(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】分包機用清掃剤
(51)【国際特許分類】
C11D 7/36 20060101AFI20230608BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20230608BHJP
C01B 25/32 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C11D7/36
A61J3/00 310D
C01B25/32 G
(21)【出願番号】P 2020178002
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520415177
【氏名又は名称】株式会社スモールビレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳村 忠一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 裕子
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-331296(JP,A)
【文献】特開昭60-188496(JP,A)
【文献】飛野幸子,散薬分包機に残置付着する薬物粉末の除去剤の検討,JOURNAL OF THE JAPAN HOSPITAL PHARMACISTS ASSOCIATION,Vol.18、No.7,8,日本,1982年,553-556
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1族元素又は第2族元素の第一リン酸塩、第1族元素又は第2族元素の第二リン酸塩、及びその水和物からなる群から選択される1種以上のリン酸化合物を含有する
分包機用清掃剤であって、
前記分包機用清掃剤全量に対する前記リン酸化合物の含有量が、10質量%以上100質量%以下である、分包機用清掃剤。
【請求項2】
前記リン酸化合物が、第2族元素の第二リン酸塩又はその水和物である、請求項1に記載の分包機用清掃剤。
【請求項3】
分包後の分包機の清掃方法であって、
前記分包機により請求項
1又は2に記載の分包機用清掃剤の分包を行う清掃工程を含む、分包機の清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散剤等の粉粒体を所定量ずつ小分けして包装する分包機に用いられる清掃剤に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末系製剤、例えば散剤、顆粒剤、ドライシロップ等を所定量ずつ小分けにして包装する分包機は、病院や薬局における調剤業務を効率化し、調剤業務を行う上で、必要不可欠なものとなっている。
このような分包機では、取り扱う薬剤の種類が変更されるとき、分包機内に先に取り扱った薬剤が残留していると、残留薬剤が次に取り扱う薬剤に混入して分包される問題がある。特に、小児に対する分包や感さ性の強い薬剤の場合、少量であっても異なる成分の薬剤が混入されることは好ましくない。そのため、取り扱う粉末系製剤の種類の変更に際しては、分包機内部を吸引器等で掃除して先に取り扱った薬剤の残留分を除去したあとに次の薬剤の分包作業が行われている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、掃除機による分包機内部の掃除は、分解できないパーツや掃除機が届かない部分があり、分包機内の薬剤を完全に除去することは困難である。
そのため、調剤で賦形に使用される日局乳糖水和物(乳糖)や制酸剤である重曹等の清掃剤を分包して分包機に残留する薬剤を除去することが行われている(非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】JJHPA, Vol.18, No.7,8, 1932, p.21-24
【文献】立川登美子, 外6名, "散剤調剤におけるクロスコンタミネーションの防止対策", 医療薬学, 一般社団法人日本医療薬学会, 2013年, 39巻, 4号, p.237-244
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、乳糖、重曹等の従来の清掃剤による清掃効果は不十分であることが分かった。さらに、重曹は塩基性であるため、清掃後に分包する薬剤と反応する恐れがある点で好ましくない。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するべくなされたもので、安全性が高く優れた清掃効果を有する分包機用清掃剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、食品又は医薬品の添加剤としても知られているリン酸化合物が清掃効果を有することに着目し、本発明を完成させた。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0009】
