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特許7290966包装材料積層体の製造方法、包装材料積層体及びそれを用いた包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】包装材料積層体の製造方法、包装材料積層体及びそれを用いた包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230607BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230607BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20230607BHJP
   B29C 48/15 20190101ALI20230607BHJP
   B29C 48/156 20190101ALI20230607BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20230607BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20230607BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B32B9/00 A
B29C48/08
B29C48/15
B29C48/156
B29C48/21
B29C48/88
B65D65/40 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019055037
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020152066
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 篤司
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-098549(JP,A)
【文献】特開2002-240121(JP,A)
【文献】特開2010-052222(JP,A)
【文献】特開2011-104821(JP,A)
【文献】特開平09-234845(JP,A)
【文献】特開2018-069734(JP,A)
【文献】特開2020-049689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B29C 48/00-48/96
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜層表面にトップコート層を有する金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層の中から選択された1つ以上のガスバリア層と、溶融樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂層とを含む包装材料積層体の製造方法であって、
前記トップコート層は、ウレタン系またはポリエステル系のトップコート剤を用いて形成されており、
前記包装材料積層体は、その片面に露出されたヒートシール性を有する第1の基材と、それに隣接する側に前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材とが、接着剤及びアンカーコート剤を介することなく、前記熱可塑性樹脂層を介して積層されてなるもの、又は、前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材の、前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する側に、接着剤及びアンカーコート剤を介することなく、前記熱可塑性樹脂層が積層されてなるものであり、
前記包装材料積層体が前記第1の基材及び前記第2の基材を含む場合はこれらを基材フィルムとし、前記包装材料積層体が前記第1の基材を含むことなく前記第2の基材を含む場合は前記第2の基材を基材フィルムとし、
厚みが10~500μmであり、長さが3~10,000mの長尺のフィルムからなる前記基材フィルムの巻かれたロール体からそれぞれ繰り出された、前記基材フィルムの少なくとも一つが、大気圧プラズマ処理装置による表面改質により熱接着性改質層が形成された面を有し、前記第2の基材は、前記トップコート層に対して大気圧プラズマ処理がされており、
前記包装材料積層体が前記第1の基材及び前記第2の基材を含む場合は、前記熱接着性改質層が形成された面を含むように、前記第1の基材と、前記第2の基材とを対向させ、前記第1の基材と前記第2の基材との間に、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、溶融樹脂フィルムを押し出して、該溶融樹脂フィルムの、前記基材フィルムの少なくとも一つと合わさる面にオゾン処理を行いながら、冷却ニップロールにて連続貼合し、
前記包装材料積層体が前記第1の基材を含むことなく前記第2の基材を含む場合は、前記第2の基材の熱接着性改質層が形成された面に、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、溶融樹脂フィルムを押し出して、該溶融樹脂フィルムの、前記第2の基材と合わさる面にオゾン処理を行いながら、冷却ニップロールにて連続貼合することを特徴とする包装材料積層体の製造方法。
【請求項2】
前記基材フィルムを貼合するに際し、事前に、大気圧プラズマ処理装置を用いて樹脂フィルムの表面改質により熱接着性改質層が形成された前記基材フィルムと、これと同一又は異なる種類の熱可塑性樹脂フィルムであってエアコロナ処理されてなる基準フィルムとを用い、前記基材フィルムの熱接着性改質層が形成された面と、前記エアコロナ処理されてなる基準フィルムのエアコロナ処理面を対向させて、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく熱圧着させて試験積層体を得た後、該試験積層体の貼合面における接着力を測定して、前記基材フィルムの熱接着性改質層の形成状態の良否を確認することを特徴とする請求項1に記載の包装材料積層体の製造方法。
【請求項3】
大気圧プラズマ処理装置を用いて熱接着性改質層が形成される前記基材フィルムが、金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層と薄膜層表面にトップコート層を有する、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、又はポリアミド(PA)樹脂フィルムであって、前記基準フィルムとしてエアコロナ処理された未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルムを用い、温度160℃、加圧力0.4MPaで10秒間保持して加熱圧着させたときの接着力が、JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法で測定した値が5.9N/25.4mm以上となることを確認する工程、
大気圧プラズマ処理装置を用いて熱接着性改質層が形成される前記基材フィルムが、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルムであって、前記基準フィルムとしてエアコロナ処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを用い、温度160℃、加圧力0.4MPaで10秒間保持して加熱圧着させたときの接着力が、JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法で測定した値が5.9N/25.4mm以上となることを確認する工程、
大気圧プラズマ処理装置を用いて熱接着性改質層が形成される前記基材フィルムが、未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、環状ポリオレフィン(COPあるいはCOC)樹脂フィルム、又は未延伸ポリエチレンと未延伸ポリプロピレンの共押し出しフィルム(PE/CPP)であって、前記基準フィルムとしてエアコロナ処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを用い、温度190℃、加圧力0.4MPaで10秒間保持して加熱圧着させたときの接着力が、JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法で測定した値が5.9N/25.4mm以上となることを確認する工程、のいずれかを有することを特徴とする請求項2に記載の包装材料積層体の製造方法。
【請求項4】
前記冷却ニップロールにて連続貼合する貼合工程後に、得られた積層体を常温で10日~1ヶ月間、または40~60℃で1~3日間静置するエージング工程を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の包装材料積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の基材が、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、環状ポリオレフィン(COPあるいはCOC)樹脂フィルム、未延伸ポリエチレンと未延伸ポリプロピレンの共押し出しフィルム(PE/CPP)からなるオレフィン系フィルム群の中から選ばれた1種類であり、
前記第2の基材に含まれる前記熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、ポリアミド(PA)樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリイミド(PI)樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂フィルムからなる群の中から選ばれた1種類であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の包装材料積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第2の基材となるフィルムの少なくとも片面には、印刷層が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の包装材料積層体の製造方法。
【請求項7】
薄膜層表面にトップコート層を有する金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層の中から選択された1つ以上のガスバリア層と、溶融樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂層とを含む包装材料積層体であって、
前記トップコート層は、ウレタン系またはポリエステル系のトップコート剤を用いて形成されており、
