(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】コーティング材組成物、および積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 167/03 20060101AFI20230613BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230613BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230613BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230613BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C09D167/03
C09D5/00 Z
B32B27/00 Z
B32B27/36
B32B27/10
(21)【出願番号】P 2018233395
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】武田 博之
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 道也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 明宏
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/005647(WO,A1)
【文献】特表2015-514151(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244797(WO,A1)
【文献】特開2012-001636(JP,A)
【文献】特開2016-006140(JP,A)
【文献】特開2008-291243(JP,A)
【文献】特表2019-514807(JP,A)
【文献】特開2017-110142(JP,A)
【文献】特開2000-108262(JP,A)
【文献】特開2017-226135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09D 1/00- 10/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸及びまたはその誘導体とポリオールとを反応して得られるポリエステルと硬化剤を含有するガスバリア材料用コーティング材組成物であって、
当該ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が
2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を含有することを特徴とするガスバリア材料用コーティング材組成物。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対する
2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体の含有率が20~100モル%である、請求項1に記載のガスバリア材料用コーティング材組成物。
【請求項3】
硬化剤がイソシアネート化合物である、請求項
1又は2に記載のガスバリア材料用コーティング材組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のガスバリア材料用コーティング材組成物を含む積層体。
【請求項5】
さらに蒸着層を含有する、請求項
4に記載の積層体。
【請求項6】
ガスバリア材料用コーティング材組成物と、樹脂フィルム又は紙基材を含む請求項
4又は
5に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、及び該コーティング材組成物を用いた積層体に関する
【背景技術】
【0002】
食品や飲料等の包装材料は、様々な流通、冷蔵等の保存や加熱殺菌などの処理等から内容物を保護するため、強度や割れにくさ、耐レトルト性、耐熱性といった機能ばかりでなく、内容物を確認できるよう透明性に優れるなど多岐に渡る機能が要求されている。
【0003】
さらに近年では多層フィルムに対するさらなる高機能化が求められており、食品の賞味有効期間の延長や、酸化劣化の防止を目的としてガスバリア機能も要求されている。バリア機能を多層フィルムに付与する際、内層(シーラント側)に用いる未延伸フィルム類はガスバリア性に乏しい上、フィルムが伸びやすいためコーティングや蒸着によりバリア機能を付与することが困難である。そのため、外層側に用いている延伸フィルム(ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)等のポリエステル系樹脂や、ポリアミド樹脂、延伸ポリオレフィン樹脂)にバリア機能を付与することが多い。しかしバリア機能を付与するためには、一般にコーティングや蒸着の工程が必要となる。中でもコーティング手法では、高価な蒸着装置が不要で、汎用の印刷手法にてバリア性能を付与できる利点があるため、産業的要求が強い。
【0004】
