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  • 特許-選択的原子層堆積方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】選択的原子層堆積方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230606BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20230606BHJP
   C23C 16/06 20060101ALI20230606BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/40
C23C16/06
H01L21/316 X
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022015415
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2020555229の分割
【原出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2022091739
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】62/657,687
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/801,043
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブイヤン, バスカー ジョティ
(72)【発明者】
【氏名】サリー, マーク
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】コーフマン-オズボーン, トービン
(72)【発明者】
【氏名】フレドリクソン, カート
(72)【発明者】
【氏名】ニズリー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウ, リキ
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-11057(JP,A)
【文献】特開2018-46279(JP,A)
【文献】特開2004-260168(JP,A)
【文献】特開2014-55175(JP,A)
【文献】特開2014-60377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0217330(US,A1)
【文献】特表2011-503876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/40
C23C 16/06
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的堆積方法であって、
基板に第1の表面と第2の表面とを提供すること、
該基板をブロッキング化合物に曝露して、第2の表面と比して第1の表面の少なくとも一部にブロッキング層を選択的に形成すること、並びに
基板を金属前駆体、及び約15.7以上のpKaを有する酸素化剤に順次曝露して、ブロッキング層又は第1の表面と比して第2の表面に金属酸化物層を選択的に形成すること
を含む、方法。
【請求項2】
第1の表面が導電性材料を含み、第2の表面が誘電体材料又はケイ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の表面が本質的にケイ素からなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ブロッキング化合物がn-オクタデシルトリス(ジメチルアミノ)シランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
金属前駆体が、Al、Hf、Zr、Y、Ti、Ta、Si、Cu、Co、W、又はRuから選択される金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
金属前駆体がハフニウムを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
酸素化剤がアルコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
酸素化剤が、一般式R-OHの核種を含み、ここで、Rは、1から8個の炭素を含むアルキル又はシクロアルキル基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
酸素化剤が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、又はt-ブタノールのうちの1つ以上を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
酸素化剤が本質的にt-ブタノールからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
酸素化剤が実質的に水、酸素(O)、又はオゾンを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
選択的堆積方法であって、
基板に第1の表面と第2の表面とを提供すること、
該基板をブロッキング化合物に曝露して、第2の表面と比して第1の表面の少なくとも一部にブロッキング層を選択的に形成すること、
基板を金属前駆体、及び約15.7以上のpKaを有する酸素化剤に順次曝露して、ブロッキング層又は第1の表面と比して第2の表面に酸化ハフニウムを含む金属酸化物層を選択的に形成すること、並びに
ブロッキング層上に実質的に堆積することなく、約60Å以上の所定の厚さの金属酸化物層が形成されるまで、基板の前記順次曝露を繰り返すこと
