(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】真空処理装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/00 20060101AFI20230606BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C23C14/00 B
F28D15/02 H
(21)【出願番号】P 2018217282
(22)【出願日】2018-11-20
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-228032(JP,A)
【文献】特開2008-170136(JP,A)
【文献】特開2007-146290(JP,A)
【文献】特開2007-146260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバを有してこの真空チャンバ内にセットされた被処理基板に対して所定の真空処理を施す真空処理装置であって、真空チャンバ内に防着板が設けられるものにおいて、
防着板の部分に隙間を存して対向配置される放射冷却板を備え、放射冷却板が、真空チャンバの冷却部にヒートパイプを介して接続され
、
前記冷却部は、前記真空チャンバの内壁面に立設した金属製のブロック体で構成され、
前記防着板の部分と対向する前記放射冷却板の表面部分が、当該表面部分の母材金属に対して表面処理を施すことで放射率を高めた高放射率層で構成されることを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
前記ヒートパイプが、SUS製の保護管に内挿されることを特徴とする請求項
1記載の真空処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバを有してこの真空チャンバ内にセットされた被処理基板に対して所定の真空処理を施す真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造工程においては、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバ内にてシリコンウエハなどの被処理基板に所定の真空処理を施す工程があり、このような真空処理には、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法またはプラズマCVD法による成膜装置、ドライエッチング装置や真空熱処理装置等が利用される。スパッタリング法による成膜を施す真空処理装置(スパッタリング装置)は例えば特許文献1で知られている。このものは、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバを有し、その上部にはスパッタリング用ターゲットが配置されている。真空チャンバ内の下部には、ターゲットに対向させて被処理基板が設置されるステージが設けられている。
【0003】
上記スパッタリング装置を用いて所定の薄膜を成膜するのに際しては、ステージに一枚の被処理基板を設置した状態で真空雰囲気の真空チャンバ内に希ガス(及び反応ガス)を導入し、ターゲットに例えば負の電位を持った直流電力や所定周波数の交流電力を投入する。これにより、真空チャンバ内にプラズマ雰囲気が形成され、プラズマ中で電離した希ガスのイオンがターゲットに衝突してターゲットがスパッタリングされ、ターゲットから飛散したスパッタ粒子が被処理基板表面に付着、堆積して、ターゲット種に応じた所定の薄膜が成膜される。ターゲットをスパッタリングすると、ターゲット表面から所定の余弦則に従ってスパッタ粒子が飛散するが、スパッタ粒子の一部は被成膜物以外にも向けて飛散する。真空チャンバには、通常、その内壁面に対するスパッタ粒子の付着を防止するために、金属製の防着板が真空チャンバの内壁面から間隔を存して設けられる。
【0004】
ところで、スパッタリングによる成膜時、防着板は、プラズマの輻射熱等で加熱され、成膜される被処理基板の枚数が増加するのに従い、次第に高温になっていく。そして、所定温度を超えて防着板が昇温すると、特に、スパッタ粒子が付着、堆積しない防着板の裏面から真空排気されずにその表面に残留する種々のガス(酸素や、水蒸気等)が放出されることになる。このような放出ガスが成膜時に薄膜中に取り込まれると、例えば膜質の劣化を招来するので、これを可及的に抑制する必要がある。
【0005】
