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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】オキシメチレンポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 2/06 20060101AFI20230612BHJP
   C08G 2/10 20060101ALI20230612BHJP
   C08G 2/04 20060101ALI20230612BHJP
   D01F 6/78 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C08G2/06
C08G2/10
C08G2/04
D01F6/78
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019538599
(86)(22)【出願日】2018-01-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2018050395
(87)【国際公開番号】W WO2018134075
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】17152101.6
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】518213592
【氏名又は名称】コーロン プラスティックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kolon Plastics Inc.
【住所又は居所原語表記】10th floor, Kolon Tower Annex, 1-22 Gwacheon-Si, Gyeonggi-Do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハイツ
(72)【発明者】
【氏名】ミンルー ヂァン
(72)【発明者】
【氏名】アーヒム シュタマー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-ムン キム
(72)【発明者】
【氏名】イン-ギ チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジン-サン チョイ
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/083983(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G2
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I(エステル)
-CO-O-R (I)
[式中、Rは、
- 水素、または
- 直鎖状または分枝鎖状のC ~C アルキルであり、
は、
- R が水素である場合は、C アルキルまたは直鎖状のC ~C アルキルであり、
- R が水素でない場合は、直鎖状または分枝鎖状のC ~C アルキルである]の少なくとも1種のエステルの存在下で、
かつ少なくとも1種のルイス酸であって、ホウ素、錫、チタン、リン、アンチモンまたはヒ素のハロゲン化物である、前記ルイス酸の存在下で、
-CHO-繰り返し単位を形成することが可能な少なくとも1種の化合物(モノマー)および環状エーテルまたは環状ホルマールである少なくとも1種のコモノマーを重合することを含む、オキシメチレンポリマーの製造方法。
【請求項2】
およびRが、互いに独立して、直鎖状または分枝鎖状のC1~C4アルキルである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記モノマーが、ホルムアルデヒドの少なくとも1種の環状オリゴマーである、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のエステルと前記少なくとも1種のルイス酸との重量比が、10:1~300:1である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種のルイス酸を、前記少なくとも1種のエステルと予め混合してプレミックスを得る、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記プレミックスを、前記少なくとも1種のモノマーに添加し、後者が液体である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記プレミックスを、最初に前記少なくとも1種のコモノマーに添加し、後者が液体である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記ルイス酸が、ハロゲン化ホウ素である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種のモノマーが、1,3,5-トリオキサンである、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種のコモノマーが、1,3-ジオキソランもしくは1,3-ジオキセパンまたはそれらの混合物である、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の連鎖移動剤が存在する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記連鎖移動剤が、メチラールまたはブチラールである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
-CHO-繰り返し単位を形成することが可能な少なくとも1種の化合物(モノマー)と、環状エーテルまたは環状ホルマールである少なくとも1種のコモノマーとから誘導される繰り返し単位から本質的に構成されるオキシメチレンポリマーであって、その末端基の1つが、一般式(II)
-CO- (II)
[式中、Rは、
