(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】マグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/34 20060101AFI20230612BHJP
C01G 49/00 20060101ALI20230612BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H01F1/34 180
C01G49/00 C
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2019089241
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-03-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山地 秀宜
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌大
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-066902(JP,A)
【文献】特開2007-250823(JP,A)
【文献】特開2005-064010(JP,A)
【文献】特開平04-042817(JP,A)
【文献】特開昭56-105605(JP,A)
【文献】特公昭47-021518(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/017551(WO,A1)
【文献】特開2010-100489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/34
C01G 49/00
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SrとAlとFeを含むマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末において、Feサイトの一部がAlで置換され、SrとAlとFeのモル比が、Sr×12/(Fe+Al)=1.01~1.20を満たし、Al/(Fe+Al)=0.12~0.17を満た
し、(114)面における結晶子径Dxが70nm以上であることを特徴とする、マグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末。
【請求項2】
前記マグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末のBET比表面積が2m
2/g以下であることを特徴とする、請求項1に記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末。
【請求項3】
SrとAlとFeを含むマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の原料となる粉末を、SrとAlとFeのモル比が、Sr×12/(Fe+Al)=1.01~1.20になるように混合し、造粒成形して得られた成形体を1150~1400℃で焼成し、得られた焼成体を粉砕することを特徴とする、マグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の製造方法。
【請求項4】
前記原料となる粉末が、Sr塩粉末と、Fe
2O
3粉末と、Al
2O
3粉末であることを特徴とする、請求項
3に記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の製造方法。
【請求項5】
前記焼成体の粉砕が、粗粉砕した後に湿式粉砕することによって行われることを特徴とする、請求項
3または
4に記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の製造方法。
【請求項6】
請求項1
または2に記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末と樹脂を含むことを特徴とする、電波吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末およびその製造方法に関し、特に、電波吸収体などの材料として使用するのに適したマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術の高度化に伴い、携帯電話、無線LAN、衛星放送、高度道路交通システム、自動料金徴収システム(ETC)、走行支援道路システム(AHS)などの種々の用途でGHz帯域の電波が使用されている。このような高周波帯域で電波の利用形態が多様化すると、電子部品同士の干渉による故障、誤動作、機能不全などが懸念され、その対策の一つとして、電波吸収体を用いて不要な電波を吸収し、電波の反射や侵入を防いでいる。
【0003】
特に昨今では、自動運転支援システムの研究が盛んになり、(76GHz帯域などの)60~85GHz帯域の電波(ミリ波)を利用して車間距離などの情報を検知する車載レーダーの開発が進められ、これに伴って、(76GHz付近などの)60~85GHzで優れた電波吸収能を発揮する素材が求められている。
【0004】
このような電波吸収能を発揮する素材として、組成式AFe(12-x)AlxO19(但し、AはSr、Ba、CaおよびPbの1種以上、x=1.0~2.2)で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体において、レーザー回折散乱粒度分布のピーク粒径が10μm以上である電波吸収体用磁性粉体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-250823号公報(段落番号0011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、今後、60~85GHz帯域の電波(ミリ波)の利用形態が多様化すると、特許文献1の電波吸収体用磁性粉体を材料として使用した電波吸収体でも、電波吸収能が十分でない場合も考えられ、さらに電波吸収能に優れた電波吸収体の材料として使用するのに適したマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末が望まれている。