を含む、方法。
【請求項13】
金属酸化物の選択的堆積を改善する方法であって、当該方法が、
両方とも第1の曝露材料と第2の曝露材料を有する第1のパターン化された基板と第2のパターン化された基板を提供することであって、第1のパターン化された基板は誘電体材料を含み、第2のパターン化された基板は導電性材料又はケイ素を含む、基板を提供すること、
該基板をブロッキング化合物に曝露して、第2の曝露材料の表面と比して第1の曝露材料の表面の少なくとも一部にブロッキング層を選択的に形成すること、
基板を金属前駆体及び酸素化剤に順次曝露して、ブロッキング層と比して第2の曝露材料の表面に金属酸化物層を選択的に形成すること、並びに
堆積がブロッキング層上に観察されるまで、前記順次曝露を複数サイクル繰り返すこと
を含み、第1のパターン化された基板が第1のサイクル回数、第1の酸素化剤に曝露され、第2のパターン化された基板が第2のサイクル回数、第2の酸素化剤に曝露され、第1のサイクル回数が第2のサイクル回数より少なく、第1の酸素化剤が水、酸素、又はオゾンを含み、且つ第2の酸素化剤が水のpKaより大きいpKaを有する、方法。
【請求項14】
ブロッキング化合物がn-オクタデシルトリス(ジメチルアミノ)シランを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
金属前駆体が、Al、Hf、Zr、Y、Ti、Ta、Si、Cu、Co、W、又はRuから選択される金属を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
第2の酸素化剤がアルコールを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
第2の酸素化剤が、一般式R-OHの核種を含み、ここで、Rは、1から8個の炭素を含むアルキル又はシクロアルキル基である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第2の酸素化剤が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、又はt-ブタノールのうちの1つ以上を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第2の酸素化剤が本質的にt-ブタノールからなる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
金属酸化物が酸化ハフニウムを含み、約60Å以上の厚さが第2のパターン化された基板上に堆積される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、膜の選択的堆積を増進する方法に関する。より具体的には、本開示の幾つかの実施形態は、より大きい直径の前駆体を使用して、膜の選択的原子層堆積を増進する方法に関する。より具体的には、本開示の幾つかの実施形態は、酸化試薬としてアルコールを使用して、金属酸化膜の選択的原子層堆積を増進する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体業界は、ナノスケールの特徴の迅速なスケーリングを含めたデバイスの小型化を追求する上で多くの課題に直面している。このような課題には、多くの場合、複数のリソグラフィステップとエッチングプロセスを使用する複雑なデバイスの製造が含まれる。さらには、半導体業界は、複雑なアーキテクチャをパターン化するために、高コストのEUVに代わる、低コストの代替品を必要としている。デバイスの小型化の歩調を緩めることなく、チップの製造コストを抑えるために、選択的堆積が有望であることが示されている。これは、統合スキームを簡素化することにより、コストのかかるリソグラフィのステップを取り除く可能性を有している。
【0003】
材料の選択的堆積は、さまざまな方法で行うことができる。例えば、一部のプロセスでは、表面化学に基づき、表面に固有の選択性を有することができる。これらのプロセスは希少であり、通常、用いられる反応物質、形成される材料、及び基板表面に特有である。
【0004】
したがって、これまでの選択的堆積に関するほとんどすべての先例は、高レベルの選択性を可能にするためのより優れたSAM(自己組織化単層)の開発に焦点を合わせてきた。選択的堆積のための多くのプロセスには、ある程度の選択性を達成するために、SAM形成プロセスの最適化における厳格な活動が包含される。プロセスの選択性は、SAMの結晶化度に完全に依存すると考えられている。結晶性SAMを達成するプロセスは長く、場合によっては、達成するのに何時間もかかることがあり、それによってプロセスの実効スループットが制限される。
【0005】
高品質の選択的堆積を達成する上での中心となる課題は、望ましくないデバイス欠陥を引き起こす堆積を生じやすいSAM層の欠陥(例えば、ピンホールなど)を最小限に抑えることである。これらのピンホールは、選択性の失敗の主な原因となる。より高品質のSAM層はピンホールを最小限に抑え、それによって欠陥を低減することができるが、このプロセスには数時間かかることがあり、SAMをベースとしたプロセスの実現可能性が制限される可能性がある。
【0006】
したがって、当技術分野では、欠陥のないSAMを必要としない選択的堆積方法が必要とされている。
【0007】
酸化ハフニウム(HfOx)は、ナノ製造の高誘電率材料として一般的に使用されている。誘電体材料(例えば、酸化ケイ素)ではなく金属材料にHfOxを選択的に堆積することにより、より小さい技術ノードでの処理工程の数が少なくなる。
【0008】
HfOxを選択的に堆積する現在の方法では、金属前駆体としてTEMA-Hf(テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム)を使用し、酸化剤として水を使用する。SAMを使用すると、これらの方法は、SAMが劣化して選択性が失われる前に、最大で約50~60Åの選択性を実現することができる。
