(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】基板処理装置、プラズマ生成装置、半導体装置の製造方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20230606BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20230606BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20230606BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20230606BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
C23C16/505
H05H1/46 M
(21)【出願番号】P 2021030785
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 友紀
(72)【発明者】
【氏名】奥田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】竹田 剛
(72)【発明者】
【氏名】原 大介
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-082533(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0143234(KR,A)
【文献】特開2018-107304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/205
H01L 21/312-21/32
H01L 21/365
H01L 21/469-21/475
H01L 21/86
C23C 16/00-16/56
H05H 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくとも一方と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、高周波電力が印加され前記第3印加電極と長さが異なる第4印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
を備えた基板処理装置。
【請求項2】
前記第4印加電極は前記第2基準電極と長さが等しい請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第3印加電極は、前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれよりも短い請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第3印加電極は前記第4印加電極よりも短い請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくとも一方と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なり、且つ前記第2基準電極よりも短い第3印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
を備えた基板処理装置。
【請求項6】
前記第4印加電極は前記第1印加電極及び前記第2印加電極の少なくともいずれかと長さが等しい請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1印加電極は前記第1基準電極と長さが等しい請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極を含み、前記ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
を備えた基板処理装置。
【請求項9】
前記第2印加電極は前記第1印加電極と長さが等しい請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第2印加電極は前記第1印加電極よりも短い請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第4印加電極は前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第4印加電極は、前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれよりも短い請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくとも一方と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、高周波電力が印加され前記第3印加電極と長さが等しい第4印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
を備えた基板処理装置。
【請求項14】
前記第1印加電極及び前記第2印加電極の少なくともいずれかに高周波電力を供給する第1高周波電源と、
前記第3印加電極に高周波電力を供給する、前記第1高周波電源とは異なる第2高周波電源と、を有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記第1プラズマ電極ユニットに高周波電力を供給する第1高周波電源と、
前記第2プラズマ電極ユニットに高周波電力を供給する、前記第1高周波電源とは異なる第2高周波電源と、を有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項16】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくとも一方と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前
記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
前記第1プラズマ電極ユニットに高周波電力を供給する第1高周波電源と、
前記第2プラズマ電極ユニットに高周波電力を供給する、前記第1高周波電源とは異なる第2高周波電源と、
前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットの延伸方向における、前記第1プラズマ電極ユニットに印加される電力の分布と前記第2プラズマ電極ユニットに印加される電力の分布とを合わせた分布が均等となるように、前記第1高周波電源及び前記第2高周波電源を制御することが可能なように構成された制御部と、
を備えた基板処理装置。
【請求項17】
前記第1プラズマ電極ユニットに高周波電力を供給する第1高周波電源と、
前記第2プラズマ電極ユニットに高周波電力を供給する、前記第1高周波電源とは異なる第2高周波電源と、
前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットによって前記ガスをプラズマ励起することにより生成される活性種の量の分布が、前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットの延伸方向において均等となるように、前記第1高周波電源及び前記第2高周波電源を制御することが可能なように構成された制御部と、を備える請求項1~13の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくともいずれかと、を含み、ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され、前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、高周波電力が印加され前記第3印加電極と長さが異なる第4印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
を備えたプラズマ生成装置。
【請求項19】
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくともいずれかと、を含み、ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され、前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なり、且つ前記第2基準電極よりも短い第3印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
を備えたプラズマ生成装置。
【請求項20】
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極を含み、ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され、前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
を備えたプラズマ生成装置。
【請求項21】
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくとも一方と、を含み
、ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、高周波電力が印加され前記第3印加電極と長さが等しい第4印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プ
ラズマ電極ユニットと、
を備えたプラズマ生成装置。
【請求項22】
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくとも一方と、を含み
、ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
前記第1プラズマ電極ユニットに高周波電力を供給する第1高周波電源と、
前記第2プラズマ電極ユニットに高周波電力を供給する、前記第1高周波電源とは異なる第2高周波電源と、
前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットの延伸方向における、前記第1プラズマ電極ユニットに印加される電力の分布と前記第2プラズマ電極ユニットに印加される電力の分布とを合わせた分布が均等となるように、前記第1高周波電源及び前記第2高周波電源を制御することが可能なように構成された制御部と、
を備えたプラズマ生成装置。
【請求項23】
請求項1、5、8、13のいずれか1項に記載の基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する基板搬入工程と、
前記ガスを前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットによりプラズマ励起して活性種を生成し、前記活性種を前記基板に供給して前記基板を処理する基板処理工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項24】
ガスが供給され、基板を処理する処理室と、
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくとも一方と、を含む第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、を含む第2プラズマ電極ユニットと、
