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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】容器入りチーズ
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/76 20060101AFI20230607BHJP
   A23C 19/076 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B65D85/76
A23C19/076
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018127874
(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公開番号】P2020006984
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 公実子
(72)【発明者】
【氏名】松永 典明
(72)【発明者】
【氏名】大津山 建
(72)【発明者】
【氏名】小山 雄
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-74973(JP,U)
【文献】実開昭57-35269(JP,U)
【文献】特開2012-90575(JP,A)
【文献】特開2010-115214(JP,A)
【文献】特開2007-20536(JP,A)
【文献】実開平6-76120(JP,U)
【文献】米国特許第2657998(US,A)
【文献】国際公開第2008/129143(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1736417(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2147873(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0017292(US,A1)
【文献】特開昭55-126016(JP,A)
【文献】特開平4-189790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/76
A23C 19/076
B65D 39/00 - 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、前記容器内に収容されたチーズとを含む、容器入りチーズであって、
前記容器は、前記チーズを載置する円形の底面部と、前記底面部から起立して延在し前記容器の側壁を形成する側壁部と、前記側壁部から水平に延在し前記容器の開口部を形成するフランジ部とを備え、
前記側壁部は、第一側壁部と、第二側壁部と、前記第一側壁部と前記第二側壁部とを接続する側壁遷移部とから構成され、
前記側壁遷移部は25~35°の傾斜角を有し、
前記フランジ部に蓋体が貼着され前記開口部が密封封止されている、
前記容器入りチーズ(但し、前記蓋体に加えてカバーキャップを備える容器を含む容器入りチーズを除く)であって、
前記チーズは、ナチュラルチーズであり、
前記チーズは、前記容器入りチーズの形態で加熱殺菌に供される、前記容器入りチーズ。
【請求項2】
前記第一側壁部の鉛直方向の高さが、前記第二側壁部の鉛直方向の高さより大きい、請求項1記載の容器入りチーズ。
【請求項3】
前記容器の前記開口部の径が、前記底面部の径に対して少なくとも10%大きい、請求項1又は2に記載の容器入りチーズ。
【請求項4】
前記容器の表面積に対する前記チーズの表面積の割合が0.50以上である、請求項1~3のいずれかに記載の容器入りチーズ。
【請求項5】
前記容器の体積に対する前記チーズの体積の割合が0.55以上である、請求項1~4のいずれかに記載の容器入りチーズ。
【請求項6】
前記容器の体積に対する前記チーズの体積の割合が0.55~0.75である、請求項1~5のいずれかに記載の容器入りチーズ。
【請求項7】
前記チーズの表面積の少なくとも50%が前記容器の前記底面部又は前記第一側壁部と実質的に接触している、請求項1~6のいずれかに記載の容器入りチーズ。
【請求項8】
前記第一側壁部の鉛直方向の高さが、前記チーズの鉛直方向の高さに対して少なくとも50%である、請求項1~7のいずれかに記載の容器入りチーズ。
【請求項9】
