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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】導電粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20230612BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20230612BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20230612BHJP
   C23C 18/36 20060101ALI20230612BHJP
   C23C 18/54 20060101ALI20230612BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20230612BHJP
   C23C 28/02 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H01B13/00 501Z
H01R11/01 501A
H01R11/01 501C
C23C18/16 A
C23C18/36
C23C18/54
C23C28/00 A
C23C28/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019075651
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020173990
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】赤井 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 昌之
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝之
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-082784(JP,A)
【文献】特開2012-164454(JP,A)
【文献】特開2015-197955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
H01R 11/01
C23C 18/16
C23C 18/36
C23C 18/54
C23C 28/00
C23C 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア粒子の表面に無電解めっき層を形成する工程と、
前記無電解めっき層の表面に金層を形成する工程と、
前記金層の表面にスパッタリングによってタングステン層を形成する工程と、
を含み、
前記無電解めっき層は前記金層よりも厚く、且つ前記金層は前記タングステン層よりも厚く、
前記金層の厚さが10nm以上40nm以下であり、且つ前記タングステン層の厚さが5nm以上30nm以下である、導電粒子の製造方法。
【請求項2】
置換めっき法又は無電解めっき法によって前記金層を形成する、請求項1に記載の導電粒子の製造方法。
【請求項3】
前記コア粒子がシリカ粒子である、請求項1又は2に記載の導電粒子の製造方法
【請求項4】
前記コア粒子の平均粒径が1~25μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は導電粒子の製造方法に関する。この方法によって製造される導電粒子は例えば異方性導電接着剤に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
液晶及びOLED(Organic Light-Emitting Diode)表示用ガラスパネルには駆動用ICが実装されている。その方式は、COG(Chip-on-Glass)実装とCOF(Chip-on-Flex)実装の二種類に大別することができる。COG実装では、導電粒子を含む異方性導電接着剤を用いて駆動用ICを直接ガラスパネル上に接合する。一方、COF実装では、金属配線を有するフレキシブルテープに駆動用ICを接合し、導電粒子を含む異方性導電接着剤を用いてそれらをガラスパネルに接合する。ここでいう異方性とは、加圧方向には導通し、非加圧方向では絶縁性を保つという意味である。
【0003】
これまでは、ガラスパネル上の配線はITO(Indium Tin Oxide)配線が主流であったが、生産性又は平滑性を改善する目的でIZO(Indium Zinc Oxide)に置き換わりつつある。さらに近年、ガラスパネル上にCu、Al、Tiなどを複数積層して形成された電極、並びに、最表面にITO又はIZOをさらに形成した複合多層電極などが開発されている。このような平坦性が高く、Tiなどの高硬度な材料を用いた電極に対して、安定した接続抵抗を得る必要がある。
【0004】
特許文献1は、基材微粒子と、その表面に形成された導電性膜とを有し、この導電性膜が表面に隆起した突起を有する導電性微粒子の製造方法を開示している。この文献によれば、導電性膜が突起を有する導電性微粒子は導電信頼性に優れるとされている。
【0005】
