(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-08
(45)【発行日】2023-06-16
(54)【発明の名称】制御システムおよびクレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 13/23 20060101AFI20230609BHJP
B66D 5/30 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B66C13/23 H
B66D5/30 B
(21)【出願番号】P 2019189168
(22)【出願日】2019-10-16
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】南園 卓成
(72)【発明者】
【氏名】久木田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田内 了
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 豊
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-180687(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0022588(US,A1)
【文献】特開平06-040677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00- 5/34
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の駆動を制御するインバータおよび前記電動機の駆動軸の回転を機械的に制動する機械式ブレーキ装置のそれぞれに接続された制御装置を備えた制御システムにおいて、
前記電動機の駆動に関する駆動パラメータを取得する駆動パラメータ取得装置と、
前記機械式ブレーキ装置の作動状態を取得するブレーキ作動取得装置とを備え、
前記制御装置により前記インバータが制御する前記電動機の駆動状態は、トルクを発生しないで前記駆動軸の回転が停止した停止状態と、前記駆動軸が回転駆動して駆動力を出力する力行駆動状態と、前記駆動軸が回転駆動して制動力を付与する制動駆動状態と、前記駆動パラメータ取得装置が取得した前記駆動パラメータに基づいたトルクが発生して前記駆動軸の回転が停止した予備励磁状態と、からなり、
前記制御装置が、停止指令に基づいて前記機械式ブレーキ装置を作動させる指令を出す制御と、この指令を出した後に、前記機械式ブレーキ装置が作動しない、あるいは、前記機械式ブレーキ装置が作動したが前記機械式ブレーキ装置により前記駆動軸の回転が停止するように制動力が付与されないことを示す予備ブレーキ作動条件が成立した場合での、前記インバータに前記電動機を前記予備励磁状態にさせる制御
と、の両方の制御を前記停止指令が発せられた後で前記駆動軸の回転速度が零になるより前に行う構成にしたことを特徴する制御システム。
【請求項2】
前記駆動パラメータ取得装置として前記駆動軸の回転速度を取得する回転速度取得装置を備え、
前記機械式ブレーキ装置を作動させる指令を出す制御は、前記停止指令が入力されてから前記回転速度取得装置が取得した前記駆動軸の回転速度が零よりも速い速度に設定された第一設定速度よりも遅くなったときに行われ、
前記予備励磁状態にさせる制御では、前記ブレーキ作動取得装置が取得した前記機械式ブレーキ装置の作動状態と、前記回転速度取得装置が取得した前記駆動軸の回転速度が前記第一設定速度よりも遅く、かつ、零よりも速い速度に設定された第二設定速度まで減速したか否かの判定とに基づいて、前記予備ブレーキ作動条件が成立したか否かを前記制御装置が判定する請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記駆動パラメータ取得装置として前記駆動軸の位置を取得する位置取得装置を備え、
前記駆動パラメータは前記駆動軸の位置からなり、前記予備励磁状態は
前記位置取得装置が取得した前記駆動軸の位置を保持する位置制御が行われた状態である請求項1
または2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記機械式ブレーキ装置の予備として前記電動機が前記予備励磁状態になった場合に、運転手に前記電動機が前記予備励磁状態になったことを警告する警告装置を備える請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の制御システムを備え、索状体が巻き回されたドラムを前記電動機が回転駆動する構成であることを特徴とするクレーン。
【請求項6】
前記電動機が前記予備励磁状態になっている間は、前記制御装置が前記ドラムの回転駆動以外の動作を禁止する制御を行う構成にした請求項5に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムおよびクレーンに関し、より詳しくは、電動機の駆動軸が停止した状態を保持する制御システムおよびクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
