(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】酸安定性が向上したFc結合性タンパク質、当該タンパク質の製造方法および当該タンパク質を用いた抗体吸着剤
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230613BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230613BHJP
C07K 14/735 20060101ALI20230613BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230613BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230613BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20230613BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230613BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20230613BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20230613BHJP
B01J 20/24 20060101ALI20230613BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20230613BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C07K14/735
C12N1/21
C12P21/02 C
C07K17/00
C07K16/00
C07K1/22
B01J20/281 R
B01J20/24 C
B01D15/00 M
G01N33/531 A
(21)【出願番号】P 2019003038
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2018029994
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018154007
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高山 真澄
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 陽介
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/199154(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/041303(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/111393(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056374(WO,A1)
【文献】GenPept, [online], Accession NO: NP_001129691.1, low affinity immunoglobulin gamma Fc region receptor II-a isoform 1 precursor [Homo sapiens], 18-JAN-2018 uploaded,Internet, [retrieved on 2023.02.22],<URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/210031822?sat=46&satkey=135765515>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(iv)~(vi)から選択される、Fc結合性タンパク質:
(iv)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(v)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換以外に1
から10個の位置での1
から10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質
(ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換」とは配列番号5においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換および190番目のロイシンのセリンへの置換であり、配列番号7においては配列番号2の190番目のロイシンのセリンへの置換であり、配列番号13においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換および69番目のグルタミンのロイシンへの置換であり、配列番号17においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換および123番目のスレオニンのプロリンへの置換であり、配列番号19においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換および69番目のグルタミンのロイシンへの置換であり、配列番号23においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換および83番目のプロリンのロイシンへの置換であり、配列番号25においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換および83番目のプロリンのロイシンへの置換である);
(vi)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸配列に対して
90%以上の
同一性を有し、かつ前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換が残存し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質(
ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換」とは配列番号5においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換および190番目のロイシンのセリンへの置換であり、配列番号7においては配列番号2の190番目のロイシンのセリンへの置換であり、配列番号13においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換および69番目のグルタミンのロイシンへの置換であり、配列番号17においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換および123番目のスレオニンのプロリンへの置換であり、配列番号19においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換および69番目のグルタミンのロイシンへの置換であり、配列番号23においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換および83番目のプロリンのロイシンへの置換であり、配列番号25においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換および83番目のプロリンのロイシンへの置換である)。
【請求項2】
以下の(vii)~(ix)から選択される、
請求項1に記載のFc結合性タンパク質:
(vii)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(viii)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から200番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失以外に1