特許文献2は、基材粒子と、その表面に設けられたニッケル-ボロン導電層とを有する導電性粒子を開示している。この文献によれば、ニッケル-ボロン導電層は適度な硬さを有するので、電極間の接続対象部材の際に、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を十分に排除でき、接続抵抗を低くすることができるとされている。
【0006】
特許文献3は、樹脂粒子と、その表面を被覆する無電解金属めっき層と、最外層を形成するAuを除く金属スパッタ層とを有する導電性粒子を開示している。この文献によれば、樹脂粒子表面に無電解金属めっきを被覆することにより、樹脂粒子表面との密着性を向上させ、最外層を金属スパッタ層とすることにより、良好な接続信頼性が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4563110号公報
【文献】特開2011-243455公報
【文献】特開2012-164454公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献3に記載の導電性粒子のように、硬度が比較的高い金属スパッタ層を最外層とした場合、導電性粒子に圧縮力が加わることによる変形に伴ってスパッタ金属層が破壊して、接続抵抗が安定しない課題があった。
【0009】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、異方導電性接着剤に用いられたときに、安定した接続抵抗を達成できる導電粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らが鋭意検討を行った結果、安定した接続抵抗を達成するには、導電粒子が圧縮変形してもその最外層を構成する導電層が破壊されにくい構造とすることが有用である。本発明者らは、最外層を構成する導電層の下地に金層を設けることで、粒子変形時における最外層の破壊を抑制できることを見出し、以下の発明を完成させた。
【0011】
本開示は導電粒子の製造方法に関する。この製造方法は、コア粒子の表面に無電解めっき層を形成する工程と、無電解めっき層の表面に金層を形成する工程と、金層の表面にスパッタリングによってタングステン層を形成する工程とを含む。
【0012】
上記製造方法によれば、無電解めっき層とタングステン層との間に金層を介在させたことで、両者の密着性を向上させることができる。これに加え、金層がタングステン層の下地層としての機能を発揮し、導電粒子が圧縮されて変形しても、タングステン層が破壊することを抑制できる。これらの作用により、上記製造方法によって製造される導電粒子によれば、異方導電性接着剤に用いられたときに、安定した接続抵抗を達成できる。
【0013】
上記製造方法において、接続抵抗の更なる安定化の観点から、置換めっき法又は無電解めっき法によって金層を形成することが好ましい。すなわち、置換めっき法又は無電解めっき法によって形成された金層は無電解めっき層との密着性が高く、導電粒子に圧縮力が加わったとき、無電解めっき層と金層が一体的に変形する。これにより、接続抵抗がより一層安定する。
【0014】
本開示において、無電解めっき層は金層よりも厚く、且つ金層はタングステン層よりも厚いことが好ましい。かかる構成を採用することにより、粒子変形時におけるタングステン層の破壊をより一層抑制することができる。コア粒子の平均粒径は例えば1~25μmの範囲である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、異方導電性接着剤に用いられたときに、安定した接続抵抗を達成できる導電粒子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本開示に係る方法によって製造される導電粒子の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2図1に示す導電粒子を含む異方導電性フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は回路電極同士が接続された接続構造体の一例を模式的に示す断面図である。
図4図4(a)~図4(c)接続構造体の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、導電粒子の一実施形態を示す断面図である。図1に示される導電粒子10は、コア粒子1と、コア粒子1の表面上に形成された無電解めっき層2aと、無電解めっき層2aの表面に形成された金層2bと、金層2bの表面に形成されたタングステン層5とを備える。導電粒子10の最外層をなすタングステン層5は、スパッタリングによって形成されたものである。
【0019】
導電粒子10の粒径は、一般に、接続される回路部材の電極の間隔の最小値よりも小さい。接続される電極の高さにばらつきがある場合、導電粒子10の平均粒径は、高さのばらつきよりも大きいことが好ましい。かかる観点から、導電粒子10の平均粒径は1~50μmであることが好ましく、2~30μmであることがより好ましく、3~25μmであることが特に好ましい。なお、本明細書でいう「平均粒径」は、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定したメディアン径D50を意味する。
