(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】真空装置、運搬装置、アラインメント方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20230612BHJP
H01L 21/673 20060101ALI20230612BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20230612BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230612BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C23C14/50 F
H01L21/68 U
H01L21/68 A
H01L21/68 N
C23C14/04 A
(21)【出願番号】P 2019059096
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】中尾 裕利
(72)【発明者】
【氏名】西ノ坊 泰樹
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/038812(WO,A1)
【文献】特開2006-188747(JP,A)
【文献】特開2007-224396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0304418(US,A1)
【文献】特開2010-086809(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167224(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H01L 21/673
H01L 21/677
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気される真空槽と、
マスクが配置されるマスク用枠体が設けられたマスク配置装置と、
基板が配置される基板用枠体が設けられた基板配置装置と、
を有し、
前記マスク配置装置に配置された前記マスクと前記基板配置装置に配置された前記基板とが対面した状態で前記マスク用枠体と前記基板用枠体とが前記真空槽の内部で固定される真空装置であって、
被吸着部と、前記被吸着部を磁気吸引する吸着部と、
前記吸着部の温度を検出する温度測定器と、電流制御回路とを有し、
前記マスク用枠体と前記基板用枠体とのうち、いずれか一方の枠体に前記被吸着部が設けられ、他方の枠体に前記吸着部が設けられ、
前記吸着部は、前記マスク配置装置と前記基板配置装置とが対面したときに、前記被吸着部を磁気吸引して前記基板用枠体と前記マスク用枠体とを固定する吸着状態と、前記磁気吸引の力が前記吸着状態よりも弱化されて前記基板用枠体と前記マスク用枠体とが分離できるようにされた解除状態との、いずれの状態にもすることが可能であり、
前記吸着部は、前記被吸着部を磁気吸引する磁界を形成する永久磁石部と、
磁芯に磁気コイルが巻き回され、前記磁気コイルに所定の大きさの解除電流が流されると、前記吸着部が前記被吸着部を磁気吸引する前記磁界が弱化されて前記吸着状態が前記解除状態に移行される電磁石部と、を有
し、
前記電流制御回路は、前記温度測定器で検出された温度に基づいて前記解除電流の大きさを制御する
真空装置。
【請求項2】
前記磁芯の一端は、前記吸着状態では磁気吸引する前記被吸着部に向けられており、
前記吸着部には、一部が前記磁芯の他端側に位置し、先端が前記磁芯の一端と同じ方向に向けられたヨーク部が設けられ、
前記被吸着部は、前記磁芯の一端と対面する第一の被吸着部と、前記ヨーク部の先端と対面する第二の被吸着部とを有し、
前記永久磁石部のN極とS極のうちのいずれか一方の極性の磁極は前記磁芯の前記他端に向けられ、前記永久磁石部の他方の極性の磁極は前記ヨーク部の底面部に向けられた請求項1記載の真空装置。
【請求項3】
前記吸着部は前記マスク用枠体に設けられ、
前記マスク配置装置には、前記磁気コイルの一端に電気的に接続された第一の受電端子と、前記磁気コイルの他端に電気的に接続された第二の受電端子と、が設けられ、
前記第一の受電端子と前記第二の受電端子との間に印加される電圧によって前記磁気コイルに電流が流される請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の真空装置。
【請求項4】
前記マスク配置装置が着脱自在に配置される着脱部が前記真空槽内に設けられ、
前記着脱部には、前記第一の受電端子に対して接触と離間とが可能な第一の給電端子と、前記第二の受電端子に対して接触と離間とが可能な第二の給電端子とが設けられ、
前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とは接触中は電気的に接続され、
前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とは接触中は電気的に接続され、
前記第一の給電端子と前記第二の給電端子との間に印加される電圧によって、前記解除電流が流れる請求項3記載の真空装置。
【請求項5】
前記吸着部は前記基板用枠体に設けられ、
前記基板配置装置には、前記磁気コイルの一端に電気的に接続された第一の受電端子と、前記磁気コイルの他端に電気的に接続された第二の受電端子と、が設けられ、
前記第一の受電端子と前記第二の受電端子との間に印加される電圧によって前記磁気コイルに電流が流される請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の真空装置。
【請求項6】
前記基板配置装置が着脱自在に配置される着脱部が前記真空槽内に設けられ、
前記着脱部には、前記第一の受電端子に対して接触と離間とが可能な第一の給電端子と、前記第二の受電端子に対して接触と離間とが可能な第二の給電端子とが設けられ、
前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とは接触中は電気的に接続され、
前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とは接触中は電気的に接続され、
前記第一の給電端子と前記第二の給電端子との間に印加される電圧によって、前記解除電流が流れる請求項5記載の真空装置。
【請求項7】
前記第一の受電端子と前記第一の給電端子のうち、いずれか一方の電極には第一の弾性部が設けられ、前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とが接触しながら前記第一の弾性部が変形され、
前記第二の受電端子と前記第二の給電端子のうち、いずれか一方の電極には第二の弾性部が設けられ、前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とが接触しながら前記第二の弾性部が変形され、
前記第一の弾性部の復元力によって前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とが互いに押しつけられ、前記第二の弾性部の復元力によって前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とが互いに押しつけられる請求項4又は請求項6のいずれか1項記載の真空装置。
【請求項8】
前記吸着状態では、前記被吸着部と前記吸着部とは、離間して対面する請求項1乃至請求項
7のいずれか1項記載の真空装置。
【請求項9】
マスクが配置されるマスク用枠体が設けられたマスク配置装置と、
基板が配置される基板用枠体が設けられた基板配置装置と、
を有し、
前記マスク配置装置に配置された前記マスクと前記基板配置装置に配置された前記基板とが対面した状態で前記マスク用枠体と前記基板用枠体とが固定される運搬装置であって、