から10個の位置での1
から10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質
(ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失」とは配列番号35においては配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換、83番目のプロリンのロイシンへの置換および62番目のセリンの欠失である);
(ix)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から200番目までのアミノ酸配列に対して
90%以上の
同一性を有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質。
【請求項3】
以下の(x)~(xii)から選択される、請求項1
または2に記載のFc結合性タンパク質:
(x)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(xi)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から196番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失以外に1
から10個の位置での1
から10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質
(ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失」とは配列番号43においては配列番号2の配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換、83番目のプロリンのロイシンへの置換および61番目のアルギニンから65番目のセリンまでのアミノ酸残基の欠失である);
(xii)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から196番目までのアミノ酸配列に対して
90%以上の
同一性を有し、かつ前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換が残存し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質
(ここで「前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換」とは配列番号43においては配列番号2の配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換、80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換、84番目のセリンのスレオニンへの置換、90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換、91番目のアスパラギンのセリンへの置換、125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換、190番目のロイシンのセリンへの置換、123番目のスレオニンのプロリンへの置換、45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換、69番目のグルタミンのロイシンへの置換および83番目のプロリンのロイシンへの置換である)。
【請求項4】
請求項1から
3に記載のFc結合性タンパク質をコードする
ポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項
4に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項6】
請求項
5に記載の組換えベクターで宿主を形質転換して得られる、Fc結合性タンパク質を生産可能な形質転換体。
【請求項7】
宿主が大腸菌である、請求項
6に記載の形質転換体。
【請求項8】
請求項
6または
7に記載の形質転換体を培養することによりFc結合性タンパク質を生産する工程と、得られた培養物から生産された前記Fc結合性タンパク質を回収する工程とを含む、Fc結合性タンパク質の製造方法。
【請求項9】
請求項1から
3に記載のFc結合性タンパク質を不溶性担体に固定化して得られる、抗体吸着剤。
【請求項10】
請求項
9に記載の吸着剤を充填したカラムに抗体を含む溶液を添加して当該抗体を前記吸着剤に吸着させる工程と、前記吸着剤に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させる工程とを含む、抗体の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫グロブリンG(IgG)に対し結合親和性を有するFc結合性タンパク質に関する。より詳しくは、本発明は、ヒトFcγレセプターIIaの特定位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換または欠失させることで、天然型ヒトFcγレセプターIIaよりも酸に対する安定性が向上したFc結合性タンパク質、当該タンパク質の製造方法、および当該タンパク質を不溶性担体に固定化して得られる抗体吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
Fcレセプターは、免疫グロブリン分子のFc領域に結合する受容体タンパク質であり、抗原と免疫グロブリンとの免疫複合体に結合して細胞内にシグナル伝達を行なう(非特許文献1)。特に重要な免疫グロブリンG(IgG)に結合するFcγレセプター(FcγR)は、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32a)、FcγRIIb(CD32b)、FcγRIIc(CD32c)、FcγRIIIa(CD16a)およびFcγRIIIb(CD16b)のサブタイプに分類できる(非特許文献1および2)。IgG免疫複合体とFcγRの結合は、IgGのFc領域にFcγRが結合することで起こる。個々のFcγR分子種は、IgGのFc領域認識ドメインを有し、単一種の、または同じサブタイプに属するIgGを認識する。これによって個々の免疫応答において、どのアクセサリー細胞が動員されるかが決定される(非特許文献1および2)。
【0003】
FcγRの中でもFcγRIIaはマクロファージや好中球などの細胞表面に存在しており、ヒトの免疫機構の中でも重要なADCP(抗体依存性細胞貪食)活性に関与している(非特許文献3)。ヒトFcγRIIaのアミノ酸配列(配列番号1)はUniProt(Accsession Number:P12318)などの公的データベースに登録されている。また、ヒトFcγRIIaの構造上の機能ドメイン、細胞膜を貫通するためのシグナルペプチド配列、細胞膜貫通領域の位置についても同様に公表されている。
図1にヒトFcγRIIaの構造略図を示す。なお、
図1中のアミノ酸番号は、配列番号1に記載のアミノ酸番号に対応する。すなわち、配列番号1中の1番目のメチオニンから33番目のセリンまでがシグナル配列(S)、34番目のグルタミンから217番目のグリシンまでが細胞外領域(EC)、218番目のイソロイシンから240番目のチロシンまでが細胞膜貫通領域(TM)および241番目のシステインから317番目のアスパラギンまでが細胞内領域(C)とされている。
【0004】
FcγRIIaを産業応用するためには、使用や保存などの観点から酸に対して安定性が高いことが好ましい。しかしながら、これまでにヒトFcγRIIaの酸に対する安定性を向上させる試みはなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Takai T.,Jpn.J.Clin.Immunol.,28,318-326,2005
