容積とを加えた総容積、及び開閉弁V11と分岐点Sとの間の経路L10の配管容積と、開閉弁V11内の容積とを加えた総容積は、いずれも19mLであった。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すように、本発明の圧力変動吸着式ガス分離装置によれば、易吸着成分を高純度で分離できることがわかった。特に、原料ガス貯留槽の易吸着成分濃度が60%以上において、易吸着成分(キセノン)を99体積%以上の高純度で分離できた。
【0085】
<比較例1>
本発明の比較例として、従来技術(上述した特許文献1に示す図1)の装置を使い、実施例1と同様にして分離実験を行った。
なお、各経路における配管容積と開閉弁内の容積とを加えた総容積は、53mLであった。
結果を以下の表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
表3に示すように、従来技術の装置では、各経路における配管容積と開閉弁内の容積とを加えた総容積は、53mLであるため、易吸着成分(キセノン)の濃度はいずれも99体積%未満であった。
【0088】
<実施例2>
開閉弁V10、V11、V12、V13として、ダイアフラム式三方分流弁(フジキン社製、メタルダイアフラムバルブ:FPR-NDTB-71-9.52)を用い、上記表1の条件で運転した。
結果を以下の表4に示す。
なお、開閉弁V12と分岐点Pとの間の経路L11の配管容積と、開閉弁V12内の容積とを加えた総容積は、5mLであった。
また、開閉弁V13と分岐点Qとの間の経路L12の配管容積と、開閉弁V13内の容積とを加えた総容積、開閉弁V10と点Rまでの間の経路L9の配管容積と、開閉弁V10内の容積とを加えた総容積、及び開閉弁V11と分岐点Sとの間の経路L10の配管容積と、開閉弁V11内の容積とを加えた総容積は、いずれも5mLであった。
【0089】
【表4】
【0090】
表4に示すように、本発明によれば、ガス成分が残留する配管部分の総容積を各5mLとすることで、易吸着成分をさらに高純度で分離できることがわかった。特に、原料ガス貯留槽の易吸着成分濃度が60%以上において、易吸着成分(キセノン)を99.95体積%以上の高純度で分離できた。
【0091】
<実施例3>
開閉弁V10、V11、V12、V13として、三方ボールバルブ(Swagelok社製;SS-63XLTS8-A30S4)を用い、上記表1の条件で運転した。
結果を以下の表5に示す。
なお、開閉弁V12と分岐点Pとの間の経路L11の配管容積と、開閉弁V12内の容積とを加えた総容積は、5mLであった。
また、開閉弁V13と分岐点Qとの間の経路L12の配管容積と、開閉弁V13内の容積とを加えた総容積、開閉弁V10と点Rまでの間の経路L9の配管容積と、開閉弁V10内の容積とを加えた総容積、及び開閉弁V11と分岐点Sとの間の経路L10の配管容積と、開閉弁V11内の容積とを加えた総容積は、いずれも5mLであった。
【0092】
【表5】
【0093】
表5に示すように、本発明によれば、開閉弁として三方ボールバルブを用いた場合であっても、ガス成分が残留する配管部分の総容積を各5mLとすることで、易吸着成分を実施例2と同程度の高純度で分離できることがわかった。すなわち、原料ガス貯留槽の易吸着成分濃度が60%以上において、易吸着成分(キセノン)を99.95体積%以上の高純度で分離できた。
【0094】
<実施例4>
原料ガスに含まれる難吸着成分として、窒素に代えてアルゴンを用いた以外は、実施例2と同じ条件を用いて運転を行った。
結果を以下の表6に示す。
【0095】
【表6】
【0096】
表6に示すように、本発明によれば、難吸着成分としてアルゴンを用いた場合であっても、ガス成分が残留する配管部分の総容積を各5mLとすることで、易吸着成分を実施例2と同程度の高純度で分離できることがわかった。すなわち、原料ガス貯留槽の易吸着成分濃度が60%以上において、易吸着成分(キセノン)を99.95体積%以上の高純度で分離できた。
【0097】
<比較例2>
原料ガスに含まれる難吸着成分として、窒素に代えてアルゴンを用いた以外は、比較例1と同じ条件を用いて運転を行った。
結果を以下の表7に示す。
【0098】
【表7】
【0099】
表7に示すように、原料ガスに含まれる難吸着成分として、窒素に代えてアルゴンを用いた場合であっても、従来技術の装置では、各経路における配管容積と開閉弁内の容積とを加えた総容積は、53mLであるため、易吸着成分(キセノン)の濃度はいずれも99体積%未満であった。
【符号の説明】
【0100】
1・・・原料ガス貯留槽
2・・・易吸着成分貯留槽
3・・・難吸着成分貯留槽
4、5・・・圧縮機
10B、11B・・・下部筒
10U、11U・・・上部筒
50,60・・・圧力変動吸着式ガス分離装置(PSA装置)
V1~V15・・・開閉弁(開閉装置)
L1~L17・・・経路(流路)
P,Q,R,S,T・・・分岐点
【要約】
【課題】高純度の易吸着成分を回収できる圧力変動吸着式ガス分離装置を提供する。
【解決手段】1以上の成分に対して易吸着性を有し、他の成分に対して難吸着性を有する吸着剤を充填する吸着筒10B,10U,11B,11Uと、原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽1と、易吸着性成分を貯留する易吸着成分貯留槽2と、圧縮機4と前記吸着筒10B,11Bとの間に位置する経路(第1流路)L4,L5と、分岐点(第1分岐点)P,Qにおいて、経路L4,L5から分岐し、分岐点P,Qと易吸着成分貯留槽2との間に位置する経路(第2流路)L11,L12と、経路L11,L12に位置する開閉弁(第1開閉装置)V13,V12と、を備え、開閉弁V13,V12が、分岐点P,Q寄りに位置する、圧力変動吸着式ガス分離装置50を選択する。
【選択図】図1
図1
図2