[1]
第1族元素又は第2族元素の第一リン酸塩、第1族元素又は第2族元素の第二リン酸塩、及びその水和物からなる群から選択される1種以上のリン酸化合物を含有する、分包機
用清掃剤。
[2]
前記リン酸化合物が、第2族元素の第二リン酸塩又はその水和物である、[1]に記載の分包機用清掃剤。
[3]
前記分包機用清掃剤全量に対する前記リン酸化合物の含有量が、10質量%以上100質量%以下である、[1]又は[2]に記載の分包機用清掃剤。
[4]
分包後の分包機の清掃方法であって、
前記分包機により[1]~[3]のいずれかに記載の分包機用清掃剤の分包を行う清掃工程を含む、分包機の清掃方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、安全性が高く優れた清掃効果を有する分包機用清掃剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例2-1及び比較例2-2~2-3における、清掃剤での清掃によるテオフィリンの回収率を示すグラフである。
【
図2】実施例3-1及び比較例3-2~3-3における、清掃剤での清掃によるニコチン酸アミドの回収率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
【0013】
1.分包機用清掃剤
本発明の第1の実施態様は、第1族元素又は第2族元素の第一リン酸塩、第1族元素又は第2族元素の第二リン酸塩、及びその水和物からなる群から選択される1種以上のリン酸化合物を含有する分包機用清掃剤(以下、単に「清掃剤」と称することがある。)である。
【0014】
本実施形態に係る清掃剤は、散剤、顆粒剤、ドライシロップ等の粉末状の製剤、サプリメント等(以下、「散剤」と総称することがある。)を分包するための分包機の清掃に用いられる。本実施形態に係る清掃剤を使用することのできる分包機としては、特に制限されず、例えばフィーダーにより散剤を一定速度で回転する円盤に供給し、円盤上の散剤をかきとり板で所定の分割数に等分して分配する公知の分包機が挙げられる。また、分包機で分包する散剤、すなわち、清掃剤による除去の対象となる散剤は、特に限定されず、例えばテオドールドライシロップ(テオフィリン製剤)のような有色散剤、ニコチン酸アミドのような付着性の高い散剤等が挙げられる。
【0015】
1-1.リン酸化合物
第1族元素又は第2族元素の第一リン酸塩、第1族元素又は第2族元素の第二リン酸塩、及びこれらの水和物は、人体に対する安全性が高く、食品添加物や医薬品添加物として用いられることがある。例えば、第二リン酸カルシウムは医薬品用の賦形剤として広く用いられている。本実施形態に係る清掃剤は、このようなリン酸化合物を清掃成分として含むため、安全性が高い。
【0016】
リン酸化合物は、第1族元素又は第2族元素の第一リン酸塩、第1族元素又は第2族元
素の第二リン酸塩、及びその水和物からなる群から選択される1種以上の化合物である。2種以上のリン酸化合物を併用する場合、当該リン酸化合物の組み合わせ及び比率は特に限定されず、任意に決定することができる。
【0017】
1-1-1.第1族元素若しくは第2族元素の第一リン酸塩又はその水和物
第1族元素又は第2族元素の第一リン酸塩は、MH2PO4又はM’(H2PO4)2で表される化合物である。
上記式中、Mは、第1族元素を表し、食品添加物又は医薬品添加物としての安全性の観点から、ナトリウム又はカリウムであることが好ましく、ナトリウムであることがより好ましい。また、M’は、第2族元素を表し、食品添加物又は医薬品添加物としての安全性の観点から、カルシウム又はマグネシウムであることが好ましく、カルシウムであることがより好ましい。
【0018】
具体的な第1族元素の第一リン酸塩としては、第一リン酸リチウム、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム等が挙げられ、好ましくは第一リン酸ナトリウム又は第一リン酸カリウム、より好ましくは第一リン酸ナトリウムである。
具体的な第2族元素の第一リン酸塩としては、第一リン酸マグネシウム、第一リン酸カルシウム、第一リン酸バリウム等が挙げられ、好ましくは第一リン酸マグネシウム又は第一リン酸カルシウム、より好ましくは第一リン酸カルシウムである。
【0019】
1-1-2.第1族元素若しくは第2族元素の第二リン酸塩又はその水和物
第1族元素又は第2族元素の第二リン酸塩は、M2HPO4又はM’HPO4で表される化合物である。
上記式中、Mは、第1族元素を表し、食品添加物又は医薬品添加物としての安全性の観点から、ナトリウム又はカリウムであることが好ましく、ナトリウムであることがより好ましい。また、M’は、第2族元素を表し、食品添加物又は医薬品添加物としての安全性の観点から、カルシウム又はマグネシウムであることが好ましく、カルシウムであることがより好ましい。
リン酸化合物は、第1族元素若しくは第2族元素の第二リン酸塩又はその水和物であることが好ましく、第2族元素の第二リン酸塩又はその水和物であることがより好ましい。