- 水素、または
- 直鎖状または分枝鎖状のC~Cアルキルである]の末端基であることをさらに含み、かつ一般式(III)
-O-R (III)
[式中、Rは、
- Rが水素である場合、C2アルキルまたは直鎖状のC3~C4アルキルであり、
が水素でない場合、直鎖状または分枝鎖状のC~Cアルキルである]の末端基を少なくとも1つ含む、オキシメチレンポリマー。
【請求項14】
およびRが、互いに独立して、直鎖状または分枝鎖状のC~Cアルキルである、請求項13記載のオキシメチレンポリマー。
【請求項15】
芳香族炭化水素を含まない、請求項13または14記載のオキシメチレンポリマー。
【請求項16】
請求項11または12記載の方法によって得られる、-CHO-繰り返し単位を形成することが可能な少なくとも1種の化合物(モノマー)と、環状エーテルまたは環状ホルマールである少なくとも1種のコモノマーとから誘導される繰り返し単位から本質的に構成される、オキシメチレンポリマー。
【請求項17】
請求項1から12までのいずれか1項に従って得られたオキシメチレンポリマーまたは請求項13から16までのいずれか1項に記載のオキシメチレンポリマーの、フィルム、繊維または造形品の製造のための使用。
【請求項18】
請求項1から12までのいずれか1項に従って得られたオキシメチレンポリマーまたは請求項13もしくは16に記載のオキシメチレンポリマーの使用を含んで製造された、繊維、フィルムまたは造形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、1種以上のエステルおよびルイス酸の存在下で1種以上のオキシメチレン形成化合物を重合することを含む、オキシメチレンポリマーの製造方法に関する。
【0002】
オキシメチレンポリマーとは、ある程度までオキシメチレン部分から構成されているポリマー骨格を有するホモポリマーまたはコポリマーの総称である。オキシメチレンポリマーは、工業用または消費者用のさまざまな器具に成形され得る。
【0003】
オキシメチレンポリマーは、好ましくはそれぞれ重合反応を引き起こす化合物の存在下で、ホルムアルデヒドのアニオン重合またはその環状オリゴマーおよび場合によってはコモノマーのカチオン重合によって得ることができる。
【0004】
特開2015-110714号公報(JP 2015110714 A2)には、重合が安定剤の存在下で行われるオキシメチレンポリマーの製造方法が開示されている。安定剤として開示されている化合物は、立体障害のある化合物、例えば、ペンタエチロールテトラキス(3-(3,5-ジ-tertブチル4-ヒドロキシフェニルプロピオネート)である。
【0005】
独国特許第10082068号明細書(DE 100 82 068)から、無機酸のエステル、特に過塩素酸と脂肪族アルコールとのエステルを使用する重合方法が知られている。
【0006】
脂肪族、芳香族または複素環式酸のオルトエステル、特にギ酸のオルトエステルは、重合してオキシメチレンポリマーを得るため分子量調節剤として、例えば、米国特許第325938号明細書(US 325938)に開示されている。
【0007】
特開平10-182772号公報(JP 10182772 A2)には、重合触媒としてペルフルオロアルキルスルホン酸の希土類金属塩を使用するトリオキサンの(共)重合が開示されている。さらに、触媒が好ましくは不活性溶媒で希釈されることが開示されている。とりわけ、酢酸ブチルエステルが、適切な不活性溶媒として挙げられている。
【0008】
本開示の対象の1つは、高い転化率または良好な収率でそれぞれオキシメチレンポリマーを製造する方法である。本開示は、重合の触媒として作用し得るルイス酸が十分に活性化されて反応が容易に進行するオキシメチレンポリマーの製造方法にも関する。
【0009】
本開示の別の対象は、芳香族炭化水素溶媒の使用を省くことができる、高い転化率を有するオキシメチレンポリマーの製造方法である。
【0010】
さらに別の対象は、安定な末端基を有するオキシメチレンポリマーである。
【0011】
概して、本明細書には、一般式I
R1-CO-O-R2 (I)
[式中、
R1は、水素であっていてよく、かつ
ここで、R1およびR2は、互いに独立して
- 直鎖状または分枝鎖状のC1~C10アルキル、
- C5~C7シクロアルキルまたは
- -[R3-O-]nR4
であり、
ここで
- R3は、直鎖状または分枝鎖状のC2~C5アルキレンであり、かつ
- R4は、直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキルであり、かつ
- nは、1~5の整数である]の少なくとも1種のエステルの存在下で、かつ少なくとも1種のルイス酸の存在下で、-CH2O-繰り返し単位を形成することが可能な少なくとも1種の化合物を重合することを含むオキシメチレンポリマーの製造方法が開示されている。繰り返し単位を形成することが可能な化合物は、以下においてモノマーとも略される。
【0012】
さらに、その末端基の1つが、一般式(II)
R1-CO- (II)
[式中、R1は、
- 水素
- 直鎖状または分枝鎖状のC1~C10アルキル
- C5~C7シクロアルキルまたは
- -[R3-O-]nR4
であり、
ここで
- R3は、直鎖状または分枝鎖状のC2~C5アルキレンであり、かつ
- R4は、直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキルであり、かつ
- nは、1~5の整数である]の末端基
および一般式(III)
-O-R2 (III)
[式中、R2は、
- 直鎖状または分枝鎖状のC1~C10アルキル
- C5~C7シクロアルキルまたは
- -[R3-O-]nR4
であり、
ここで、
- R3は、直鎖状または分枝鎖状のC2~C5アルキレンであり、かつ
- R4は、直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキルであり、かつ
- nは、1~5の整数である]の少なくとも1つの末端基であることを含むオキシメチレンポリマーが本明細書に開示されている。
【0013】
