(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】重合体及びそれを用いた光学フィルム
(51)【国際特許分類】
C08F 212/14 20060101AFI20230613BHJP
C08L 101/06 20060101ALI20230613BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20230613BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C08F212/14
C08L101/06
C08L25/18
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2018242669
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤井 靖芳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 早希
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-092089(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105561(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6-246、C08L
G02B5
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を含まず、
α-シアノ-4-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸sec-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸tert-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-(メトキシエチル)残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロペンチル残基単位及びα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロヘキシル残基単位からなる群より選ばれる1種以上の単量体残基単位((以下、「(1)残基単位」という)10モル%以上50モル%以下、
スチレン残基単位、アルキルスチレン類残基単位、アルコキシスチレン類残基単位、及びビニルナフタレン類残基単位からなる群から選択される少なくとも1種の残基単位(以下、「(2)残基単位」という)(2)残基単位5モル%以上80モル%以下
及び
(メタ)アクリル酸残基単位;(メタ)アクリル酸メチル残基単位、(メタ)アクリル酸エチル残基単位、(メタ)アクリル酸ブチル残基単位からなる群から選択される少なくとも1種の残基単位
からなり、ガラス転移温度が130℃以上である重合体。
【請求項2】
請求項1に記載の重合体とセルロース系樹脂を含んでなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1乃至2いずれか一項に記載の重合体もしくは樹脂組成物を含んでなることを特徴とする光学フィルム。
【請求項4】
λ=450nmにおける面内位相差Re(450)とλ=550nmにおける面内位相差Re(550)の比(Re(450)/Re(550))が1.00未満であることを特徴とする請求項3に記載の光学フィルムを用いた位相差フィルム。
【請求項5】
フィルムのヘーズが2%未満であることを特徴とする請求項
3に記載の光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な重合体及びそれの製造法、さらにはそれを用いた光学フィルムに関するものであり、さらに詳細には、薄膜においても高い位相差を有する光学フィルム、特に液晶表示素子用及び有機EL用の光学補償フィルムに適した新規な重合体及びそれを用いた光学フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、マルチメディア社会における最も重要な表示デバイスとして、携帯電話、コンピュータ用モニター、ノートパソコン、テレビまで幅広く使用されている。
【0003】
液晶ディスプレイには表示特性向上のため多くの光学フィルムが用いられており、特に位相差フィルムは正面や斜めから見た場合のコントラストの向上、色調の補償など大きな役割を果たしている。従来の位相差フィルムとしては、ポリカーボネートや環状ポリオレフィンが使用されており、これらの高分子はいずれも正の複屈折を有する高分子である。ここで、複屈折の正負は下記に示すように定義される。
【0004】
延伸等で分子配向した高分子フィルムの光学異方性は、フィルムを延伸した場合のフィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、それと直交するフィルム面内方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした屈折率楕円体で表すことができる。なお、進相軸とはフィルム面内における屈折率の低い軸方向を指す。
【0005】
そして、負の複屈折とは延伸方向が進相軸方向となるものであり、正の複屈折とは延伸方向と垂直方向が進相軸方向となるものである。
【0006】
つまり、負の複屈折を有する高分子の一軸延伸では延伸軸方向の屈折率が小さく(進相軸:延伸方向)、正の複屈折を有する高分子の一軸延伸では延伸軸と直交する軸方向の屈折率が小さい(進相軸:延伸方向と垂直方向)。
【0007】
多くの高分子は正の複屈折を有する。負の複屈折を有する高分子としてはアクリル樹脂やポリスチレンがあるが、アクリル樹脂は位相差が小さく、位相差フィルムとしての特性は十分でない。ポリスチレンは、低温領域での光弾性係数が大きいためにわずかな応力で位相差が変化するなど位相差の安定性の課題、さらに耐熱性が低いという実用上の課題があり、現状用いられていない。
【0008】
負の複屈折を示す高分子の延伸フィルムではフィルムの厚み方向の屈折率が高く、従来にない位相差フィルムとなるため、例えば、スーパーツイストネマチック型液晶ディスプレイ(STN-LCD)や垂直配向型液晶ディスプレイ(VA-LCD)、面内配向型液晶ディスプレイ(IPS-LCD)、反射型液晶ディスプレイ(反射型LCD)などのディスプレイの視角特性の補償用位相差フィルムや偏向板の視野角補償フィルムとして有用であり、負の複屈折を有する位相差フィルムに対して市場の要求は強い。
【0009】
正の複屈折を有する高分子を用いてフィルムの厚み方向の屈折率を高めたフィルムの製造方法が提案されている。ひとつは高分子フィルムの片面または両面に熱収縮性フィルムを接着し、その積層体を加熱延伸処理して、高分子フィルムのフィルム厚み方向に収縮力をかける処理方法(例えば、特許文献1~3参照)である。また、高分子フィルムに電場を印加しながら面内に一軸延伸する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0010】
それ以外にも負の光学異方性を有する微粒子とマレイミド系共重合体等の透明性高分子からなる位相差フィルムが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0011】
しかし、特許文献1~4において提案された方法は、製造工程が非常に複雑になるために生産性が劣る課題がある。また位相差の均一性などの制御も従来の延伸による制御と比べると著しく難しくなる。
【0012】
特許文献5で得られる位相差フィルムは、負の光学異方性を有する微粒子を添加することによって負の複屈折を示す位相差フィルムであり、製造方法の簡便化や経済性の観点から、微粒子を添加する必要のない位相差フィルムが求められている。また、ディスプレイの用途拡大に伴い、より耐熱性の高い位相差フィルムが求められている。
【0013】
また、フマル酸ジエステル系共重合体及びそれよりなる位相差フィルムが提案されている(例えば、特許文献6~12参照)。
【0014】
特許文献6~12で提案されたフマル酸ジエステル系共重合体及びそれよりなるフィルムは高い位相差を有しているものの、現状においては、より薄膜においても高い位相差を有するフィルムが求められている。
【0015】
さらには、正の複屈折材料と負の複屈折材料の複合化による単膜型位相差フィルム材料が提案されており(例えば、特許文献13及び14参照)、より高性能な光学特性を達成するために複合化可能な負の複屈折を示す高分子材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特許2818983号公報
【文献】特開平05-297223号公報
【文献】特開平05-323120号公報
【文献】特開平06-88909号公報
【文献】特開2005-156862号公報
【文献】特開2008-112141号公報
【文献】特開2012-032784号公報
