(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-07
(45)【発行日】2023-06-15
(54)【発明の名称】成形教育装置、成形教育方法および成形教育プログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20230608BHJP
G09B 19/24 20060101ALI20230608BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
G09B19/24 Z
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2019089911
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】望月 章弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅季
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-277320(JP,A)
【文献】特開平04-077219(JP,A)
【文献】特開2017-081071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00 -9/56
G09B 17/00-19/26
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形教育装置であって、
樹脂成形体の所定の形状、材料および成形機における成形条件の入力を受け付ける入力受付部と、
前記成形条件と、前記形状、前記材料および前記成形機における最適な生成条件との乖離率を算出する算出部と、
前記成形条件で、前記材料および前記成形機を用いて前記形状の前記樹脂成形体を成形した場合に、
前記乖離率を用いて前記樹脂成形体が不良となるか否かを判定し、判定結果を出力する判定部と、を有し、
前記算出部は、前記成形条件が所定の下限値および所定の上限値の範囲内の場合、前記成形条件と前記最適な生成条件との差を、前記上限値と前記下限値の差で割って、前記乖離率を算出すること
を特徴とする成形教育装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の成形教育装置であって、
前記判定部は、前記樹脂成形体が不良となるか否かを、複数の種類の成形不良毎に判定し、成形不良と判定された種類に応じた前記樹脂成形体の画像を、前記判定結果に含めること
を特徴とする成形教育装置。
【請求項3】
請求項1または
2に記載の成形教育装置であって、
前記判定部は、前記樹脂成形体が不良となるか否かを、前記樹脂成形体の複数の領域毎に判定すること
を特徴とする成形教育装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の成形教育装置であって、
前記入力受付部は、前記形状、前記材料および前記成形機を選択させる選択画面を、表示すること
を特徴とする成形教育装置。
【請求項5】
コンピュータが行う成形教育方法であって、
樹脂成形体の所定の形状、材料および成形機における成形条件の入力を受け付ける入力受付ステップと、
前記成形条件と、前記形状、前記材料および前記成形機における最適な生成条件との乖離率を算出する算出ステップと、
前記成形条件で、前記材料および前記成形機を用いて前記形状の前記樹脂成形体を成形した場合に、
前記乖離率を用いて前記樹脂成形体が不良となるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで判定した判定結果を出力する出力ステップと、を行
い、
前記算出ステップは、前記成形条件が所定の下限値および所定の上限値の範囲内の場合、前記成形条件と前記最適な生成条件との差を、前記上限値と前記下限値の差で割って、前記乖離率を算出すること
を特徴とする成形教育方法。
【請求項6】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の成形教育装置として、コンピュータを機能させることを特徴とする成形教育プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体の成形を体験学習させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形体を製造する際には、成形機に適切な生成条件を設定する必要がある。成形条件が不適切な場合、成形された樹脂成形体には、湯ジワ、バリ、あばた等の成形不良が発生する。
【0003】
