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特許7292826試験測定システム、波形処理方法及びコンピュータ・プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】試験測定システム、波形処理方法及びコンピュータ・プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20230612BHJP
   G01R 29/02 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
G01R13/20 R
G01R13/20 P
G01R29/02 L
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018045966
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2018159702
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】62/470,757
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/687,364
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】カン・タン
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-271063(JP,A)
【文献】特開2016-213834(JP,A)
【文献】特開2012-170081(JP,A)
【文献】特開昭58-121838(JP,A)
【文献】特開2007-325070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0150060(US,A1)
【文献】特開2016-24200(JP,A)
【文献】米国特許第6995553(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/20
G01R 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を受ける入力ポートと、
上記入力信号を表す波形用の波形メモリと、
該波形メモリに結合されたプロセッサと
を具え、
該プロセッサが、
上記波形から信号パルスを抽出し、
時間領域において、該信号パルスの形状に基づいて整数個のユニット・インターバルの幅を有する窓関数を選択し、
上記信号パルスに上記窓関数を適用して、上記窓関数の窓の外のシンボル間干渉(ISI)を除去するよう構成される
試験測定システム。
【請求項2】
上記プロセッサは、
上記窓関数を上記信号パルスに適用してターゲット・パルスを取得し、
上記信号パルスと畳み込み積分されたときに上記ターゲット・パルスを生じる線形イコライザを生成し、
該線形イコライザを上記波形に適用することによって、
上記窓関数を上記信号パルスに適用する請求項1の試験測定システム。
【請求項3】
メモリから信号を表す波形を取得する処理と、
プロセッサによって上記波形から信号パルスを抽出する処理と、
上記プロセッサによって時間領域において上記信号パルスの形状に基づいて整数個のユニット・インターバルの幅を有する窓関数を選択する処理と、
上記窓関数の窓の外のシンボル間干渉(ISI)を除去するために、上記プロセッサによって上記窓関数を上記信号パルスに適用する処理と
を具える波形処理方法。
【請求項4】
上記窓関数を上記信号パルスに適用してターゲット・パルスを取得し、
上記信号パルスと畳み込み積分されたときに上記ターゲット・パルスを生じる線形イコライザを生成し、
該線形イコライザを上記波形に適用することによって、
上記窓関数が上記信号パルスに適用される請求項の波形処理方法。
【請求項5】
試験測定システムのプロセッサによって実行されたときに、上記試験測定システムに、請求項3又は4の方法を実行させるコンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験測定システムの態様に関連するシステム及び方法に関し、特に、試験測定システムにおけるシンボル間干渉(Intersymbol Interference)を低減するためのフィルタを利用するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試験測定システムは、例えば、被試験デバイス(DUT)からの信号の入力を受けて、信号をサンプルし、その測定結果と処理された波形を表示し、その波形を例えば、アイ・ダイアグラムとして描画する。こうした測定値には、ジッタが含まれることがある。ジッタは、理想的できれいなシステム・クロック動作からの信号の時間的なずれ(偏差)である。長時間の信号は、その信号データの異なる区間を複数回重ねてトレースすることによって、いわゆるアイ・ダイアグラムの形式で、グラフ化又は描画できる。信号が、時間対振幅の観点からアイ・ダイアグラムで描画されると、ジッタは、信号中に水平方向の変動として現れる。
【0003】
信号は、また、シンボル間干渉(ISI)を含むことがある。ISIは、チャンネルの帯域制限のような物理的制約のために、現実の信号での変化が完璧でないために生じる。例えば、信号値の変化は、高速なシグナリングにおいては、相対的に速く生じることがある。しかし、こうした変化の後、信号が新しい状態に落ち着いても、リップルが後に残ることがある。ISIは、前の信号状態の変化によるリップルがその後も残り、後続の信号状態の変化に干渉するときに生じる。時間対振幅の観点からアイ・ダイアグラムで描画されると、ISIは、信号パターンに依存して、水平方向の変動と垂直方向の変動との組み合わせとして現れることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5965587号公報