【0020】
コア粒子1を構成する材料は特に限定されず、有機材料、無機材料、金属材料などが使用できる。コア粒子の平均粒径は、電極と導電粒子の接触面積を十分に確保し、安定した接続抵抗を得る観点から1~50μmであることが好ましく、2~30μmであることがより好ましく、3~25μmであることがさらに好ましい。隣接する電極間の絶縁性を保つためには、粒度分布がシャープであるほうが好ましい。粒度分布が揃っていると、隣接する電極間の絶縁信頼性が安定する。また、対向する電極に挟まれたときに導電粒子10に均一に力が加わるため、安定した接続抵抗を得られるため好ましい。粒度分布が揃ったコア粒子としては、合成で得られる有機樹脂粒子又はシリカ粒子などが好適に利用できる。
【0021】
有機樹脂粒子は、例えば、ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレートのようなアクリル樹脂、並びに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン及びポリブタジエンのようなポリオレフィン樹脂から選ばれる樹脂を含む。このような有機樹脂粒子は公知の方法で合成可能であり、懸濁重合、シード重合、沈殿重合、分散重合によって合成される。
【0022】
コア粒子1は真球状であることが好ましい。特に、シード重合で作られた粒子は、粒度分布がシャープで、粒径バラツキが小さいため好ましい。具体的には、コア粒子1のCV値(Coefficient of Variation)は好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。特に、隣接電極間の距離が10μmレベルの電極をショート不良なく安定して接続するには、コア粒子1のCV値は5%以下であることが特に好ましく、3%以下であることが最も好ましい。例えば、平均粒径3.0μmの粒子のCV値が20%を超えると、10μmレベルの狭ピッチ電極の駆動用ICを接続する場合、ショート不良が発生し得る。
【0023】
比較的やわらかいポリイミドフィルム上に形成された電極、あるいは脆いガラス基板上に形成された電極を接続に使用する場合は、コア粒子1が硬すぎると導電粒子10が電極を傷つける可能性がある。かかる観点から、COGのようなガラス基板上に形成された電極に駆動用ICを直接接続する場合、コア粒子1が柔らかい方が好ましい。たとえば、200℃において20%圧縮変位させたときのコア粒子1の圧縮弾性率(20%K値)は、300kgf/mm以下であることが好ましく、200kgf/mm以下であることがさらに好ましい。コア粒子1が柔らかすぎると、圧痕により粒子捕捉率を測定することが難しくなることから、コア粒子1の200℃における20%K値は80kgf/mm以上であることが好ましい。
【0024】
コア粒子1の20%K値は、フィッシャースコープH100C(フィッシャーインスツールメント製)を使用して、以下の方法で測定される。
1)粒子試料を乗せたスライドガラスを200℃のホットプレート上に置き、粒子の中心方向に対して、加重をかける。
2)粒子試料が20%変形したときの圧縮変形弾性率(K20、20%K値)を、50秒間で50mNの加重をかけつつ測定を行った後、下記式に従って算出する。
K20(圧縮変形弾性率)=(3/21/2)×F20×S20-3/2×R-1/2
F20:粒子を20%変形させるのに必要な荷重(N)
S20:20%変形時の粒子の変形量(m)
R:粒子の半径(m)
【0025】
電極が非常に硬質な場合、コア粒子1が圧着時に変形しすぎてしまい、導電層(特にタングステン層5)を十分に電極にめり込ませることができないことがある。この場合は、コア粒子1は硬い方が好ましい。具体的には、シリカ粒子が好適に用いられる。シリカはストーバー法に代表される合成方法で、非常に粒度分布が鋭く、粒径ばらつきの少ない粒子を得ることができるため好ましい。コア粒子1からの不純物の溶出は、耐マイグレーション性を低下させるため、コア粒子1は純度が高い方が好ましい。具体的には、SiOの含有量が95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましく、99.9質量%以上であることが最も好ましい。
【0026】
図1に示す導電粒子10は、コア粒子1の表面に無電解めっき層2aを有している。無電解めっき層2aを有していることで、圧着した際に、タングステン層5の破壊が抑制され、安定した接続抵抗を得られやすく好ましい。無電解めっき層2aとしては、無電解めっきで形成される金属層が好適に利用される。無電解めっき層2aの材質は特に限定されないが、無電解めっきで使用される金属又は合金が適用できる。具体的には、ニッケル、銅、パラジウム、金、銀、白金、錫又はこれらの合金などが利用できる。特にニッケルは、実用性が高く好ましい。ニッケルめっき層は、リン又はホウ素を含むことが好ましい。これにより無電解めっき層2aの耐腐食性が高まり、高い絶縁性を維持しやすく、さらに無電解めっき層2aの硬度を高めることができ、導電粒子10が圧縮されたときの電気抵抗値を低く保つことが容易となる。
【0027】
