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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】粘着テープ及び物品
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230606BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230606BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20230606BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/06
C09J11/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018167858
(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公開番号】P2020041023
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】鍵山 由美
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】根岸 真生
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-189656(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056499(WO,A1)
【文献】特開2011-162586(JP,A)
【文献】国際公開第2015/041052(WO,A1)
【文献】特開平09-255930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着付与樹脂を粘着樹脂固形分100質量部に対して50質量部~150質量部含有し、前記粘着樹脂固形分100質量部に対して重合ロジンエステル系粘着付与樹脂を15質量部以下含有し、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が-10℃~25.5℃である粘着剤層を有し、バイオマス度が45%以上である粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層のバイオマス度が45%以上である請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層に用いる粘着剤が(メタ)アクリレート単独又は(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体からなるアクリル系共重合体を含有する(メタ)アクリル系粘着剤である請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレートがアルキル(メタ)アクリレートであり、前記アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素原子数が1~18である請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着付与樹脂のバイオマス度が50%以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着付与樹脂が2種類以上含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記アクリル系共重合体の重量平均分子量が40万以上である請求項3~6のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着剤層のゲル分率が10%~50%である請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記粘着剤層の厚さが5~200μmである請求項1~8のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器をはじめとする様々な製品の製造場面で使用可能な粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、例えば電子機器や自動車をはじめとする様々な製品の製造場面で、広く使用されている。
【0003】
前記粘着テープは、一般に粘着力(剥離強度)やタック(粘着性)を基本特性として有しているが(例えば、特許文献1~3)、粘着テープの用途によっては、更に他の特性が求められることがある。例えば、大型のデスクトップ型ディスプレイに用いられる場合には、ディスプレイのフレームレス化によって、テープの貼付面積が小さくなっているため、小面積のテープで重量のある液晶モジュール等のディスプレイを支えなくてはならず、高いせん断接着強度が求められる。高いせん断接着強度を有するテープとしては、熱接着テープが挙げられるが、熱をかける工程が追加で必要なことや場所や部品によっては熱や過度な圧力がかけられないことなどから使用するのが困難となっている。上記特許文献1~3は、上記の粘着力やタックといった基本特性は実用レベルで有しているものの、せん断接着強度においては十分な性能を発揮するに至っていない状況であった。
【0004】
更に、近年、地球温暖化等の環境問題に対する関心が高まるにつれ、特に化学メーカーに対しては、従来の石油由来の材料に代替するものとして、植物由来の材料を使用することが社会的に強く要求されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-307063
【文献】特開2006-206624
【文献】特開2009-102467