【0020】
具体的な第1族元素の第二リン酸塩としては、第二リン酸リチウム、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム等が挙げられ、好ましくは第二リン酸ナトリウム又は第二リン酸カリウム、より好ましくは第二リン酸ナトリウムである。
具体的な第2族元素の第二リン酸塩としては、第二リン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、第二リン酸バリウム等が挙げられ、好ましくは第二リン酸マグネシウム又は第二リン酸カルシウム、より好ましくは第二リン酸カルシウムである。特に、第二リン酸カルシウムは、pHが中性域であるため、清掃後に分包する散剤への影響が少ない点でも清掃成分として好ましい。
【0021】
1-1-3.リン酸化合物の形態
リン酸化合物の形状、サイズ等の形態は、分包機により分包することができる限り特に限定されず、任意の形態を選択することができる。
リン酸化合物の形状としては、針状、柱状、板状、球状等の形状が挙げられ、高い清掃効果が得られ、清掃後に分包機に残量しにくい点で、好ましくは球状の形状である。なお、本明細書において、球状の形状とは、真球のみならず、擬似真球、扁球、及び擬似扁球の形状を含むものとする。
【0022】
リン酸化合物のサイズは、清掃効果の観点から、体積基準のメジアン径(D50)で通常10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好まし
くは50μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、より一層好ましくは100μm以下、特に好ましくは70μm以下である。
なお、リン酸化合物の体積基準のメジアン径(以下、単に「メジアン径」と称することがある。)は、レーザー回折式粒度分布計、例えばHORIBA製レーザー回折粒度分布計LA-950を用い、乾式法(圧空high、吸引auto)により測定される。
【0023】
上記形態のリン酸化合物としては、市販されているリン酸化合物を用いることができ、食品用グレード又は医薬品用グレードのリン酸化合物を好適に用いることができる。
【0024】
1-2.分包機用清掃剤の組成
本実施形態に係る清掃剤の組成は、上述のリン酸化合物を含有している限り、特に限定されないが、清掃剤全量に対するリン酸化合物の含有量は、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、また、通常100%以下である。
このようにリン酸化合物が清掃剤の主成分であることにより、清掃剤の安全性を確保することができる。
【0025】
本実施形態に係る清掃剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、リン酸化合物以外の清掃成分又はその他成分を含有していてもよい。リン酸化合物以外の清掃成分としては、例えば乳糖、セルロース、重曹、バレイショ澱粉、トウモロコシ澱粉等の公知の清掃成分が挙げられる。リン酸化合物以外の清掃成分は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。リン酸化合物以外の清掃成分の清掃剤全量に対する含有量は、通常0質量%以上90質量%未満である。
【0026】
1-3.分包機用清掃剤の製造方法
本実施形態に係る清掃剤の製造方法は、特に限定されず、例えば上述したリン酸化合物、並びに必要に応じてリン酸化合物以外の清掃成分及びその他成分を同時又は順不同で混合する方法が挙げられる。混合は、タンブラーミキサー、ドラムミキサー、リボンミキサー、V型混合機等の公知の混合機を用いて行うことができる。
清掃剤がリン酸化合物以外の清掃成分及びその他成分を含有しない場合、市販のリン酸化合物をそのまま又は分級して本実施形態の清掃剤として用いることができる。
【0027】
2.分包機の清掃方法
本発明の第2の実施形態は、分包後の分包機を清掃する方法であって、分包機により本発明の第1の実施形態に係る分包機用清掃剤の分包を行う清掃工程を含む。
【0028】
2-1.清掃工程
清掃工程は、本発明の第1の実施形態に係る清掃剤を分包機に投入し、当該分包機の通常の分包操作を行うことにより実施される。
以下、清掃剤を分包機に投入し、分包機内部で回転する円盤上に供給された清掃剤を所定の分割数に等分し、分包する一連の操作を1回の分包操作として清掃工程について説明する。
【0029】
1回の分包操作における清掃剤の分割数、分包量、投入量等は、特に限定されず、清掃工程前に分包を行った散剤の種類及び分包量、清掃工程後に分包する散剤の種類、散剤残留量、清掃成分等に応じて適宜決定することができる。
具体的には、清掃剤の分包量は、1包あたり通常0.2g以上、好ましくは0.3g以上、より好ましくは0.4g以上、また、通常2.0g以下、好ましくは1.5g以下、より好ましくは1.0g以下である。
清掃剤の投入量は、通常2.5g以上、好ましくは3.0g以上、より好ましくは4.