機械式ブレーキ装置が電動機の駆動軸の回転を機械的に制動することで、電動機の駆動軸が停止した状態を保持するクレーンの制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この制御装置は機械式ブレーキ装置に電流を供給する回路に問題が生じた場合に機械式ブレーキ装置への電流の供給を強制的に止めることで機械式ブレーキ装置を作動させて駆動軸が停止した状態を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は機械式ブレーキ装置の機械的な故障について何ら対策がとられていない。それ故、機械式ブレーキ装置に機械的な故障が生じて、機械式ブレーキ装置が作動せずに電動機の駆動軸の回転を制動できない事態や機械式ブレーキ装置が作動しても電動機の駆動軸の回転を制動できない事態に対応することができない。
【0005】
本発明の目的は、機械式ブレーキ装置に機械的な故障が生じても電動機の駆動軸が停止した状態を保持する制御システムおよびクレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の制御システムは、電動機の駆動を制御するインバータおよび前記電動機の駆動軸の回転を機械的に制動する機械式ブレーキ装置のそれぞれに接続された制御装置を備えた制御システムにおいて、前記電動機の駆動に関する駆動パラメータを取得する駆動パラメータ取得装置と、前記機械式ブレーキ装置の作動状態を取得するブレーキ作動取得装置とを備え、前記制御装置により前記インバータが制御する前記電動機の駆動状態は、トルクを発生しないで前記駆動軸の回転が停止した停止状態と、前記駆動軸が回転駆動して駆動力を出力する力行駆動状態と、前記駆動軸が回転駆動して制動力を付与する制動駆動状態と、前記駆動パラメータ取得装置が取得した前記駆動パラメータに基づいたトルクが発生して前記駆動軸の回転が停止した予備励磁状態と、からなり、前記制御装置が、停止指令に基づいて前記機械式ブレーキ装置を作動させる指令を出す制御と、この指令を出した後に、前記機械式ブレーキ装置が作動しない、あるいは、前記機械式ブレーキ装置が作動したが前記機械式ブレーキ装置により前記駆動軸の回転が停止するように制動力が付与されないことを示す予備ブレーキ作動条件が成立した場合での、前記インバータに前記電動機を前記予備励磁状態にさせる制御と、の両方の制御を前記停止指令が発せられた後で前記駆動軸の回転速度が零になるより前に行う構成にしたことを特徴する。
【0007】
上記の目的を達成する本発明のクレーンは、上記に記載の制御システムを備え、索状体が巻き回されたドラムを前記電動機が回転駆動する構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機械式ブレーキ装置の予備として電動機を予備励磁状態にする制御を行うことで、機械式ブレーキ装置に機械的な故障が生じても、電動機が予備励磁状態となり駆動軸の回転を電気的に制動して、駆動軸が停止した状態を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】クレーンの実施形態を例示する構成図とそのクレーンが備える制御システムの実施形態を例示するブロック図とを組み合わせた図である。
【
図2】制御システムによるクレーンの制御方法を例示するフロー図である。
【
図5】
図2~
図4で示す制御方法と並列で行われる制御方法を例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の制御システムおよびクレーンの実施形態について説明する。図中では、電気的な接続は図中の一点鎖線で示されて、信号線を介した有線接続と無線通信機器を介した無線接続とを含むものとする。
【0011】
図1に例示するように、本実施形態のクレーン1は制御システム10を備え、コンテナターミナルで荷役作業を行うものである。クレーン1は、吊体2を吊り下げた索状体3が巻き回されたドラム4と、変速機5を介してドラム4を回転駆動する電動機6と、この電動機6の駆動を制御するインバータ7と、電動機6の駆動軸8の回転を機械的に制動する機械式ブレーキ装置9とを備えて構成される。
【0012】
クレーン1は、インバータ7により制御される電動機6により回転駆動するドラム4により索状体3を巻き取るおよび繰り出すことで吊体2を上下に昇降可能であればよく、その種類が限定されるものではない。クレーン1としては脚構造物の上方に支持された桁とこの桁の延在方向に沿って移動するトロリを備えた門型クレーン、岸壁クレーン、およびアンローダが例示される。門型クレーンは桁がコンテナを蔵置する蔵置レーンを跨ぐように構成されて蔵置レーンと運搬車との間で荷役作業を行うクレーンである。岸壁クレーンは桁が海側に張り出すように構成されて船舶と運搬車との間で荷役作業を行うクレーンである。アンローダは桁が海側に張り出すように構成されて船舶とホッパとの間で鉄鋼石や石炭などのばら荷を荷役作業するクレーンである。なお、クレーン1としては、桁やトロリの無いジブクレーンや脚構造物の無い天井クレーンも例示される。