【文献】WO2012/005120号公報
【文献】特開2008-129465号公報
【文献】特開2006-193616号公報
【文献】WO2014/013982号公報
【文献】WO2014/084178号公報
【文献】WO2014/196552号公報
【文献】WO2016/060115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特定の構造の単量体単位とすることで、負の複屈折性を発現させ、かつ、耐熱性に優れる重合体及びそれを用いて得られる位相差特性及び異種ポリマーとの相溶性に優れた複合化が容易な重合体及びそれからなる光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の共重合体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明は、以下の一般式(1)で表される単量体残基単位を含むことを特徴とする重合体及びそれを用いた光学フィルムに関するものである。
【0020】
【0021】
(ここで、R1はエステル基(-C(=O)OX1)(ここで、X1は、水素、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数1~12の分岐状アルキル基、または炭素数3~14の環状基からなる群から選択される基を示す。)またはシアノ基のいずれかの基を示し、R2~R5は水素もしくは任意の置換基示し、R2~R5は隣接する置換基同士で縮合環構造を形成してもよい。)
以下、本発明の光学補償フィルムに適した重合体について詳細に説明する。
【0022】
本発明の重合体は、一般式(1)で表される単量体残基単位を含む重合体である。そして、本発明の重合体は、一般式(1)で表される単量体残基単位を含んでなることにより、負の複屈折性及び異種ポリマーとの高い相溶性を発現させるものである。
【0023】
本発明の一般式(1)におけるR1はエステル基(-C(=O)OX1)またはシアノ基のいずれかの基を示す。また、R2~R5は水素もしくは任意の置換基を示し、R2~R5は隣接する置換基同士で縮合環構造を形成してもよい。
【0024】
R2~R5における任意の置換基としては特に制限はないが、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン、メチル基、エチル基等の炭素数1~12の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1~12の分岐状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~14の環状基、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、アセトキシ基、等のエステル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基からなる群から選択される基が挙げられ、縮合環構造としては、例えば、シクロヘキサン環構造、ベンゼン環構造、フラン環構造等の縮合環構造からなる群から選択される基が挙げられ、縮合環上に任意の置換基を有していてもよい。
【0025】
X1は水素、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数1~12の分岐状アルキル基、炭素数3~14の環状基からなる群から選択される基を示し、アルキル基の炭素に任意の置換基を有していてもよい。炭素数1~12の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられ、炭素数1~12の分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基等が挙げられ、炭素数3~14の環状基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0026】
そして、具体的な一般式(1)で表される単量体残基単位としては、芳香族環上に少なくとも1以上のヒドロキシル基を有する単量体単位であり、例えば、α-シアノ-2-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-3-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-4-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸sec-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸tert-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-(メトキシエチル)残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロペンチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロヘキシル残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸ブチル残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸sec-ブチル残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸tert-ブチル残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸2-(メトキシエチル)残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロペンチル残基単位、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロヘキシル残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸ブチル残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸sec-ブチル残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸tert-ブチル残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸2-(メトキシエチル)残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロペンチル残基単位、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロヘキシル残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフタレニル)マロノニトリル残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸メチル残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸エチル残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸プロピル残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸イソプロピル残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸ブチル残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸イソブチル残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸sec-ブチル残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸tert-ブチル残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸2-(メトキシエチル)残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸シクロペンチル残基単位、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸シクロヘキシル残基単位からなる群から選択される少なくとも1種の残基単位が挙げられる。
【0027】
