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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】端子付き車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/02 20060101AFI20230612BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20230612BHJP
   H01R 4/58 20060101ALI20230612BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20230612BHJP
   B60J 1/20 20060101ALI20230612BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230612BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H01R4/02 Z
H01R13/03 A
H01R4/58 A
B60J1/00 Z
B60J1/20 C
B60J1/00 B
H01Q1/22 C
H01Q1/32 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020523635
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2019020738
(87)【国際公開番号】W WO2019235266
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018107844
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】桑原 由行
(72)【発明者】
【氏名】南屋 祐幸
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-010737(JP,A)
【文献】実開平02-064173(JP,U)
【文献】特開昭49-095554(JP,A)
【文献】実開昭61-087467(JP,U)
【文献】実開平03-101896(JP,U)
【文献】特開平11-028935(JP,A)
【文献】特開2018-086910(JP,A)
【文献】特開2018-170277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
H01R 13/03
H01R 4/58
B60J 1/00
B60J 1/20
H01Q 1/22
H01Q 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、前記ガラス板の表面に形成された導電層と無鉛半田により接合される端子を備える端子付き車両用窓ガラスであって、
前記端子は、前記導電層と前記無鉛半田により接合される少なくとも1以上の脚部を備え、
前記脚部の少なくとも一部は、断熱部材により覆われており、
前記端子は、前記脚部と電気的に接続され、かつ前記脚部から立設する本体部と、前記本体部から延設され、かつ前記本体部と電気的に接続される接続部とを備え、
平面視でダム部材は前記端子を囲うように配置される、端子付き車両用窓ガラス。
【請求項2】
前記脚部と、前記本体部と、前記接続部とは同一の材料からなり、
前記脚部と、前記本体部と、前記接続部の少なくとも一部とが、前記断熱部材により覆われている、請求項1に記載の端子付き車両用窓ガラス。
【請求項3】
前記ダム部材の高さは、断面視で前記本体部の高さよりも高い、請求項2に記載の端子付き車両用窓ガラス。
【請求項4】
ガラス板と、前記ガラス板の表面に形成された導電層と無鉛半田により接合される端子を備える端子付き車両用窓ガラスであって、
前記端子は、前記導電層と前記無鉛半田により接合される少なくとも1以上の脚部を備え、
前記脚部の少なくとも一部は、断熱部材により覆われており、
前記端子は、絶縁性部材からなるホルダ部を備え、
前記脚部は、前記ホルダ部の長手方向における両端部に設けられており、
前記脚部と電気的に接続される固定部が、前記ホルダ部の両側面を挟むように設けられている、端子付き車両用窓ガラス
【請求項5】
前記断熱部材は、前記脚部のみを覆っている、請求項4に記載の端子付き車両用窓ガラス。
【請求項6】
前記脚部は、平面視でダム部材により少なくとも一部が囲まれている、請求項4又は5に記載の端子付き車両用窓ガラス。
【請求項7】