このほか、これら多層フィルムの材料を「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されている「バイオマス」に変更したいとの社会的、産業的要望も強い。これは石油資源の節約と、二酸化炭素増加抑制による地球温暖化防止による価値に基づく。本要望に対応できる方法の一つとして、植物由来の原材料を用いることがある。理由は植物が生育する際にCO2を吸収するために、例え焼却された場合でもCO2はゼロとカウントすることができる考え方があるためである。こうした、多層フィルムの材料として、特にポリエステル系の材料を得る場合には植物由来原料として、フラン骨格を含むポリカルボン酸及び/又はその誘導体(代表構造としてフランジカルボン酸)を原料として用いる例が挙げられている。(特許文献1、特許文献2)。何れも出願も、フランジカルボン酸をモノマーとして用い重縮合を行い、植物成分由来のポリエステルフィルムを製造する文献である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許5446121号公報
【文献】特許5821897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、食品包装用等の内容物の包装に使用でき、ガスバリア性に優れるポリエステルを主体とするコーティング材組成物を提供することにある。更に、該コーティング材組成物を含む積層体を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、非石油由来で得ることが出来る成分であるフラン骨格を含むジカルボン酸及び/又はその誘導体を用いることで、上記課題を解決可能であることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、ポリカルボン酸及びまたはその誘導体とポリオールとを反応して得られるポリエステルを含有するコーティング材組成物であって、
当該ポリカルボン酸及びまたはその誘導体がフラン骨格を有するポリカルボン酸及びまたはその誘導体を含有することを特徴とするコーティング材組成物を提供することで、上記課題を解決する。
【0009】
また本発明は、当該コーティング材組成物を含む積層体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、十分な基材間の接着能を持ちつつ、ガスバリア性に優れるポリエステル系コーティング材組成物を提供でき、更にそれをコーティング層として有する積層体の提供が可能となる。加えて、コーティング層が非石油由来成分を含有することにより、石油由来成分の使用を少なくすることができ、石油資源の消費の現象、二酸化炭素増加の抑制等の環境問題に寄与することができる。尚、本発明でいう非石油由来成分とは、植物由来又は動物由来の再生可能な成分を指す。中でも植物由来原料は植物が生育の際に吸収した二酸化炭素が原料となっているため、カーボンニュートラルの観点から特に好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ポリカルボン酸及びまたはその誘導体とポリオールとを反応して得られるポリエステルを含有するコーティング材組成物であって、
当該ポリカルボン酸及びまたはその誘導体がフラン骨格を有するポリカルボン酸及びまたはその誘導体を含有することを特徴とするコーティング材組成物を提供するものである。
【0012】
[ポリエステル]
本発明で使用するポリエステルは、ポリカルボン酸及びまたはその誘導体とポリオールとを反応することによって得ることができる。この時、ポリカルボン酸及びまたはその誘導体とポリオールとの反応は重縮合反応である。
本発明においては、ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、フラン骨格を有するポリカルボン酸及びまたはその誘導体を含有することを特徴とする。
【0013】
(フラン骨格を含むカルボン酸及び/又はその誘導体)
本発明に用いられる、フラン骨格を含むカルボン酸及び/又はその誘導体とはフラン骨格を有する。フラン骨格とは下記構造(1)に示す5員環構造である。なお、以下の構造式において<2>~<5>は置換位置を示す。
【0014】
【0015】
上記のようなフラン構造を有する化合物としては、具体的にはフラン及びフラン置換体(即ち、フランの水素原子の1~4個が任意の置換基で置換されたもの)が挙げられる。フラン置換体に導入される置換基の例としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~18の芳香族基、ハロゲン、炭素数1~10のアルコキシ基等が挙げられる。本発明で用いるフラン構造を有する成分としては、好ましくは炭素数1~4のアルキル基で置換されたフラン置換体又は無置換のフラン、特に好ましくはフランが挙げられる。フラン構造は、その2位と3位、2位と4位、2位と5位、或いは3位と4位で共有結合してポリマー主鎖を構成するが、中でも2位と5位で共有結合された構造がガスバリア及び溶剤溶解性のバランスの点で好ましい。
【0016】