【0013】
吊体2は索状体3に吊り下げられた吊具が吊り荷と接合した場合に吊具および吊り荷(例えば、コンテナ)のことであり、吊具が吊り荷と接合していない場合に吊具のことである。吊具としてはコンテナ用のスプレッダが例示されるが、特に限定されるものではなく、グラブバケット、フックやコイルリフタでもよい。
【0014】
電動機6は駆動軸8の回転速度Vxに加えて駆動軸8の位置θxを制御可能なサーボモータで構成される。本実施形態の電動機6はサーボモータのうちの誘導電動機で構成される。電動機6は、その駆動状態がインバータ7を介して制御されており、インバータ7により制御される駆動状態が停止状態、力行駆動状態、制動駆動状態、および、予備励磁状態からなる。
【0015】
停止状態は電動機6がトルクを発生しないで駆動軸8の回転が停止した状態である。また、停止状態は電動機6にインバータ7から電力が供給されない状態である。力行駆動状態は駆動軸8が回転駆動して索状体3を巻き取る方向にドラム4を回転させる駆動力を出力する状態である。また、力行駆動状態は電動機6にインバータ7から電力が供給される状態である。制動駆動状態は索状体3を繰り出す方向にドラム4が回転し、その回転に伴って駆動軸8が回転駆動して制動力を付与する状態である。制動駆動状態としては、駆動軸8が回転駆動して回生発電する回生制動が例示される。制動駆動状態が回生制動の場合は、電動機6で生じた電力が、インバータ7に供給されてクレーン1に搭載された図示しないバッテリに蓄電される状態、クレーン1に設置された制動抵抗器の抵抗で熱として消費される状態、あるいは、バスバーや給電ケーブルを介してクレーン1の外部に設置されたバッテリに蓄電される状態である。なお、制動駆動状態としては、逆相制動(プラッキングともいう)や単相制動も例示される。
【0016】
予備励磁状態は後述する駆動パラメータ取得装置(位置取得装置13、回転速度取得装置14)が所得した電動機6の駆動に関する駆動パラメータ(駆動軸8の位置θx、回転速度Vx)に基づいて電動機6がトルクを発生した状態で駆動軸8の回転が停止した状態である。また、予備励磁状態は電動機6にインバータ7から電力が供給される状態である。予備励磁状態としては速度制御(0速制御ともいう)された状態と位置制御(サーボロック制御ともいう)された状態とが例示される。予備励磁状態における速度制御は駆動パラメータとして駆動軸8の回転速度Vxを用いてインバータ7によりその回転速度Vxを零に保持させる制御である。位置制御は駆動パラメータとして駆動軸8の位置(より詳細には角度位置)を用いてインバータ7によりその駆動軸8の位置を保持させるである。予備励磁状態は駆動軸8の回転が停止した状態を保持できればよく、速度制御された状態でもよく、位置制御された状態でもよい。
【0017】
機械式ブレーキ装置9は摩擦力により電動機6の駆動軸8の回転を制動するブレーキである。本実施形態の機械式ブレーキ装置9は電気油圧式のスラスタディスクブレーキ装置で構成される。電気油圧式のスラスタディスクブレーキ装置は、電力の供給が停止されると油圧が抜けてスラスタが駆動してブレーキライニングを駆動軸8に直に固定されたディスクに押し当てて生じる摩擦力により駆動軸8の回転を制動し、電力が供給されると油圧によりスラスタが駆動してブレーキライニングをディスクから離間させて駆動軸8の回転の制動を解除する。機械式ブレーキ装置9としては、電力の供給が停止されると摩擦力により駆動軸8の回転を制動し、電力が供給されると駆動軸8の回転の制動を解除するものであればよく、電気油圧式のスラスタディスクブレーキに限定されるものではない。
【0018】
本実施形態の制御システム10はクレーン1に備えられ、インバータ7と機械式ブレーキ装置9とを制御してドラム4により吊体2を吊り下げる索状体3を巻き取るおよび繰り出す制御を行うシステムである。なお、制御システム10はクレーン1において吊体2を吊り下げる索状体3を巻き取るおよび繰り出すドラム4に対して適用したものに限定されず、桁を起伏するドラムやトロリを横行させるドラムに対して適用してもよい。また、制御システム10は電動機6により回転駆動させる対象がドラムに限定されずに、クレーン1に対して適用したものに限定されない。
【0019】
制御システム10は、制御装置11と操作装置12と位置取得装置13と回転速度取得装置14とブレーキ作動取得装置15と警告装置16とからなる。制御装置11はインバータ7、機械式ブレーキ装置9、操作装置12、ブレーキ作動取得装置15、および、警告装置16のそれぞれに電気的に接続されるとともにインバータ7を介して電動機6、位置取得装置13および回転速度取得装置14のそれぞれに電気的に接続される。なお、位置取得装置13および回転速度取得装置14のそれぞれはインバータ7を介さずに直に制御装置11に電気的に接続されてもよい。