【0007】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、60~85GHz帯域の電波吸収能に優れた電波吸収体の材料として使用するのに適したマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、SrとAlとFeを含むマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末において、Feサイトの一部がAlで置換され、SrとAlとFeのモル比が、Sr×12/(Fe+Al)=1.01~1.20を満たすようにすることにより、60~85GHz帯域のミリ波の電波吸収能に優れた電波吸収体の材料として使用するのに適したマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末およびその製造方法を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によるマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末は、SrとAlとFeを含むマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末において、Feサイトの一部がAlで置換され、SrとAlとFeのモル比が、Sr×12/(Fe+Al)=1.01~1.20を満たすことを特徴とする。
【0010】
このマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末のAlとFeのモル比が、Al/(Fe+Al)=0.08~0.18を満たすのが好ましい。また、このマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末のBET比表面積は、2m2/g以下であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明によるマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の製造方法は、SrとAlとFeを含むマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の原料となる粉末を、SrとAlとFeのモル比が、Sr×12/(Fe+Al)=1.01~1.20になるように混合し、造粒成形して得られた成形体を焼成し、得られた焼成体を粉砕することを特徴とする。
【0012】
このマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の製造方法において、原料となる粉末が、Sr塩粉末と、Fe2O3粉末と、Al2O3粉末であるのが好ましい。また、焼成の温度が1150~1400℃であるのが好ましい。さらに、焼成体の粉砕が、粗粉砕した後に湿式粉砕することによって行われるのが好ましい。
【0013】
また、本発明による電波吸収体は、上記のマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末と樹脂を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、60~85GHz帯域の電波吸収能に優れた電波吸収体の材料として使用するのに適したマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の実施の形態は、SrとAlとFeを含むマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末において、Feサイトの一部がAlで置換され、SrとAlとFeのモル比が、Sr×12/(Fe+Al)=1.01~1.20を満たしている。
【0016】
このように化学量論比よりもSrの含有量を多くすれば、このマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末60~85GHz帯域の電波吸収能に優れた電波吸収体の材料として使用するときに、電波吸収能を向上させることができる。しかし、Sr×12/(Fe+Al)が1.20を超えても、さらに電波吸収能を向上させることはできず、Srの含有量が高過ぎて、非磁性成分であるSr化合物が多くなり過ぎるので好ましくない。また、本発明によるマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の実施の形態では、(環境規制物質となる場合がある)Baの含有量を5000ppm以下(好ましくは4000ppm以下、さらに好ましくは3000ppm以下、最も好ましくは2000ppm以下)と非常に少なくすることができる。
【0017】
このマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末のAlとFeのモル比は、Al/(Fe+Al)=0.08~0.18を満たすのが好ましく、0.12~0.17を満たすのがさらに好ましい。なお、このマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、組成式SrxFe(12-y)AlyO18+x(x=1.01~1.20、y=0.95~2.10)で表されるのが好ましい。また、このマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末のBET比表面積は、2m2/g以下であるのが好ましく、0.5~2m2/gであるのがさらに好ましい。また、このマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒径(D50)は、1.0~30μmであるのが好ましい。また、このマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の(114)面における結晶子径Dxは70nm以上であるのが好ましく、80nm以上であるのがさらに好ましい。
【0018】
上述したマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の実施の形態は、本発明によるマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の製造方法の実施の形態により製造することができる。
【0019】
本発明によるマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の製造方法の実施の形態では、SrとAlとFeを含むマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の原料となる粉末(好ましくは、Sr塩粉末と、Fe2O3粉末と、Al2O3粉末)を、SrとAlとFeのモル比が、Sr×12/(Fe+Al)=1.01~1.20(好ましくは1.01~1.10)になるように混合し、造粒成形して得られた(好ましくはペレット状の)成形体を(好ましくは1150~1400℃、さらに好ましくは1200~1300℃で)焼成し、得られた焼成体を粉砕(好ましくはハンマーミルなどによる衝撃粉砕などによる粗粉砕した後に湿式粉砕)する。
【0020】
また、上述した実施の形態のマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末を樹脂と混練することにより、電波吸収体を製造することができる。この電波吸収体は、用途に応じて様々な形状にすることができるが、シート状の電波吸収体(電波吸収体シート)を作製する場合には、マグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末を樹脂と混練して得られる電波吸収体素材(混練物)を圧延ロールなどにより所望の厚さ(好ましくは0.1~4mm、さらに好ましくは0.2~2.5mm)に圧延すればよい。また、電波吸収体素材(混練物)中のマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末の含有量は、60~85GHz帯域の電波吸収能に優れた電波吸収体を得るために、70~95質量%であるのが好ましい。また、電波吸収体素材(混練物)中の樹脂の含有量は、電波吸収体素材(混練物)中にマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末を十分に分散させるために、5~30質量%であるのが好ましい。また、電波吸収体素材(混練物)中のマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末と樹脂の合計の含有量は99質量%以上であるのが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明によるマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0022】
[実施例1]
まず、原料粉末として515gのSrCO3(純度99質量%)と284gのAl2O3(純度99.9質量%)と2701gのFe2O3(純度99質量%)を秤量し、この原料粉末をヘンシェルミキサーにより混合した後、さらに振動ミルにより乾式法で混合した。なお、この原料粉末中のSrとFeとAlのモル比は、Sr:Fe:Al=1.06:10.29:1.71であり、Sr×12/(Fe+Al)=1.06、Al/(Fe+Al)=0.143である。このようにして得られた混合粉末をペレット状に造粒成形して成形体を得た後、焼成サヤに充填し、この焼成サヤを箱型焼成炉内に入れ、大気中において1279℃(焼成温度)で4時間保持して焼成した。この焼成により得られた焼成体をハンマーミルで粗粉砕した後、得られた粗粉を(溶媒として水を使用して)アトライターにより10分間湿式粉砕し、得られたスラリーを固液分離し、得られたケーキを乾燥させ、解砕して磁性粉末を得た。
【0023】
このようにして得られた磁性粉末について、組成分析を行い、BET比表面積および粒度分布を求めるとともに、X線回折(XRD)測定を行って結晶子径Dxを求めた。
【0024】
磁性粉末の組成については、Sr、BaおよびAlの定量は、アジレントテクノロジー株式会社製の高周波誘導プラズマ発光分析装置ICP(720-ES)を使用して行い、Feの定量は、平沼産業株式会社製の平沼自動滴定装置(CONTIME-980型)を使用して行った。その結果、磁性粉末中のSr、Ba、FeおよびAlのモル比は、Sr:Ba:Fe:Alは、1.01:0.01:10.20:1.80であり、Sr×12/(Fe+Al)=1.01、Al/(Fe+Al)=0.150であった。なお、磁性粉末中のBaの含有量は、0.14質量%(1400ppm)であった。
【0025】
磁性粉末のBET比表面積は、比表面積測定装置(株式会社マウンテック製のMacsorb model-1210)を用いて、BET1点法で測定した。その結果、磁性粉末のBET比表面積は0.97m2/gであった。
【0026】