被吸着部と、前記被吸着部を磁気吸引する吸着部と、
前記吸着部の温度を検出する温度測定器と、電流制御回路とを有し、
前記マスク用枠体と前記基板用枠体とのうち、いずれか一方の枠体に前記被吸着部が設けられ、他方の枠体に前記吸着部が設けられ、
前記吸着部は、前記マスク配置装置と前記基板配置装置とが対面したときに、前記被吸着部を磁気吸引して前記基板用枠体と前記マスク用枠体とを固定する吸着状態と、前記磁気吸引の力が前記吸着状態よりも弱化されて前記基板用枠体と前記マスク用枠体とが分離できるようにされた解除状態との、いずれの状態にもすることが可能であり、
前記吸着部は、前記被吸着部を磁気吸引する磁界を形成する永久磁石部と、
磁芯に磁気コイルが巻き回され、前記磁気コイルに所定の大きさの解除電流が流されると、前記吸着部が前記被吸着部を磁気吸引する前記磁界が弱化されて前記吸着状態が前記解除状態に移行される電磁石部と、を有
し、
前記電流制御回路は、前記温度測定器で検出された温度に基づいて前記解除電流の大きさを制御する
運搬装置。
【請求項10】
前記磁芯の一端は、前記吸着状態では磁気吸引する前記被吸着部に向けられており、
前記吸着部には、一部が前記磁芯の他端側に位置し、先端が前記磁芯の一端と同じ方向に向けられたヨーク部が設けられ、
前記被吸着部は、前記磁芯の一端と対面する第一の被吸着部と、前記ヨーク部の先端と対面する第二の被吸着部とを有し、
前記永久磁石部のN極とS極のうちのいずれか一方の極性の磁極は前記磁芯の前記他端に向けられ、前記永久磁石部の他方の極性の磁極は前記ヨーク部の底面部に向けられた請求項
9記載の運搬装置。
【請求項11】
前記吸着部は前記マスク用枠体に設けられ、
前記マスク配置装置には、前記磁気コイルの一端に電気的に接続された第一の受電端子と、前記磁気コイルの他端に電気的に接続された第二の受電端子と、が設けられ、
前記第一の受電端子と前記第二の受電端子との間に印加される電圧によって前記磁気コイルに電流が流される請求項
9又は請求項
10のいずれか1項記載の運搬装置。
【請求項12】
真空槽内に設けられ、前記マスク配置装置が着脱自在に配置される着脱部に前記第一の受電端子に対して接触と離間とが可能な第一の給電端子と、前記第二の受電端子に対して接触と離間とが可能な第二の給電端子とが設けられ、
前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とは接触中は電気的に接続され、
前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とは接触中は電気的に接続され、
前記第一の給電端子と前記第二の給電端子との間に印加される電圧によって、前記解除電流が流れる請求項
11記載の運搬装置。
【請求項13】
前記吸着部は前記基板用枠体に設けられ、
前記基板配置装置には、前記磁気コイルの一端に電気的に接続された第一の受電端子と、前記磁気コイルの他端に電気的に接続された第二の受電端子と、が設けられ、
前記第一の受電端子と前記第二の受電端子との間に印加される電圧によって前記磁気コイルに電流が流される請求項
9又は請求項
10のいずれか1項記載の運搬装置。
【請求項14】
真空槽内に設けられ、前記基板配置装置が着脱自在に配置される移動装置に前記第一の受電端子に対して接触と離間とが可能な第一の給電端子と、前記第二の受電端子に対して接触と離間とが可能な第二の給電端子とが設けられ、
前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とは接触中は電気的に接続され、
前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とは接触中は電気的に接続され、
前記第一の給電端子と前記第二の給電端子との間に印加される電圧によって、前記解除電流が流れる請求項
13記載の運搬装置。
【請求項15】
前記吸着状態では、前記被吸着部と前記吸着部とは、離間して対面する請求項
9乃至請求項
14のいずれか1項記載の運搬装置。
【請求項16】
マスクが配置されたマスク用枠体を有するマスク配置装置と、基板が配置された基板用枠体を有する基板配置装置とを相対的に移動させ、前記マスクと前記基板との位置合わせを行う位置合わせ工程と、
前記マスク用枠体と前記基板用枠体とのうち、いずれか一方の枠体に設けられた吸着部が有する永久磁石部が形成する磁界によって、他方の枠体に設けられた被吸着部を磁気吸引して前記マスク用枠体と前記基板用枠体とを互いに固定して、前記マスクと前記基板とを相対的に固定させる固定工程と、
前記マスクと前記基板とを相対的に固定した状態で前記マスク配置装置と前記基板配置装置とを一緒に移動させる移動工程と、を有するアラインメント方法であって、
前記位置合わせ工程では、
温度測定器により前記吸着部の温度を測定し、前記吸着部の前記磁気吸引する力を前記吸着部に設けられた電磁石部に
前記吸着部の温度に対応する解除電流を流して弱化させ、
前記固定工程では、前記解除電流を停止させるアラインメント方法。
【請求項17】
前記電磁石部に流れる電流を漸減させて前記解除電流を停止させる請求項
16記載のアラインメント方法。
【請求項18】
前記吸着部が前記被吸着部を磁気吸引する力を弱化させる電流の値と前記マスク配置装置の温度との関係を求めて記憶しておき、
前記マスク配置装置の温度を測定し、測定した温度に対応する値の電流を前記解除電流として前記電磁石部に流す請求項
16又は請求項
17のいずれか1項記載のアラインメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板とマスクとを固定させる運搬装置と、その運搬装置を有する真空装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板とマスクとを機械式のクランプ装置を利用し、水平あるいは垂直に配置してマスクに形成された開口パターンの形状の薄膜を基板表面に形成する技術が多用されていた。
【0003】
また基板の大型化に伴い、装置の設置面積も大きくなり過ぎることから、基板を縦型に配置して搬送し、薄膜を形成する技術が主流になってきた。
【0004】
ここでの課題として、水平搬送時も発生するが、特に縦型に配置された基板とマスクとを位置合わせしての搬送を行うと、位置合わせ後に位置がずれる問題の発生確率が上昇するため、基板とマスクとを互いに固定して位置合わせの状態を維持するクランプ装置などが必須となる。
【0005】
しかしながらクランプ装置を取り付けた状態で薄膜を形成すると、クランプ装置にも薄膜が堆積し、真空雰囲気中のダスト発生の原因となる。
【0006】
また、基板とマスクとを機械式のクランプにてクランプする場合は垂直抗力の時間変化量の制御が難しい事、またクランプ固定時に発生する摩擦力と拮抗する、基板あるいはマスク平面面積部にて発生する水平方向の熱応力(主に成膜と搬送工程での温度差が起因となる)がクランプ接触点部位に応力集中をもたらす場合はダスト発生が問題となる。この力が基板に印加される場合は、基板の欠け、ひび割れの原因となり、また、基板とマスクの相対位置を位置合わせした結果の相対位置で保持することが困難であり、これらの解決が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、吸着状体を維持するのに電力を必要とせず、ダストが発生せず、また、基板とマスクを相対固定しつつ基板に欠けや割れが発生せず、任意の基板-マスク相対位置で固定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、真空排気される真空槽と、マスクが配置されるマスク用枠体が設けられたマスク配置装置と、基板が配置される基板用枠体が設けられた基板配置装置と、を有し、前記マスク配置装置に配置された前記マスクと前記基板配置装置に配置された前記基板とが対面した状態で前記マスク用枠体と前記基板用枠体とが前記真空槽の内部で固定される真空装置であって、被吸着部と、前記被吸着部を磁気吸引する吸着部と、を有し、前記マスク用枠体と前記基板用枠体とのうち、いずれか一方の枠体に前記被吸着部が設けられ、他方の枠体に前記吸着部が設けられ、前記吸着部は、前記マスク配置装置と前記基板配置装置とが対面したときに、前記被吸着部を磁気吸引して前記基板用枠体と前記マスク用枠体とを固定する吸着状態と、前記磁気吸引の力が前記吸着状態よりも弱化されて前記基板用枠体と前記マスク用枠体とが分離できるようにされた解除状態との、いずれの状態にもすることが可能であり、前記吸着部は、前記被吸着部を磁気吸引する磁界を形成する永久磁石部と、磁芯に磁気コイルが巻き回され、前記磁気コイルに所定の大きさの解除電流が流されると、前記吸着部が前記被吸着部を磁気吸引する前記磁界が弱化されて前記吸着状態が前記解除状態に移行される電磁石部と、を有する真空装置である。