【0020】
制御装置11は各種情報処理を行う中央演算処理装置(CPU)、その各種情報処理を行うために用いられるプログラムや情報処理結果を読み書き可能な内部記憶装置、及び各種インターフェースなどから構成されるハードウェアである。制御装置11はクレーン1に設置される場合に図示しない機械室やトロリに設置される。なお、制御装置11はクレーン1に設置されるものに限定されずに、クレーン1から離間した遠隔地に設置されてもよい。
【0021】
操作装置12は表示装置12aに映る情報に基づいて運転手が操作卓12bを操作し、その操作信号として駆動指令C1および停止指令C2を制御装置11に送信するものである。駆動指令C1は電動機6を力行駆動状態または制動駆動状態にする操作信号であり、駆動軸8を回転駆動する操作信号である。なお、駆動指令C1は加速指令および減速指令を含むものとする。停止指令C2は機械式ブレーキ装置9を作動させるとともに電動機6を停止状態にする操作信号であり、駆動軸8の回転を停止し、駆動軸8が停止した状態を保持する操作信号である。なお、本実施形態における停止指令C2は電動機6を予備励磁状態にする操作信号でもある。操作装置12は制御装置11と同様に、クレーン1に設置される場合に図示しない機械室やトロリに設置され、クレーン1から離間した遠隔地に設置されてもよい。なお、運転手により操作される操作装置12に代えて、クレーン1を自動制御する上位制御装置を備え、その上位制御装置から駆動指令C1や停止指令C2を制御装置11に送信する構成にしてもよい。
【0022】
位置取得装置13は駆動パラメータ取得装置として機能し、駆動軸8の位置(より詳細には角度位置)θxを取得する装置である。位置取得装置13としてはロータリエンコーダやポテンショメータが例示される。回転速度取得装置14は駆動パラメータ取得装置として機能するとともに機械式ブレーキ装置9の効きに関するブレーキパラメータを取得するブレーキパラメータ取得装置としても機能し、駆動軸8の回転速度Vxを取得する装置である。回転速度取得装置14としてはロータリエンコーダやポテンショメータが例示される。なお、駆動パラメータ取得装置としては、位置取得装置13の機能と回転速度取得装置14の機能とを有した一つの装置で構成されてもよい。また、クレーン1において、駆動パラメータ取得装置は、索状体3の巻き取り量や繰り出し量、あるいは、ドラム4の位置や回転速度に基づいて、駆動軸8の位置θxや回転速度Vxを算出する構成にしてもよい。
【0023】
本実施形態において機械式ブレーキ装置9の効きとは機械式ブレーキ装置9が作動して駆動軸8に制動力が実際に付与された状態を示している。ブレーキパラメータとしては、機械式ブレーキ装置9が作動した前後での駆動軸8の減速度の変化、駆動軸8に付与された制動力が例示される。本実施形態において、ブレーキパラメータは駆動軸8の回転速度Vxに応じた駆動軸8の減速度の変化を用いることとする。なお、ブレーキパラメータとして駆動軸8に付与された制動力を用いる場合のブレーキパラメータ装置としてはロードセルが例示される。
【0024】
ブレーキ作動取得装置15は機械式ブレーキ装置9の作動状態を取得する装置であり、機械式ブレーキ装置9が駆動軸8に制動力を付与するように作動したことを取得する装置であることが望ましい。ブレーキ作動取得装置15としてはリミットスイッチ、レーザ距離計が例示される。例えば、リミットスイッチは機械式ブレーキ装置9の駆動機構に設置されて、ブレーキライニングがディスクに接触するように作動したときの駆動機構の動作状態を検出する。レーザ距離計はブレーキライニングとディスクとの間の距離を検出するように設置される。本実施形態において、機械式ブレーキ装置9の作動とは機械式ブレーキ装置9の駆動機構が駆動したことを示している。つまり、機械式ブレーキ装置9が作動したことと、機械式ブレーキ装置9が効いたこととは同義ではないものとする。ブレーキ作動取得装置15は機械式ブレーキ装置9が作動したことを検出すると作動信号C3としてオンを出力し、機械式ブレーキ装置9が作動していないことを検出すると作動信号C3としてオフを出力する。なお、ブレーキ作動取得装置15としては機械式ブレーキ装置9が作動せずに駆動軸8への制動が解除された状態を取得する装置を用いてもよく、機械式ブレーキ装置9が作動していないことが取得されない場合に機械式ブレーキ装置9が作動したことを取得してもよい。
【0025】
警告装置16は操作装置12と一緒に併設される。警告装置16としては警告音を発する装置が例示されるが、表示装置12aや表示装置12aとは異なる表示装置であって画面に警告を表示する装置や運転手に振動を与える装置で構成されてもよい。また、警告装置16は光の明滅で警告する装置で構成されてもよい。
【0026】