従来では、防着板の裏面側に冷却管を蛇行して付設し、または、所定の厚みを持つ防着板内に冷媒の循環路を形成し、冷却管や循環路に冷媒を循環させて防着板の冷却を行うことが一般に知られている(例えば、特許文献2参照)。然し、このような防着板は、それ自体の構造が複雑でコスト高である。また、真空チャンバ外に配置されるチラーユニットからの配管を、継手などを介して冷却管や循環路に接続する必要があるので、真空処置装置の破損につながる、真空チャンバ内での水漏れを発生させる危険性が増大するといった問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-91861号公報
【文献】特開2000-73162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みなされたものであり、真空チャンバ内に設けられる防着板を簡単な構成で冷却できるようにした真空処理装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、真空チャンバを有してこの真空チャンバ内にセットされた被処理基板に対して所定の真空処理を施す本発明の真空処理装置は、真空チャンバ内に防着板が設けられ、防着板の部分に隙間を存して対向配置される放射冷却板を備え、放射冷却板が、真空チャンバの冷却部にヒートパイプを介して接続され、前記冷却部は、前記真空チャンバの内壁面に立設した金属製のブロック体で構成され、前記防着板の部分と対向する前記放射冷却板の表面部分が、当該表面部分の母材金属に対して表面処理を施すことで放射率を高めた高放射率層で構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、放射冷却板からの放射冷却により防着板の部分が冷却される。ここで、放射冷却板から真空チャンバの冷却部への熱引けが不十分であると、真空処理中に防着板が所定温度以上に加熱される虞がある。本発明では、放射冷却板がヒートパイプを介して冷却部に接続されるため、放射冷却板から冷却部へと効率よく熱引けし、結果として、真空処理中に防着板が所定温度以上に加熱されることを防止できる。ところで、真空チャンバの下壁や側壁には、真空処理に先立って実施されるベーキング処理用に、温媒を循環させるためのジャケットが設けられているものが多い。この場合、冷却部として既存のジャケットやジャケットに冷媒を循環させることで冷却される真空チャンバの下壁内面を利用できるため、防着板を簡単な構成で冷却できる。しかも、従来例のように真空チャンバ内に冷却管や循環路を設けないため、真空チャンバ外に配置されるチラーユニットからの配管を継手などを介して冷却管や循環路に接続する必要がなく、真空チャンバ内での水漏れを発生させる危険性を排除できる。
【0010】
また、本発明によれば、放射冷却板からブロック体へと効率よく熱引けし、真空処理中に防着板をより確実に冷却することができ、有利である。
【0011】
本発明においては、前記ヒートパイプが、SUS製の保護管に内蔵されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態のスパッタリング装置を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、真空処理装置をマグネトロン方式のスパッタリング装置、被処理基板をシリコンウエハ(以下、「基板Sw」という)とし、基板Sw表面に所定の薄膜を成膜する場合を例に本発明の真空処理装置の実施形態を説明する。以下においては、「上」「下」といった方向を示す用語は、
図1に示す真空処理装置としてのスパッタリング装置の設置姿勢を基準とする。
【0014】
図1を参照して、SMは、本実施形態のスパッタリング装置である。スパッタリング装置SMは、真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の側壁及び下壁には、図外の温媒または冷媒用の循環ユニットに配管を介して接続されるジャケット11が設けられており、適宜、温媒や冷媒を循環させて(例えば、ベーキング処理時には温媒、真空処理時には冷媒を循環させて)真空チャンバ1の側壁及び下壁を加熱または冷却できるようにしている。このため、ジャケット11及びジャケット11に冷媒を循環させることで冷却される真空チャンバ1の下壁内面13が、本発明の特許請求の範囲の冷却部を構成する。また、真空チャンバ1の上面開口にはカソードユニット2が着脱自在に取付けられている。
【0015】