【0009】
したがって、当技術分野では、欠陥のないSAMを必要としない、膜を選択的に堆積する方法が必要とされている。加えて、当技術分野では、SAMをベースとした金属酸化物堆積プロセスの選択性を高める方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示の1つ以上の実施形態は、選択的堆積方法を対象とする。該方法は、基板に第1の表面と第2の表面とを提供することを含む。基板は、ブロッキング化合物に曝露されて、第2の表面と比して第1の表面の少なくとも一部にブロッキング層を選択的に形成する。基板は、金属前駆体及び反応物質に順次曝露されて、ブロッキング層又は第1の表面と比して第2の表面に金属含有層を選択的に形成する。金属前駆体は、約21オングストローム以上の動的直径を有する。
【0011】
本開示のさらなる実施形態は、選択的堆積方法を対象とする。該方法は、第1の材料表面と第2の材料表面とを有する基板を提供することを含む。第1の材料はSiOを含む。第2の材料は銅を含む。基板は、n-オクタデシルトリス(ジメチルアミノ)シランに曝露されて、第2の材料表面と比して第1の材料表面の少なくとも一部にブロッキング層を選択的に形成する。基板は、トリ-tertブチルアルミニウムと水に順次曝露されて、ブロッキング層又は第1の材料表面と比して第2の材料表面に酸化アルミニウム層を選択的に形成する。
【0012】
本開示のさらなる実施形態は、選択的堆積方法を対象とする。該方法は、第1の材料表面と第2の材料表面とを有する基板を提供することを含む。第1の材料はSiOを含む。第2の材料は銅を含む。基板は、n-オクタデシルトリス(ジメチルアミノ)シランに曝露されて、第2の材料表面と比して第1の材料表面の少なくとも一部にブロッキング層を選択的に形成する。基板は、テトラキス(ジメチルアミド)チタンとアンモニアに順次曝露されて、ブロッキング層又は第1の材料表面と比して第2の材料表面に窒化チタン層を選択的に形成する。
【0013】
本発明の上記の特徴を詳細に理解できるように、先に簡単に要約した本発明のより具体的な説明は、その幾つかが添付の図面に示されている実施形態を参照することにより得ることができる。しかしながら、添付の図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するものとみなされるべきではないことに留意されたい。なぜなら、本発明は、他の同等に有効な実施形態を認めうるからである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の1つ以上の実施形態による処理方法を示す図
図2】本開示の1つ以上の実施形態による処理方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「基板」及び「ウエハ」という用語はいずれも、処理が行われる表面又は表面の一部分を指すために、交換可能に用いられる。基板に対しての言及は、文脈上他のことが明示されない限り、基板の一部分のみを指すこともありうることもまた、当業者に理解されよう。さらには、基板上への堆積についての言及は、むき出しの基板と、1つ以上の膜又は特徴がその上に堆積又は形成された基板の両方を意味しうる。
【0016】
本明細書で用いられる「基板」とは、その上で製造処理中に膜処理が行われる、任意の基板表面又は基板上に形成された材料表面のことを指す。例えば、その上で処理が行われうる基板表面は、用途に応じて、ケイ素、酸化ケイ素、ストレインドシリコン、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、炭素ドープされた酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープされたケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアなどの材料、並びに、例えば金属、金属窒化物、金属合金、及び他の導電体などの任意の他の材料を含む。基板には、半導体ウエハが含まれるが、これに限定されない。基板は、基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化(又は他の方法で化学官能性を付与するために目的化学部分を生成又はグラフト)、アニール、及び/又はベイクするために、前処理プロセスに曝露されうる。基板自体の表面に直接膜処理することに加えて、本開示では、開示される任意の膜処理工程は、以下により詳細に開示されるように、基板上に形成された下層にも行うことができ、「基板表面」という用語は、文脈が示すように、こうした下層を含むことが意図されている。したがって、例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基板表面上に堆積されている場合には、新たに堆積される膜/層の露出面が基板表面となる。所与の基板表面が何を含むかは、どのような膜が堆積されるか、並びに使用される特定の化学物質に応じて決まる。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「パターン化された基板」とは、複数の異なる材料表面を有する基板を指す。幾つかの実施形態では、パターン化された基板は、第1の表面と第2の表面とを含む。幾つかの実施形態では、第1の表面は誘電体材料を含み、第2の表面は導電性材料を含む。幾つかの実施形態では、第1の表面は導電性材料を含み、第2の表面は誘電体材料を含む。1つ以上の実施形態では、第1の表面は、金属、金属酸化物、又はH終端SiGe1-xを含むことができ、第2の表面は、Si含有誘電体を含むことができ、又はその逆もありうる。幾つかの実施形態では、基板表面は、ある特定の官能性(例えば、-OH、-NH等)を含みうる。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「反応性ガス」、「前駆体」、「反応物」等の用語は、基板表面と反応する核種を含むガスを意味するように、交換可能に用いられる。例えば、第1の「反応性ガス」は、単に基板の表面に吸着され、第2の反応性ガスとのさらなる化学反応に利用することができる。