本発明のフラン骨格を含むカルボン酸及び/又はその誘導体としては、フラン構造が化合物の構造中に含まれている成分であればよく、特に制限はないが、例えばフランジカルボン酸、ジヒドロキシフランカルボン酸、及びこれらの誘導体が挙げられる。好ましくはフランジカルボン酸である。各化合物は具体的には、2,5-フランジカルボン酸、2-ヒドロキシフラン-5-カルボン酸及びこれらの誘導体が挙げられる。また、誘導体としては炭素数1~4のアルキルエステルが挙げられ、中でもメチルエステル、エチルエステル、n-プロピルエステル、イソプロピルエステルなどが好ましく、更に好ましくはメチルエステルである。これらのフラン骨格を含むカルボン酸及び/又はその誘導体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
【0017】
本発明のポリカルボン酸成分全量中において、フラン骨格を含むポリカルボン酸及び/又はその誘導体の含有率は、好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上である。これ以下の含有率の場合には、フラン骨格を含むポリカルボン酸及び/又はその誘導体によりもたらされる、高ガスバリアと、非石油成分由来による環境負荷、の低減の利点が少なくなる問題がある。好ましい含有量は、20~100モル%であり、さらに好ましい含有量は30~100モル%である。
この時のポリカルボン酸成分全量中のフラン骨格を含むポリカルボン酸及び/又はその誘導体の含有率は下記の式1によって表される
【0018】
ポリカルボン酸成分全量中のフラン骨格を含むポリカルボン酸及び/又はその誘導体の含有率(モル%)=フラン骨格を含むポリカルボン酸及び/又はその誘導体(モル数)/カルボン酸成分全量(モル数)×100
・・・式1
【0019】
(その他のポリカルボン酸成分)
本発明における、ポリカルボン酸成分について、フラン骨格を含むポリカルボン酸及び/又はその誘導体以外の成分については特に制限はなく用いることができる。特にガスバリアが良好、もしくは非石油成分由来のポリカルボン酸成分を用いると、本発明の利点を高めることができるため好ましい。ガスバリアが良好なポリカルボン酸成分としては、特にベンゼン環が分子間相互作用することで、ポリマー自由体積孔が減少することより芳香族ポリカルボン酸が好ましく、例としては、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物或いはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。また、これらの酸無水物も使用することができる。更に、非石油成分由来のポリカルボン酸としては、セバシン酸、コハク酸等が例示される。セバシン酸は、トウゴマの種子より抽出されるひまし油から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより生成される。コハク酸は植物資源からグリコールを製造し発酵することで得られる。コハク酸は酸素原子間の炭素原子数が少ない短鎖アルキルであるため、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されるためである。ガス透過経路であるアルキル鎖が短いためガスバリアも良好であるため好ましい。
【0020】
(ポリオール成分)
本発明で使用するポリエステル原料の一部である、ポリオールは、水酸基を2つ以上有する化合物であれば特に限定はない。例えば公知慣用であるエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセロール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、芳香族多価フェノールとして、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらの、エチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族を例示することができる。
【0021】
特に、非石油由来のポリオールを使用すると本発明の目的の一つである非石油由来の成分の含有率を高くできるため好ましい。また、分子量100以下の短鎖のポリオール成分を用いるとガスを透過しにくいポリエステルを合成できるため好ましい。こうした、化合物として例えば、短鎖のエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセロールが例示できる。一例を挙げるとエチレングリコールは常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造される。1,3-プロパンジオールは植物資源(例えば、トウモロコシ)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造される。1,4-ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得、これを水添することによって製造できる。グリセロールは、前記の1,3-プロパンジオールを植物資源から得る中間体として得られる。これらを用いることでポリエステル中の非石油原料比率を高められることに加えガスバリアも良好とできるため特に好ましい。