0g以上、さらに好ましくは5.0g以上、また、通常20g以下、このましくは15g以下、より好ましくは10g以下、さらに好ましくは8.0g以下である。
分包機における投入された清掃剤の分割数は、清掃剤の分包量及び投入量等に応じて決定すればよく、通常5以上30以下である。
【0030】
また、清掃工程における分包操作の実施回数は、特に限定されず、清掃工程前に分包を行った散剤の種類、清掃工程後に分包する散剤の種類、散剤残留量、清掃成分等に応じて決定してもよく、散剤の除去量が一定値以下となるまで分包操作を繰り返してもよい。具体的な分包操作の回数としては、通常1回以上10回以下である。
【0031】
2-2.その他清掃工程
本実施形態に係る清掃方法は、本発明の第1の実施形態に係る清掃剤の分包を行う清掃工程の他に、必要に応じてその他清掃工程を含んでいてもよい。その他清掃工程としては、他の清掃剤の分包による清掃、吸引清掃、清拭、圧縮空気の吹き付けによる清掃等が挙げられる。その他清掃工程は、本発明の第1の実施形態に係る清掃剤の分包を行う清掃工程の前後のいずれか又は両方のタイミングで行うことができ、分包操作を複数回行う場合には各回の間に行うこともできる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明について、実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
<実施例1-1>
分包機(タカゾノ社製円盤型自動分割分包機,Dias-NADIA(HP-93HSUT))を用いて、テオドールドライシロップ20%(田辺三菱製薬株式会社製;以下「TDS」と称する。)を1包あたり0.3gずつ14包に分包する操作を連続して5回行った。
【0034】
分包後、清掃剤として第二リン酸カルシウム(協和化学工業株式会社製「FF-100」;メジアン径54.0μm)4.2gを分包機に投入し、1包あたり0.3gずつ14包に分包する操作を1回行うことで、分包機の清掃を行った。
【0035】
<実施例1-2>
清掃剤として第二リン酸カルシウム(Innophos社製「DI-TAB」;メジアン径183.6μm)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして分包機の清掃を行った。
【0036】
<比較例1-1>
実施例1-1と同様にTDSの分包を行い、清掃剤による分包機の清掃は行わなかった。
【0037】
(清掃効果の評価)
まず、実施例1-1~1-2及び比較例1-1の操作を行った後の分包機のフィーダー、かきとり板、せきとめ板、円盤、及びSHホッパーを清拭した。具体的には、各部品とも、1枚のスワブパッドの片面を用いて拭き取った後、もう1枚のスワブパッドで拭き取った。
次に、これら2枚のスワブパッドに付着したテオフィリンの量を下記参考文献1の方法に従ってHPLCにより測定し、分包機の各部品におけるテオフィリン残留量を算出した。そして、上記5個の部品におけるテオフィリン残留量の合計を、分包機へのテオフィリンの総残留量として求めた。結果を表1に示す。
【0038】
参考文献1:Tadakazu Tokumura, Kyoko Nishio, Takuro Kurita, Validated HPLC Theophylline Assay Method for Cleaning Validation on an Automatic Packaging Machine, Sch. Acad. J. Pharm., 7(9) 414-416 (2018).
【0039】
【0040】
表1より、清掃剤として第二リン酸カルシウムを用いると、高い清掃効果が得られることがわかった(実施例1-1及び1-2)。また、第二リン酸カルシウムのメジアン径が54.0μmの場合に、183.6μmの場合よりも高い清掃効果を示すことが確認された。
【0041】
<実施例2-1>
分包機(タカゾノ社製円盤型自動分割分包機,Dias-NADIA(HP-93HSUT))を用いて、TDSを1包あたり0.3gずつ14包に分包する操作を連続して5回行った。
【0042】
分包後、分包機に付属の吸引掃除機を用いて投入ホッパー及びフィーダーをそれぞれ15秒間ずつ吸引清掃した。
続いて、清掃剤として第二リン酸カルシウム(協和化学工業株式会社製「FF-100」;メジアン径54.0μm)7.0gを分包機に投入し、1包あたり0.5gずつ14包に分包する操作を連続して5回行うことで、分包機の清掃を行った。
さらに、分包機に付属の吸引掃除機を用いて投入ホッパー及びフィーダーをそれぞれ15秒間ずつ吸引清掃した。
【0043】
<比較例2-1>
実施例2-1と同様にTDSの分包を行い、清掃剤による分包機の清掃は行わずに、分包機に付属の吸引掃除機を用いて投入ホッパー及びフィーダーをそれぞれ15秒間ずつ吸引清掃した。
【0044】
<比較例2-2>
