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特許7292859表面保護フィルム、及びそれが貼着された光学部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】表面保護フィルム、及びそれが貼着された光学部品
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230612BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20230612BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20230612BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230612BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230612BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J7/00
G02B5/30
B32B27/30 A
B32B27/00 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018216373
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2020083948
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千恵
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 智美
(72)【発明者】
【氏名】新見 洋人
(72)【発明者】
【氏名】林 益史
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-058560(JP,A)
【文献】登録実用新案第3090774(JP,U)
【文献】特開2018-028573(JP,A)
【文献】特開2015-172202(JP,A)
【文献】特開2016-167040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J,B32B,G02B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の透明フィルムと、第一の粘着剤層と、第二の透明フィルムと、第二の粘着剤層とが順に積層され、
前記第一の粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上8.0×10Pa未満であり、かつ、前記第一の粘着剤層のガラスに対する粘着力が1.6N/25mm以上、5N/25mm以下であり、
前記第二の粘着剤層のガラスに対する粘着力が0.03N/25mm以上、0.5N/25mm以下であり、
前記第一の粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマーを含むベースポリマーに対して、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤を配合した粘着剤で形成されている、偏光板用表面保護フィルム。
【請求項2】
前記第二の粘着剤層は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを使用している、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記第二の粘着剤層の表面抵抗率が1×1013〔Ω/□〕未満である、請求項1または請求項2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の表面保護フィルムが貼着された、光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルム、及びそれが貼着された光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等の光学用フィルムは、ディスプレイなどの光学製品に用いられる。光学用フィルムまたは、光学部品を製造、搬送する際には、該光学用フィルムの表面に表面保護フィルムを貼着して、後工程における表面の汚れや傷付きを防止することがなされている。光学用フィルムの外観検査を、表面保護フィルムを貼着したまま行うこともある。
【0003】
従来技術による表面保護フィルムは、典型的には、基材フィルムの片面に、微粘着力の粘着剤層を設けた構成を有する。粘着剤層は、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼着するための層である。粘着剤層を微粘着性とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学用フィルム表面から剥離除去するときに、円滑に剥離でき、かつ糊残りがないようにするためである。
【0004】
近年、ディスプレイの薄型化や高精細化が進行しており、これに合わせて光学用フィルムも薄膜化が進行している。また、光学用フィルムを薄膜化するために、各構成部材の厚さを薄くするだけでなく、不要な部材を除去したり、複数の部材の機能を一つの部材にもたせて部材数を減らすなど、構成を変更することも行われている。
例えば、偏光板では、偏光子層の両面ではなく、片面にのみ偏光子保護層が積層された構成を有する偏光板が増加している。偏光子保護層が偏光子層に対して一つだけ設けられた偏光板の場合、偏光子を挟んだ構造が表裏非対称となるため、一方の面側に曲がりやすい(カールしやすい)性質を有している。このため、光学用フィルムのカールを抑制する方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ガーレ法の剛軟度が1.0×10mgf以上、1.0×10mgf以下であるプロテクトフィルム(表面保護フィルム)を貼合することで、偏光板のカールを抑制する製造方法が提案されている。具体例として、二軸延伸ポリエステル系樹脂からなる基材フィルムの厚みが25μm以上、120μm以下の範囲のプロテクトフィルムが挙げられている。