前記チーズは、それぞれ個包装された複数のポーションに分割されたものであるか、又は、個包装されたひとつのチーズである、請求項1~のいずれかに記載の容器入りチーズ。
【請求項10】
前記チーズは、カマンベールチーズである、請求項1~のいずれかに記載の容器入りチーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入りチーズに関する。より具体的には、本発明は、すぐれた殺菌効果とチーズの取出し容易性を備えた、特定の形状を有する容器にチーズが収容された容器入りチーズに関する。
【背景技術】
【0002】
チーズを容器に収容した容器入りチーズは、従来、商品として広く流通している。容器入りチーズに用いる容器も種々のものが知られている(例えば、特許文献1、2等)。
近年、容器入りチーズとしては、特に、チーズを容器に収容した後でチーズの発酵・熟成を進行させるタイプの商品が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-254953号公報
【文献】特開平11-348962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チーズを容器に収容した後で、チーズの発酵・熟成を進行させ、商品として流通する前に殺菌処理を施す場合、容器入りチーズは、殺菌効果が充分であることが求められる。また、容器入りチーズは、容器からチーズを取り出しやすいように設計することが求められる。
本発明の目的は、すぐれた殺菌効果とチーズの取出し容易性を備えた新規な容器入りチーズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の容器入りチーズ等を提供できる。
1.容器と、前記容器内に収容されたチーズとを含む、容器入りチーズであって、
前記容器は、前記チーズを載置する円形の底面部と、前記底面部から起立して延在し前記容器の側壁を形成する側壁部と、前記側壁部から水平に延在し前記容器の開口部を形成するフランジ部とを備え、
前記側壁部は、第一側壁部と、第二側壁部と、前記第一側壁部と前記第二側壁部とを接続する側壁遷移部とから構成され、
前記側壁遷移部は少なくとも10°の傾斜角を有し、
前記フランジ部に蓋体が貼着され前記開口部が封止されている、
前記容器入りチーズ。
2.前記第一側壁部の鉛直方向の高さが、前記第二側壁部の鉛直方向の高さより大きい、1記載の容器入りチーズ。
3.前記容器の前記開口部の径が、前記底面部の径に対して少なくとも10%大きい、1又は2に記載の容器入りチーズ。
4.前記容器の表面積に対する前記チーズの表面積の割合が0.50以上である、1~3のいずれかに記載の容器入りチーズ。
5.前記容器の体積に対する前記チーズの体積の割合が少なくとも0.55以上である、1~4のいずれかに記載の容器入りチーズ。
6.前記チーズの表面積の少なくとも50%が前記容器の前記底面部又は前記第一側壁部と実質的に接触している、1~5のいずれかに記載の容器入りチーズ。
7.前記第一側壁部の鉛直方向の高さが、前記チーズの鉛直方向の高さに対して少なくとも50%である、1~6のいずれかに記載の容器入りチーズ。
8.前記側壁遷移部の傾斜角が25~35°である、1~7のいずれかに記載の容器入りチーズ。
9.前記チーズは、前記容器入りチーズの形態で加熱殺菌に供される、1~8のいずれかに記載の容器入りチーズ。
10.前記チーズは、それぞれ個包装された複数のポーションに分割されたものであるか、又は、個包装されたひとつのチーズである、1~9のいずれかに記載の容器入りチーズ。
11.前記チーズは、ナチュラルチーズである、1~10のいずれかに記載の容器入りチーズ。
12.前記チーズは、カマンベールチーズである、1~11のいずれかに記載の容器入りチーズ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、すぐれた殺菌効果とチーズの取出し容易性を備えた新規な容器入りチーズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の容器入りチーズに使用する容器の一態様の正面図を示す。
図2図2は、本発明の容器入りチーズに使用する容器の一態様の上面図を示す。
図3図3は、本発明の容器入りチーズの一態様の斜投影図を示す。
図4図4は、比較例の容器入りチーズに使用した容器の正面図を示す。