従来、成形条件の設定は、技術者の長年の経験と勘に基づいて行われている。また、 特許文献1には、成形不良の発生を排除した実用性の高い成形条件を出力する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂成形体の成形において、成形条件の不備により様々な成形不良が発生する。そのため、樹脂成形体の成形は、熟練した技術者でないと難しく、多くの樹脂成形体を成形してきた経験と、知識(ある種のセンス)とが必要となる。
【0006】
そのため、経験の乏しい技術者が、いきなり実機で樹脂成形体を成形すると、最適な成形条件を試行錯誤で探すため長い時間を要するとともに、不適切な成形条件で成形された樹脂成形体は成形不良となるため無駄なコストが発生する。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、実際の成形機および材料を用いて樹脂成形体の成形を行うことなく、利用者に適切な成形条件の設定を習得させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、成形教育装置であって、樹脂成形体の所定の形状、材料および成形機における成形条件の入力を受け付ける入力受付部と、前記成形条件で、前記材料および前記成形機を用いて前記形状の前記樹脂成形体を成形した場合に、前記樹脂成形体が不良となるか否かを判定し、判定結果を出力する判定部と、を有する。
【0009】
本発明の一態様は、コンピュータが行う成形教育方法であって、樹脂成形体の所定の形状、材料および成形機における成形条件の入力を受け付ける入力受付ステップと、前記成形条件で、前記材料および前記成形機を用いて前記形状の前記樹脂成形体を成形した場合に、前記樹脂成形体が不良となるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップで判定した判定結果を出力する出力ステップと、を行う
本発明の一態様は、上記成形教育装置として、コンピュータを機能させる成形教育プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、実際の成形機および材料を用いて成形を行うことなく、利用者に適切な成形条件の設定を習得させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る成形教育装置の機能ブロック図である。
【
図7】成形不良となった他の入出力画面の例である。
【
図9】変形例の成形不良判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る成形教育装置1の機能ブロック図である。本実施形態の成形教育装置1は、利用者(学習者)に樹脂成形体の成形を体験学習させるための成形シミュレータである。図示する成形教育装置1は、入力受付部11と、乖離率算出部12と、判定部13と、記憶部14とを備える。成形教育装置1には、例えば、PC、スマートフォン、サーバなどのコンピュータを用いることができる。
【0014】
入力受付部11は、樹脂成形体の所定の形状、材料および成形機における成形条件の入力を受け付ける。本実施形態の入力受付部11は、樹脂成形体の形状、材料および成形機を選択させる選択画面を、図示しないディスプレイに表示し、利用者に選択させる。
【0015】
乖離率算出部12は、利用者が入力した成形条件と、選択画面で選択された形状、材料および成形機における最適な生成条件との乖離率を算出する。
【0016】
判定部13は、利用者が入力した成形条件で、選択された材料および成形機を用いて選択された形状の樹脂成形体を成形した場合に、前記樹脂成形体が不良となるか否かを判定し、判定結果を出力する。本実施形態では、判定部13は、乖離率を用いて樹脂成形体が不良となるか否かを判定する。
【0017】
また、判定部13は、樹脂成形体が不良となるか否かを、複数の種類の成形不良毎に判定し、成形不良と判定された種類に応じた前記樹脂成形体の画像を、判定結果に含めてもよい。判定部13は、樹脂成形体が不良となるか否かを、樹脂成形体の複数のゾーン(領域)毎に判定してもよい。
【0018】
記憶部14には、複数の形状の樹脂成形体の画像と、成形不良か否かを判定するための判定用データとが記憶されている。
【0019】
図2は、記憶部14に記憶される樹脂成形体の画像の例を示す図である。
図2(a)~(c)は、ギヤ(歯車)の形状の樹脂成形体において、成形不良が発生した画像である。ここでは、ギヤの一部のゾーン(領域)の画像を示している。
図2(a)は、「湯ジワ」の成形不良が発生した樹脂成形体の画像である。
図2(b)は、「ショートショット」の成形不良が発生した樹脂成形体の画像である。