前記包装材料積層体は、その片面に露出されたヒートシール性を有する第1の基材と、それに隣接する側に前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材とが、接着剤及びアンカーコート剤を介することなく、前記熱可塑性樹脂層を介して積層されてなるもの、又は、前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材の、前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する側に、接着剤及びアンカーコート剤を介することなく、前記熱可塑性樹脂層が積層されてなるものであり、
前記包装材料積層体が前記第1の基材及び前記第2の基材を含む場合はこれらを基材フィルムとし、前記包装材料積層体が前記第1の基材を含むことなく前記第2の基材を含む場合は前記第2の基材を基材フィルムとし、
前記基材フィルムは、厚みが10~500μmであり、長さが3~10,000mの長尺のフィルムからなり、前記基材フィルムの少なくとも一つが、大気圧プラズマ処理装置による表面改質により熱接着性改質層が形成された面を有し、前記第2の基材は、前記トップコート層に対して大気圧プラズマ処理がされており、
前記包装材料積層体が前記第1の基材及び前記第2の基材を含む場合は、前記熱接着性改質層が形成された面を含むように、前記第1の基材と、前記第2の基材とを対向させ、前記第1の基材と前記第2の基材との間に、前記熱可塑性樹脂層を介して、該熱可塑性樹脂層の、前記基材フィルムの少なくとも一つと合わさる面にオゾン処理がされて、接着剤及びアンカー剤を使わないで貼合されて、
前記包装材料積層体が前記第1の基材を含むことなく前記第2の基材を含む場合は、前記第2の基材の熱接着性改質層が形成された面に、前記熱可塑性樹脂層が積層されて、該熱可塑性樹脂層の、前記第2の基材と合わさる面にオゾン処理がされて、接着剤及びアンカー剤を使わないで貼合されていることを特徴とする包装材料積層体。
【請求項8】
前記第1の基材が、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、環状ポリオレフィン(COPあるいはCOC)樹脂フィルム、未延伸ポリエチレンと未延伸ポリプロピレンの共押し出しフィルム(PE/CPP)からなるオレフィン系フィルム群の中から選ばれた1種類であり、
前記第2の基材に含まれる前記熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、ポリアミド(PA)樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリイミド(PI)樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂フィルムからなる群の中から選ばれた1種類であることを特徴とする請求項7に記載の包装材料積層体。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の包装材料積層体を用いて、
前記包装材料積層体が前記第1の基材及び前記第2の基材を含む場合は、前記第1の基材がシーラント層として内面側となるように製造されてなり、
前記包装材料積層体が前記第1の基材を含むことなく前記第2の基材を含む場合は、前記熱可塑性樹脂層がシーラント層として内面側となるように製造されてなることを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質された樹脂フィルムを用いた包装材料積層体の製造方法、包装材料積層体及びそれを用いた包装体に関するものである。さらに、詳細には、ボイル・レトルト食品、液体洗剤、液体漂白剤、液体ワックス、ヘアケア用品(シャンプー、リンス、コンディショナーなどが含まれる)、薬液、液体状の化粧品等の種々の液体状あるいは水分等の液体を含む製品の詰替え用などの各種包装に使用される、接着剤及びアンカーコート剤を使用しないことにより、内容品への汚染源となりうる、接着剤及びアンカーコート剤に起因する低分子成分の発生が無いクリーンで、VOC(揮発性有機化合物)の発生を完全に無くし、環境対策や省エネルギー対策に優れる包装材料積層体の製造方法、包装材料積層体及びそれを用いて作製した包装体に関するものである。
また、本発明による包装材料積層体は、化粧シート、光学フィルム、保護フィルム、包装容器などの各種用途に使用される。また、本発明による包装材料積層体を用いて作製される包装容器は、液体調味料、液体洗剤、液体漂白剤、液体ワックス、ヘアケア用品(シャンプー、リンス、コンディショナーなどが含まれる)、薬液、液体状の化粧品等の種々の液体状あるいは水分等の液体を含む製品の包装容器及び詰替え用包装容器、さらには、ボイル・レトルト食品、一般食品、電子レンジ対応食品・部品、電子部品、医療用部品、医療用機器部品、中でも、放射線滅菌、ガス滅菌、オートクレーブ滅菌対応医療用部品や医療用機器部品、精密機械部品などの各種包装容器に広く使用される。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボイル・レトルト食品、ヘアケア用品、ハウスホールド用品、薬液さらには、一般食品、電子レンジ対応食品・部品、電子部品、医療用部品、医療用機器部品、精密機械部品などを貯蔵保管及び運搬供給するための包装には、内面にシーラント層を有する合成樹脂フィルムの周縁部を熱融着した可撓性の包装袋や包装容器(以下、包装体とする)が使用されている。
このような包装体に用いられる包装材料積層体としては、2種類以上のフィルム、アルミ箔、蒸着フィルム(基材にアルミ、シリカ、アルミナなどの蒸着薄膜を積層したもの)などを組み合わせて積層体としたものが用いられる。積層体としては、例えば、内容物を充填した後、包装容器の充填口を加熱バーによる溶着、いわゆるヒートシールにより密封する場合は、ヒートシール面となる積層体の内面にヒートシール性に優れたポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂層がヒートシール層として使用される。
そして、積層体には、強度を補強したり、他の機能を付与したりするためにポリアミド、ポリエステル、アルミ箔、蒸着フィルムなどが積層される。例えば、ポリアミド(PA)樹脂フィルム/無機化合物の薄膜層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム/未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルムや金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム/未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルムのような構成をした積層体が広く用いられてきた。また、アルミ箔代替ガスバリア層として金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムや金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層を有するポリアミド(PA)樹脂フィルムが広く用いられている。
【0003】
従来、積層体に使用されるフィルムの積層方法としては、2種類以上の樹脂フィルムを組み合わせて、樹脂フィルム同士を貼合するのに、接着剤を用いて行うドライラミネート方式、あるいはアンカーコート剤を用いて行うフィルムサンド方式または押出ラミネート方式などにより、フィルムを積層した積層体が作製されていた。
樹脂フィルム同士を貼合するのに、接着剤やアンカーコート剤を用いないと接着強度が不足することがある。しかし、接着剤を用いたドライラミネート方式や、アンカーコート剤を用いたフィルムサンド方式、押出ラミネート方式では、有機溶剤を用いることから環境対策や省エネルギー対策の点で問題があり、さらには残留溶剤や接着剤及びアンカーコート剤に起因する低分子成分が包装袋に充填されている内容物と反応して、内容物の汚染が生じることや、内容物の成分に悪影響を及ぼすこともあった。さらには残留溶剤及び低分子成分の移行の恐れが伴うことから、内容物へコンタミの影響が避けられないという問題があった。このため、より好ましい包装材料積層体の製造方法として、接着剤やアンカーコート剤を用いないで、必要とされる接着強度を有する積層体を製造できる方法が求められている。
【0004】
このような要望に対して、接着強度を増加させるための処理を行い、接着剤やアンカーコート剤を用いないで積層体を製造する方法に関して、様々な提案がなされている(例えば特許文献1~7を参照)。
特許文献1には、プラスチック基材の少なくとも一面にコロナ処理、プラズマ処理、フレームプラズマ処理、電子線照射、紫外線照射などにより表面を酸化処理するとともに、溶融押出したフィルムの少なくとも一面にオゾン処理したのち、両者を接触させ圧着する押出ラミネート方法が記載されている。
特許文献2には、プラスチック基材の少なくとも一面に、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、ネオン、キセノン、窒素等の不活性気体の雰囲気で電子線照射処理、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理またはコロナ放電処理により表面処理するとともに、溶融押出したフィルムの少なくとも一面にオゾン処理したのち、両者を接触させ圧着する押出ラミネート方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、合成樹脂の表面を活性化し、印刷インキや金属蒸着膜に対する接着性を向上するため、実質的に窒素と二酸化炭素とからなる混合気体雰囲気(望ましくは酸素濃度が0.1vol%以下)中でコロナ放電処理することを特徴とする合成樹脂の表面処理方法が記載されている。
特許文献4には、窒素ガス(酸素濃度が3vol%以下)、炭酸ガスあるいは窒素/炭酸ガスの混合ガス雰囲気でのコロナ放電処理により、ESCA法による基材フィルムの表面の窒素と炭素の原子数比(N/C)が0.001~0.1の範囲である被処理面を生成し、該被処理面に、水/低級アルコール混合溶液や水を溶媒とし、水溶性高分子及び無機系層状化合物を主たる構成成分とする塗剤を塗布し、乾燥して塗膜を形成するガスバリアフィルムの製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献5には、少なくとも二層以上の、例えば、未延伸ポリエチレン(PE)、未延伸ポリプロピレン(CPP)などのポリオレフィン樹脂を、接着剤を用いないで積層する方法が開示されている。具体的には、積層する樹脂の表面に走査型グロー放電プラズマ装置を用いて低温プラズマ処理をした後、熱圧着により積層するとしている。
特許文献6には、大気圧プラズマ処理装置によりフッ素樹脂シートの表面をプラズマ処理した基材同士を、接着剤を使用しないで、かつ、その構造・組成を変化させないで、基材の融点以下の温度で圧着することにより接着させる、接着装置及び接着方法が示されている。