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、優れた剥離強度、優れたせん断接着強度及び優れた初期タック性を同時に満たし、更に地球環境に優しい粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、粘着付与樹脂を特定割合で含有し、損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が特定範囲にある粘着剤層を有し、かつ、バイオマス度が特定の値以上ある粘着テープであれば、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、粘着付与樹脂を粘着樹脂固形分100質量部に対して50質量部~150質量部含有し、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が-10℃~50℃である粘着剤層を有し、バイオマス度が45%以上である粘着テープに関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着テープは、優れた剥離強度、優れたせん断接着強度及び優れた初期タック性を同時に満たし、更に地球環境に優しいという特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粘着テープは、粘着付与樹脂を粘着樹脂固形分100質量部に対して50質量部~150質量部含有し、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が-10℃~50℃である粘着剤層を有し、バイオマス度が45%以上であることを特徴とする。
【0011】
前記粘着テープの実施態様としては、例えば基材の片面または両面に、直接または他の層を介して前記粘着剤層を有する粘着テープ、前記粘着剤層のみによって構成されるいわゆる基材レスの粘着テープが挙げられる。前記粘着剤層は、同一または異なる組成からなる単層または複層のものであってもよい。本発明のテープを、例えば電子機器等を構成する2以上の被着体の固定に使用する場合であれば、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープの実施態様で使用することが好ましい。また、ラベル等に使用する場合には、基材の片面に粘着剤層を有する片面粘着テープの実施態様で使用することが好ましい。
また、本発明の粘着テープは、その粘着剤層の表面に離型フィルムが積層された状態で保管等されていてもよい。
【0012】
本発明の粘着テープは、バイオマス度が45%以上である。尚、本発明でバイオマス度とは、ASTM-D6866-18に従った測定によって算出された、全炭素中におけるバイオマス起源の炭素の含有量(質量%)を言う。
【0013】
本発明の粘着テープの厚さは、優れた剥離強度、優れたせん断接着強度及び優れた初期タック性を同時に満たし、かつ、電子機器等の薄型化に貢献するうえで、5μm~500μmの範囲の厚さを有するものを使用することが好ましく、7μm~350μmの範囲の厚さを有するものを使用することがより好ましく、10μm~200μmの範囲の厚さを有するものを使用することがより好ましく、15μm~100μmの範囲の厚さを有するものを使用することがより好ましく、20μm~60μmの範囲の厚さを有するものを使用することがさらに好ましい。
【0014】
(粘着剤層)
本発明の粘着テープを構成する粘着剤層としては、優れた剥離強度、優れたせん断接着強度及び優れた初期タック性を同時に満たし、かつ、電子機器等の薄型化に貢献するうえで、5μm~200μmの範囲の厚さを有するものを使用することが好ましく、10μm~100μmの範囲の厚さを有するものを使用することがより好ましく、20μm~50μmが更に好ましい。
【0015】
本発明の粘着テープを構成する粘着剤層は、粘着樹脂と粘着付与樹脂から構成される粘着剤により形成される。前記粘着剤層のバイオマス度は45%以上が好ましい。
前記粘着樹脂の周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は、前記粘着付与樹脂が多く添加できるよう、低い方が好ましく、具体的には-50℃~20℃が好ましく、-45℃~15℃がより好ましく、-40℃~10℃が更に好ましい。前記粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられるが、(メタ)アクリレート単独又は(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体からなるアクリル系共重合体をベースポリマーとし、粘着付与樹脂や、必要に応じて架橋剤等の添加剤が配合された(メタ)アクリル系粘着剤が、耐候性、耐熱性の点から好ましい。
【0016】
周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)は、温度分散による動的粘弾性測定で得られた貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)から、tanδ=G” / G’の式より求められる。動的粘弾性の測定においては、粘弾性試験機(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:ARES G2)を用いて、厚さ約2mmに形成した粘着剤層を同試験機の測定部である直径8mmの平行円盤の間に試験片を挟み込み、周波数1Hzで-50℃から150℃までの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)を測定する。
【0017】
前記アクリル系共重合体としては、アルキル(メタ)アクリレートモノマーを主たるモノマー成分とするアクリル系共重合体を好ましく使用でき、前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーが有するアルキル基は直鎖のものであっても分岐鎖のものであってもよい。前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素原子数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができるが、2種以上使用することが好ましい。なかでも、アルキル基の炭素原子数が2~16の(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、炭素原子数が3~14の(メタ)アクリレートモノマーがより好ましい。上記モノマーを使用することで、優れたせん断接着強度と優れた初期タック性を同時に発現し、かつ粘着付与剤の添加が容易となる上で好ましい。
【0018】
前記アクリル系共重合体を製造する際に使用できるアクリル単量体の全量に対する前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、75~99質量%であることがより好ましく、80~96質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