無電解めっき層2aとしてのニッケルめっき層は、リン又はホウ素と共に、共析する他の金属を含んでいてもよい。他の金属としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、マンガン、クロム、バナジウム、モリブデン、パラジウム、錫、タングステン、レニウム、ルテニウム、ロジウム等の金属が挙げられる。これらの金属を無電解めっき層2aに含有させることで無電解めっき層2aの硬度を高めることができ、導電粒子10を高圧縮して圧着接続する場合に突起が押しつぶされるのを抑制し、より低い電気抵抗値を得ることが可能となる。無電解めっき層2aは、ニッケル以外に銅を含む合金層であると、接続抵抗が低抵抗化しやすく好ましい。リン又はホウ素と共に、共析する他の金属の中でも、硬度そのものが高いタングステンが好ましい。この場合、無電解めっき層2aにおけるニッケルの含有量は、85質量%以上であることが好ましい。
【0028】
無電解めっき層2aを無電解ニッケルめっきにより形成する場合、例えば、還元剤として次亜リン酸ナトリウム等のリン含有化合物を用いることで、リンを共析させることができ、ニッケル-リン合金が含まれる無電解めっき層2aを形成することができる。また、還元剤として、例えば、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等のホウ素含有化合物を用いることで、ホウ素を共析させることができ、ニッケル-ホウ素合金が含まれる無電解めっき層2aを形成することができる。ニッケル-ホウ素合金はニッケル-リン合金よりも硬度が高いので、導電粒子を高圧縮して圧着接続する場合に突起が押しつぶされるのを抑制し、より低い電気抵抗値を得る観点から、無電解めっき層2aはニッケル-ホウ素合金を含むことが好ましい。
【0029】
無電解めっき層2aの厚さは、特に限定されないが、実用上20nm以上500nm以下が好ましく、30nm以上400nm以下がより好ましく、50nm以上300nm以下が特に好ましく、60nm以上200nm以下が最も好ましい。無電解めっき層2aの厚さが20nmより薄い場合、連続した無電解めっき層2aを得ることが難しく、圧着時に無電解めっき層2aが破壊しやすく、接続特性が安定しない。一方で、無電解めっき層2aが500nmより厚い場合は、無電解めっき層2aの形成時間が非常に長くなり、製造コストが高く実用性が低くなる。さらに圧着時にコア粒子1の物性よりも無電解めっき層2aの物性の影響が支配的となり、無電解めっき層2aが十分に変形せず、電極との接触面積が小さくなり接続抵抗が安定しない不具合が起きやすい。
【0030】
無電解めっきは、非導電体の表面にも均一な金属被覆が可能であり、数十ナノメートルから数ミクロンまで厚さを調整しやすく、スパッタ法と比べると比較的厚めに金属層を形成できるメリットがある。また、電気めっきと比較しても電源が必要でないため、簡便な設備で金属層を形成できるため好ましい。また、無電解めっき法は溶液中で処理できること、大面積を処理できるため実用性が高い方法である。また、金属イオンを還元する還元剤又は添加剤などが共析することで、合金化することもできる。具体的には、無電解ニッケルめっきでは、ニッケルイオンの還元剤として、リン酸塩、ヒドラジン、水素化ホウ素塩などが利用でき、それぞれ、ニッケル-リン合金、純ニッケル、ニッケル-ホウ素合金などが得られる。また、金属イオンを液中で安定化させるための錯化剤が各種用いられており、その種類により結晶構造の違うニッケル膜が得られる。それぞれ、合金比率又は結晶構造の違いにより高耐食性、低抵抗、展延性、硬さなど様々な特性を調整できるため、所望に特性を選択できる利点がある。
【0031】
無電解めっき層2aの形成方法としては、コア粒子1の表面を触媒処理した後、上述の触媒を活性化させ、無電解めっき処理を行うことで、コア粒子1の表面に無電解めっき層2aを形成する。無電解めっきの析出点となる触媒は、主に貴金属が用いられ、パラジウム、金、銀、白金などが好適に用いられる。触媒としてはパラジウムが主として利用されている。パラジウムイオンを含む溶液中にコア粒子1を浸漬し、パラジウムイオンをコア粒子1の表面に吸着させる。その後、パラジウムイオンの還元剤が溶解した還元液(活性化液)に、パラジウムイオンが表面に吸着したコア粒子1を浸漬し、パラジウムイオンを還元してパラジウムを析出させ、無電解めっきの反応析出点とする。パラジウムイオンは通常錯体として溶解させると、処理液の安定性が増し好ましい。
【0032】
金層2bは無電解めっき層2aの表面に形成されている。金層2bが形成されていることにより、圧着の際に導電粒子10が圧縮変形しても最外層のタングステン層5が破壊しにくくなり、接続抵抗が安定する。金層2bの形成方法としては、スパッタ法、無電解めっき法、CVD法などを採用できる。スパッタリングによって粒子の表面に金属層を形成する方法については後述する。無電解めっき層2aとの密着性を確保する観点から、金層2bは無電解めっき法が好適に用いられる。金層2bを形成する無電解めっき法としては、置換めっき法が選択できる。置換めっき法は、金属イオンのイオン化傾向の差を利用して、金属層を形成する方法であり、析出させたい金属Aの金属イオンA’が溶解した溶液中に被めっき体(金属B)を浸漬し、金属Bがイオン化(溶解)する際に発生した電子を金属イオンA’が受容して金属Aとして析出させる方法である。具体的には、無電解めっき層2aに無電解ニッケル層を適用し、金層2bの形成に置換金めっき法を適用した場合は、無電解ニッケルめっき層と置換金めっき層(金層2b)は高い密着性を有するため好ましい。置換金めっき液は、金イオンと金イオンの錯化剤、安定剤、pH調整剤などが含まれており、金イオンは金錯体として存在していることが好ましい。