【0006】
特許文献2には、偏光板本体及びプロテクトフィルム(表面保護フィルム)からなる積層体の剛軟度を規定した偏光板が提案されている。具体的な事例としては、二軸延伸ポリエステル系樹脂からなる基材フィルムの厚みが50μmのプロテクトフィルムを使用した偏光板が挙げられている。
【0007】
特許文献3には、偏光板の反り(カール)を良好に抑制可能な保護フィルムが提案されている。具体的には、第1の樹脂層と、接着層と、第2の樹脂層と、粘着剤層とをこの順で有する保護フィルムが提案されている。第1の樹脂層の厚みと第2の樹脂層の厚みの和に対する該接着層の厚みの比の値は、0.40以下である。接着層の23℃における貯蔵弾性率は8.0×10Pa以上1.0×10Pa未満である。保護フィルムは、偏光板表面に一体として貼り合わされ、一体として剥離される。
【0008】
特許文献1~3に示されている表面保護フィルムは、基材フィルムの厚さを厚くしたり、もしくは基材フィルムとして樹脂層/接着層/樹脂層を積層した積層フィルムを用いるため、フィルムのコシが強くなり、光学用フィルムのカール抑制効果が得られるが、その一方で、表面保護フィルムを用後に剥がして除去する際に、剥離力が強くなる問題がある。
表面保護フィルムを剥離する際には、光学用フィルムに対して、180°に近い剥離角度で表面保護フィルムを剥がす。その際の表面保護フィルムの剥離力は、表面保護フィルムの粘着剤が被着体である光学用フィルムに接着している力と、表面保護フィルム自体を180°曲げるときに要する力の合算したものになる。表面保護フィルムのコシが強くなると、表面保護フィルム自体を180°曲げるときに要する力も大きくなるため、表面保護フィルムの剥離力が強くなってしまう。
近年、ディスプレイの薄型化や高精細化とともに、テレビやデジタルサイネージ用途にて、ディスプレイの大型化も進行している。このような大型のディスプレイに使用する光学用フィルムには、前述の表面保護フィルムは剥離時の剥離力が強いため使用しにくい。
【0009】
従来、ディスプレイの製造では、液晶パネル、バックライトユニット、表面フィルターなどのパーツは、パネルメーカーによってセット化された形態で調達されていた。これをモジュール調達という。しかし、近年、特にテレビ用途では「オープンセル調達」と呼ばれる調達形態が主流となっている。オープンセル調達では、液晶パネル、バックライトユニット、表面フィルターなどのパーツを個別に調達し、テレビメーカー、OEM先などで組み立てる。このため、液晶パネルは、半製品の状態で流通することが増加している。
【0010】
モジュール調達では、偏光板に貼り付けられていた表面保護フィルムは、パネル化の後に剥がしていた。しかし、オープンセル調達の採用に伴って、液晶パネル搬送中のゴミ、異物の付着を防ぐため、パネル化の後、セット化の直前まで表面保護フィルムを剥がさないことが多くなってきている。液晶パネルの出荷・搬送の際には、パネル化の際に汚れた表面保護フィルムを貼り替える、または表面保護フィルムの汚れを拭き取ることによって、表面保護フィルムをきれいな状態とすることが増えている。特許文献1~3に示されている表面保護フィルムでは、液晶パネルの出荷前などに、表面保護フィルムの貼り替え、または表面保護フィルムの汚れ拭き取り作業が必要となり、工程削減や作業性改善に繋がらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2012-053078号公報
【文献】再公表WO2016/039296号
【文献】特許第5461640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一態様は、上記事情に鑑みてなされたものであって、光学用フィルムのカールに対する抑制効果が高く、かつ、表面保護フィルムを貼着した光学用フィルムのハンドリング性が向上し、さらに、用後に剥離除去しやすい表面保護フィルムであり、出荷時などに表面保護フィルムの貼り替えや汚れ拭き取りのいらない表面保護フィルム及びそれを用いた光学部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一形態は、第一の透明フィルムと、第一の粘着剤層と、第二の透明フィルムと、第二の粘着剤層とが順に積層され、前記第一の粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上8.0×10Pa未満であり、かつ、前記第一の粘着剤層のガラスに対する粘着力が5N/25mm以下である、表面保護フィルムを提供する。
【0014】
前記第二の粘着剤層は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを使用することができる。
【0015】
前記第二の粘着剤層のガラスに対する粘着力は、0.5N/25mm以下であり、前記第一の粘着剤層のガラスに対する粘着力は、第二の粘着剤層のガラスに対する粘着力より高いことが好ましい。
【0016】
前記第二の粘着剤層の表面抵抗率が1×1013〔Ω/□〕未満であることが好ましい。
【0017】
本発明の他の形態は、前記表面保護フィルムが貼着された光学部品を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、光学用フィルムのカールに対する抑制効果が高く、かつ、表面保護フィルムを貼着した光学用フィルムのハンドリング性が向上し、さらに、用後に剥離除去しやすい表面保護フィルムであり、液晶パネル出荷時に表面保護フィルムの貼り替えや汚れの拭き取りのいらない表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の表面保護フィルムの概略構成図である。
図2】実施形態の表面保護フィルムを用いた光学部品の一例の概略構成図である。