制御装置11は電動機6の駆動軸8が停止した状態を保持する各機能要素としてブレーキ制御部17、電動機制御部18、および、警告制御部19を有する。各機能要素は、プログラムとして制御装置11の内部記憶装置に記憶されて、中央処理装置により読み出されて、適宜実行される。なお、各機能要素としては、プログラムの他にそれぞれが独立して機能する電気回路も例示される。また、各機能要素のそれぞれをプログラマブルロジックコントローラ(PLC)で構成して、制御装置11を複数のPLCの集合体としてもよい。
【0027】
ブレーキ制御部17は停止指令C2が入力されて、その停止指令C2に基づいて機械式ブレーキ装置9を作動させる制御を行う機能要素である。具体的に、ブレーキ制御部17は停止指令C2が入力されると、機械式ブレーキ装置9への電力の供給を停止して機械式ブレーキ装置9を駆動軸8の回転を制動させるように作動させる。また、ブレーキ制御部17は駆動指令C1が入力されて停止指令C2が解除されると、機械式ブレーキ装置9へ電力を供給して機械式ブレーキ装置9を駆動軸8の回転の制動を解除するように作動させる。
【0028】
ブレーキ制御部17は、停止指令C2が入力された場合に、駆動軸8の回転速度Vxが予め設定された第一設定速度Vaより遅くなったときに機械式ブレーキ装置9を作動するように構成されることが望ましい。具体的に、ブレーキ制御部17は停止指令C2に加えて回転速度取得装置14が取得した駆動軸8の回転速度Vxが入力される。ブレーキ制御部17は停止指令C2が入力された場合に、入力された駆動軸8の回転速度Vxが第一設定速度Va以上の速度のときに、電動機制御部18によりインバータ7に電動機6が力行駆動状態において出力される駆動力を低減させて、あるいは、制動駆動状態において付与される制動力を増加させて、駆動軸8の回転速度Vxを減速させる制御を行わせる。ついで、ブレーキ制御部17は駆動軸8の回転速度Vxが第一設定速度Vaより遅くなったときに機械式ブレーキ装置9への電力の供給を停止して機械式ブレーキ装置9を作動させる。
【0029】
第一設定速度Vaは予め実験や試験により設定された値であり、制御装置11の内部記憶装置に記憶される。第一設定速度Vaは駆動軸8の回転速度Vxが電動機6により減速し、駆動軸8の回転が停止する直前の状態を判定可能な値に設定される。第一設定速度Vaは電動機6の定格速度に基づいて設定することが望ましく、定格速度に対して正の相関となる。なお、定格速度は電動機6やインバータ7の種類に応じて予め設定される速度である。第一設定速度Vaが零に設定されると、機械式ブレーキ装置9の作動が遅くなり、駆動軸8を所望するタイミングで停止できないおそれがある。また、第一設定速度Vaが定格速度の10%よりも速い速度に設定されると機械式ブレーキ装置9を作動させたときに急ブレーキとなり、機械式ブレーキ装置9の耐久性を低下させるとともに吊体2に大きな揺れが生じるおそれがある。そこで、第一設定速度Vaは零よりも速い速度で、定格速度の10%よりも遅い速度に設定されることが望ましく、定格速度の4%~6%の速度に設定されることがより望ましい。第一設定速度Vaが定格速度の4%~6%の速度に設定されると、機械式ブレーキ装置9の作動遅れや急ブレーキの回避により有利になる。
【0030】
電動機制御部18は駆動指令C1が入力されて、その駆動指令C1に基づいてインバータ7を介して電動機6の駆動状態を制御する機能要素である。また、電動機制御部18は停止指令C2が入力されて、予備ブレーキ作動条件に基づいてインバータ7に機械式ブレーキ装置9の予備として電動機6を予備励磁状態にさせる制御を行うとともに予備ブレーキ解除条件に基づいてインバータ7に電動機6の予備励磁状態を解除させる制御を行う機能要素である。加えて、電動機制御部18はインバータ7に電動機6を予備励磁状態にさせている間は、電動機6の駆動指令C1以外の指令が入力されても、電動機6によるドラム4の回転駆動以外の動作を禁止する制御を行う機能要素である。電動機制御部18は位置取得装置13、回転速度取得装置14、および、ブレーキ作動取得装置15が取得した取得値が入力される。電動機制御部18はタイマ18aを有する。
【0031】
予備ブレーキ作動条件は、機械式ブレーキ装置9が作動せず、または、機械式ブレーキ装置9が作動したが機械式ブレーキ装置9により駆動軸8の回転が停止するように制動力が付与されないと成立する。本実施形態において、電動機制御部18は、ブレーキ作動取得装置15から出力された作動信号C3がオフの場合に機械式ブレーキ装置9が作動していないと判定する。また、電動機制御部18は、機械式ブレーキ装置9が作動したときにブレーキパラメータ取得装置として機能する回転速度取得装置14が取得した回転速度Vxが予め第一設定速度Vaよりも遅い速度に設定された第二設定速度Vbまで減速しないと、制動力が付与されていないと判定する。なお、ブレーキパラメータ取得装置がロードセルで構成される場合に、電動機制御部18はロードセルが検出する制動力が予め設定された閾値よりも低い場合に制動力が付与されていないと判定してもよい。また、電動機制御部18は機械式ブレーキ装置9が作動してからの駆動軸8の減速度が、機械式ブレーキ装置9が作動する前の駆動軸8の減速度よりも大きくならない場合に制動力が付与されていないと判定してもよい。本実施形態において、機械式ブレーキ装置9は駆動軸8の回転速度Vxが第一設定速度Va以下になったときに作動するように構成される。よって、機械式ブレーキ装置9が作動したときに駆動軸8の回転速度Vxが第二設定速度Vbまで減速しない場合に制動力が付与されていないと判定することが可能となる。