【文献】J.Galon et al.,Eur.J.Immunol.,27,1928-1932,1997
【文献】J.O.Richards et al.,Mol.Cancer Ther.,7,2517-2527,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、天然型ヒトFcγRIIaに対して酸に対する安定性が向上したFc結合性タンパク質、当該タンパク質の製造方法、および当該タンパク質を用いた抗体吸着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、ヒトFcγRIIaにおける酸安定性向上に関与したアミノ酸残基を特定し、当該アミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換または欠失させた変異体が、酸に対して優れた安定性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本願は以下の[1]から[13]に記載の態様を包含する。
【0009】
[1]以下の(I)~(IV)から選択されるFc結合性タンパク質:
(I)配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、以下の(1)から(12)に示すいずれかのアミノ酸置換または欠失を少なくとも1つ以上有する、Fc結合性タンパク質;
(1)配列番号2の190番目のロイシンのセリンへの置換
(2)配列番号2の45番目のイソロイシンのスレオニンへの置換
(3)配列番号2の69番目のグルタミンのロイシンへの置換
(4)配列番号2の83番目のプロリンのロイシンへの置換
(5)配列番号2の123番目のスレオニンのプロリンへの置換
(6)配列番号2の42番目のプロリンのグルタミンへの置換
(7)配列番号2の63番目のプロリンのロイシンへの置換
(8)配列番号2の75番目のアスパラギンのセリンへの置換
(9)配列番号2の163番目のロイシンのヒスチジンへの置換
(10)配列番号2の179番目のアスパラギン酸のバリンへの置換
(11)配列番号2の198番目のイソロイシンのバリンへの置換
(12)配列番号2の62番目のセリンの欠失
(II)配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、前記(1)から(12)に示すいずれかのアミノ酸置換または欠失を少なくとも1つ以上有し、さらに前記(1)から(12)に示すアミノ酸置換または欠失以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有するFc結合性タンパク質;
(III)配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつ前記(1)から(12)に示すいずれかのアミノ酸置換または欠失を少なくとも1つ以上有し、かつ抗体結合活性を有するFc結合性タンパク質。
(IV)配列番号2に記載のアミノ酸配列の29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基において前記(1)から(12)に示すいずれか1以上のアミノ酸置換または欠失を有するアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、前記少なくとも1つのアミノ酸置換または欠失が残存したアミノ酸配列を含み、かつ、抗体結合活性を有するFc結合性タンパク質。
【0010】
[2]以下の(1)に示すアミノ酸置換を少なくとも有する、[1]に記載のFc結合性タンパク質。
(1)配列番号2の190番目のロイシンのセリンへの置換
[3]さらに以下に示す6箇所のアミノ酸置換を少なくとも有する、[1]または[2]に記載のFc結合性タンパク質。
配列番号2の68番目のイソロイシンのバリンへの置換
配列番号2の80番目のヒスチジンのグルタミンへの置換
配列番号2の84番目のセリンのスレオニンへの置換
配列番号2の90番目のアスパラギンのスレオニンへの置換
配列番号2の91番目のアスパラギンのセリンへの置換
配列番号2の125番目のヒスチジンのアルギニンへの置換
[4]以下の(iv)~(vi)から選択される、[1]または[2]に記載のFc結合性タンパク質:
(iv)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(v)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質;
(vi)配列番号5、7、13、17、19、23および25のいずれかに記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつ前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換が残存し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質。
【0011】
[5]以下の(vii)~(ix)から選択される、[1]から[3]のいずれかに記載のFc結合性タンパク質:
(vii)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(viii)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から200番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質;
(ix)配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から200番目までのアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質。
【0012】
[6]以下の(x)~(xii)から選択される、[1]から[3]のいずれかに記載のFc結合性タンパク質:
(x)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含む、Fc結合性タンパク質;
(xi)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から196番目までのアミノ酸残基において、前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換および欠失以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質;
(xii)配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該29番目から196番目までのアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつ前記アミノ酸配列が有するアミノ酸置換が残存し、かつ抗体結合活性を有する、Fc結合性タンパク質。
【0013】
[7][1]から[6]のいずれかに記載のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0014】
[8][7]に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【0015】
[9][8]に記載の組換えベクターで宿主を形質転換して得られる、Fc結合性タンパク質を生産可能な形質転換体。
【0016】
[10]宿主が大腸菌である、[9]に記載の形質転換体。
【0017】
[11][9]または[10]に記載の形質転換体を培養することによりFc結合性タンパク質を生産する工程と、得られた培養物から生産された前記Fc結合性タンパク質を回収する工程とを含む、Fc結合性タンパク質の製造方法。
【0018】
[12][1]から[6]のいずれかに記載のFc結合性タンパク質を不溶性担体に固定化して得られる、抗体吸着剤。
【0019】