本発明は、前記磁芯の一端は、前記吸着状態では磁気吸引する前記被吸着部に向けられており、前記吸着部には、一部が前記磁芯の他端側に位置し、先端が前記磁芯の一端と同じ方向に向けられたヨーク部が設けられ、前記被吸着部は、前記磁芯の一端と対面する第一の被吸着部と、前記ヨーク部の先端と対面する第二の被吸着部とを有し、前記永久磁石部のN極とS極のうちのいずれか一方の極性の磁極は前記磁芯の前記他端に向けられ、前記永久磁石部の他方の極性の磁極は前記ヨーク部の底面部に向けられた真空装置である。
本発明は、前記吸着部は前記マスク用枠体に設けられ、前記マスク配置装置には、前記磁気コイルの一端に電気的に接続された第一の受電端子と、前記磁気コイルの他端に電気的に接続された第二の受電端子と、が設けられ、前記第一の受電端子と前記第二の受電端子との間に印加される電圧によって前記磁気コイルに電流が流される真空装置である。
本発明は、前記マスク配置装置が着脱自在に配置される着脱部が前記真空槽内に設けられ、前記着脱部には、前記第一の受電端子に対して接触と離間とが可能な第一の給電端子と、前記第二の受電端子に対して接触と離間とが可能な第二の給電端子とが設けられ、前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とは接触中は電気的に接続され、前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とは接触中は電気的に接続され、前記第一の給電端子と前記第二の給電端子との間に印加される電圧によって、前記解除電流が流れる真空装置である。
本発明は、前記吸着部は前記基板用枠体に設けられ、前記基板配置装置には、前記磁気コイルの一端に電気的に接続された第一の受電端子と、前記磁気コイルの他端に電気的に接続された第二の受電端子と、が設けられ、前記第一の受電端子と前記第二の受電端子との間に印加される電圧によって前記磁気コイルに電流が流される真空装置である。
本発明は、前記基板配置装置が着脱自在に配置される着脱部が前記真空槽内に設けられ、前記着脱部には、前記第一の受電端子に対して接触と離間とが可能な第一の給電端子と、前記第二の受電端子に対して接触と離間とが可能な第二の給電端子とが設けられ、前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とは接触中は電気的に接続され、前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とは接触中は電気的に接続され、前記第一の給電端子と前記第二の給電端子との間に印加される電圧によって、前記解除電流が流れる真空装置である。
本発明は、前記第一の受電端子と前記第一の給電端子のうち、いずれか一方の電極には第一の弾性部が設けられ、前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とが接触しながら前記第一の弾性部が変形され、前記第二の受電端子と前記第二の給電端子のうち、いずれか一方の電極には第二の弾性部が設けられ、前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とが接触しながら前記第二の弾性部が変形され、前記第一の弾性部の復元力によって前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とが互いに押しつけられ、前記第二の弾性部の復元力によって前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とが互いに押しつけられる真空装置である。
本発明は、前記解除電流の大きさを制御する電流制御回路を有する真空装置である。
本発明は、前記吸着状態では、前記被吸着部と前記吸着部とは、離間して対面する真空装置である。
本発明は、マスクが配置されるマスク用枠体が設けられたマスク配置装置と、基板が配置される基板用枠体が設けられた基板配置装置と、を有し、前記マスク配置装置に配置された前記マスクと前記基板配置装置に配置された前記基板とが対面した状態で前記マスク用枠体と前記基板用枠体とが固定される運搬装置であって、被吸着部と、前記被吸着部を磁気吸引する吸着部と、を有し、前記マスク用枠体と前記基板用枠体とのうち、いずれか一方の枠体に前記被吸着部が設けられ、他方の枠体に前記吸着部が設けられ、前記吸着部は、前記マスク配置装置と前記基板配置装置とが対面したときに、前記被吸着部を磁気吸引して前記基板用枠体と前記マスク用枠体とを固定する吸着状態と、前記磁気吸引の力が前記吸着状態よりも弱化されて前記基板用枠体と前記マスク用枠体とが分離できるようにされた解除状態との、いずれの状態にもすることが可能であり、前記吸着部は、前記被吸着部を磁気吸引する磁界を形成する永久磁石部と、磁芯に磁気コイルが巻き回され、前記磁気コイルに所定の大きさの解除電流が流されると、前記吸着部が前記被吸着部を磁気吸引する前記磁界が弱化されて前記吸着状態が前記解除状態に移行される電磁石部と、を有する運搬装置である。
本発明は、前記磁芯の一端は、前記吸着状態では磁気吸引する前記被吸着部に向けられており、前記吸着部には、一部が前記磁芯の他端側に位置し、先端が前記磁芯の一端と同じ方向に向けられたヨーク部が設けられ、前記被吸着部は、前記磁芯の一端と対面する第一の被吸着部と、前記ヨーク部の先端と対面する第二の被吸着部とを有し、前記永久磁石部のN極とS極のうちのいずれか一方の極性の磁極は前記磁芯の前記他端に向けられ、前記永久磁石部の他方の極性の磁極は前記ヨーク部の底面部に向けられた運搬装置である。
本発明は、前記吸着部は前記マスク用枠体に設けられ、前記マスク配置装置には、前記磁気コイルの一端に電気的に接続された第一の受電端子と、前記磁気コイルの他端に電気的に接続された第二の受電端子と、が設けられ、前記第一の受電端子と前記第二の受電端子との間に印加される電圧によって前記磁気コイルに電流が流される運搬装置である。
本発明は、真空槽内に設けられ、前記マスク配置装置が着脱自在に配置される着脱部に前記第一の受電端子に対して接触と離間とが可能な第一の給電端子と、前記第二の受電端子に対して接触と離間とが可能な第二の給電端子とが設けられ、前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とは接触中は電気的に接続され、前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とは接触中は電気的に接続され、前記第一の給電端子と前記第二の給電端子との間に印加される電圧によって、前記解除電流が流れる運搬装置である。
本発明は、前記吸着部は前記基板用枠体に設けられ、前記基板配置装置には、前記磁気コイルの一端に電気的に接続された第一の受電端子と、前記磁気コイルの他端に電気的に接続された第二の受電端子と、が設けられ、前記第一の受電端子と前記第二の受電端子との間に印加される電圧によって前記磁気コイルに電流が流される運搬装置である。