を備えた基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する基板搬入工程と、
前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットの延伸方向における、前記第1プラズマ電極ユニットに印加される電力の分布と前記第2プラズマ電極ユニットに印加される電力の分布とを合わせた分布が均等となるように、前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットにそれぞれ高周波電力を供給することで、前記ガスを前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットによりプラズマ励起して活性種を生成し、前記活性種を前記基板に供給して前記基板を処理する基板処理工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項25】
請求項1、5、8、13のいずれか1項に記載の基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する基板搬入手順と、
前記ガスを前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットによりプラズマ励起して活性種を生成し、前記活性種を前記基板に供給して前記基板を処理する基板処理手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項26】
ガスが供給され、基板を処理する処理室と、
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2
印加電極の少なくとも一方と、を含む第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、を含む第2プラズマ電極ユニットと、
を備えた基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する基板搬入手順と、
前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットの延伸方向における、前記第1プラズマ電極ユニットに印加される電力の分布と前記第2プラズマ電極ユニットに印加される電力の分布とを合わせた分布が均等となるように、前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットにそれぞれ高周波電力を供給することで、前記ガスを前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットによりプラズマ励起して活性種を生成し、前記活性種を前記基板に供給して前記基板を処理する基板処理手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、プラズマ生成装置、半導体装置の製造方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板処理装置の処理室内に収容した基板に対して、原料ガスや反応ガスなどをプラズマにより活性化させて供給し、基板上に絶縁膜や半導体膜、導体膜等の各種膜を形成したり、各種膜を除去したりする基板処理が行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマを用いて複数の基板を処理する場合、複数の基板に対する処理量のバラツキを低減するため、プラズマにより生成される活性種が、各基板に対して均等に供給されることが望ましい。処理室内においてプラズマの偏りがあると、活性種の偏りが発生し、複数の基板間で処理量が異なることがある。
【0005】
本開示の目的は、複数の基板に対する処理量のバラツキを低減することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくとも一方と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の基板に対する処理量のバラツキを低減する技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略 構成図であり、処理炉部分を縦断面で示す図である。
【
図2】
図1に示す基板処理装置におけるA-A断面図である。
【
図3】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置のバッファ構造を説明するための横断面拡大図である。
【
図4】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置のバッファ構造を説明するための模式図である。
【
図5】比較例についての反応管と棒状電極の簡略説明図、及び反応管203内(炉内)位置(基板積層方向)の電力比率のグラフである。
【
図6】反応管203、及び、各棒状電極の長さを示す簡略説明図である。
【
図7】
図1に示す基板処理装置におけるコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図1に示す基板処理装置を用いた基板処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例1の反応管203、及び、各棒状電極の長さを示す簡略説明図である。。
【
図10】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例2の反応管203、及び、各棒状電極の長さを示す簡略説明図である。
【
図11】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例3の反応管203、及び、各棒状電極の長さを示す簡略説明図である。
【
図12】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例4の反応管203、及び、各棒状電極の長さを示す簡略説明図である。
【
図13】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例5の反応管203、及び、各棒状電極の長さを示す簡略説明図である。
【
図14】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例6の反応管203、及び、各棒状電極の長さを示す簡略説明図である。
【
図15】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例7を説明するための概略横断面図である。
【
図16】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例8を説明するための概略横断面図である。
【
図17】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例9を説明するための概略横断面図である。
【
図18】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例10を説明するための概略横断面図である。
【
図19】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例11を説明するための概略横断面図である。
【
図20】本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の変形例12を説明するための概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について
図1から
図8を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
(1)基板処理装置の構成
(加熱装置)
図1に示すように、処理炉202は加熱装置(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
(処理室)
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。
【0011】
処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。なお、処理容器は上記の構成に限らず、反応管203のみを処理容器と称する場合もある。
【0012】
(ガス供給部)
処理室201内には、ノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、 ガス供給管232a,232bが、それぞれ接続されている。このように、 処理容器には2本のノズル249a,249bと、2本のガス供給管232a,232bとが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することが可能となっている。なお、反応管203のみを処理容器とした場合、ノズル249a,249bは反応管203の側壁を貫通するように設けられていてもよい。
【0013】
ガス供給管232a,232bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、上流方向から順に、MFC241c,241dおよびバルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。
【0014】
ノズル249aは、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、ノズル249aは、ウエハ200が配列(載置)されるウエハ配列領域(載置領域)の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。すなわち、ノズル249aは、処理室201内へ搬入された各ウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と垂直となる方向に設けられている。
【0015】
ノズル249aの側面には、ガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは、反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0016】
ガス供給管232bの先端部には、ノズル249bが接続されている。ノズル249bは、ガス分散空間であるバッファ室237内に設けられている。バッファ室237は、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、また、反応管203の 内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。すなわち、バッファ室237の一部は、ウエハ配列領域の側方のウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにバッファ構造(隔壁)300によって形成されている。ここで、バッファ室237のうち、バッファ構造300により区画される反応管203内の空間を第2バッファ室と称する。バッファ構造300は、石英またはSiC等の耐熱材料である絶縁物によって構成されており、バッファ構造300の円弧状に形成された壁面には、ガスを供給するガス供給口302,304,306が形成されている。ガス供給口302,304,306は、
図2及び