また、本方法により得られるオキシメチレンポリマーまたは一般式(II)の1つの末端基をそれぞれ含むオキシメチレンポリマーの、フィルム、繊維または造形品の製造のための使用も本明細書に開示されている。さらに、本明細書には、前記オキシメチレンポリマーを含んで製造された繊維、フィルムまたは成形品が開示されている。
【0014】
以下において、「少なくとも1種」は、概して1種または2種以上、例えば1種または2種以上の混合物、例えば、3種または4種または5種以上の混合物を意味し、より多くは、複数または数えられないことを意味し得る。化学物質に関連して使用される場合、「少なくとも1種」は、それらの化学構造、すなわち化学的性質が異なる1種または2種以上の化学物質が記載されていることを意味する。
【0015】
以下において、「ポリマー」は、ホモポリマーまたはコポリマーまたはそれらの混合物を意味し得る。当業者であれば、いずれのポリマーも、本質的にホモポリマーまたはコポリマーであっていてよく、通常、鎖長、分岐度または末端基の性質などのそれらの構成が異なるポリマー個体の混合物であることを理解する。
【0016】
本明細書に開示されている方法により製造されるオキシメチレンポリマー(以下、POMと略記する)は、特に限定されない。概して、POMは、好ましくは少なくとも50モル%の-CH2O-繰り返し単位を含むポリマーとして特徴付けられ得る。POMは、非分枝鎖状および直鎖状であり得るか、またはPOMは、分枝鎖状であり得る。
【0017】
POMは、-CH2O-繰り返し単位のみを有するポリマーを意味する、ホモポリマーであり得る。また、POMは、コポリマーであり得る。また、POMは、ホモポリマーとコポリマーとの混合物であり得る。
【0018】
POMが、コポリマーであることが有利であり得る。コポリマーは、-CH2O-繰り返し単位に加えて、少なくとも1つの他の繰り返し単位を含む。
【0019】
コポリマーは、-CH2O-繰り返し単位と一緒に、好ましくは50モル%まで、例えば40モル%まで、より好ましくは30モル%まで、より好ましくは20モル%まで、より好ましくは0.01~約20モル%、より好ましくは0.1~10モル%、より好ましくは0.2~5モル%、そして特に好ましくは0.5~3モル%の、少なくとも1つのさらなる繰り返し単位、特に一般式(IV)
【化1】
[式中、基R5、R6、R7、およびR8は、互いに同一でも異なっていてもよく、かつ互いに独立して、H、またはC1~C4アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、例えば、n-プロピルまたはイソ-プロピル、またはブチル、例えば、n-ブチル、イソ-ブチル、またはtert-ブチルであっていてよく、
かつR9は、-CR102-および/または-CR112O-であっていてよく、
R10およびR11は、互いに同一でも異なっていてもよく、かつ互いに独立して、H、またはC1~C4アルキルであっていてよく、
したがって、R9は、メチレン、オキシメチレン、C1~C4アルキル置換メチレン、および/またはC1~C4アルキル置換オキシメチレンであっていてよく、ここで、適当な場合、メチレン基および/またはオキシメチレン基上の置換基として存在するC1~C4アルキルは、例として、メチル、エチル、プロピル、例えば、nプロピルまたはイソ-プロピル、またはブチル、例えば、n-ブチル、イソ-ブチル、またはtert-ブチルであっていてよく、
かつpは、0~3の整数、例えば、0または1または2または3であっていてよい。
【0020】
コポリマーが、-CH2O-繰り返し単位と共に一般式IVの2つの繰り返し単位を含むことが有利であり得る。コポリマーが-CH2O-繰り返し単位と共に一般式IVの1つの繰り返し単位を含むことが最も有利であり得る。
【0021】
概して、-CH2O-繰り返し単位、特に一般式(IV)の繰り返し単位の他に繰り返し単位を使用すると、POMは解重合しにくくなる。このような繰り返し単位をごく少量、例えば0.01モル%未満使用すると、POMホモポリマーの解重合挙動を示すPOMが得られる。したがって、少なくとも0.1モル%、少なくとも0.2モル%、または少なくとも0.5モル%などのより多い量で前記単位を使用することが有利である。前記他の繰り返し単位を多量または極めて多量に使用すると、POMホモポリマーと比較してPOMの結晶化度および引張強度は低下し得る。このことは、POMの特定の用途には望ましくないこともある。したがって、50モル%までの量、例えば、40、30、20または10モル%までの量で前記繰り返し単位を使用することが有利であり得る。5モル%までまたは3モル%までの使用は、この点で最も好ましいこともある。
【0022】
POMは、直鎖状の場合は2つの末端基を有するか、または分枝鎖状の場合は2つより多い末端基を有する。典型的な分岐剤は、ジエポキシドまたはジアセタールであり、その結果、偶数のアームを有する構造が得られる。
【0023】
末端基の1つが一般式(II)
R1-CO- (II)
[式中、R1は、
- -水素
- 直鎖状または分枝鎖状のC1~C10アルキル
- C5~C7シクロアルキルまたは
- -[R3-O-]nR4
であり、
ここで
- R3は、直鎖状または分枝鎖状のC2~C5アルキレンであり、かつ
- R4は、直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキルであり、かつ
- nは、1~5の整数である]の末端基であることが有利であり得る。
【0024】
したがって:
直鎖状または分枝鎖状のC1~C10アルキルは、概して、1~10個の炭素原子の範囲の任意の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を意味し、それによって直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキルがより有利であり、それによって直鎖状または分枝鎖状のC1~C4アルキルが、最も有利であり;したがってC1~C10アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルを意味し、それによってイソおよび直鎖種が有利であり、それによって直鎖種が最も有利であり;