前記脚部と前記ダム部材との間に前記断熱部材が存在する、請求項1~3又は6に記載の端子付き車両用窓ガラス。
【請求項8】
前記ダム部材が、合成樹脂、金属、ガラス及びゴム類から選ばれる1以上の材料からなる、請求項1~3、6又は7のいずれか一項に記載の端子付き車両用窓ガラス。
【請求項9】
前記脚部の電気抵抗率が、1×10-8~10×10-8Ω・mである、請求項1~8のいずれか一項に記載の端子付き車両用窓ガラス。
【請求項10】
前記断熱部材が、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1以上の樹脂からなる、請求項1から9のいずれか一項に記載の端子付き車両用窓ガラス。
【請求項11】
前記端子は、前記車両用窓ガラスの上辺または側辺の端部近傍に配置される、請求項1~10のいずれか一項に記載の端子付き車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用窓ガラスには、例えば、曇り防止用のデフォッガや、ラジオ、テレビ、無線通信用のアンテナとして、ガラス面上に導電性材料からなる導電層が設けられている。曇り防止用のデフォッガであれば、ヒーターパターンやバスバーを、銀ペーストなどを焼き付けることによりガラス面上に形成されている。アンテナであれば、AM、FM、地上放送、衛星放送対応など各種の用途に応じたパターンを、同様に銀ペーストなどを焼き付けることによりガラス面上に形成されている。
【0003】
これらの電力や信号の授受を必要とする導電層は、その端部を端子により電力供給回路や信号処理回路と接続されている。従来は、導電層は有鉛半田により回路と接続した端子と接続されていた。有鉛半田は、接着機能に優れ、高い塑性変形能を有するので、半田付け時の残留応力緩和が容易である。そのため、ガラス面上の導電層は、有鉛半田により端子容易に接着できた。ところが、近年、鉛の人体や環境への影響が指摘されており、車両用窓ガラス用途には無鉛半田を使用することが好ましいとされている。
【0004】
しかし、無鉛半田は有鉛半田に比べてヤング率が高く、剛性が高い。このため、無鉛半田により導電層と端子とを接続すると、車両用窓ガラスの評価である冷熱サイクル試験において、ガラス板にクラック等が発生したり、剥がれたりするという問題がある。
【0005】
特許文献1には、ガラス面上に設けられた導電層と、クロム含有鋼を含む接続素子とが無鉛半田によって接続されるガラス板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2014-519149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許分文献1に開示されているガラス板に接続されている端子(接続素子)の熱膨張率は、9×10-6~13×10-6/℃であり、ガラスの熱膨張率8.5×10-6~9×10-6/℃に近い。そのため、冷熱サイクル試験によるガラスと端子との間に生じる熱応力を小さくすることができる。
【0008】
しかし、特許文献1に開示されているガラス板に接続されている端子は、50質量パーセントから89.5質量パーセントの鉄、10.5質量パーセントから20質量パーセントのクロムを含む。ここで、鉄の電気抵抗率は1.00×10-7Ω・m、クロムの電気抵抗率は1.29×10-7Ωmであるのに対し、銅の電気抵抗率は1.68×10-8Ω・m、真鍮の電気抵抗率6.00×10-8Ωmである。すなわち、鉄やクロムを多く含む特許文献1に開示されている端子の電気抵抗率は、従来の銅や真鍮(黄銅)製の端子の電気抵抗率よりも高い。
【0009】
特許文献1に開示されているガラス板に接続されている端子を例えば曇り防止用のデフォッガなどに用いた場合、比較的大きな電流を端子に流すため、端子そのものの電気抵抗率が高いと端子の発熱量が大きくなり、ガラス板が局所的に加熱されてしまう恐れがある。また、特許文献1に開示されているガラス板に接続されている端子を、例えばアンテナ用の端子として用いた場合、端子そのもの電気抵抗率が高いと受送信する信号が端子で減衰してしまう恐れがある。
【0010】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の端子付き車両用窓ガラスは、
ガラス板と、前記ガラス板の表面に形成された導電層と無鉛半田により接合される端子を備える端子付き車両用窓ガラスであって、
前記端子は、前記導電層と前記無鉛半田により接合される少なくとも1以上の脚部を備え、