【0022】
(ポリエステルの合成)
本発明のポリエステルの合成は、ポリカルボン酸とポリオールとを公知慣用の方法で反応させればよい。具体的にはポリカルボン酸とポリオールとの重縮合反応である。一例を挙げると、前記酸成分を含む全酸成分と前記ポリオール成分とを一括して仕込んだ後、攪拌混合しながら昇温し、脱水重縮合反応させる手法が好ましい。その際の脱水重縮合はJIS-K0070に記載の酸価測定法や、同じくJIS-K0070に記載の水酸基価測定方法にて得られる水酸基価、や粘度測定により所望の酸価、水酸基価、分子量のポリエステルを得ることができる。
【0023】
反応に用いられる触媒としては、モノブチル酸化錫、ジブチル酸化錫等錫系触媒、テトラ-イソプロピル-チタネート、テトラ-ブチル-チタネート等のチタン系触媒、テトラ-ブチル-ジルコネート等のジルコニア系触媒等の酸触媒が挙げられる。前記触媒のうち数種類を組み合わせて用いることもできる。前記触媒量は、使用する反応原料全質量に対して1~1000ppm用いられ、より好ましくは10~100ppmである。1ppmを下回ると触媒としての効果が得られにくく、1000ppmを上回ると後のウレタンとの反応を阻害する傾向がある。
【0024】
(ポリエステルの特性)
本発明のポリエステルの分子量には特に限定はないが、数平均分子量が450~5000であるとガスバリア機能と溶剤溶解性のバランスに優れる程度の架橋密度が得られるため特に好ましい。より好ましくは数平均分子量が500~3000である。分子量が450より大きい場合、塗工時のコーティング材層の凝集力が十分あることから、コーティング層の密着力を確保し易い。また、分子量が5000以下である場合、コーティング材の粘度が高くなりにくいことから塗工性に優れる。
【0025】
(ポリエステル末端、硬化剤)
本発明のポリエステルの末端は水酸基末端と、カルボン酸末端、及びこれらの双方を持つ末端となりうるがそのいずれでも用いることができる。本発明のポリエステルを単独でコーティング材として用いても差し支えない。その一方で、ポリエステル末端の構造を利用し硬化剤を併用しても良い。
硬化剤としては、ポリエステル末端の構造に応じて適宜選択することができ、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が挙げられる。特に、水酸基末端の場合はイソシアネート硬化や伸長を行うことにより架橋構造、高分子量化を行うことでより有効にコーティング材としての機能を持たせることができることから、イソシアネート化合物が好ましい。また、カルボン酸末端の場合にはエポキシ硬化を行うことでより有効に接着剤としての機能を持たせる事もできることから、エポキシ化合物が好ましい。
本発明では、コーティング層がガスバリア機能を持つため、特にプラスチックフィルムを用いた積層体に用いることができる。そのため、硬化反応温度が低いイソシアネート/水酸基反応を利用することが好ましいため、イソシアネート化合物、特にポリエステルポリオールが好ましく用いられる。
【0026】
本発明で使用するポリエステルは、ガラス転移温度が-30℃~80℃の範囲が好ましい。より好ましくは0℃~60℃である。更に好ましくは25℃~60℃である。ガラス転移温度が80℃以下であれば、室温付近でのポリエステルの柔軟性が高くなることにより、基材への密着力が高くなる。一方-30℃以上である場合、常温付近でのポリエステルの分子運動が抑えられることにより十分なガスバリア性が発揮できる。
【0027】
更にポリエステルをポリイソシアネート化合物との反応によるウレタン伸長により数平均分子量1000~15000としたポリエステルポリウレタンをコーティング材組成物として用いても良い。該ポリオールには一定以上の分子量成分と分子間の凝集力が高いウレタン結合とが共存するために、優れたガスバリア性を持つ。
【0028】
(コーティング材組成物に用いる溶媒)
本発明のコーティング材組成物は、ポリエステルを溶解させる必要がある観点から有機溶媒を主成分とすることが好ましい。加えて、残留溶媒や即乾燥性の観点から沸点が100℃以下である方が好ましい。好ましく用いられる溶媒としては、エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ケトン系溶媒としては、アセトン、2-ブタノン、エーテル系としてはテトラヒドロフラン、脂肪族系溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、芳香族系溶媒としてはトルエン等を例示することができる。アルコール系溶媒や水を混合しても差し支えないが、ポリエステルの硬化剤としてのイソシアネート化合物を併用する場合はこれらを含有させることに注意を要する。
【0029】
(硬化剤)
本発明のポリエステルは前述の通り、硬化剤を併用することができる。硬化剤としてはイソシアネート化合物やエポキシ化合物等が挙げられる。中でもイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0030】
(イソシアネート化合物)