図3に示すように、後述する棒状電極269,270間のプラズマ生成領域224a、棒状電極270,271間のプラズマ生成領域224b、棒状電極271とノズル249bとの間の領域において対向するその壁面の位置にそれぞれ反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給口302,304,306は、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0017】
ノズル249bは、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、ノズル249bは、バッファ構造300の内側であって、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。すなわち、ノズル249bは、処理室201内へ搬入されたウエハ200の端部の側方にウエハ200の表面と垂直となる方向に設けられている。ノズル249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bは、バッファ構造300の円弧状に形成された壁面に対して径方向に形成された壁面に向くように開口しており、壁面に向けてガスを供給することが可能となっている。これにより、反応ガスがバッファ室237内で分散され、棒状電極269~271に直接吹き付けることがなくなり、パーティクルの発生が抑制される。ガス供給孔250bは、ガス供給孔250aと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0018】
反応管203の内壁には、バッファ構造300と同様の構成であるバッファ構造400が設けられている。すなわち、バッファ室237の他の一部は、ウエハ配列領域の側方のウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにバッファ構造400によって形成されている。ここで、バッファ室237のうち、バッファ構造400により区画される反応管203内の空間を第1バッファ室と称する。
図2に示すように、平面視において、バッファ構造300とバッファ構造400は、後述する排気管231を挟んで、排気管231と反応管203の中心を通る直線に対して線対称に設けられている。また、平面視において、ノズル249aは、排気管231のウエハ200を挟んで対向する位置に設けられている。また、ノズル249bとノズル249cは、バッファ構造300、400のそれぞれのバッファ室237内の排気管231から遠い位置に設けられている。
【0019】
ガス供給管232bは、2分岐され、一方側の先端に前述のノズル249bが接続され、他方側の先端部にノズル249cが接続されている。ノズル249cは、ガス分散空間であるバッファ構造400側のバッファ室237内に設けられている。なお、
図1において、バッファ構造400はバッファ構造300と重なり合っており図示が省略されている。
【0020】
バッファ構造400の円弧状に形成された壁面には、ガスを供給するガス供給口402,404,406が形成されている。ガス供給口402,404,406は、
図2及び
図4に示すように、後述する棒状電極369,370間のプラズマ生成領域324a、棒状電極370,371間のプラズマ生成領域324b、棒状電極371とノズル249cとの間の領域において対向するその壁面の位置にそれぞれ反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給口402,404,406は、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0021】
ノズル249cは、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、ノズル249cは、バッファ構造400の内側であって、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。すなわち、ノズル249cは、処理室201内へ搬入されたウエハ200の端部の側方にウエハ200の表面と垂直となる方向に設けられている。ノズル249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250cが設けられている。ガス供給孔250cは、バッファ構造400の円弧状に形成された壁面に対して径方向に形成された壁面に向くように開口しており、壁面に向けてガスを供給することが可能となっている。これにより、反応ガスがバッファ室237内で分散され、棒状電極369~371に直接吹き付けることがなくなり、パーティクルの発生が抑制される。ガス供給孔250cは、ガス供給孔250aと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0022】
このように、本実施形態では、反応管203の側壁の内壁と、反応管203内に配列された複数枚のウエハ200の端部で定義される平面視において 円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル249a,249b、249c、および2つのバッファ室237を経由してガスを搬送している。そして、ノズル249a,249b、249cおよび2つのバッファ室237にそれぞれ開口されたガス供給孔250a,250b,250c、ガス供給口302,304,306,402,404,406から、ウエハ200の近傍で初めて反応管203内のウエハ200が配置された空間にガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される膜の膜厚の均一性を向上させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管 231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0023】
ガス供給管232aからは、所定元素を含む原料として、例えば、所定元素としてのシリコン(Si)を含む原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0024】
原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。本明細書において「原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態である液体原料」を意味する場合、「気体状態である原料ガス」を意味する場合、または、それらの両方を意味する場合がある。
【0025】
ガス供給管232bからは、原料とは化学構造が異なる反応ガス(反応体、リアクタント)として、例えば、酸素(O)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249b,249cを介して処理室201内へ供給される。O含有ガスは、酸化剤(酸化ガス)、すなわち、Oソースとして作用する。例えば、後述するプラズマ源を用いてこのガスをプラズマ励起し、励起ガスとして供給することとなる。
【0026】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ノズル249a,249b,249cを介して処理室201内へ供給される。
【0027】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1のガス供給系としての原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第2のガス供給系としての反応ガス供給系(リアクタント供給系)が構成される。主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガス供給系が構成される。原料ガス供給系、反応ガス供給系および不活性ガス供給系を単にガス供給系(ガス供給部)とも称する。なお、本明細書においては、ウエハ200に対する基板処理に用いられる原料ガスや反応ガス等のガスを総称して処理ガスと称することがあり、それらのガスを供給する原料ガス供給系や反応ガス供給系等の構成を総称して処理ガス供給系(処理ガス供給部)と称することがある。
【0028】
(基板支持具)
図1に示すように基板支持具(基板支持部)としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに 中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば 石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に 支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。但し、本実施形態はこのような形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料により構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0029】
(プラズマ生成部)
次にプラズマ生成部について、
図1から
図6を用いて説明する。
【0030】
図2に示すように、プラズマは容量結合プラズマ(Capacitive ly Coupled Plasma、略称:CCP)を用い、反応ガス供給時に石英などで作製された真空隔壁であるバッファ室237の内部で生成する。
【0031】
本実施形態の一例においては、バッファ構造300のバッファ室237内には、
図3に示すように、導電体で構成され、細長い構造を有する3本の棒状電極269,270,271が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積載方向に沿って配設されている。棒状電極269,270,271のそれぞれは、ノズル249bと平行に設けられている。棒状電極269,270,271のそれぞれは、上部より下部にわたって電極保護管275により覆われることで保護されている。電極保護管275は、棒状電極269,271,270を各々保護する石英管により構成されている。本実施形態では、3本の石英管が個々に分離した形態となっている。なお、電極保護管は、他の形状、例えば、棒状電極269,270,271が接触しないように、隔壁形状でもよい。棒状電極269,270は、その先端部が電極保護管275の上部に位置するように、棒状電極271は、その先端部が電極保護管275の下部に位置するように配置されている。棒状電極269,270は、略同じ長さであり、棒状電極271は棒状電極269,270とは長さが異なり、より詳しくはウエハ200の積載方向に対して長さが異なり、棒状電極269,270は棒状電極271よりも長い。
【0032】
図2に示すように、棒状電極269,270 ,271のうち両端に配置される印加電極としての棒状電極269,271(第4印加電極としての棒状電極269、第3印加電極としての棒状電極271) は、整合器272を介して高周波電源273に接続されて高周波電力が印加される。第2基準電極としての棒状電極270は、基準電位であるアースに接続され、接地されて基準電位が与えられる。これにより、高周波電源273に接続される棒状電極と、接地される棒状電極と、が交互に配置され、高周波電源273に接続された棒状電極269,271の間に配置された棒状電極270は、接地された棒状電極として、棒状電極269,271に対して共通して用いられている。
【0033】