【0019】
ここ数十年間、半導体コミュニティは、リソグラフィの工程を、低コスト、処理時間の短縮、及びフィーチャーサイズの縮小につながる代替物に置き換えることによって、集積回路(IC)処理の改善を試みてきた。これらの代替物の多くは、「選択的堆積」の包括的なカテゴリーに分類される。一般的に、選択的堆積とは、他の基板材料と比較して目的の基板材料における正味の堆積速度が高く、他の基板材料上への堆積が少ないか無視できる程度で、目的の基板材料上に所望の膜厚が達成されるプロセスを指す(「無視できる」はプロセスの制約によって定められる)。
【0020】
本開示の実施形態は、第2の表面と比して、ある表面に膜を選択的に堆積させる方法を提供する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「別の表面と比して、ある表面に膜を選択的に堆積させる」などの用語は、第1の量の膜が第1の表面に堆積し、第2の量の膜が第2の表面に堆積することを意味し、ここで、第2の量の膜は第1の量の膜より少ないか、あるいは第2の表面には膜が堆積されない。これに関して用いられる「~と比して」という用語は、別の表面の上にある一の表面の物理的配向を意味するのではなく、別の表面と比較した、一の表面との化学反応の熱力学的特性の関係を意味する。例えば、誘電体表面と比して銅表面にコバルト膜を選択的に堆積させるとは、コバルト膜が銅表面上に堆積し、誘電体表面上にはコバルト膜はほとんど又は全く堆積しないこと;あるいは、銅表面上のコバルト膜の形成が、誘電体表面上のコバルト膜の形成と比較して熱力学的又は動力学的に好ましいことを意味する。
【0021】
選択的堆積を達成するための1つの戦略は、目的基板材料への影響が無視できる程度で、堆積が回避されるべき基板材料上にブロッキング層が形成される、ブロッキング層の使用を採用する。他の基板材料への堆積がブロッキング層によって「ブロック」されている間に、目的基板材料上に膜を堆積することができる。ブロッキング層は、堆積された膜に正味の悪影響を与えることなく、任意選択的に除去することができる。
【0022】
本開示の幾つかの実施形態は、典型的には、自己組織化単層(SAM)又はSAM層と呼ばれるブロッキング層を組み込む。自己組織化単層(SAM)は、表面に吸着した自発的に組織化された有機分子(SAM分子)の規則正しい配列からなる。これらの分子は、典型的には、基板に対して親和性のある1つ以上の部分(ヘッド基)と、比較的長く不活性な直鎖炭化水素部分(テール基)で構成される。基本的に、SAM分子は、疎水性の炭素鎖テールを備えた親水性の官能ヘッドを有する界面活性剤である。
【0023】
この事例では、SAMの形成は、表面における分子ヘッド基の速い吸着と、ファンデルワールス相互作用を介した分子テール基の互いに対する遅い会合によって起こる。SAM前駆体は、ヘッド基が、堆積中にブロックされる基板材料と選択的に反応するように選択される。次に、堆積が行われ、SAMは、熱分解(副生成物の脱着を伴う)又は集積対応(integration-compatible)の灰化処理によって除去することができる。
【0024】
基本的に、表面でのSAMの成長は化学吸着プロセスである。化学吸着速度論で決定すると、SAM層の被覆率はElovichの式に従う:
式中、qは化学吸着の量、tは時間、αは化学吸着の初期速度(mmol/g・分)、βは脱離定数(g/mmol)である。したがって、時間の関数としてのブロッキング層の被覆率は、漸近的な傾向に従う。結果として、ALD堆積の選択性は、通常、同様の傾向に従う(すなわち、被覆率が増加すると、選択性も増加する)。
【0025】
原則として、SAMをベースとした堆積プロセスの選択性は、SAMブロッキング層の被覆率に依存する。だが、所与のプロセスの選択性に影響を与える可能性のある幾つかの要因が存在する。典型的なALDプロセスは、反応チャンバ内へと容易に揮発する可能性が高い小さい金属前駆体を利用する。理論に縛られはしないが、被覆がほぼ完全でない限り、これらの小さい金属前駆体は、ブロッキング層の間隙又は欠陥を通じて基板表面に吸着可能であり、保護表面に堆積し、それによって選択性を低下させ、デバイスの故障の可能性を高める。選択性を最大化するために、典型的な選択的堆積技術は、長時間の曝露時間を必要とする(時間及び日数単位で測定される)。これらの長い処理時間は、デバイスのスループットを低下させる。
【0026】
加えて、SAMの被覆率は、堆積反応物質への曝露によって、若しくは堆積中のある特定のプロセス条件によっても影響を受ける可能性がある。例えば、SAM層は、過酷な酸化剤に曝露されることによって劣化する可能性がある。理論に縛られはしないが、これらの酸化剤は、疎水性の炭素テール基と反応して、反応性の-OH末端を形成する可能性がある。これらの終端の密度がSAM上で増加するにつれて、以前はSAM表面で熱力学的に不利であったある特定の反応がより有利になる可能性がある。この動力学の変化により、SAMでの核形成又は堆積が生じ、結果的に選択性が失われる可能性がある。特に、この選択性の喪失は、被覆率を変化させることなしに生じる可能性がある。
【0027】
本開示の幾つかの実施形態は、より低いレベルの被覆率で同様の選択性を有利に提供し、かつ、ブロッキング層の間隙又は欠陥を介した基板表面への吸着能力が低下するより大きい金属前駆体の使用によって必要とされるSAM曝露時間が短縮された、選択的堆積方法を提供する。
【0028】