本発明では、前述の通り硬化剤成分としてイソシアネート化合物を含有すると好ましい。中でもイソシアネート基を2つ以上含有するポリイソシアネート化合物を好ましく用いることができる。ポリイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートがあり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3-ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4-ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体が挙げられる。
【0031】
イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3-ジクロロ-2-プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t-ブタノール、t-ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを公知慣用の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0032】
中でも、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートから選ばれる1種であるとガスバリア特性が発現しやすいため、特に好ましい。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートは非石油由来成分を多く含むため、本発明のコーティング材組成物の非石油成分の含有率を高めるために好ましく用いることができる。
【0033】
(エポキシ化合物)
本発明のポリエステルがポリカルボン酸の場合には、エポキシ化合物を硬化剤として、用いることができる。また、ポリエステルがポリエステルポリオールの場合は、エポキシ化合物をイソシアネート化合物と併用しても良い。また、エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4-ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。このときも、これらのエポキシ化合物の原料として非石油由来成分が含有されていると、非石油由来成分比率を高くできることから好ましい。こうした化合物の例としてコハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステルが挙げられる。
【0034】
エポキシ化合物を硬化剤として使用する場合には、硬化を促進する目的で汎用公知のエポキシ硬化促進剤を本発明の目的であるガスバリア性が損なわれない範囲で適宜添加してもよい。
【0035】
(積層体構成)
本発明のコーティング材組成物は、基材に塗工することにより樹脂層と基材層とを有する積層体とすることができる。特に、本発明のコーティング組成物はガスバリア性に優れることから、得られる積層体はガスバリア材料として良好に使用可能である。
基材としては特に限定はないが、包装材料用とする場合、基材としては樹脂フィルムや紙基材が好ましい。樹脂フィルムや、紙基材へ塗工することによりガスバリアを付与した包装用の積層体として好ましく使用できる。
【0036】
使用する樹脂フィルムは、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば包装材として使用する際は、最外層をPET(ポリエチレンテレフタレート)、OPP、ポリアミドから選ばれた熱可塑性樹脂フィルムを使用し、最内層を無延伸ポリプロピレン(以下CPPと略す)、低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと略す)から選ばれる熱可塑性樹脂フィルムを使用した2層からなる複合フィルム、或いは、例えばPET、ポリアミド、OPPから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、OPP、PET、ポリアミドから選ばれた中間層を形成する熱可塑性樹脂フィルム、CPP、LLDPEから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した3層からなる複合フィルムやこれよりもさらに多層のフィルムが例示できる。特にPETフィルムの場合には、非石油由来原料ベースのエチレングリコールをもちいたPETを原料として使用した場合には、積層フィルム全体の植物由来の含有率を高めることができ特に好ましい。また、フィルム表面には、膜切れやはじきなどの欠陥のない接着層が形成されるように必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理を施してもよい。
【0037】
また紙基材を用いる場合には、塗工紙、非塗工紙、樹脂含浸紙のいずれでも良い。非塗工紙としては各種印刷用紙、グラビア用紙、クラフト紙、ケント紙、コピー紙、更紙、新聞紙などが例示される。また、塗工紙としては微塗工紙、アート紙、上質コート紙、中質コート紙、軽量コート紙、キャストコート紙、マットコート紙などが例示できる。また、樹脂含浸紙としてはパラフィン紙などが例示される。