図3図2に示す光学部品から、第一の透明フィルムと第一粘着剤層からなる粘着フィルムを剥離除去した構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、実施形態の表面保護フィルムPの概略構成図である。図1に示すように、表面保護フィルムPは、第一の透明フィルム1の片面に、第一の粘着剤層2が設けられている。第一の粘着剤層2の第一の透明フィルム1の反対側には、第二の透明フィルム3が設けられている。第二の透明フィルム3の第一の粘着剤層2の反対側には、第二の粘着剤層4が設けられている。第二の粘着剤層4の表面には粘着面を保護するための剥離フィルム5が重ね合わされている。すなわち、表面保護フィルムPは、第一の透明フィルム1と、第一の粘着剤層2と、第二の透明フィルム3と、第二の粘着剤層4と、剥離フィルム5とがこの順に積層されて構成されている。なお、図1に示す表面保護フィルムPから剥離フィルム5を除去したフィルム、すなわち、第一の透明フィルム1と、第一の粘着剤層2と、第二の透明フィルム3と、第二の粘着剤層4とがこの順に積層されたフィルムを表面保護フィルムPということがある。
【0021】
第一の透明フィルム1(基材フィルム)としては、透明性を有するプラスチックフィルムが用いられる。第一の透明フィルム1および第二の透明フィルム3が透明性を有することにより、表面保護フィルムPを貼着したまま、光学部品の外観検査を行うことができるようになる。第一の透明フィルム1用のプラスチックフィルムとしては、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有しかつ光学適性を有するものであれば、他のプラスチックフィルムも使用可能である。第一の透明フィルム1は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されていてもよい。第一の透明フィルム1は、延伸倍率や延伸の結晶化に伴い形成される軸方向の角度を制御したプラスチックフィルムでもよい。
【0022】
第一の透明フィルム1の厚みは、特に限定はないものの、例えば12~100μm程度であり、殊に20~50μm程度とすることが多い。
第一の透明フィルム1には、必要に応じて、第一の粘着剤層2の反対側(図1において上面)に、表面の汚れを防止する目的の防汚層や、帯電防止層や、傷つき防止のためのハードコート層を設けたり、コロナ放電処理やアンカーコート処理などの易接着処理を施してもよい。
【0023】
第一の粘着剤層2は、表面保護フィルムPを光学用フィルムに貼着した際に、光学用フィルムのカールに伴う応力を吸収・緩和する目的で用いる。第一の粘着剤層2は、透明フィルムとの密着性、粘着特性、安定性などに悪影響がないことなどの特性を満たせば、材質については特に限定されず、公知の材料を使用できる。
【0024】
第一の粘着剤層2の材料としては、ゴム系、アクリル系、ウレタン系などの粘着剤が挙げられる。
ゴム系粘着剤は、天然ゴム、合成ゴムなどのエラストマーに粘着付与剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤などを配合した粘着剤で、必要に応じて架橋剤を添加しても良い。
アクリル系粘着剤は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーに必要に応じて硬化剤や粘着付与剤を添加した粘着剤である。(メタ)アクリル系ポリマーは、ブチルアクリレート(例えばn-ブチルアクリレート)、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどの主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのコモノマーと、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、水酸基含有アクリルモノマー、カルボキシル基含有アクリレート、ポリオキシアルキレン基含有アクリルモノマーなどの官能性モノマーと、を共重合したポリマーが一般的である。(メタ)アクリル系ポリマーは、求める特性により適当な組成を選択すればよい。(メタ)アクリル系ポリマーは、ベースポリマーとして使用される。
【0025】
硬化剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。粘着付与剤としては、ロジン系、クマロンインデン系、テルペン系、石油系、フェノール系などが挙げられる。
第一の粘着剤層2には、必要に応じて硬化触媒、ポットライフ延長剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を加えてもよい。第一の粘着剤層2の材料としては、上記粘着剤に、光開始剤と光硬化が可能なモノマーまたはオリゴマーを添加し、光照射後にモノマーまたはオリゴマーが重合し、粘着力が変化する粘着剤を使用しても良い。
【0026】
ウレタン系粘着剤は、ハードセグメントとソフトセグメントの種類、組成比を調整したものが挙げられる。
第一の粘着剤層2の材料としては、耐熱性、耐久性、第二の透明フィルム3への接着性などから、アクリル系粘着剤が特に好ましい。
【0027】
第一の粘着剤層2には、粘着剤に紫外線開始剤と紫外線硬化型モノマーまたはオリゴマーを含有した粘着剤であって、紫外線を照射することにより粘着力が低下する粘着剤を用いてもよい。この粘着剤の使用により、液晶パネルの出荷搬送時に第一の透明フィルムと第一の粘着剤層を第二の透明フィルムから剥離・除去しやすくすることができる。第一の粘着剤層2には、透明性を落とさない範囲で熱発泡剤を添加し、加熱により粘着力が低下する粘着剤などを使用してもよい。
【0028】
第一の粘着剤層2は、ガラスに対する粘着力が5N/25mm以下である粘着剤層である。第一の粘着剤層2は、ガラスに対する180°ピール、剥離速度300mm/分での粘着力が5N/25mm以下であることが望ましい。
第一の粘着剤層2の、ガラスに対する粘着力が5N/25mmより大きいと、表面保護フィルムPを剥離除去する時の剥離力が高くなり、作業性が低下する虞がある。また、第一の粘着剤層2のガラスに対する粘着力が5N/25mmより大きいと、必要な時(液晶パネル出荷時など)に、第一の透明フィルム1と第一の粘着剤層2からなる粘着フィルムを、第二の透明フィルム3から剥離しにくくなる虞がある。
【0029】
第一の粘着剤層2の、ガラスに対する粘着力は、例えば、1N/25mm以上としてよい。第一の粘着剤層2の、ガラスに対する粘着力が1N/25mm以上であると、第一の透明フィルム1と第一の粘着剤層2からなる粘着フィルムの誤剥離が起こりにくい。