前記脚部の少なくとも一部は、断熱部材により覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両用窓ガラスの表面に形成された導電層と無鉛半田により接合される端子において、冷熱サイクル試験において、ガラス板にクラック等が発生したり、剥がれたりせず、かつ、端子に比較的大きな電流を流したとしても端子が発熱しにくく、また、端子によって信号が減衰することを抑制できる端子付き車両用窓ガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る端子付き車両用窓ガラスの正面図である。
図2図1に示す端子付き車両用窓ガラスのA-A部の断面図である。
図3図1に示す端子付き車両用窓ガラスの端子部の平面視である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る端子付き車両用窓ガラスの、第1の変形例であるA-A部の断面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る端子付き車両用窓ガラスの、第2の変形例であるA-A部の断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る端子付き車両用窓ガラスの正面図である。
図7図6に示す端子付き車両用窓ガラスのB-B部の断面図である。
図8図6に示す端子付き車両用窓ガラスの端子実装部の平面視である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、本発明の端子付き車両用窓ガラスは、例えばリアガラスやフロントガラスとして用いられるものであるが、これに限定されない。図2図4図5図7に示す端子付き車両用窓ガラスは、車両に組み込まれた場合、図中の下が車の外側となり、上が車の内側となる。
【0015】
[第1の実施形態]
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る端子付き車両用窓ガラス100は、車両用窓ガラス10の少なくとも一方の主面に形成された導電層20と、導電層20に接続される端子40を有する。
【0016】
車両用窓ガラス10としては、例えば、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどが特に制限なく用いられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。ガラス板10は、未強化ガラス、強化ガラスのいずれでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。強化ガラスは、物理強化ガラス(例えば風冷強化ガラス)、化学強化ガラスのいずれでもよい。物理強化ガラスである場合は、均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷し、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることで、ガラス表面を強化してもよい。化学強化ガラスである場合は、イオン交換法などによってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化してもよい。また、車両用窓ガラス10は、透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板であってもよい。車両用窓ガラス10の板厚は特に限定されないが、0.5~5.0mmであることが好ましい。
【0017】
車両用窓ガラス10は一枚のガラス板でもよいが、車両用窓ガラス10を自動車に取り付けた場合に、車外側に位置する車外側ガラス板と車内側に位置する車内側ガラス板とが中間膜を介して接着されている合わせガラスとしてもよい。中間膜としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる中間膜のほか、特に耐水性が要求される場合には、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく用いることができ、さらに、アクリル系光重合型プレポリマー、アクリル系触媒重合型プレポリマー、アクリル酸エステル・酢酸ビニルの光重合型プレポリマー、ポリビニルクロライド等も使用可能である。車外側ガラス板と車内側ガラス板は、ともに同じ組成、形状、厚みであってもよいし、異なっていてもよい。
【0018】