特許文献7には、プラズマ表面処理されたアラミド繊維とアラミドパルプとからなるアラミド紙と、プラズマ処理したポリエステルフィルムとを、室温~200℃の温度で、加圧ロールを用いて連続的に積層接着された無接着剤アラミド-ポリエステル積層体が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-314629号公報
【文献】特開平9-234845号公報
【文献】特公昭57-30854号公報
【文献】特開平9-111017号公報
【文献】特開平3-162420号公報
【文献】特開2008-075030号公報
【文献】特開2008-183868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1、2に提案された方法において、公知の空気雰囲気でのコロナ処理とUV/オゾン処理とを組み合わせて処理を行うだけでは、接着強度が不充分な場合がある。
【0009】
特許文献3、4には、窒素を含み、実質的に酸素を含まない雰囲気でのコロナ放電処理により、合成樹脂の表面を改質して接着性を向上する方法が記載されている。しかし、これらの特許文献には、印刷インキや金属蒸着膜、水溶性高分子及び無機系層状化合物を主たる構成成分とする塗膜に対する接着性が記載されているのみである。本発明者は、このような表面処理方法により活性化された合成樹脂の表面処理面と樹脂フィルムとの熱圧着による接着性を確認するため、窒素ガス雰囲気下のコロナ放電処理をした合成樹脂フィルムに対して、表面が未処理である樹脂フィルムを熱ラミネートする方法で積層体の製造を試みたところ、充分な接着強度を得ることができなかった。
【0010】
特許文献5には、無極性の熱可塑性樹脂である、例えば、未延伸ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン樹脂の表面に、走査型グロー放電プラズマ装置を用いて低温プラズマ処理をした後、熱圧着により積層することが開示されている。また、ポリエステルなどの極性を有する熱可塑性樹脂と、無極性の熱可塑性樹脂とを積層する場合には、無極性の熱可塑性樹脂のみに変調磁界プラズマ装置で処理するが、極性を有する熱可塑性樹脂の表面は、プラズマ処理しないで用いた方が高強度の層間接着強度が得られるので好ましいとしている。この場合、変調磁界プラズマ装置で処理するとC-O基及びC=O基が生成することがESCA分析により確認できたことから、これらの生成した官能基が接着に寄与しているとしている。
しかし、実施例によると、例えば、PPとLDPEとを熱圧着するときの熱圧着温度は、100℃としているが加圧力は示されていないので、産業上の利用を図ることができない。
【0011】
特許文献6には、炭素数4以下の第1級アルコール又は第2級アルコールである低級アルコールを気化して不活性ガスと混合して電極に供給して行う大気圧プラズマ処理装置を用いて、表面がフッ素樹脂で構成された基材の表面改質を行い、その表面改質された基材同士を、基材の融点以下の温度で熱圧着する方法が開示されている。
表面改質により表面のフッ素樹脂に親水性が与えられるとしているが、プラズマ処理した樹脂表面の好ましい処理状態を判断する基準を定義したものは示されていない。また、熱圧着するときの熱圧着温度は、例えば、融点が327℃であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)では200℃以下としているが加圧力は示されていないので、産業上の利用を図ることができない。
【0012】
特許文献7には、プラズマ表面処理されたアラミド繊維とアラミドパルプとからなるアラミド紙と、プラズマ処理したポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレートとを、室温~200℃の温度で、200kgf/cm以上の圧力下の加圧ロールを用いて連続的に積層する方法が開示されている。
表面改質により、ある種の官能基、例えばCOOH基やOH基をフィルム表面に形成し、低温において、強固に積層・接着することができるとしているが、プラズマ処理した樹脂表面の好ましい処理状態を判断する基準を定義したものは示されていない。また、プラズマ処理は、種々の樹脂の接着性を高めるための方法として良く知られた方法であるので、これ自身に関する詳細な説明は省略するとして、プラズマ処理の具体的な説明が記載されていないので、産業上の利用を図ることができない。
【0013】
また、接着剤を用いたドライラミネート方式や、アンカーコート剤を用いたフィルムサンド方式、押出ラミネート方式では、有機溶剤を用いることから残留溶剤及び低分子成分の移行の恐れが伴うことから、内容物へコンタミの影響が避けられないという問題があった。こうしたことから、樹脂フィルムを積層して包装材料積層体を製造するにあたり、接着剤及びアンカーコート剤の使用量を可能な限り低減することが求められている。
【0014】
従来技術においては、同種類のフィルムを用いてのヒートラミネートにおいては、例えば、OPP/CPP等では接着剤及びアンカーコート剤を使用しないで行われていたが、異なる種類のフィルム同士を接着剤及びアンカーコート剤を使用しないで貼り合せる場合は、接着力が弱くて実用に供しなかった。
このように、従来技術においては、異種フィルム同士を接着剤及びアンカーコート剤を使用することなく積層される、特に金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層を有する樹脂フィルムにシーラント層が積層された包装材料積層体の製造方法、包装材料積層体及びそれを用いて作製された包装体は、知られていなかった。
【0015】
本発明は、上記に鑑みて成されたものである。すなわち本発明の目的は、接着剤及びアンカーコート剤を使用しないことにより、内容品への汚染源となりうる、接着剤及びアンカーコート剤に起因する低分子成分の発生が無いクリーンで、VOC(揮発性有機化合物)の発生を完全に無くし、環境対策や省エネルギー対策に優れ、接着剤及びアンカーコート剤を使用することなく異種フィルム同士を積層、特に金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層を有する樹脂フィルムにシーラント層が積層された包装材料積層体の製造方法、包装材料積層体及びそれを用いて作製された包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では上記課題を解決するために、金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層(ガスバリア層)と薄膜層表面にトップコート層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材と、溶融樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂層とを含む包装材料積層体の製造方法であって、ヒートシール性を有する第1の基材と、金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層と薄膜層表面にトップコートを有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材との間に溶融樹脂フィルムを押し出して、溶融樹脂フィルムの第2の基材と合わさる面にオゾン処理を行いながら積層するフィルムサンド方式を用いて、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、連続貼合することを特徴とする包装材料積層体の製造方法を提供する。第1の基材を使用しないで、第2の基材の表面に溶融樹脂フィルムを押し出す場合は、押出ラミネート方式の積層体として使用できる。
また、前記金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層と薄膜層表面にトップコートを有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材の接着面に、大気圧プラズマ処理装置を用いた表面改質により熱接着性改質層が形成されてなる包装材料積層体の製造方法を提供する。
【0017】
前記課題を解決するため、本発明は、薄膜層表面にトップコート層を有する金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層の中から選択された1つ以上のガスバリア層と、溶融樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂層とを含む包装材料積層体の製造方法であって、該包装材料積層体は、その片面に露出されたヒートシール性を有する第1の基材と、それに隣接する側に前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材とが、接着剤及びアンカーコート剤を介することなく、前記熱可塑性樹脂層を介して積層されてなるもの、又は、前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材の、前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する側に、接着剤及びアンカーコート剤を介することなく、前記熱可塑性樹脂層が積層されてなるものであり、前記包装材料積層体が前記第1の基材及び前記第2の基材を含む場合はこれらを基材フィルムとし、前記包装材料積層体が前記第1の基材を含むことなく前記第2の基材を含む場合は前記第2の基材を基材フィルムとし、厚みが10~500μmであり、長さが3~10,000mの長尺のフィルムからなる前記基材フィルムの巻かれたロール体からそれぞれ繰り出された、前記基材フィルムの少なくとも一つが、大気圧プラズマ処理装置による表面改質により熱接着性改質層が形成された面を有し、前記包装材料積層体が前記第1の基材及び前記第2の基材を含む場合は、前記熱接着性改質層が形成された面を含むように、前記第1の基材と、前記第2の基材とを対向させ、前記第1の基材と前記第2の基材との間に、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、溶融樹脂フィルムを押し出して、該溶融樹脂フィルムの、前記基材フィルムの少なくとも一つと合わさる面にオゾン処理を行いながら、冷却ニップロールにて連続貼合し、前記包装材料積層体が前記第1の基材を含むことなく前記第2の基材を含む場合は、前記第2の基材の熱接着性改質層が形成された面に、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、溶融樹脂フィルムを押し出して、該溶融樹脂フィルムの、前記第2の基材と合わさる面にオゾン処理を行いながら、冷却ニップロールにて連続貼合することを特徴とする包装材料積層体の製造方法を提供する。
【0018】