【0033】
金層2bは、置換金めっき法により形成された後、さらに無電解金めっき法により金層2bの厚さを増してもよい。置換金めっき法では、下地の無電解めっき層2aを溶解させながら金層2bが析出するため、金層2bにピンホールが発生し、下地の無電解めっき層2aの金属が金層2bの表面に拡散することがある。この場合、後述するタングステン層5と金層2bの密着性を悪化させる懸念があるため、置換金めっき層の表面に無電解金めっき層を形成することで、無電解めっき層の金属露出がない、金層2bの表面を得ることが可能で、タングステン層5と金層2bの密着性が非常に高くなり、安定した接続抵抗を得られるためより好ましい。
【0034】
金層2bの厚さは、無電解めっき層2aよりも薄いことが好ましい。無電解めっき層2aより金層2bが厚いと、圧着の際に金層2bが変形しやすいために後述するタングステン層5を電極に十分に押し付ける力が弱くなり、安定した接続抵抗を得られにくくなる。また、無電解めっき層2aより金層2bが厚いとコストの面でも実用性が低くなる。具体的には、金層2bの厚さは、5nm以上70nm以下が好ましく、10nm以上60nm以下がより好ましく、13nm以上50nm以下がさらに好ましく、15nm以上40nm以下が最も好ましい。金層2bの厚さが5nmより薄いと連続層として形成することが難しく、タングステン層5が金層2bだけでなく、無電解めっき層2aとも接触してしまい、圧着時のタングステン層5の破壊を抑制することが難しくなる。さらに、圧着時のタングステン層5の破壊を抑制する観点から、金層2bは10nm以上であることがより好ましい。
【0035】
タングステン層5は金層2bの表面に形成されている。上述のとおり、タングステン層5はスパッタ法によって形成されたものである。スパッタ法は高電圧をかけてイオン化させた希ガス元素がターゲットに衝突することで、ターゲット原子が飛び出して、粒子表面に高速で衝突する現象を繰り返すので、タングステン層5形成時の核発生密度が極めて密になり、少量の金属で粒子表面を均一に被覆できる。したがって、スパッタ法では、粒子表面全体を均一に被覆するのに必要な金属薄膜を薄くすることができる。
【0036】
スパッタ法としては、特に限定されないが二極スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、反応性スパッタリング法、レーザースパッタリング法、RF(高周波)スパッタリング法などが適用することができる。粒子表面に均一なスパッタ層を形成するためには、ターゲットに対して、粒子が常に回転又は転動していると、粒子同士の凝集が少なく好ましい。このようなスパッタ法としては、バレルスパッタ法が好適に利用できる。バレルスパッタ法は、粒子を収納する回転バレルと回転バレルの回転軸上に回転バレルの内壁に対峙して固定されたターゲットからなり、粒子は回転バレル内に収納され、回転バレルが回転又は振幅運動を行うことで、粒子が常に回転又は転動し、粒子表面に均一なスパッタ層を形成する方法である。粒子同士の凝集を抑制するバレル形状として、特許第3620842号に記載された多角バルルスパッタ装置に採用されたものが好ましい。
【0037】
タングステン層5は、下地の無電解めっき層2a又は金層2bの露出がないように連続した膜であることが好ましい。下地の金層2bが露出していると、露出面が電極面に接触すると電極面に十分に導電層がめり込まず安定した接続抵抗が得られない傾向にある。
【0038】
タングステン層5の厚さは、特に限定されないが、コストと接続抵抗の安定性の観点から、金層2bより薄いことが好ましい。タングステンは硬い金属のため、必要以上に厚いと、圧縮変形の際に破壊しやすく、接続抵抗を悪化させやすい。下地の金層2bの厚さによるが、タングステン層5の厚さは、5nm以上60nm以下が好ましく、10nm以上50nm以下がより好ましく、13nm以上40nm以下がさらに好ましく、15nm以上30nm以下が最も好ましい。
【0039】
タングステン層5の厚さ及び連続性を確認するには、導電粒子10の断面を観察すればよい。断面加工には、エポキシ樹脂で導電粒子10を硬化させ、研磨する方法、収束イオンビームで加工する方法を利用することができる。断面は、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することができる。タングステン層5の厚さ及びそのばらつきは断面観察から算出することができる。また、タングステン層5の緻密性又は下地層(無電解めっき層2a及び金層2b)の露出具合を評価する方法としては、前述の走査型電子顕微鏡で観察する方法のほかに、X線光電子分光装置(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて、最外層(タングステン層5)の元素比率を算出する方法がある。XPS分析は、金属表面下の数ナノメートルの領域の情報が得られ、また導電粒子10を敷き詰めたサンプルを測定することで、多くの粒子の総和として情報が得られるため、断面観察よりも最外層の表面の情報を多く得ることができて好ましい。