図5図5は、比較例の容器入りチーズに使用した容器の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(容器入りチーズ)
以下、本発明の容器入りチーズの実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0009】
本発明の容器入りチーズは、容器と、前記容器内に収容されたチーズとを含む、容器入りチーズであって、前記容器は、前記チーズを載置する円形の底面部と、前記底面部から起立して延在し前記容器の側壁を形成する側壁部と、前記側壁部から水平に延在し前記容器の開口部を形成するフランジ部とを備え、前記側壁部は、第一側壁部と、第二側壁部と、前記第一側壁部と前記第二側壁部とを接続する側壁遷移部とから構成され、前記側壁遷移部は少なくとも10°の傾斜角を有し、前記フランジ部に蓋体が貼着され前記開口部が封止されていることを特徴とするものである。
本発明の容器入りチーズは、容器が特定の寸法形状を備えていることにより、すぐれた殺菌効果とすぐれたチーズの取出し容易性を提供することができる。
【0010】
(容器)
本発明の容器入りチーズに使用する容器(以下、「本発明の容器」ともいう。)について、以下に説明する。
本発明の容器は、チーズを載置する円形の底面部と、底面部から起立して延在し容器の側壁を形成する側壁部と、側壁部から水平に延在し容器の開口部を形成するフランジ部とを備える。
【0011】
図1に、本発明の容器入りチーズに使用する容器の一態様の正面図を示し、図2に、本発明の容器入りチーズに使用する容器の一態様の上面図を示す。
図1及び図2に示す態様において、容器1は、鉛直方向から見た場合に円形である底面部2と、側壁部3と、フランジ部4とを備える。
側壁部3は、底面部2から起立して延在する第一側壁部31と、第一側壁部31から延在する側壁遷移部33と、側壁遷移部33から延在して起立する第二側壁部32とから構成される。第一側壁部31と第二側壁部32とを接続する側壁遷移部33は、少なくとも10°の傾斜角を有するため、第二側壁部32の内径は、第一側壁部31の内径より大きい。よって、第一側壁部31は、容器1内に収容されるチーズ(図示せず)と実質的に接触し、第二側壁部32は、容器1内に収容されるチーズ(図示せず)と接触しない。第一側壁部31の鉛直方向の高さは、第二側壁部32の鉛直方向の高さより大きい。
底面部2には、容器を載置する面から底面部を底上げするための脚部6を設けてもよい。脚部は、図2に示す形状に限定されず、任意の形状であることができる。
【0012】
本発明の容器の一態様において、容器の底面部を、容器の内側から外側に向けて凸状に突出させるように成形することにより、例えば図2に示すような形状の脚部を形成することができる。この場合、底面部において容器の内側では凹みが形成され、この凹みが容器の外側において凸状の脚部となる。
また、本発明の容器の一態様において、容器の底面部に、容器の外側から凸状の部材を取り付けることにより、例えば図2に示すような形状の脚部を形成することができる。この場合、底面部において容器の内側では凹凸がなく、容器の外側では凸状に脚部が形成される。
【0013】
本発明の容器において、底面部は、チーズを載置するための面であり、円形形状のチーズを収容するため、鉛直方向から見た場合に円形である。
底面部の直径(以下、「底面部径」ともいう。)は、特に限定されないが、収容するチーズが容器内で動かないように、チーズの直径とほぼ同じであることが好ましい。これにより、チーズが容器により密接し、容器入りチーズを殺菌処理に供する際に、周囲環境からの加熱により容器を介してチーズへの伝熱性を充分確保して、すぐれた殺菌効果を示すことができる。本発明の一態様において、底面部の直径とは、具体的には、底面部の内径をいう。
【0014】
本発明の容器において、側壁部は、容器の側壁であり、底面部から起立して延在する。本発明の容器において、側壁部は、底面部から延在する第一側壁部と、第一側壁部から延在する側壁遷移部と、側壁遷移部から延在する第二側壁部とから構成される。
【0015】
第一側壁部は、収容されたチーズと実質的に接触するように起立する。典型的なチーズは、型枠にチーズカードを充填し、充填後の過程で水分含量を低下させ成形することにより製造するため、チーズの側壁は、型枠と同様に鉛直方向においてほぼ垂直に形成される。第一側壁部は、チーズの側壁に沿うように起立するため、同様に鉛直方向においてほぼ垂直に延在することが好ましいが、チーズの側壁と実質的に接触することを条件として、鉛直方向上向きに第一側壁部の内径が大きくなるように、第一側壁部は傾斜していてもよい。