清掃剤として乳糖水和物を用いた以外は、実施例2-1と同様にして分包機の清掃(吸引清掃を含む。)を行った。
【0045】
<比較例2-3>
清掃剤として重曹を用いた以外は、実施例2-1と同様にして分包機の清掃(吸引清掃を含む。)を行った。
【0046】
(清掃効果の評価)
まず、実施例2-1及び比較例2-1~2-3の操作を行った後の分包機の投入ホッパー、フィーダー、ブラシ、かきとりカバー、かきとり板、かきとりステー、せきとめ板、円盤、ホッパーバルブ、及びSHホッパーを清拭した。具体的には、各部品とも、1枚の
スワブパッドの片面を用いて拭き取った後、もう1枚のスワブパッドで拭き取った。これら2枚のスワブパッドに付着したテオフィリンの量を参考文献1の方法に従ってHPLCにより測定し、分包機の各部品におけるテオフィリン残留量を算出した。そして、上記10個の部品におけるテオフィリン残留量の合計を、分包機へのテオフィリンの総残留量として求めた。
【0047】
さらに、清掃剤により分包機から除去されたテオフィリンの総量をテオフィリンの回収量とし、分包機へのテオフィリンの総残留量とテオフィリンの回収量との合計を100%としたときのテオフィリンの回収量の割合(回収率)を求めた。結果を表2及び
図1に示す。なお、テオフィリンの回収量とは、分包操作各回後の清掃剤中のテオフィリン量を足し合わせた量である。
【0048】
【0049】
図1より、清掃剤として第二リン酸カルシウムを用いた場合(実施例2-1)のテオフィリン回収率43%であり、乳糖水和物を用いた場合(比較例2-2)の27%や重曹を用いた場合(比較例2-3)の34%よりも高く、第二リン酸カルシウムの清掃効果が高いことが確認された。
【0050】
<実施例3-1>
分包機(タカゾノ社製円盤型自動分割分包機,Dias-NADIA(HP-93HSUT))を用いて、ニコチン酸アミド散10%(ゾンネボード製薬株式会社製「ゾンネ」)を1包あたり0.5gずつ14包分包する操作を連続して5回行った。
【0051】
分包後、分包機に付属の吸引掃除機を用いて投入ホッパー及びフィーダーをそれぞれ15秒間ずつ吸引清掃した。
続いて、清掃剤として第二リン酸カルシウム(協和化学工業株式会社製「FF-100」;メジアン径54.0μm)7.0gを分包機に投入し、1包あたり0.5gずつ14包分包する操作を連続して5回行うことで、分包機の清掃を行った。
さらに、分包機に付属の吸引掃除機を用いて投入ホッパー及びフィーダーをそれぞれ15秒間ずつ吸引清掃した。
【0052】
<比較例3-1>
実施例3-1と同様にゾンネの分包を行い、清掃剤による分包機の清掃は行わずに、分包機に付属の吸引掃除機を用いて投入ホッパー及びフィーダーをそれぞれ15秒間ずつ吸引清掃した。
【0053】
<比較例3-2>
清掃剤として乳糖水和物を用いた以外は、実施例3-1と同様にして分包機の清掃(吸引清掃を含む。)を行った。
【0054】
<比較例3-3>
清掃剤として重曹を用いた以外は、実施例3-1と同様にして分包機の清掃(吸引清掃を含む。)を行った。
【0055】
(清掃効果の評価)
まず、実施例3-1及び比較例3-1~3-3の操作を行った後の分包機の投入ホッパー、フィーダー、ブラシ、かきとりカバー、かきとり板、かきとりステー、せきとめ板、円盤、ホッパーバルブ、及びSHホッパーを清拭した。具体的には、各部品とも、1枚のスワブパッドの片面を用いて拭き取った後、もう1枚のスワブパッドで拭き取った。これら2枚のスワブパッドに付着したニコチン酸アミドの量を下記参考文献2の方法に従ってHPLCにより測定し、分包機の各部品におけるニコチン酸アミド残留量を算出した。そして、上記10個の部品におけるニコチン酸アミド残留量の合計を、分包機へのニコチン酸アミドの総残留量として求めた。
【0056】
参考文献2:Tadakazu Tokumura, Ai Yasumoto, Takuro Kurita, A Validated HPLC Nicotinamide Assay Method for Cleaning Validation on an Automatic Packaging Machine,
Sch. Acad. J. Pharm., 7(12) 470-473 (2018).
【0057】
さらに、清掃剤により分包機から除去されたニコチン酸アミドの総量をニコチン酸アミドの回収量とし、分包機へのニコチン酸アミドの総残留量とニコチン酸アミドの回収量との合計を100%としたときのニコチン酸アミドの回収量の割合(回収率)を求めた。結果を表3及び
図2に示す。なお、ニコチン酸アミドの回収量とは、分包操作各回後の清掃剤中のニコチン酸アミド量を足し合わせた量である。
【0058】
【0059】
図2より、清掃剤として第二リン酸カルシウムを用いた場合(実施例3-1)のニコチン酸アミドの回収率は34%であり、乳糖水和物を用いた場合(比較例3-2)の27%や重曹を用いた場合(比較例3-3)の27%よりも高く、清掃効果に優れていることがわかった。