本発明は、真空槽内に設けられ、前記基板配置装置が着脱自在に配置される移動装置に前記第一の受電端子に対して接触と離間とが可能な第一の給電端子と、前記第二の受電端子に対して接触と離間とが可能な第二の給電端子とが設けられ、前記第一の受電端子と前記第一の給電端子とは接触中は電気的に接続され、前記第二の受電端子と前記第二の給電端子とは接触中は電気的に接続され、前記第一の給電端子と前記第二の給電端子との間に印加される電圧によって、前記解除電流が流れる運搬装置である。
本発明は、前記吸着状態では、前記被吸着部と前記吸着部とは、離間して対面する運搬装置である。
本発明は、マスクが配置されたマスク用枠体を有するマスク配置装置と、基板が配置された基板用枠体を有する基板配置装置とを相対的に移動させ、前記マスクと前記基板との位置合わせを行う位置合わせ工程と、前記マスク用枠体と前記基板用枠体とのうち、いずれか一方の枠体に設けられた吸着部が有する永久磁石部が形成する磁界によって、他方の枠体に設けられた被吸着部を磁気吸引して前記マスク用枠体と前記基板用枠体とを互いに固定して、前記マスクと前記基板とを相対的に固定させる固定工程と、前記マスクと前記基板とを相対的に固定した状態で前記マスク配置装置と前記基板配置装置とを一緒に移動させる移動工程と、を有するアラインメント方法であって、前記位置合わせ工程では、前記吸着部の前記磁気吸引する力を前記吸着部に設けられた電磁石部に解除電流を流して弱化させ、前記固定工程では、前記解除電流を停止させるアラインメント方法である。
本発明は、前記電磁石部に流れる電流を漸減させて前記解除電流を停止させるアラインメント方法である。
本発明は、前記吸着部が前記被吸着部を磁気吸引する力を弱化させる電流の値と前記マスク配置装置の温度との関係を求めて記憶しておき、前記マスク配置装置の温度を測定し、測定した温度に対応する値の電流を前記解除電流として前記電磁石部に流すアラインメント方法である。
【発明の効果】
【0010】
通電がされない状態で磁力が発生しており、基板とマスクとを密着させた状態に維持するため、基板とマスクとを固定する際の電力は不要である。基板用枠体がマスク用枠体に磁気吸引されると、通電が停止しても基板が落下する虞が無い。
【0011】
電磁石部に流れる電流を漸減させることができるので、急激に変化する力が基板やマスクに印加されず、基板の欠けやひび割れは発生しない。
【0012】
また、電磁石部に流れる電流を制御できるので、温度に応じて解除電流の値を変更することができる。
【0013】
クランプ部を設ける必要が無いので、クランプ部に薄膜が形成されることはなく、ダストは発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の真空装置が設けられた成膜装置を説明するための図
【
図2】本発明の真空装置の内部とアラインメント動作とを説明するための内部概略図(1)
【
図3】本発明の真空装置の内部とアラインメント動作とを説明するための内部概略図(2)
【
図4】本発明の真空装置の内部とアラインメント動作とを説明するための内部概略図(3)
【
図5】本発明の真空装置の内部とアラインメント動作とを説明するための内部概略図(4)
【
図7】(a):基板配置装置のA-A線截断断面図 (b):その正面図
【
図8】(a):基板が配置された基板配置装置のA-A線截断断面図 (b):その正面図
【
図9】(a):マスク配置装置の正面図 (b):そのB-B線截断断面図
【
図11】基板用枠体を磁気吸着した吸着部とその付近の拡大断面図
【
図12】離間した給電部と受電部とそれらの付近の拡大断面図
【
図13】端子が接続された給電部と受電部とそれらの付近の拡大断面図
【
図14】基板用枠体が磁気吸着された状態の給電部と受電部とそれらの付近の拡大断面図
【
図15】基板用枠体が磁気吸着された状態で離間した給電部と受電部とそれらの付近の拡大断面図
【
図16】基板配置装置に吸着装置が設けられた場合の例を説明するための図
【
図17】給電回路とコイルの接続の一例を示すブロック図
【
図18】電磁石に流れる電流の経時変化を説明するためのグラフ
【
図19】(a):吸着部の正面図 (b):第一、第二の被吸着部の正面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1の符号2は成膜装置であり、搬入装置75aと、本発明の一例の真空装置12と、処理装置13と、搬出装置75bとを有している。
【0016】
搬入装置75aと、真空装置12と、処理装置13と、搬出装置75bとは、真空バルブ76~78によってこの順序でそれぞれ接続されており、真空バルブ76~78を開閉すると、各装置75a、12、13,75bの間の連通と遮断とを制御できるようになっている。
【0017】
各装置75a、12、13、75bには、真空排気装置70~73がそれぞれ接続されており、真空バルブ76~78を閉じた状態で真空排気装置70~73を動作させると各装置75a、12、13,75bがそれぞれ個別に真空排気され、各装置75a、12、13,75bの内部に真空雰囲気が形成される。
【0018】
<真空装置>
図2は、真空装置12の内部を示す概略図である。真空装置12は真空槽21を有している。真空槽21の内部には後述するマスク配置装置が配置される着脱部25が設けられている。
【0019】
図9(a)、(b)の符号30はマスク配置装置を示しており、マスク配置装置30は、マスク用枠体31と、マスク用枠体31の中央に設けられたマスク用窓部34とを有している。
図9(a)はマスク配置装置30の正面図であり、
図9(b)はそのB-B線截断断面図である。
【0020】
マスク用枠体31の内側にはマスク15が配置されており、マスク15はマスク用枠体31に溶接等で固定されている。
マスク配置装置30では、不図示の保持装置により、略鉛直の立設姿勢にされた状態でもマスク15がマスク配置装置30から脱落しない。
【0021】
マスク15とマスク用枠体31とは、一緒に鉛直又は水平に配置されても良いし、マスク15とマスク用枠体31とを、小さい角度で傾けてもよい。
【0022】
マスク15は所定パターンの貫通口が形成された金属薄板であり、マスク15の表面とマスク用枠体31の表面とは同じ平面上に位置しており、マスク15の表面はマスク用枠体31の表面とともに露出されており、マスク15の裏面はマスク用窓部34の底面に露出されている。
【0023】
次に、
図7(a)、(b)の符号42は基板配置装置であり、基板用枠体41と、基板用枠体41に設けられた基板用窓部44とを有している。基板用窓部44は貫通孔であり、その周囲には真空処理の対象である基板を配置するための突起又は突条から成る基板保持部43が設けられている。
図7(a)、
図8(a)は、
図7(b)、
図8(b)のA-A線截断断面図である。
図8(a)、(b)は、基板保持部43に基板16が配置された状態が示されており、基板16の表面と裏面とは露出されている。
【0024】
図3には、マスク15が配置されたマスク配置装置30が略鉛直の立設姿勢にされた状態で着脱部25に配置された状態が示されている。
【0025】
図9(a)、(b)に示されたように、マスク用枠体31の表面には複数個の有底の配置孔38
1~38
4が設けられており、各配置孔38
1~38
4の中には、吸着部32
1~32
4が一個ずつ配置されている。吸着部32
1~32
4の中には、後述する解除電流の値を決めるための温度測定器40が設けられており、吸着部32
1~32
4の温度を検出し、検出した信号を制御装置26に出力し、温度測定器40と制御装置26とによって、吸着部32
1~32
4の温度を測定できるようにされている。
【0026】
図10は、一個の吸着部32
1の
図9(a)のB-B線截断断面図に相当する図面であり、他の吸着部32
2~32
4も同じ構造なので、吸着部32
1~32
4に関し、一個の吸着部32
1で説明を代表させる。
【0027】