[13][12]に記載の吸着剤を充填したカラムに抗体を含む溶液を添加して当該抗体を前記吸着剤に吸着させる工程と、前記吸着剤に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させる工程とを含む、抗体の分離方法。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明のFc結合性タンパク質は、抗体のFc領域に結合性をもつタンパク質であり、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる天然型ヒトFcγRIIaの細胞外領域を含むポリペプチドのうち、少なくとも29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を含み、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において特定位置におけるアミノ酸置換または欠失を少なくとも有するタンパク質である。なお配列番号2のうち、1番目から26番目はMalEシグナルペプチド(UniProt No.P0AEX9の1番目から26番目までのアミノ酸残基からなるオリゴペプチド)の配列であり、27番目のメチオニンおよび28番目のグリシンはリンカー配列であり、29番目から201番目はFcγRIIaの細胞外領域(すなわち配列番号1の34番目から206番目までの領域)であり、202番目から203番目はグリシンリンカーであり、204番目から209番目はヒスチジンタグである。したがって、本発明のFc結合性タンパク質は、細胞外領域のN末端側にあるシグナルペプチド領域の全てまたは一部を含んでもよいし、細胞外領域のC末端側にある細胞膜貫通領域および細胞外領域の全てまたは一部を含んでもよい。
【0022】
前記特定位置におけるアミノ酸置換または欠失は具体的には、Pro42Gln(この表記は配列番号2の42番目(配列番号1では47番目)のプロリンがグルタミンに置換されていることを表す、以下同じ)、Pro63Leu、Asn75Ser、Leu163His、Asp179Val、Leu190Ser、Ile198Val、Ile45Thr、Gln69Leu、Pro83Leu、Thr123ProおよびSer62の欠失のうち、少なくともいずれか1つ以上である。中でもLeu190Serは、酸に対する安定性が特に向上したアミノ酸置換であることから、Leu190Serのアミノ酸置換を少なくとも含むFc結合性タンパク質は、本発明のFc結合性タンパク質の好ましい態様といえる。
【0023】
なお本発明のFc結合性タンパク質は、前述した特定位置におけるアミノ酸置換または欠失を少なくとも1つ以上有していればよく、抗体結合活性を有する限り、前述した特定位置のアミノ酸置換以外に、アミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上、さらに有してもよい。前記態様の具体例として、以下の(i)から(v)に示す、抗体結合活性を有したFc結合性タンパク質があげられる。なおアミノ酸残基を欠失させる場合、タンパク質二次構造におけるループ領域が取り除かれるよう欠失させると、耐熱性が向上する点で好ましい(Manandez-Alias and P. Argos,J.Mol.Biol.,206,1989)。
(i)前述した特定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失に、Ile68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Argのアミノ酸置換をさらに有したFc結合性タンパク質
(ii)前述した特定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失に加え、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有したFc結合性タンパク質
(iii)前述した特定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失ならびにIle68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Argのアミノ酸置換に加え、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有したFc結合性タンパク質
(iv)前述した特定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失を有したポリペプチドのアミノ酸配列に対して、70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するFc結合性タンパク質であって、かつ前述した定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失が残存したFc結合性タンパク質
(v)前述した特定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失ならびにIle68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Argのアミノ酸置換を有したポリペプチドのアミノ酸配列に対して、70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するFc結合性タンパク質であって、かつ前述した定位置におけるアミノ酸置換および/または欠失ならびにIle68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Argのアミノ酸置換が残存したFc結合性タンパク質
前記(i)、(iii)および(v)に記載のIle68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Argのアミノ酸置換は、熱安定性および遺伝子組換体による生産性を向上させるアミノ酸置換である(WO2018/056374号)。したがって、前述した特定位置におけるアミノ酸置換を少なくとも1つ以上有した本発明のFc結合性タンパク質に、前記6箇所のアミノ酸置換(Ile68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91SerおよびHis125Arg)をさらに有することで、天然型FcγRIIaよりも酸に対する安定性が向上し、かつ熱安定性および遺伝子組換体による生産性も向上したFc結合性タンパク質が得られる。
【0024】
前記(ii)および(iii)において「1もしくは数個」とは、タンパク質の立体構造におけるアミノ酸残基の位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、例えば、1から50個、1から40個、1から30個、1から20個、1から10個のいずれかを意味する。また前記(ii)および(iii)に記載の「置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上」には、遺伝子が由来する微生物の個体差、種の違いなどに基づく、天然にも生じ得る変異(mutantまたはvariant)も含まれる。
【0025】
前記(iv)および(v)におけるアミノ酸配列の相同性は70%以上であればよく、それ以上の相同性(例えば、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上)を有してもよい。
【0026】
本発明のFc結合性タンパク質は、両アミノ酸の物理的性質と化学的性質またはそのどちらかが類似したアミノ酸間で置換する保守的置換をさらに有してもよい。保守的置換は、Fc結合性タンパク質に限らず一般に、置換が生じているものと置換が生じていないものとの間でタンパク質の機能が維持されることが当業者において知られている。保守的置換の一例としては、グリシンとアラニン間、アスパラギン酸とグルタミン酸間、セリンとプロリン間、またはグルタミン酸とアラニン間に生じる置換があげられる(タンパク質の構造と機能,メディカル・サイエンス・インターナショナル社,9,2005)。
【0027】