【0030】
表面保護フィルムPを剥離除去する時の作業性を考慮すると、第一の粘着剤層2の粘着力は、第二の粘着剤層4の粘着力よりも高いことが望ましい。これにより、液晶パネル出荷時などに、第一の透明フィルム1と第一の粘着剤層2からなる粘着フィルムを、第二の透明フィルム3から剥離しやすくなる。
【0031】
第一の粘着剤層2の23℃での貯蔵弾性率は1.0×10Pa以上8.0×10Pa未満である。第一の粘着剤層2の貯蔵弾性率が1.0×104Pa未満であると、表面保護フィルムPをロール状に巻き取って保管している際に、エッジ部から粘着剤がはみ出したり、エッジ部に異物等が付着しやすくなるなどの不具合が生じる虞がある。また、光学フィルムのカール抑制効果が低下する虞がある。第一の粘着剤層2の貯蔵弾性率が8.0×104Pa以上であると、表面保護フィルムPを剥離除去する時の剥離力が高くなり、作業性が低下する虞がある。
【0032】
第一の粘着剤層2の厚さは特に限定されないが、3~30μm程度にするのが一般的である。第一の粘着剤層2の厚さを3μm以上とすることで、所定の粘着力が得られる。第一の粘着剤層2の厚さを30μm以下とすることで、コストを抑制できる。
【0033】
第一の透明フィルム1に第一の粘着剤層2を形成する方法としては、公知の方法を用いればよい。例えば、第一の透明フィルム1に粘着剤をコーティングし、乾燥・硬化する方法や、第二の透明フィルムに粘着剤をコーティングし、乾燥・硬化した後に第一の透明フィルムを貼合する方法などが挙げられる。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0034】
第二の透明フィルム3としては、透明性を有するプラスチックフィルムが用いられる。第一の透明フィルム1および第二の透明フィルム3が透明性を有することにより、表面保護フィルムを貼着したまま、光学部品の外観検査を行うことができるようになる。第二の透明フィルム3用のプラスチックフィルムとしては、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有しかつ光学適性を有するものであれば、他のプラスチックフィルムも使用可能である。第二の透明フィルム3は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されていてもよい。第二の透明フィルム3は、延伸倍率や延伸の結晶化に伴い形成される軸方向の角度を制御したプラスチックフィルムでもよい。
【0035】
第二の透明フィルム3の厚みは、特に限定はないものの、例えば12~100μm程度であり、殊に19~50μm程度とすることが多い。
第二の透明フィルム3には、必要に応じて、第一の粘着剤層2と接する側に、コロナ放電処理やアンカーコート処理などの易接着処理や帯電防止処理を施してもよい。また、第二の透明フィルム3の第一の粘着剤層2の反対側(図1において下面)に、帯電防止層やコロナ放電処理やアンカーコート処理などの易接着処理を施してもよい。
【0036】
第二の粘着剤層4は、被着体である光学用フィルムに表面保護フィルムPを貼着するために設ける。第二の粘着剤層4は、微粘着力の粘着剤からなる層である。微粘着力の粘着剤を使用するのは、表面保護フィルムPが光学用フィルムの製造工程では剥がれずに、用後、表面保護フィルムPを光学用フィルム表面から剥離除去するときに、円滑に剥離でき、かつ糊残りがないようにするためである。
【0037】
第二の粘着剤層4の材質については特に限定されるものではなく、ゴム系、アクリル系、ウレタン系などの粘着剤等の公知の材料を使用できるが、なかでもアクリル系粘着剤が好適である。
アクリル系粘着剤は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーに必要に応じて硬化剤や粘着付与剤を添加した粘着剤である。(メタ)アクリル系ポリマーは、ブチルアクリレート(例えばn-ブチルアクリレート)、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどの主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのコモノマーと、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、水酸基含有アクリルモノマー、カルボキシル基含有アクリレート、ポリオキシアルキレン基含有アクリルモノマーなどの官能性モノマーとを共重合したポリマーが一般的である。(メタ)アクリル系ポリマーは、求める特性により適当な組成を選択すればよい。(メタ)アクリル系ポリマーは、ベースポリマーとして使用される。
【0038】
硬化剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。粘着付与剤としては、ロジン系、クマロンインデン系、テルペン系、石油系、フェノール系などが挙げられる。アクリル系粘着剤には、必要に応じて硬化触媒やポットライフ延長剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を加えてもよい。
【0039】
帯電防止剤としては、(メタ)アクリル系ポリマーに対して分散または相溶性の良いものが良く、例えば、界面活性剤系、イオン性液体、イオン性固体、アルカリ金属塩、金属酸化物、金属微粒子、導電性ポリマー、カーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。帯電防止剤としては、透明性や(メタ)アクリル系ポリマーに対する親和性などから、界面活性剤系、イオン性液体、イオン性固体、アルカリ金属塩などが好ましい。
【0040】
界面活性剤としては、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性系などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン変性シリコーン類などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩類、ジアルキルジメチルアンモニウム塩類、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩類などが挙げられる。アニオン界面活性剤としては、モノアルキル硫酸塩類、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、モノアルキルリン酸塩類などが挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタインなどが挙げられる。