図2(c)は、「ショートショット」と「湯ジワ」の複数の成形不良が発生した樹脂成形体の画像である。
【0020】
次に、樹脂成形体の成形不良について説明する。
【0021】
成形不良には、「あばた(Pit Marks)」、「ウェルドライン(Weld Line)」、「ガス焼け(Gas Burn)」、「ガラス浮き出し(Glass Marks)」、「ジェッティング(Jetting)」、「ショートショット(Short Shot)」、「バリ(Flash)」、「湯ジワ(Waving Marks)」、「ブリスター(Blistering)」など、様々な種類の成形不良がある。
【0022】
また、成形不良の種類に応じた対策がある。すなわち、成形不良の種類に応じて成形条件を調整することで当該種類の成形条件を解消することができる。例えば、「湯ジワ」の成形不良の場合は、射出速度を上げ、V-P切替位置(射出から保圧へ切り替わる位置)を下げ、金型温度を上げ、シリンダー温度を下げるなどの成形条件を調整することで、「湯ジワ」が解消される傾向となる。
【0023】
次に、成形教育装置1が行う成形不良判定処理について説明する。
【0024】
図3は、成形不良判定処理のフローチャートである。成形教育装置1の入力受付部11は、学習対象の樹脂成形体の形状、材料および成形機を利用者に選択させるための選択画面をディスプレイ(不図示)に表示し、利用者の入力を受け付ける(S11)。
【0025】
図4は、選択画面の一例を示す図である。図示する選択画面は、複数の樹脂成形体の形状を表示するエリア31と、複数の形状の中からいずれか1つを選択させるエリア32と、複数の材料の中からいずれか1つを選択させるエリア33と、複数の成形機の中からいずれか1つを選択させるエリア34と、成形練習ボタン35とを含む。
【0026】
利用者は、選択画面の各エリア32~34に入力することで、成形シミュレーションを行う所望の形状、材料および成形機を選択し、成形練習ボタン35をクリックする。これにより、入力受付部11は、選択された形状、材料および成形機を取得する。
【0027】
そして、入力受付部11は、成形条件を入力させるための画面をディスプレイに表示し、利用者の入力を受け付ける(S12)。本実施形態では、成形条件を入力するとともに、判定結果(成形結果)を出力する入出力画面を用いる。
【0028】
図5は、入出力画面の一例である。図示する入出力画面は、S11で選択した樹脂成形体の形状を示すエリア51と、当該形状の寸法を示すエリア52と、当該形状における複数のゾーン(領域)を示すエリア53と、複数の種類の成形条件を入力する入力エリア54と、成形ボタン55とを有する。入出力画面のエリア56~59については、後述する。
【0029】
図示する入力エリア54は、ペレットの乾燥条件(PREDRYING CONDITIONS)、シリンダー温度(SET TEMP)、金型温度(MOLD TEMP)、射出時間(INJECT)、冷却時間(COOL)、保圧(HOLD)、射出速度(FILL)、計量(MTG)、V-P切替位置(V-P CHG)などの成形条件を入力するための入力欄を備える。なお、シリンダー温度(SET TEMP)については、利用者は、シリンダーの部位毎(FEED、REAR、MIDDLE等)に設定することができる。保圧(HOLD)については、利用者は、保圧開始後(V-P切替後)の時間毎に複数の段階で保圧力を設定することができる。射出速度(FILL)については、利用者は複数のスクリュー位置毎に設定することができる。計量(MTG)については、利用者はスクリュー回転数(VS)と背圧(BP)を設定することができる。
【0030】
利用者は、入力エリア54に成形条件を入力し、成形ボタン55をクリックする。入力受付部11は、入力エリア54に入力された複数の成形条件を受け付け、成形条件毎に、限界値を超えるか否かを、記憶部14の判定用データを用いて判定する(S13)。記憶部14には、判定用データとして、形状、材料および成形機ごとに、各種の成形条件の限界値(下限値および上限値)が記憶されている。
【0031】
例えば、材料がPOM(ポリオキシメチレン) M90-44で、成形機Aを用いてギヤを成形する場合、金型温度の下限値は30℃で上限値は140℃であり、射出速度の下限値は2mm/secで上限値は100mm/secであり、保圧力の下限値は0MPaで上限値は120MPaとなっている。
【0032】
入力された成形条件のいずれかが限界値を超えている場合(S13:YES)、入力受付部11は、入出力画面にエラーを表示し、利用者に限界値を超える成形条件の再入力を促す(S17)。入力された全ての成形条件が限界値を超えない場合(S13:NO)、すなわち、全ての成形条件が下限値と上限値の範囲内の場合、乖離率算出部12は、各種の成形条件の乖離率を算出する(S14)。