直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキルは、概して、1~5個の炭素原子の範囲の任意の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を意味し、それによってC1~C4がより有利であり;したがって、直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチルを意味し、それによってイソまたは直鎖種が有利であり、それによって直鎖種が最も有利であり;
直鎖状または分枝鎖状のC1~C4アルキルは、概して、1~4個の炭素原子の範囲の任意の直鎖状または分枝鎖状のC1~C4アルキル基、例えば直鎖状または分枝鎖状のC1~C3アルキルを意味し;したがって、C1~C4アルキルは、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチルを意味し、それによって、イソまたは直鎖種が有利であり、それによって直鎖種が最も有利であり;
直鎖状または分枝鎖状のC1~C3アルキルは、概して、1~3個の炭素原子の範囲の任意の直鎖状または分枝鎖状のC1~C3アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチルを意味し、それによって、イソまたは直鎖種が有利であり、それによって直鎖種が最も有利であり;
C5~C7シクロアルキルは、概して、5~7個の炭素原子の範囲の任意の脂環式基を意味し、したがって、これはシクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルを意味し、それによってシクロヘキシルが有利であり;
直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキレンは、概して、1~5個の炭素原子の範囲の任意のC1~C5アルキレン基を意味し、したがって、これはメチレン、エチレン、n-プロピレン、2-メチルプロピレン、n-ブチレンまたはn-ペンチレンを意味し、それによってイソまたは直鎖種が有利であり、それによって直鎖種が最も有利であり、それによってこれがメチレン、エチレンまたはn-プロピレンであることが特に有利であり得る。
【0025】
特に、R1は、直鎖状または分枝鎖状のC1~C10アルキル、最も好ましくは直鎖状または分枝鎖状のC1~C3アルキルであり得る。R1が、メチル、エチルまたはn-プロピルであることが特に有利であり得る。
【0026】
POMは、一般式(II)の1つの末端基に加えて、これが直鎖状のものである場合は、一般式(III)
-O-R2 (III)
[式中、R2は、
- 直鎖状または分枝鎖状のC1~C10アルキル
- C5~C7シクロアルキルまたは
- -[R3-O-]nR4
であり、
ここで
- R3は、直鎖状または分枝鎖状のC2~C5アルキレンであり、かつ
- R4は、直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキルであり、かつ
- nは、1~5の整数である]の末端基を少なくとも1つ含む。
【0027】
したがって、直鎖状または分枝鎖状のC1~C10アルキル、C5~C7シクロアルキル、直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキレンおよび直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキルは、一般式(II)について上記した通りに定義される。
【0028】
nは、1もしくは2もしくは3、または3もしくは4もしくは5であり、好ましくは、nは、1または2または3であり得る。
【0029】
特に、R2は、直鎖状または分枝鎖状のC1~C10アルキル、最も好ましくは直鎖状または分枝鎖状のC1~C4アルキルであり得る。R2がメチル、エチル、n-プロピルまたはn-ブチルであることが特に有利であり得る。
【0030】
R1がメチル、エチルまたはn-プロピルである一般式(I)の末端基と、R2がメチル、エチル、n-プロピルまたはn-ブチルである一般式(II)の少なくとも1つの末端基とを含むPOMは、検出できる匂いをほとんどまたはまったく要求しない用途に有利であり得る。
【0031】
POMの融点は、好ましくは150~200℃の範囲であり得る。POMがホモポリマーである場合、融点は、通常、170~190℃の範囲であり得る。POMがコポリマーである場合、融点は、より好ましくは、160~180℃の範囲であり得る。これらの融点は、DIN EN ISO 11357-3(2013年-04)に準拠した20K/分の加熱冷却速度および約8.5mgのサンプル重量で決定される。
【0032】
POMのモル質量(重量平均Mw;下記の「例-モル質量の決定」に記載された方法で決定される)は、広い範囲で調整され得る。これは好ましくは10000~240000g/モル±10%の範囲であるが、数平均分子量Mnは、好ましくは8000~85000の範囲であり得る。POMがホモポリマーである場合、重量平均Mwが11000~240000g/モル±10%、例えば25000~240000g/モル±10%の範囲であり得、分子量Mnは9000~85000g/モルの範囲であり得ることがさらに有利であり得る。POMがコポリマーである場合、モル質量(Mw)が80000~220000g/mol±10%の範囲であり得、その分子量Mnが9000~38000g/モルの範囲であり得ることがさらに有利であり得る。POMのMw/Mn比(多分散性指数)は、好ましくは1.4~14の範囲であり得る。POMがホモポリマーである場合、Mw/Mn比が1.4~6.9の範囲であり得ることがさらに有利であり得る。POMがコポリマーである場合、Mw/Mnが2.1~14の範囲であり得ることがさらに有利であり得る。
【0033】
POMの分子量分布は、単峰性または本質的に単峰性であり得る。これはまた、多峰性の分子量分布も有し得る。POMが二峰性の分子量分布を有する可能性もあり得る。