車両用窓ガラス10は、その表面に導電層20が形成されている。導電層20は、例えば導電性銀ペーストを車両用窓ガラス10の表面に印刷・塗布した後に焼成することにより形成される。導電性銀ペーストは、形成後の電気抵抗率は0.5×10-8~9.0×10-8Ω・mである材料であることが好ましい。車両用窓ガラス10がリアガラスとして用いられる場合、車両用窓ガラス10の両側部に導電層20により、バスバー21が形成され、バスバー21間に電熱手段22が形成される。バスバー21にはそれぞれ端子40が電気的に接続される。電熱手段22は、端子40に外部より電力が供給されると電熱手段22に電流が流れて発熱し、車両用窓ガラス10に付着した霜や氷などを除去する機能を有する。電熱手段22は図1に示すように、直線状であってもよいし、屈曲部や曲線状を有していてもよいし、メッシュ形状であってもよい。また、電熱手段22は透明導電膜であってもよい。透明導電膜としては、例えばAg膜などの金属膜、ITO(酸化インジウム・スズ)膜などの金属酸化膜、または導電性微粒子を含む樹脂膜で構成されてよい。透明導電膜は、複数種類の膜を積層したものでもよい。
【0019】
車両用窓ガラス10の表面と導電層20(バスバー21)との間には、車両用窓ガラス10の周縁部に沿って帯状に形成される黒色などの暗色不透明の遮蔽層(暗色セラミック層)30を備えていてもよい。遮蔽層30は、車両用窓ガラス10を自動車の車体に接着保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能を有するとともに、端子付き車両用窓ガラス100を自動車に取り付けた際に、バスバー21や端子40を車外側から視認できないように隠蔽する機能を有する。遮蔽層30は、セラミックペーストを車両用窓ガラス10の表面に塗布した後に焼成することにより形成される。遮蔽層30の厚みは3~15μmであることが好ましい。また、遮蔽層30の幅は特に限定されないが、20~300mmであることが好ましい。
【0020】
端子40は、車両用窓ガラス10の上辺または側辺の端部近傍に配置される。また、端子40は、車両用窓ガラス10を車輌に取り付けた際に、車内側面に配置される。車両用窓ガラス10が合わせガラスである場合、車内側ガラス板の車内側面に配置される。
【0021】
図2に示すように、端子40は、脚部41と、脚部41と電気的に接続され、かつ脚部41から立設する本体部42と、本体部42から延設され、かつ本体部42と電気的に接続される接続部43とを備える。脚部41の数は端子40一個につき一つでもよいし、複数であってもよい。接続部43は、車両本体に配置され、導電層20に電力を供給する外部回路(不図示)から電力を供給するための外部回路接続部材80と電気的に接続される。外部回路接続部材80は、コネクタ81とケーブル82を備えており、コネクタ81を接続部43に差し込むことで、外部回路と端子20とが電気的に接続される。外部回路接続部材80は、コネクタ81の代りにケーブル82の先端にケーブル82内の導線を露出させ、接続部43と半田や導電性接着剤などで電気的に接続してもよい。また、ケーブル82内の導線を露出させ、接続部43の一部を屈曲させることで導線を加締めるなど物理的に接続させてもよい。
【0022】
脚部41は、電気抵抗率が、1×10-8~10×10-8Ω・mである材料であることが好ましい。より好ましくは、1×10-8~8×10-8Ω・mである。脚部41の材料の電気抵抗率が、1×10-8~10×10-8Ω・mであれば、端子40に比較的大きな電流を流したとしても、脚部41が発熱しにくく好ましい。脚部41の材料としては、例えば銅、真鍮(黄銅)などが挙げられる。
【0023】
端子40は、脚部41と、本体部42と、接続部43とが同一の材料により一体的に形成されていてもよい。すなわち、端子40が、例えば銅、真鍮(黄銅)などの材料であって、電気抵抗率が、1×10-8~10×10-8Ω・mである材料であることが好ましい。端子40の材料の電気抵抗率が、1×10-8~10×10-8Ω・mであれば、端子40に比較的大きな電流を流したとしても、端子40全体が発熱しにくく好ましい。なお、脚部41と、本体部42と、接続部43とが電気的に接続されており、上記の電気抵抗率であれば、それぞれが異なる材料で構成されていてもよい。
【0024】
脚部41は、導電層20と無鉛半田50により電気的に接続される。無鉛半田50としては特に限定されないが、Sn-Ag系半田、Sn-Zn系半田、Sn-Sb系半田、Sn-Ag-In系半田、Sn-Zn-Bi系半田、Sn-Ag-Al-Zn系半田、Sn-Zn-Ti系半田、Sn-Al-In-Ag-Cu-Zn系半田、Sn-Ag-Cu系半田等が挙げられる。
【0025】
脚部41の少なくとも一部は、断熱部材60により覆われている。また、図2図3に示すように脚部41の全体が断熱部材60により覆われていてもよいし、脚部41だけではなく、本体部42と導電層20との間にも断熱部材60が存在してもよい。
【0026】