図1を参照すると、本開示の1つ以上の実施形態は、処理方法100を対象とする。基板105は、第1の材料110及び第2の材料120を備えている。第1の材料110は第1の表面112を有し、第2の材料120は第2の表面122を有する。第1の表面及び第2の表面は、第1の材料表面及び第2の材料表面と呼ばれることもある。
【0029】
幾つかの実施形態では、第1の材料110は金属酸化物又は誘電体材料を含み、第2の材料は金属又はケイ素を含む。幾つかの実施形態では、第1の材料は、二酸化ケイ素(SiO)を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0030】
幾つかの実施形態では、第2の材料は、金属酸化物又は誘電体材料を含み、第1の材料は、金属又はケイ素を含む。幾つかの実施形態では、第2の材料は、二酸化ケイ素(SiO)を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0031】
幾つかの実施形態では、第1の材料110は誘電体材料を含み、第2の材料120は導電性材料を含む。幾つかの実施形態では、第1の材料110は導電性材料を含み、第2の材料120は誘電体材料を含む。幾つかの実施形態では、誘電体材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、又は炭化ケイ素のうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、導電性材料は、ルテニウム、銅、又はコバルトのうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、第1の表面は、本質的に窒化ケイ素からなる誘電体材料を含み、第2の表面は、本質的にルテニウムからなる導電性材料を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「本質的になる」という用語は、指定された材料の約95%、98%、99%、又は99.5%以上が、その明言した材料であることを意味する。
【0032】
第1の表面112は、ブロッキング化合物に曝露されて、第2の表面122と比して第1の表面112の少なくとも一部にブロッキング層130を選択的に形成する。幾つかの実施形態では、ブロッキング層130は、第1の表面112の一部分114を露出する欠陥131を含む。
【0033】
基板は、任意の適切なプロセスによってブロッキング化合物に曝露されうる。幾つかの実施形態では、基板は、化学気相堆積(CVD)プロセスによってブロッキング化合物に曝露される。幾つかの実施形態では、基板は、ALDプロセスによってブロッキング化合物に曝露される。幾つかの実施形態では、基板は、浸漬又は「湿式」プロセスによってブロッキング化合物に曝露される。
【0034】
ブロッキング化合物は、第2の表面と比して第1の表面にブロッキング層を選択的に形成することができる任意の化合物でありうる。ブロッキング化合物は、少なくとも1つのブロッキング分子を含む。幾つかの実施形態では、ブロッキング分子は、一般式A-Lを有し、ここで、Aは反応性ヘッド基、Lは炭素質テール基である。幾つかの実施形態では、ブロッキング分子は、n-オクタデシルトリス(ジメチルアミノ)シランを含むか、又は本質的にそれからなる。
【0035】
この態様で用いられる場合、「ヘッド基」は、第1の表面112と会合する化学的部分であり、「テール基」は、第1の表面112から離れて延びる化学的部分である。
【0036】
幾つかの実施形態では、第1の材料110は、金属酸化物又は誘電体材料を含み、Aは、(RN)Si-、XSi-、及び(RO)Si-からなる群より選択され、ここで、各Rは、独立して、C1-C6アルキル、C1-C6シクロアルキル、及びC1-C6アリールから選択され、各Xは、独立してハロゲンから選択される。
【0037】
幾つかの実施形態では、第1の材料110は、金属、ケイ素、又は導電性材料を含み、Aは、(HO)OP-、HS-、及びHSi-からなる群より選択される。
【0038】
上記の反応性ヘッド基の幾つかは、テール基Lに結合している単一の反応性ヘッド基内に複数の反応性部分を含む(例えば、HSi-は、表面に最多で3回、結合しうる)。幾つかの実施形態では、Aは、上記列挙された反応性部分の数より少ない反応性基から選択され、複数のテール基Lに結合している。これらの実施形態では、テール基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
幾つかの実施形態では、Lは-(CHCHであり、nは、3から24の整数である。幾つかの実施形態では、連結基Lは、18個未満の炭素原子を含む。幾つかの実施形態では、連結基は、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、又は5個未満の炭素原子を含む。
【0040】
幾つかの実施形態では、Lは-(CH-であり、nは4から18の整数であり、反応性基は、ヘッド基とは反対側のテール基の末端にある。幾つかの実施形態では、テール基は、複数の末端を伴って分岐していてもよい。幾つかの実施形態では、テール基は、該テール基の端部以外の位置において、反応性基で置換されていてもよい。幾つかの実施形態では、テール基は不飽和でありうる。幾つかの実施形態では、テール基は、シクロアルキル基又はアリール基を含みうる。
【0041】
幾つかの実施形態では、ブロッキング分子は反応性基Zを含む。幾つかの実施形態の反応性基Zは、アルケン、アルキン、アルコール、カルボン酸、アルデヒド、ハロゲン化アシル、アミン、アミド、シアン酸塩、イソシアン酸塩、チオシアン酸塩、イソチオシアン酸塩、又はニトリルから選択された1つ以上の反応性部分を含む基である。
【0042】
幾つかの実施形態では、ブロッキング分子は、複数の反応性部分Zを含む。幾つかの実施形態では、Aは、ブロッキング分子が複数の反応性部分Zを含むように、各々が反応性基で終端した複数のテール基に連結される。幾つかの実施形態では、Lは、ブロッキング分子が複数の反応性部分Zを含むように、分岐している。