【0038】
(積層体の製造法)
本発明ではコーティング材組成物を基材への塗工(コーティング)を行うことで多層体を作製しても良い。塗工方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられる。
【0039】
また、本発明の積層体の一形態であるガスバリア用積層フィルムは、硬化剤を併用した場合はエージングを行うことが好ましいエージング条件は、硬化剤としてポリイソシアネートを使用する場合であれば、室温~80℃で、12~240時間の間であり、この間に基材に対する強い密着性が生じる。
【0040】
本発明のコーティング材組成物を含む積層体は、ガスバリア性を有することを特徴としていることから、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシリレンアジパミドフィルム層、アルミナやシリカなどを蒸着した無機蒸着フィルム層などの一般に使用されているガスバリア性材料を使用しなくともガスバリア性が発現する。
【0041】
本発明では、さらに高いバリア機能を付与するために、必要に応じてアルミニウム等の金属、或いはシリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルムや、ポリビニルアルコールや、エチレン・ビニールアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用して、より高いバリア機能を付与することもできる。中でもアルミニウム、シリカ、アルミナ等の金属酸化物の蒸着層を設けたフィルム(いわゆる蒸着フィルム)を本発明のコーティング材組成物と併用することにより、バリア層を補強することで極めて高いバリア性能を付与することができる。
【0042】
(透過を遮断できるガス成分種類、形状)
本発明の積層体が遮断できるガスとしては、酸素の他、二酸化炭素、窒素、アルゴン等の不活性ガス、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール成分、フェノール、クレゾール等のフェノール類の他、低分子化合物からなる香気成分類、例えば、醤油、ソース、味噌、レモネン、メントール、サリチル酸メチル、コーヒー、ココアシャンプー、リンス、等を例示することができる。
また、本発明の積層体は、多層フィルムの他、ガスバリア性容器の一部として用いることもできる。当該容器は、コーヒー類、ココア類、味噌、ヨーグルト、料理済み米飯、焼肉用のタレ類、ドレッシング類、チーズ容器、ピザ等のソース類、等の容器等として用いることができる。
更に、本発明の積層体は、ラミネートチューブの一部として用いることもできる。当該チューブは、練りカラシ、練りワサビ、コンデンスミルク、生クリーム、豆板醤、ケチャップ、マヨネーズ、マスタード、バター、歯磨き粉、毛染め、ハンドクリーム、洗剤、ヘアクリーム用のチューブとして用いることができる。この他に形状としてボトル、積層板などを例示することができる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明をする。例中断りのない限り、「部」「%」は質量基準である。
【0044】
(製造例1:実施例1用)フランジカルボン酸とグリセリンからなるポリエステルポリオールの製造方法
(第1工程)
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管等を備えたポリエステル反応容器に、2,5-フランジカルボン酸の100部、グリセリンの59部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を190℃に保持した。酸価が40mgKOH/g以下になったところで降温し、第1工程を終了した。
(第2工程)
第1工程と同様の反応容器で、内温150℃を保持した後、無水フタル酸の14部を添加し、そのまま内温150℃を維持した。酸価が70mgKOH/gになったところで反応を終了し、PE1として、数平均分子量2000、水酸基価240mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。
【0045】
(製造例2:実施例2用)フランジカルボン酸と無水オルトフタル酸とグリセリンとエチレングリコールからなるポリエステルポリオールの製造方法
(第1工程)
製造例1と同様な反応容器に、2,5-フランジカルボン酸の90部、無水オルトフタル酸の10部、グリセリンの18部、エチレングリコールの28部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を190℃に保持した。酸価が40mgKOH/g以下になったところで降温し、第1工程を終了した。
(第2工程)
第1工程と同様の反応容器で、内温150℃を保持した後、無水フタル酸の4部を添加し、そのまま内温150℃を維持した。酸価が50mgKOH/gになったところで反応を終了し、PE2として、数平均分子量1300、水酸基価110mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。
【0046】