【0033】
乖離率は、利用者が入力した成形条件と、最適値(最適な成形条件)との乖離の割合(偏差)を示す指標である。本実施形態では、乖離率算出部12は、以下の式により、乖離率を算出する。記憶部14には、判定用データとして、各種の成形条件の最適値、上限値および下限値が記憶されている。
【0034】
乖離率=(入力された成形条件-最適値)÷上限値と下限値の幅
例えば、上述の前提(POM M90-44で成形機Aを用いてギヤを成形)における金型温度の場合、入力された成形条件が「30℃」で、最適値が「80℃」で、上限値が「140℃」で下限値が「30℃」の場合、乖離率は以下のとおりである。
【0035】
-45%=(30℃-80℃)÷(140℃-30℃)
また、同様に射出速度の場合、入力した成形条件が「5mm/sec」で、最適値が「15mm/sec」で、上限値が「100mm/sec」で下限値が「2mm/sec」の場合、乖離率は以下のとおりである。
【0036】
-10%=(5mm/sec-15mm/sec)÷(100mm/sec-2mm/sec)
また、同様に保圧力の場合、入力した成形条件が「10MPa」で、最適値が「80MPa」で、上限値が「120MPa」で下限値が「0MPa」の場合、乖離率は以下のとおりである。
【0037】
-58%=(10MPa-80MPa)÷(120MPa-0MPa)
そして、判定部13は、複数の成形条件の乖離率を用いて、成形不良か否かを判定する(S15)。本実施形態では、成形不良の種類ごとに設定された判定式を用いる。記憶部14には、判定用データとして判定式が記憶されている。
【0038】
判定式は、各種の成形条件の乖離率と係数(重み付け係数)の積の和を求める式である。判定部13は、判定式で算出された判定値が、「1」以上の場合は成形不良となると判定し、判定値が「1」未満の場合は成形不良とならないと判定する。
【0039】
例えば、湯ジワの成形不良の判定式は、以下のような式となる。
【0040】
判定値(湯ジワ)=係数A×成形条件1(例えば金型温度)の乖離率+係数B×成形条件2(例えば射出速度)の乖離率+係数C×成形条件3(例えば保圧力)の乖離率+・・・
各係数は、成形機を用いた実際の成形において、所定の成形条件を設定した場合に、樹脂成形体が不良品となる境界(判定値=1)であるとの前提で、その場合の各乖離率と各係数の積の和が1となる多元連立方程式を解くことで算出される。
【0041】
例えば、成形条件が金型温度、保圧力および射出速度の3つであるとする。この場合、湯ジワの3つの成形条件の係数A~Cは、下記の式1~3の3元連立方程式から求める。なお、式1~3の金型温度、保圧力、射出速度の設定値および乖離率は以下の表のとおりである。
【0042】
式1:係数A×(-0.15)+係数B×(-0.05)+係数C×(-0.08)=1
式2:係数A×(0.18)+係数B×(-0.07)+係数C×(-0.42)=1
式3:係数A×(-0.36)+係数B×(0.08)+係数C×(-0.58)=1
【0043】
【0044】
他の種類の成形不良の係数についても、同様に実際の成形において設定した成形条件を用いて生成した多元連立方程式を解くことで算出する。
【0045】
そして、判定部13は、複数の種類の成形不良ごとに設定された判定値を算出し、判定値が「1」以上の場合は、当該種類の成形不良が発生すると判別し、判定値が「1」未満の場合は、当該種類の成形不良が発生しないと判別する。
【0046】
また、本実施形態では、判定部13は、樹脂成形体のゾーン毎(
図5:エリア53参照)に成形不良が発生する否かを判定する。そのため、判定式は、ゾーン毎および成形条件の種類毎に記憶部14に記憶され、判定部13は、これらの判定式から算出される判定値を用いて成形不良が発生するか否かを判定する。
【0047】
そして、判定部13は、判定結果を出力する(S16)。具体的には、判定部13は、入出力画面のエリア56~59に、判定結果に応じたデータを設定し、ディスプレイに表示する。
【0048】
図6は、成形不良が発生した入出力画面の一例である。
図6のエリア51~55は、
図5のエリア51~55と同様である。図示する入出力画面は、成形後の樹脂成形体の画像を示すエリア56と、関連情報を示すエリア57と、射出圧力グラフ58と、成形不良の内容を示すエリア59とを含む。
【0049】