【0032】
第二設定速度Vbは予め実験や試験により設定されて、第一設定速度Vaよりも遅い速度に設定された値であり、制御装置11の内部記憶装置に記憶される。第二設定速度Vbは予備ブレーキ作動条件の成立の可否の判定に用いられるとともに電動機6を予備励磁状態にするタイミングを図るために用いられる。第二設定速度Vbは機械式ブレーキ装置9の作動により駆動軸8の回転が停止するように駆動軸8の回転速度Vxが減速していることを判定可能な値、つまり、機械式ブレーキ装置9の作動により駆動軸8の減速度が増加したことを判定可能な値に設定される。また、第二設定速度Vbは駆動軸8の回転速度Vxが電動機6により減速し、駆動軸8の回転が停止する直前の状態を判定可能な値であり、インバータ7に電動機6を予備励磁状態にさせたときにインバータ7が過負荷にならない状態を判定可能な値に設定される。第二設定速度Vbは第一設定速度Vaと同様に、電動機6の定格速度に基づいて設定することが望ましく、定格速度に対して正の相関となる。第二設定速度Vbが零に設定されると、制御系における応答遅れに伴って予備のブレーキの作動が遅くなり、駆動軸8を所望するタイミングで停止できないおそれがある。また、第二設定速度Vbが定格速度の5%以上の速度に設定されると予備のブレーキを作動させたときにインバータ7が過負荷となり、予備のブレーキの作動が停止するおそれがある。そこで、第二設定速度Vbは零よりも速い速度で、定格速度の5%よりも遅い速度に設定されることが望ましく、定格速度の1%~3%の速度に設定されることがより望ましい。第二設定速度Vbが定格速度の1%~3%の速度に設定されると、予備のブレーキの作動遅れやインバータ7の過負荷の回避により有利になる。
【0033】
予備ブレーキ解除条件は、電動機6が予備励磁状態に制御されている間に操作装置12により駆動指令C1が入力されたと判定すると、または、タイマ18aがカウントした電動機6が予備励磁状態になってから経過した時間txが予め設定された解除期間taに達したと判定すると成立する。
【0034】
解除期間taは予め実験や試験により設定された値であり、制御装置11の内部記憶装置に記憶される。解除期間taは電動機6を予備励磁状態で駆動した場合のインバータ7の過負荷を判定可能な値に設定される。解除期間taはインバータ7の容量に基づいて設定することが望ましく、インバータ7の容量に対して正の相関となる。
【0035】
警告制御部19は電動機制御部18で電動機6を予備励磁状態にすると、警告装置16に運転手に対して警告させ、操作装置12により駆動指令C1が入力されると警告装置16の警告を停止させる制御を行う機能要素である。
【0036】
図2~
図5に例示するように、本実施形態のクレーン1の制御方法を制御システム10の機能として説明する。この制御方法は操作装置12の操作により停止指令C2が発せられると開始される。位置取得装置13、回転速度取得装置14、および、ブレーキ作動取得装置15のそれぞれは予め設定された周期が経過するごとに取得値を取得するものとする。制御フローにおいて順序が上のステップに戻るときやそれらの装置が取得値を取得するときに一周期が経過するものとする。制御フローのスタート時には吊体2の上下動の速度が一定の減速度で減速しているものとする。なお、吊体2の上下動の速度が一定の減速度で減速する状態は、吊体2を上昇する場合に電動機6を力行駆動状態に制御してドラム4が索状体3を巻き取る速度が減速した状態でもよく、吊体2を下降する場合に電動機6を制動駆動状態に制御してドラム4が索状体3を繰り出す速度が減速した状態でもよい。また、
図2~
図4に例示する制御方法と
図5に例示する制御方法とは並列で処理されるものとする。
【0037】
図2に例示するように、操作装置12により停止指令C2が発生られると、回転速度取得装置14は駆動軸8の回転速度Vxを取得する(S110)。ついで、ブレーキ制御部17は取得された回転速度Vxが予め設定された第一設定速度Vaよりも遅いか否かを判定する(S120)。回転速度Vxが第一設定速度Vaよりも遅いと判定すると(S120:YES)、ブレーキ制御部17は機械式ブレーキ装置9への電力の供給を停止して駆動軸8の回転を制動するように機械式ブレーキ装置9を作動させる指令を出す(S130)。一方、回転速度Vxが第一設定速度Va以上と判定すると(S120:NO)、ステップS110へリターンする。
【0038】