一般式(1)で表される残基単位のなかでも、より高い負の位相差と異種ポリマーとのより高い相溶性を発現することから、4-位にヒドロキシル基を有する残基単位が好ましく、α-シアノ-4-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸sec-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸tert-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-(メトキシエチル)残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロペンチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロヘキシル残基単位が好ましく、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸sec-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸tert-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-(メトキシエチル)残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロペンチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロヘキシル残基単位からなる群から選択される少なくとも1種の残基単位がさらに好ましい。これらの残基単位は1種でもよいし2種以上含んでいてもよい。
【0028】
本発明の一般式(1)で表される単量体残基単位を含む重合体は、良好な光学特性を発現するため、さらに一般式(2)で表される単量体残基単位を含むことが好ましい。
【0029】
【0030】
(ここで、R6~R10はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数1~12の分岐状アルキル基、炭素数3~14の環状基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メルカプト基、アルコキシ基(-OX2)、エステル基(-C(=O)OX3または-CO(=O)-X4)、アミノ基(-NX5(X6)、アミド基(-C(=O)N(X7)(X8)または-NX9C(=O)X10)またはアシル基(-C(=O)X11)(ここで、X2~X11は、それぞれ独立して炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数1~12の分岐状アルキル基、または炭素数3~14の環状基からなる群から選択される基を示し、アルキル基もしくは環状基の水素が任意のヘテロ原子で置換されていてもよい)からなる群から選択される基を示す。また、R6~R10は隣接する置換基同士で縮合環構造を形成してもよい。)
R6~R10におけるハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素等が挙げられ、炭素数1~12の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1~12の直鎖状アルキル基が挙げられ、炭素数1~12の分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~12の分岐状アルキル基が挙げられ、炭素数3~14の環状基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンタニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フリル基、ピラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、インドリル基、カルバゾリル基等の炭素数3~14の環状基が挙げられ、具体的なアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられ、具体的なエステル基としては、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、アセトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、具体的なアミド基としては、例えば、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基等が挙げられ、具体的なアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられ、具体的なアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。
【0031】
X2~X11における炭素数1~12の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられ、炭素数1~12の分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基等が挙げられ、炭素数3~14の環状基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0032】
そして、具体的な一般式(2)で表される単量体残基単位としては、例えば、スチレン残基単位、2-フルオロスチレン残基単位、3-フルオロスチレン残基単位、4-フルオロスチレン残基単位、2-ブロモスチレン残基単位、3-ブロモスチレン残基単位、4-ブロモスチレン残基単位、2-クロロスチレン残基単位、4-クロロスチレン残基単位、2-メチルスチレン残基単位、3-メチルスチレン残基単位、4-メチルスチレン残基単位、2-エチルスチレン残基単位、3-エチルスチレン残基単位、4-エチルスチレン残基単位、2-プロピルスチレン残基単位、3-プロピルスチレン残基単位、4-プロピルスチレン残基単位、2-ブチルスチレン残基単位、3-ブチルスチレン残基単位、4-ブチルスチレン残基単位、2,3-ジメチルスチレン残基単位、2,4-ジメチルスチレン残基単位、2,5-ジメチルスチレン残基単位、3,4-ジメチルスチレン残基単位、2-イソプロピルスチレン残基単位、3-イソプロピルスチレン残基単位、4-イソプロピルスチレン残基単位、2-イソブチルスチレン残基単位、3-イソブチルスチレン残基単位、4-イソブチルスチレン残基単位、2-(2-エチルヘキシル)スチレン残基単位、3-(2-エチルヘキシル)スチレン残基単位、4-(2-エチルヘキシル)スチレン残基単位、4-フェニルスチレン残基単位、4-クロロメチルスチレン残基単位、4-シアノメチルスチレン残基単位、4-トリフルオロメチルスチレン残基単位、2-シアノスチレン残基単位、3-シアノスチレン残基単位、4-シアノスチレン残基単位、2-ニトロスチレン残基単位、3-ニトロスチレン残基単位、4-ニトロスチレン残基単位、2-ヒドロキシスチレン残基単位、3-ヒドロキシスチレン残基単位、4-ヒドロキシスチレン残基単位、2-カルボキシスチレン残基単位、3-カルボキシスチレン残基単位、4-カルボキシスチレン残基単位、2-メルカプトスチレン残基単位、3―メルカプトスチレン残基単位、4-メルカプトスチレン残基単位、2-メトキシスチレン残基単位、3-メトキシスチレン残基単位、4-メトキシスチレン残基単位、2-エトキシスチレン残基単位、3-エトキシスチレン残基単位、4-エトキシスチレン残基単位、2-プロポキシスチレン残基単位、3-プロポキシスチレン残基単位、4―プロポキシスチレン残基単位、2-ブトキシスチレン残基単位、3-ブトキシスチレン残基単位、4-ブトキシスチレン残基単位、2,3-ジメトキシスチレン残基単位、2,4-ジメトキシスチレン残基単位、2,5-ジメトキシスチレン残基単位、3,4-ジメトキシスチレン残基単位、2-イソプロポキシスチレン残基単位、3-イソプロポキシスチレン残基単位、4-イソプロポキシスチレン残基単位、2-フェノキシスチレン残基単位、3-フェノキシスチレン残基単位、4-フェノキシスチレン残基単位、2-アセトキシスチレン残基単位、3-アセトキシスチレン残基単位、4-アセトキシスチレン残基単位、2-ビニルフェニルプロピオネート残基単位、3-ビニルフェニルプロピオネート残基単位、4-ビニルフェニルプロピオネート残基単位、2-ビニルフェニルブチレート残基単位、3-ビニルフェニルブチレート残基単位、4-ビニルフェニルブチレート残基単位、2-ビニルフェニルイソブチレート残基単位、3-ビニルフェニルイソブチレート残基単位、4-ビニルフェニルイソブチレート残基単位、2-ビニルフェニルベンゾエート残基単位、3-ビニルフェニルベンゾエート残基単位、4-ビニルフェニルベンゾエート残基単位、2-ジアミノスチレン残基単位、3-ジアミノスチレン残基単位、4-ジアミノスチレン残基単位、2-(N,N-ジメチルアミノ)スチレン残基単位、3-(N,N-ジメチルアミノ)スチレン残基単位、4-(N,N-ジメチルアミノ)スチレン残基単位、2-ビニルベンザミド残基単位、3-ビニルベンザミド残基単位、4-ビニルベンザミド残基単位、2-ビニル-(N,N-ジメチル)ベンザミド残基単位、3-ビニル-(N,N-ジメチル)ベンザミド残基単位、4-ビニル-(N,N-ジメチル)ベンザミド残基単位、2-ビニルアセトアニリド残基単位、3-ビニルアセトアニリド残基単位、4-ビニルアセトアニリド残基単位、1-ビニルナフタレン残基単位、2-ビニルナフタレン残基単位、1-ビニルアントラセン残基単位、2-ビニルアントラセン残基単位、9-ビニルアントラセン残基単位からなる群から選択される少なくとも1種の残基単位を挙げることができる。このなかでも、より高い負の位相差と異種ポリマーとのより高い相溶性を発現するため、スチレン残基単位、アルキルスチレン類残基単位、アルコキシスチレン類残基単位、及びビニルナフタレン類残基単位からなる群から選択される少なくとも1種の残基単位が好ましく、スチレン残基単位、4-アルキルスチレン類残基単位、4-アルコキシスチレン類残基単位、及びビニルナフタレン類残基単位からなる群から選択される少なくとも1種の残基単位がさらに好ましく、スチレン残基単位、4-メチルスチレン残基単位、4-メトキシスチレン残基単位、1-ビニルナフタレン残基単位及び2-ビニルナフタレン残基単位からなる群から選択される少なくとも1種の残基単位が特に好ましい。