上記の包装材料積層体の製造方法において、前記基材フィルムを貼合するに際し、事前に、大気圧プラズマ処理装置を用いて樹脂フィルムの表面改質により熱接着性改質層が形成された前記基材フィルムと、これと同一又は異なる種類の熱可塑性樹脂フィルムであってエアコロナ処理されてなる基準フィルムとを用い、前記基材フィルムの熱接着性改質層が形成された面と、前記エアコロナ処理されてなる基準フィルムのエアコロナ処理面を対向させて、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく熱圧着させて試験積層体を得た後、該試験積層体の貼合面における接着力を測定して、前記基材フィルムの熱接着性改質層の形成状態の良否を確認することが好ましい。
【0019】
大気圧プラズマ処理装置を用いて熱接着性改質層が形成される前記基材フィルムが、金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層と薄膜層表面にトップコート層を有する、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、又はポリアミド(PA)樹脂フィルムであって、前記基準フィルムとしてエアコロナ処理された未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルムを用い、温度160℃、加圧力0.4MPaで10秒間保持して加熱圧着させたときの接着力が、JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法で測定した値が5.9N/25.4mm以上となることを確認する工程、
大気圧プラズマ処理装置を用いて熱接着性改質層が形成される前記基材フィルムが、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルムであって、前記基準フィルムとしてエアコロナ処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを用い、温度160℃、加圧力0.4MPaで10秒間保持して加熱圧着させたときの接着力が、JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法で測定した値が5.9N/25.4mm以上となることを確認する工程、
大気圧プラズマ処理装置を用いて熱接着性改質層が形成される前記基材フィルムが、未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、環状ポリオレフィン(COPあるいはCOC)樹脂フィルム、又は未延伸ポリエチレンと未延伸ポリプロピレンの共押し出しフィルム(PE/CPP)であって、前記基準フィルムとしてエアコロナ処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを用い、温度190℃、加圧力0.4MPaで10秒間保持して加熱圧着させたときの接着力が、JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法で測定した値が5.9N/25.4mm以上となることを確認する工程、のいずれかを有することが好ましい。
【0020】
前記冷却ニップロールにて連続貼合する貼合工程後に、得られた積層体を常温で10日~1ヶ月間、または40~60℃で1~3日間静置するエージング工程を含むことが好ましい。これにより、接着力を増大させることができる。
【0021】
前記第1の基材が、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、環状ポリオレフィン(COPあるいはCOC)樹脂フィルム、未延伸ポリエチレンと未延伸ポリプロピレンの共押し出しフィルム(PE/CPP)からなるオレフィン系フィルム群の中から選ばれた1種類であり、前記第2の基材に含まれる前記熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、ポリアミド(PA)樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリイミド(PI)樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂フィルムからなる群の中から選ばれた1種類であることが好ましい。
前記第2の基材となるフィルムの少なくとも片面には、印刷層が形成されていてもよい。
【0022】
また、本発明は、薄膜層表面にトップコート層を有する金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層の中から選択された1つ以上のガスバリア層と、溶融樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂層とを含む包装材料積層体であって、該包装材料積層体は、その片面に露出されたヒートシール性を有する第1の基材と、それに隣接する側に前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材とが、接着剤及びアンカーコート剤を介することなく積層されてなるもの、又は、前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材の、前記トップコート層及び前記ガスバリア層を有する側に、接着剤及びアンカーコート剤を介することなく、前記熱可塑性樹脂層が積層されてなるものであり、前記包装材料積層体が前記第1の基材及び前記第2の基材を含む場合はこれらを基材フィルムとし、前記包装材料積層体が前記第1の基材を含むことなく前記第2の基材を含む場合は前記第2の基材を基材フィルムとし、前記基材フィルムは、厚みが10~500μmであり、長さが3~10,000mの長尺のフィルムからなり、前記基材フィルムの少なくとも一つが、大気圧プラズマ処理装置による表面改質により熱接着性改質層が形成された面を有し、前記包装材料積層体が前記第1の基材及び前記第2の基材を含む場合は、前記熱接着性改質層が形成された面を含むように、前記第1の基材と、前記第2の基材とを対向させ、前記第1の基材と前記第2の基材との間に、前記熱可塑性樹脂層を介して、該熱可塑性樹脂層の、前記基材フィルムの少なくとも一つと合わさる面にオゾン処理がされて、接着剤及びアンカー剤を使わないで貼合されて、前記包装材料積層体が前記第1の基材を含むことなく前記第2の基材を含む場合は、前記第2の基材の熱接着性改質層が形成された面に、前記熱可塑性樹脂層が積層されて、該熱可塑性樹脂層の、前記第2の基材と合わさる面にオゾン処理がされて、接着剤及びアンカー剤を使わないで貼合されていることを特徴とする包装材料積層体を提供する。
【0023】
前記第1の基材が、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、環状ポリオレフィン(COPあるいはCOC)樹脂フィルム、未延伸ポリエチレンと未延伸ポリプロピレンの共押し出しフィルム(PE/CPP)からなるオレフィン系フィルム群の中から選ばれた1種類であり、前記第2の基材に含まれる前記熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、ポリアミド(PA)樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリイミド(PI)樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂フィルムからなる群の中から選ばれた1種類であることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、上記の包装材料積層体を用いて、前記包装材料積層体が前記第1の基材及び前記第2の基材を含む場合は、前記第1の基材がシーラント層として内面側となるように製造されてなり、前記包装材料積層体が前記第1の基材を含むことなく前記第2の基材を含む場合は、前記熱可塑性樹脂層がシーラント層として内面側となるように製造されてなることを特徴とする包装体を提供する。
【発明の効果】
【0025】
上記の本発明によれば、包装体の最内層となるヒートシール層を貼り合わせるのに、接着剤及びアンカーコート剤を用いないので、残留溶剤及び内容品への汚染源となりうる、接着剤及びアンカーコート剤由来の低分子成分の発生が伴わないことから、包装体内に充填されている内容物へのコンタミの影響を低減できる。
また、包装体の最内層となるヒートシール層を貼り合わせるのに、接着剤及びアンカーコート剤を用いないので、従来技術のように接着剤及びアンカーコート剤が、包装体内に充填されている液体内容物と反応して、内容物の成分への悪影響が起こること、例えば、薬効成分の分解、減少などが生じることも低減できる。
また、接着剤及びアンカーコート剤を用いないので溶剤を蒸発、乾燥させることにより発生するVOC(揮発性有機化合物)の環境対策が不要となる。
また、本発明の積層体の製造方法では、接着剤及びアンカーコート剤を用いないので、有機溶剤を用いないことから、溶剤を乾燥除去するための乾燥炉及び排ガス処理装置を必要とせず、環境対策及び省エネルギー対策の点から環境負荷を低減できて非常に優れている。
また、本発明において、金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層(ガスバリア層)の表面にトップコート層を有する場合には、トップコート層に対して大気圧プラズマ処理または印刷を行うことができる。また、本発明において、第2の基材がトップコート層の上に印刷層を有する場合には、印刷層に対して大気圧プラズマ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係わる包装材料積層体の製造方法の一例を示す概念図である。
図2】本発明に係わる包装材料積層体の一例を示す概略断面図であって、(a)はフィルムサンドする前の概略断面図であり、(b)はフィルムサンドした後の概略断面図である。
図3】本発明に係わる包装材料積層体の他の例であり、印刷層を有するフィルムによる包装材料積層体を示す概略断面図である。(a)はフィルムサンドする前の概略断面図であり、(b)はフィルムサンドした後の概略断面図である。
図4】アンカーコートを用いて貼合した包装材料積層体の一例を示す概略断面図である。(a)はフィルムサンドする前の概略断面図であり、(b)はフィルムサンドした後の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、好適な実施の形態について、本発明を説明する。
【0028】
図1は、本発明に係わる包装材料積層体の製造方法の一例を示す概念図であって、異なる種類のフィルムからなる第1の基材と第2の基材とを貼合して包装材料積層体を製造する方法を示している。
第1の基材1及び第2の基材2は、それぞれ長尺のフィルムからなり、第1の基材1の巻かれたロール体21と、第2の基材2の巻かれたロール体22から、それぞれ繰り出される。
第2の基材2は、大気圧プラズマ処理装置24を用いた表面改質により熱接着性改質層6が形成された第2の基材2となる。