換言すると、接地された棒状電極270は、隣り合う高周波電源273に接続された棒状電極269,271に挟まれるように配置され、棒状電極269と棒状電極270、同じく、棒状電極271と棒状電極270がそれぞれ対となるように構成されてプラズマを生成する。つまり、接地された棒状電極270は、棒状電極270に隣り合う2本の高周波電源273に接続された棒状電極269,271に対して共通して用いられている。これにより、基準電極の本数を削減することができる。そして、高周波電源273から棒状電極269,271に高周波(RF)電力を印加することで、棒状電極269,270間のプラズマ生成領域224a、棒状電極 270,271間のプラズマ生成領域224bにプラズマが生成される。
【0034】
主に、棒状電極269,270,271、電極保護管275により、第2プラズマ電極ユニット277(
図6参照、電極保護管275は図示省略)が構成される。なお、印加電極は棒状電極269,271の2本の例を説明したが、印加電極は1本でも3本以上でもよい。
【0035】
バッファ構造400のバッファ室237内には、
図4に示すように、導電体で構成され、細長い構造を有する3本の棒状電極369,370,371が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積載方向に沿って配設されている。棒状電極369,370,371のそれぞれは、ノズル249cと平行に設けられている。棒状電極369,370,371のそれぞれは、上部より下部にわたって電極保護管375により覆われることで保護されている。電極保護管375は、棒状電極369,371,370を各々保護する石英管により構成されている。本実施形態では、3本の石英管が個々に分離した形態となっている。なお、電極保護管は、他の形状、例えば、棒状電極369,370,371が接触しないように、隔壁形状でもよい。棒状電極369,370,371は、その先端部が電極保護管375の上部に位置するように配置されている。
【0036】
棒状電極369,370,371は、略同じ長さであり、棒状電極269,270とも略同じ長さである。棒状電極369,370,371は、棒状電極271とは長さが異なり、より詳しくはウエハ200の積載方向に対して長さが異なる。棒状電極369,370,371は、棒状電極271よりも長い。
【0037】
図2に示すように、棒状電極369,370 ,371のうち両端に配置される印加電極としての棒状電極369,371(第1印加電極としての棒状電極369、第2印加電極としての棒状電極371) は、整合器372を介して高周波電源373に接続されて高周波電力が印加される。第1基準電極としての棒状電極370は、基準電位であるアースに接続され、接地されて基準電位が与えられる。これにより、高周波電源373に接続される棒状電極と、接地される棒状電極と、が交互に配置され、高周波電源373に接続された棒状電極369,371の間に配置された棒状電極370は、接地された棒状電極として、棒状電極369,371に対して共通して用いられている。
【0038】
換言すると、接地された棒状電極370は、隣り合う高周波電源373に接続された棒状電極369,371に挟まれるように配置され、棒状電極369と棒状電極370、同じく、棒状電極371と棒状電極370がそれぞれ対となるように構成されてプラズマを生成する。つまり、接地された棒状電極370は、棒状電極370に隣り合う2本の高周波電源373に接続された棒状電極369,371に対して共通して用いられている。これにより、基準電極の本数を削減することができる。そして、高周波電源373から棒状電極369,371に高周波(RF)電力を印加することで、棒状電極369,370間のプラズマ生成領域324a、棒状電極 370,371間のプラズマ生成領域324bにプラズマが生成される。
【0039】
主に、棒状電極369,370,371、電極保護管375により、第1プラズマ電極ユニット377(
図6参照、電極保護管375は図示省略)が構成される。なお、印加電極は棒状電極369,371の2本の例を説明したが、印加電極は1本でも3本以上でもよい。
【0040】
第1プラズマ電極ユニット377と第2プラズマ電極ユニット277により、プラズマ源としてのプラズマ生成装置が構成される。整合器272,372、高周波電源273,373をプラズマ生成装置に含めて考えてもよい。プラズマ生成装置は、後述するように、ガスをプラズマ励起、すなわち、プラズマ状態に励起(活性化)させるプラズマ励起部(活性化機構)として機能する。
【0041】
電極保護管275は、棒状電極269,270,271のそれぞれをバッファ室237内の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内へ挿入できる構造となっている。また、電極保護管375は、棒状電極369,370,371のそれぞれをバッファ室237内の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内へ挿入できる構造となっている。電極保護管275,375の内部のO2濃度が外気(大気)のO2濃度と同程度であると、電極保護管275内へそれぞれ挿入された棒状電極269,270,271、電極保護管375内へそれぞれ挿入された棒状電極369,370,371、は、ヒータ207による熱で酸化されてしまう。このため、電極保護管275,375の内部にN2ガス等の不活性ガスを充填しておくか、不活性ガスパージ機構を用いて電極保護管275,375の内部をN2ガス等の不活性ガスでパージすることで、電極保護管275,375の内部のO2濃度を低減させ、棒状電極269,270,271,369,370,371の酸化を防止することができる。
【0042】
ここで、反応管203内のプラズマ発生の偏りについて説明する。
図5には、比較例として、反応管203内に、棒状電極269,270 ,271L,369,370,371が配置された簡略説明図と、反応管203内(炉内)位置(基板積層方向)の電力比率が斜線で示されている。
図5のグラフの上下方向は、右側に図示されている反応管203の上下方向(棒状電極の延伸方向)に対応している。なお、
図5において、電極保護管275,375等、他の反応管203内の構成は省略されている。棒状電極271Lは、本実施形態の棒状電極271と長さが異なり、棒状電極269,270,369,370,371と同一長さの印加電極である。
【0043】
図5に示されるように、棒状電極の一端側(給電側/Bottom側)よりも先端側(Top側)の方の電力比率が大きくなる傾向があることが、開示者らの知見より得られた。一例として、高周波電源273、373から同一の電圧を印加した場合、
図5では上側と下側の電力比率が2.0:1.6となっている。したがって、
図5のように、同一長さの棒状電極を配置した場合、反応管203内の下側(棒状電極の給電側)は、上側(棒状電極の先端側)よりも発生するプラズマの密度が小さく、プラズマ励起により生成される活性種も少なくなる。
【0044】
そこで、
図6に示すように、反応管203内における、棒状電極269,270 ,369,370,371の長さを略等しくし、これらよりも棒状電極271の長さを短くする。これにより、反応管203内の上側で発生するプラズマの密度が、
図5に示される場合よりも小さくなり、反応管203内の上側と下側でそれぞれ発生するプラズマの密度の差(すなわち、プラズマ密度の分布の偏り)が小さくなる。これにより、反応管203内において、プラズマ励起により生成される活性種量の上下方向の位置による偏りも少なくすることができる。
【0045】
また、本実施形態では、プラズマ生成部を備えたバッファ構造が2つ(バッファ構造300、400)設けられ、各バッファ構造300,400がそれぞれ高周波電源273,373及び整合器272,372を備えている。それぞれの高周波電源273,373はそれぞれコントローラ121に接続され、バッファ構造300,400のバッファ室237ごとのプラズマ制御が可能となる。すなわち、コントローラ121は、各バッファ室237ごとに活性種量の偏りが生じないよう、それぞれのプラズマ生成部のインピーダンスを監視してそれぞれの高周波電源273,373を独立して制御し、インピーダンスの大きさに応じて、高周波電源の出力を制御する。
【0046】
これにより、プラズマ生成部が1つの場合と比較して、各プラズマ生成部の高周波電力を小さくしてもウエハに対して充分な量の活性種を供給することができ、ウエハの面内均一性を向上させることができる。また、2つのプラズマ生成部に対して1つの高周波電源によってプラズマ制御を行うのに対し、プラズマ生成部ごとに高周波電源を設けることによって、各プラズマ生成部に断線等の異常が生じた場合に把握し易くなる。さらに、高周波電源と各電極間の距離を調整し易くなるため、各電極と高周波電源との距離が異なることによって生じる交流は電力の印加の差異を抑制し易くすることができる。
【0047】
また、前述のように、本実施形態では、第1プラズマ電極ユニット377と第2プラズマ電極ユニット277は、異なる高周波電源273,373から電力供給されている。そこで、棒状電極271の長さを、他の棒状電極269,270 ,369,370,371の長さよりも短くし、さらに、反応管203内の上下方向のプラズマ密度差(または、活性種量の位置による偏り)を小さくするため、第2高周波電源としての高周波電源273から供給する電力の大きさと、第1高周波電源としての高周波電源373から供給する電力の大きさと異ならせてもよい。
【0048】
例えば、棒状電極271の長さが短いことにより、反応管203内の下側(棒状電極の給電側)の電力比率が上側(棒状電極の先端側)の電力比率よりも大きくなった場合には、高周波電源273から供給する電力を高周波電源373から供給する電力よりも小さくして調整することができる。また、棒状電極271の長さを短くしても、反応管203内の下側(棒状電極の給電側)の電力比率が上側(棒状電極の先端側)の電力比率よりも小さい場合には、高周波電源273から供給する電力を高周波電源373から供給する電力よりも大きくして調整することができる。このように高周波電源373及び高周波電源273を制御することにより、第1プラズマ電極ユニット377及び前記第2プラズマ電極ユニット277の延伸方向における、第1プラズマ電極ユニット377に印加される電力の分布と第2プラズマ電極ユニット277に印加される電力の分布とを合わせた分布が均等となるように調整することができる。また換言すると、このように高周波電源373及び高周波電源273を制御することにより、第1プラズマ電極ユニット377及び第2プラズマ電極ユニット277によってガスをプラズマ励起することにより生成される活性種の量の分布が、第1プラズマ電極ユニット377及び第2プラズマ電極ユニット277の延伸方向において均等となるように調整することができる。
【0049】
(排気部)
反応管203には、
図1に示すように処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および排気バルブ(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気管231は、反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a,249b,249cと同様にマニホールド209に設けてもよい。
【0050】
(周辺装置)
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。
【0051】
シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。
【0052】
ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方には、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を降下させている間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0053】
反応管203の内部には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、ノズル249a,249bと同様に、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0054】
(制御装置)
次に制御装置について
図7を用いて説明する。
図7に示すように、制御部(制御装置)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0055】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する各種処理(成膜処理)における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラ ム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合 は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域 (ワークエリア)として構成されている。
【0056】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241d、バルブ243a~243d、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s、高周波電源273、373等に接続されている。
【0057】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、回転機構267の制御、MFC 241a~241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の正逆回転、回転角度および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作、高周波電源273,373の電力供給等を制御することが可能なように構成されている。
【0058】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ、SSD等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0059】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成するプロセス例について、
図8を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0060】
本明細書では、
図8に示す成膜処理のシーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の実施形態の説明においても、同様の表記を用いることとする。
【0061】
(原料ガス→反応ガス)×n
【0062】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層等の表面」を意味する場合がある。本明細書に おいて「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成する」ことを意味する場合がある。
【0063】
また、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0064】
(搬入ステップ:S1)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボート ロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0065】
(圧力・温度調整ステップ:S2)
処理室201の内部、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
【0066】
また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は継続して行われる。
【0067】
続いて、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも後述する成膜ステップが終了するまでの間は継続して行われる。
【0068】
(成膜ステップ:S3,S4,S5,S6)
その後、ステップS3,S4,S5,S6を順次実行することで成膜ステップを行う。
【0069】
(原料ガス供給ステップ:S3,S4)
ステップS3では、処理室201内のウエハ200に対して原料ガスを供給する。
バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介してガス供給孔250aから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して原料ガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ不活性ガスを流す。不活性ガスは、MFC241cにより流量調整され、原料ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0070】
また、ノズル249b内への原料ガスの侵入を防止するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管232d、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0071】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~550℃、好ましくは400~500℃
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは100~1000Pa
原料ガス供給流量:0.1~3slm
原料ガス供給時間:1~100秒、好ましくは1~50秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
が例示される。
【0072】
なお、本明細書における「25~550℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「25~550℃」とは「25℃以上550℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0slmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0073】
上述の条件下でウエハ200に対して原料ガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1層が形成される。例えば、原料ガスとして、後述するシリコン(Si)含有ガスを用いる場合、第1層としてSi含有層が形成される。
【0074】
第1層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244を開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはSi含有層の形成に寄与した後の原料ガスや反応副生成物等を処理室201内から排除する(S4)。また、バルブ243c,243dは開いたままとして、処理室201内への不活性ガスを供給する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0075】
原料ガスとしては、例えば、Siおよびハロゲンを含むガス、すなわち、ハロシランガスを用いることができる。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。ハロシランガスとしては、例えば、SiおよびClを含むクロロシランガスを用いることができる。
より具体的には、シラン原料ガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。また、シラン原料ガスとしては、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、テトラヨードシラン(SiI4)ガス等を用いることができる。すなわち、シラン原料ガスとしては、クロロシラン系ガス、フルオロシラン系ガス、ブロモシラン系ガス、ヨードシラン系ガス等の各種ハロシラン系ガスを用いることができる。
【0076】
また、シラン原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることができる。
【0077】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスを用いることができ、この他、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0078】
(反応ガス供給ステップ:S5,S6)
原料ガス供給ステップが終了した後、処理室201内のウエハ200に対してプラズマ励起させた反応ガスを供給する(S5)。
【0079】
このステップでは、バルブ243b~243dの開閉制御を、ステップS3におけるバルブ243a,243c,243dの開閉制御と同様の手順で行う。反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249b,249cを介してバッファ室237内へ供給される。このとき、高周波電源273から棒状電極269,270,271へ高周波電力を供給(印加)する。また、高周波電源373から棒状電極369,370,371へ高周波電力を供給(印加)する。各々のバッファ室237内へ供給された反応ガスは処理室201の内部でプラズマ状態に励起され、活性種としてウエハ200に対して供給され、排気管231から排気される。
【0080】
本ステップにおける処理条件としては、
処理温度:室温(25°)~550℃、好ましくは400~500℃
処理圧力:10~300Pa
反応ガス供給流量:0.1~10slm
反応ガス供給時間:10~100秒、好ましくは1~50秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
RF電力:50~1000W
RF周波数:13.56MHzまたは27MHz
が例示される。
【0081】
上述の条件下でウエハ200に対して反応ガスをプラズマ状態に励起させて供給することにより、プラズマ中で生成されたイオンと電気的に中性な活性種の作用により、ウエハ200の表面に形成された第1層に対して改質処理が行われ、第1層は第2層へ改質される。
【0082】
反応ガスとして、例えば、酸素(O)含有ガス等の酸化ガス(酸化剤)を用いる場合、O含有ガスをプラズマ状態に励起させることで、O含有活性種が発生し、このO含有活性種がウエハ200に対して供給されることとなる。この場合、O含有活性種の作用により、ウエハ200の表面に形成された第1層に対して改質処理として酸化処理が行わる。この場合において、第1層が、例えばSi含有層である場合、第1層としてのSi含有層は、第2層としてのシリコン酸化層(SiO層)へと改質される。
【0083】
また、反応ガスとして、例えば、窒素(N)及び水素(H)含有ガス等の窒化ガス(窒化剤)を用いる場合、N及びH含有ガスをプラズマ状態に励起させることで、N及びH含有活性種が発生し、このN及びH含有活性種がウエハ200に対して供給されることとなる。この場合、N及びH含有活性種の作用により、ウエハ200の表面に形成された第1層に対して改質処理として窒化処理が行わる。この場合において、第1層が、例えばSi含有層である場合、第1層としてのSi含有層は、第2層としてのシリコン窒化層(SiN層)へと改質される。