【0033】
本発明の重合体の製造方法について特に制限はないが、例えば、一般式(3)で表される単量体を含む単量体組成物を重合する製造方法が挙げられる。
【0034】
【0035】
(ここで、R1はエステル基(-C(=O)OX1)(ここで、X1は、水素、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数1~12の分岐状アルキル基、または炭素数3~14の環状基からなる群から選択される基を示す。)またはシアノ基を示し、R2~R5は水素もしくは任意の置換基示し、R2~R5は隣接する置換基同士で縮合環構造を形成してもよい。)
本発明の一般式(3)における具体的な単量体としては、例えば、α-シアノ-4-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸ブチル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸sec-ブチル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸tert-ブチル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-(メトキシエチル)、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロペンチル、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロヘキシル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸ブチル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸sec-ブチル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸tert-ブチル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸2-(メトキシエチル)、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロペンチル、α-シアノ-2-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロヘキシル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシ-ベンザルマロノニトリル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸ブチル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸sec-ブチル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸tert-ブチル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸2-(メトキシエチル)、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロペンチル、α-シアノ-3-メチル-4-ヒドロキシケイ皮酸シクロヘキシル、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフタレニル)マロノニトリル、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸メチル、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸エチル、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸プロピル、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸イソプロピル、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸ブチル、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸イソブチル、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸sec-ブチル、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸tert-ブチル、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸2-(メトキシエチル)、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸シクロペンチル、α-シアノ-1-(4-ヒドロキシナフチル)アクリル酸シクロヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種の単量体が挙げられる。これらの単量体を重合することにより、脱保護等の後反応を行うことなく一般式(1)に示される重合体を得ることができる。
【0036】
該重合体は、本発明の範囲を超えない限り、他の単量体残基単位を含有していてもよく、他の単量体残基単位としては、例えば、α-メチルスチレン残基単位等のα-置換スチレン類残基単位;(メタ)アクリル酸残基単位;(メタ)アクリル酸メチル残基単位、(メタ)アクリル酸エチル残基単位、(メタ)アクリル酸ブチル残基単位等の(メタ)アクリル酸エステル残基単位;アクリロニトリル残基単位;メタクリロニトリル残基単位;エチレン残基単位、プロピレン残基単位等のオレフィン類残基単位;フマル酸ジn-ブチル残基単位、フマル酸ビス(2-エチルヘキシル)残基単位等のフマル酸ジエステル類残基単位より選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。
【0037】
本発明の重合体の組成は、光学補償フィルムとしたときの位相差特性及び異種ポリマーとの相溶性に優れることから、一般式(1)で表される単量体残基単位1モル%以上50モル%以下である。さらに、光学補償フィルムとしたときの位相差特性がより優れたものとなることから、一般式(1)で表される単量体残基単位5モル%以上50モル%以下及び一般式(2)で表される単量体残基単位5モル%以上95モル%以下が好ましく、一般式(1)で表される単量体残基単位10モル%以上50モル%以下及び一般式(2)で表される単量体残基単位10モル%以上80モル%以下がさらに好ましく、一般式(1)で表される単量体残基単位15モル%以上50モル%以下及び一般式(2)で表される単量体残基単位15モル%以上50モル%以下が特に好ましい。
【0038】
ここで、重合体の組成は、一般的なプロトンNMRによるスペクトル分析、CHN分析により計測することができる。
【0039】
本発明の重合体は、フィルムとした際の耐熱性がより優れたものとなることから、ガラス転移温度が130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましく、180℃以上であることが特に好ましい。
【0040】
ここで、重合体のガラス転移温度は、一般的な示差走査熱量計により計測することができる。
【0041】
本発明の重合体は、機械特性、フィルムとした際の強度、靭性に優れたものとなることから、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量が5000~500000であることが好ましく、10000~400000であることがさらに好ましく、20000~300000であることが特に好ましい。
【0042】
本発明の重合体の具体的な製造方法としては、該共重合体が得られる限りにおいて如何なる方法でもよく、例えば、一般式(3)で表される単量体のラジカル重合を行うことにより製造することができる。
【0043】
前記ラジカル重合は公知の重合方法、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法のいずれも採用可能である。
【0044】