なお、図1には、大気圧プラズマ処理装置24を用いて、オンラインで表面改質する場合を示しているが、事前に、大気圧プラズマ処理装置による表面改質により熱接着性改質層が形成された第2の基材が巻かれたロール体を用いても良い。
第2の基材2の熱接着性改質層6が形成された面と、第1の基材1とを対向させ、アンカーコート剤を塗布することなく、溶融樹脂フィルム27の第2の基材2と合わさる面にオゾン処理を行いながら、押し出しダイ26から溶融樹脂フィルム27が第1の基材1と第2の基材2との間に押し出された後、冷却ニップロール25にて貼合(フィルムサンド)されて包装材料積層体10が得られる。得られた包装材料積層体10は、ロール体28に巻き取っても良く、又は、所定の寸法に裁断してシート状の積層体(図示は省略)としても良い。
【0029】
図2は、本発明に係わる包装材料積層体の一例を示す概略断面図であって、(a)はフィルムサンドする前の概略断面図であり、(b)はフィルムサンドした後の概略断面図である。
この場合、第2の基材2の少なくとも片面には大気圧プラズマ処理装置による表面改質が行われて熱接着性改質層6が形成されている。第2の基材2の熱接着性改質層6が形成されている面と、第1の基材1とを、対向させて、アンカーコート剤を塗布することなく、第2の基材2と合わさる面にオゾン処理がされた溶融樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂層9が、第1の基材1と第2の基材2の間に貼合(フィルムサンド)されて包装材料積層体10が得られる。
この包装材料積層体10は、アンカーコート剤が使用されていない、第1の基材と、第2の基材が積層された包装材料積層体である。第1の基材と第2の基材との間の溶融樹脂フィルム27は、冷却後は固化した熱可塑性樹脂層9となる。
この包装材料積層体10の第1の基材1には、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂フィルムが用いられていることから、この包装材料積層体10を所定の形状・寸法に裁断し、ヒートシール層の樹脂を内面側としてヒートシールすることにより、包装容器を作製することができる。第1の基材1を使用しなければ、熱可塑性樹脂層9を包装容器のヒートシール層とした押出ラミネート方式の包装材料積層体(図示は省略)を作製することができる。
【0030】
また、図3は、本発明に係わる包装材料積層体の他の例であり、印刷層を有するフィルムによる包装材料積層体を示す概略断面図である。(a)はフィルムサンドする前の概略断面図であり、(b)はフィルムサンドした後の概略断面図である。
図3において、フィルムからなる第2の基材2の片面には印刷層11が形成されている。印刷層11が形成されている第2の基材2の印刷層11の上に、大気圧プラズマ処理装置を用いて表面改質処理が成され、印刷層11及び第2の基材2の印刷層が形成されていない部分には熱接着性改質層6が形成されている。第2の基材2の熱接着性改質層6が形成されている面と、第1の基材1とを対向させて、アンカーコート剤を塗布することなく、第2の基材2と合わさる面にオゾン処理がされた溶融樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂層9が、第1の基材1と第2の基材2の間に貼合(フィルムサンド)されて包装材料積層体20が得られる。
包装材料積層体20は、印刷層が形成された積層体であって、この包装材料積層体20を所定の形状・寸法に裁断し、ヒートシール層の樹脂を内面側としてヒートシールすることにより、印刷層を有する実用的な包装容器を作製することができる。第1の基材1を使用しなければ、熱可塑性樹脂層9を包装容器のヒートシール層とした押出ラミネート方式の包装材料積層体(図示は省略)を作製することができる。
【0031】
上述の本実施形態に係わる包装材料積層体10、20は、金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層(蒸着膜)の中から選択された1つ以上のガスバリア層4を含む。
本実施形態に係わる包装材料積層体10、20の一方の面には、ヒートシール性を有する第1の基材1が露出されている。第1の基材1には、ガスバリア層4とその表面にトップコート層5を有する熱可塑性樹脂フィルム3からなる第2の基材2が、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、熱可塑性樹脂層9を介して貼合されている。
また、包装材料積層体10、20において、第1の基材1をシーラント層とする場合、第2の基材2の、第1の基材1が貼合される側とは反対側には、任意の層を積層してもよい。第1の基材1を省略して、熱可塑性樹脂層9をシーラント層としてもよい。
【0032】
第2の基材2に含まれる熱可塑性樹脂フィルム3としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、ポリアミド(PA)樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリイミド(PI)樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂フィルムなどからなる群の中から選ばれた1種類が挙げられる。
また、ガスバリア層4となる金属酸化物あるいは無機化合物としては、シリカ、アルミナなどガスバリア性材料が挙げられる。これらのガスバリア性材料は、アルミニウムのような金属でなく、導電性を有しないため、電子レンジ加熱にも対応できる。ガスバリア層4は、例えば蒸着膜として、熱可塑性樹脂フィルム3の表面に形成することができる。
また、トップコート層5に用いられるトップコート剤としては、大気圧プラズマ処理装置による表面改質が可能であれば、特に限定はなく、例えばウレタン系、ポリエステル系等の有機系のトップコート剤、例えばゾル・ゲル材料を用いた有機・無機ハイブリッド材料等の有機・無機混合のトップコート剤など、被着物の材質などに応じて適宜選択して用いることができる。
また、ヒートシール性を有する第1の基材1としては、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、環状ポリオレフィン(COPあるいはCOC)樹脂フィルム、未延伸ポリエチレンと未延伸ポリプロピレンの共押し出しフィルム(PE/CPP)などからなるオレフィン系フィルム群の中から選ばれた1種類が挙げられる。第1の基材1は、オレフィン系フィルム7の表面に、エアコロナ処理装置23を用いて形成されたエアコロナ処理層8を有してもよい。
そして、包装材料積層体10、20においては、ヒートシール性を有する第1の基材1と、金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層と薄膜層表面にトップコート層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材2とが、接着剤及びアンカーコート剤を使用しないで積層されたものである。
この包装材料積層体10、20の一方の樹脂フィルムには、ヒートシール性を有する第1の基材1が積層されていることから、この包装材料積層体を所定の形状・寸法に裁断し、第1の基材1を内面側としてヒートシールすることにより、包装体を作製することができる。
第1の基材1を省略して、熱可塑性樹脂層9をシーラント層としてもよい。熱可塑性樹脂層9および溶融樹脂フィルム27を構成する熱可塑性樹脂としては、フィルムサンド方式の場合は、第1の基材と第2の基材との貼合に適した樹脂が好ましく、押出ラミネート方式の場合は、シーラント層としての使用に適した樹脂が好ましい。いずれの場合も、主にポリエチレン(PE)やカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を使用するのが好ましい。
【0033】
また、図4は、従来技術によるアンカーコートを用いて貼合した包装材料積層体の一例を示す概略断面図である。この包装材料積層体30は、ヒートシール性を有する第1の基材1と、金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層からなるガスバリア層4と、その表面にトップコート層5を有する熱可塑性樹脂フィルム3からなる第2の基材2とが、アンカーコート剤を用いたフィルムサンドにより接着されてなる。第1の基材1の片面にはエアコロナ処理層8が形成されていて、第1の基材1のエアコロナ処理層8が形成された面と、第2の基材2とを対向させて、第2の基材2の、溶融樹脂フィルム27と合わさる面にアンカーコート剤31を塗布した後に、溶融樹脂フィルム27の、第2の基材2と合わさる面にオゾン処理を行いながら、溶融樹脂フィルム27を第1の基材1と第2の基材2の間に押し出した後、冷却ニップロールにて貼合(フィルムサンド)して、包装材料積層体30が得られる。
【0034】
(包装材料積層体の用途等)
本実施形態による包装材料積層体を包装容器に用いる場合には、第1の基材及び第2の基材のフィルムの厚みが、それぞれ、10~100μm程度のフィルムを用いて積層体を作製するのが、積層体の柔軟性を維持し、包装容器を製造工程での加工性を良くする上で好ましい。また、包装容器を実際に手にする消費者にとっては、手触り感の面から、包装容器に使用されている積層体の厚みが、30~200μm程度であることが好ましい。
本実施形態による包装材料積層体は、包装容器等の包装体に好適に使用することができる。例えば、この包装材料積層体を、未延伸ポリエチレン(PE)をヒートシール層とするために内面にして2つ折りし、三方をヒートシールすることにより袋体を得ることができる。
また、所定寸法に裁断された2枚の包装材料積層体を重ねて、両側端部をヒートシールし、さらに、2つ折りした底部用の包装材料積層体をヒートシールすることによりスタンディングパウチ形式の自立型をした、包装体を得ることができる。
また、詰替え用包装容器においては、自立型のスタンディングパウチとし、さらに、様々な注ぎ易い形状をした注出口を配設することにより、内容物の詰替え作業を簡便化した包装容器を得ることができる。
また、電子部品、医療用部品、医療用機器部品、精密機械部品などの用途向けとして、特別に清浄度管理されたクリーンルーム内の作業環境下において、清浄度の維持管理された基材フィルムを用いて本実施形態に係わる包装材料積層体を作製した後、それを用いたクリーンな包装体を作製することができる。
本実施形態の包装容器(包装体)は、液体調味料、液体洗剤、液体漂白剤、液体ワックス、ヘアケア用品(シャンプー、リンス、コンディショナーなどが含まれる)、薬液、液体状の化粧品等の種々の液体状あるいは水分等の液体を含む製品の包装容器及び詰替え用包装容器、さらには、ボイル・レトルト食品、一般食品、電子レンジ対応食品・部品、電子部品、医療用部品、医療用機器部品、中でも、放射線滅菌、ガス滅菌、オートクレーブ滅菌対応の医療用部品や医療用機器部品、精密機械部品などの各種包装容器に広く使用することができる。
本実施形態の包装材料積層体は、特に、ボイル、レトルト、オートクレーブ等の熱処理適性を有する包装容器材料として好適に用いられる。また、本実施形態の包装材料積層体は、包装容器などの包装体に限らず、化粧シート、光学フィルム、保護フィルムなどの各種用途に使用することができる。