磁性粉末の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日本電子株式会社製のへロス粒度分布測定装置(HELOS&RODOS))を使用して、分散圧1.7barで乾式分散させて測定し、体積基準の累積10%粒子径(D10)、(平均粒径として)累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)を求めたところ、それぞれ1.78μm、12.42μm、60.00μmあった。また、最も頻度の高い粒径をピーク粒径とすると、ピーク粒径は21.7μmであった。また、BET比表面積と体積基準の累積50%粒子径(D50)との積は12.00μm・m2/gであった。
【0027】
磁性粉末のX線回折測定は、粉末X線回折装置(株式会社リガク製の水平型多目的X線回折装置Ultima IV)を使用して、線源をCuKα線、管電圧を40kV、管電流を40mA、測定範囲を2θ=10°~75°として、粉末X線回折法(XRD)により行った。このX線回折測定の結果、得られた磁性粉末は、マグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。また、X線回折測定およびリーベルト解析により、このマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、SrとAlとFeを含み、Feサイトの一部がAlで置換されたマグネトプランバイト型六方晶Srフェライトであることが確認された。なお、このマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、組成分析の結果から、組成式SrxFe(12-y)AlyO18+x(x=1.01、y=1.80)で表されると推定される。
【0028】
磁性粉末の結晶子径Dxは、Scherrerの式(Dx=Kλ/βcosθ)によって求めた。この式中、Dxは結晶子径の大きさ(オングストローム)、λは測定X線の波長(オングストローム)、βは結晶子の大きさによる回折線の広がり(rad)(半価幅を用いて表す)、θは回折角のブラッグ角(rad)、KはScherrer定数(K=0.94とした)である。なお、計算には(114)面(回折角2θ=34.0~34.8°)のピークデータを使用した。その結果、磁性粉末の(114)面における結晶子径Dxは90.4nmであった。
【0029】
また、磁性粉末の磁気特性として、振動試料型磁力計(VSM)(東英工業株式会社製のVSM-7P)を使用して、印加磁場1193kA/m(15kOe)でB-H曲線を測定し、保磁力Hc、飽和磁化σs、角形比SQ、保磁力分布SFDを求めた。その結果、保磁力Hcは2131Oe、飽和磁化σsは33.8emu/g、角形比SQは0.631、保磁力分布SFDは1.074であった。
【0030】
また、得られた磁性粉末をその含有量が80質量%となるように高分子基材としてのニトリルゴム(NBR、JRS製のN215SL)と混練して電波吸収体素材(混練物)を作製し、この電波吸収体素材を圧延ロールにより厚さ2mmに圧延して、電波吸収体シートを得た。
【0031】
得られた電波吸収体シートについて、自由空間測定装置(キーコム株式会社製)とベクトルネットワークアナライザ(アンリツ株式会社製のME7838A)を使用して、自由空間法による電磁吸収特性として、S21パラメータによって透過する電磁波の強度を測定した。その結果、電磁吸収体シートのピーク周波数は80.14GHzであり、透過減衰量は18.84dBであった。
【0032】
[実施例2]
原料粉末中のSr、FeおよびAlのモル比を、Sr:Fe:Al=1.10:10.29:1.71とし、Sr×12/(Fe+Al)=1.10、Al/(Fe+Al)=0.143とした以外は、実施例1と同様の方法により、磁性粉末を作製し、組成分析を行い、BET比表面積および粒度分布を求めるとともに、X線回折(XRD)測定を行って結晶子径Dxを求めた。その結果、磁性粉末中のSr、Ba、FeおよびAlのモル比は、Sr:Ba:Fe:Alは、1.04:0.01:10.23:1.77であり、Sr×12/(Fe+Al)=1.04、Al/(Fe+Al)=0.148であった。なお、磁性粉末中のBaの含有量は、0.14質量%(1400ppm)であった。また、BET比表面積は1.04m2/gであった。また、体積基準の累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)は、それぞれ1.88μm、22.9μm、72.45μmであり、ピーク粒径は43.9μm、BET比表面積と体積基準の累積50%粒子径(D50)との積は23.86μm・m2/g、結晶子径Dxは129.2nmであった。また、実施例1と同様の方法により、得られた磁性粉末は、マグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認され、このマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、SrとAlとFeを含み、Feサイトの一部がAlで置換されたマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。なお、このマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、組成分析の結果から、組成式SrxFe(12-y)AlyO18+x(x=1.04、y=1.77)で表されると推定される。さらに、実施例1と同様の方法により、磁性粉末の磁気特性を評価したところ、保磁力Hcは1242Oe、飽和磁化σsは34.3emu/g、角形比SQは0.544、保磁力分布SFDは1.303であった。
【0033】
また、この磁性粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、電波吸収体シートを作製し、電磁吸収体シートのピーク周波数と透過減衰量を求めたところ、ピーク周波数は79.05GHzであり、透過減衰量は18.26dBであった。
【0034】
[実施例3]