【0043】
幾つかの実施形態では、ブロッキング分子は、複数の反応性部分を含み、該反応性部分は直線的に配置される。幾つかの実施形態では、Lは、複数の反応性部分を含み、該反応性部分は分岐して配置される。この態様で用いられる場合、直線的に配置された反応性部分は、同じ炭素鎖内に配置されるのではなく、ブロッキング分子内に配置される。言い換えれば、それらはエンドツーエンドで配置される。この態様で用いられる場合、分岐して配置された反応性部分は、異なる炭素鎖に配置されるのではなく、ブロッキング分子内に配置される。言い換えれば、それらはエンドツーエンドで配置されない。幾つかの実施形態では、反応性部分は、介在する原子によって分離されうるが、それでもなお、エンドツーエンドと見なされる。
【0044】
例えば、化合物Iは、1つの反応性部分を含む。化合物II及びIIIはそれぞれ、2つの反応性部分を含む。化合物IIは、直線的に配置された反応性部分を有する。化合物IIIは、分岐して配置された反応性部分を有する。
【0045】
幾つかの実施態様では、テール基は、比較的遅いファンデルワールス相互作用を介して互いに会合する。幾つかの実施形態では、同種又は異種のSAMを形成できるように、テール基は、同じであっても異なっていてもよい。幾つかの実施形態では、ブロッキング化合物は、異種のSAMが形成されるように、少なくとも2つの異なるブロッキング分子を含む。
【0046】
ブロッキング化合物は、単一の化合物として又は複数の化合物の連続的な曝露として基板に送達されて、ブロッキング層130を形成することができる。幾つかの実施形態では、第1の表面112は、表面上に規則正しく又は半規則的に集合する単一化合物に曝露される。
【0047】
幾つかの実施形態では、ブロッキング層130は欠陥131を含む。欠陥131は、ブロッキング分子が第1の表面112と反応することによってその後の堆積が阻害されることのない、ブロッキング層の間隙又はボイドである。欠陥は、本明細書では第1の表面112の露出部分114と呼ばれる、第1の表面112の一部分114を露出させる。
【0048】
当業者は、ブロッキング層130の形成後に、第1の表面112が、露出部分114と、被覆部分又はブロック部分とを有しうることを理解するであろう。幾つかの実施形態では、ブロッキング層で覆われた第1の表面の部分は、断面積に基づいて、第1の表面112の約80%以上、又は約85%以上、又は約90%以上、又は約95%以上、又は約98%以上、又は約99%以上、又は約99.5%以上、又は約99.9%以上である。
【0049】
ブロッキング層130の形成後、金属含有層115が第2の表面122上に形成される。幾つかの実施形態では、金属含有層は、基板105を金属前駆体及び反応物質に順次曝露することによって形成される。金属含有層115は、任意の適切なプロセスによって堆積させることができる。幾つかの実施形態では、金属含有層115は、CVDによって堆積される。幾つかの実施形態では、金属含有層115は、ALDによって堆積される。幾つかの実施形態では、金属含有層115は、基板を複数の反応物質に曝露することによって堆積される。幾つかの実施形態では、複数の反応物質は、基板に順次曝露される。幾つかの実施形態では、複数の反応物質は、基板に別々に曝露される。幾つかの実施形態では、複数の反応物質は時間的に分離される。幾つかの実施形態では、複数の反応物質は空間的に分離される。
【0050】
第1の表面112に形成される金属含有層115の量は、第2の表面122に形成される膜の量より少ない。表面に形成された金属含有層115の量の測定値は、各表面に形成された金属含有層の平均厚さでありうる。幾つかの実施形態では、金属含有層115は、第1の表面112上の第1の平均厚さと、第2の表面122上の第2の平均厚さとを有する。別の言い方をすれば、金属含有層115の形成は、第1の表面112に比して第2の表面122上に金属含有層115を選択的に形成するものとして説明することができる。
【0051】
金属前駆体は、比較的大きい直径を有する任意の適切な前駆体でありうる。幾つかの実施形態では、金属前駆体は、約20.5オングストローム以上、又は約21.0オングストローム以上、又は約21.5オングストローム以上、又は約22.0オングストローム以上、又は約22.5オングストローム以上、又は約23.0オングストローム以上、又は約23.5オングストローム以上、又は約24オングストローム以上、又は約25オングストローム以上、又は約26オングストローム以上、又は約27オングストローム以上、又は約28オングストローム以上の動的直径を有する。
【0052】
幾つかの実施形態では、金属前駆体は第3周期金属を含む。幾つかの実施形態では、金属前駆体は第4周期金属を含む。幾つかの実施形態では、金属前駆体は第5周期金属を含む。幾つかの実施形態では、金属前駆体は第6周期金属を含む。これに関して用いられる場合、第10族金属は、周期表の対応する行又は周期に由来する任意の金属又は半金属である。したがって、第3周期金属は11~14の原子番号を有する。第4周期金属は19~33の原子番号を有する。第5周期金属は37~52の原子番号を有する。第6周期金属は55~84の原子番号を有する。理論に縛られはしないが、より高次の周期に由来する金属は、概して、より大きい動的直径を有しており、より大きい動的直径を有する金属前駆体をもたらすと考えられる。
【0053】
幾つかの実施形態では、金属前駆体は、Al、Hf、Zr、Y、Ti、Ta、Si、Cu、Co、W、又はRuのうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、金属前駆体は、トリ-tertブチルアルミニウム又はトリネオペンチルアルミニウムを含むか、又は本質的にそれらからなる。幾つかの実施形態では、金属前駆体は、テトラキス(ジメチルアミド)チタン又はテトラキス(ジエチルアミド)チタンを含むか、又は本質的にそれらからなる。