ラジカル重合を行う際の重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-ブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等のアゾ系開始剤などが挙げられる。
【0045】
そして、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法において使用可能な溶媒として特に制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;シクロヘキサン;ジオキサン;テトラヒドロフラン;アセトン;メチルエチルケトン;ジメチルホルムアミド;酢酸イソプロピル;水などが挙げられ、これらの混合溶媒も挙げられる。
【0046】
また、ラジカル重合を行う際の重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には30℃以上150℃以下の範囲で行うことが好ましい。
【0047】
本発明の重合体は、光学フィルムとして用いることができる。
【0048】
本発明の重合体を光学フィルムとして用いる場合、画質の特性が良好となるため、ヘーズが2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0049】
本発明の重合体を光学フィルムとして用いる場合、画質の特性が良好となるため、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。
【0050】
本発明の重合体を光学フィルムとして用いる場合、位相差特性に優れるものとなることから、光学補償フィルム(位相差フィルム)とすることが好ましい。
【0051】
本発明の重合体を用いた光学補償フィルムとしては、該重合体のみを用いることもできるだけでなく、異種ポリマーとの相溶性に優れることから他の樹脂と混合した組成物とすることに好適である。このとき、混合する他の樹脂としては、負の複屈折性を有する重合体であっても、正の複屈折性を有する重合体であっても良く、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基から選択される少なくとも1以上の置換基を有する樹脂を用いて位相差特性に優れる光学補償フィルムが得られる限り特に制限はなく、例えば、セルロース系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン等が挙げられ、より位相差特性に優れる光学補償フィルムが得られることから、セルロース系樹脂が好ましい。
【0052】
本発明において、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基から選択される少なくとも1以上の置換基を有する樹脂としてセルロース系樹脂が用いられる場合、光学補償フィルムとした際に位相差特性および透明性により優れるものとなることから、下記一般式(4)で示されるセルロース系樹脂であることが好ましい。
【0053】
【0054】
(式中、R11~R13はそれぞれ独立して水素、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数1~12の分岐状アルキル基、炭素数3~14の環状基、またはアシル基(-C(=O)X12)(ここで、X12は炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数1~12の分岐状アルキル基、炭素数3~14の環状基からなる群から選択される基を示す。)からなる群から選択される基を示す。)
ここで、一般式(4)で示されるセルロース系樹脂は、β-グルコース単位が直鎖状に重合した高分子であり、グルコース単位の2位、3位および6位の水酸基の一部または全部を置換したポリマーである。
【0055】
R11~R13における炭素数1~12の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられ、炭素数1~12の分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基等が挙げられ、炭素数3~14の環状基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0056】
R11~R13における炭素数1~12の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられ、炭素数1~12の分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基等が挙げられ、炭素数3~14の環状基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0057】
本発明の一般式(4)におけるR10~R12としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、イソブチリル基、tert-ブチリル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等を挙げることができる。また、これらの中でも、溶解性、相溶性がより優れたものになることから、メチル基、エチル基、プロピル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が好ましい。
【0058】
本発明のセルロース系樹脂におけるセルロースの水酸基の酸素原子を介して置換している置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースの水酸基が置換されている割合(100%の置換は置換度3)を意味し、溶解性、相溶性、延伸加工性の点から、置換度は、好ましくは1.5~3.0であり、さらに好ましくは1.8~2.8である。
【0059】
具体的な本発明のセルロース系樹脂としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、トリアセチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等が挙げられ、位相差特性および透明性により優れた光学補償フィルムが得られることから、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましい。
【0060】
本発明のセルロース系樹脂は、機械特性に優れ、製膜時の成形加工性に優れたものとなることから、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1,000~1,000,000であることが好ましく、5,000~200,000であることがさらに好ましい。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、一般式(1)で示される残基単位を含んでなる重合体とエーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基から選択される少なくとも1以上の置換基を有する樹脂とをブレンドすることによって得られるものであり、光学補償フィルムとして用いるとき、該光学補償フィルムが目的の位相差特性を発現することを特徴とするものである。すなわち、一般式(1)で示される残基単位を有する樹脂が負の複屈折を示し、かつ、一般式(1)で示される残基単位を有する樹脂と、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基から選択される少なくとも1以上の置換基を有する樹脂が優れた相溶性を示すことから、これらをブレンドして得られる本発明に係る樹脂組成物を用いるとき、実用的な透明性を有し、かつ位相差特性に優れる光学補償フィルムを得ることができるものである。
【0062】
本発明の樹脂組成物における一般式(1)で示される残基単位を含んでなる重合体とエーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基から選択される少なくとも1以上の置換基を有する樹脂の組成の割合は、位相差フィルムとする際の位相差の制御に好適なため、一般式(1)で示される残基単位を有する樹脂1~90重量%およびエーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基から選択される少なくとも1以上の置換基を有する樹脂10重量%以上99重量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは一般式(1)で示される残基単位を有する樹脂10重量%以上85重量%以下およびエーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基から選択される少なくとも1以上の置換基を有する樹脂15重量%以上90重量%以下であり、特に好ましくは一般式(1)で示される残基単位を有する樹脂20重量%以上80重量%以下およびエーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基から選択される少なくとも1以上の置換基を有する樹脂20重量%以上80重量%以下である。