【文献】特許第4737452号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「窓関数」の記事、特に「5 窓関数の例」の中の「5.1.5 テューキー窓」の項、Wikipedia、[2018年3月13日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/窓関数>
【文献】「Window function」の記事、特に「2 A list of window functions」の中の「2.6.5 Tukey window」、Tukey windowを表す数式、Wikipedia、[2018年3月13日検索]、インターネット<https://en.wikipedia.org/wiki/Window_function>
【文献】「tukeywin テューキー (コサインテーパー) ウィンドウ」のドキュメンテーション、The MathWorks, Inc.、[2018年3月13日検索]、インターネット<https://jp.mathworks.com/help/signal/ref/tukeywin.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ジッタは、一般に、ISIに関連して2つのカテゴリに分けられる。相関ジッタは、ISIが信号エッジのクロス時間を変化させる場合、ISIの影響によって生じる。非相関ジッタは、ISIではなくて、ISIと相関のないランダム・ジッタや周期ジッタのように、信号源によって生じるジッタである。ISI相関ジッタは、ISI非相関ジッタも生じさせることがある。非相関ジッタとISIジッタの両方は、信号中に水平方向の変動を生じさせるので、試験システムは、高速信号中のジッタの影響をISIの影響から分離できないことがある。
【0007】
本発明の実施形態は、これら及びその他の課題に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の説明に有用な実施例を以下に提示する。その技術の実施形態には、以下に説明する実施例のいずれか1つ以上又は任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0009】
実施例1としては、試験測定システムがあり、入力信号を受ける入力ポートと、入力信号を表す波形用の波形メモリと、波形メモリに結合されたプロセッサとを有し、プロセッサは、波形から信号パルスを抽出し、信号パルスの形状に基づいて窓関数を選択し、信号パルスに窓関数を適用して、窓関数の窓(window)の外のシンボル間干渉(ISI)を除去するよう構成される。
【0010】
実施例2としては、実施例1の試験測定システムがあり、このとき、プロセッサは、窓関数を信号パルスに適用してターゲット・パルスを取得し、上記パルスと畳み込み積分されたときにターゲット・パルスを生じる線形イコライザを生成し、この線形イコライザを波形に適用することによって、窓関数を信号パルスに適用する。
【0011】
実施例3としては、実施例1~2の試験測定システムがあり、このとき、窓関数は、ポイント毎の乗算を用いて信号パルスに適用される。
【0012】
実施例4としては、実施例1~3の試験測定システムがあり、このとき、線形イコライザは、
オリジナル*hイコライザ=hターゲット
に従って生成され、このとき、hオリジナルは信号パルスを表し、hイコライザは線形イコライザを表し、hターゲットはターゲット・パルスを表し、*は畳み込み積分演算子(convolution operator)を表す。
【0013】
実施例5としては、実施例1~4の試験測定システムがあり、このとき、信号パルスは、線形パルス抽出によって波形から抽出される。
【0014】
実施例6としては、実施例1~5の試験測定システムがあり、このとき、窓関数には、3ビット期間の長さが割り当てられる。
【0015】
実施例7としては、実施例1~6の試験測定システムがあり、このとき、窓関数は、テューキー窓として選択される。
【0016】
実施例8としては、方法があり、メモリから信号を表す波形を取得する処理と、プロセッサによって波形から信号パルスを抽出する処理と、プロセッサによって信号パルスの形状に基づいて窓関数を選択する処理と、窓関数の窓の外のシンボル間干渉(ISI)を除去するために、プロセッサによって窓関数を信号パルスに適用する処理とを具えている。
【0017】
実施例9としては、実施例8の方法があり、このとき、窓関数を信号パルスに適用してターゲット・パルスを取得し、上記信号パルスと畳み込み積分されたときにターゲット・パルスを生じる線形イコライザを生成し、この線形イコライザを波形に適用することによって、窓関数が信号パルスに適用される。
【0018】
実施例10としては、実施例9の方法があり、このとき、窓関数は、ポイント毎の乗算を用いて信号パルスに適用される。
【0019】
実施例11としては、実施例9~10の方法があり、このとき、線形イコライザは、
オリジナル*hイコライザ=hターゲット
に従って生成され、このとき、hオリジナルは信号パルスを表し、hイコライザは線形イコライザを表し、hターゲットはターゲット・パルスを表し、*は畳み込み積分演算子(convolution operator)を表す。
【0020】
実施例12としては、実施例8~11の方法があり、このとき、信号パルスは、線形パルス抽出によって波形から抽出される。
【0021】
実施例13としては、実施例8~12の方法があり、このとき、窓関数には、3ビット期間の長さが割り当てられる。
【0022】
実施例14としては、実施例8~13の方法があり、このとき、窓関数は、テューキー窓として選択される。
【0023】
実施例15としては、非一時的コンピュータ可読媒体があり、試験測定システムのプロセッサによって実行されたときに、試験測定システムに、メモリから信号を表す波形を取得させ、波形から信号パルスを抽出させ、信号パルスの形状に基づいて窓関数を選択させ、窓関数の窓の外のシンボル間干渉(ISI)を除去するために、窓関数を信号パルスに適用させる命令を含むコンピュータ・プログラム・プロダクトを記憶している。