吸着部321は、永久磁石部17と電磁石部14とヨーク部35とを有している。
【0028】
電磁石部14は柱状の磁芯36と、筒状の磁気コイル18とを有しており、磁芯36は磁気コイル18の中に挿通されている。磁気コイル18は磁芯36の周囲を巻き回す巻線である。
【0029】
磁気コイル18と磁芯36とは、それらの中心軸線が、マスク用枠体31に配置されるマスク15の表面に対して垂直になるように配置されており、磁気コイル18の一端と磁芯36の一端とは、配置孔381の開口33よりも配置孔381の底面側に位置した状態で、マスク配置装置30と対面配置される基板配置装置42の基板用枠体41に向けられている。
【0030】
磁芯36の他端には、磁芯36よりも大径の拡大部37が設けられている。ここでは、拡大部37は板状であり、磁芯36の他端が拡大部37と一体に形成されているが、拡大部37と磁芯36とは別々に形成してもよい。
【0031】
拡大部37を中央に位置させた場合は、永久磁石部17が配置された側の面は、マスク15が配置された面とは反対側の面に配置されている。
【0032】
拡大部37側を永久磁石部17の表面とすると、永久磁石部17の裏面側と配置孔381の底面との間には、ヨーク部35の一部が配置されている。
【0033】
ヨーク部35は、有底筒形形状又はコ字形形状であり、底面部35aが永久磁石部17の裏面側と配置孔381の底面との間に配置され、底面部35aと垂直に配置された側面部35bが、磁気コイル18の側面と配置孔381の側面との間に配置されている。
【0034】
ここでは、ヨーク部35は有底筒形形状であり、側面部35bの下端側は底面部35aと接触しており、上端側はヨーク部35の先端を構成する。
【0035】
磁芯36の一端とヨーク部35の先端とは、配置孔381の開口33よりも底面部35a側に位置し、配置孔381の開口33に向けられており、磁芯36の一端も開口33に向けられて先端となり、ヨーク部35の先端と磁芯36の先端とは、同じ方向に向けられている。
【0036】
磁芯36と拡大部37とヨーク部35とは、透磁率が高く、且つ、保磁力が小さい軟質磁性体で構成されており、永久磁石部17の表面は拡大部37に接触され、裏面はヨーク部35の底面部35aに接触されている。
【0037】
永久磁石部17の二個の磁極のうち、拡大部37側に向けられた方の磁極がN極の場合は、N極から放出された磁力線は、拡大部37の中と、磁芯36の中とを通って、磁芯36の先端から吸着部321の外部に放出され、ヨーク部35の先端からヨーク部35の中に入り、永久磁石部17のS極に戻る。
【0038】
永久磁石部17の二個の磁極のうち、底面部35a側に向けられた方がN極の場合の磁極は、これとは逆の順序になる。
【0039】
いずれの場合も、永久磁石部17によって磁芯36の先端とヨーク部35の先端の間に、強磁性体を吸着する吸着磁界が形成される。
【0040】
吸着部321~324はマスク用枠体31の四隅に配置されており、マスク15の大きさは、マスク15の四辺が吸着部321~324の内側に位置するように配置されている。
【0041】
鉛直姿勢のマスク用枠体31の下端には受電部8が設けられており、
図12に示すように着脱部25には給電部9が設けられている。
【0042】
図12は、マスク15が配置された鉛直姿勢のマスク配置装置30が、着脱部25に配置される前の状態であり、受電部8と給電部9とは離間されている。
【0043】
受電部8には有底孔である受電凹部51a、51bが形成されており、受電凹部51a、51bの底面には第一、第二の受電端子19a、19bが配置されている。ここでは、二個の受電凹部51a、51bが設けられており、一方の受電凹部51aの底面に第一の受電端子19aが配置され、他方の受電凹部51bの底面に第二の受電端子19bが配置されているが、一個の受電凹部に第一、第二の受電端子19a、19bの両方が配置されていてもよい。
【0044】
但し着膜による短絡防止の効果を発揮させる場合、つまり沿面距離を増大させる効果を発揮させる場合は凹部を複数個設けることが望ましい。また、第一、第二の受電端子19a、19bは受電凹部51a、51b以外の場所に配置されていてもよい。
【0045】
給電部9には、有底孔である給電凹部52が設けられており、給電凹部52には第一、第二の給電端子29a、29bが設けられている。
【0046】
第一、第二の給電端子29a、29bは棒状であり、給電凹部52の底面に設けられた第一、第二の弾性部47a、47bにそれぞれ取り付けられ、第一、第二の給電端子29a、29bの先端は給電凹部52から突き出されている。
【0047】
第一、第二の弾性部47a、47bは、変形と復元とが可能な弾性材料で形成されており、ここでは渦巻バネが用いられているがそれに限定されるものではない。
【0048】
第一、第二の受電端子19a、19bはマスク用枠体31上に固定された金属膜又は金属薄板である。
【0049】
第一、第二の給電端子29a、29bの中心間距離は、第一、第二の受電端子19a、19bの中心間距離と同じにされており、受電部8と給電部9とが対面したときに、第一、第二の給電端子29a、29bは、第一、第二の受電端子19a、19bに向くように配置されており、受電部8と給電部9とが離間して対面した状態でマスク配置装置30と着脱部25とが相対的に移動して近接することで受電部8と給電部9とが相対的に近接すると、第一、第二の給電端子29a、29bの先端は第一、第二の受電端子19a、19bに近づく。
【0050】
受電凹部51a、51bの開口には、蓋部61a、61bが設けられており、受電部8と給電部9とが相対的に近接する方向に移動する際には、先ず、第一、第二の給電端子29a、29bの先端が蓋部61a、61bにそれぞれ接触される。
【0051】
更に受電部8が給電部9に近接する方向にマスク用枠体31を移動させると、第一、第二の給電端子29a、29bの先端が蓋部61a、61bを曲げ、受電凹部51a、51bの中に入り、次いで、第一、第二の給電端子29a、29bの先端が第一、第二の受電端子19a、19bにそれぞれ接触される。この状態では、第一、第二の給電端子29a、29bと第一、第二の受電端子19a、19bとは電気的に導通される。
【0052】
更に受電部8と給電部9とを相対的に近接する方向に移動させると、
図13に示されているように、第一、第二の給電端子29a、29bの先端が第一、第二の受電端子19a、19bに接触した状態で、第一、第二の給電端子29a、29bが押圧され、第一、第二の弾性部47a、47bは長さが短くなるように変形する。
【0053】
第一、第二の弾性部47a、47bは、変形させる力が除去されると元の形状に戻る復元力を有しており、受電部8と給電部9との移動が停止されても、第一、第二の弾性部47a、47bが変形した状態では、変形の復元力によって第一、第二の給電端子29a、29bの先端が第一、第二の受電端子19a、19bに押圧され、第一、第二の給電端子29a、29bの先端と第一、第二の受電端子19a、19bとの間の接触が維持されることで、導電性が維持される。
【0054】
ここでは、第一、第二の給電端子29a、29bの先端と第一、第二の受電端子19a、19bの表面とは金属等の導電性材料で構成されており、第一、第二の給電端子29a、29bの先端は、真空槽21の外部に配置された給電回路20に電気的に接続されている。
【0055】
第一、第二の受電端子19a、19bは、一方が磁気コイル18である巻線の一端に電気的に接続され、他方が巻線の他端に電気的に接続されており、第一、第二の給電端子29a、29bの先端が第一、第二の受電端子19a、19bに押圧された状態では、磁気コイル18の両端は、第一、第二の受電端子19a、19bと、第一、第二の給電端子29a、29bの先端とを介して、給電回路20に接続されている。
【0056】