【0035】
(表面改質の良否確認工程)
溶融樹脂フィルムを介して第1の基材と、第2の基材とを貼合し、または第2の基材の表面に溶融樹脂フィルムを貼合するに際し、事前に、大気圧プラズマ処理装置を用いて樹脂フィルムの表面改質により熱接着性改質層が形成された基材(第2の基材及び/又は第1の基材)と、この基材と同一又は異なる種類の熱可塑性樹脂フィルムであってエアコロナ処理されてなる特定のフィルムとを用い、大気圧プラズマ処理装置により表面改質により熱接着性改質層が形成された表面の良否を判定する。すなわち、前記基材(第2の基材及び/又は第1の基材)の熱接着性改質層が形成された面と、前記エアコロナ処理されてなる特定のフィルム(基準フィルム)のエアコロナ処理面を対向させて、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、熱圧着させたときの接着力が、JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法で測定した値が所定値以上となるように、大気圧プラズマ処理装置を用いた表面改質が成されていることが必要である。
なお、前記基準フィルムは、表面の良否判定のために用いられるのみであり、最終的には製品の積層体には含まれない。例えば、熱接着性改質層が形成される基材(第1の基材および/または第2の基材)が長尺のフィルムである場合には、その長手方向の一部において基準フィルムとの貼合を行い、表面改質の処理条件の良否を確認後、第1の基材および第2の基材の貼合を連続的に行う方法が挙げられる。この場合、積層体が基準フィルムと貼合されている部分は、製品からカット(除去)することが好ましい。
基準フィルムとの貼合による良否確認工程は、包装材料積層体の生産を行う際に、毎回行う必要はないが、例えば、大気圧プラズマ処理がなされる第1の基材および/または第2の基材の種類を変更するとき、大気圧プラズマの処理条件を変更するとき、大気圧プラズマ処理装置の清掃や部品交換などを行ったときなどに、必要に応じて良否確認工程を実施することが望ましい。
【0036】
従来技術においては、大気圧プラズマ処理を用いた表面改質により、ある種の官能基、例えばCOOH基やOH基をフィルム表面に形成し、低温において、強固に積層・接着することができるとしているが、大気圧プラズマ処理したフィルム表面の好ましい処理状態を判断する基準を定義したものは示されていなかった。
【0037】
本発明者らは、大気圧プラズマ処理された熱可塑性樹脂フィルムの熱接着性改質層が形成された表面と、エアコロナ処理されたヒートシール性を有する基材、例えば、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルムのエアコロナ処理面とを対向させて熱圧着して、得られた試験積層体の接着強度を測定することにより、大気圧プラズマ処理の状態の微妙な差異を確認することができることを見出し、さらに、エアコロナ処理された基材(基準フィルム)が、ヒートシール性を有する樹脂フィルムに限定されないことを見出し、本発明を成し得るに至った。
【0038】
大気圧プラズマ処理において、プラズマをフィルムの表面に対して照射する時間、印加電力、周波数などの処理条件は、例えば金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層と薄膜層表面にトップコート層を有する樹脂フィルムに対してのプラズマ処理条件を探索するには、当該樹脂フィルムの熱接着性改質層が形成された表面(トップコート層または印刷層を有する面であってもよい)と、エアコロナ処理された基準フィルムのエアコロナ処理面と対向させて、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、所定の条件で加熱圧着したときの接着力が、JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法で速度5mm/minではく離させた時の強度として、所定以上となるように、大気圧プラズマ処理装置を用いた表面改質が成されていれば、包装体に使用可能な包装材料積層体を得ることができる。
【0039】
大気圧プラズマ処理装置を用いて熱接着性改質層が形成される基材が、金属酸化物あるいは無機化合物の薄膜層と薄膜層表面にトップコート層を有する、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、又はポリアミド(PA)樹脂フィルムである場合には、前記基準フィルムとしてエアコロナ処理された未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルムを用い、温度160℃、加圧力0.4MPaで10秒間保持して加熱圧着させたときの接着力が、JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法で測定した値が5.9N/25.4mm以上となることを確認すればよい。
大気圧プラズマ処理装置を用いて熱接着性改質層が形成される基材が、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルムである場合には、前記基準フィルムとしてエアコロナ処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを用い、温度160℃、加圧力0.4MPaで10秒間保持して加熱圧着させたときの接着力が、JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法で測定した値が5.9N/25.4mm以上となることを確認すればよい。
大気圧プラズマ処理装置を用いて熱接着性改質層が形成される基材が、未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、環状ポリオレフィン(COPあるいはCOC)樹脂フィルム、又は未延伸ポリエチレンと未延伸ポリプロピレンの共押し出しフィルム(PE/CPP)である場合には、前記基準フィルムとしてエアコロナ処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを用い、温度190℃、加圧力0.4MPaで10秒間保持して加熱圧着させたときの接着力が、JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法で測定した値が5.9N/25.4mm以上となることを確認すればよい。
【0040】
(樹脂フィルム)
大気圧プラズマ処理される基材として使用できる熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、未延伸ポリエチレン(PE)樹脂、未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂、環状ポリオレフィン(COPあるいはCOC)樹脂などの樹脂フィルムが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の融点は、それぞれ、ポリエチレンテレフタレート(252℃)、ポリアミド(220℃)、ポリ塩化ビニル(なし)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(160~190℃)、ポリエチレンナフタレート(約270℃)、ポリアクリロニトリル(なし)、ポリカーボネート(なし)、ポリイミド(なし)、未延伸ポリエチレン(105~140℃)、未延伸ポリプロピレン(130~165℃)である。なお、ポリアミド樹脂は、酸とアミンが反応してできるアミド結合(-CONH-)の繰り返しによって主鎖が構成される線状高分子のことで、一般的な商品名としてはナイロン(NY)と呼ばれているものである。また、未延伸ポリエチレンと未延伸ポリプロピレンの共押し出しフィルム(PE/CPP)のように、2種以上の樹脂が積層されたフィルムであってもよい。
【0041】
本実施形態の包装材料積層体に使用される、熱可塑性樹脂フィルム3及びヒートシール性を有する第1の基材1の厚みは、それぞれの厚みが10~500μm程度であることが好ましい。厚みが10μm未満であると皺に成り易く、ロールtoロールでの加工を行うことが困難であり取扱いに不自由が生じる。また、厚みが500μmを超えると、剛性が高くて可撓性がなくなり、薄すぎる場合と同様に、ロールtoロールでの加工を行うことが困難であり取扱いに不自由が生じる。
従って、本実施形態による包装材料積層体の製造方法において、表面改質された樹脂フィルム同士をフィルムサンドにより貼り合わせて、積層フィルムを作製する場合、積層後の樹脂フィルムをロール体として巻き取るには、全体の厚みが500μmを超えないように配慮する必要がある。
また、積層された後の樹脂フィルムの厚みが500μmを超える場合には、積層された樹脂フィルムをロール体に巻き取ることが困難であることから、一定の寸法長さで切断された積層樹脂フィルムのシートとして作製することになる。
【0042】
(印刷層)
第2の基材となるフィルムは、少なくとも片面には、印刷層が形成されていることもできる。印刷層の位置は、第2の基材の表面処理がされる側の面、第2の基材の表面処理がされない側の面、第2の基材の内部など、特に限定されないが、特に、図3に示すように、第2の基材2の表面処理がされた側の面に印刷層11を有する場合には、印刷層11の上にも熱接着性改質層6が形成され得る。
印刷層11の上に熱接着性改質層6を形成するためには、印刷層11を構成する印刷用インキが、大気圧プラズマ処理によって改質可能な樹脂成分を含有する必要がある。このような樹脂成分としては、上記基材フィルムに用いられる熱可塑性樹脂のほか、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などの各種インキバインダー樹脂が挙げられる。さらにインキには、各種顔料、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加される。
印刷層は、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの公知の印刷方法にて形成される。印刷層の厚さは、通常、0.05~2.0μm程度で良い。
また、印刷層の占有面積が第2の基材の表面積に比して十分狭い場合には、印刷層の上に熱接着性改質層が十分に形成されなくても、オゾン処理された溶融樹脂フィルムと貼合することは可能である。
【0043】
(包装材料積層体の製造方法)
本実施形態の包装材料積層体を製造する方法として、ガスバリア層及びトップコート層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材の面上に、他の熱可塑性樹脂からなる第1の基材1を貼合する場合、下記の(1)~(2)の工程により行うことができる。