【0024】
実施例16としては、実施例15の非一時的コンピュータ可読媒体があり、このとき、窓関数を信号パルスに適用してターゲット・パルスを取得し、上記信号パルスと畳み込み積分されたときにターゲット・パルスを生じる線形イコライザを生成し、この線形イコライザを波形に適用することによって、窓関数が信号パルスに適用される。
【0025】
実施例17としては、実施例16の非一時的コンピュータ可読媒体があり、このとき、窓関数は、ポイント毎の乗算を用いて信号パルスに適用される。
【0026】
実施例18としては、実施例16~17の非一時的コンピュータ可読媒体があり、このとき、線形イコライザは、
オリジナル*hイコライザ=hターゲット
に従って生成され、このとき、hオリジナルは信号パルスを表し、hイコライザは線形イコライザを表し、hターゲットはターゲット・パルスを表し、*は畳み込み積分演算子(convolution operator)を表す。
【0027】
実施例19としては、実施例15~18の非一時的コンピュータ可読媒体があり、このとき、窓関数には、3ビット期間の長さが割り当てられる。
【0028】
実施例20としては、実施例15~19の非一時的コンピュータ可読媒体があり、このとき、窓関数は、テューキー窓として選択される。
【0029】
本発明の実施形態の態様、特徴及び効果は、添付の図面を参照し、以下の実施形態の説明を読むことで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、ISIを呈する例示的なパルス信号のグラフである。
図2図2は、ジッタ及びISIを呈するパルスを有する例示的な信号のグラフである。
図3図3は、パルス振幅変調4(PAM4)に従って生成された例示的な信号のグラフである。
図4図4は、窓関数で緩和されたISIを有する信号パルスの例示的な信号のグラフである。
図5図5は、ISIイコライザを適用した後の例示的な信号のグラフである。
図6図6は、例示的なISIイコライザの周波数応答のグラフである。
図7図7は、ISIイコライザを生成するための例示的な試験測定システムのブロック図である。
図8図8は、ISIイコライザを生成して適用する例示的な方法のフローチャートである。
図9図9は、ISIイコライザを適用していない信号に関するアイ・ダイアグラムである。
図10図10は、ISIイコライザを適用した信号に関するアイ・ダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、命令に応じて、入力信号に対応する波形中のISIを緩和、即ち、低減、制限又は除去するよう構成された試験測定システムに関する。ISIが大幅に制限されると、ユーザは、非相関ジッタをより正確に測定できる。こうした機能は、パルス振幅変調4(PAM4)のような複数の信号レベルを有する高速信号を試験する場合に、特に有用である。ノン・リターン・トゥ・ゼロ(NRZ)変調のような他の信号形式から、非相関ジッタを制限する場合にも有用である。ISIは、ISIイコライザを利用することによって緩和される。ISIイコライザは、線形イコライザであり、これは、ISI制限フィルタとして機能する。ISIイコライザは、入力信号に対応する波形から、例えば、線形パルス抽出を利用して、パルスを抽出することによって生成される。次いで、窓関数が、そのパルスの形状に基づいて選択される。窓関数は、ターゲット・パルスの長さに対応するユニット・インターバル(UI)単位の幅を有するように選択される。次いで、この窓関数は、ポイント毎の乗算によって、パルスに適用されて、ターゲット・パルスを得る。このターゲット・パルスは、セトリングしていない(unsettled:沈静していない)振幅で、長さが短くなったもので、例えば、ターゲット・パルスのISIは、期間(duration:持続時間)について制限される。次いで、抽出されたパルスと畳み込み積分されるとターゲット・パルスを生成する線形イコライザを求めることによって、ISIイコライザが生成される。この線形イコライザは、最小平均二乗(Least Mean Square:LMS)アルゴリズムを利用することによって求めても良い。得られたISIイコライザは、次いで、波形全体に渡って適用され、各パルスについて、ISIイコライザを生成するのに利用された窓関数の窓の外のISIが除去される。
【0032】
図1は、ISIを呈する例示的なパルス信号のグラフ100である。グラフ100は、以下で記述する試験測定システム700のような試験測定システムによって捕捉されるような入力信号を表す波形を描写している。グラフ100は、ユニット・インターバル(UI)中の小さな区画で測定された、時間に対する電圧(V)の観点から信号を描写している。1ユニット・インターバルは、デジタル・データ伝送信号の状態変化間の最小時間インターバル(間隔)である。言い換えると、UIは、デジタル信号の値が、第1のシンボルを表してから、第2のシンボルを表すように変化するのに必要な時間の長さである。グラフ100は、入力信号に由来する単一の信号パルスを描いている。なお、パルスは、パルス応答と呼ぶこともあることに注意されたい。パルスには、プリ・カーソル101、メイン・カーソル103、そして、ポスト・カーソル105がある。図示されるように、パルスは、アナログ信号なので、単一のUI中でも変化する。例えば、パルスは、1UIにおけるハイ(high:高)の値から、2UIまでにロー(low:低)の値へと変化する。メイン・カーソル103は、パルスの信号シンボル値を示す部分である。パルスのプリ・カーソル101は、前の値からメイン・カーソル103への値の変化を表すパルスの部分である。ポスト・カーソル105は、信号がメイン・カーソル103の後の安定した値へとセトリングして戻る時間を表すパルスの部分である。ポスト・カーソル105は、時間とともに小さくなる、いくつかの信号リップルを含む。別のパルスがメイン・カーソル103に続く場合では、ポスト・カーソル105のパルスが、プリ・カーソルの値や後続のパルスのメイン・カーソルさえも増加させる(又は、例えば、実施例によっては、低くさせる)こともある。ISIは、第1のパルスが、第2のパルスの値を、そのメイン・カーソルの前後で変化させる場合に生じる。グラフ100で見られるように、高速シグナリングでは、各パルスが1つ又は複数の後続パルスを変化させることがあるので、大きなISIが生じることがある。ISIは、通信リンクのような媒体における変化によって起こるべくして起こる応答が原因となり得る。ISIは、通信リンクにおける不連続から生じるチャンネルの損失や反射も原因となり得る。