【0016】
本明細書中において「実質的に接触する」とは、容器とチーズが接触している状態を意味するほか、チーズの殺菌効果に有意な影響を与えない程度に容器とチーズとの間にわずかなクリアランス(例えば、2mm以下、1mm以下、1mm未満、等)がある状態も意味するものとする。
【0017】
第一側壁部の鉛直方向の高さは、第二側壁部の鉛直方向の高さより大きい。第一側壁部は、収容されたチーズと実質的に接触するので、第一側壁部の鉛直方向の高さを第二側壁部の鉛直方向の高さより大きくすることにより、周囲環境からの加熱により容器を介してチーズへの伝熱性を充分確保して、すぐれた殺菌を示すことができる。
【0018】
側壁遷移部は、鉛直方向に対して少なくとも10°の傾斜角を有するように、第一側壁部から延在し、第一側壁部と前記第二側壁部とを接続する。これにより、第二側壁部の内径は、第一側壁部の内径より大きくなる。本発明の容器は、第一側壁部がチーズの側壁と実質的に接触し、側壁遷移部が傾斜して延在することで側壁遷移部の内壁はチーズの側壁から離れ、第二側壁部はチーズの側壁と接触しないという特徴を有する。
側壁遷移部の鉛直方向に対する傾斜角は、好ましくは10~40°であり、より好ましくは15~35°であり、さらにより好ましくは25~35°である。
【0019】
第二側壁部は、上記のとおり、側壁遷移部の傾斜によりチーズの側壁から離隔されるため、収容されたチーズと接触することなく、側壁遷移部から延在し、例えば鉛直方向においてほぼ垂直に延在する。本発明の一態様において、第二側壁部は、鉛直方向上向きに第二側壁部の内径が大きくなるように、傾斜していてもよい。
本発明のチーズ入り容器は、第二側壁部がチーズの側壁から離隔され、クリアランスがあるために、チーズを容器から取り出す際にチーズを掴みやすく、すぐれた取り出し容易性を示すことができる。
【0020】
本発明の容器において、取り出し容易性の観点から、容器の開口部の径は、底面部の径に対して、好ましくは少なくとも10%大きく、より好ましくは10~20%大きく、さらにより好ましくは10~15%大きい。図2に示す本発明の容器の一態様において、開口部径は、容器の開口部の径であり、符号51で示す寸法であり、底面部径は、チーズを載置する底面部の内径であり、符号21で示す寸法である。
【0021】
本発明の容器において、側壁部から、フランジ部が水平に延在する。フランジ部は、容器の開口部を形成するとともに、開口部を封止して容器を密封するための蓋体を貼着する役割を果たす。また、フランジ部は、容器入りチーズを製造するための自動化された製造設備ラインにおいて、製造機械が容器入りチーズを把持するための部材として機能することができる。フランジ部の寸法は、特に限定されず、容器入りチーズの製造設備ラインにおける設計条件等を考慮して適宜決定することができる。
【0022】
本発明の容器入りチーズの一態様において、容器の表面積に対するチーズの表面積の割合は、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.50~0.70、さらにより好ましくは0.55~0.65である。容器の表面積とは、開口部を蓋体で封止したときの容器入りチーズの外形の表面積をいう。チーズの表面積とは、チーズが個包装されているかどうかにかかわらず、チーズ又は個包装されたチーズの表面積をいう。チーズがポーションカットされたものである場合、チーズの表面積とは、個々のポーションを集めた、ポーションカットされていない元のチーズの外形の表面積をいう。尚、多くの場合、個包装されたチーズの表面積は、実質的には、チーズの表面積と同じである。
【0023】
本発明の容器入りチーズの一態様において、容器の体積に対するチーズの体積の割合は、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.55~0.75、さらにより好ましくは0.60~0.70である。容器の体積とは、チーズを収容せずに開口部を蓋体で封止したときの容器内部の体積をいう。チーズの体積とは、チーズが個包装されているかどうかにかかわらず、チーズ又は個包装されたチーズの表面積をいう。
【0024】
本発明の容器において、殺菌効果の観点から、チーズが容器と実質的に接触する表面積割合は、チーズの表面積の好ましくは少なくとも50%、より好ましくは50~60%、さらにより好ましくは50~70%が、容器の底面部又は第一側壁部と接触する。