【0041】
イオン性液体とは、陰イオンと陽イオンとを含み、常温で液体である非高分子物質である。陽イオン部分としては、イミダゾリウムイオンなどの環状アミジンイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン等が挙げられる。陰イオン部分としては、C2n+1COO、C2n+1COO、N0 、C2n+1SO 、(C2n+1SO、(C2n+1SO、PO 2-、AlCl 、AlCl 、ClO 、BF 、PF 、AsF 、SbF 等が挙げられる。
【0042】
イオン性固体とは、陰イオンと陽イオンとを含み、常温で固体である非高分子物質である。陽イオン部分としては、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、アンモニウムイオン等の含窒素オニウムイオンや、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン等が挙げられる。陰イオン部分としては、六フッ化リン酸塩(PF )、チオシアン酸塩(SCN)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(RCSO )、過塩素酸塩(ClO )、四フッ化ホウ酸塩(BF )等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。アルキル基の鎖長や置換基の位置、個数等の選択により、常温で固体のものを得ることができる。
【0043】
アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属を含む金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、トリフロロメチルスルフォン酸リチウム(CFLiOS)を例示できる。
帯電防止剤には、イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
【0044】
(メタ)アクリル系ポリマーなどのベースポリマーに対する帯電防止剤成分の添加量は、帯電防止成分の種類やベースポリマーとの相溶性の度合いにより異なるが、表面抵抗率、被着体汚染性、粘着特性などを考慮して設定すればよい。
アクリル系粘着剤には、必要に応じて硬化触媒やポットライフ延長剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を加えてもよい。
【0045】
表面保護フィルムPを、剥離除去する際の剥離帯電圧の懸念がある用途に使用する場合には、第二の粘着剤層4に帯電防止成分(帯電防止剤)を添加するのが好適である。この場合、第二の粘着剤層4の表面抵抗率は1×1013〔Ω/□〕未満であることが好ましい。第二の粘着剤層4の表面抵抗率は1×1013〔Ω/□〕未満であると、表面保護フィルムを除去する時の剥離帯電圧を低くできる。そのため、帯電防止性能を高めることができる。
【0046】
第二の粘着剤層4の厚さは、特に限定はないものの、例えば3~50μm程度、殊に5~30μm程度とすることが多い。
【0047】
表面保護フィルムPが貼付される光学用フィルムの表面処理の種類にもよるが、第二の粘着剤層4のガラスに対する粘着力は0.5N/25mm以下が好適である。第二の粘着剤層4は、ガラスに対する180°ピール、剥離速度300mm/分での粘着力が0.5N/25mm以下であることが好ましい。第二の粘着剤層4の粘着力が0.5N/25mm以下であると、表面保護フィルムPを剥離除去する時の剥離力が低くなるため、作業性を高めることができる。
【0048】
第二の粘着剤層4は、被着体(光学用フィルム)の表面に対する剥離強度が0.03~0.3N/25mm程度の軽度な粘着性を有する微粘着剤層であることが好ましい。第二の粘着剤層4の粘着力は0.03N/25mm以上であると、光学フィルムの製造工程や搬送工程で表面保護フィルムPが浮いてしまう(すなわち、部分的に剥離する)のを抑制できる。また、表面保護フィルムPの誤剥離が起こりにくくなる。第二の粘着剤層4の粘着力は0.3N/25mm以下であると、作業性を高めることができる。
【0049】
第二の透明フィルム3への第二の粘着剤層4の積層は、公知の方法で行えばよく、特に限定されるものはない。具体的には、(1)第二の粘着剤層4となる粘着剤を第二の透明フィルム3に塗布、乾燥して第二の粘着剤層4としたのちに、第二の粘着剤層4の表面に剥離フィルム5を貼合する方法、(2)第二の粘着剤層4となる粘着剤を剥離フィルム5に塗布、乾燥して第二の粘着剤層4としたのちに、第二の透明フィルム3を貼合する方法などが挙げられる。
【0050】
第二の透明フィルム3への第二の粘着剤層4の形成は、公知の方法で行えばよい。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの塗工手段により、粘着剤を塗工すればよい。
【0051】
表面保護フィルムPは、第一の透明フィルム1に、第一の粘着剤層2、第二の透明フィルム3および第二の粘着剤層4を形成した粘着シートの、粘着剤層4の表面を剥離フィルム5で保護した構成が一般的である。表面保護フィルムPは、剥離フィルム5を用いないで、第一の透明フィルム1/第一の粘着剤層2/第二の透明フィルム3/第二の粘着剤層4をテープ状に巻いた製品形態も必要に応じて可能である。
【0052】
剥離フィルム5は、特に限定されるものではないが、ポリエステルフィルムなどのフィルムの表面に、シリコーン系剥離剤などの剥離剤を用いて剥離処理を施したものが例示される。
【0053】
図2は、実施形態の表面保護フィルムPを用いた光学部品の一例である光学部品Dの概略構成図である。