なお、上記例では第一、第二の給電端子29a、29bを棒状にし、根本側を第一、第二の弾性部47a、47bに設け、先端側を第一、第二の受電端子19a、19bに当接させるようにしたが、第一、第二の受電端子を棒状にして根本側をマスク用枠体31に固定した弾性部にそれぞれ設け、先端側を膜状又は薄板状等の第一、第二の給電端子に当接させるようにしてもよい。
【0057】
また、第一、第二の弾性部47a、47bは棒状以外の形状の電極に設けても良く、要するに、第一の給電端子29aと第一の受電端子19aのうち、いずれか一方に第一の弾性部が設けられ、第二の給電端子29bと第二の受電端子19bのうち、いずれか一方に第二の弾性部が設けられていればよい。
【0058】
給電回路20は、電源装置48と通電回路49とを有している。
【0059】
第一の給電端子29aと第二の給電端子29bのうち、いずれか一方が電源装置48に電気的に接続され、他方が通電回路49に電気的に接続されている。ここでは第一の給電端子29aが電源装置48の電圧出力端子に接続されており、第二の給電端子29bが通電回路49に接続されている。
【0060】
<通電回路>
図17によって通電回路49の構成を説明すると、まず、通電回路49は、検出抵抗63と、電流制御回路65と、電圧測定回路66と、電流測定回路67とを有している。
【0061】
検出抵抗63と電流制御回路65とは直列接続されて直列接続回路68を構成しており、直列接続回路68の一端が第二の給電端子29bに接続され、他端が電源装置48の接地電位の端子と同電位の箇所に接続されている。
【0062】
電流制御回路65は導通と遮断を行うスイッチ回路であり、第一、第二の給電端子29a、29bと第一、第二の受電端子19a、19bとがそれぞれ電気的に接続された状態で電源装置48の出力電圧端子から所定の値の磁化電圧が出力され、その状態で電流制御回路65が遮断から導通に転じると、電磁石部14中の磁気コイル18と電流制御回路65とに、電流が流れる。
【0063】
なお、温度測定器40が検出した温度信号を制御装置26に出力するために、制御装置26に接続された第一、第二の入力端子を着脱部25に設け、温度測定器40に接続された第一、第二の出力端子をマスク配置装置30に設け、第一の入力端子と第一の出力端子とが接触され、第二の入力端子と第二の出力端子とが接触されたときに、温度測定器40が出力した測定信号が第一、第二の出力端子から第一、第二の入力端子に送信され、制御装置26によって受信されるようにすることができる。
【0064】
電流制御回路65は主制御回路60に接続されており、電流制御回路65に流れる電流は、主制御回路60によって制御されている。主制御回路60は、制御装置26に接続されており、主制御回路60は制御装置26によって制御されている。
【0065】
ここで、磁気コイル18に電流が流れると、磁気コイル18の両端には磁極が誘起され、コイル磁界が形成される。
【0066】
永久磁石部17により、磁芯36の先端とヨーク部35の先端との間に一定強度の吸着磁界が形成されているが、磁気コイル18に流れる電流の方向により、磁気コイル18が形成するコイル磁界は、吸着部321~324と吸着部321~324によって磁気吸引される被吸着部231~234との間に形成される磁界強度を大きくして磁力を増加させる場合と、磁界強度を弱くして磁力を小さくする場合とがある。
【0067】
磁気コイル18に流れる電流の方向及び電流値と、吸着部321~324と被吸着部231~234との間の磁力との関係を予め求めておき、吸着部321~324と被吸着部231~234との間の磁力ができるだけ小さくなる方向と電流値の電流を解除電流と呼ぶものとすると、解除電流が磁気コイル18を流れると、吸着部321~324と被吸着部231~234との間の磁力は弱化されてゼロに近くなり、吸着部321~324は被吸着部231~234を吸着しない状態になる。被吸着部231~234は後述する。
【0068】
<アラインメント>
搬入装置75aの内部には、基板16が配置された基板配置装置42が予め配置されており、搬入装置75aの内部が真空排気されて真空雰囲気が形成された後、搬入装置75aの内部と真空装置12の真空槽21の内部とが接続され、基板配置装置42は真空バルブ76を通って真空装置12の真空槽21の内部に搬入される。
【0069】
真空槽21の内部の天井には取付部22が設けられており、取付部22には、基板配置装置42を保持させ、所望方向に移動させることができる移動装置24が設けられている。真空槽21に搬入された基板配置装置42は移動装置24に着脱自在に保持され、移動装置24によって、基板配置装置42とマスク配置装置30とは相対的に移動される。
【0070】
図8には、基板用枠体41に設けられた突起等の基板保持部43によって基板16が保持され、基板16と共に基板用枠体41が鉛直にされた基板配置装置42が示されている。
【0071】
この例では、真空装置12はアラインメント装置であり、真空装置12には撮像装置27a、27bが設けられている。
基板16とマスク15とにはそれぞれアラインメントマークが設けられており、それらのアラインメントマークを撮像装置27a、27bによって撮像し、基板16のアラインメントマークとマスク15のアラインメントマークとが所定の位置関係になるように、基板16とマスク15とを相対的に移動させると位置合わせを行うことができる。
【0072】
基板16とマスク15とを相対的に移動させる際には、基板16が配置された基板用枠体41とマスク15が設けられたマスク用枠体31とを相対移動させることになる。
【0073】
基板用枠体41には、被吸着部231~234が設けられている。基板用枠体41とマスク用枠体31とが対面して配置されたときに、吸着部321~324と被吸着部231~234とは対面するように配置されている。各吸着部321~324のヨーク部35の先端と磁芯36の先端は被吸着部231~234に対面する。
【0074】
被吸着部231~234は磁力によって磁気吸引される材料で形成されており、磁気コイル18に解除電流が流れていないときには、吸着部321~324と被吸着部231~234とが近接して対面すると、吸着部321~324の磁力によって被吸着部231~234は吸着部321~324に磁気吸引され、基板用枠体41とマスク用枠体31とが接触する。この状態では、基板用枠体41とマスク用枠体31とは磁力によって互いに押圧される吸着状態になり、基板用枠体41とマスク用枠体31との間の摩擦力により、基板用枠体41とマスク用枠体31とは相対移動させることができない。
【0075】
従って、位置合わせを行う際には、先ず、基板用枠体41とマスク用枠体31とを近接させる前に各吸着部32
1~32
4にそれぞれ解除電流を流して磁気吸引力が弱化された解除状態にし、移動装置24により、基板配置装置42をマスク配置装置30に近接させ、基板配置装置42とマスク配置装置30とを、
図4に示すようにマスク15と基板16とが離間した状態で近接して対面するように配置する。
【0076】
解除状態では磁気吸引力は弱化されているため、被吸着部231~234は吸着部321~324に磁気吸引されず、制御装置26は撮像装置27a、27bによって撮像しながら、アラインメントマークが所定の位置関係になるように、移動装置24によって基板配置装置42とマスク配置装置30とを相対的に移動させる。
【0077】
ここではマスク配置装置30が静止され、基板配置装置42が移動装置24によって移動されるが、その逆でもよいし、両方移動されてもよい。
【0078】
このように、吸着部321~324に解除電流が流されて磁気吸引力が弱化される解除状態では、基板配置装置42とマスク配置装置30とを非接触の状態で近接して配置することが可能であり、近接配置した状態で基板配置装置42とマスク配置装置30とを相対的に移動させると、基板16とマスク15との位置合わせを行うことができる。
【0079】
位置合わせが行われた後、解除状態のまま、基板配置装置42とマスク配置装置30とは互いに近接する方向に移動され、基板用枠体41とマスク用枠体31とが接触される。