本発明の容器の一態様において、容器が脚部を備え、底面部において容器の内側で凹みが形成されている場合、凹み部では厳密にはチーズと容器とが接触していないことになるが、脚部の凹みが伝熱に与える影響は有意ではないため、上記のチーズが容器と接触する表面積割合を計算する目的においては、凹みを考慮せず、チーズと容器が接触しているものとする。
【0025】
また、本発明の容器において、殺菌効果の観点から、第一側壁部の鉛直方向の高さは、チーズの鉛直方向の高さに対して、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは50~60%、さらにより好ましくは60~70%である。
【0026】
本発明の容器は、底面部が円形であるため、例えば、容器の横断面形状は円形であり、また、例えば、フランジ部の外形形状は円形である。
【0027】
本発明の容器は、充分な伝熱性と密封性の観点から、樹脂製であることが好ましい。本発明の容器は、所定の寸法及び形状の金型を準備し、樹脂を成形することにより製造することができる。
【0028】
蓋体の材料は、特に限定されないが、充分な伝熱性と密封性の観点から、好ましくは樹脂製フィルムである。樹脂製フィルムを構成する樹脂の種類は、特に限定されず、食品包装用途に通常使用される樹脂を使用することができる。樹脂製フィルムは、単層であっても、又は、多層であってもよい。また、樹脂製フィルムは、透明、半透明、着色等の任意のフィルムを使用することができる。
【0029】
(チーズ)
本発明の容器入りチーズにおいて、チーズの種類は特に限定されないが、チーズを容器に収容した容器入りチーズの形態で加熱殺菌に供するものであることが好ましい。本発明の容器入りチーズは、容器が特定の寸法形状を備え、容器と容器内に収容するチーズが接触する面積が充分大きく、周囲環境からの加熱により容器を介してチーズへの伝熱性が高いために、収容されたチーズに対してすぐれた殺菌効果を提供することができる。
【0030】
本発明の容器入りチーズを殺菌処理に供する場合、殺菌方法は特に限定されないが、好ましくは、レトルト殺菌(加圧加熱殺菌)が挙げられる。本発明の容器入りチーズをレトルト殺菌に供する場合に、後述する実施例により実証されたように、チーズに対してすぐれた殺菌効果を提供することができる。レトルト殺菌は、当技術分野において既知の任意の方法、条件により実施することができる。
【0031】
本発明の容器入りチーズにおいて、チーズは、好ましくはナチュラルチーズであり、より好ましくはカマンベールチーズである。
【0032】
本発明の容器入りチーズにおいて、チーズは、例えば扇形の、複数のポーションに分割されたチーズ(いわゆる「ポーションチーズ」)であってもよく、又は、ひとつのチーズ(いわゆる「ホールチーズ」)であってもよい。これらのチーズは、品質変化や劣化を防止するため、又は、喫食時に手にべたつくことを防止する取扱い性の向上のため、それぞれ個包装されていることが好ましい。個包装する際の包装材料は、食品包装用途に通常使用される材料を使用することができる。
【0033】
(容器入りチーズの製造方法)
本発明の容器入りチーズは、容器の開口部から容器の底面部にチーズを載置し、容器のフランジ部に蓋体を貼着して開口部を封止することにより、製造することができる。
【0034】
本発明の容器入りチーズにおいて、容器内の雰囲気は、特に限定されないが、チーズの品質変化や劣化を抑制する雰囲気であることが好ましく、例えば、窒素、不活性ガス等である。
【0035】
本発明の容器入りチーズにおいて、チーズの品質変化や劣化を抑制するため、酸化防止剤や湿潤剤等の当技術分野において既知の任意の品質保持剤を容器内にチーズとともに収容させてもよい。
【0036】
図3に、本発明の容器入りチーズの一態様の斜投影図を示す。図3において、容器1は、鉛直方向から見た場合に円形である底面部2と、側壁部3と、フランジ部4とを備える。それぞれ個包装されたポーションタイプのチーズ7が開口部5から収容され、底面部2に載置されている。フランジ部4には、蓋体(図示せず)が貼着され、開口部5が封止されることで、容器1は密封されている。
【実施例
【0037】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0038】
実施例
本発明の容器入りチーズについて、殺菌試験と取り出し試験を行い、効果を評価した。具体的な方法を以下に説明する。