【0063】
ブレンドの方法としては、溶融ブレンド、溶液ブレンド等の方法を用いることができる。溶融ブレンド法とは加熱により樹脂を溶融させて混練することにより製造する方法である。溶液ブレンド法とは樹脂を溶剤に溶解しブレンドする方法である。溶液ブレンドに用いる溶剤としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルムなどの塩素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル溶剤;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等を用いることができる。各樹脂および添加剤を溶剤に溶解したのちブレンドすることも可能であり、各樹脂の粉体、ペレット等を混練後、溶剤に溶解させることも可能である。
【0064】
本発明の樹脂組成物は延伸して光学補償フィルムとすることができ、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、それと直交するフィルム面内方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした場合のそれぞれの関係がnx≦nz≦nyまたはny≦nz≦nxである光学補償フィルムとすることができる。
【0065】
本発明の樹脂組成物を延伸して光学補償フィルムとして用いる場合、薄膜化が可能となるため、下記式(A)で示される面内位相差(Re)と膜厚との比(Re/膜厚)が絶対値で2以上(nm/μm)であることが好ましく、3以上であることがさらに好ましく、4以上であることが特に好ましい。
【0066】
Re=(nx-ny)×d (B)
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示し、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示し、dはフィルム厚みを示す。)
本発明の樹脂組成物を延伸して光学補償フィルムとして用いる場合、色相変化を抑制できることから、λ=450nmにおける面内位相差Re(450)とλ=550nmにおける面内位相差Re(550)の比Re(450)/Re(550)は1.00未満であることが好ましく、0.98未満であることがより好ましく、0.95未満であることがさらに好ましい。本発明の重合体を用いることにより、重合体中にカルド構造のような煩雑な構造を導入することなく、ポリマーブレンドという簡便な手法にて目的とするRe(450)/Re(550)を発現する光学補償フィルムを得ることができる。
【0067】
本発明の重合体を用いた光学補償フィルムは、未延伸でも位相差を発現することから、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、それと直交するフィルム面内方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした場合のそれぞれの関係がny<nx≦nzまたはny≦nx<nzまたはny≦nz<nxまたはny<nz≦nxのいずれかである光学補償フィルムとして用いることができる。
【0068】
本発明の共重合体を用いた光学フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、溶液キャスト法、溶融キャスト法等の方法により製造することができる。
【0069】
溶液キャスト法は、該重合体を溶媒に溶解した溶液(以下、ドープと称する。)を支持基板上に流延した後、加熱等により溶媒を除去してフィルムを得る方法である。その際ドープを支持基板上に流延する方法としては、例えば、Tダイ法、ドクターブレード法、バーコーター法、ロールコーター法、リップコーター法等が用いられる。特に、工業的にはダイからドープをベルト状又はドラム状の支持基板に連続的に押し出す方法が一般的である。用いられる支持基板としては、例えば、ガラス基板、ステンレスやフェロタイプ等の金属基板、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムなどがある。溶液キャスト法において、高い透明性を有し、かつ厚み精度、表面平滑性に優れたフィルムを製膜する際には、ドープの溶液粘度は極めて重要な因子であり、10~20000cPsが好ましく、100~10000cPsであることがさらに好ましい。
【0070】
この際の該重合体を用いたフィルムの塗布厚は、優れた表面平滑性、光学特性が得られることから、乾燥後1~200μmが好ましく、さらに好ましくは5~100μmであり、特に好ましくは10~60μmである。
【0071】
また、溶融キャスト法は、該重合体を押出機内で溶融し、Tダイのスリットからフィルム状に押出した後、ロールやエアーなどで冷却しつつ引き取る成形法である。
【0072】
本発明の重合体を用いた光学補償フィルムは、基材のガラス基板や他の光学フィルムから剥離して用いることが可能であり、基材のガラス基板や他の光学フィルムとの積層体としても用いることができる。
【0073】
本発明の重合体を用いた光学補償フィルムは、延伸して使用することもできる。
【0074】
本発明の重合体を用いた光学補償フィルムは、偏光板と積層して円または楕円偏光板として用いることが可能であり、ポリビニルアルコール/ヨウ素等を含む偏光子と積層して偏光板とすることも可能である。さらに、該光学補償フィルム同士又は他の光学補償フィルムと積層することもできる。
【0075】
本発明の重合体を用いた光学補償フィルムは、フィルム成形時又は位相差フィルム自体の熱安定性を高めるために酸化防止剤が配合されていることが好ましい。該酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独又は併用して用いても良い。そして、相乗的に酸化防止作用が向上することから、ヒンダード系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併用して用いることが好ましく、その際には、ヒンダード系酸化防止剤100重量部に対して、リン系酸化防止剤を100~500重量部で混合して使用することがさらに好ましい。また、酸化防止剤の添加量としては、高い酸化防止効果が得られることから、該位相差フィルムを構成する重合体100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましく、0.5~1重量部がさらに好ましい。
【0076】
また、紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエート等を必要に応じて配合してもよい。
【0077】
本発明の重合体を用いた光学フィルムは、その他高分子、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、顔料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等が配合されていてもよい。
【0078】
本発明によると、液晶ディスプレイのコントラストや視野角特性の補償フィルムや反射防止フィルムとして有用となるフィルムの厚み方向の屈折率が大きく、面内位相差が大きく、波長依存性が小さい等の光学特性に優れた光学補償フィルムに適した重合体を提供することができる。
【発明の効果】
【0079】
本発明の重合体は、位相差特性及び相溶性に優れる光学補償フィルムに適した重合体であり、特に液晶表示素子用及び有機EL用の光学補償フィルム用として適したものである。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
なお、実施例により示す諸物性は、以下の方法により測定した。
<重合体の組成>
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM-ECZ400S)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(1H-NMR)スペクトル分析より求めた。また、1H-NMRスペクトル分析により求めることが困難であるものについては、CHN元素分析より求めた。
<数平均分子量の測定>
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、商品名HLC-8320GPC(カラムGMHHR―Hを装着))を用い、テトラヒドロフランまたはN,N-ジメチルホルムアミドを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレンまたは標準プルラン換算値として求めた。
<ガラス転移温度の測定>
示差走査熱量計(セイコーインスツル製、商品名DSC6220)を用いて測定した。
<フィルムの三次元屈折率の測定>