また本発明のFc結合性タンパク質は、そのN末端側またはC末端側に、夾雑物質存在下の溶液から分離する際に有用なオリゴペプチドをさらに付加してもよい。前記オリゴペプチドとしては、ポリヒスチジン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸等があげられる。さらに本発明のFc結合性タンパク質をクロマトグラフィー用の支持体等の固相に固定化する際に有用な、システインを含むオリゴペプチドを、本発明のFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側にさらに付加してもよい。Fc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に付加するオリゴペプチドの長さは、本発明のFc結合性タンパク質のIgG結合性や安定性を損なわない限り特に制限はない。前記オリゴペプチドを本発明のFc結合性タンパク質に付加させる際には、前記オリゴペプチドをコードするポリヌクレオチドを作成後、当業者に周知の方法を用いて遺伝子工学的にFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に付加させてもよいし、化学的に合成した前記オリゴペプチドを本発明のFc結合性タンパク質のN末端側またはC末端側に化学的に結合させて付加させてもよい。さらに本発明のFc結合性タンパク質のN末端側には、宿主での効率的な発現を促すためのシグナルペプチドを付加してもよい。宿主が大腸菌の場合における前記シグナルペプチドの例としては、PelB、DsbA、MalE(UniProt No.P0AEX9に記載のアミノ酸配列のうち1番目から26番目までの領域)、TorTなどといったペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドを例示できる(特開2011-097898号公報)。
【0028】
本発明のFc結合性タンパク質の好ましい態様として、以下の(a)から(i)に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを少なくとも含むFc結合性タンパク質があげられる。これらのFc結合性タンパク質は酸に対する安定性(耐酸性)が向上する点で好ましい。
【0029】
(a)FcγRIIa-m7(配列番号5に記載のアミノ酸配列のうち、29番目から201番目までのアミノ酸残基)
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
【0030】
(b)FcγRIIa-m1(配列番号7に記載のアミノ酸配列のうち、29番目から201番目までのアミノ酸残基)
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Leu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
【0031】
(c)FcγRIIa-m8B(配列番号13に記載のアミノ酸配列のうち、29番目
から201番目までのアミノ酸残基)
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
【0032】
(d)FcγRIIa-m8D(配列番号17に記載のアミノ酸配列のうち、29番目から201番目までのアミノ酸残基)
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
【0033】
(e)FcγRIIa-m10A(配列番号19に記載のアミノ酸配列のうち、29番目から201番目までのアミノ酸残基)
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile45Thr、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
【0034】
(f)FcγRIIa-m10C(配列番号23に記載のアミノ酸配列のうち、29番目から201番目までのアミノ酸残基)
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Pro83Leu、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
【0035】
(g)FcγRIIa-m11(配列番号25に記載のアミノ酸配列のうち、29番目から201番目までのアミノ酸残基)
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile45Thr、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Pro83Leu、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換を有する、ポリペプチド。
【0036】
(h)FcγRIIa-m11-Del1(配列番号35に記載のアミノ酸配列のうち、29番目から200番目までのアミノ酸残基)
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から200番目までのアミノ酸残基において、Ile45Thr、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Pro83Leu、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換、ならびにSer62の欠失を有する、ポリペプチド。
【0037】
(i)FcγRIIa-m11-Del5(配列番号43に記載のアミノ酸配列のうち、29番目から196番目までのアミノ酸残基)
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から196番目までのアミノ酸残基において、Ile45Thr、Ile68Val、Gln69Leu、His80Gln、Pro83Leu、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、Thr123Pro、His125ArgおよびLeu190Serのアミノ酸置換、ならびにArg61からSer65の欠失を有する、ポリペプチド。
【0038】
なお、配列番号5、7、13、17、19、23および25に記載のFc結合性タンパク質のうち、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニンおよび28番目のグリシンがリンカー配列であり、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでが抗体のFc領域に結合可能なポリペプチド(FcγRIIa-m7(配列番号5)、FcγRIIa-m1(配列番号7)、FcγRIIa-m8b(配列番号13)、FcγRIIa-m8d(配列番号17)、FcγRIIa-m10a(配列番号19)、FcγRIIa-m10c(配列番号23)またはFcγRIIa-m11(配列番号25))のアミノ酸配列であり、202番目および203番目のグリシンがリンカー配列であり、204番目から209番目までのヒスチジンがタグ配列である。
【0039】
また、配列番号35に記載のFc結合性タンパク質のうち、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニンおよび28番目のグリシンがリンカー配列であり、29番目のグルタミンから200番目のグルタミンまでが抗体のFc領域に結合可能なポリペプチド(FcγRIIa-m11-Del1)のアミノ酸配列であり、201番目および202番目のグリシンがリンカー配列であり、203番目から208番目までのヒスチジンがタグ配列である。
【0040】
また、配列番号43に記載のFc結合性タンパク質のうち、1番目のメチオニンから26番目のアラニンまでがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニンおよび28番目のグリシンがリンカー配列であり、29番目のグルタミンから196番目のグルタミンまでが抗体のFc領域に結合可能なポリペプチド(FcγRIIa-m11-Del5)のアミノ酸配列であり、197番目および198番目のグリシンがリンカー配列であり、199番目から204番目までのヒスチジンがタグ配列である。