【0084】
第1層を第2層へと改質させた後、バルブ243bを閉じ、反応ガスの供給を停止する。また、棒状電極269,271,369,371への高周波電力の供給を停止する。そして、ステップS4と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留する反応ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する(S6)。なお、このステップS6を省略して反応ガス供給ステップとしてもよい。
【0085】
反応ガスとしては、上述のように例えば、O含有ガスや、N及びH含有ガスを用いることができる。O含有ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、オゾン(O3)ガス、過酸化水素(H2O2)ガス、水蒸気(H2O) 、水酸化アンモニウム(NH4(OH))ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。N及びH含有ガスとしては、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0086】
不活性ガスとしては、例えば、ステップS4で例示した各種不活性ガスを用いることができる。
【0087】
(所定回数実施:S7)
上述したステップS3,S4,S5,S6をこの順番に沿って非同時に、すなわち、同期させることなく行うことを1サイクルとし、このサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)、すなわち、1回以上行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚の膜を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成される第2層の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第2層を積層することで形成される膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。なお、第1層として、例えばSi含有層を形成し、第2層として、例えばSiO層を形成する場合、膜として、シリコン酸化膜(SiO膜)が形成されることとなる。また、第1層として、例えばSi含有層を形成し、第2層として、例えばSiN層を形成する場合、膜として、シリコン窒化膜(SiN膜)が形成されることとなる。
【0088】
(大気圧復帰ステップ:S8)
上述の成膜処理が完了したら、ガス供給管232c,232dのそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留する反応ガス等が処理室201内から除去される(不活性ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰:S8)。
【0089】
(搬出ステップ:S9)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出されることとなる(ウエハディスチャージ)。なお、ウエハディスチャージの後は、処理室201内へ空のボート217を搬入するようにしてもよい。
【0090】
ここで、基板処理時の炉内圧力は、10Pa以上、300Pa以下の範囲で制御されることが好ましい。これは、炉内の圧力が10Paより低い場合、プラズマのデバイ長よりもガス分子の平均自由工程が長くなってしまい、 炉壁を直接叩くプラズマが顕著化するため、パーティクルの発生を抑制することが困難となってしまうためである。また、炉内の圧力が300Paより高い場合、プラズマの生成効率が飽和してしまうため、反応ガスを供給してもプラズマの生成量は変化することがなく、反応ガスを無駄に消費することとなってしまうと同時に、ガス分子の平均自由行程が短くなることで、ウエハまでのプラズマ活性種の輸送効率が悪くなってしまうためである。
【0091】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0092】
(a)棒状電極269、369、371と棒状電極271との長さが異なることにより、バッファ室内237で生成されて処理室201内へ供給される活性種の供給量を複数の基板間で均等にすることが可能となる。
【0093】
(b)棒状電極269、271、369、371の長さを調整することで、バッファ室内237で生成されて処理室201内へ供給される活性種の供給量を複数の基板間で均等になるように調整することが可能となる。
【0094】
(c)棒状電極269、271、369、371の長さを調整することで、バッファ室内237で生成されて処理室201内へ供給される活性種の供給量を上下対称に調整することが可能となる。
【0095】
(d)第1プラズマ電極ユニット377と第2プラズマ電極ユニット277へ供給する電力を調整することで、処理室201内へ供給される活性種の供給量を上下対称に調整することが可能となる。
【0096】
(変形例1)
次に、本実施形態の変形例1を
図9に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0097】
上述した実施形態では、第1プラズマ電極ユニット377の棒状電極369,370,371と、第2プラズマ電極ユニット277の棒状電極269,270の長さを略同一にした。本変形例では、
図9に示されるように、棒状電極371の長さを異ならせる。より詳細には、棒状電極371の長さを、棒状電極369,370,269,270よりも短く、棒状電極271よりも長くした棒状電極371-1とする。本変形例の第1プラズマ電極ユニットは、符号377-1で示されている。
【0098】
このように、棒状電極371-1の長さを設定することにより、第1プラズマ電極ユニット377-1単独でも、処理室201の上下方向における電力分布を調整することができる。その結果、処理室201内へ供給される活性種の供給量の偏りを調整することができる。
【0099】
(変形例2)
次に、本実施形態の変形例2を
図10に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0100】
上述した実施形態では、第1プラズマ電極ユニット377に2本の印加電極(棒状電極369,371)を設けたが、本変形例では、
図10に示されるように、第2電極としての棒状電極371を設けていない。本変形例の第1プラズマ電極ユニットは、符号377-2で示されている。
【0101】
このように、第1プラズマ電極ユニット377-2の印加電極を1本とすることにより、第1プラズマ電極ユニット377-2を簡易な構成とすることができる。そして、処理室201内へ供給される活性種の供給量の偏りを調整することができる。
【0102】
(変形例3)
次に、本実施形態の変形例3を
図11に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0103】
上述した実施形態では、第1プラズマ電極ユニット377の棒状電極369,370,371と、第2プラズマ電極ユニット277の棒状電極269,270の長さを略同一にした。本変形例では、
図11に示されるように、棒状電極269,270の長さを、棒状電極369,370,371と異ならせる。より詳細には、棒状電極269,270の長さを略同一長さとし、これら棒状電極269,270の長さを、棒状電極369,370,371よりも短く、棒状電極271よりも長くする。本変形例では、実施形態の棒状電極269,270は、符号269-3,270-3で示されている。また、本変形例の第2プラズマ電極ユニットは、符号277-3で示されている。
【0104】
このように、棒状電極269-3,270-3の長さを設定することにより、処理室201の下側の電力分布を大きくすることができる。これにより、処理室201内へ供給される活性種の供給量の偏りを調整することができる。
【0105】
(変形例4)
次に、本実施形態の変形例4を
図12に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0106】
上述した実施形態では、第1プラズマ電極ユニット377の棒状電極369,370,371と、第2プラズマ電極ユニット277の棒状電極269,270の長さを略同一にした。本変形例では、
図12に示されるように、棒状電極269,270の長さを、棒状電極271と略同一とする。すなわち、棒状電極269,270,271の長さを略同一長さとし、これら棒状電極269,270,271の長さを、棒状電極369,370,371よりも短くする。本変形例では、実施形態の棒状電極269,270は、符号269-4,270-4で示されている。また、本変形例の第2プラズマ電極ユニットは、符号277-4で示されている。
【0107】
このように、棒状電極269-4,270-4の長さを設定することにより、処理室201内へ供給される活性種の供給量の偏りを調整することができる。
【0108】
(変形例5)
次に、本実施形態の変形例5を
図13に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0109】
上述した実施形態では、第2プラズマ電極ユニット277に2本の印加電極(棒状電極269,271)を設けたが、本変形例では、
図13に示されるように、棒状電極269を設けていない。また、棒状電極270の長さを棒状電極271と略同一とした。本変形例の棒状電極270は符号270-5で示され、第2プラズマ電極ユニットは、符号277-5で示されている。
【0110】
このように、第2プラズマ電極ユニット277-5の印加電極を1本とすることにより、第2プラズマ電極ユニット277-5の構成を簡易にすることができる。そして、処理室201内へ供給される活性種の供給量の偏りを調整することができる。
【0111】
(変形例6)
次に、本実施形態の変形例6を
図14に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0112】
上述した実施形態では、第1プラズマ電極ユニット377に2本の印加電極(棒状電極369,371)を設け、第2プラズマ電極ユニット277に2本の印加電極(棒状電極269,271)を設けた。本変形例では、
図14に示されるように、棒状電極269,369を設けていない。本変形例の第1プラズマ電極ユニットは符号377-6で示され、第2プラズマ電極ユニットは符号277-6で示されている。
【0113】
このように、第1プラズマ電極ユニット377-6、第2プラズマ電極ユニット277-6の印加電極を各々1本とすることにより、第1プラズマ電極ユニット377-6、第2プラズマ電極ユニット277-6を簡易な構成にすることができる。そして、処理室201内へ供給される活性種の供給量の偏りを調整することができる。
【0114】
(変形例7)
次に、本実施形態の変形例7を
図15に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0115】
上述した実施形態では、バッファ構造300,400の各々に、別々に区画されたバッファ室237が形成されていた。本変形例では、