脚部41は、導電層20と無鉛半田50によって接合されているが、無鉛半田50はヤング率が高く、剛性が高い。また、ガラスの熱膨張率が8.5×10-6~9×10-6/℃であるのに対し、脚部41に使用される銅の熱膨張率が16.5×10-6~17×10-6/℃、真鍮(黄銅)の熱膨張率が18×10-6~20×10-6/℃である。つまり、車両用窓ガラス10と脚部41の熱膨張率に大きな差があるため、無鉛半田50により導電層20と脚部41とを接合すると、加熱/冷却による膨張量/収縮量の差により、ガラス板にクラック等が発生したり、端子40が剥れたりする恐れがある。しかし、本発明の第1の実施形態によれば、脚部41の少なくとも一部を断熱部材60で覆うため、車両用窓ガラス10を製品として使用するにあたり実施される冷熱サイクル試験において、車両用窓ガラス10を加熱/冷却したとしても、脚部41は冷熱サイクル試験による温度変化が起こりにくいため、冷熱サイクル試験によってガラス板にクラック等が発生したり、端子40が剥れたりする恐れがない。なお、ここで冷熱サイクル試験は、80℃を30分間の後に-30℃を30分間、を1サイクルとし、100サイクルを繰り返し実施する試験を指す。
【0027】
断熱部材60としては、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1以上の樹脂からなることが好ましい。シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1以上の樹脂であれば、脚部41が冷熱サイクル試験による加熱/冷却による温度変化の影響を受けにくく、かつ、断熱部材60が外部から脚部41への水分の侵入も防ぐため、端子40の耐湿度性能も改善し、好ましい。
【0028】
脚部41は、平面視でダム部材70により少なくとも一部が囲まれており、脚部41とダム部材70の間に断熱部材60が存在する。図3に示すように、ダム部材70は端子40を囲うように配置してもよいが、脚部41だけを囲うように配置してもよい。ダム部材70により脚部41の少なくとも一部を囲うことにより、断熱部材60の粘度が低くても断熱部材60が流れ出すことを防止でき、かつ、ダム部材70の高さまで断熱部材60を設けることができる。ダム部材70は、合成樹脂、金属、ガラス、及びゴム類から選ばれる1以上の材料からなることが好ましい。なお、断熱部材60の粘度が高く、その初期形状を維持できる材料であれば、ダム部材70は設けなくてもよい。
【0029】
図4に示すように、端子40は、脚部41と、本体部42と、接続部43の少なくとも一部とが、断熱部材60により覆われていてもよい。また、図5に示すように、端子40は、脚部41と、本体部42と、接続部43であって外部回路接続部材80のコネクタ81が差し込まれている部位以外とが、断熱部材60により覆われていてもよい。端子40の脚部41と、本体部42と、接続部43の少なくとも一部とが断熱部材60により覆われていると、車両用窓ガラス10を製品として使用するにあたり実施される冷熱サイクル試験において車両用窓ガラス10を加熱/冷却したとしても、端子40の本体部42や接続部43を介して端子部41に温度が伝わりにくくなり、端子部41の温度変化起こりにくくなるため、冷熱サイクル試験によってガラス板にクラック等が発生したり、端子40が剥れたりする恐れがない。なお、図4図5に示すように、端子40の脚部41と、本体部42と、接続部43の少なくとも一部とが断熱部材60により覆われている場合は、ダム部材70の高さは、断面視で本体部42の高さよりも高いことが好ましい。
【0030】
[第2の実施形態]
図6に示すように、本発明の第2の実施形態に係る端子付き車両用窓ガラス101は、車両用窓ガラス10の少なくとも一方の主面に形成された導電層20により形成された電極23と、電極23から延設されるアンテナ導体24を備え、電極23に接続される端子40を有する。第1の実施形態に係る端子付き車両用窓ガラス10と共通する構成は、対応する構成要素に同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0031】
第2の実施形態に係る端子付き車両用窓ガラス101において、電極23は、正極23aと、所定の距離離れた位置に負極23bを備える。なお、図中の正極23aと負極23bは、その位置が逆でもよい。アンテナ導体24は、たとえば車両のフロントガラスに適用されたアンテナであってもよいし、リアガラス、またはサイドガラスに適用されるアンテナであってもよい。アンテナ導体24はAMラジオやFMラジオ、テレビ、無線通信用などのアンテナである。ラジオ放送、テレビ放送などの電波信号は、アンテナで受信され、後述する外部回路接続部材80の同軸ケーブル85を介して、車両に搭載されているラジオ、テレビ等の受信機器(不図示)に伝送される。正極23a及び負極23bから延設されるアンテナ導体24はそれぞれ単数であってもよいし、複数であってもよい。また、一方の電極に一つもしくは複数のアンテナ導体24が設けられ、他方の電極にアンテナ導体24が設けられていないパターンであってもよい。