【0040】
上記実施形態によれば以下の効果が奏される。導電粒子10は、コア粒子1の表面に無電解めっき層2aを備えているので、コア粒子1の表面にスパッタ法によってタングステン層5を直接形成する場合と比べて、タングステン層5が安定して形成されやすい。また、無電解めっき層2aが設けられることで、コア粒子1よりも粒子の重さ(体積比重)が大きくなり、バレル内での転動又は攪拌の効率が上がり、粒子同士の凝集が抑制されるため、タングステン層5が均一に形成されやすい利点がある。
【0041】
<異方導電性接着剤>
上記の導電粒子10を接着剤成分中に分散させることによって異方導電性接着剤を調製する。回路接続材料として、ペースト状の異方導電性接着剤をそのまま使用してもよいし、これをフィルム状に成形して得た異方導電性フィルムを使用してもよい。図2に示す異方導電性フィルム50は、接着剤成分20に導電粒子10を分散させたものである。
【0042】
接着剤成分20としては、例えば、熱反応性樹脂と硬化剤との混合物が用いられる。好ましく用いられる接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との混合物、ラジカル重合性化合物と有機過酸化物との混合物が挙げられる。異方導電性フィルムには、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂を配合することが効果的である。
【0043】
異方導電性フィルム50の厚さは、導電粒子の粒径及び接着剤組成物の特性を考慮して相対的に決定されるが、1~100μmであることが好ましい。1μm未満では充分な接着性が得られず、100μmを超えると導電性を得るために多量の導電粒子を必要とするために現実的ではない。こうした理由から、厚さは3~50μmであることがより好ましい。
【0044】
<接続構造体>
図3に示す接続構造体100は、相互に対向する第1の回路部材30及び第2の回路部材40を備えており、第1の回路部材30と第2の回路部材40との間には、これらを接続する接続部50aが設けられている。
【0045】
第1の回路部材30は、回路基板(第1の回路基板)31と、回路基板31の主面31a上に形成される回路電極(第1の回路電極)32とを備える。第2の回路部材40は、回路基板(第2の回路基板)41と、回路基板41の主面41a上に形成される回路電極(第2の回路電極)42とを備える。
【0046】
回路部材の具体例としては、ICチップ(半導体チップ)、抵抗体チップ、コンデンサチップ、ドライバーIC等のチップ部品、リジット型のパッケージ基板が挙げられる。これらの回路部材は、回路電極を備えており、多数の回路電極を備えているものが一般的である。上記回路部材が接続される、もう一方の回路部材の具体例としては、金属配線を有するフレキシブルテープ基板、フレキシブルプリント配線板、ITO又はIZOが蒸着されたガラス基板などの配線基板が挙げられる。基板の材質としては、半導体、ガラス基板、セラミック等の無機物;ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステルスルホン等の有機物;これらの無機物及び有機物を複合化した材料などが挙げられる。
【0047】
異方導電性フィルム50によれば、回路部材同士を効率的且つ高い接続信頼性をもって接続することができる。したがって、異方導電性フィルム50は、微細な接続端子(回路電極)を多数備えるチップ部品の配線基板上へのCOG実装もしくはCOF実装に好適である。
【0048】
接続部50aは回路接続材料に含まれる接着剤成分の硬化物20aと、これに分散している導電粒子10とを備える。そして、接続構造体100においては、対向する回路電極32と回路電極42とが、導電粒子10を介して電気的に接続されている。より具体的には、図3に示すとおり、導電粒子10が回路電極32,42の双方に直接接触している。他方、横方向は絶縁性を有する硬化物20aが介在することで絶縁性が維持される。
【0049】
<接続構造体の製造方法>
次に、接続構造体100の製造方法について説明する。図4(a)~図4(c)は、接続構造体の製造方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。本実施形態では、異方導電性フィルム50を熱硬化させ、最終的に接続構造体100を製造する。
【0050】
所定の長さに切断した異方導電性フィルム50を回路部材30の主面31a上に載置する(図4(a))。この段階では、異方導電性フィルム50の一方面上にはセパレータフィルム52が残存した状態となっている。
【0051】
次に、図4(a)の矢印A及びB方向に加圧し、異方導電性フィルム50を第1の回路部材30に仮固定する(図4(b))。このときの圧力は回路部材に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1~30.0MPaとすることが好ましい。また、加熱しながら加圧してもよく、加熱温度は異方導電性フィルム50が実質的に硬化しない温度とする。加熱温度は一般的には50~100℃にするのが好ましい。これらの加熱及び加圧は0.1~2秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0052】