【0033】
図2は、ジッタ及びISIを呈するパルスを有する例示的な信号のグラフ200である。グラフ200は、入力信号に由来する第1パルス201及び第2パルス203を、UI単位で、時間に対する電圧の関数として描写している。パルス201、203は、周期的な方式で伝送され、よって、周期的に正確に間隔があくはずである。しかし、第2パルス203は、第1パルス201から水平方向に、例えば、1UIシフトしている。水平シフトの量を測定すれば、ジッタが示される。第1パルス201及び第2パルス203は、描かれているように、ISIを低減しようと試みて、2乗余弦(raised consine)形状を採用している。しかし、ジッタのために、第1パルス201のポスト・カーソルが、第2パルス203のメイン・カーソルの値を増加させている。具体的には、第2パルス203のメイン・カーソルは、0.5UIで生じる。この時点で、第1パルス201のポスト・カーソルは、約0.02Vであり、第2パルスの見かけ上の電圧は、同じ量だけ増加することになる。図2に示すように、ISI及びジッタは、ジッタを除去することなくISIを除去するのが困難な形で、相互作用することがある。
【0034】
上述のように、ユーザは、試験中、ある形式のジッタ測定のために、ISIの影響を緩和したいことがある。ジッタには、多くの原因があり得る。ISIは、ISIジッタの原因となることがある。更に、他の原因も、周期ジッタやランダム・ジッタのようなある形式の非相関ジッタを生じることがある。また、ノイズも、エッジのスロープによって、ジッタに変換されることがある。こうしたノイズは、トランスミッタ、隣接チャンネルからのクロス・トーク、オシロスコープのような測定装置に由来することがある。正確な測定を行うには、ジッタに影響する原因(sources)を検討すると良い。ISIを除去又は制限すると、ジッタの原因の特定が、大幅に容易になることがある。
【0035】
図3は、パルス振幅変調4(PAM4)に従って、時間に対する電圧の関数として、UI単位で生成された例示的な信号のグラフ300である。多くの信号変調フォーマットが、2進法の体系で、ハイ(高)値(例えば、1)及びロー(低)値(例えば、ゼロ)を示すシンボルを採用している。PAM4は、4つのレベル、第1値301、第2値303、第3値305及び第4値307を採用している。4つの値を利用することによって、単一のパルスで、1ビットだけなく、2ビットを信号で伝えることができる。示したこれら値は、グレイコードを採用しており、これによって、各レベルは、必ず、隣接する各レベルから1ビットのみが変化する。この仕組みを利用することによって、第3値305を第2値303と間違えるような、測定におけるエラーでも、2ビットの間違いではなくて、1ビットのみの間違いという結果を生じる。グラフ300に示す信号は、理論上の信号であり、通信媒体の周波数応答、又は、対応する値間の調整時間は考慮していない。図からわかるように、PAM4信号のレシーバは、複数の値のレベルを識別できなければならない。図1に示すパルスのような、実際のパルスのポスト・カーソルは、第1値301を第2値303へ押し上げたり、第2値303を第3値305へ押し上げたりする、などに十分な電圧を加えることがある。図2に示すようなジッタも、こうしたエラーを生じさせることがある。このように、ISIを除去又は制限することは、PAM4信号の適切な動作を試験する場合に、特に有益なことがある。
【0036】
図4は、窓関数411で緩和されたISIを有する信号パルス410の例示的な信号のグラフ400である。グラフ400は、UI単位で、時間に対する電圧の関数として、信号パルス410を描いている。信号パルス410は、入力信号をサンプリングして生成される任意の波形で良く、その形状は、通信媒体の周波数応答で決まる。上述のように、信号パルス410は、プリ・カーソル401、メイン・カーソル403及びポスト・カーソル405を含み、これらは、プリ・カーソル101、メイン・カーソル103及びポスト・カーソル105と夫々ほぼ同様である。窓関数411は、任意の数学的な関数であり、選択した区間(Interval)の外の値はゼロである。窓関数411は、任意の形状を取ることができ、2点破線で示されている。例として、窓関数411は、テューキー窓として描かれている。窓関数411は、信号パルス410と乗算できる。テューキー窓は、上部がフラットな窓関数であり、これによって、窓関数411を信号パルス410と乗算したときに、メイン・カーソル403の形状が保持される。
【0037】
上述のように、窓関数411には、境界による区間(例えば、長さ)がある。これら境界を超えると、窓関数411の値は、ゼロに落ちる。窓関数411が、信号パルス410と乗算されると、信号パルス410の区間外の全ての部分は、ゼロと乗算されて、除去される。信号パルス410の残りの部分は、(例えば、テューキー窓のフラットな上部による)一定値と乗算され、これは、信号形状を歪ませることなく、信号パルス410をスケール調整(拡大又は縮小)する。続いて、信号パルス410の窓関数411の区間内の部分について、窓関数411の影響を補償するために、信号パルス410を再度スケール調整しても良い。しかし、信号パルス410の窓関数411の区間外の部分については、太線で示すように、除去される。プリ・カーソル401の部分及びポスト・カーソル405の大部分は、境界の外にあり、よって、信号パルスを窓関数と乗算したときに、除去される。これは、信号パルス410に由来するISIを制限する効果がある。
【0038】