カソードユニット2は、ターゲット21と、このターゲット21の上方に配置される磁石ユニット22とで構成されている。ターゲット21としては、基板Sw表面に成膜しようとする薄膜に応じて、アルミニウム、銅、チタンやアルミナなど公知のものが利用される。そして、ターゲット21は、バッキングプレート21aに接合した状態で、スパッタ面21bを下方にした姿勢で真空チャンバ1の上壁に設けた真空シール兼用の絶縁体31を介して真空チャンバ1の上部に取り付けられる。ターゲット21には、直流電源や交流電源などで構成されるスパッタ電源21cからの出力21dが接続され、ターゲット種に応じて、例えば負の電位を持つ所定電力や所定周波数の高周波電力が投入できるようになっている。磁石ユニット22は、ターゲット21のスパッタ面21bの下方空間に磁場を発生させ、スパッタリング時にスパッタ面21bの下方で電離した電子等を捕捉してターゲット21から飛散したスパッタ粒子を効率よくイオン化する公知の閉鎖磁場若しくはカスプ磁場構造を有するものであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0016】
真空チャンバ1の下部には、ターゲット21に対向させてステージ4が配置されている。ステージ4は、真空チャンバ1下部に設けた絶縁体32を介して設置される、筒状の輪郭を持つ金属製(例えばSUS製)の基台41と、この基台41の上面に設けたチャックプレート42とを有する。基台41には、図外のチラーユニットから供給される冷媒を循環させる冷媒循環路41aが形成されており、選択的に冷却できるようになっている。チャックプレート42は、基台41の上面より一回り小さい外径を有し、静電チャック用の電極が埋設されている。この電極に図外のチャック電源から電圧を印加すると、チャックプレート42上面に基板Swが静電吸着されるようになっている。また、基台41とチャックプレート42との間には、例えば窒化アルミニウム製のホットプレート43が介設されている。ホットプレート43には、例えばヒータ等の加熱手段(図示省略)が組み込まれており、この加熱手段に図外の電源から通電することにより、所定温度(例えば、300℃~500℃)に加熱できるようになっている。この場合、チャックプレート42にヒータを内蔵してチャックプレート42とホットプレート43とを一体に形成することもできる。そして、ホットプレート43による加熱と、冷媒循環路41aへの冷媒の循環による基台41の冷却とによって基板Swを室温以上の所定温度(例えば、350℃)に制御できるようにしている。
【0017】
真空チャンバ1の側壁には、スパッタガスを導入するガス管5が接続され、ガス管5がマスフローコントローラ51を介して図示省略のガス源に連通している。スパッタガスには、真空チャンバ1内にプラズマを形成する際に導入されるアルゴンガス等の希ガスだけでなく、酸素ガスや窒素ガスなどの反応ガスが含まれる。真空チャンバ1の下壁には、ターボ分子ポンプやロータリーポンプ等で構成される真空ポンプ61に通じる排気管62が接続され、真空チャンバ1内を真空引きし、スパッタリング時にはスパッタガスを導入した状態で真空チャンバ1を所定圧力に保持できるようにしている。
【0018】
真空チャンバ1内でステージ4の周囲には、ホットプレート43上面の外周部分43cを覆うことで、ターゲット21から飛散するスパッタ粒子の当該部分43cへの付着を防止する防着板として機能するプラテンリング7が間隔を存して設けられている。プラテンリング7は、アルミナ、ステンレス等の公知の材料製であり、基台41上面の外周部分に絶縁体33を介して設けられている。また、真空チャンバ1内には、スパッタ粒子の真空チャンバ1の内壁面への付着を防止する防着板8が設けられている。
【0019】
防着板8は、夫々がアルミナ、ステンレス等の公知の材料製である上防着板81と下防着板82とで構成されている。上防着板81は、筒状の輪郭を持ち、真空チャンバ1の上部に設けた係止部12を介して吊設されている。下防着板82もまた、筒状の輪郭を持ち、その径方向外側の自由端には、上方に向けて起立した起立壁部82aが形成されている。下防着板82には、真空チャンバ1の下壁を貫通してのびる、モータやエアシリンダなどの駆動手段83からの駆動軸83aが連結されている。駆動手段83によって下防着板82は、スパッタリングによる成膜が実施される成膜位置と、成膜位置よりも高く、図外の真空ロボットによるステージ4への基板Swの受渡が実施される搬送位置との間で上下動される。下防着板82の成膜位置では、上防着板81の下端部と下防着板82の起立壁部82aの上端部とが互いに上下方向でオーバーラップするように設計されている。
【0020】