【0054】
理論に縛られはしないが、これらの金属前駆体は、これらの金属の堆積に通常用いられる他の前駆体よりも動的直径が比較的大きいと考えられる。したがって、ブロッキング層130の欠陥131にもかかわらず、これらの前駆体を利用する方法は、トリメチルアルミニウム又は四塩化チタンのようなより小さい従来の前駆体よりも選択的である。
【0055】
当業者は、分子直径は最も遠い原子間の距離であるが、動的直径は電子雲の影響も含んでおり、この電子雲は、原子よりも空間内で実質的に遠くまで広がり、分子を効果的に大きくすることができることを認識するであろう。
【0056】
動的直径は、分子電子体積に基づいて計算することができる。分子電子体積は、0.001電子/Bohr密度の等高線内の体積として定義される。体積が球形であると仮定して、動的直径を計算することができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、金属含有層115は、金属原子と、酸素原子、窒素原子、炭素原子、又はそれらの組合せとを含む。幾つかの実施形態では、金属含有層115は金属酸化物を含む。幾つかの実施形態では、金属含有層115は金属窒化物を含む。幾つかの実施形態では、金属含有層115は金属炭化物を含む。これに関して用いられる場合、金属酸化物は、金属又はケイ素原子と酸素原子とを含む任意の材料である。金属酸化物は、金属の酸素に対する化学量論比を含んでいても含んでいなくてもよい。同様に、金属窒化物は、金属又はケイ素原子と窒素原子とを含み、金属炭化物は、金属又はケイ素原子と炭素原子とを含み、いずれも、事前に定義された原子比はない。
【0058】
幾つかの実施形態では、金属含有層は酸素原子を含み、反応物質は、水、アルコール、酸素ガス(O)、オゾン、又は過酸化物のうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、反応物質は、本質的に水からなる。
【0059】
幾つかの実施形態では、金属含有層は窒素原子を含み、反応物質は、窒素ガス(N)、アンモニア、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、NO、又はNOのうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、反応物質は、本質的に窒素ガス又はアンモニアからなる。
【0060】
幾つかの実施形態では、金属含有層は、純粋な金属膜を含む。これに関して用いられる場合、「純粋な」金属膜は、原子ベースで、95%、98%、99%、又は99.5%を超える金属原子を含む。幾つかの実施形態では、反応物質は、水素ガス(H)を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0061】
本開示の幾つかの実施形態は、ブロッキング層を分解する可能性の低い酸化反応物質としてアルコールを使用することによって増加した選択性を有利に提供する、金属酸化物材料を選択的に堆積する方法を提供する。
【0062】
図2を参照すると、本開示の1つ以上の実施形態は、処理方法200を対象とする。基板205は、第1の材料210及び第2の材料220を備えている。第1の材料210は第1の表面212を有し、第2の材料220は第2の表面222を有する。第1の表面及び第2の表面は、第1の材料表面及び第2の材料表面と呼ばれることもある。
【0063】
幾つかの実施形態では、第1の材料210は金属酸化物又は誘電体材料を含み、第2の材料は金属又はケイ素を含む。幾つかの実施形態では、第1の材料は、二酸化ケイ素(SiO)を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0064】
幾つかの実施形態では、第1の材料210は誘電体材料を含み、第2の材料220は導電性材料を含む。幾つかの実施形態では、第1の材料210は導電性材料を含み、第2の材料220は誘電体材料を含む。
【0065】
幾つかの実施形態では、誘電体材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、又は炭化ケイ素のうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、導電性材料は、ケイ素又は金属のうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、誘電体材料は、本質的に酸化ケイ素からなり、導電性材料は、本質的にケイ素からなる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「本質的になる」という用語は、指定された材料の約95%、98%、99%、又は99.5%以上が、その明言した材料であることを意味する。
【0066】
基板205は、ブロッキング化合物に曝露されて、第2の表面222と比して第1の表面212の少なくとも一部にブロッキング層230を選択的に形成する。ブロッキング化合物及びブロッキング層は、本明細書の他の箇所に記載されている任意の適切なブロッキング化合物又はブロッキング層でありうる。
【0067】
ブロッキング層230の形成後、金属酸化物層215が第2の表面222上に形成される。幾つかの実施形態では、金属酸化物層215は、基板205を金属前駆体及び酸素化剤に順次曝露することによって形成される。別の言い方をすれば、幾つかの実施形態では、金属酸化物層215は、ALDによって堆積される。幾つかの実施形態では、金属酸化物層215は、基板を複数の反応物質に曝露することによって堆積される。幾つかの実施形態では、複数の反応物質は、基板に順次曝露される。幾つかの実施形態では、複数の反応物質は、基板に別々に曝露される。幾つかの実施形態では、複数の反応物質は時間的に分離される。幾つかの実施形態では、複数の反応物質は空間的に分離される。
【0068】