セパレータフィルム52を剥がした後、図4(c)に示すように、第2の回路部材40を、第2の回路電極42を第1の回路部材30の側に向けるようにして異方導電性フィルム50上に載せる。そして、異方導電性フィルム50を加熱しながら、図4(c)の矢印A及びB方向に全体を加圧する。このときの加熱温度は、接着剤成分20が硬化可能な温度とする。加熱温度は、60~180℃が好ましく、70~170℃がより好ましく、80~160℃がさらに好ましい。加熱温度が60℃未満であると硬化速度が遅くなる傾向があり、180℃を超えると望まない副反応が進行し易い傾向がある。加熱時間は、0.1~180秒が好ましく、0.5~180秒がより好ましく、1~180秒がさらに好ましい。
【0053】
接着剤成分20の硬化により接続部50aが形成されて、図3に示すような接続構造体100が得られる。接続の条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択される。なお、接着剤成分20として、光によって硬化するものを使用した場合には、異方導電性フィルム50に対して活性光線又はエネルギー線を適宜照射すればよい。活性光線としては、紫外線、可視光、赤外線等が挙げられる。エネルギー線としては、電子線、エックス線、γ線、マイクロ波等が挙げられる。
【実施例
【0054】
以下、実施例を挙げて本開示についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
(1)導電粒子の作製
<コア粒子の準備>
平均粒径20μmの真球状架橋アクリル粒子を27g準備した。架橋アクリル粒子27gを3%水酸化カリウム水溶液に分散し、10分攪拌した。その後、φ3μmのメンブレンフィルタ(メルク株式会社製)を用いた濾過により架橋アクリル粒子を取り出した。取り出された架橋アクリル粒子を水洗した。これにより、表面調整がされた架橋アクリル粒子を得た。
【0056】
表面調整済みの架橋アクリル粒子27gを、pH1.0に調整され、パラジウム触媒であるHS201(商品名、日立化成株式会社製)を20質量%含有するパラジウム触媒化液100mLに添加した後、30℃で30分間攪拌した。次に、φ3μmのメンブレンフィルタ(メルク株式会社製)で濾過した後、水洗を行うことでパラジウム触媒を架橋アクリル粒子の表面に吸着させた。その後、pH6.0に調整された0.5質量%ジメチルアミンボラン液に架橋アクリル粒子を添加し、60℃で5分間攪拌した。これにより、パラジウム触媒が固着化され、表面が活性化された架橋アクリル粒子を得た。
【0057】
<無電解ニッケルめっき層の形成>
表面が活性化され架橋アクリル粒子27gを、70℃に加温した水1000mLに分散させた。この分散液に、めっき安定剤として1g/Lの硝酸ビスマス水溶液を1mL添加し、次いで、下記組成の無電解ニッケルめっき液100mLを、5mL/分の滴下速度で滴下した。滴下終了から10分間経過した後、分散液を濾過し、濾過物を水で洗浄した。その後、80℃の真空乾燥機で濾過物を乾燥した。このようにして、厚さ80nmの無電解ニッケルめっき層(ニッケル-リン合金層)を有する粒子(ニッケルめっき粒子)を得た。得られたニッケルめっき粒子は30gであった。得られたニッケルめっき粒子は、表面が平滑であった。
(無電解ニッケルめっき液)
・硫酸ニッケル:400g/L
・次亜リン酸ナトリウム:150g/L
・酒石酸ナトリウム・二水和物:120g/L
・硝酸ビスマス水溶液(1g/L):1mL/L
【0058】
<金層の形成>
次に、下記組成の置換金めっき液を準備し、水酸化ナトリウムでpHを6に調整した。上記ニッケルめっき粒子30gを60℃に加温された100mLの純水中で超音波印加し、分散させた。このめっき液を用いて、ニッケルめっき粒子に対して、液温60℃の条件で厚さが平均20nmとなるまで置換金めっき処理を行った。濾過後、めっき処理後の粒子を100mLの純水で60秒洗浄した。これにより、無電解ニッケルめっき層の外側に金層(厚さ20nm)が形成された導電粒子を得た。
(置換Auめっき液)
・エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム:0.03mol/L
・クエン酸三ナトリウム:0.04mol/L
・シアン化金カリウム:0.01mol/L
・pH:6
【0059】
<タングステン層の形成>
次に、断面形状が六角形で内部対角長が200mmのステンレス製バレルと、バレル内部に配置されたスパッタリング用ターゲット、バレル内部を減圧するための真空装置が連結された多角バレルスパッタリング装置を用意した。バレル内に、架橋アクリル粒子表面にニッケル層及び金層がこの順序で形成された導電粒子2gを入れ、バレル内のスパッタリング用ターゲットにはタングステンを設置した。バレル内を9×10-4Pa以下に減圧した後、バレル内が2Paになるようアルゴンを一定流速で流した。その後、バレルを±75°で正転及び反転させ、バレル外周部を打刻して、導電粒子を転動、攪拌及び振動させた。続けて、ターゲットに電圧を印加して、タングステンスパッタを30分行い、厚さ10nmの連続したタングステン層を形成した。バレル内を大気圧に戻し、タングステン層を最外層として有する導電粒子を取り出した。