【0041】
本発明のFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(以下、単に本発明のポリヌクレオチドとも表記する)の作製方法の一例として、
(1)本発明のFc結合性タンパク質のアミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換し、当該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを人工的に合成する方法や、
(2)Fc結合性タンパク質の全体または部分配列を含むポリヌクレオチドを直接人工的に、またはFc結合性タンパク質のcDNA等からPCR法といったDNA増幅法を用いて調製し、調製した当該ポリヌクレオチドを適当な方法で連結する方法、が例示できる。
【0042】
前記(1)の方法において、アミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換する際、形質転換させる宿主におけるコドンの使用頻度を考慮して変換するのが好ましい。一例として、宿主が大腸菌(Escherichia coli)の場合は、アルギニン(Arg)ではAGA/AGG/CGG/CGAが、イソロイシン(Ile)ではATAが、ロイシン(Leu)ではCTAが、グリシン(Gly)ではGGAが、プロリン(Pro)ではCCCが、それぞれ使用頻度が少ないため(いわゆるレアコドンであるため)、それらのコドンを避けるように変換すればよい。コドンの使用頻度の解析は公的データベース(例えば、かずさDNA研究所のウェブサイトにあるCodon Usage Databaseなど)を利用することによっても可能である。
【0043】
本発明のポリヌクレオチドへ変異を導入する場合、エラープローンPCR法を用いることができる。エラープローンPCR法における反応条件は、ヒトFcγRIIa(またはFc結合性タンパク質)をコードするポリヌクレオチドに所望の変異を導入できる条件であれば特に限定はなく、例えば、基質である4種類のデオキシヌクレオチド(dATP/dTTP/dCTP/dGTP)の濃度を不均一にし、MnCl2を0.01から10mM(好ましくは0.1から1mM)の濃度でPCR反応液に添加してPCRを行なうことで、ポリヌクレオチドに変異を導入できる。またエラープローンPCR法以外の変異導入方法としては、ヒトFcγRIIaの全体または部分配列を含むポリヌクレオチドに、変異原となる薬剤を接触・作用させたり、紫外線を照射したりして、ポリヌクレオチドに変異を導入して作製する方法があげられる。当該方法において変異原として使用する薬剤としては、ヒドロキシルアミン、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、亜硝酸、亜硫酸、ヒドラジン等、当業者が通常用いる変異原性薬剤を用いればよい。
【0044】
本発明のポリヌクレオチドを用いて宿主を形質転換する場合、本発明のポリヌクレオチドそのものを用いてもよいが、発現ベクター(例えば、原核細胞や真核細胞の形質転換に通常用いるバクテリオファージ、コスミドやプラスミド等)の適切な位置に本発明のポリヌクレオチドを挿入したものを用いると、より好ましい。なお当該発現ベクターは、形質転換する宿主内で安定に存在し複製できるものであれば特に制限はなく、大腸菌を宿主とする場合は、pETプラスミドベクター、pUCプラスミドベクター、pTrcプラスミドベクター、pCDFプラスミドベクター、pBBRプラスミドベクターを例示できる。
また前記適切な位置とは、発現ベクターの複製機能、所望の抗生物質マーカー、伝達性に関わる領域を破壊しない位置を意味する。前記発現ベクターに本発明のポリヌクレオチドを挿入する際は、発現に必要なプロモータといった機能性ポリヌクレオチドに連結される状態で挿入すると好ましい。当該プロモータの例として、宿主が大腸菌の場合は、trpプロモータ、tacプロモータ、trcプロモータ、lacプロモータ、T7プロモータ、recAプロモータ、lppプロモータ、さらにはλファージのλPLプロモータ、λPRプロモータ等があげられる。
【0045】
前記方法により作製した、本発明のポリヌクレオチドを挿入した発現ベクター(以下、本発明の発現ベクターとする)を用いて宿主を形質転換するには、当業者が通常用いる方法で行なえばよい。例えば、宿主としてEscherichia属に属する微生物(大腸菌JM109株、大腸菌BL21(DE3)株、大腸菌W3110株等)を選択する場合には、公知の文献(例えば、Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory,256,1992)に記載の方法等により形質転換すればよい。前述した方法で形質転換して得られた形質転換体は、適切な方法でスクリーニングすることにより、本発明のFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体(以下、本発明の形質転換体とする)を取得できる。なお、本発明のFc結合性タンパク質を発現させる宿主には特に制限はなく、一例として、動物細胞(CHO(Chinese Hamster Ovary)細胞、HEK細胞、Hela細胞、COS細胞等)、酵母(Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Hansenula polymorpha、Schizosaccharomyces japonicus、Schizosaccharomyces octosporus、Schizosaccharomyces pombe等)、昆虫細胞(Sf9、Sf21等)、大腸菌(JM109株、BL21(DE3)株、W3110株等)や枯草菌があげられる。なお動物細胞や大腸菌を宿主として用いると生産性の面で好ましく、大腸菌を宿主として用いるとさらに好ましい。
【0046】
本発明の形質転換体から、本発明の発現ベクターを調製するには、本発明の形質転換体を培養して得られる培養物からアルカリ抽出法またはQIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン社製)等の市販の抽出キットを用いて調製すればよい。本発明の形質転換体を培養し、得られた培養物から本発明のFc結合性タンパク質を回収することで、本発明のFc結合性タンパク質を製造できる。なお本明細書において培養物とは、培養された本発明の形質転換体の細胞そのもののほか、培養に用いた培地も含まれる。本発明のタンパク質製造方法で用いる形質転換体は、対象宿主の培養に適した培地で培養すればよく、宿主が大腸菌の場合は、必要な栄養源を補ったLB(Luria-Bertani)培地が好ましい培地の一例としてあげられる。なお、本発明のベクターの導入の有無により本発明の形質転換体を選択的に増殖させるために、培地に当該ベクターに含まれる薬剤耐性遺伝子に対応した薬剤を添加して培養すると好ましい。例えば、当該ベクターがカナマイシン耐性遺伝子を含んでいる場合は、培地にカナマイシンを添加すればよい。また培地には、炭素、窒素および無機塩供給源の他に、適当な栄養源を添加してもよく、所望により、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレートおよびジチオスレイトールからなる群から選択される一種類以上の還元剤を含んでもよい。さらにグリシンといった前記形質転換体から培養液へのタンパク質分泌を促す試薬を添加してもよく、具体的には、宿主が大腸菌の場合、培地に対してグリシンを2%(w/v)以下で添加すると好ましい。培養温度は宿主が大腸菌の場合、一般に10℃から40℃、好ましくは20℃から37℃、より好ましくは25℃前後であるが、発現させるタンパク質の特性により選択すればよい。培地のpHは宿主が大腸菌の場合、pH6.8からpH7.4、好ましくはpH7.0前後である。また本発明のベクターに誘導性のプロモータが含まれている場合は、本発明のFc結合性タンパク質が良好に発現できるような条件下で誘導をかけると好ましい。誘導剤としてはIPTG(isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)を例示できる。宿主が大腸菌の場合、培養液の濁度(600nmにおける吸光度)を測定し、約0.5から1.0となったときに適当量のIPTGを添加後、引き続き培養することで、Fc結合性タンパク質の発現を誘導できる。IPTGの添加濃度は0.005から1.0mMの範囲から適宜選択すればよいが、0.01から0.5mMの範囲が好ましい。IPTG誘導に関する種々の条件は当該技術分野において周知の条件で行なえばよい。