判定部13は、エリア56に、エリア54の成形条件で成形した場合の樹脂成形体の画像を設定する。ここでは、エリア53で示すゾーン毎に樹脂成形体の画像を設定する。図示する例では、判定部13は、ゾーン1では、ジェッティング(Jetting)の成形不良が発生すると判定し、記憶部14に記憶された画像データの中から、ゾーン1でジェッティングが発生した画像を選択し、エリア56のゾーン1に設定する。また、ゾーン2~4については、判定部13は、湯ジワ(Waving Marks)の成形不良が発生すると判定し、記憶部14の画像データの中から、ゾーン2~4の湯ジワが発生した画像をそれぞれ選択し、エリア56のゾーン2~4にそれぞれ設定する。
【0050】
判定部13は、エリア57に、入力された成形条件で成形した場合に、成形機および樹脂成形体の状態を示す関連情報を設定する。関連情報は、例えば、クッション量(Cushion)、射出時間(Injection time)、計量時間(Metering Time)、成形サイクル時間(Molding Cycle Time)、樹脂成形体の重さ(Weight)などである。判定部13は、入力された成形条件を用いてシミュレーション(数式、関数)を実行することで、関連情報を算出する。
【0051】
判定部13は、エリア58に、実際の成形機で表示されるのと同様の射出圧力グラフ58を設定する。判定部13は、入力された成形条件を用いてシミュレーションすることで、出射圧力グラフを生成する。
【0052】
判定部13は、エリア59に、樹脂成形体の外観には現れない成形不良を設定する。外観には現れない成形不良には、例えば、乾燥不足(Shortage of predrying)、離形不良(Poor mold releasability)などがある。判定部13は、前述の判定式を用いて、外観には現れない成形不良が発生するか否かを判定し、当該成形不良が発生すると判定した場合は、エリア59に成形不良を設定する。
【0053】
図7は、樹脂成形体の形状には現れない成形不良が発生した入出力画像の一例を示す。図示する入出力画像では、エリア56には、外観上は成形不良が発生していない樹脂成形体の画像が設定されている。一方、エリア57には、乾燥不足(Shortage of predrying)、離形不良(Poor mold releasability)、ゲートシール時間不足(Gate Seal time has not been secured)の成形不良が設定されている。
【0054】
図8は、成形不良が発生せず、樹脂成形体の成形に成功したと判定した場合の入出力画面の一例である。図示する入出力画面では、判定部13は、エリア56に成形不良が発生していない樹脂成形体の画像を設定する。また、判定部13は、エリア59に、成形に成功したことを示すコメント(例えばOK! Good Job!)を設定する。
【0055】
以上説明した本実施形態の成形教育装置1は、樹脂成形体の所定の形状、材料および成形機における成形条件の入力を受け付ける入力受付部11と、前記成形条件で、前記材料および前記成形機を用いて前記形状の前記樹脂成形体を成形した場合に、前記樹脂成形体が不良となるか否かを判定し、判定結果を出力する判定部13とを有する。
【0056】
これにより、本実施形態では、実際の成形機および材料を用いて樹脂成形体の成形を行うことなく、利用者に適切な成形条件の設定を習得させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、実機を用いることなく、成形教育装置1上で成形のシミュレーションを行うことでリアルな成形結果を利用者に提示するため、短い時間で何度も成形条件を調整して成形を繰り返すことができる。これにより、利用者は、短期間に効率よく、また、安全に成形技術を習得することができる。これにより、利用者の利便性を向上することができる。
【0058】
また、利用者が本実施形態の成形教育装置1を用いて成形技術を自習することで、利用者を教育する業務の負荷を低減することができる。
【0059】
<第2の実施形態>
本実施形態の成形教育装置1は、
図1に示す成形教育装置1と同様に、入力受付部11と、乖離率算出部12と、判定部13と、記憶部14とを備える。第1の実施形態では、乖離率を用いて成形不良が発生したか否かを判別したが、第2の実施形態では、学習済みモデルを用いて成形不良が発生したか否かを判別する。この場合、成形教育装置1の記憶部14には、判定用データとして学習済みモデルが記憶される。また、判定部13は、機械学習により生成された学習済みモデルに、形状、材料、成形機および成形条件を入力して、樹脂成形体が不良となるか否かを判定する。
【0060】
学習済みモデルは、利用者により
図4の選択画面で選択された形状、材料および成形機と、
図5の入出力画面で入力された成形条件とが入力されると、成形不良が発生したか否かを出力するように学習されたモデルである。本実施形態では、学習済みモデルは、第1の実施形態と同様に、樹脂成形体のゾーン毎に、複数の種類の成形不良のそれぞれについて、成形不良が発生するか否かを出力する。