また、前記アクリル系共重合体は高極性ビニルモノマーを共重合することも好ましく、高極性ビニルモノマーとしては、カルボキシル基含有ビニルモノマー、水酸基含有ビニルモノマー、アミド基含有ビニルモノマー等が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。なかでもカルボキシル基含有モノマー及び水酸基含有ビニルモノマーは粘着剤の接着性を好適な範囲に調整しやすいため好ましく使用できる。
【0020】
前記カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、β―カルボキシエチルアクリル酸、(メタ)アクリル酸二量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート等を使用でき、なかでもアクリル酸を共重合成分として使用することが、優れた初期タック性を発現するうえで好ましい。
【0021】
前記アクリル系共重合体を製造する際に使用するアクリル単量体の全量に対するカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量は、1~30質量%であるが、2~20質量%であることがより好ましく、3~15質量%であることが、優れた剥離強度、優れたせん断接着強度及び優れた初期タック性を同時に発現する上で好ましい。
【0022】
前記水酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等などが使用でき、なかでも4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが優れた剥離強度、優れたせん断接着強度及び優れた初期タック性を同時に発現するうえで好ましい。
【0023】
前記アクリル共重合体を製造する際に使用できるアクリル単量体の全量に対する水酸基含有ビニルモノマーの含有量は、1.0質量%以下であるが、0.01~0.85質量%であることが好ましく、0.02~0.7質量%であることが好ましく、0.03~0.5質量%であることがより好ましく、0.04~0.3質量%であることがより好ましく、0.05~0.2質量%であることが優れたせん断接着強度と優れた初期タック性を同時に発現するうえで好ましい。
【0024】
アミド基含有ビニルモノマーとしては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、等が挙げられる。
【0025】
その他の高極性ビニルモノマーとして、酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸等のスルホン酸基含有モノマー、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の末端アルコキシ変性(メタ)アクリレートがあげられる。
【0026】
前記アクリル系共重合体を製造する際に使用できるアクリル単量体の全量に対する高極性ビニルモノマーの含有量は、0.2~15質量%であることが好ましく、0.4~10質量%であることがより好ましく、0.5~6質量%であることが、優れた剥離強度、優れたせん断接着強度及び優れた初期タック性を同時に発現するうえで好ましい。
【0027】
アクリル系共重合体は、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法で共重合させることにより得ることができるが、粘着剤の耐水性から溶液重合法や塊状重合法が好ましい。重合の開始方法は、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物系、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ系の熱重合開始剤を用いた熱による開始方法や、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシルフォスフィンオキシド系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系の光重合開始剤を用いた紫外線照射による開始方法や、電子線照射による方法を任意に選択できる
【0028】
上記アクリル系共重合体の分子量は、ゲルパーミエッションクロマトグラフ(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算での重量平均分子量が、40万以上であることが好ましく、42万~150万であることがより好ましく、45万~120万であることが優れた剥離強度、優れたせん断接着強度及び優れた初期タック性を同時に発現するうえで好ましい。
【0029】
ここで、GPC法による分子量の測定は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8329GPC)を用いて測定される、スタンダードポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
【0030】
サンプル濃度:0.5質量%(THF溶液)
サンプル注入量:100μL
溶離液:THF
流速:1.0mL/分
測定温度:40℃
本カラム:TSKgel GMHXL 4本
ガードカラム:TSKgel HXL-H
検出器:示差屈折計
スタンダードポリスチレン分子量:1万~2000万(東ソー株式会社製)
【0031】
本発明の粘着テープに使用される粘着剤は、凝集力向上のため3次元架橋構造を形成するのが好ましい。架橋構造形成の指標として、(メタ)アクリル系粘着剤の良溶媒であるトルエンに24時間浸漬した後の不溶分で表されるゲル分率を用いる。その場合、10~50質量%であることが好ましく、より好ましくは15~40質量%である。ゲル分率が10質量%未満ではせん断方向の凝集力が不足し、50質量%を越える場合は初期タック性が低下する。
【0032】
ゲル分率は、以下の式で算出する。
ゲル分率(質量%)={(トルエンに浸漬した後の粘着剤質量)/(トルエンに浸漬する前の粘着剤質量)}×100
【0033】
本発明の粘着テープの粘着剤層は粘着付与樹脂を粘着樹脂固形分100質量部に対して50質量部~150質量部含有するが、60質量部~125質量部が好ましく、80質量部~110質量部がより好ましい。