図3に例示するように、機械式ブレーキ装置9を作動させる指令を出すと、ブレーキ作動取得装置15は機械式ブレーキ装置9が作動したことを取得し、作動信号C3を送信する(S210)。このステップS210では、機械式ブレーキ装置9が作動した場合に作動信号C3がオンになり、機械式ブレーキ装置9が作動していない場合に作動信号C3をオフとなる。ついで、電動機制御部18は予備ブレーキ作動条件が成立したか否かを判定する。
【0039】
具体的に、電動機制御部18は作動信号C3がオンか否かを判定する。(S220)。作動信号C3がオンと判定すると(S220)、回転速度取得装置14は駆動軸8の回転速度Vxを取得する(S230)。ついで、電動機制御部18は取得されたその回転速度Vxが予め設定された第二設定速度Vbまで減速したか否かを判定する(S240)。なお、このステップS230およびS240は機械式ブレーキ装置9が作動してから所定の時間(例えば、1秒~2秒)が経過した後に行ってもよい。
【0040】
作動信号C3がオンと判定し(S220:YES)、かつ、回転速度Vxが第二設定速度Vbまで減速したと判定すると(S240:YES)、予備ブレーキ作動条件が成立せず、電動機制御部18はインバータ7に電動機6を停止状態にさせて(S250)、この制御フローが終了する。ステップS250が完了した状態は機械式ブレーキ装置9により電動機6の駆動軸8が停止した状態を保持する状態である。
【0041】
一方、作動信号C3がオフと判定し(S220:NO)、または、作動信号C3がオンと判定し、回転速度Vxが第二設定速度Vbまで減速していないと判定すると(S220:YES、S240:NO)、予備ブレーキ作動条件が成立して、電動機制御部18はインバータ7に電動機6を予備励磁状態にさせる制御を行う。
【0042】
具体的に、予備ブレーキ作動条件が成立したときに、回転速度取得装置14は駆動軸8の回転速度Vxを取得する(S260)。ついで、電動機制御部18は取得されたその回転速度Vxが予め設定された第二設定速度Vbまで減速したか否かを判定する(S270)。回転速度Vxが第二設定速度Vbまで減速していないと判定すると(S270:NO)、ステップS260へリターンする。一方、回転速度Vxが第二設定速度Vbまで減速したと判定すると(S270:YES)、位置取得装置13が駆動軸8の位置θxを取得する(S280)。ついで、電動機制御部18は取得されたその位置θxを保持するようにインバータ7に電動機6を予備励磁状態のうちの位置制御(サーボロック制御)の状態にして(S290)、機械式ブレーキ装置9の予備として電動機6の予備励磁状態による電気的なブレーキを作動させる。なお、予備ブレーキ作動条件が成立したときに、インバータ7に電動機6を予備励磁状態のうちの速度制御(0速制御)の状態にしてもよい。
【0043】
なお、駆動軸8の回転速度Vxが零になるまでインバータ7に電動機6を予備励磁状態のうちの速度制御の状態にし、回転速度Vxが零になったときに、ステップS280、S290を行うようにしてもよい。つまり、予備ブレーキ作動条件が成立したときに、速度制御により回転速度Vxを零まで減速させた後に位置制御により駆動軸8の位置θxを保持するようにしてもよい。
【0044】
図4に例示するように、機械式ブレーキ装置9の予備として電動機6を予備励磁状態にすると、警告制御部19は警告装置16により運転手に警告を発する(S310)。ついで、電動機制御部18は予備ブレーキ解除条件が成立したか否かを判定する。具体的に、電動機制御部18は操作装置12により駆動指令C1が発せられたか否かを判定する(S320)。また、電動機制御部18は電動機6が予備励磁状態になってから経過した時間txをカウントし、カウントした時間txが予め設定した解除期間taに達したか否かを判定する(S330、S340)。
【0045】
駆動指令C1が発せされたと判定して(S320:YES)、警告装置16が警告を停止すると(S350)、予備ブレーキ解除条件が成立して、電動機制御部18はインバータ7に電動機6の予備励磁状態を解除させて、駆動指令C1に基づいてインバータ7に電動機6を力行駆動状態または制動駆動状態にして(S360)、この制御フローが終了する。
【0046】
一方、カウントした時間txが解除期間taに達するまでに(S330:YES)、駆動指令C1が発せられないと判定すると(S320:NO)、警告の停止が行われない状態で予備ブレーキ解除条件が成立して、電動機制御部18はインバータ7に電動機6の予備励磁状態を解除させて、吊体2を下降させるようにインバータ7に電動機6を制動駆動状態にさせる(S370)。このステップS370により吊体2が下降して、所定の位置に着床する。ついで、電動機制御部18はインバータ7に電動機6を停止状態にさせる(S380)。ついで、警告装置16が警告を停止して(S390)、この制御フローが終了する。
【0047】
図5に例示するように、機械式ブレーキ装置9の予備として電動機6を予備励磁状態にすると(S410:YES)、電動機制御部18は操作装置12の駆動指令C1のうちの上下動以外の動作を禁止して(S420)、この制御フローが終了する。上下動以外の動作は、例えば、図示しないトロリの横行動作やクレーン1の走行装置による走行動作、あるいは図示しないジブの旋回動作が例示される。よって、このステップS420では、電動機制御部18はトロリの横行動作、走行装置の走行動作、ジブの旋回動作などを制御する制御部に対して制御の禁止の指令を出す。