(1)ガスバリア層及びトップコート層を有する熱可塑性樹脂フィルムからなる第2の基材のフィルムの表面に、大気圧プラズマ処理装置を用いて表面処理を行い、熱接着性改質層を形成する。この場合の表面とはトップコート層がある面になる。
(2)第2の基材の前記熱接着性改質層が形成された面に、第1の基材を対向させ、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、溶融樹脂フィルムの第2の基材と合わさる面にオゾン処理を行いながら、溶融樹脂フィルムを第1の基材と第2の基材の間に押し出した後、冷却ニップロールにて貼合(フィルムサンド)する。ここで、第1の基材を使用しなければ、押出ラミネート方式の積層体として使用できる。
【0044】
なお、溶融樹脂としては、主にカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂等の接着性樹脂を使用するのが好ましい。また、溶融樹脂として、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂などを、被着物の材質などに応じて適宜選択して用いることができる。
なお、大気圧プラズマ処理装置に用いる反応ガスは、窒素ガスをベースにするものに限らず、酸素ガスや炭酸ガスをベースにしても良い。
【0045】
包装材料積層体の層構成は特に限定されるものではないが、例えば以下のような構成例が挙げられる。以下の例においては、右側がシーラント層となる第1の基材(省略が可能)を示す。また、左側は第2の基材に含まれる熱可塑性樹脂フィルムを示す。その左側(包装体の外側)に、さらに任意の層を積層することもできる。
(1-1)PET/シリカ蒸着膜/トップコート層/接着面/接着性樹脂/PE
(1-2)PET/シリカ蒸着膜/トップコート層/接着面/接着性樹脂/CPP
(2-1)PET/アルミナ蒸着膜/トップコート層/接着面/接着性樹脂/PE
(2-2)PET/アルミナ蒸着膜/トップコート層/接着面/接着性樹脂/CPP
(3-1)NY/シリカ蒸着膜/トップコート層/接着面/接着性樹脂/PE
(3-2)NY/シリカ蒸着膜/トップコート層/接着面/接着性樹脂/CPP
【0046】
(コロナ放電処理)
ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性ポリオレフィン樹脂フィルムは、表面層に極性基を持たないので、インキの印刷性、他の樹脂との接着性が低い。このため、インキの印刷性、他の樹脂との接着性を高めるために、コロナ放電処理による樹脂フィルム表面の改質が行われている。コロナ放電による表面改質の処理は、高周波電源電圧を用いて大気中にコロナ放電を発生させ、それに伴って発生する電子やイオンを樹脂フィルムの表面に照射し、樹脂フィルムの表面に官能基を付加することによって樹脂フィルムの表面改質を行うものである。
【0047】
(空気雰囲気でのコロナ放電処理(エアコロナ処理))
通常の、空気雰囲気下で行われるコロナ放電による表面改質の処理では、コロナ放電処理した樹脂フィルムの表面が酸化され、該樹脂フィルムの表面において、高分子の主鎖や側鎖に、カルボニル基(>CO)やカルボキシル基(-COOH)などの酸素官能基が主として形成すると考えられる。
【0048】
(窒素ガス雰囲気でのコロナ放電処理)
窒素ガス雰囲気でのコロナ放電処理を行うことで、樹脂フィルム表面の高分子の主鎖や側鎖に、接着に寄与すると思われるアミノ基(-NH)等の窒素官能基が主として生成すると考えられる。さらに、窒素ガス雰囲気でのコロナ放電処理は、通常の空気雰囲気でのコロナ放電処理(エアコロナ処理)と異なり、窒素ガス雰囲気中で放電が起こっているために、空気雰囲気でのコロナ放電処理(エアコロナ処理)を行った場合に発生する空気中の不純物による脆弱層の発生が抑えられる。幾つかの特許文献では、窒素ガスも大気圧グロープラズマ処理の雰囲気ガスとして使用できるような記載があるが、放電状態を観察すると大気圧グロープラズマ放電ではない。しかしながら、窒素ガス雰囲気でのコロナ放電は、放電条件の調整によって雷のようなストリーマー状(線状)、すなわち空気雰囲気でのコロナ放電よりは緩やかな(マイルドな)グローに近い放電が可能であるため、エアコロナ処理よりも均一な表面改質として利用できる。
【0049】
(大気圧グロープラズマ処理)
従来、真空状態で放電させる低温プラズマ処理が表面改質に用いられていたが、真空設備を要することから装置が大掛かりとなり操作が煩雑であるという欠点があった。このため、通常、真空状態でしか発生できないグロー放電状態を大気圧下で発生させ、それにより生じる反応ラジカル、電子などを用いて表面改質を行う大気圧プラズマ処理装置が、樹脂フィルムの濡れ性改善・接着性改善に簡便に使用されるようになった。
【0050】
大気圧グロープラズマ処理は、雰囲気ガスとしてヘリウム、アルゴンなどの希ガス元素を用いることで安定にグロー放電が保持され、雷のようなストリーマー状(線状)、すなわち空気雰囲気でのコロナ放電よりも、むらの無い均一な表面改質が可能である。幾つかの特許文献では、窒素ガスも大気圧グロープラズマ処理の雰囲気ガスとして使用できるような記載があるが、放電状態を観察すると大気圧グロープラズマ放電ではない。
【0051】
本実施形態での大気圧プラズマ処理とは、窒素ガス雰囲気でのコロナ放電処理、あるいはヘリウム、アルゴンなどの希ガス雰囲気での大気圧グロープラズマ処理である。
酸素を反応ガスとする大気圧プラズマ処理では、樹脂フィルムの表面において、高分子の主鎖や側鎖に、カルボニル基(>CO)やカルボキシル基(-COOH)などの酸素官能基が主として形成する。また、窒素系ガスを反応ガスとする、例えば、N、NO、NHなど、さらに水素(H)、酸素(O)などを混合することにより、アミノ基、アミド基なども意図的に導入することができることを、本発明者らは確認している。
また、反応ガスには、CH、CO等を添加してもよい。
【0052】
これらを考慮して本実施形態では、樹脂フィルムの表面に大気圧プラズマ処理を用いて表面改質処理を行う場合、窒素ガス雰囲気でのコロナ放電処理、あるいはヘリウム、アルゴンなどの希ガス雰囲気での大気圧グロープラズマ処理を用いて行うことができる。
さらに、本実施形態ではフィルム表面に、熱接着性改質層が形成されるように、大気圧プラズマ処理において、大気圧プラズマ処理装置で発生したプラズマを樹脂フィルムの表面に対して照射する時間、印加電力、周波数などを調整して行うことができる。
大気圧プラズマ処理において、プラズマを樹脂フィルムの表面に対して照射する時間、印加電力、周波数などの処理条件について、当該樹脂フィルムと基準フィルムとを用いて探索する方法は、上述したとおりである。
【0053】
(エージング処理)
本実施形態の製造方法は、前記貼合工程後に、積層体を常温で10日~1ヶ月間、または40~60℃で1~3日間静置するエージング工程を含むことが好ましい。これにより、接着力を増大させることができる。ここで、常温とは、例えば15~25℃の範囲内で選択された温度範囲が挙げられる。
なお、熱圧着貼合工程が包装材料積層体の製造の最後の工程でなくともよい。必要があれば、印刷後のように包装材料積層体の製造途中で上記エージング工程を実施することは可能である。
【実施例
【0054】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0055】
(測定機器、測定方法)
表面改質の効果を確認するために、次の実験を実施した。大気圧プラズマ処理による処理条件は、表面改質例ごとに挙げた。なお、印加電力は装置規模に依存するため、以下の表面改質例において挙げた印加電力の値は、絶対的な数値としてよりも、相対的な強弱を示す参考として理解すべきである。
【0056】
・接着(剥離)強度の測定:JIS K 6854-1「接着剤 はく離接着強さ試験方法 第一部:90度はく離」に規定された測定方法に準じた。
・ボイル・レトルト試験:四方袋(130mm×170mm)に水200mlを充填して、ボイル条件は95℃×40min、レトルト条件は熱水シャワー式121℃×30minの処理を行った後、積層体の外観を評価した。
【0057】
(熱接着性改質層の良否の確認)
本実施例による包装材料積層体を作製するに際して、まず、各種の熱可塑性樹脂フィルムに対して、大気圧プラズマ処理装置を用いて表面改質を行った後、熱接着性改質層の良否が確認された基材を準備する。
ここで、熱接着性改質層が形成された基材Aと、その基材Aと異なる種類の熱可塑性樹脂フィルムであってエアコロナ処理されてなる基材Bとを用い、基材Aの熱接着性改質層が形成された面と、基材Bのエアコロナ処理面を対向させて、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、熱圧着させて試験積層体を得た後、該試験積層体の貼合面における接着力を測定して、基材Aの熱接着性改質層の良否が確認される。
基材Aの試験積層体の貼合面における接着力が低い値であると、その基材Aを用いて表面改質により包装材料積層体を作製した場合に不具合が生じることがある。例えば、その基材Aが用いられた包装材料積層体を使用して包装容器を作製した場合、包装材料積層体の貼合面からの剥離が生じることや、落下衝撃に耐えられないで破損するなど、実用的な包装材料積層体を得ることが困難となる。
【0058】
従って、本実施例による包装材料積層体の製造方法を実施するには、事前に、使用する大気圧プラズマ処理装置を用いて表面改質による熱接着性改質層が形成された基材Aの、熱接着性改質層の形成状態が適切であるかどうかを確認して置く必要がある。
なお、熱接着性改質層の形成状態が適切であるかどうかは、その基材Aと異なる種類の熱可塑性樹脂フィルムであってエアコロナ処理されてなる基材Bとを用い、基材Aの熱接着性改質層が形成された面と、基材Bのエアコロナ処理面を対向させて、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、熱圧着させて試験積層体を得た後、該試験積層体の貼合面における接着力が所定値を超えているかどうかで判定される。
【0059】
(大気圧プラズマ処理による表面改質例1)
トップコートありアルミナ蒸着PETフィルムを、大気圧プラズマ処理装置を用いて表面改質した。処理条件は、照射時間0.13s、印加電力2.0kW、周波数30kHzである。
厚みが12μmのトップコートありアルミナ蒸着PETフィルム(東レフィルム加工株式会社製、商品名;1011HG-CR)を用いて、大気圧プラズマ処理装置にて表面改質処理を行い、表面改質例1の表面改質されたトップコートありアルミナ蒸着PETフィルムを得た。
次に、表面改質例1の樹脂フィルムの熱接着性改質層が形成された表面と、市販されているエアコロナ処理された未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルム(タマポリ株式会社製未延伸ポリエチレンフィルム、商品名;SK615P)のエアコロナ処理面とを対向させて、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、温度160℃、加圧力0.4MPaで10秒間保持して加熱圧着し、表面改質例1のヒートシール層の積層体を得た。得られた表面改質例1のヒートシール層の積層体は、はく離強度の測定値が12.9N/25.4mmであった。