【0080】
基板用枠体41とマスク用枠体31とが接触された後、磁気コイル18に流れる解除電流が停止されると、磁気コイル18が形成する磁界は消滅し、永久磁石部17が、磁芯36の先端とヨーク部35の先端との間に形成する磁界によって吸着部321~324が被吸着部231~234を磁気吸引する吸着状態になる。
【0081】
吸着状態では、基板用枠体41とマスク用枠体31とは接触し、摩擦力によって基板用枠体41とマスク用枠体31とは相対的に移動できない状態になり、磁気吸引力によって互いに固定され、搬送ロボット等によって、互いに固定された基板配置装置42とマスク配置装置30とは一緒に移動される。
【0082】
<吸着部と被吸着部の形状>
吸着部321~324の形状と被吸着部231~234の形状とを説明する。
【0083】
図19(a)は、吸着部32
1~32
4の正面図であり、配置孔38
1~38
4の内部に配置された円柱形形状の磁芯36の先端と、円筒形形状のヨーク部35の先端とが示されている。同図(b)に示すように、基板用枠体41の被吸着部23
1~23
4は、磁芯36の先端と対面する部分である円形の第一の被吸着部39
1と、ヨーク部35の先端と対面する部分であるリング形形状の第二の被吸着部39
2とをそれぞれ有している。
【0084】
基板16が配置された基板用枠体41のうち、少なくとも第一、第二の被吸着部391、392は強磁性体で構成されており、解除電流により、磁芯36の先端とヨーク部35の先端との間に形成される磁界の強度が小さくされているときには、第一、第二の被吸着部391、392が吸着部321~324に近接しても、第一、第二の被吸着部391、392が吸着部321~324に磁気吸着されないが、解除電流が停止された状態で基板用枠体41がマスク用枠体31に近接すると、ヨーク部35の先端と磁芯36の先端との間に形成された磁界の中に第一、第二の被吸着部391、392が入り、第一、第二の被吸着部391、392が吸着部321~324に磁気吸引される。
【0085】
磁芯36の先端とヨーク部35の先端とは、配置孔381~384の開口と底面との間の開口に近い場所に位置しており、吸着部321~324と被吸着部231~234とが対面した状態で基板用枠体41とマスク用枠体31とが接触したときには、磁芯36の先端と第一の被吸着部391とは非接触の状態で近接して対面し、また、ヨーク部35の先端と第二の被吸着部392とも非接触の状態で近接して対面する。
【0086】
基板用枠体41とマスク用枠体31とが接触したときの磁芯36の先端と第一の被吸着部391との間の距離とヨーク部35の先端と第二の被吸着部392との間の距離とは0.1mm以下の範囲で非接触であるとよい。
【0087】
但し、本発明には基板用枠体41とマスク用枠体31とがマスクを介して対面する場合も含まれる。
【0088】
図11と
図14は、基板用枠体41の第一、第二の被吸着部39
1、39
2が吸着部32
1~32
4に磁気吸着された状態である。
【0089】
基板16が基板用枠体41に配置された状態では、基板保持部43(
図7、
図8)等の基板を保持する装置により、基板16は基板用枠体41に対して移動できないようにされており、また、マスク15がマスク保持装置によってマスク用枠体31に配置された状態では、マスク15はマスク用枠体31に対して移動できないようにされている。
【0090】
この例では、基板16が配置された基板用枠体41の第一、第二の被吸着部391、392が、マスク15が配置されたマスク用枠体31の吸着部321~324に磁気吸引されて、基板用枠体41とマスク用枠体31とが互いに固定されると、基板16とマスク15とも互いに移動しないようになる。符号28は、マスク配置装置30と基板配置装置42とから成り、マスク15と基板16とを運搬する運搬装置を示している。
【0091】
解除電流が停止され、吸着状態でマスク配置装置30と基板配置装置42とが一緒に移動した場合は基板16とマスク15とは、位置合わせがされた状態が維持される。
【0092】
従って、磁気コイル18に電流が流れなくても第一、第二の被吸着部39
1、39
2は吸着部32
1~32
4によって磁気吸着されており、
図15に示されたように、マスク配置装置30が着脱部25から分離され、第一、第二の給電端子29a、29bと第一、第二の受電端子19a、19bとが離間して移動されても、基板16とマスク15とが位置合わせされた状態は、電流が供給されなくても維持される。
【0093】
マスク配置装置30が着脱部25から分離されたときには第一、第二の給電端子29a、29bと第一、第二の受電端子19a、19bとは離間しており、弾性部材47a、47bは元の形状に復元する。
【0094】
別形態として、基板16が基板用枠体41に対して移動可能である構成の場合は、基板用枠体41とマスク用枠体31とが互いに固定される際に基板16が挟み込まれる構成とする事で、吸着部321~324を中心に垂直応力に基づく摩擦力を発生させ、その結果、基板用枠体41とマスク15とが基板16を挟み、互いに固定され、解除電流が停止された状態でマスク配置装置30と基板配置装置42とが一緒に移動した場合でも、基板16とマスク15との位置合わせがなされた状態が維持される。
【0095】
なお、マスク15がマスク用枠体31に対して移動可能である構成の場合も同様に、マスク用枠体31と基板用枠体41とが互いに固定される際にマスク15が挟み込まれる構成としても良い。
【0096】
なお、ここでは弾性部材47a、47bは渦巻バネによって形成したが、板バネやゴム等を用いることもできる。
【0097】
<真空処理>
着脱部25から分離されたマスク配置装置30と基板配置装置42とは、真空バルブ77を通り、真空槽21の内部から処理装置13の内部に移動される。
【0098】
基板16とマスク15とはアラインメントされており、マスク配置装置30を電源装置48から切り離しても基板用枠体41はマスク用枠体31に磁気吸着された吸着状態にあり、マスク配置装置30を着脱部25から分離させ、互いに固定されたマスク配置装置30と基板配置装置42とを一緒に移動させることができる。
【0099】
図6には処理装置13の内部が示されている。この処理装置13はスパッタリング装置であり、真空槽79を有している。真空槽79にはバッキングプレート57に設けられたスパッタリングターゲット58が配置されており、バッキングプレート57にはスパッタ電源56が接続され、真空槽79にはガス供給装置74が接続されている。
【0100】
基板配置装置42とマスク配置装置30とが磁気吸引されて互いに固定された状態で、マスク配置装置30側がスパッタリングターゲット58に向けられ、処理装置13の真空槽79が真空排気されながらガス供給装置74からスパッタリングガスが供給され、スパッタ電源56によってバッキングプレート57にスパッタリング電圧が印加されるとスパッタリングターゲット58の表面近傍でプラズマが形成され、スパッタリングターゲット58がスパッタリングされる。
【0101】
スパッタリングにより、スパッタ粒子がスパッタリングターゲット58の表面から飛び出し、飛び出したスパッタリング粒子は基板16とマスク15とが位置する方向に飛行し、マスク15に設けられた開口を通過したスパッタリング粒子は基板16の表面に到達し、開口の表面形状と同じ表面形状の薄膜を成長させる。
【0102】
このような真空処理が行われ、基板16の表面に所定膜厚の薄膜が形成された後、基板配置装置42とマスク配置装置30とは、次段の真空バルブ78を通過して搬出装置75bの内部に一緒に搬送される。
【0103】
この搬出装置75b内では、第一、第二の受電端子19a、19bの間に電圧が印加され、磁気コイル18に解除電流が流される。つまり、磁気コイル18には電源装置48から供給される電圧によって解除電流が流され、吸着部321~324の磁気吸着力が弱くされ、基板配置装置42とマスク配置装置30とが分離される。