窓関数41は、信号パルス410の形状と長さに基づいて選択して良いことに注意されたい。例えば、信号パルス410は、線形パルス抽出によって抽出しても良い。窓関数41の長さは、信号パルス410の幅に基づいて設定しても良い。例としては、窓関数41を3UIの幅として設定し、3UIの境界の外のISIを排除しつつ、メイン・カーソルに加えて予期されるジッタをいくらか含むようにしても良い。これによって、3UIの境界を越える全ての後続ビットに対して、信号パルス410がISIの影響を確実に与えないようになる。しかし、ジッタがほとんどない場合には、3UIの境界を小さな個数(例えば、2UI)に調整しても良し、大きなジッタが存在する場合か、シンボル間の間隔がもっと大きい場合には、もっと大きな個数(例えば、4UI、5UIなど)に調整しても良い。
【0039】
図5は、窓関数411のような窓関数に従って決定しても良いISIイコライザを適用した後の例示的な信号のグラフ500である。グラフ500は、UI単位で、時間に対する電圧の関数として、第1パルス501及び第2パルス503を描いている。これらパルスの境を区別するため、第1パルス501は、標準的なレース・ウェイト(weight:重み付け)で描かれ、第2パルス503は、太線ウェイトで描かれている。第1パルス501は、時間的に第2パルス503に先行しており、また、パルス501及び503の両方は、ISIを生じるプリ・カーソル/ポスト・カーソルを除去するために、窓関数と乗算されている。図示されるように、第1パルス501は、第2パルス503に対する影響が、もしあるとしても制限され、その逆もまた同様である。このように、ISIは、窓関数を適用することによって制限(例えば、大幅に減少又は除去)される。
【0040】
窓関数を適用することによって波形がイコライズされれば、ビット・シーケンスの限定的な長さを用いてジッタ測定が実行できる。更に、その結果は、ISIの影響を回避できる。例えば、窓関数から得られたターゲット・パルスが3UIの長さの場合では、ジッタを決めるのに、4ビット長のシーケンスで十分なこともあろう。
【0041】
図6は、窓関数411のような窓関数に従って決めることができる例示的なISIイコライザの周波数応答のグラフ600である。グラフ600は、ISIイコライザを適用した後の関数の信号対ノイズ比(SNR)の変化の大きさ(magnitude:マグニチュード)を描いている。このSNRの変化は、ギガ・ヘルツ(GHz)単位の周波数に対するデジベル(dB)単位の大きさの変化として描かれている。図示のように、SNRの変化は、DCから約14GHzまで、ほぼゼロである。SNRの変化は、約20GHzまでわずかに増加し、これを超えると、ISIイコライザは、SNRを大きく変化させる。結果として、本願で説明する例示的なISIイコライザは、約20GHzまで信号ノイズを増加させることなく、ISIを制限するのに効果的である。2乗余弦法やSパラメータ・ディエンベッドのようなISIを除去する他の方法は、20GHzより下でSNRを増加させることがあることに注意されたい。このように、ISIイコライザは、他のこのような機構よりも、ゼロから20GHzのレンジにおいて、信号ノイズを増加させることなくISIを制限するのに、より効果的である。
【0042】
図7は、窓関数411のような窓関数に基づいて生成されるISIイコライザのようなISIイコライザを生成するための例示的な試験測定システム700のブロック図である。システム700で生成されるISIイコライザは、グラフ600で示されるような周波数応答を有するとしても良い。こうしたISIイコライザは、グラフ300で示されるPAM4信号のような信号であって、グラフ100や200に示されるような信号パルスを含む信号に適用しても良い。こうしたISIイコライザは、グラフ500に示すように、ISIを制限する。
【0043】
試験測定システム700は、ISIイコライザ722を生成して、波形データ(又は単に「波形」と呼ぶ)765に適用するよう構成されるオシロスコープ720を含む。ISIイコライザ722は、波形データ765に適用されて波形データ765のISIを制限(例えば、低減又は除去)し、正確なジッタ測定を支援できる任意の線形イコライザである。オシロスコープ720は、被試験デバイス(DUT)710からの入力信号761を入力ポート727で受けて、A/Dコンバータ725を利用して入力信号761をデジタル信号に変換し、このデジタル信号を波形データ765として波形メモリ723に蓄積するよう構成される。次いで、プロセッサ721は、ISIイコライザ722を生成して波形データ765に適用し、ISIを緩和する。得られる波形データ765は、制限されたISIを有し、エンド・ユーザに表示するために、表示装置729へも送られるようにしても良い。
【0044】
DUT710は、電気信号や光信号を使って伝達するよう構成される任意の信号源としても良い。例えば、DUT710としては、電気的/光学的な伝送媒体を通じて、PAM4信号のような信号を伝送するよう構成されたトランスミッタを含んでいても良い。DUT710は、例えば、DUT710が欠陥信号の伝送に関わっていると思われる場合の試験を目的としたり、新規設計されたDUT710のシグナリング精度を確認するために、オシロスコープ720に結合されても良い。場合によっては、入力信号761は、DUT710内にあるようにして、信号プローブを使ってアクセスするようにしても良い。DUT710は、DUTリンクを介してオシロスコープ720に接続されても良い。 例えば、DUTリンクは、電気伝導性ワイヤ、光ファイバ、信号プローブ、中間試験機器などを利用して、入力信号761をDUT710からオシロスコープ720へと伝送しても良い。
【0045】