上下方向と直交してのびる下防着板82の平坦部82bは、その径方向の内方部がプラテンリング7と対向するように定寸されている。平坦部82b下面の所定位置には、1個の環状の突条82cが形成されている。この突条82cに対応させてプラテンリング7の上面には、環状の凹溝71が形成されている。そして、成膜位置では、平坦部82bの突条82cとプラテンリング7の凹溝71とにより所謂ラビリンスシールが形成され、基板Swの周囲で下防着板82の下方に位置する真空チャンバ1内の空間へのスパッタ粒子の回り込みを防止できるようにしている。また、スパッタリング装置SMは、マイクロコンピュータ、記憶素子やシーケンサ等を備えた公知の構造の制御手段(図示省略)を備え、この制御手段が、スパッタ電源21c、その他の電源、マスフローコントローラ51や真空ポンプ61等のスパッタリング時の各部品の制御などを統括して行う。以下に、ターゲット21をアルミニウムとし、上記スパッタリング装置SMにより基板Sw表面にアルミニウム膜を成膜する場合を例に成膜方法を説明する。
【0021】
真空ポンプ61を作動させて真空チャンバ1内を真空排気した後、下防着板82の搬送位置にて、図外の真空搬送ロボットによりステージ4上へと基板Swを搬送し、ステージ4のチャックプレート42上面に基板Swを載置する。真空搬送ロボットが退避すると、下防着板82を成膜位置に移動すると共に、チャックプレート42の電極に所定電圧を印加し、チャックプレート42上面に基板Swを静電吸着する。これに併せて、ホットプレート43の加熱と、冷媒循環路41aへの冷媒の循環による基台41の冷却とによって基板Swが室温以上の所定温度(例えば、350℃)に制御される。基板Swが所定温度に達すると、スパッタガスとしてのアルゴンガスを所定の流量(例えばアルゴン分圧が0.5Pa)で導入し、これに併せてターゲット21にスパッタ電源21cから負の電位を持つ所定電力(例えば、3kW~50kW)を投入する。これにより、真空チャンバ1内にプラズマが形成され、プラズマ中のアルゴンガスのイオンでターゲット21のスパッタ面21bがスパッタリングされ、ターゲット21からのスパッタ粒子が基板Swに付着、堆積してアルミニウム膜が成膜される。
【0022】
ここで、スパッタリングによる成膜時、上防着板81や下防着板82は、プラズマの輻射熱等で加熱され、成膜される基板Swの枚数が増加するのに従い、次第に高温になっていく。本実施形態のような構成では、ホットプレート43からの放射で加熱されるプラテンリング7に下防着板82の平坦部82bが対向しているため、下防着板82が特に加熱され易い。そして、所定温度を超えて上防着板81や下防着板82(特に、基板Swの近傍に位置する下防着板82)が昇温すると、スパッタ粒子が付着、堆積しない上防着板81や下防着板82の裏面から真空排気されずにその表面に残留する種々のガス(酸素や、水蒸気等)が放出されることになる。このような放出ガスが成膜時に薄膜中に取り込まれると、例えば膜質の劣化を招来するので、これを可及的に抑制する必要がある。
【0023】
そこで、本実施形態では、
図2に示すように、下防着板82の平坦部82bに対向させて、放射冷却板9を配置した。放射冷却板9は、アルミニウムや銅などの伝熱特性のよい金属で構成され、平坦部82bと放射冷却板9との間の隙間は、放射冷却板9からの放射冷却により下防着板82が冷却されるように適宜設定される。ここで、真空チャンバ1の下壁内面13に金属製(例えば銅製)の支柱を複数本立設し、各支柱の上端で放射冷却板9を支持することも考えられるが、放射冷却板9から真空チャンバ1下壁への熱引けが不十分であると、真空処理中に下防着板82が所定温度以上に加熱される虞がある。そこで、本実施形態では、真空チャンバ1の側壁内面14に複数本(例えば3本)のヒートパイプ91を立設し、各ヒートパイプ91の上端で放射冷却板9を支持するようにした。ヒートパイプ91としては、金属製(例えば銅製)のパイプ中に揮発性の作動液が封入されて、この作動液の蒸発及び凝縮のサイクルにより熱を移動する公知のものを利用することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。尚、本実施形態では、放射冷却板9と接続されるヒートパイプ91の部分(加熱部)が側壁内面14と接続されるヒートパイプ91の部分(冷却部)よりも低い位置となっているため、ヒートパイプ91としては、パイプ内壁に毛細管構造を持つものを用いる必要がなく、より簡単な構造を持つ安価なものを用いることができる。ヒートパイプ91の両端の固定方法は、ネジ止め、かしめ、クランプなどの公知の方法から選択することができる。