【0034】
前記粘着付与樹脂としては、例えば植物由来の粘着付与樹脂であるロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂などが挙げられる。前記粘着付与樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを重合、不均化、水添化などにより変性した変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンや、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。前記ロジン誘導体としては、例えば、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール系樹脂;未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物(未変性ロジンエステル)や、重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物(重合ロジンエステル、安定化ロジンエステル、不均化ロジンエステル、完全水添ロジンエステル、部分水添ロジンエステルなど)などのロジンエステル系樹脂;未変性ロジンや変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂;ロジンエステル系樹脂を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂;未変性ロジン、変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール系樹脂;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン系樹脂(特に、ロジンエステル系樹脂)の金属塩などが挙げられる。
【0036】
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂を好適に用いることができる。
【0037】
前記粘着付与樹脂は、バイオマス度が50%以上のもの好ましく、60%以上のものがより好ましく、70%以上のものがより好ましく、80%以上のものがより好ましく、90%以上のものがより好ましく、95%~100%のものが最も好ましい。上記粘着付与樹脂を使用することで、優れた剥離強度、優れたせん断接着強度及び優れた初期タック性を同時に発現し、かつバイオマス度を向上するうえで好ましい。
【0038】
前記粘着付与樹脂の軟化点は、特に規定されないが、20~180℃、好ましくは25℃~140℃である。また、前記粘着付与樹脂は2種類以上を併用して用いてもよい。
【0039】
本発明の粘着テープに使用する前記粘着樹脂と前記粘着付与樹脂で構成される粘着剤層は、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は-10℃~50℃であることが好ましい。粘着剤層の損失正接のピーク値を当該範囲とすることで、常温下での被着体との良好な密着性を付与しやすくなる。更にせん断接着強度の向上の観点では、-5℃~45℃であることがより好ましく、5℃~40℃であることがさらに好ましい。
【0040】
前記粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、難燃剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン、ビーズ、金属、金属酸化物、金属窒化物等の充填剤、顔料、染料等の着色剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の添加剤を含有するものを使用することができる。
【0041】
前記粘着剤層を構成する粘着剤としては、その良好な塗工作業性等を維持するうえで溶媒を含有するものを使用することが好ましい。前記溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン等を使用できる。また、水系粘着剤組成物とする場合には、水又は、水を主体とする水性溶媒を使用できる。
【0042】
(基材)
本発明の粘着テープは、基材を設けても良い。前記基材としては、例えば、不織布基材や樹脂フィルムを用いてもよい。
前記不織布基材としては、例えば、マニラ麻、木材パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維(ポリビニルアルコール繊維)、ポリアミド繊維等の化学繊維、およびこれらの混合物等を用いて得られる不織布が挙げられる。中でも、植物由来の原料を50%以上用いて生産された不織布を用いると、さらに好ましい。
【0043】
また、前記ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンフラノエート等のポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンエチレンビニルアルコール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミドなどを用いて得られるシート又はフィルム;ガラス等の非発泡のフィルム基材を用いることができる。これらの基材の表面は、帯電防止処理、コロナ処理等が施されていてもよい。
また、前記基材としては、発泡体基材を使用してもよい。前記発泡体基材としては、例えばポリオレフィン系発泡体、ポリウレタン系発泡体、アクリル系発泡体、その他のゴム系発泡体等を使用することができる。前記発泡体基材の表面は、帯電防止処理、コロナ処理等が施されていてもよい。中でも、植物由来の原料を20%以上用いて生産された前記樹脂フィルムを用いると、さらに好ましい。
【0044】
(製造方法)
本発明の粘着テープの製造方法としては、例えば基材(中芯)を有する粘着テープであれば、基材の片面または両面に前記粘着剤組成物を塗工し、乾燥等することによって製造する方法(直接法)、または、離型ライナーの表面に粘着剤組成物を塗工し乾燥等することによって粘着剤層を形成した後、前記粘着剤層を、前記基材の片面または両面に転写することによって製造する方法(転写法)が挙げられる。
また、前記基材レスの粘着テープの製造方法としては、例えば離型ライナーの表面に粘着剤組成物を塗工し乾燥等することによって粘着剤層を形成する方法が挙げられる。