【0048】
一方、電動機6を予備例示状態にしていないと(S410:NO)、電動機制御部18は上下動以外の動作の禁止を解除して(S430)、この制御フローが終了する。このステップS430では、電動機制御部18はトロリの横行動作、走行装置の走行動作、ジブの旋回動作などを制御する制御部に対して制御の許可の指令を出す。
【0049】
以上のように、制御システム10を備えたクレーン1は機械式ブレーキ装置9の予備としてインバータ7に電動機6を予備励磁状態にさせる制御を行う構成である。それ故、クレーン1によれば、仮に機械式ブレーキ装置9に機械的な故障が生じて、機械式ブレーキ装置9が正常に作動しない事態や機械式ブレーキ装置9が作動しても駆動軸8の回転を制動できない事態が生じても、電動機6が予備励磁状態となり電気的なブレーキが作動することで、駆動軸8の回転が停止した状態を保持することができる。つまり、機械式ブレーキ装置9の機械的な故障に対して電気的なブレーキをバックアップ機能として有することで、荷役作業における安全性を向上することができる。
【0050】
電動機6の予備励磁状態における速度制御は速度をコントロールする制御のために停止させた駆動軸8の位置がずれるおそれがある。一方、位置制御は位置をコントロールする制御のために停止させた駆動軸8の位置のずれを抑制することができる。よって、制御システム10は電動機6を予備励磁状態にする場合に、取得した駆動軸8の位置θxを保持するように位置制御を行うことが望ましい。このように、機械式ブレーキ装置9の予備として位置制御された電動機6を用いることで停止位置の精度の向上には有利になる。
【0051】
制御システム10は応答遅れを考慮することが望ましい。本実施形態において、応答遅れは制御装置11からインバータ7に電動機6を予備励磁状態にさせる指令を出してから実際に電動機6が予備励磁状態になるまでの遅れであり、無駄時間要素と一次遅れ要素や多次遅れ要素との組み合わせで示される伝達特性で示される。よって、制御システム10はインバータ7に電動機6を予備励磁状態にさせる制御が取得した駆動軸8の回転速度Vxが零になる前に行われることが望ましい。本実施形態において、電動機6を予備励磁状態にするタイミングは、駆動軸8の回転速度Vxが零よりも速い速度に設定された第二設定速度Vbより遅くなったタイミングである。このように、零よりも速い速度に設定された第二設定速度Vbを用いて電動機6を予備励磁状態にするタイミングを図ることで、駆動軸8の回転速度Vxが零になるまえに電動機6を予備励磁状態にすることができる。これにより、応答遅れによる電気的なブレーキの作動の遅れを回避するには有利になる。
【0052】
制御システム10は機械式ブレーキ装置9の予備として電動機6が予備励磁状態になった場合に、警告装置16により運転手に電動機6が予備励磁状態になったことを警告することが望ましい。機械式ブレーキ装置9の予備として電動機6を予備励磁状態になってから経過した時間txが解除期間taに達するとインバータ7が過負荷となり、電動機6の予備励磁状態が解除される。そこで、警告装置16により電動機6が予備励磁状態になったことを警告することで、運転手に操作装置12を操作させて駆動指令C1を出させることを促進するには有利になる。
【0053】
なお、時間txが解除期間taに達するまでに操作装置12から駆動指令C1が発せられない場合は、電動機制御部18により自動で吊体2を下降させて着床させるように電動機6を制動駆動状態にすることが好ましい。
【0054】
制御システム10はブレーキ作動取得装置15が取得した機械式ブレーキ装置9の作動状況を判定することに加えて、機械式ブレーキ装置9により駆動軸8の回転が停止するように制動力が付与されたか否かを判定することが望ましい。これにより、停止指令C2により機械式ブレーキ装置9が作動したが、駆動軸8の回転を制動できない事態に対応することが可能となる。
【0055】
例えば、電動機6が予備励磁状態になった場合に、トロリを横行動作させると吊体2に振れが生じるおそれがある。この振れにより、電動機6やインバータ7に過負荷が生じると駆動軸8の回転が停止した状態を保持できなくなるおそれがある。そこで、制御システム10は電動機6が予備励磁状態になった場合にドラム4の回転駆動以外の動作を禁止することが望ましい。このように、電動機6が予備励磁状態になった場合にドラム4の回転駆動以外の動作を禁止することで、電動機6やインバータ7に過負荷を回避するには有利になり、駆動軸8の回転が停止した状態を保持するには有利になる。
【符号の説明】
【0056】
1 クレーン
2 吊体
3 索状体
4 ドラム
6 電動機
7 インバータ
8 駆動軸
9 機械式ブレーキ装置
10 制御システム
11 制御装置
13 位置取得装置
14 回転速度取得装置
15 ブレーキ作動取得装置