【0104】
分離されたマスク配置装置30は、真空雰囲気を維持された搬送路を通って真空装置12の真空槽21の内部に戻され、他方、分離された基板配置装置42は大気中に取り出され、次の工程に移動される。
【0105】
<解除電流の制御>
次に、解除電流の制御について説明する。
【0106】
電流制御回路65に加え、電圧測定回路66と電流測定回路67とも主制御回路60に接続されており、各回路65~67は主制御回路60によって制御され、主制御回路60は制御装置26によって制御されるようになっている。
【0107】
磁気コイル18に流れる電流は、
図18のグラフのような大きさになるように、主制御回路60によって制御されており、磁気コイル18の電流の流れを開始する際には、電流制御回路65により、磁気コイル18に流れる電流は、電流値がゼロの状態から漸増が開始される(時刻t
0)。
【0108】
磁気コイル18を流れる電流は検出抵抗63を流れ、検出抵抗63の両端に生じた電圧は、電流測定回路67によって測定されており、測定値が主制御回路60に出力されると主制御回路60は検出抵抗63に流れる電流を算出し、算出結果から、電流制御回路65に流れる電流を一定割合で漸増させる。
【0109】
磁気コイル18に流れる電流が所定の大きさの解除電流値Ixに達すると(時刻t1)、次のように、解除電流値Ixを維持させて継続して電流を流す。
【0110】
解除電流値Ixの電流が磁気コイル18に流れると吸着部321~324の磁気吸着力が弱くされ、マスク用枠体31が磁気吸着されないようになる。解除電流値Ixの電流が解除電流である。
【0111】
通電回路49又は電源装置48にはダイオード素子11が配置されており、ダイオード素子11のカソード電極は第一の給電端子29aに電気的に接続され、アノード電極は、検出抵抗63と電流制御回路65とが電気的に接続された部分に電気的に接続されている。
【0112】
電流制御回路65が導通して電源装置48から磁気コイル18に電流が供給される間は、ダイオード素子11は逆バイアスされ、ダイオード素子11には電流は流れない。
【0113】
主制御回路60には、解除電流値Ixよりも大きな上限電流値と解除電流値Ixよりも小さな下限電流値とが設定されており、電流制御回路65が導通して磁気コイル18に流れる電流が漸増し、上限電流値よりも大きくなったことが電流測定回路67によって検出されると、主制御回路60は電流制御回路65を導通から遮断に転じさせる。
【0114】
電流制御回路65が導通から遮断に転じると、電源装置48から磁気コイル18に供給される電流が停止し、磁気コイル18に誘導起電力が発生し、ダイオード素子11が順バイアスされ、誘導起電力によってダイオード素子11と磁気コイル18と検出抵抗63とに電流が流される。
【0115】
誘導起電力によって流れる電流は漸減し、電流値が下限電流値よりも小さくなったことが電流測定回路67によって検出されると、主制御回路60は電流制御回路65を遮断から導通に転じさせ、電源装置48から磁気コイル18への電流供給が再開される。
【0116】
このように、磁気コイル18に流れる電流が上限電流値と下限電流値の間で変化するので、上限電流値と下限電流値との差を小さくしておくと、磁気コイル18には平均して解除電流値Ixの大きさの解除電流が定電流として継続して流される。
【0117】
解除電流が流れる間は解除状態であり、マスク用枠体31と基板用枠体41とが近接され、基板16とマスク15とを相対移動させてアラインメントが行われ、マスク用枠体31と基板用枠体41とが接触される。マスク用枠体31と基板用枠体41とは、間にマスク15が配置された状態で接触されてもよい。
【0118】
アラインメント終了などの信号が主制御回路60に入力されると、磁気吸着を開始させるために、主制御回路60は磁気コイル18に流れる電流の値の漸減を開始させ(時刻t2)、電流がゼロの状態に戻す(時刻t3)。
【0119】
漸減の途中又は終了の時点で、磁芯36の先端とヨーク部35の先端の間に、基板用枠体41がマスク用枠体31に磁気吸着される程度の磁気吸引力を発生させる磁界が形成され、マスク用枠体31と基板用枠体41とが互いに固定される。それと共に基板16とマスク15とも互いに固定される。
【0120】
磁気コイル18に流れる電流が漸減するので、磁気吸引力は漸増し、急激な力変化は発生しないから、基板16の割れや欠けは発生しない(直接基板16に垂直応力を発生させた場合は特に効果的である)。
【0121】
なお、第二の給電端子29bは電圧測定回路66に接続されており、磁気コイル18の一端の電圧を測定し、正常か異常かを監視することができる。
【0122】
このように、吸着の開始と吸着解除の開始の際の急激な電流変化が防止されているので、基板用枠体41とマスク用枠体31との衝突や基板16の跳ね、垂直応力の急激な時間変化によるダスト発生等のトラブルを防止することができる。
【0123】
なお、解除電流が小さすぎると永久磁石部17の磁界が被吸着部391、392を磁気吸引しない程度に十分に小さくすることができなくなる。その場合は、永久磁石部17の残存する磁力によって、吸着部321~324が被吸着部391、392を磁気吸引してしまう。
【0124】
他方、解除電流が大きすぎると、永久磁石部17の磁気吸引力を消滅させる磁界よりも大きな磁界が電磁石部14によって形成され、吸着部321~324が被吸着部391、392を磁気吸引してしまう。
【0125】
永久磁石部17が被吸着部391、392を吸引する磁力を消滅させるためには、電磁石部14に、適切な電流値の電流を流すとよい。
【0126】
吸着部321~324が被吸着部391、392を磁気吸引する力を最も小さくする解除電流の値は磁気コイル18の等価抵抗値の温度変化等、温度も影響しており、通電回路49は磁気コイル18に流す電流の値を変更することができるから、予め複数の温度雰囲気中で最適な解除電流の値を測定し、温度と最適な解除電流の値との関係を求めて主制御回路60に記憶しておき、アラインメントする際には温度測定器40によってマスク配置装置30の中の吸着部321~324の温度を測定し、磁気コイル18に、記憶された最適な解除電流の値から、測定した温度に対応する電流値の解除電流を流すようにすればよい。
【0127】
上記例では、吸着部32
1~32
4はマスク用枠体31に設けられ、被吸着部23
1~23
4は基板用枠体41に設けられていたが、
図16のようにその逆に、配置孔38
1~38
4と配置孔38
1~38
4の中の吸着部32
1~32
4とを基板用枠体41に設け、被吸着部23
1~23
4をマスク用枠体31に設け、吸着部32
1~32
4と被吸着部23
1~23
4とが非接触で対面した状態でマスク用枠体31と基板用枠体41とが接触するようにしてもよい。
【0128】
その場合、給電部9は、着脱部25ではなく、基板用枠体41が接触する移動装置24に設け、受電部8はマスク用枠体31ではなく基板用枠体41に設けると良い。
【0129】
また、上記例では永久磁石部17は磁芯36とは別に設けたが、磁芯36を永久磁石で構成させれば、磁芯36を永久磁石部17として磁気コイル18の中に配置させることができる。
【符号の説明】
【0130】
8……受電部
9……給電部
12……真空装置
14……電磁石部
15……マスク
16……基板
17……永久磁石部
18……磁気コイル
19a……第一の受電端子
19b……第二の受電端子
21……真空槽
231~234……被吸着部
24……移動装置
25……着脱部
29a……第一の給電端子
29b……第二の給電端子
30……マスク配置装置
31……マスク用枠体
321~324……吸着部
35……ヨーク部
35a……底面部
35b……側面部
36……磁芯
391……第一の被吸着部
392……第二の被吸着部
41……基板用枠体
42……基板配置装置
47a……第一の弾性部
47b……第二の弾性部
49……通電回路
65……電流制御回路