【0045】
前記粘着剤組成物を前記基材または離型ライナーに塗工する方法としては、例えば、アプリケーター、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、ダイコーター等を使用する方法が挙げられる。
前記粘着剤組成物を乾燥させる方法としては、例えば、50℃~140℃で30秒~10分間乾燥させる方法が挙げられる。また、前記乾燥後、硬化反応を促進する点から、30℃~50℃の範囲で更にエージングを行っても良い。
【実施例
【0046】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0047】
[調整例1]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート59.9質量部、2-エチルヘキシルアクリレート36質量部、アクリル酸4質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部、及び、酢酸エチル200質量部を仕込み、攪拌下、72℃で4時間ホールドした後、75℃で5時間ホールドした。
【0048】
次に、前記混合物に、予め酢酸エチルに溶解した2,2‘-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液2質量部(固形分0.1質量%)を添加し、攪拌下、72℃で4時間ホールドした後、75℃で5時間ホールドした。
次に、前記混合物を酢酸エチル98質量部で希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって、重量平均分子量104万のアクリル共重合体(A-1)溶液を得た。
【0049】
前記アクリル共重合体(A-1)溶液に、ハリマ化成株式会社「ハリタックPCJ」(バイオマス度:95%)15質量部、荒川化学工業株式会社「スーパーエステルA-100」(バイオマス度:100%)85質量部、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体(DIC株式会社製「バーノックD-40」、以下、「D-40」と略記する。)を配合し、ゲル分率が39.9%になる粘着剤(P-1)(バイオマス度:49.6%)を得た。
【0050】
[調整例2]
前記アクリル共重合体(A-1)に、荒川化学工業株式会社「スーパーエステルL」(バイオマス度:90.7%)を15部、荒川化学工業株式会社「スーパーエステルA-75」(バイオマス度:91%)を45部、スーパーエステルA-100を30部、ハリタックPCJを10部、D-40を配合し、ゲル分率が29.1%になる粘着剤(P-2)(バイオマス度:47.0%)を得た。
【0051】
[調整例3]
2-エチルヘキシルアクリレート96.4質量部、アクリル酸を1.2質量部、β―カルボキシエチルアクリレートを2.4質量部に変更する以外は調整例1と同様の方法で、重量平均分子50万のアクリル共重合体(A-2)溶液を得た。
前記アクリル共重合体(A-2)溶液に、スーパーエステルA-100を85質量部、ハリタックPCJを15質量部、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製テトラッドC)2%酢酸エチル溶液を配合し、ゲル分率が37.8%になる粘着剤(P-3)(バイオマス度:49.6%)を得た。
【0052】
[調整例4]
n-ブチルアクリレートを59質量部、2-エチルヘキシルアクリレート36質量部、アクリル酸を4質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレートを0.1質量部に変更する以外は調整例1と同様の方法で、重量平均分子51万のアクリル共重合体(A-3)溶液を得た。
前記アクリル共重合体(A-3)溶液に、スーパーエステルA-100を85質量部、ハリタックPCJを15質量部、D-40を配合し、ゲル分率が30.6%になる粘着剤(P-4)(バイオマス度:49.6%)を得た。
【0053】
[調整例5]
n-ブチルアクリレート54.9質量部、2-エチルヘキシルアクリレート44質量部、アクリル酸を1質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部に変更する以外は調整例1と同様の方法で、重量平均分子66万のアクリル共重合体(A-4)溶液を得た。
前記アクリル共重合体(A-4)溶液に、スーパーエステルA-100を85質量部、ハリタックPCJを15質量部、D-40を配合し、ゲル分率が25.5%になる粘着剤(P-5)(バイオマス度:49.6%)を得た。
【0054】
[実施例1]
前記調整例1で得た粘着剤(P-1)を、離型ライナー(片面側が剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)の剥離処理面に塗工し、80℃で5分間乾燥させることによって、厚さ50μmの粘着剤層を作製した。
その後、40℃の環境下で48時間熟成させることによって、両面粘着テープ(T-1)を得た。
【0055】
[実施例2]
粘着剤(P-1)の代わりに粘着剤(P-2)を使用する以外は、実施例1と同様の方法で厚さ50μmの両面粘着テープ(T-2)を得た。
【0056】
[実施例3]
粘着剤(P-1)の代わりに粘着剤(P-3)を使用する以外は、実施例1と同様の方法で厚さ50μmの両面粘着テープ(T-3)を得た。
【0057】
[実施例4]
粘着剤(P-1)の代わりに粘着剤(P-4)を使用する以外は、実施例3と同様の方法で厚さ50μmの両面粘着テープ(T-4)を得た。
【0058】
[実施例5]
粘着剤(P-1)の代わりに粘着剤(P-5)を使用する以外は、実施例3と同様の方法で厚さ50μmの両面粘着テープ(T-5)を得た。
【0059】
[比較調整例1]
前記アクリル共重合体(A-4)に三井化学株式会社製「FTR6100」を85質量部、三井化学株式会社製「FTR6125」を15質量部、D-40を配合し、ゲル分率が39.1%になる粘着剤(Q-1)(バイオマス度:0%)を得た。
【0060】
[比較調整例2]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート61.9質量部、イソボルニルアクリレート26質量部、アクリル酸12質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1量部、及び、酢酸エチル200質量部を仕込み、攪拌下、72℃で4時間ホールドした後、75℃で5時間ホールドした。