【0047】
本発明の形質転換体を培養して得られた培養物から本発明のFc結合性タンパク質を回収するには、本発明の形質転換体における本発明のFc結合性タンパク質の発現形態に適した方法で、当該培養物から分離/精製して本発明のFc結合性タンパク質を回収すればよい。例えば、培養上清に発現する場合は菌体を遠心分離操作によって分離し、得られる培養上清から本発明のFc結合性タンパク質を精製すればよい。また、細胞内(ペリプラズムを含む)に発現する場合には、遠心分離操作により菌体を集めた後、酵素処理剤や界面活性剤等を添加することにより菌体を破砕して本発明のFc結合性タンパク質を抽出した後、精製すればよい。本発明のFc結合性タンパク質を精製するには、当該技術分野において公知の方法を用いればよく、一例として液体クロマトグラフィーを用いた分離/精製があげられる。液体クロマトグラフィーには、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等があり、これらのクロマトグラフィーを組み合わせて精製操作を行なうことにより、本発明のFc結合性タンパク質を高純度に調製できる。得られた本発明のFc結合性タンパク質のIgGに対する結合活性を測定する方法としては、例えばIgGに対する結合活性をEnzyme-Linked ImmunoSorbent Assay(以下、ELISAと表記)法や表面プラズモン共鳴法などを用いて測定すればよい。結合活性の測定に使用するIgGは、ヒトIgGが好ましく、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4のいずれを用いてもよい。
【0048】
本発明のFc結合性タンパク質を不溶性担体に結合させることで、本発明の吸着剤を製造できる。前記不溶性担体には特に限定はなく、アガロース、アルギネート(アルギン酸塩)、カラゲナン、キチン、セルロース、デキストリン、デキストラン、デンプンといった多糖質を原料とした担体や、ポリビニルアルコール、ポリメタクレート、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリウレタンといった合成高分子を原料とした担体や、シリカなどのセラミックスを原料とした担体が例示できる。中でも、多糖質を原料とした担体や合成高分子を原料とした担体が不溶性担体として好ましい。前記好ましい担体の一例として、トヨパール(東ソー社製)等の水酸基を導入したポリメタクリレートゲル、Sepharose(GEヘルスケア社製)等のアガロースゲル、セルファイン(JNC社製)等のセルロースゲルがあげられる。不溶性担体の形状については特に限定はなく、粒状物または非粒状物、多孔性または非多孔性、いずれであってもよい。
【0049】
Fc結合性タンパク質を不溶性担体に固定化するには、不溶性担体にN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)活性化エステル基、エポキシ基、カルボキシル基、マレイミド基、ハロアセチル基、トレシル基、ホルミル基ハロアセトアミド等の活性基を付与し、当該活性基を介してヒトFc結合性タンパク質と不溶性担体とを共有結合させることで固定化すればよい。活性基を付与した担体は市販の担体をそのまま用いてもよいし、適切な反応条件で担体表面に活性基を導入して調製してもよい。活性基を付与した市販の担体としてはTOYOPEARL AF-Epoxy-650M、TOYOPEARL AF-Tresyl-650M(いずれも東ソー社製)、HiTrap NHS-activated HP Columns、NHS-activated Sepharose 4 Fast Flow、Epoxy-activated Sepharose 6B(いずれもGEヘルスケア社製)、SulfoLink Coupling Resin(サーモサイエンティフィック社製)が例示できる。
【0050】
一方、担体表面に活性基を導入する方法としては、担体表面に存在する水酸基やエポキシ基、カルボキシル基、アミノ基等に対して2個以上の活性部位を有する化合物の一方を反応させる方法が例示できる。当該化合物の一例のうち、担体表面の水酸基やアミノ基にエポキシ基を導入する化合物としては、エピクロロヒドリン、エタンジオールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルが例示できる。前記化合物により担体表面にエポキシ基を導入した後、担体表面にカルボキシル基を導入する化合物としては、2-メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸、6-メルカプト酪酸、グリシン、3-アミノプロピオン酸、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸を例示できる。
【0051】
担体表面に存在する水酸基やエポキシ基、カルボキシル基、アミノ基にマレイミド基を導入する化合物としては、N-(ε-マレイミドカプロン酸)ヒドラジド、N-(ε-マレイミドプロピオン酸)ヒドラジド、4-(4-N-マレイミドフェニル)酢酸ヒドラジド、2-アミノマレイミド、3-アミノマレイミド、4-アミノマレイミド、6-アミノマレイミド、1-(4-アミノフェニル)マレイミド、1-(3-アミノフェニル)マレイミド、4-(マレイミド)フェニルイソシアナート、2-マレイミド酢酸、3-マレイミドプロピオン酸、4-マレイミド酪酸、6-マレイミドヘキサン酸、N-(α―マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル、(m-マレイミドベンゾイル)N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミジル-4-(マレイミドメチル)シクロヘキサンー1-カルボニル-6-アミノヘキサン酸、スクシンイミジル-4-(マレイミドメチル)シクロヘキサンー1-カルボン酸、(p-マレイミドベンゾイル)N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、(m-マレイミドベンゾイル)N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを例示できる。
【0052】
担体表面に存在する水酸基やアミノ基にハロアセチル基を導入する化合物としては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、クロロ酢酸クロリド、ブロモ酢酸クロリド、ブロモ酢酸ブロミド、クロロ酢酸無水物、ブロモ酢酸無水物、ヨード酢酸無水物、2-(ヨードアセトアミド)酢酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、3-(ブロモアセトアミド)プロピオン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、4-(ヨードアセチル)アミノ安息香酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを例示できる。なお担体表面に存在する水酸基やアミノ基にω-アルケニルアルカングリシジルエーテルを反応させた後、ハロゲン化剤でω-アルケニル部位をハロゲン化し活性化する方法も例示できる。ω-アルケニルアルカングリシジルエーテルとしては、アリルグリシジルエーテル、3-ブテニルグリシジルエーテル、4-ペンテニルグリシジルエーテルを例示でき、ハロゲン化剤としてはN-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミドを例示できる。
【0053】