【0034】
開示された方法は、-CH2O-繰り返し単位を形成することが可能な少なくとも1種の化合物を重合することを含む。この化合物は、以下においてモノマーと略される。2種のモノマーを重合することが有利であり得る。また1種のみのモノマーを重合することも有利であり得る。POMホモポリマーが望ましい場合、1種のみのモノマーが重合される。
【0035】
POMコポリマーが望ましい場合、少なくとも1種のモノマーに加えて少なくとも1種のコモノマーが重合される。コモノマーは、好ましくは一般式IVの繰り返し単位を形成することが可能な化合物である。したがって、2種のコモノマーをさらに重合することが有利であり得る。また、1種のみのコモノマーをさらに重合することも有利であり得る。特に、1種のモノマーと1種または2種のコモノマーとを重合することが最も有利であり得る。1種のモノマーと2種のコモノマーとの反応から生じるPOMコポリマーは、POMターポリマーとも呼ばれる。
【0036】
少なくとも1種、好ましくは2種、最も好ましくは1種のモノマーを、少なくとも1種、好ましくは1種または2種のコモノマーと一緒に重合することが可能である。これにより、ランダムまたは本質的にランダムなPOMコポリマーが得られる。少なくとも1種、好ましくは2種、最も好ましくは1種のモノマーの全部または一部、および少なくとも1種、好ましくは1種または2種のコモノマーの全部または一部が続いて重合されることも可能であり得る。これにより、ブロック型またはセグメント型のPOMコポリマーが得られる。
【0037】
少なくとも1種のモノマーは、ホルムアルデヒドの少なくとも1種の環状オリゴマー、好ましくは1,3,5-トリオキサン(トリオキサン)または1,3,5,7-テトロキサンであり得る。モノマーがトリオキサンであることが最も有利であり得る。
【0038】
少なくとも1種のコモノマーは、少なくとも1種の環状エーテルまたは環状ホルマールであり得る。環状エーテルが、一般式(V)
【化2】
[式中、基R5~R9および指数pは、式IVについて上記で定義した通りである]
の1つであることが有利であり得る。pが0または1または2であり、かつR9がCH2であることが有利であり得る。
【0039】
環状エーテルおよび環状ホルマールの例は、エチレンオキシド、プロピレン1,2-オキシド、ブチレン1,2-オキシド、ブチレン1,3-オキシド、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、および1,3-ジオキセパンであり、また直鎖状オリゴ-またはポリホルマール、例えば、ポリジオキソランまたはポリジオキセパンである。少なくとも1種、好ましくは1種または2種のコモノマーが、2~4個の炭素原子、最も好ましくは2個または4個の炭素原子を有することが有利であり得る。最も好ましくは、コモノマーは、1,3-ジオキソランまたは1,3-ジオキセパンであり得る。
【0040】
少なくとも1種のコモノマーは、これが分岐剤として機能し得るような構造であり得る。このタイプの少なくとも1種のコモノマーは一般式(VI)または(VII)
【化3】
[式中、Zは、化学結合、または-(OR12)nO-であり、nは0~5である]
のものであり得る。この文脈では、R12は、好ましくは1~8個の炭素原子を有し得るアルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、またはオクチレンおよび、適当な場合、適切な置換基を有するものであり得るか、またはR12は、好ましくは3~8個の炭素原子を有し得るシクロアルキレン基、例えばシクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、またはシクロオクチレンおよび、適当な場合、適切な置換基を有するものであり得る。
【0041】
有利であり得るこのタイプのコモノマーの例は、エチレンジグリシド、ジグリシジルエーテル、およびグリシジル部分とホルムアルデヒド、1,3-ジオキサンまたはトリオキサンとでモル比2:1で構成されたエーテル、さらには2モルのグリシジル化合物と1モルの2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を有する脂肪族ジオールとで構成されたジエーテル、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、シクロブタン-1,3-ジオール、1,2-プロパンジオール、および1,4-シクロヘキサンジオールのジグリシジルエーテルである。
【0042】
使用され得るこのタイプの少なくとも1種のコモノマーの例は、官能価が3以上のアルコール、またはその誘導体、好ましくは3~6価のアルコールまたはそれらの誘導体である。有利であり得る誘導体は、それぞれ2つのOH基がホルムアルデヒドと反応した化合物である。他の例としては、グリシジルエーテルなどの単官能性および/または多官能性グリシジル化合物が挙げられる。
【0043】
このタイプの少なくとも1種のコモノマーが本明細書に開示されている方法において使用され得る量は、特に限定されない。概して、これはPOMの用途に適した分岐度に応じて変わり得る。通常、少なくとも1種の分岐剤の量は、少ないかまたは比較的少ない。例えば、少なくとも1種のモノマー、または少なくとも1種のモノマーと任意の他の少なくとも1種のコモノマーとの混合物を基準として0.01重量%~2重量%で使用され得る。少なくとも1種、好ましくは1種の分岐剤を、少なくとも1種のモノマーまたは少なくとも1種のモノマーと任意の他の少なくとも1種のコモノマーとの混合物を基準として1重量%~0.05重量%の範囲の量で使用することが有利であり得る。
【0044】
本明細書に開示された方法は、少なくとも1種の連鎖移動剤の存在下で実施され得る。POMホモポリマーまたはコポリマーの分子量は、少なくとも1種、好ましくは2種、最も好ましくは1種の連鎖移動剤を使用することによって調整され得る。少なくとも1種の連鎖移動剤は、通常、ホルムアルデヒドのモノマーまたはオリゴマーのアセタールである。一般式IIX