図2に示すように、光学部品Dは、図1に示す表面保護フィルムPを、粘着剤層4を利用して、光学用フィルムCの表面に貼着したものである。光学用フィルムCとしては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などが挙げられる。このような光学部品Dは、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の、光学系装置等の製造に利用することができる。
【0054】
実施形態の表面保護フィルムPは、2つの透明フィルムと2つの粘着剤層とを有する多層構造を有するため、光学用フィルムCのカールを抑制する効果が高い。表面保護フィルムPは、前述の構造により、光学用フィルムCに折れ、凹凸などが生じにくい。そのため、光学用フィルムCのハンドリング性を向上させることができる。
一般に、表面保護フィルムが厚く形成されると、カール抑制性およびハンドリング性は高くなる一方、表面保護フィルムの剥離性は低下する。これに対し、実施形態の表面保護フィルムPは、前述の特性を有する第一の粘着剤層2を使用するため、用後に剥離除去しやすいという利点がある。
【0055】
表面保護フィルムPは、前述の特性を有する第一の粘着剤層2を使用するため、第一の透明フィルム1と第一粘着剤層2からなる粘着フィルムを、他の部分から剥離除去することができる。例えば、図3は、光学部品Dから、第一の透明フィルム1と第一粘着剤層2からなる粘着フィルムを剥離除去した構成を示す概略構成図である。図3に示すように、粘着フィルムを剥離除去することによって、表面保護フィルムの清浄な表面を露出させることができる。したがって、液晶パネルの出荷時などに、表面保護フィルムの貼り替え、汚れの拭き取りは不要である。よって、工数削減が可能であり、歩留まり改善、生産性向上および作業性の改善を図ることができる。
表面保護フィルムPは、特に、薄膜化した光学用フィルムに対しては、光学用フィルムのカールに対する抑制効果が高く、かつ、表面保護フィルムを貼着した光学用フィルムのハンドリング性が向上し、さらに、用後に剥離除去しやすい。そのため、薄膜化した光学用フィルムの製造工程の歩留まり改善、生産性向上および作業性の改善を図ることができる。
【実施例
【0056】
次に、実施例をあげて本発明をさらに説明する。以下、「質量部」を単に「部」ということがある。
(実施例1の表面保護フィルムの作製)
ブチルアクリレートと、メチルアクリレートと、ジメチルアクリルアミドと、水酸基含有アクリルモノマーとからなるベースポリマー100部に対して、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤0.3部を配合して粘着剤Aを得た。厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムに粘着剤Aを塗布して形成した粘着剤層(乾燥後の塗布厚10μm)の、ガラスに対する粘着力は3.8N/25mmであった。
【0057】
2-エチルヘキシルアクリレートと、水酸基含有アクリルモノマーとからなるベースポリマー100部に対して、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤3部を配合して粘着剤Bを得た。厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムに粘着剤Bを塗布して形成した粘着剤層(乾燥後の塗布厚20μm)の、ガラスに対する粘着力は0.2N/25mmであった。
【0058】
厚さ25μmの無色透明の2軸延伸ポリエステルフィルム(第一の透明フィルム)に、粘着剤Aを、乾燥後の塗布厚が10μmとなるように塗布したのち、120℃の熱風循環式オーブンで2分間乾燥させた。
次いで、粘着剤Aの表面(粘着剤A塗布面)に厚さ38μmの無色透明の2軸延伸ポリエステルフィルム(第二の透明フィルム)を貼合した。貼合した2軸延伸ポリエステルフィルムの粘着剤Aとは反対面に、粘着剤Bを、乾燥後の塗布厚が20μmとなるように塗布したのち、120℃の熱風循環式オーブンで2分間乾燥させた。
【0059】
粘着剤Bの表面(粘着剤B塗布面)に、厚さ25μmの2軸延伸ポリエステルフィルムにシリコーン系剥離剤を塗工した離形フィルム(剥離フィルム)を、粘着剤Bの表面と剥離剤処理面(シリコーン系剥離剤を塗工した面)が接するように貼合した。得られたサンプルを40℃熱風循環式オーブンにて3日間エージングを行い、実施例1の表面保護フィルムを得た。粘着剤Aで形成された粘着剤層は、第一の粘着剤層である。粘着剤Bで形成された粘着剤層は、第二の粘着剤層である。
【0060】
(実施例2の表面保護フィルムの作製)
ブチルアクリレートと、メチルアクリレートと、ジメチルアクリルアミドと、水酸基含有アクリルモノマーと、カルボキシル基含有アクリレートとからなるベースポリマー100部に対して、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤0.5部を配合して粘着剤Cを得た。厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムに粘着剤Cを塗布して形成した粘着剤層(乾燥後の塗布厚10μm)の、ガラスに対する粘着力は4.8N/25mmであった。
粘着剤Aの代わりに粘着剤Cを用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の表面保護フィルムを得た。
【0061】
(実施例3の表面保護フィルムの作製)
ブチルアクリレートと、メチルアクリレートと、ジメチルアクリルアミドと、水酸基含有アクリルモノマーとからなるベースポリマー100部に対して、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤1.5部を配合して粘着剤Dを得た。厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムに粘着剤Dを塗布して形成した粘着剤層(乾燥後の塗布厚10μm)の、ガラスに対する粘着力は1.6N/25mmであった。
粘着剤Aの代わりに粘着剤Dを用いた以外は実施例1と同様にして実施例3の表面保護フィルムを得た。
【0062】
(実施例4の表面保護フィルムの作製)
厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルム(第二の透明フィルム)の代わりに、厚さ25μmの無色透明の2軸延伸ポリエステルフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして実施例4の表面保護フィルムを得た。
【0063】
(実施例5の表面保護フィルムの作製)
2-エチルヘキシルアクリレートと、ポリオキシアルキレン基含有アクリルモノマーと、水酸基含有アクリルモノマーとからなるベースポリマー100部に対して、帯電防止剤としてトリフロロメチルスルフォン酸リチウム0.1部、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤3.0部を配合した粘着剤Eを得た。厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムに粘着剤Eを塗布して形成した粘着剤層(乾燥後の塗布厚20μm)の、ガラスに対する粘着力は0.15N/25mmであり、粘着剤表面の表面抵抗値は6.0×1011Ω/□であった。
粘着剤Bの代わりに粘着剤Eを用いた以外は実施例1と同様にして実施例5の表面保護フィルムを得た。
【0064】
(比較例1の表面保護フィルムの作製)
厚さ38μmの無色透明の2軸延伸ポリエステルフィルムに、粘着剤Bを乾燥後の塗布厚が20μmとなるように塗布したのち、120℃の熱風循環式オーブンで2分間乾燥させた。
粘着剤Bの表面(粘着剤B塗布面)に、厚さ25μmの2軸延伸ポリエステルフィルムにシリコーン系剥離剤を塗工した離形フィルム(剥離フィルム)を、粘着剤Bの表面と剥離剤処理面(シリコーン系剥離剤を塗工した面)が接するように貼合した。得られたサンプルを40℃熱風循環式オーブンにて3日間エージングを行い、比較例1の表面保護フィルムを得た。粘着剤Bは粘着剤層となる。
【0065】
(比較例2の表面保護フィルムの作製)
厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムの代わりに、厚さ75μmの無色透明の2軸延伸ポリエステルフィルムを用いた以外は比較例1と同様にして 比較例2の表面保護フィルムを得た。
【0066】
(比較例3の表面保護フィルムの作製)
厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムの代わりに、厚さ100μmの無色透明の2軸延伸ポリエステルフィルムを用いた以外は比較例1と同様にして 比較例3の表面保護フィルムを得た。
【0067】
(比較例4の表面保護フィルムの作製)
ブチルアクリレートと、メチルアクリレートと、ジメチルアクリルアミドと、水酸基含有アクリルモノマーと、カルボキシル基含有アクリレートとからなるベースポリマー100部に対して、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤0.2部を配合して粘着剤Fを得た。厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムに粘着剤Fを塗布して形成した粘着剤層(乾燥後の塗布厚10μm)の、ガラスに対する粘着力は6.5N/25mmであった。
粘着剤Aの代わりに粘着剤Fを用いた以外は実施例1と同様にして比較例4の表面保護フィルムを得た。
【0068】
(比較例5の表面保護フィルムの作製)
ブチルアクリレートと、メチルアクリレートと、2-エチルヘキシルアクリレートと、水酸基含有アクリルモノマーとからなるベースポリマー100部に対して、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤0.3部を配合して粘着剤Gを得た。厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムに粘着剤Gを塗布して形成した粘着剤層(乾燥後の塗布厚10μm)の、ガラスに対する粘着力は3.2N/25mmであった。
粘着剤Aの代わりに粘着剤Gを用いた以外は実施例1と同様にして比較例5の表面保護フィルムを得た。
【0069】
(比較例6の表面保護フィルムの作製)
2-エチルヘキシルアクリレートと、水酸基含有アクリルモノマーと、カルボキシル基含有アクリルモノマーとからなるベースポリマー100部に対して、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤2.0部を配合して粘着剤Hを得た。厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムに粘着剤Hを塗布して形成した粘着剤層(乾燥後の塗布厚20μm)の、ガラスに対する粘着力は0.6N/25mmであった。
粘着剤Bの代わりに粘着剤Hを用いた以外は実施例1と同様にして比較例6の表面保護フィルムを得た。
【0070】
以下、評価試験の方法について示す。
(粘着剤層の粘着力の測定)
厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムに粘着剤を塗布したのち、120℃の熱風循環式オーブンで2分間乾燥させる。粘着剤の表面(粘着剤塗布面)に、厚さ25μmの2軸延伸ポリエステルフィルムにシリコーン系剥離剤を塗工した離形フィルムを貼合する。得られたサンプルを40℃熱風循環式オーブンにて3日間エージングを行う。
サンプルを巾25mm、長さ150mmにカットする。サンプルから離形フィルムを剥がした後、このサンプル(表面保護フィルム)をガラス板に貼合する。2kgのゴムローラーをサンプル上で一往復、転動させることによってサンプルをガラス板に向けて押圧する。その後、サンプルおよびガラス板を温度23℃、関係湿度50%の条件下に1時間放置後、引張試験機を用いて、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で表面保護フィルムを剥離した際の強度を測定する。
【0071】
(貯蔵弾性率の測定)