全自動複屈折計(王子計測機器製、商品名KOBRA-WPR)を用いて測定した。
【0082】
合成例1
容量50mlのガラスアンプルにα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル6.18g、4-メトキシスチレン3.82g、重合溶媒としてテトラヒドロフラン1gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.07gを入れ、窒素置換したのち減圧状態で熔封した。このガラスアンプルを50℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、容器から重合物を取り出し、200ミリリットルのメタノール中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル-4-メトキシスチレン共重合体7.6gを得た。
【0083】
得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル-4-メトキシスチレン共重合体の数平均分子量は31000であり、共重合体組成はα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位/4-メトキシスチレン残基単位=46/54(モル%)であることを確認した。
【0084】
得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル-4-メトキシスチレン共重合体のガラス転移温度は215℃であった。
【0085】
合成例2
容量50mlのガラスアンプルにα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル3.92g、スチレン2.08g、メタクリル酸メチル4.00g、重合溶媒としてテトラヒドロフラン1gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.05gを入れ、窒素置換したのち減圧状態で熔封した。このガラスアンプルを50℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、容器から重合物を取り出し、200ミリリットルのメタノール中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体8.0gを得た。
【0086】
得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体の数平均分子量は24000であり、共重合体組成はα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位/スチレン残基単位/メタクリル酸メチル残基単位=37/52/11(モル%)であることを確認した。
【0087】
得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体のガラス転移温度は199℃であった。
【0088】
合成例3
容量50mlのガラスアンプルにα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル6.62g、4-メチルスチレン3.38g、重合溶媒としてテトラヒドロフラン1gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.07gを入れ、窒素置換したのち減圧状態で熔封した。このガラスアンプルを50℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、容器から重合物を取り出し、200ミリリットルのメタノール中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル-4-メチルスチレン共重合体7.2gを得た。
【0089】
得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル-4-メチルスチレン共重合体の数平均分子量は31000であり、共重合体組成はα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル残基単位/4-メチルスチレン残基単位=44/56(モル%)であることを確認した。
【0090】
得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル-4-メチルスチレン共重合体のガラス転移温度は203℃であった。
【0091】
合成例4
容量50mlのガラスアンプルにα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-エトキシエチル3.90g、2-ビニルナフタレン2.88g、アクリル酸メチル3.22g、重合溶媒としてテトラヒドロフラン1gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.04gを入れ、窒素置換したのち減圧状態で熔封した。このガラスアンプルを50℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、容器から重合物を取り出し、200ミリリットルのメタノール中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-エトキシエチル-2-ビニルナフタレン-アクリル酸メチル共重合体5.9gを得た。
【0092】
得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-エトキシエチル-2-ビニルナフタレン-アクリル酸メチル共重合体の数平均分子量は21000であり、共重合体組成はα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-エトキシエチル残基単位/2-ビニルナフタレン残基単位/アクリル酸メチル残基単位=36/49/15(モル%)であることを確認した。
【0093】
得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-エトキシエチル-2-ビニルナフタレン-アクリル酸メチル共重合体のガラス転移温度は208℃であった。
【0094】
合成例5
容量50mlのガラスアンプルに4-ヒドロキシベンザルマロノニトリル6.20g、スチレン3.80g、重合溶媒としてテトラヒドロフラン1gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.08gを入れ、窒素置換したのち減圧状態で熔封した。このガラスアンプルを50℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、容器から重合物を取り出し、200ミリリットルのメタノール中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、4-ヒドロキシベンザルマロノニトリル-スチレン共重合体7.8gを得た。
【0095】
得られた4-ヒドロキシベンザルマロノニトリル-スチレン共重合体の数平均分子量は27000であり、共重合体組成は4-ヒドロキシベンザルマロノニトリル残基単位/スチレン残基単位=47/53(モル%)であることを確認した。
【0096】
得られた4-ヒドロキシベンザルマロノニトリル-スチレン共重合体のガラス転移温度は197℃であった。
【0097】
合成例6
容量50mlのガラスアンプルにα-シアノケイ皮酸エチル6.59g、スチレン3.41g、重合溶媒としてテトラヒドロフラン1gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.08gを入れ、窒素置換したのち減圧状態で熔封した。このガラスアンプルを50℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、容器から重合物を取り出し、200ミリリットルのメタノール中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、α-シアノケイ皮酸エチル-スチレン共重合体7.9gを得た。
【0098】
得られたα-シアノケイ皮酸エチル-スチレン共重合体の数平均分子量は101000であり、共重合体組成はα-シアノケイ皮酸エチル残基単位/スチレン残基単位=45/55(モル%)であることを確認した。
【0099】
得られたα-シアノケイ皮酸エチル-スチレン共重合体のガラス転移温度は210℃であった。
【0100】
合成例7
容量50mlのガラスアンプルにベンザルマロノニトリル5.97g、スチレン4.03g、重合溶媒としてテトラヒドロフラン1gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.09gを入れ、窒素置換したのち減圧状態で熔封した。このガラスアンプルを50℃の恒温槽に入れ、48時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、容器から重合物を取り出し、200ミリリットルのメタノール中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、ベンザルマロノニトリル-スチレン共重合体7.4gを得た。