(製造例3:実施例3用)フランジカルボン酸と無水オルトフタル酸とグリセリンとエチレングリコールからなるポリエステルポリオールの製造方法
(第1工程)
製造例1と同様な反応容器に、2,5-フランジカルボン酸の60部、無水オルトフタル酸の38部、グリセリンの35部、エチレングリコールの16部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を190℃に保持した。酸価が40mgKOH/g以下になったところで降温し、第1工程を終了した。
(第2工程)
第1工程で用いたポリエステル反応容器と同様の装置で、内温150℃を保持した後、無水フタル酸の8部を添加し、そのまま内温150℃を維持した。酸価が60mgKOH/gになったところで反応を終了し、PE3として、数平均分子量1500、水酸基価170mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た
【0047】
(製造例4:実施例4用)フランジカルボン酸と無水オルトフタル酸とグリセリンとエチレングリコールからなるポリエステルポリオールの製造方法
(第1工程)
製造例1と同様な反応容器に、2,5-フランジカルボン酸の33部、無水オルトフタル酸の60部、グリセリンの55部、エチレングリコールの4部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を190℃に保持した。酸価が40mgKOH/g以下になったところで降温し、第1工程を終了した。
(第2工程)
第1工程で用いたポリエステル反応容器と同様の装置で、内温150℃を保持した後、無水フタル酸の2部を添加し、そのまま内温150℃を維持した。酸価が45mgKOH/gになったところで反応を終了し、PE4として、数平均分子量1200、水酸基価310mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。
【0048】
(製造例5:実施例5用)フランジカルボン酸と無水オルトフタル酸とグリセリンとエチレングリコールからなるポリエステルポリオールの製造方法
(第1工程)
製造例1と同様な反応容器に、2,5-フランジカルボン酸の33部、無水オルトフタル酸の67部、グリセリンの40部、エチレングリコールの18部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を190℃に保持した。酸価が40mgKOH/g以下になったところで降温し、第1工程を終了した。
(第2工程)
第1工程で用いたポリエステル反応容器と同様の装置で、内温150℃を保持した後、無水フタル酸の44部を添加し、そのまま内温150℃を維持した。酸価が120mgKOH/gになったところで反応を終了し、PE5として、数平均分子量1000、水酸基価100mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。
【0049】
(製造例6:比較例1用)無水オルトフタル酸とグリセリンからなるポリエステルポリオールの製造方法
(第1工程)
製造例1と同様な反応容器に、無水オルトフタル酸の100部、グリセリンの62部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を190℃に保持した。酸価が40mgKOH/g以下になったところで降温し、第1工程を終了した。
(第2工程)
第1工程で用いたポリエステル反応容器と同様の装置で、内温150℃を保持した後、無水フタル酸の15部を添加し、そのまま内温150℃を維持した。酸価が70mgKOH/gになったところで反応を終了し、PE6として、数平均分子量1700、水酸基価220mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。
【0050】
(製造例7:比較例2用)アジピン酸と無水フタル酸とグリセリンからなるポリエステルポリオールの製造方法
(第1工程)
製造例1と同様な反応容器に、アジピン酸の99部、グリセリンの62部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を190℃に保持した。酸価が40mgKOH/g以下になったところで降温し、第1工程を終了した。
(第2工程)
第1工程で用いたポリエステル反応容器と同様の装置で、内温150℃を保持した後、無水フタル酸の15部を添加し、そのまま内温150℃を維持した。酸価が69mgKOH/gになったところで反応を終了し、PE7として、数平均分子量1700、水酸基価218mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。
【0051】
製造例1~7で得られた実施例、比較例用のポリエステルの原料モノマー組成、酸価、水酸基価、樹脂の数平均分子量、原料モノマー中のフラン骨格を含むポリカルボン酸の多価カルボン酸全成分に対する含有率(フラン骨格を含むカルボン酸の含有率(モル%)と称する)を表1に示す。
【0052】
【0053】
<実施例・比較例>
以下、実施例・比較例について述べる。組成および評価結果を表2-1、および表2-2に示す。