【0032】
図7図8に示すように、端子40は、電極23a、23bにそれぞれ接続される脚部41と、ホルダ部45と、固定部46、接続ピン47とを備える。
ホルダ部45は、樹脂等の絶縁性部材からなり、車両用窓ガラス10の主面に対して立設する。脚部41(41a、41b)は、ホルダ部45の長手方向における両端部であって、それぞれ電極23(正極23a、負極23b)と無鉛半田50で接合可能な位置に設けられる。固定部46(46a、46b)は、ホルダ部45の両側面を挟むように立ち上がるように設けられ、それぞれ脚部41(41a、41b)と電気的に接続される。脚部41と固定部46とは、同じ材料で構成されていてもよいし、電気的に接続されていれば異なる材料であってもよい。ただし、脚部41は第1の実施形態と同様に、例えば銅、真鍮(黄銅)など、電気抵抗率が、1×10-8~10×10-8Ω・mである材料であることが好ましい。より好ましくは、1×10-8~8×10-8Ω・mである。脚部41を除くホルダ部45と車両用窓ガラス10とは、接着部材90等で固定されていてもよい。接着部材90は、両面テープや接着剤であってよい。接着剤としては特には限定されないが、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系などの接着剤を用いることができる。固定部46は、後述するピックアップ部84に内蔵された導体と電気的に接続される。接続ピン47は、ホルダ部45の内底から鉛直上方に延在し、正極23aと電気的に接続される。
【0033】
外部回路接続部材80は、ピックアップ部84と同軸ケーブル85を備えており、ピックアップ部84をホルダ部45に嵌め込むことで、ラジオ、テレビ等の受信機器と電気的に接続される。ピックアップ部84は、略直方体形状であり、中空の樹脂等の絶縁性材料からなるケースである。ピックアップ部84の中空部には、ホルダ部45に嵌合された状態で、固定部46a及び接続ピン47と、固定部46bとにそれぞれ接続される導体を備える。正極23aと、無鉛半田50及び脚部41aを介して電気的に接続される固定部46a及び接続ピン47は、同軸ケーブル85の信号線(芯線)に接続され、負極23bと、無鉛半田50及び脚部41bを介して電気的に接続される固定部46bは同軸ケーブルの接地線(外周線)に接続される。
【0034】
図7に示す端子付き車両用窓ガラス101では、断熱部材60は、脚部41a、41bのみを覆っている。すなわち、第2の実施形態によれば、脚部41のみが断熱部材60で覆われていたとしても、ホルダ部45は絶縁性部材からなるため、車両用窓ガラス10を製品として使用するにあたり実施される冷熱サイクル試験において、車両用窓ガラス10を加熱/冷却したとしても、脚部41のみならず、ホルダ部45も冷熱サイクル試験による温度変化起こりにくいため、冷熱サイクル試験によってガラス板にクラック等が発生したり、端子40が剥れたりする恐れがない。また、断熱部材60が外部から脚部41a、41bへの水分の侵入も防ぐため、端子40の耐湿度性能も改善し、好ましい。なお、第2の実施形態においては、端子40は、脚部41のみならず、ピックアップ部84がホルダ部45に嵌め込まれることを阻害しない程度に断熱部材60で覆われていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の端子付き車両用窓ガラスは、例えばフロントガラス、摺動窓、嵌め込み窓、リアガラスなどに好適に用いられる。
なお、2018年06月05日に出願された日本特許出願2018-107844号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0036】
100、101 端子付き車両用窓ガラス
10 車両用窓ガラス
20 導電層
21 バスバー
22 電熱手段
23 電極 23a 正極 23b 負極
24 アンテナ導体
30 遮蔽層
40 端子
41、41a、41b 脚部
42 本体部
43 接続部
45 ホルダ部
46、46a、46b 固定部
47 接続ピン
50 無鉛半田
60 断熱部材
70 ダム部材
80 外部回路接続部材
81 コネクタ
82 ケーブル
84 ピックアップ部
85 同軸ケーブル
90 接着部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8