【0101】
得られたベンザルマロノニトリル-スチレン共重合体の数平均分子量は89000であり、共重合体組成はベンザルマロノニトリル残基単位/スチレン残基単位=41/59(モル%)であることを確認した。
【0102】
得られたベンザルマロノニトリル-スチレン共重合体のガラス転移温度は179℃であった。
【0103】
実施例1
エチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=55,000、分子量Mw=176,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.5)8gと合成例1で得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル-4-メトキシスチレン共重合体2gをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後150℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。得られたフィルムを50mm角に切り出し、140℃で1.5倍に一軸延伸した(延伸後の厚み48μm)。
【0104】
得られた光学補償フィルムの全光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0105】
実施例2
エチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=55,000、分子量Mw=176,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.5)8gと合成例2で得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体2gをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後150℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。得られたフィルムを50mm角に切り出し、140℃で1.5倍に一軸延伸した(延伸後の厚み45μm)。
【0106】
得られた光学補償フィルムの全光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0107】
実施例3
エチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=55,000、分子量Mw=176,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.5)8gと合成例3で得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸プロピル-4-メチルスチレン共重合体2gをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後150℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。得られたフィルムを50mm角に切り出し、140℃で1.5倍に一軸延伸した(延伸後の厚み52μm)。
【0108】
得られた光学補償フィルムの全光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0109】
実施例4
エチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=55,000、分子量Mw=176,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.5)8gと合成例4で得られたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-エトキシエチル-2-ビニルナフタレン-アクリル酸メチル共重合体2gをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後150℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。得られたフィルムを50mm角に切り出し、140℃で1.5倍に一軸延伸した(延伸後の厚み43μm)。
【0110】
得られた光学補償フィルムの全光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0111】
実施例5
エチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=55,000、分子量Mw=176,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.5)8gと合成例5で得られた4-ヒドロキシベンザルマロノニトリル-スチレン共重合体2gをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後150℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。得られたフィルムを50mm角に切り出し、140℃で1.5倍に一軸延伸した(延伸後の厚み53μm)。
【0112】
得られた光学補償フィルムの全光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0113】
比較例1
エチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=55,000、分子量Mw=176,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.5)8gと合成例6で得られたα-シアノケイ皮酸エチル-スチレン共重合体2gをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後150℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。得られたフィルムを50mm角に切り出し、140℃で1.5倍に一軸延伸した(延伸後の厚み55μm)。
【0114】
得られた光学補償フィルムの全光線透過率、ヘーズを測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0115】
得られたフィルムはヘーズが高く、目的とする光学特性を有していなかった。
【0116】
比較例2
エチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=55,000、分子量Mw=176,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.5)8gと合成例7で得られたベンザルマロノニトリル-スチレン共重合体2gをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後150℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。得られたフィルムを50mm角に切り出し、140℃で1.5倍に一軸延伸した(延伸後の厚み47μm)。
【0117】
得られた光学補償フィルムの全光線透過率、ヘーズを測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0118】
得られたフィルムはヘーズが高く、目的とする光学特性を有していなかった。
【0119】
比較例3
エチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=55,000、分子量Mw=176,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.5)10gをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後150℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。得られたフィルムを50mm角に切り出し、140℃で1.5倍に一軸延伸した(延伸後の厚み40μm)。
【0120】
得られた光学補償フィルムの全光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。
【0121】
得られたフィルムは、Re(450)/Re(550)が目的とする光学特性を有していなかった。
【0122】
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、新規な重合体を提供するものであり、該重合体はフィルム、特に光学補償フィルム等としての利用が期待されるものである。