【0060】
(大気圧プラズマ処理による表面改質例2)
大気圧プラズマ処理装置での、大気圧プラズマの照射時間、印加電力、周波数を弱い方向に変更した以外には表面改質例1と同じ操作を行い、表面改質例2の表面改質されたトップコートありアルミナ蒸着PETフィルムを得た。処理条件は、照射時間0.01s、印加電力10W、周波数13.56MHzである。
次に、得られた表面改質例2の樹脂フィルムを用いて、表面改質例1と同一の条件で、市販されているエアコロナ処理された未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルムと貼合して、表面改質例2のヒートシール層の積層体を得た。得られた表面改質例2のヒートシール層の積層体は、はく離強度の測定値が4.9N/25.4mmであった。
【0061】
以上のとおり、大気圧プラズマ処理装置を用いて、表面改質例1~2の表面改質された樹脂フィルムを得た。得られた表面改質例1~2の熱接着性改質層と、エアコロナ処理された樹脂フィルムとを、熱圧着により貼合し、表面改質例のヒートシール層の積層体を得た。
得られた表面改質例1~2のヒートシール層の積層体について、はく離強度を測定した結果を、表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
次に、得られた表面改質例の表面改質されたフィルムと、熱可塑性樹脂フィルムとを対向させ、接着剤及びアンカーコート剤を塗布することなく、溶融樹脂フィルムの、表面改質されたフィルムと合わさる面にオゾン処理を行いながら、溶融樹脂フィルムを異なるフィルムの間に押し出した後、冷却ニップロールにより貼合(フィルムサンド)して実施例1~3及び比較例1の包装材料積層体を作製した。
また、表面改質により作製された包装材料積層体と比較するため、従来技術であるアンカーコート剤を用いたフィルムサンド方式により貼合して比較例2の積層体を作製した。
【0064】
(実施例1)
上記の表面改質例1のトップコートありアルミナ蒸着PETフィルムの熱接着性改質層が形成された表面と、市販されているエアコロナ処理された未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム(東レフィルム加工株式会社製未延伸ポリプロピレンフィルム、商品名;トレファンZK207)のエアコロナ処理面とを対向させて、接着剤及びアンカー剤を塗布することなく、80m/min、320℃で溶融樹脂フィルムの熱接着性改質層と合わさる面にオゾン処理を行いながら、溶融樹脂フィルムを異なるフィルムの間に押し出した後、冷却ニップロールにより0.23MPaで貼合(フィルムサンド)して、実施例1の包装材料積層体を得た。得られた実施例1の包装材料積層体は、はく離強度の測定値が12.0N/25.4mmであった。また、得られた実施例1の包装材料積層体を用いて四方シール袋の包装容器を作製した後、包装容器に関する各種の試験を行った。
【0065】
(実施例2)
上記の表面改質例1のトップコートありアルミナ蒸着PETフィルムの熱接着性改質層が形成された表面と、市販されているエアコロナ処理された未延伸ポリエチレン(PE)樹脂フィルム(オカモト株式会社製未延伸ポリエチレンフィルム、商品名;LR124)のエアコロナ処理面とを対向させて、接着剤及びアンカー剤を塗布することなく、80m/min、320℃で溶融樹脂フィルムの熱接着性改質層と合わさる面にオゾン処理を行いながら、溶融樹脂フィルムを異なるフィルムの間に押し出した後、冷却ニップロールにより0.23MPaで貼合(フィルムサンド)して、実施例2の包装材料積層体を得た。得られた実施例2の包装材料積層体は、はく離強度の測定値が11.0N/25.4mmであった。また、得られた実施例2の包装材料積層体を用いて四方シール袋の包装容器を作製した後、包装容器に関する各種の試験を行った。
【0066】
(実施例3)
上記の表面改質例1のトップコートありアルミナ蒸着PETフィルムの熱接着性改質層が形成された表面と、環状ポリオレフィンフィルムとを対向させて、接着剤及びアンカー剤を塗布することなく、80m/min、320℃で溶融樹脂フィルムの熱接着性改質層と合わさる面にオゾン処理を行いながら、溶融樹脂フィルムを異なるフィルムの間に押し出した後、冷却ニップロールにより0.23MPaで貼合(フィルムサンド)して、実施例3の包装材料積層体を得た。得られた実施例3の包装材料積層体は、はく離強度の測定値が12.5N/25.4mmであった。また、得られた実施例3の包装材料積層体を用いて四方シール袋の包装容器を作製した後、包装容器に関する各種の試験を行った。
【0067】
(比較例1)
上記の表面改質例2のトップコートありアルミナ蒸着PETフィルムの熱接着性改質層が形成された表面と、市販されているエアコロナ処理された未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム(東レフィルム加工株式会社製未延伸ポリプロピレンフィルム、商品名;トレファンZK207)を用いて、実施例1と同一の条件でフィルムサンドによる貼合を行い、比較例1の包装材料積層体を得た。得られた比較例1の包装材料積層体は、はく離強度の測定値が4.9N/25.4mmであった。また、得られた比較例1の包装材料積層体を用いて四方シール袋の包装容器を作製した後、包装容器に関する各種の試験を行った。
【0068】
(比較例2)
従来技術により、厚みが12μmのトップコートありアルミナ蒸着PETフィルム(東レフィルム加工株式会社製、商品名;1011HG-CR)のトップコート面と、市販されているエアコロナ処理された未延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム(東レフィルム加工株式会社製未延伸ポリプロピレンフィルム、商品名;トレファンZK207)のエアコロナ処理面とを対向させて、アンカーコート剤を塗布した後に、溶融樹脂フィルムのトップコート面と合わさる面にオゾン処理を行いながら、溶融樹脂フィルムを異なるフィルムの間に押し出した後、冷却ニップロールにて貼合(フィルムサンド)してエージングを経て比較例2の包装材料積層体を得た。得られた比較例2の包装材料積層体は、はく離強度の測定値が15.0N/25.4mmであった。また、得られた比較例2の包装材料積層体を用いて四方シール袋の包装容器を作製した後、包装容器に関する各種の試験を行った。
【0069】
表2は、実施例1~3及び比較例1~2の包装材料積層体の層構成をまとめた表である。表3は、実施例1~3及び比較例1~2の四方シール袋の包装体(包装容器)について行った各種試験の結果である。
比較例2は、従来技術によるアンカーコート剤を用いたフィルムサンド方式で作製した積層体を用いて作製した包装容器の試験結果である。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
実施例1~3は、表面改質によるフィルムサンド方式で作製した包装材料積層体を用い作製した包装体(包装容器)の試験結果である。表面改質による包装容器である実施例1~3の試験結果は、従来技術により作製した包装体(包装容器)である比較例2の試験結果と比較しても、同等以上の性能であることが確認できる。したがって、表面改質による包装材料積層体は、従来技術によるアンカーコート剤を用いたフィルムサンド方式による包装材料積層体と同等レベル以上の性状を有しており、包装体(包装容器)の構成材料として何ら問題を生じることなく利用することが可能である。
【0073】
また、実施例1~3の包装容器についてボイル試験を行い、実施例1、3の包装容器についてレトルト試験を行った。いずれも、デラミ(貼り合わせ面からの剥離)現象の発生が起きておらず、実用上問題ないレベルの耐久性を有している。
【0074】
また、表4は、従来技術によるアンカーコート剤を用いたフィルムサンド方式で作製した積層体を用いて作製した包装容器である比較例2の、フィルムサンド方式で、基材巾1,000mmで1,000m加工した場合に必要とされる溶剤量(kg)を算出したものである。
【0075】
【表4】
【0076】
従来技術によるアンカーコート剤を用いたフィルムサンド加工に必要とされる溶剤量は2.3(kg)であった。これに対して、表面改質の場合には、アンカーコート剤を使用しないため、溶剤も全く使用しないで包装容器を作製することが可能になった。
アンカーコート剤を使用しないため、ヒートシール層の残留溶剤を低減でき、内容物へのコンタミを防いで、成分への悪影響を抑制することにもつながる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、フィルムに対して、接着剤及びアンカーコート剤を用いることなくフィルムサンドにより貼合した積層体を得るために必要な、大気圧プラズマ処理されたフィルムの熱接着性改質層の形成状態の良否を判定することにより、大気圧プラズマ処理を効果的に実施することが可能となる。
また、本発明によれば、接着剤及びアンカーコート剤を用いることなくフィルムサンドにより貼合された積層体の製造方法、積層体、及びそれを用いて作製した包装容器を得ることができる。
本発明による包装材料積層体は、化粧シート、光学フィルム、保護フィルム、包装容器などの各種用途に使用できる。
また、本発明による包装材料積層体を用いて作製される包装容器は、ボイル・レトルト食品、液体調味料、液体洗剤、液体漂白剤、液体ワックス、ヘアケア用品(シャンプー、リンス、コンディショナーなどが含まれる)、薬液、液体状の化粧品等の種々の液体状あるいは水分等の液体を含む製品の包装容器及び詰替え用包装容器、さらには、ボイル・レトルト食品、一般食品、電子レンジ対応食品、電子部品、医療用部品、医療用機器部品、精密機械部品などの各種包装容器に使用できる。
特に、ボイル、レトルト、オートクレーブ等の熱処理適性を有する包装容器材料として好適に用いられる。
また、本発明によれば、接着剤及びアンカーコート剤を用いないで、即ち有機溶剤を全く使用しないで、積層体及びそれを用いた包装容器を作製することが可能となるので、内容品への汚染源となりうる、接着剤及びアンカーコート剤に起因する低分子成分や残留溶剤の問題を解消、内容物へのコンタミを防いで、成分への悪影響を抑制することができる。また、環境対策及び省エネルギー対策として有効である。
【符号の説明】
【0078】
1…第1の基材、2…第2の基材、3…熱可塑性樹脂フィルム、4…ガスバリア層、5…トップコート層、6…熱接着性改質層、7…オレフィン系フィルム、8…エアコロナ処理層、9…熱可塑性樹脂層、10…表面改質による包装材料積層体、11…印刷層、20…印刷層を有する包装材料積層体、21…第1の基材のロール体、22…第2の基材のロール体、23…エアコロナ処理装置、24…大気圧プラズマ処理装置、25…冷却ニップロール、26…押し出しダイ、27…溶融樹脂フィルム、28…包装材料積層体のロール体、30…アンカーコートによる包装材料積層体、31…アンカーコート剤。
図1
図2
図3
図4