【0060】
(2)異方導電性フィルムの作製
フェノキシ樹脂〔ユニオンカーバイド株式会社製、商品名PKHC、重量平均分子量45000〕20gを、質量比でトルエン(沸点110.6℃、SP値8.90)/酢酸エチル(沸点77.1℃、SP値9.10)=50/50の混合溶剤に溶解して、固形分40質量%の溶液とした。
【0061】
ブチルアクリレート(以下BAという)(50質量部)、エチルアクリレート(以下EAという)(30質量部)、アクリロニトリル(以下ANという)(20質量部)、及びグリシジルメタクリレート(以下GMAという)(3質量部)を共重合させたアクリルゴム(重量平均分子量:500000)50gを、質量比でトルエン(沸点110.6℃)/酢酸エチル(沸点77.1℃)=50/50の混合溶剤に溶解して、固形分40質量%の溶液とした。
【0062】
エポキシ樹脂〔ビスフェノールA型エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)製、商品名エピコート828(EP-828)、エポキシ当量184)30gを、原液のまま使用した。
【0063】
潜在性硬化剤は、イミダゾール変性体を核とし、その表面をポリウレタンで被覆してなる平均粒径5μmマイクロカプセル型硬化剤を、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂中に分散させたものである、マスターバッチ型硬化剤(旭化成工業株式会社製、商品名ノバキュア3941、活性温度125℃)を用いた。
【0064】
固形質量比で樹脂成分100、潜在性硬化剤30となるように配合し、さらに、導電粒子を3体積%配合分散させ、厚さ50μmのPET樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、80℃、3分の熱風乾燥により、接着剤層の厚さが20μmの異方導電性フィルムを得た。
【0065】
(3)回路接続体の作製
上記のようにして得た異方導電性フィルムを用いて、以下のようにして半導体チップとIZO回路付きガラス基板との接続を行った。まず、IZO回路付きガラス基板上に、異方導電性フィルムの接着面を貼り付けた後、70℃、0.5MPaの条件で5秒間にわたって加熱加圧して仮接続した。その後、PET樹脂フィルムを剥離し、IZO回路付きガラス基板の位置合わせをして異方導電性フィルム上に半導体チップを配置した。次いで、190℃、40gf/バンプの条件で10秒間にわたって半導体チップの上方から加熱及び加圧を行い、本接続を行った。
【0066】
(4)接続構造体の評価
得られた接続構造体の導通抵抗試験を以下のように行った。評価の手順は後述する他の実施例及び比較例でも同様である。
【0067】
(導通抵抗試験)
チップ電極(バンプ)/ガラス電極(IZO)間の導通抵抗に関しては、導通抵抗の初期値と吸湿耐熱試験後(温度85℃、湿度85%の条件で100時間、500時間及び1000時間放置後)の値を、20サンプルについて測定し、それらの平均値を算出した。得られた平均値から下記基準に従って導通抵抗を評価した。結果を表1に示す。なお、吸湿耐熱試験500時間後に、下記A又はBの基準を満たす場合は導通抵抗が良好といえる。
A:導通抵抗の平均値が2Ω未満
B:導通抵抗の平均値が2Ω以上5Ω未満
C:導通抵抗の平均値が5Ω以上10Ω未満
D:導通抵抗の平均値が10Ω以上20Ω未満
E:導通抵抗の平均値が20Ω以上
【0068】
(実施例2~6)
タングステン層の厚さを表1に示すように調整したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6の導電粒子を作製した。このようにして得られた導電粒子をそれぞれ使用し、実施例1と同様にして、実施例2~6に係る異方導電性フィルム及び接続構造体をそれぞれ作製するとともに導通抵抗試験を行った。
【0069】
(実施例7)
実施例1と同様にして、平均粒径20.0μmの架橋アクリル粒子の表面に無電解ニッケルめっき層と置換金めっき層を形成した。次に、60℃に加熱した無電解金めっき液HGS-2000(製品名、日立化成株式会社製)に、上述の置換金めっき層を最外層に備えた架橋アクリル粒子を投入し、無電解金めっき層が20nmになるまでめっきを行った。次に、実施例1と同様にして金層の表面に厚さ10nmの連続したタングステン層を形成した。このようにして得られた導電粒子を使用し、実施例1と同様にして、実施例7に係る異方導電性フィルム及び接続構造体を作製するとともに導通抵抗試験を行った。
【0070】
(比較例1)
置換金めっき層を形成しなかったことの他は、実施例1と同様にして、無電解ニッケルめっき層(最内層)とタングステン層(最外層)とを有する導電粒子を作製した。得られた導電粒子を使用し、実施例1と同様にして、比較例1に係る異方導電性フィルム及び接続構造体を作製するとともに導通抵抗試験を行った。
【0071】
【表1】
【符号の説明】
【0072】
1…コア粒子、2a…無電解めっき層、2b…金層、5…タングステン層、10…導電粒子
図1
図2
図3
図4