【0061】
次に、前記混合物に、予め酢酸エチルに溶解した2,2‘-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液2質量部(固形分0.1質量%)を添加し、攪拌下、72℃で4時間ホールドした後、75℃で5時間ホールドした。
次に、前記混合物を酢酸エチル98質量部で希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって、重量平均分子量30万のアクリル共重合体(B-1)溶液を得た。
前記アクリル共重合体(B-1)溶液に、D-40を配合し、ゲル分率が6.9%になる粘着剤(Q-2)(バイオマス度:21%)を得た。
【0062】
[比較調整例3]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート97.9質量部、アクリル酸2質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部、及び、酢酸エチル200質量部を仕込み、攪拌下、72℃で4時間ホールドした後、75℃で5時間ホールドした。
【0063】
次に、前記混合物に、予め酢酸エチルに溶解した2,2‘-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液4質量部(固形分0.1質量%)を添加し、攪拌下、72℃で4時間ホールドした後、75℃で5時間ホールドした。
【0064】
次に、前記混合物を酢酸エチル98質量部で希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって、重量平均分子量106万のアクリル共重合体(B-2)溶液を得た。
前記アクリル共重合体(B-2)溶液に、D-40を配合し、ゲル分率が42.8%になる粘着剤(Q-3)(バイオマス度:19.8%)を得た。
【0065】
[比較調整例4]
前記アクリル共重合体(A-1)溶液に、スーパーエステルLを85質量部、ハリタックPCJを15質量部、D-40を配合し、ゲル分率が27.4%になる粘着剤(Q-4)(バイオマス度:45.4%)を得た。
【0066】
[比較調整例5]
前記アクリル共重合体(A-1)溶液に、スーパーエステルA-100を85質量部、ハリタックPCJを65質量部、D-40を配合し、ゲル分率が15.0%になる粘着剤(Q-5)(バイオマス度:58.7%)を得た。
【0067】
[比較例1]
前記比較調整例1で得た粘着剤(Q-1)を、離型ライナー(片面側が剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)の剥離処理面に塗工し、80℃で5分間乾燥させることによって、厚さ50μmの粘着剤層を作製した。
その後、40℃の環境下で48時間熟成させることによって両面粘着テープ(U-1)を得た。
【0068】
[比較例2]
粘着剤(Q-1)の代わりに粘着剤(Q-2)を使用する以外は、比較例1と同様の方法で厚さ50μmの両面粘着テープ(U-2)を得た。
【0069】
[比較例3]
粘着剤(Q-1)の代わりに粘着剤(Q-3)を使用する以外は、比較例1と同様の方法で厚さ50μmの両面粘着テープ(U-3)を得た。
【0070】
[比較例4]
粘着剤(Q-1)の代わりに粘着剤(Q-4)を使用する以外は、比較例1と同様の方法で厚さ50μmの両面粘着テープ(U-4)を得た。
【0071】
[比較例5]
粘着剤(Q-1)の代わりに粘着剤(Q-5)を使用する以外は、比較例1と同様の方法で厚さ50μmの両面粘着テープ(U-5)を得た。
【0072】
[剥離強度の測定方法]
実施例及び比較例で得られた両面粘着テープの一方の面側の離型ライナーを剥離し、厚さ25μmのPETフィルムで裏打ちし、25mm幅に裁断したものを試験片とした。
前記試験片の他方の面側の離型ライナーを剥離し、厚さ2mmのステンレス(SUS)板の表面に貼付した後(接着面積25mm×80mm)、その上面を、2kgロールを1往復させ圧着することによって貼付物を得た。
前記貼付物を23℃,50%RHの雰囲気下で1時間放置した。
次に、前記貼付物を構成する前記試験片の180度剥離強度(N/25mm)を、23℃,50%RHの雰囲気下でJIS Z0237に準拠して測定した。
【0073】
A:剥離強度が25N/25mm以上であった。
B:剥離強度が12.5N/25mm以上、25N/25mm未満であった。
C:剥離強度が12.5N/mm未満であった。
D:スティックスリップ(S-S)してしまい、測定できなかった。
【0074】
[せん断接着強度の測定方法]
実施例及び比較例で得られた両面粘着テープを10mm角に裁断したものを試験片とした。前記試験片の一方の面側の離型ライナーを剥離し、厚さ2mmのステンレス(SUS)板の表面に貼付した後、もう一方の面側の剥離ライナーを剥離し、幅25mm×長さ80mm、厚さ50μmのステンレス箔を貼付した後、2kgロールを1往復させ圧着することによって貼付物を得た。
前記貼付物を23℃,50%RHの雰囲気下で24時間放置した。
次に、前記貼付物を構成する前記試験片のステンレス箔とステンレス板を23℃,50%RHの雰囲気下で10mm/minの速度で引っ張り、ステンレス箔が剥がれる強度を測定した。
【0075】
A:せん断接着強度が2MPa以上であった。
B:せん断接着強度が1.5MPa以上、2.0MPa未満であった。
C:せん断接着強度が1.0MPa以上、1.5MPa未満であった。
D:せん断接着強度が1.0MPa未満であった。
【0076】
[初期タック性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた両面粘着テープの粘着面を指で触った感触を以下の基準で評価した。
A:テープの粘着面を触った際、タック感が強くある。
B:テープの粘着面を触った際、タック感が少しある。
C:テープの粘着面を触った際、ほとんどタック感がない。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
上記結果より、本願発明である実施例1~5は、剥離強度、初期タック性、せん断接着強度において、良好な特性を有していることが分かる。一方、比較例1~5では、上記特性のいずれか一つ以上が劣っていることが分かる。