R13-(OCH2)q-O-R14 (IIX)
[式中、R13およびR14は、互いに独立して、一価の有機基、好ましくはアルキル基、例えばC1~C4アルキル、例えばブチル、例えば、n-ブチル、イソ-ブチルまたはtert-ブチル、プロピル、例えば、n-プロピルまたはイソ-プロピル、エチル、またはメチルであり、それによってメチルまたはn-ブチルが有利であり、かつqは1~20の整数、例えば、1~10の整数、最も有利には1~5である]の少なくとも1種の連鎖移動剤CTAを使用することが有利であり得る。特に有利な連鎖移動剤は、q=1である式IIXの化合物であり、最も好ましくはメチラールまたはブチラールであり得る。
【0045】
少なくとも1種の連鎖移動剤が開示された方法において使用され得る量は、特に制限されない。連鎖移動剤の量が少ないと、通常、高分子量のPOMが得られるが、連鎖移動剤の量が多すぎると、不十分な高分子量のポリマーになり得る。少なくとも1種の連鎖移動剤の使用量は、通常、それぞれモノマーまたはモノマーとコモノマーとの混合物を基準として、10000ppm未満、好ましくは5000ppm未満、最も好ましくは1000ppm未満であり得る。これが使用される場合、例えば、10ppm以上の量で使用され得る。
【0046】
本明細書に開示された方法は、重合が一般式I
R1-CO-O-R2 (I)
[式中、R1およびR2は、それぞれ式IIおよびIIIで上記に定義した通りである]の少なくとも1種のエステルの存在下で行われることを含む。
【0047】
一般式(I)の少なくとも1種のエステルの選択において考慮され得る態様の1つは、POMのワークアップ中の挙動である。この態様では、直鎖状または分枝鎖状のC1~C10アルキルであるR1が有利であり、それによって直鎖状または分枝鎖状のC1~C5アルキルがより有利であり、それによって直鎖状または分枝鎖状のC1~C4アルキル、例えば、C1~C3アルキルが最も有利であり;それによって、イソおよび直鎖種が有利であり、それによって直鎖種が最も有利であり得る。この態様では、R2が直鎖状または分枝鎖状のC1~C10アルキル、最も有利には直鎖状または分枝鎖状のC1~C4アルキルであることがさらに有利であり得る。R2がメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチルであることが特に有利であり得る。より短いまたは短いR1およびR2を有する少なくとも1種のエステルは、それらの残差がPOMのワークアップを妨げないという利点を有し得る。
【0048】
その結果、本明細書に開示された方法は、第1表に列挙されているエステルを含むことが最も有利であり得る:
【表1】
【0049】
少なくとも1種のエステルが本明細書に開示された方法において使用され得る量は、特に制限されない。概して、快適な取り扱いを可能にする量で少なくとも1種のエステルを使用することが有利であり得る。通常、少なくとも1種のエステルと少なくとも1種のルイス酸との重量比は、10:1~300:1、例えば20:1~200:1の範囲である。上記比が30:1~150:1であることが有利であり得る。上記比が50:1~100:1であることがさらに有利であり得る。
【0050】
原則として、少なくとも1種のエステルを、ニートでもそのままでも使用することが可能であり得るが、少なくとも1種のルイス酸を含む混合物中で使用することが概して有利であり得る。
【0051】
本明細書に開示された方法は、重合が少なくとも1種のルイス酸の存在下で行われることをさらに含む。ルイス酸は、概して、重合の開始剤または触媒として機能する。したがって、2種、さらに有利には1種のルイス酸の存在下で行われることが有利であり得る。
【0052】
少なくとも1種のルイス酸は、好ましくは少なくとも1種、例えば、2種の、さらに有利には1種のホウ素、錫、チタン、リン、アンチモン、またはヒ素のハロゲン化物であり得る。したがって、ハロゲン化物が塩化物またはフッ化物であること、またはハロゲン化物が双方を含むことが有利であり得る。その例は、三フッ化ホウ素、四塩化錫、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモンおよび五フッ化ヒ素、さらに特にそれらの錯体化合物である。
【0053】
少なくとも1種のルイス酸は、好ましくは少なくとも1種のホウ素のハロゲン化物、特に三フッ化ホウ素、例えば、ホウ素トリフルオロ水和物、または少なくとも1種の、さらに有利には1種のハロゲン化ホウ素の配位化合物、および少なくとも1種の、さらに有利には1種の、少なくとも1個の酸素原子もしくは硫黄原子または双方を含む有機化合物であり得る。したがって、有機化合物が少なくとも1個、特に1個の酸素原子しか含まないことがさらに有利であり得る。ハロゲン化ホウ素の配位化合物を形成するための上記有機化合物は、例えば、アルコール、エーテルまたはスルフィドであり得る。ハロゲン化ホウ素の少なくとも1種の配位化合物の中で、エーテルとの配位化合物、特にC1~C4アルキルエーテルなどのアルキルエーテルが最も有利であり得る。三フッ化ホウ素とエーテル、特にアルキルエーテル、例えば、C1~C4アルキルエーテルとの配位化合物、特に三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートまたは三フッ化ホウ素ジメチルエーテラートまたはそれらの混合物が最も有利であり得る。三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートが、最も好ましく使用され得る。
【0054】
少なくとも1種のルイス酸が本明細書に開示された方法において使用され得る量は、特に制限されない。通常、少なくとも1種のルイス酸の量は、いずれの場合も少なくとも1種のモノマーの重量を基準として、10~150ppm、例えば、20~140ppmであり得る。少なくとも1種のルイス酸を、少なくとも1種のモノマーの重量を基準として、30~130ppmの量で使用することが有利であり得る。特に、少なくとも1種のルイス酸を、少なくとも1種のモノマーの重量を基準として、40~100ppmの量で使用することが有利であり得る。量が少ないと反応の開始が遅くなり得るが、量が多くても通常、反応が速くなることはなく、最終的にポリマーからルイス酸を分離するのに多大な労力がかかる可能性がある。