厚さ38μmの2軸延伸ポリエステルフィルムに粘着剤を塗布したのち、120℃の熱風循環式オーブンで2分間乾燥させた。粘着剤の表面(粘着剤塗布面)に、厚さ25μmの2軸延伸ポリエステルフィルムにシリコーン系剥離剤を塗工した離形フィルムを貼合した。得られたサンプルを40℃熱風循環式オーブンにて3日間エージングを行う。粘着剤は粘着剤層となる。サンプルから離形フィルムを剥がした後、粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率を、粘弾性測定装置(エービーエム社製 動的粘弾性測定装置Reogel-E4000)にて測定した。
【0072】
(ハンドリング性の評価)
ヨウ素とポリビニルアルコールからなる偏光子の片面にトリアセチルセルロースフィルムを貼合した偏光板サンプル(総厚48μm)をA4サイズ(210mm×297mm)にカットする。卓上ラミネーターを用いて、偏光板に表面保護フィルムを貼合する。表面保護フィルムが積層された偏光板の4角の中の1つの角をもち、前後に30回振った後、偏光板に折れや凹凸などの外観欠点の有無を目視にて観察する。欠点が無いものを○、欠点があるものを×とした。
【0073】
(カール抑制性の評価)
ヨウ素とポリビニルアルコールからなる偏光子の片面にトリアセチルセルロースフィルムを貼合した偏光板サンプル(総厚48μm)をA4サイズ(210mm×297mm)にカットする。卓上ラミネーターを用いて、偏光板に表面保護フィルムを貼合する。実験台にカールの凸面が下になるように置く。4つの角について、実験台表面からの浮いた距離を測定し、一番大きい数値をカール量とした。カール量が10mm未満のものを○、10mm以上20mm未満のものを△、20mm以上のものを×とした。
【0074】
(プロテクトフィルム剥離性の評価)
偏光子の片面にトリアセチルセルロースフィルムを積層した偏光板(総厚48μm)を準備する。表面保護フィルム(プロテクトフィルム)のサンプルを巾25mm、長さ150mmにカットする。サンプルから離形フィルムを剥がした後、このサンプルを偏光板のトリアセチルセルロースフィルム面に貼合する。2kgのゴムローラーをサンプル上で一往復、転動させることによってサンプルを偏光板に向けて押圧する。その後、サンプルおよび偏光板を温度23℃、関係湿度50%の条件下に24時間放置後、高速剥離試験機を用いて、剥離角度180°、剥離速度30m/分で表面保護フィルムを剥離した際の強度を測定する。1.8N/25mm未満を○、1.8N/25mm以上2.5N/25mm未満を△、2.5N/25mm以上を×とした。
【0075】
(第一の粘着層の剥離性)
偏光子の片面にトリアセチルセルロースフィルムが積層され、偏光子のトリアセチルセルロースフィルムとは反対側に、粘着剤層と、粘着剤層表面に貼合された離形フィルムとを有する偏光板(総厚48μm)を準備する。表面保護フィルムのサンプルを巾25mm、長さ150mmにカットする。サンプルから離形フィルムを剥がした後、このサンプルを偏光板のトリアセチルセルロースフィルム面に貼合して表面保護フィルム付き偏光板を得る。2kgのゴムローラーをサンプル上で一往復、転動させることによってサンプルを偏光板に向けて押圧する。
その後、偏光板に貼合されている離形フィルムを剥がし、卓上ラミネーターを使用することにより、ガラス板に表面保護フィルム付き偏光板を貼合する。その後、表面保護フィルム付き偏光板およびガラス板を温度23℃、関係湿度50%の条件下に24時間放置後、手で第二の透明フィルム部分を抑えながら、第一の透明フィルムと第一の粘着剤層からなる粘着フィルムを第二の透明フィルムから剥がした際に、第二の粘着剤層が剥離しないで剥がれたものを良好(○)、第二の粘着剤層に剥離または浮きが発生したものを不良(×)とした。
【0076】
それぞれのサンプルの測定結果を表1に示す。また、参考値として実施例1と実施例5の表面保護フィルム剥離時の帯電圧の測定結果を表2に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1および表2から、以下のことが判る。
実施例1~5の表面保護フィルムは、光学用フィルムのカールに対する抑制効果が高く、かつ、表面保護フィルムを貼着した光学用フィルムのハンドリング性が良好であった。剥離力の結果からわかるように、実施例1~5の表面保護フィルムは、用後に剥離除去しやすい表面保護フィルムとなっていた。第一の粘着層の剥離性の結果より、実施例1~5の表面保護フィルムは、第一の透明フィルムと第一粘着剤層からなる粘着フィルムを剥離除去することが可能であった。
第二の粘着剤層に帯電防止剤を添加した実施例5は、表面保護フィルム除去時の剥離帯電圧が低い表面保護フィルムとなっている。
【0080】
これに対して、ポリエステルフィルムに第二の粘着剤層のみを設けた比較例1~3の表面保護フィルムは、フィルムの厚さを厚くすることによりハンドリング性とカール抑制性は良くなるが、剥離性が低下した。すなわち、比較例1~3の表面保護フィルムでは、カール抑制性、ハンドリング性および剥離性のすべてを良好にすることはできなかった。
第一の粘着剤層の粘着力の高い比較例4の表面保護フィルムは、ハンドリング性とカール抑制性は良好であったが、剥離力、および第一粘着剤層の剥離性は良好とはいえなかった。
第一の粘着剤層の貯蔵弾性率の低い比較例5の表面保護フィルムでは、カール抑制性は悪い結果であった。カールのためか剥離性は悪くなった。
第二の粘着剤層の粘着力が高い比較例6の表面保護フィルムは、ハンドリング性とカール抑制性は良好であったが、剥離性は良好とはいえなかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、例えば、偏光板、位相差板、レンズフィルムなどの光学用フィルム、光学部品等の生産工程などにおいて、該光学部品等の表面に貼着して表面を保護するために用いることができる。特に、薄膜化した光学用フィルムに対しては、光学用フィルムのカールに対する抑制効果が高く、かつ、表面保護フィルムを貼着した光学用フィルムのハンドリング性が向上し、さらに、用後に剥離除去しやすい。そのため、薄膜化した光学用フィルムの製造工程の歩留まり改善、生産性向上を図ることができる。また、出荷時などに表面保護フィルムの貼り替えや汚れ拭き取りが不要になることで作業性向上、生産性改善に繋がる。
【符号の説明】
【0082】
1…第一の透明フィルム、2…第一の粘着剤層、3…第二の透明フィルム、4…第二の粘着剤層、5…剥離フィルム、C…光学フィルム、D…光学部品、P…表面保護フィルム。
図1
図2
図3