図15に示されるように、排気管231を挟んで互いに向かい合う、バッファ構造300,400の径方向の壁が除去され、当該除去された部分の周方向の壁同士が延出して一体化され、バッファ室237が1つに構成されている。
【0116】
このように、第1プラズマ電極ユニット377と第2プラズマ電極ユニット277を同一のバッファ構造内に格納することもできる。
【0117】
(変形例8)
次に、本実施形態の変形例8を
図16に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0118】
上述した実施形態では、反応管203内に構成された、バッファ構造300,400の各々の内側のバッファ室237に、第1プラズマ電極ユニット377、第2プラズマ電極ユニット277が設けられていた。本変形例では、
図16に示されるように、反応管203の外側に第1プラズマ電極ユニット377、第2プラズマ電極ユニット277が設けられている。
【0119】
反応管203のバッファ構造300を構成する部分の壁面には、反応管203の外面が凹状となり上下方向に延びる凹部81、82、83が等間隔で3本設けられている。反応管203のバッファ構造400を構成する部分の壁面にも、同様に、凹部84、85、86が等間隔で3本設けられている。
【0120】
棒状電極269とこれを囲む電極保護管275は凹部81に沿って配置され、棒状電極270とこれを囲む電極保護管275は凹部82に沿って配置され、棒状電極271とこれを囲む電極保護管275は凹部83に沿って配置されている。また、棒状電極369とこれを囲む電極保護管375は凹部84に沿って配置され、棒状電極370とこれを囲む電極保護管375は凹部85に沿って配置され、棒状電極371とこれを囲む電極保護管375は凹部86に沿って配置されている。
【0121】
反応ガスを供給するノズル249b、ノズル249cは、それぞれ2分岐されて、バッファ室237の外であって、、反応管203の径方向に形成されたバッファ構造300,400を構成する壁面に沿ってそれぞれ配置されている。ノズル249b、ノズル249cのガス供給孔250b、250cは、それぞれバッファ構造300,400の隣接する壁面に形成された孔Hに向くように開口している。
【0122】
(変形例9)
次に、本実施形態の変形例9を
図17に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0123】
上述した実施形態では、反応管203内に構成された、バッファ構造300,400の各々の内側のバッファ室237に、第1プラズマ電極ユニット377、第2プラズマ電極ユニット277が設けられていた。本変形例では、
図17に示されるように、バッファ構造300,400を構成する壁を備えておらず、第1プラズマ電極ユニット377、第2プラズマ電極ユニット277が、処理室201内に区画されることなく設けられている。
【0124】
(変形例10)
次に、本実施形態の変形例10を
図18に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0125】
上述した変形例8では、反応管203の外側のバッファ構造300,400に対応する位置に第1プラズマ電極ユニット377、第2プラズマ電極ユニット277を設けたが、本変形例では、
図18に示されるように、バッファ構造300,400を設けない。すなわち、変形例8からバッファ構造300,400を除去した構成である。
【0126】
(変形例11)
次に、本実施形態の変形例11を
図19に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0127】
上述した実施形態では、バッファ構造300とバッファ構造400は、排気管231を挟んで、排気管231と反応管203の中心を通る直線に対して線対称に設けられている。本変形例では、バッファ構造300とバッファ構造400は、排気管231を挟んで、排気管231と反応管203の中心を通る直線に対して非対称に配置されている。より詳細には、排気管231に対向する位置にバッファ構造400が配置され、バッファ構造400を周方向に挟む両外側に、2分岐されたガス供給管232aが配置されている。また、バッファ構造300は、周方向においてガス供給管232aと排気管231との間に配置されている。そして、当該バッファ構造300に第2プラズマ電極ユニット277が配置され、バッファ構造400に第1プラズマ電極ユニット377が配置されている。
【0128】
本変形例では、活性種の生成量が大きい第1プラズマ電極ユニット377を排気管231に対向する位置に配置し、活性種の生成量が小さい第2プラズマ電極ユニット277を排気管231の側方に設けて、処理室201内へ供給される活性種の供給量の偏りを調整することができる。
【0129】
第1プラズマ電極ユニット377、第2プラズマ電極ユニット277の処理室201内の周方向位置は、各プラズマ電極ユニットにより生成される活性種の量や、電極の延伸方向における活性種の量の分布などを考慮して、活性種を用いた処理の基板面内における処理量の分布(例えば膜厚分布など)及び/または基板間における処理量の分布が所望の分布(例えば均等な分布)となるように、任意に設定することができる。
(変形例12)
次に、本実施形態の変形例12を
図20に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
【0130】
上述した実施形態では、反応管203内に構成された、バッファ構造300,400の各々の内側のバッファ室237に、第1プラズマ電極ユニット377、第2プラズマ電極ユニット277が設けられていた。本変形例では、
図20に示されるように、反応管203の外側に第1プラズマ電極ユニット377、第2プラズマ電極ユニット277が設けられている。
【0131】
反応管203の排気管231を挟んだ対向する両側壁には、反応管203の径方向外側に凸状となり上下方向に延びる凸部87、88が形成されている。凸部87、88の各々の内側には、空間87A、88Aが構成されており、空間87Aにノズル249bが配置され、空間88Aにノズル249cが配置されている。ノズル249b、ノズル249cのガス供給孔250b、250cは、それぞれ反応管203の径方向内側に向くように開口している。
【0132】
本変形例では、変形例6と同様に、棒状電極269,369を設けていない。本変形例の第1プラズマ電極ユニット377は、棒状電極370,371、電極保護管275を含んで構成され、第2プラズマ電極ユニット277は、棒状電極270,271、電極保護管275を含んで構成されている。棒状電極370,371は、凸部88を周方向に挟むように配置され、棒状電極270,271は、凸部87を周方向に挟むように配置されている。本変形例では、棒状電極270,271,370,371の断面形状は長方形となっている。
【0133】
棒状電極270,271,370,371は、断面形状の長方形の長辺が凸部87,88に沿い、短辺が反応管203の外周面に沿うように配置されている。電極保護管275は、棒状電極270,271,370,371の反応管203の壁で囲まれていない部分を覆うように構成されている。
【0134】
以上、本開示の実施形態について具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0135】
また、例えば、上述の実施形態では、原料を供給した後に反応体を供給する例について説明した。本開示はこのような態様に限定されず、原料、反応体の供給順序は逆でもよい。すなわち、反応体を供給した後に原料を供給するようにしてもよい。供給順序を変えることにより、形成される膜の膜質や組成比を変化させることが可能となる。
【0136】
本開示は、ウエハ200上に、SiO膜やSiN膜を形成する場合だけでなく、ウエハ200上に、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等のSi系酸化膜を形成する場合にも、好適に適用可能である。
【0137】
例えば、上述したガスの他、もしくは、これらのガスに加え、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒素(N)含有ガス、プロピレン(C3H6)ガス等の炭素 (C)含有ガス、三塩化硼素(BCl3)ガス等の硼素(B)含有ガス等を用い、例えば、SiN膜、SiON膜、SiOCN膜、SiOC膜、SiCN膜、SiBN膜、SiBCN膜、BCN膜等を形成することができる。なお 、各ガスを流す順番は適宜変更することができる。これらの成膜を行う場合においても、上述の実施形態と同様な処理条件にて成膜を行うことができ、上述の実施形態と同様の効果が得られる。これらの場合、反応ガスとしての酸化剤には、上述した反応ガスを用いることができる。
【0138】
また、本開示は、ウエハ200上に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含む金属系酸化膜や金属系窒化膜を形成する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、本開示は、ウエハ200上に、TiO膜、TiOC膜、TiOCN膜、TiON膜、TiN膜、TiSiN膜、TiBN膜、TiBCN膜、ZrO膜、ZrOC膜、ZrOCN膜、ZrON膜、ZrN膜、ZrSiN膜、ZrBN膜、ZrBCN膜、HfO膜、HfOC膜、HfOCN膜、HfON膜、HfN膜、HfSiN膜、HfBN膜、HfBCN膜、TaO膜、TaOC膜、TaOCN膜、TaON膜、TaN膜、TaSiN膜、TaBN膜、TaBCN膜、NbO膜、NbOC膜、NbOCN膜、NbON膜、NbN膜、NbSiN膜、NbBN膜、NbBCN膜、AlO膜、AlOC膜、AlOCN膜、AlON膜、AlN膜、AlSiN膜、AlBN膜、AlBCN膜、MoO膜、MoOC膜、MoOCN膜、MoON膜、MoN膜、MoSiN膜、MoBN膜、MoBCN膜、WO膜、WOC膜、WOCN膜、WON膜、WN膜、WSiN膜、WBN膜、WBCN膜等を形成する場合にも、好適に適用することが可能となる。
【0139】
これらの場合、例えば、原料ガスとして、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(Ti[N(CH3)2]4、略称:TDMAT)ガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(Hf[N(C2H5)(CH3)]4、略称:TEMAH)ガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(Zr[N(C2H5)(CH3)]4、略称:TEMAZ)ガス、トリメチルアルミニウム(Al(CH3)3、略称:TMA)ガス、チタニウムテトラクロライド(TiCl4)ガス、ハフニウムテトラクロライド(HfCl4)ガス等を用いることができる。
【0140】
すなわち、本開示は、半金属元素を含む半金属系膜や金属元素を含む金属系膜を形成する場合に、好適に適用することができる。これらの成膜処理の処理手順、処理条件は、上述の実施形態や変形例に示す成膜処理と同様な処理手順、処理条件とすることができる。これらの場合においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0141】
成膜処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各種処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各種処理を迅速に開始できるようになる。