【0055】
概して、本明細書に開示された方法は、多様な方法を用いて実施され得る。かかる方法は、当業者に知られているか、または当業者の一般的な知識の応用によって利用可能である。POMは、カチオン重合により製造されることが有利であり得る。カチオン重合の間、POMは、バルクで(すなわち、溶媒なしでまたは本質的に溶媒なしで)形成され得る。
【0056】
概して、少なくとも1種のルイス酸が少なくとも1種のエステルと混合されるのが有利であり得る。したがって、少なくとも1種のルイス酸が、少なくとも1種のエステルに溶解することが有利であり得る。通常、少なくとも1種のルイス酸は、少なくとも1種のエステル(プレミックス)と予め混合される。これにより、少量のルイス酸を定義された方法でモノマーまたはコモノマーまたはそれらの混合物に添加することもできる。
【0057】
少なくとも1種のルイス酸は、少なくとも1種のエステルに、さらに少なくとも1種、好ましくは1種の共溶媒に溶解され得る。少なくとも1種の共溶媒は、脂肪族炭化水素、例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサンまたはn-ヘプタンであり得る。ベンゼンまたはトルエンなどの芳香族炭化水素は、本明細書に開示された方法のための共溶媒ではない。ルイス酸を、共溶媒を使用せずに、少なくとも1種、最も有利には1種のエステルのみに溶解することが特に有利であり得る。
【0058】
プレミックスを、少なくとも1種のモノマーに添加することが最も有利であり得る。プレミックスを、少なくとも1種のモノマーに添加し、それによってモノマーが液体であることが特に有利であり得る。
【0059】
また、プレミックスを、少なくとも1種のモノマーと少なくとも1種のコモノマーとの混合物に添加することも可能であり、かつ有利であり得る。したがって、プレミックスを添加する場合、少なくとも1種のモノマーと少なくとも1種のコモノマーとの双方が液体であることがさらに有利であり得る。また、プレミックスを、最初に少なくとも1種のコモノマーに添加し、その後、プレミックスと少なくとも1種のコモノマーとの混合物を、少なくとも1種のモノマーに添加することも有利であり得る。したがって、プレミックスを添加する場合、少なくとも1種のコモノマーが液体であることがさらに有利であり得る。プレミックスと少なくとも1種のコモノマーとの混合物を、少なくとも1種のモノマーに添加する場合、少なくとも1種のモノマーが液体であることが特に有利であり得る。
【0060】
本明細書に開示された方法は、当業者に一般的に知られているか、または当業者の一般的な知識の応用により利用可能な温度、圧力および装置で実施され得る。例えば、この方法は、押出機で、または2つ以上の押出機、例えば、二軸式および自浄式のカスケードで実施され得る。また、本明細書に開示された方法を、混練機で、または2つ以上の混練機、例えば、自浄式のカスケードで実施することも可能であり得る。概して、エネルギーの浪費を避けるためにできるだけ低い温度で、かつ重合を維持して良好な混合を確保するのに十分に高い温度で、特に、少なくとも1種のモノマーおよび存在する場合には少なくとも1種のコモノマーも液体状態に維持することによって、重合を実施することが有利であり得る。したがって、重合を50~150℃の温度で実施することが有利であり、それによって60~120℃の温度がさらに有利であり得る。したがって、温度は、バルク内での温度を指す。
【0061】
概して、重合反応が終了した際に、ルイス酸を失活させることが有利であり得る。
【0062】
したがって、少なくとも1種の失活剤を添加することが有利であり得る。2種を添加することがさらに有利であり得るか、または1種の失活剤を添加することが最も有利であり得る。少なくとも1種の失活剤は、例えば、アンモニア、脂肪族アミン、例えば、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、第4級アンモニウム塩、例えば、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化物、無機弱酸塩、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の有機酸塩であり得る。少なくとも1種の失活剤は、ニートで添加され得るか、または有機溶媒中の溶液として添加され得る。後者は、重合反応を停止させる点でより効果的であり、したがって有利であり得る。この場合に使用される有機溶剤は、脂肪族炭化水素類、例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサンもしくはn-ヘプタン、またはアルコール、例えば、メタノールもしくはエタノール、またはケトン、例えば、アセトンもしくはメチルエチルケトン、またはエステルであり得る。
【0063】
少なくとも1種の失活剤の量は、概して、失活剤中の活性部位の当量および失活させるべき少なくとも1種のルイス酸中の当量、例えば、窒素原子およびホウ素原子の当量に依存する。少なくとも1種の失活剤は、少なくとも1種のルイス酸に対してモル過剰で、例えば、50:1~少なくとも2:1で有利に使用され得る。
【0064】
本発明による方法は、さらなる手段、例えば、加熱または溶媒処理、少なくとも1種の加工助剤もしくは安定剤の添加、またはかかる手段の組み合わせをさらに含み得る。かかる添加剤の量は、概して、熱特性または機械的特性などの特性に影響を与えずに、POMを効果的に安定化または処理するために最小限に選択される。かかる手段は、概して当業者に知られているか、または当業者の一般的な知識を適用することによって利用可能である。熱処理は、より高い温度または重合温度を上回る温度、例えば、80~270℃の温度で実施され、それによって180~240℃の温度が有利であり得る。
【0065】