焼成温度を1240℃にした以外は、実施例1と同様の方法により、磁性粉末を作製し、組成分析を行い、BET比表面積および粒度分布を求めるとともに、X線回折(XRD)測定を行って結晶子径Dxを求めた。その結果、磁性粉末中のSr、Ba、FeおよびAlのモル比は、Sr:Ba:Fe:Alは、1.02:0.01:10.25:1.75であり、Sr×12/(Fe+Al)=1.02、Al/(Fe+Al)=0.146であった。なお、磁性粉末中のBaの含有量は、0.13質量%(1300ppm)であった。また、BET比表面積は1.54m2/gであった。また、体積基準の累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)は、それぞれ1.11μm、5.17μm、43.73μmであり、ピーク粒径は3.0μm、BET比表面積と体積基準の累積50%粒子径(D50)との積は7.97μm・m2/g、結晶子径Dxは82.7nmであった。また、実施例1と同様の方法により、得られた磁性粉末は、マグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認され、このマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、SrとAlとFeを含み、Feサイトの一部がAlで置換されたマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。なお、このマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、組成分析の結果から、組成式SrxFe(12-y)AlyO18+x(x=1.02、y=1.75)で表されると推定される。さらに、実施例1と同様の方法により、磁性粉末の磁気特性を評価したところ、保磁力Hcは3812Oe、飽和磁化σsは34.0emu/g、角形比SQは0.642、保磁力分布SFDは0.961であった。
【0035】
また、この磁性粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、電波吸収体シートを作製し、電磁吸収体シートのピーク周波数と透過減衰量を求めたところ、ピーク周波数は76.58GHzであり、透過減衰量は20.80dBであった。
【0036】
[比較例]
まず、原料粉末として469gのSrCO3(純度99質量%)と279gのAl2O3(純度99.9質量%)と2658gのFe2O3(純度99質量%)と93gのBaCl2・2H2O(純度99質量%)を秤量し、この原料粉末をヘンシェルミキサーにより混合した後、さらに振動ミルにより乾式法で混合した。なお、この原料粉末中のSr、Ba、FeおよびAlのモル比は、Sr:Ba:Fe:Al=0.98:0.12:10.29:1.71であり、Sr×12/(Fe+Al)=0.98、Al/(Fe+Al)=0.143である。このようにして得られた混合粉末をペレット状に造粒成形して成形体を得た後、焼成サヤに充填し、この焼成サヤを箱型焼成炉内に入れ、大気中において1279℃(焼成温度)で4時間保持して焼成した。この焼成により得られた焼成体をハンマーミルで粗粉砕した後、得られた粗粉を(溶媒として水を使用して)アトライターにより10分間湿式粉砕し、得られたスラリーを固液分離し、得られたケーキを乾燥させ、解砕して磁性粉末を得た。
【0037】
このようにして得られた磁性粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行い、BET比表面積および粒度分布を求めるとともに、X線回折(XRD)測定を行って結晶子径Dxを求めた。その結果、磁性粉末中のSr、Ba、FeおよびAlのモル比は、Sr:Ba:Fe:Alは、0.93:0.13:10.34:1.66であり、Sr×12/(Fe+Al)=0.93、Al/(Fe+Al)=0.138であった。なお、磁性粉末中のBaの含有量は、1.72質量%(17000ppm)であった。また、BET比表面積は1.80m2/gであった。また、体積基準の累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)は、それぞれ1.39μm、8.44μm、54.44μmであり、ピーク粒径は5.2μm、BET比表面積と体積基準の累積50%粒子径(D50)との積は15.21μm・m2/g、結晶子径Dxは91.2nmであった。また、実施例1と同様の方法により、得られた磁性粉末は、マグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認され、このマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、SrとBaとAlとFeを含み、Feサイトの一部がAlで置換されたマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。さらに、実施例1と同様の方法により、磁性粉末の磁気特性を評価したところ、保磁力Hcは2924Oe、飽和磁化σsは34.9emu/g、角形比SQは0.642、保磁力分布SFDは1.013であった。
【0038】
また、この磁性粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、電波吸収体シートを作製し、電磁吸収体シートのピーク周波数と透過減衰量を求めたところ、ピーク周波数は75.49GHzであり、透過減衰量は18.04dBであった。
【0039】
これらの実施例および比較例で得られた磁性粉末の製造条件および特性と電波吸収体シートの特性を表1~表2に示す。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によるマグネトプランバイト型六方晶フェライト磁性粉末は、76GHz帯域の電波吸収能に優れた電波吸収体シートの作製に利用することができる。