オシロスコープ720は、入力ポート727で入力信号761を受ける。入力ポート727は、例えば、信号プローブを受けるプラグのようなリンクを使って、DUT710とインタフェースを持つように構成される。入力信号761は、時間に対して変動する量(例えば、電圧、電流など)を有する任意の連続的な信号である。オシロスコープ720には、更に、試験する信号を伝送する信号チャンネルがある。信号チャンネルは、入力ポート727から、オシロスコープ720のサンプリング回路へと伸びているしても良い。また、オシロスコープ720には、信号チャンネルに沿って、A/Dコンバータ725もある。A/Dコンバータ725は、入力信号761をアナログ形式からデジタル形式へ(例えば、デジタル信号へ)と変換するよう構成される。A/Dコンバータ725は、入力信号761を時間的に離散した複数時点においてサンプリングすることによって入力信号761をデジタル信号へ変換しても良く、これは、離散非連続信号を生じる。波形データ765は、時間的な離散時点間を補間することによって、デジタル信号表現として生成されても良い。
【0046】
波形データ765は、更なる処理のために、波形メモリ723に記憶されても良い。波形メモリ723は、波形サンプルを記憶及び取り出すように構成された任意のメモリとすることができる。波形メモリ723は、A/Dコンバータ725に結合され、デジタル信号を波形データ765として保存できる。波形メモリ723は、キャッシュ・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、ソリッド・ステート・ドライブなどで実現されても良い。波形メモリ723は、要求に応じて、波形データ765又はその一部分を、更なる処理のために、プロセッサ721へ転送しても良い。
【0047】
プロセッサ721は、表示のために波形データ765を調整したり、波形データ765を所望のフォーマットに変換するように構成された任意の処理回路である。プロセッサ721は、ノイズ・フィルタ、補間回路、変換回路などの1つ又は複数の回路を使って実現されても良い。プロセッサ721は、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、汎用プロセッサ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はこれらの組み合わせで実現されても良い。プロセッサ721は、ISIイコライザ722を生成して波形データ765に適用し、信号ノイズやジッタに関する影響を最小としつつ、ISIを緩和するのに利用されても良い。プロセッサ721は、本願で説明する方法800のような任意の方法を実現できる。
【0048】
処理の後、得られた制限されたISIを有する波形データ765や関連するフィルタ、中間計算結果は、ユーザに表示するために、プロセッサ721から表示装置729へと送られる。表示装置729は、視覚的な形態で情報を出力するよう構成された任意の装置である。例えば、表示装置729としては、デジタル・ディスプレイ、陰極線管、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、プラズマ・スクリーン・ディスプレイなどを含んでも良い。表示装置729は、波形データ765を表示するための1つ以上のグラチクル(graticules)を含んでも良い。表示装置729は、オシロスコープ720中に含まれても良いし、オシロスコープ720からのデータを汎用コンピュータを介して受ける、独立した表示装置(例えば、モニタ)であっても良い。表示装置729は、時間領域の波形データ765、周波数領域の波形データ765、ジッタ測定値のような測定結果や任意の中間データを含む多種多様なデータを表示しても良い。オシロスコープ720は、当業者には理解されるように、信号の波形を捕捉して表示するための他の構成要素を含んでも良いことに注意すべきである。そのような構成要素は、明確化のために、示されていないことが理解されよう。
【0049】
ここで、システム700を使用してISIイコライザ722を生成して適用する処理を説明する。入力ポート727を使って入力信号761を受ける。次に、入力信号761は、A/Dコンバータ725による入力信号を表す波形データ765に変換される。続いて、波形データ765は、波形メモリ723に記憶される。プロセッサ721は、波形データ765から信号パルス410のような信号パルスを抽出する。信号パルスは、線形パルス抽出のような処理によって波形データ765から抽出できる。線形パルス抽出は、多数のパルス及び信号値変化/パルス(例えば、PAM4信号のような)を含む波形データ765から単一の信号パルスのパルス応答を抽出するメカニズムである。次に、プロセッサ721は、信号パルスの形状に基づいて窓関数411のような窓関数を選択する。上述のように、信号パルスのメイン・パルスの幅/長さに基づいて、窓関数に長さNを割り当てても良く、ここでNは、信号パルスのメイン・パルスの長さである。例えば、窓関数には、サンプリングするときに、入力信号765に適用される3タップ・トランスミッタ・イコライザに対応して、3UIの初期設定(デフォルト)の長さが割り当てられても良い。3タップ・トランスミッタ・イコライザは、1プリ・カーソル・タップ、1メイン・カーソル・タップ及び1ポスト・カーソル・タップを有することがあり、よって、Nを3に設定しても良い。シンボル/ビットは、UI毎に値が変化することがあるので、こうした長さを3ビット期間と呼ぶこともできる。、ISIを一層除去したり、ジッタを少なめに排除するように、ユーザの入力によって、希望に応じて、窓関数の長さも変化させて良い。例えば、窓関数には、希望に応じて、2、4、6、7などのビット期間/UIの長さが割り当てられても良い。窓関数は、信号パルスの形状に基づいて、及び/又は、ユーザの入力に基づいて、選択されても良い。例えば、ISIを制限するときに、もしユーザがパルスのメイン・カーソルの変更を回避したいなら、テューキー窓のような、ほぼ矩形の窓関数形状を選択しても良い。しかし、希望に応じて、他の多数の窓関数形状を利用しても良い。
【0050】