このように放射冷却板9がヒートパイプ91を介して真空チャンバ1下壁に接続されることで、放射冷却板9から真空チャンバ1下壁へと効率よく熱引けし、結果として、真空処理中に下防着板82が所定温度以上に加熱することを防止できる。また、真空チャンバ1の冷却部として、ベーキング処理用の既存のジャケット11及びジャケット11に冷媒を循環させることで冷却される真空チャンバ1下壁を利用できるため、下防着板82を簡単な構成で冷却できる。しかも、従来例のように真空チャンバ内に冷却管や循環路を設けないため、真空チャンバ外に配置されるチラーユニットからの配管を継手などを介して冷却管や循環路に接続する必要がなく、真空チャンバ1内での水漏れを発生させる危険性を排除できる。尚、ヒートパイプ91の外表面を保護するために、ヒートパイプ91がSUS製の保護管(図示省略)に内挿されることが好ましい。また、放射冷却板9の重量によっては、放射冷却板9の下面を後述する支柱94(
図4参照)を用いて支持するように構成してもよい。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、真空処理装置をスパッタリング装置SMとした場合を例に説明したが、真空チャンバ内に防着板を備えるものであれば、特に制限はなく、例えば、ドライエッチング装置やCVD装置等にも本発明を適用することができる。
【0025】
上記実施形態では、ヒートパイプ91の一端を真空チャンバ1の側壁内面14に接続したが、
図3に示すように、真空チャンバ1の下壁内面13に接続してもよい。即ち、真空チャンバ1の下壁内面13に複数本(例えば3本)のヒートパイプ91を立設し、各ヒートパイプ91の上端で放射冷却板9を支持するように構成してもよい。ここで、本変形例では、放射冷却板9と接続されるヒートパイプ91の部分(加熱部)が下壁内面13と接続されるヒートパイプ91の部分(冷却部)よりも高い位置となっているため、ヒートパイプ91としては、パイプ内壁に毛細管構造(ウィック)を持つものを用いることができる。また、
図4に示すように、真空チャンバ1の下壁内面13に立設された筒状のブロック体92に接続してもよい。ブロック体92は、放射冷却板9の径方向外側で下防着板82の平坦部82bに対向して設けられ、アルミニウムや銅などの伝熱特性のよい金属で構成されている。ブロック体92の高さは、ブロック体92の上面が放射冷却板9よりも上方に位置するように定寸されている。また、真空チャンバ1の下壁内面13とブロック体92との間には、シリコンシートやインジウムシートのような熱伝達を向上させる熱伝導シート93が介在されているが、介在されていなくてもよい。本変形例では、放射冷却板9に接続されるヒートパイプ91の部分(加熱部)よりもブロック体92に接続されるヒートパイプ91の部分(冷却部)が高いため、ヒートパイプ91として、
図3に示す変形例の如くパイプ内壁に毛細管構造を持つものを用いる必要がなく、より簡単な構造を持つ安価なものを用いることができる。尚、ブロック体92よりも径方向内側の下壁内面13に金属製(例えば銅製)の支柱94を立設し、この支柱94の上端で放射冷却板9の下面を支持しているが、支柱94を設けなくてもよい。また、ブロック体92の位置は、特に限定されず、例えば下防着板82よりも径方向外側に設けてもよい。
【0026】
また、
図4に示すように、下防着板82に対向する放射冷却板9の表面部分を、この表面部分の母材金属に対して表面処理を施すことで放射率を高めた高放射率層90で構成してもよい。これによれば、下防着板82から放出される熱線を高放射率層90で吸収して放射冷却板9に伝えることができ、さらにヒートパイプ91を介して熱引けさせることができる。この場合、放射冷却板9の表面に対して例えば粒径が90~710μmの範囲の粒子を用いてブラスト処理を施せば、高放射率層90の放射率を0.5以上にすることができる。また、放射冷却板9の表面に対して溶射や成膜などの表面処理を施すことで、AlTiN,Al
2O
3等の非金属膜やTi溶射膜から構成される高放射率層90を形成するようにしてもよい。
【0027】
上記実施形態では、下防着板82を冷却する場合を例に説明したが、上防着板81を冷却する場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
SM…スパッタリング装置(真空処理装置)、Sw…基板(被処理基板)、1…真空チャンバ、11…ジャケット(真空チャンバの冷却部)、13…真空チャンバ1の下壁内面(真空チャンバの冷却部)、14…真空チャンバ1の側壁内面(真空チャンバの冷却部)、8…防着板、82…下防着板(防着板)、9…放射冷却板、91…ヒートパイプ、92…ブロック体(真空チャンバの冷却部)。