少なくとも1種の酸化防止剤を添加することが有利であり得る。例として、これは立体障害フェノール、例えば、トリエチレングリコールビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネートであり得る。
【0066】
酸化防止剤は、POMを基準として0.001~10重量%、例えば、0.002~5重量%の量で使用され、さらに有利には、これは0.005~3重量%の量であり得る。
【0067】
少なくとも1種のホルムアルデヒド安定剤を添加することがさらに有利であり得る。例として、これはメラミンとホルムアルデヒドとの縮合物であり得る。
【0068】
ホルムアルデヒド安定剤は、POMを基準として、0.001~10重量%、例えば、0.002~5重量%の量で使用され、さらに有利には、これは0.005~3重量%の量であり得る。
【0069】
少なくとも1種のUV吸収剤を使用することがさらに有利であり得る。例として、これはヒンダードアミン系光安定剤であり得る。
【0070】
特別な例は、例えば以下のように、ポリマー構造のヒンダードアミンであり得る:
【化4】
【0071】
ヒンダードアミンは、POMを基準として、0.001~10重量%、例えば、0.002~5重量%の量で使用され、さらに有利には0.005~2重量%の量であり得る。
【0072】
開示された方法は、少なくとも1種の粒子状もしくは繊維状の充填剤または補強剤の添加をさらに含み得る。例として、これらは、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、粘土、酸化チタン、酸化ケイ素、雲母粉末充填剤、例えば、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維もしくはアラミド繊維またはそれらの2種以上の混合物であり得る。
【0073】
本明細書に開示された方法は、通常、効率的な方法でかつ高収率でPOMを生成する。得られたPOMは、良好な安定性を有する。良好な熱安定性を有するPOMは、熱処理時にわずかなまたは極めてわずかな重量減少しか示さない。POMは、例えば、ペレット化されて形成し得る。POM、特にさらに加工した形のPOMは、繊維、フィルムまたは造形品の製造用である。フィルム、繊維または造形品は概して適用範囲が広い。それらは、例えば、産業、モビリティ分野、例えば、自動車または家庭で使用され得る。特に、それらは食品接触分野での適用性があり得る。
【0074】
本開示の別の特定の態様は、芳香族炭化水素溶媒の使用を回避することができる、高い転化率で良好な熱安定性および良好な機械的特性を有するオキシメチレンポリマーの製造方法である。
【0075】
本開示の別の特別な特定の態様は、食品接触用途に使用するための、微量の芳香族溶媒を含まずに高い転化率で良好な熱安定性および良好な機械的特性を有するオキシメチレンポリマーの製造方法である。
【0076】
実施例
モル質量の測定
ポリマーのモル質量を、SEC装置でサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。このSEC装置は、以下の分離カラムの組み合わせ:長さ5cmおよび直径7.5mmの予備カラム、長さ30cmおよび直径7.5mmの第2の直線カラムで構成されていた。双方のカラムの分離剤は、Polymer Laboratories製のPL-HFIPゲルであった。使用した検出器は、Agilent G1362 A製の示差屈折計を備えていた。ヘキサフルオロイソプロパノールと0.05%トリフルオロ酢酸カリウムとの混合物を、溶離液として使用した。流量は0.5ml/分、カラム温度は40℃であった。溶離液1リットルあたり1.5gの試料の濃度で、60マイクロリットルの溶液を注入した。この試料溶液は、あらかじめMillipor Millex GF(孔幅0.2マイクロメートル)でろ過されていた。PSS(Mainz、独国)製の505~2,740,000g/モルのモル質量Mを有する狭い分布のPMMA標準を、較正に使用した。
【0077】
多分散性指数
多分散性指数は、重量平均分子量を数平均分子量で割ったものとして定義されている。
【0078】
重量損失の測定
精製したポリマーの熱安定性を、一定流の窒素15l/hの条件下、222℃で2時間ポリマー試料を加熱することによって測定した。ポリマー試料を、熱処理前および20分の冷却時間後に計量した。
【0079】
ホモポリマーの製造方法:
実施例1~12および比較例C1~C3
モノマー1,3,5-トリオキサン100gのバッチ式のバルク重合を、80℃の空気中で行った。
【0080】
第1表に示すように、エステル(プレミックス)に溶解した80ppmのBF3アルキルエーテル配位化合物(ルイス酸)を用いて反応を開始した。プレミックスをモノマーに投入した。
【0081】
得られたポリマーを粉砕し、還流メタノール/水/炭酸ナトリウム(10重量%の水溶液)(23:44:1)の混合物を用いて抽出した。冷却後、ポリマーをろ過し、5重量%の炭酸ナトリウム溶液でさらにすすいだ。反応に使用されるモノマーの質量に対するこれら2つの精製工程の後に得られるポリマー材料の重量を、第1表に示した収率として定義する。
【表2】
【0082】
実施例13および14
80ppmのルイス酸の代わりに50ppmのルイス酸を使用したことを除いて、上記のようにプロセスを実施した。それぞれの概要については第2表を参照されたい。
【表3】
【0083】
コポリマーの製造方法:
実施例15~18および比較例C4
96gのモノマー1,3,5-トリオキサンおよび4gのコモノマー1,3-ジオキソランのバッチ式のバルク重合を、80℃の空気中で行った。80ppmのBF3OEt2(ルイス酸)を用いて反応を開始した。
【0084】
ルイス酸を、第3表に示すように最初にエステルに溶解した。このプレミックスを、コモノマーとさらに混合し、次いでモノマーに投入した。
【0085】
ホモポリマーについては上記のように精製を行った。
【0086】
実施例19~21および比較例C5
プレミックスをモノマーとコモノマーとの混合物に投入したことを除いて、上記のようにプロセスを実施した。
【表4】