次いで、プロセッサ721は、窓関数を波形データ765に適用して窓関数の窓の外のISIを除去しても良い。プロセッサ721は、マルチ・ステップ処理で窓関数を波形データ765に適用しても良い。プロセッサ721は、最初に、窓関数を信号パルスに適用してターゲット・パルスを得る。例えば、グラフ400で示すように、ポイント毎の乗算を利用して、窓関数を信号パルスに適用しても良い。プロセッサ721は、次いで、抽出した信号パルスと畳み込み積分(convolution)をしたときにターゲット・パルスを生じるISIイコライザ722を生成する。続いて、プロセッサ721は、ISIイコライザ722を波形データ765の全体に適用しても良い。数学的に言えば、ISIイコライザ722は、以下の数式1に従って生成できる。
【0051】
数式1
オリジナル*hイコライザ=hターゲット
【0052】
ここで、hオリジナルは信号パルスを表し、hイコライザは線形イコライザを表し、hターゲットはターゲット・パルスを表し、*は畳み込み積分演算子(convolution operator)を表す。数式1を解くことによって、特定の波形データ765に関するISIイコライザ722が生成される。例えば、数式は、最小平均二乗(Least Mean Squares:LMS)処理を利用して解くことができる。
【0053】
プロセッサ721によってイコライザ処理した波形が得られれば、数を制限したビット・シーケンスを用いて、非相関ジッタ測定を実行できる。例えば、もしN=3なら、非相関ジッタを正確に求めるのに、長さ4のビット・シーケンスを用いても良い。こうしたビット・シーケンスは、そのビット・シーケンスが2レベルの1ビットを有し、これに2レベルの2ビットが続く場合に利用しても良い。上述の処理は、ジッタを決定する他のアプローチに対して、いくか有利な点がある。1例としては、ISIイコライザ722がISIを制限することで、ISIなしでジッタ測定を実行できることである。グラフ100に示すように、ポスト・カーソルは、6UIを超えることがあるので、他のアプローチでは、ISIの除去を保証できない。また、ISIイコライザ722は、N個のUI内に信号パルスの形状を大部分保つ。比較して、2乗余弦アプローチやSパラメータ・ディエンベッド・アプローチは、オリジナルのパルスに関係ないイコライザ処理ターゲットを利用することがある。結果として、オリジナル・パルスがイコライザ・ターゲットと異なる場合、こうしたイコライザは、波形を大幅に変更することがある。こうした他のイコライザのジッタに対する影響は、こうした影響が多くの要因に依存するので、定量化するのが難しい。このような他のアプローチの危険の1つは、ノイズを増加させ、エッジのスロープを変更することである。こうしたノイズは、エッジ・スロープによって、ジッタに変換される。例えば、2乗余弦イコライザには、その信号帯域幅内に上向きのスロープがあり、これは、デジタル信号が高い周波数ほど(例えば、20GHzより上)エネルギーが少ない傾向にあるので、こうしたイコライザがSNRを悪化させることを示す。比較して、ISIイコライザ722は、グラフ600に示すように、比較的フラットな周波数応答を有し、よって、SNRに対する影響が小さい。
【0054】
更に、ISIを最小化するのに、4レベル1ビットで、これに2レベル2ビットが続く6ビット長のシーケンスに対するジッタ測定を利用するアプローチに比較して、ISIイコライザ722の適用によって、より速いジッタ測定が可能になる。こうしたシーケンスは、擬似ランダム・バイナリ・シーケンス(PRBS13Q)データ・パターンとして知られる、ある電気通信(テレコミュニケーション)製品を試験するための標準化されたデータ・パターンから取られる。この例では、ISIイコライザ722によって、ジッタ測定において、単一の6ビット長シーケンスの代わりに、PRBS13Qに由来するいくつかの4ビット長シーケンスを利用可能になる。PRBS13Qは、上述のように、4レベル1ビットで、これに2レベル2ビットが続く6ビット長シーケンスよりも、4ビット長シーケンスをより多数利用する。PRBS13Qデータ・パターンについては、ISIイコライザ722を適用した後、6ビット・シーケンスの代わりに、4ビット長シーケンスを利用することで、測定時間が30倍低減する。これによって、ジッタ測定は、1時間の代わりに、2分で完了できるようになる。
【0055】
図示するように、ISI制限イコライザ(例えば、ISIイコライザ722)は、より正確なジッタ測定を提供する効果的なアプローチである。こうしたイコライザは、イコライザがISIを制限した後に、より短いビット・シーケンスの利用を可能にすることで、ジッタ測定の測定速度を改善する。これは、リアルタイム・オシロスコープにおいて、適切な時間で、正確なジッタ測定を行うことを可能にする。また、このアプローチは、イコライザ処理の後に、メイン・パルスの形状を保持する。
【0056】
図8は、例えば、試験測定システム700を用いてISIイコライザ722を生成して適用するような、ISIイコライザを生成して適用する例示的な方法800のフローチャートである。ブロック801では、入力信号を表す波形を入力ポートから受けるか、メモリから取得する。波形は、上述のように、プロセッサによって利用されても良い。ブロック803では、パルス又はパルス応答が波形から抽出される。パルス/パルス応答は、プロセッサが、例えば、線形パルス抽出によって抽出しても良い。ブロック805では、パルスの長さNが決定される。パルスの長さに基づいて、長さNの窓関数が選択される。更に、パルス応答の形状に基づいて又はユーザ入力に基づいて、窓関数の形状が選択されても良い。上述のように、実施例によっては、3ビット期間(例えば、3UI)の長さが窓関数に割り当てられても良い。また、実施例によっては、窓関数は、テューキー窓として選択されても良い。ブロック809では、窓関数をパルス応答に適用して、ターゲット・パルスを得る。窓関数は、ポイント毎の乗算を利用することによって、信号パルスに適用されても良く、これは、窓関数の範囲の外の全ての値をゼロで乗算し、これによって、これらを除去する。ブロック811では、ISIイコライザ722のような線形イコライザが算出される。線形イコライザは、パルス応答と畳み込み積分されたときに、ターゲット・パルスを生じるフィルタである。線形イコライザは、上述のように、数式1に従ってLMS処理によって算出されても良い。ブロック813では、線形イコライザが波形に適用される。これは、窓関数に関連する窓の外のISIを除去する効果がある。