第1の表面112に形成される金属含有層215の量は、第2の表面222に形成される層の量より少ない。表面に形成された金属含有層215の量の測定値は、各表面に形成された金属酸化物層の平均厚さでありうる。幾つかの実施形態では、金属酸化物層215は、第1の表面212上の第1の平均厚さと、第2の表面222上の第2の平均厚さとを有する。別の言い方をすれば、金属酸化物層215の形成は、第1の表面212に比して第2の表面222に金属酸化物層215を選択的に形成することと説明することができる。
【0069】
金属前駆体は、任意の適切な前駆体でありうる。幾つかの実施形態では、金属前駆体は、Al、Hf、Zr、Y、Ti、Ta、Si、Cu、Co、W、又はRuのうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、金属前駆体はハフニウムを含む。幾つかの実施形態では、金属前駆体は、トリス(ジメチルアミド)シクロペンタジエニルハフニウムを含むか、又は本質的にそれからなる。幾つかの実施形態では、金属前駆体は、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウムを含むか、又は本質的にそれからなる。
【0070】
酸素化剤は、選択性を改善するように選択することができる。本発明者らは、比較的低い酸化電位(すなわち、より高いpKa値)である酸素化剤を使用すると、選択性が向上することを見出した。幾つかの実施形態では、酸素化剤は、水のpKaより大きいpKaを有する。幾つかの実施形態では、酸素化剤は、25℃で約14.0以上のpKaを有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、記載される化合物又は核種のpKaは、25℃及び1気圧で測定される。幾つかの実施形態では、酸素化剤のpKaは、約15.8~約20の範囲、又は約16~約18の範囲である。幾つかの実施形態では、酸素化剤は、約15.7以上のpKaを有する。幾つかの実施形態では、酸素化剤は、実質的に水を含まない。幾つかの実施形態では、酸素化剤は、実質的に酸素(O)を含まない。幾つかの実施形態では、酸素化剤は、実質的にオゾン(O)を含まない。この態様で用いられる場合、「実質的に含まない」という句は、酸素化剤が、モルベースで、その名言された核種を約5%、2%、1%、又は0.5%以下で含むことを意味する。
【0071】
幾つかの実施形態では、酸素化剤はアルコールを含む。幾つかの実施形態では、酸素化剤は、一般式R-OHのものであり、ここで、Rは、1から8個の炭素を含むアルキル又はシクロアルキル基である。幾つかの実施形態では、Rは、アリール基(例えば、ベンジル基)ではない。
【0072】
幾つかの実施形態では、酸素化剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、又はt-ブタノールのうちの1つ以上を含む。幾つかの実施形態では、酸素化剤は、本質的にt-ブタノールからなる。
【0073】
幾つかの実施形態では、金属前駆体及び酸素化剤への基板の連続曝露は、所定の厚さの金属酸化物層が第1の表面上に形成されるまで繰り返される。幾つかの実施形態では、金属前駆体及び酸素化剤への基板の連続曝露は、ブロッキング層上に金属酸化物層の実質的な堆積が観察されるまで繰り返される。これに関して用いられる場合、「実質的な堆積」は、SEMによって観察可能な金属酸化物の核形成又は他の堆積を指す。
【0074】
幾つかの実施形態では、ブロッキング層上に実質的に堆積することなく、所定の厚さの金属酸化物が形成される。幾つかの実施形態では、所定の厚さは、約60Å以上、約80Å以上、約90Å以上、又は約100Å以上である。
【0075】
理論に縛られはしないが、本明細書に開示される酸素化剤は、水又は酸素よりも低い酸化電位を有すると考えられる。したがって、これらの酸素化剤は、金属の酸化、腐食、及び粒子の問題を最小限に抑え、腐食性が低い、又はSAM層への他の損傷が少ないと考えられる。したがって、これらの酸素化剤を使用して、より多数の堆積サイクルを実行し、より厚い金属酸化物を達成することが可能である。
【0076】
本発明者らは、ハフニウム前駆体及び水を使用して形成した場合に、ブロックされた表面への酸化ハフニウムの堆積が、約50サイクル後に起こることを実験的に観察した。だが、t-ブタノールを使用して同様のプロセスを実施した場合、約150サイクルの間、堆積は観察されない。別の言い方をすれば、t-ブタノールを用いて形成した場合、本発明者らは、ブロックされた酸化ケイ素表面には実質的に堆積することなく、シリコン表面に約85~100Åの酸化ハフニウムを堆積することができる。しかし、水で実施した場合には、発明者らは、ブロックされた表面に堆積が観察される前に、30~40Åしか堆積することができない。
【0077】
この明細書全体を通じて「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体のさまざまな箇所での「1つ以上の実施形態」、「ある特定の実施形態」、「一実施形態」、又は「ある実施形態」などの文言の表出は、必ずしも本開示の同一の実施形態を指すものではない。さらには、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0078】
本明細書では発明は特定の実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態は本発明の原理及び用途の単なる例示であることが理解されるべきである。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び装置にさまざまな修正及び変形がなされうることは、当業者にとって明らかであろう。よって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にある修正及び変形を含むことが意図されている。
図1
図2