【0061】
学習済みモデルは、教師データを用いた機械学習を行うことで生成される。教師データは、例えば、入力データ(形状、材料、成形機、成形条件、ゾーン等)と、複数の種類毎の成形不良の有無を示すラベルと、を対応付けたものである。
【0062】
学習済みモデルは、ニューラルネットワークと、パラメータ(重み付け値、バイアス)とを含む。機械学習は、ニューラルネットワークのパラメータを最適化する処理である。学習前は、パラメータには、初期値が設定されている。本実施形態では、ニューロン(パーセプトロン、ノード)を組み合わせて構成したニューラルネットワークにより、機械学習を行う。具体的には、教師データに含まれる入力データと、ラベルとの組をニューラルネットワークに与え、ニューラルネットワークの出力がラベルと同じになるように、各ニューロンの重み付け値と、バイアスとを変更しながら学習を繰り返す。このようにして、教師データの入力データを学習し、入力データから成形不良を判定するための学習済みモデルを生成する。
【0063】
なお、ニューラルネットワークは、入力層と、中間層と、出力層とを備え、各層はニューロンにより構成される。中間層は1層であっても複数の層で構成されていてもよい。
【0064】
図9は、本変形例の成形不良判定処理のフローチャートである。S21~S23およびS26は、
図3のS11~S13およびS17と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0065】
S24において、判定部13は、学習済みモデルを用いて、成形不良か否かを判定する。具体的には、判定部13は、記憶部14に記憶された学習済みモデル(ニューラルネットワークおよびパラメータ)を読み出し、選択画面で選択された形状、材料および成形機と、入出力画面で入力された成形条件と、ゾーンとを入力層のニューロンにそれぞれ入力して、学習済みモデルの演算を行う。すなわち、入力層に入力された各データが、学習済みモデルのパラメータを用いて演算されながら中間層および出力層へと出力され、最終的に出力層の各ニューロンから、当該ゾーンにおける成形不良が発生するか否かの判定結果が成形条件の種類毎に出力される。
【0066】
そして、判定部13は、学習済みモデルが判定した判定結果を入出力画面に出力する(S25)。なお、判定結果の入出力画面への出力は、
図3のS16と同様である。
【0067】
以上説明した本実施形態では、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、樹脂成形体が不良となるか否かを判定すること。これにより、本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を有する。すなわち、本実施形態では、実際の成形機および材料を用いて樹脂成形体の成形を行うことなく、利用者に適切な成形条件の設定を習得させることができる。
【0068】
なお、上記説明した成形教育装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)と、メモリと、ストレージ(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置と、入力装置と、出力装置とを備える汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。このコンピュータシステムにおいて、CPUがメモリ上にロードされた成形教育装置1用のプログラムを実行することにより、成形教育装置1の各機能が実現される。また、成形教育装置1用のプログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、MOなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0069】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。例えば、上記第2の実施形態の学習済みモデルを用いれば、ある材料とある成形機を用いて、ある形状の樹脂成形体を成形する際に、どのような成形条件であれば成形不良のないものが得られるかを判定することができる。このため、学習済みモデルを、利用者の教育のみならず、材料と形状を入力することで最適な成形条件を成形機が自動的に選択して設定するシステムや、それを搭載した成形機といった実施形態へ応用することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 :成形教育装置1
11:入力受付部
12:乖離率算出部
13:判定部
14:記憶部