【0057】
図9は、ISIイコライザを適用していない、入力信号761のような信号に関するアイ・ダイアグラム900である。アイ・ダイアグラム900は、入力信号中の様々なビット遷移パターンに関するプリ・カーソル901、メイン・カーソル903及びポスト・カーソル905を示し、これらの全ては、単一のグラフ上に温度マップとして重ねられている。プリ・カーソル901、メイン・カーソル903、ポスト・カーソル905は、プリ・カーソル101、メイン・カーソル103及びポスト・カーソル105と関連している。
【0058】
図10は、ISIイコライザ722のようなISIイコライザを適用した、入力信号761のような信号に関するアイ・ダイアグラム1000である。アイ・ダイアグラム1000は、グラフ900とほぼ同様にして、入力信号中の様々なビット遷移パターンに関するプリ・カーソル1001、メイン・カーソル1003及びポスト・カーソル1005を示す。グラフ900をグラフ1000に対して比較すればわかるように、ISIイコライザは、信号パルスのラインを細くし、これによって、メイン・カーソル903に対して、メイン・カーソル1003中に、より広い暗い空間を形成する。このように、ISIイコライザは、パルスのメイン・カーソル周辺の信号の明瞭性を増加させる。更に、プリ・カーソル1001及びポスト・カーソル1003のラインは、プリ・カーソル901及びポスト・カーソル903よりも、大幅に薄く/窮屈になっている。これは、ISIイコライザを利用した場合、信号のプリ・カーソル及びポスト・カーソル部分に対するISIの影響が実質的に減少することを示している。このように、ISIイコライザは、信号から大幅な量のISIを除去し、これによって、非相関ジッタの測定を大幅に簡単に、そして、より正確にする。
【0059】
本発明の実施例は、特に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本発明の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)又は他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。一般に、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータ又は他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体的又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本発明の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0060】
本願発明の態様は、様々な変更及び代替形態で動作する。特定の態様は、図面に例として示されており、詳細に説明した。しかしながら、本願に開示された実施例は、説明を明確にする目的で提示されており、明示的に限定されない限り、開示される一般的概念の範囲を本願に記載の具体例に限定することを意図していない。このように、本開示は、添付の図面及び特許請求の範囲に照らして、記載された態様のすべての変更、均等物及び代替物をカバーすることを意図している。
【0061】
明細書における実施形態、態様、実施例などへの言及は、記載された項目が特定の特徴、構造又は特性を含み得ることを示す。しかしながら、開示される各態様は、そうした特定の特徴、構造又は特性を含んでいても良いし、必ずしも含んでいなくても良い。更に、このような言い回しは、特に明記しない限り、必ずしも同じ態様を指しているとは限らない。更に、特定の態様に関連して特定の特徴、構造又は特性が記載されている場合、そのような特徴、構造又は特性は、そのような特徴が他の開示された態様と明示的に関連して記載されているか否かに関わらず、そうした他の開示された態様と関連して使用しても良い。
【0062】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はそれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含むことができる。
【0063】
コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CD-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)又はその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又はその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は排除される。
【0064】
通信媒体は、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含むことができる。
【0065】
開示された主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0066】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例の状況において開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例の状況においても利用できる。
【0067】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0068】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0069】
700 試験測定システム
710 被試験デバイス(DUT)
720 オシロスコープ
721 プロセッサ
722 ISIイコライザ
725 A/Dコンバータ
727 入力ポート
729 表示装置
761 入力信号
765 波形データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10