【0142】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0143】
以下、本開示の望ましい形態について付記する。
【0144】
(付記1)
本開示の一態様では、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にガスを供給するガス供給部と、
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくとも一方と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
を備えた基板処理装置、が提供される。
【0145】
(付記2)
付記1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第2プラズマ電極ユニットは、高周波電力が印加され前記第3印加電極と長さが異なる第4印加電極をさらに含む。
【0146】
(付記3)
付記2の基板処理装置において、好ましくは、
前記第4印加電極は前記第2基準電極と長さが等しい。
【0147】
(付記4)
付記1~付記3のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第3印加電極は、前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれよりも短い。
【0148】
(付記5)
付記2~付記4のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第3印加電極は前記第4印加電極よりも短い。
【0149】
(付記6)
付記1~付記5のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第3印加電極は前記第2基準電極よりも短い。
【0150】
(付記7)
付記2~付記6のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第4印加電極は前記第1印加電極及び前記第2印加電極の少なくともいずれかと長さが等しい。
【0151】
(付記8)
付記1~付記7のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1印加電極は前記第1基準電極と長さが等しい。
【0152】
(付記9)
付記1~付記8のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1プラズマ電極ユニットは、前記第1印加電極及び前記第2印加電極を含む。
【0153】
(付記10)
付記9の基板処理装置において、好ましくは、
前記第2印加電極は前記第1印加電極と長さが等しい。
【0154】
(付記11)
付記1~付記9のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第2印加電極は前記第1印加電極よりも短い。
【0155】
(付記12)
付記1~付記8のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1プラズマ電極ユニットは、前記第2印加電極を含まない。
【0156】
(付記13)
付記2~付記6のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第4印加電極は前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる。
【0157】
(付記14)
付記13の基板処理装置において、好ましくは、
前記第4印加電極は、前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれよりも短い。
【0158】
(付記15)
付記1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第2プラズマ電極ユニットは、高周波電力が印加され前記第3印加電極と長さが等しい第4印加電極をさらに含む。
【0159】
(付記16)
付記1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第2プラズマ電極ユニットは、前記第3印加電極以外の他の印加電極を含まない。
【0160】
(付記17)
付記16の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1プラズマ電極ユニットは、前記第2印加電極を含まない。
【0161】
(付記18)
付記16または付記17の基板処理装置において、好ましくは、
前記第3印加電極は、前記第2基準電極よりも短い。
【0162】
(付記19)
付記1~付記18のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1印加電極及び前記第2印加電極の少なくともいずれかに高周波電力を供給する第1高周波電源と、
前記第3印加電極に高周波電力を供給する、前記第1高周波電源とは異なる第2高周波電源と、を有する。
【0163】
(付記20)
付記1~付記19のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1プラズマ電極ユニットは、前記処理室に連通する第1バッファ室内に設けられ、
前記第2プラズマ電極ユニットは、前記処理室に連通し、前記第1バッファ室とは異なる第2バッファ室内に設けられている。
【0164】
(付記21)
付記1~付記19のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1プラズマ電極ユニットおよび前記第2プラズマ電極ユニットは、前記処理室に連通する一つのバッファ室内に設けられている。
【0165】
(付記22)
付記1~付記21のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記処理室内には、複数の前記基板を間隔を開けて多段に配列させるように支持する基板支持具が設けられ、
前記第1プラズマ電極ユニットおよび前記第2プラズマ電極ユニットは、複数の前記基板が配列される方向に沿って設けられている。
【0166】
(付記23)
付記1~付記18のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1プラズマ電極ユニットに高周波電力を供給する第1高周波電源と、
前記第2プラズマ電極ユニットに高周波電力を供給する、前記第1高周波電源とは異なる第2高周波電源と、を有する。
【0167】
(付記24)
付記23の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットの延伸方向における、前記第1プラズマ電極ユニットに印加される電力の分布と前記第2プラズマ電極ユニットに印加される電力の分布とを合わせた分布が均等となるように、前記第1高周波電源及び前記第2高周波電源を制御することが可能なように構成された制御部を備える。
【0168】
(付記25)
付記23または付記24の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットによって前記ガスをプラズマ励起することにより生成される活性種の量の分布が、前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットの延伸方向において均等となるように、前記第1高周波電源及び前記第2高周波電源を制御することが可能なように構成された制御部を備える。
【0169】
(付記26)
付記1~付記25のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1プラズマ電極ユニットおよび前記第2プラズマ電極ユニットは、前記処理室を内側に含む反応管の内側に設けられている。
【0170】
(付記27)
付記1~付記25のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1プラズマ電極ユニットおよび前記第2プラズマ電極ユニットは、前記処理室を内側に含む反応管の外側に設けられている。
【0171】
(付記28)
付記27の基板処理装置において、好ましくは、
前記ガスは前記処理室に連通するバッファ室内に供給され、
前記第1プラズマ電極ユニットおよび前記第2プラズマ電極ユニットは、前記バッファ室内の前記ガスをプラズマ励起するように構成されている。
【0172】
(付記29)
付記27または付記28の基板処理装置において、好ましくは、
前記第1プラズマ電極ユニットおよび前記第2プラズマ電極ユニットは、前記処理室内に供給された前記ガスをプラズマ励起するように構成されている。
【0173】
(付記30)
付記1~付記29のいずれか1の基板処理装置において、好ましくは、
前記処理室を内側に含む反応管は、前記処理室内を排気する排気口を有し、
前記第1プラズマ電極ユニットは、前記反応管の周方向において前記排気口に対向する位置に設けられ、
前記第2プラズマ電極ユニットは、前記反応管の周方向において、前記第1プラズマ電極ユニットと前記排気口の間の位置に設けられている。
【0174】
(付記31)
本開示の他の態様では、
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくともいずれか、とを含み、ガスをプラズマ励起する第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され、前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、を含み、前記ガスをプラズマ励起する第2プラズマ電極ユニットと、
を備えたプラズマ生成装置、が提供される。
【0175】
(付記32)
本開示の他の態様では、
基板を処理する処理室と、
基準電位が与えられる第1基準電極と、高周波電力が印加される第1印加電極及び第2印加電極の少なくとも一方と、を含む第1プラズマ電極ユニットと、
基準電位が与えられる第2基準電極と、高周波電力が印加され前記第1印加電極及び前記第2印加電極のいずれとも長さが異なる第3印加電極と、を含む第2プラズマ電極ユニットと、
を備えた基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する基板搬入工程と、
前記ガスを前記第1プラズマ電極ユニット及び前記第2プラズマ電極ユニットによりプラズマ励起して活性種を生成し、前記活性種を前記基板に供給して前記基板を処理する基板処理工程と、
を有する半導体装置の製造方法、が提供される。
【0176】
(付記33)
本開示の他の態様では、
付記32における各手順(各工程)をコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム、または、当該プログラムを記録したコンピュータにより読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0177】
200 ウエハ(基板)
201 処理室
202 処理炉(基板処理装置)
232b ガス供給管(ガス供給部)
249b、249c ノズル(ガス供給部)
270 棒状電極(第2基準電極)
269 棒状電極(第4印加電極)
271 棒状電極(第3印加電極)
277 第2プラズマ電極ユニット
370 棒状電極(第1基準電極)
369 棒状電極(第1印加電極)
371 棒状電極(第2印加電極)
377 第1プラズマ電極ユニット
S1 搬入ステップ(基板搬入工程、基板搬入手順)
S5,S6 反応ガス供給ステップ(基板処理工程、基板処理手順)