また、表2-2中の参考例とは実施例、比較例用のコーティング材組成物を積層しなかったPET基材及び、透明蒸着基材単独の酸素透過率、水蒸気透過率を示したものである。
【0054】
(実施例、比較例のコーティング材組成物の調製)
各合成工程で得たポリエステルを、表2-1、および表2-2の配合工程に沿って配合を行なった。具体的にはまず、ポリエステルと溶剤とを、常温にてスターラーで撹拌し溶剤に溶解した溶液を調製した。得られた溶液に引き続き表1中断の配合で硬化剤(ポリイソシアネート)を添加し、常温にてスターラーで撹拌し均一のコーティング液を調製した。
【0055】
(実施例1~5:フラン骨格を含むポリカルボン酸を含有するポリエステルから製造したコーティング組成物層を持つ積層体の製造方法。)
実施例1~5では、製造例1~5で合成したポリエステルと、同ポリエステルに溶剤と硬化剤を前記方法で配合したコーティング液を、コロナ処理された12μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(商品名:E-5100、東洋紡株式会社製)のコロナ処理面に、バーコーターを用いて、乾燥後のコーティング材層の厚さが5μmになるように塗工した。塗工後のPETフィルムを、塗工後直ぐに120℃の乾燥機中で1分加熱乾燥した。これを更に40℃で3日間エージングすることで、硬化剤の反応を促進させたコーティング材層が設置されたPETフィルム/コーティング材の積層体を得た。また、同様なコーティング液を透明蒸着PETフィルム(バリアロックス1011HG、東レフィルム加工株式会社製)の蒸着面側に塗工厚さが0.5μmになるように塗工した。塗工後の透明蒸着PETフィルムを、塗工後直ぐに120℃の乾燥機中で1分加熱乾燥した。これを更に40℃で3日間エージングすることで、硬化剤の反応を促進させたオーバーコート層が施された蒸着PETフィルム/コーティング材の積層体を得た。
【0056】
(比較例1~2:フラン骨格を含むカルボン酸を含有しないポリエステルから製造したコーティング組成物層を持つ積層体の製造方法。)
比較例1、2では、製造例6,7で合成したポリエステルを用い、実施例1~5と同様な方法とPETフィルム、及び透明蒸着PETフィルムとコーテティング剤とからなる積層体を得た。
【0057】
(酸素透過率評価方法)
得られた積層体を、モコン社製酸素透過率測定装置OX-TRAN2/21MHを用いてJIS-K7126(等圧法)に準じ、23℃、相対湿度(RH)0%での酸素透過率を測定した。
【0058】
(水蒸気透過率評価方法)
各種実施例、比較例で得られたフィルム及び、参考例として未処理の蒸着フィルムを、Illinois社製水蒸気透過率測定装置7012を用いて、伝導度法「ISO-15106-3」に準じ、40℃90%RHの雰囲気下で測定した。
【0059】
(耐ブロッキングテスト)
コーティング材組成物が積層された積層体を6cm×18cmの大きさに切出し、塗工面を内側にして三つ折りした後、40℃雰囲気下荷重2kg/cm2をかけ、24時間後に剥がす操作を行い、コート面とフィルム裏面が剥離するか否かで評価した。
◎:剥離音の発生、剥離帯電、フィルムの汚れいずれもなし
○:剥離音の発生がなく、剥離帯電がややあり、フィルムの汚れなし
△:剥離音の発生、剥離帯電、フィルムの汚れのいずれか二つ以上がややあり
×:剥離音の発生、剥離帯電、フィルムの汚れのいずれか一つ以上が激しくあり
【0060】
<硬化剤名称>
・D-110N:三井化学(株)製「タケネートD-110N(NB)」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発成分:75%、NCO%:11.5%、溶媒:酢酸エチル)
・KW-75:DIC株式会社製「ディックドライKW75」(トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発成分75%、NCO%:11.5%、溶媒酢酸エチル)
【0061】
【0062】
【0063】
以上、実施例1~5に示されたフラン骨格を含むポリカルボン酸を含有するポリエステルを含有のコーティング材とPETフィルムとの積層体では、比較例1のフタル酸骨格のみをポリカルボン酸成分として含有する樹脂組成物に比べ、低い酸素透過率、水蒸気透過率を示し優れたバリア特性を示した。また、耐ブロッキング特性でも優れる結果を示した。更に、比較例2に示したポリカルボン酸成分としてアジピン酸を主体とする樹脂組成物に比べてると、酸素バリア機能、水蒸気バリア機能、耐ブロッキング性とも極めて優れる結果を示した。同様な結果は透明蒸着PETフィルムを用いた積層体でも見られ、蒸着フィルムでの水蒸気/酸素バリア補強効果、及び耐ブロッキング特性において、優れた特性を示した。
本発明のコーティング材組成物は、非石油原料由来で得ることができるフラン骨格を含むポリカルボン酸を用いつつ、高いガスバリア特性と、耐ブロッキング特性を両立した材料である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のコーティング材組成物は水蒸気及び、酸素含むガスバリア性を有するので、各種の包装材料に加えて、各種の電子材料、工業材料用のコーティング材組成物として好適に用いることができる。