【0039】
容器の底面部にホール形態のナチュラルチーズを載置し、樹脂製フィルムの蓋体をフランジ部に貼着して、容器入りチーズとした。実施例の容器入りチーズに使用した容器の正面図を図1に、上面図を図2に示す。容器の各部の寸法及びチーズの寸法は表1に示すとおりである。実施例の容器において、側壁遷移部33の鉛直方向に対する傾斜角は30°である。
【0040】
比較例
比較例として、実施例で使用した容器とは形状が異なる容器にチーズを収容した容器入りチーズについて、実施例と同様に殺菌試験と取り出し試験を行った。
比較例の容器入りチーズに使用した容器の正面図を図4に、上面図を図5に示す。容器の各部の寸法及びチーズの寸法は表1に示すとおりである。
図4及び図5において、容器11は、鉛直方向から見た場合に円形である底面部12と、側壁部13と、フランジ部14とを備える。側壁部13は、底面部12から起立して延在する第一側壁部131と、第一側壁部131から延在して起立する第二側壁部132とから構成される。底面部12には、容器を載置する面から底面部を底上げするための脚部16が設けられている。脚部16は、図5に示す形状で形成され、図2に示す実施例の容器1の脚部6と同じ形状である。
実施例の容器1の形状と比較して、容器11は、容器1の側壁遷移部33に相当する部分を備えていない。
【0041】
【表1】
【0042】
殺菌試験は、容器入りチーズをレトルト殺菌処理(加熱方式:熱水シャワー式、使用機器:シミュレーターレトルトH60-C65(東洋製罐株式会社))に供し、熱履歴(F値)とチーズ中心部の温度の推移を評価した。実施例と比較例では、同一のレトルト殺菌処理を行った。実施例のサンプルは4個、比較例のサンプルは8個について評価した。
【0043】
F値は、121℃、1分間の加熱処理に相当する殺菌強度を1とし、レトルト殺菌処理時においてチーズ中心部の温度が80℃に達した時点(t80S)から10秒毎に温度(T:℃)を記録し、冷却工程でチーズ中心部の温度が80℃を下回る時点(t80E)までの積算値を次式により算出した。Z値はD値を1/10にする温度差(℃)であり、Z値を10℃として計算した(Z=10)。
【0044】
【数1】
【0045】
チーズ中心部の温度の推移は、チーズにオンライン温度計を刺してチーズ中心部の温度を測定し、80℃以上を示した時間の長さを比較した。
それぞれの結果について平均値と標準偏差(±SD)と、有意差検定(t検定)の結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
有意差検定(t検定)においてp<0.05の場合に有意差があると判断できるところ、表2の結果から有意差はなく、実施例は比較例と同等の殺菌効果を示すことが分かった。比較例の容器は、チーズの側壁表面がすべて容器に接しており、伝熱面積が大きく、殺菌効果が高いものであるところ、実施例の容器は比較例と同等のすぐれた殺菌効果を示すことが分かった。
【0048】
取り出し試験は、殺菌試験後の容器入りチーズについて蓋体を剥がし、容器からチーズを取り出す際の取り出しやすさを専門パネル10名により以下の5段階で評価し、平均値を評点とした。
【0049】
5:容器に入っていないチーズを掴む場合と同じ速度で速やかにストレスなく容器からチーズを取り出せる
4:比較例より早く取り出せる
3:比較例と同様の速度で取り出せる
2:比較例よりやや長くかかるが取り出せる
1:比較例より長くかかるが取り出せる
実施例は評点5.0、比較例は評点3.0であり、本発明の容器入りチーズは、取り出し容易性にすぐれることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の容器入りチーズは、殺菌効果がすぐれていることから、チーズを容器に収容した後で、チーズの発酵・熟成を進行させるタイプの商品として好適に使用することができ、また、取り出し容易性がすぐれていることから、喫食者が容器からチーズを取り出しやすく有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 容器、2 底面部、21 底面部径、3 側壁部、31 第一側壁部、32 第二側壁部、33 側壁遷移部、4 フランジ部、5 開口部、51 開口部径、6 脚部、7 チーズ、 11 容器、12 底面部、13 側壁部、131 第一側壁部、132 第二側壁部、14 フランジ部、15 開口部、16 脚部
図1
図2
図3
図4
図5