担体表面に活性基を導入する方法の別の例として、担体表面に存在するカルボキシル基に対して縮合剤と添加剤を用いて活性化基を導入する方法がある。縮合剤としては1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジアミド、カルボニルジイミダゾールを例示できる。また添加剤としてはN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)、4-ニトロフェノール、1-ヒドロキシベンズトリアゾールを例示できる。
【0054】
本発明のFc結合性タンパク質を不溶性担体に固定化する際用いる緩衝液としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid)緩衝液、HEPES(2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic acid)緩衝液、Tris緩衝液、ホウ酸緩衝液を例示できる。固定化させるときの反応温度は、5℃から50℃までの温度範囲の中から活性基の反応性や本発明のFc結合性タンパク質の安定性を考慮の上、適宜設定すればよく、好ましくは10℃から35℃の範囲である。
【0055】
本発明のFc結合性タンパク質を不溶性担体に固定化して得られる本発明の吸着剤を用いて抗体を精製するには、例えば、本発明の吸着剤を充填したカラムに抗体を含む緩衝液をポンプ等の送液手段を用いて添加することで、抗体を本発明の吸着剤に特異的に吸着さ
せた後、適切な溶出液をカラムに添加することで抗体を溶出すればよい。なお本発明の吸着剤で精製可能な抗体は、Fc結合性タンパク質と親和性を有する抗体のFc領域を少なくとも含んだ抗体であればよい。一例として、抗体医薬に用いる抗体として一般的に用いられているキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体やそれらのアミノ酸置換体があげられる。また二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)、抗体のFc領域と他のタンパク質との融合抗体、抗体のFc領域と薬物との複合体(ADC)などの人工的に構造改変した抗体であっても、本発明の吸着剤で精製できる。また抗体を含む緩衝液をカラムに添加する前に、適切な緩衝液を用いてカラムを平衡化すると、抗体をより高純度に精製できるため好ましい。緩衝液としてはリン酸緩衝液等、無機塩を成分とした緩衝液を例示でき、緩衝液のpHは、pH3.0から10.0、好ましくはpH5.0から8.0である。
【0056】
本発明の吸着剤に吸着した抗体を溶出させるには、抗体とリガンド(本発明のFc結合性タンパク質)との相互作用を弱めればよく、具体的には、緩衝液によるpH変化、カウンターペプチド、温度変化、塩濃度変化が例示できる。本発明の吸着剤に吸着した抗体を溶出させるための溶出液の具体例として、本発明の吸着剤に抗体を吸着させる際に用いた溶液よりも酸性側の緩衝液があげられる。緩衝液の種類としては酸性側に緩衝能を有するクエン酸緩衝液、グリシン塩酸緩衝液、酢酸緩衝液を例示できる。緩衝液のpHは、抗体が有する機能を損なわない範囲で設定すればよく、好ましくはpH2.5から6.0、より好ましくはpH3.0から5.0、さらに好ましくはpH3.3から4.0である。
【発明の効果】
【0057】
本発明のFc結合性タンパク質は、天然型ヒトFcγRIIaの細胞外領域中の特定位
置におけるアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換または欠失させたタンパク質である。本発明のFc結合性タンパク質は天然型ヒトFcγRIIaと比較し、酸に対する安定性が向上している。そのため、本発明のFc結合性タンパク質は抗体(イムノグロブリン)を分離するための吸着剤のリガンドとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】ヒトFcγRIIaの概略図である。図中の数字は配列番号1に記載のアミノ酸配列の位置を示している。図中のSはシグナル配列、ECは細胞外領域、TMは細胞膜貫通領域、Cは細胞内領域を示している。
【
図2】配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質(Control)に対して1箇所または2箇所アミノ酸置換したFc結合性タンパク質の耐酸性を評価した結果を示す図である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0060】
実施例1 Fc結合性タンパク質への変異導入およびライブラリーの作製
配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質を発現する発現ベクターpET-Am6のうち、前記Fc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド部分(配列番号4)に対し、エラープローンPCRによるランダム変異導入を施した。なお配列番号3に記載の配列からなるFc結合性タンパク質は、配列番号2に記載の配列からなる、天然型ヒトFcγRIIaの細胞外領域を含むFc結合性タンパク質に以下に示す6箇所のアミノ酸置換を導入したものである。
配列番号2の68番目(配列番号1では73番目)のイソロイシンのバリンへの置換
配列番号2の80番目(配列番号1では85番目)のヒスチジンのグルタミンへの置換
配列番号2の84番目(配列番号1では89番目)のセリンのスレオニンへの置換
配列番号2の90番目(配列番号1では95番目)のアスパラギンのスレオニンへの置換
配列番号2の91番目(配列番号1では96番目)のアスパラギンのセリンへの置換
配列番号2の125番目(配列番号1では130番目)のヒスチジンのアルギニンへの置換
(1)前述したpET-Am6を鋳型DNAとして用い、エラープローンPCRを行なった。エラープローンPCRは、配列番号8および9に記載のプライマーを用いて、表1に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を95℃で2分間熱処理し、95℃で30秒間の第1ステップ、60℃で30秒間の第2ステップ、72℃で90秒間の第3ステップを1サイクルとする反応を35サイクル行ない、最後に72℃で7分間熱処理することで行なった。
【0061】
【0062】
(2)(1)で得られたPCR産物を精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ同制限酵素で消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションした。
【0063】
(3)ライゲーション反応終了後、反応液をヒートショック法により大腸菌BL21(DE3)株に導入し、50μg/mLのカナマイシンを含むLBプレート培地で培養(37℃で18時間)後、プレート上に形成したコロニーをランダム変異体ライブラリーとした。
【0064】
実施例2 耐酸性Fc結合性タンパク質のスクリーニング
(1)実施例1で作製したランダム変異体ライブラリー(形質転換体)を、50μg/mLのカナマイシンを含む2YT液体培地(ペプトン16g/L、酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム5g/L)200μLに接種し、96穴ディープウェルプレートを用いて、30℃で一晩振とう培養した。
【0065】
(2)培養後、5μLの培養液を500μLの0.05mMのIPTG(isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)、0.3%(w/v)のグリシンおよび50μg/mLのカナマイシンを含む2YT液体培地に植え継ぎ、96穴ディープウェルプレートを用いて、さらに20℃で一晩振とう培養した。
【0066】
(3)培養後、遠心操作によって得られた各Fc結合性タンパク質を含む培養上清20μLと0.1Mのグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)80μLを混合し、25℃で24時間静置した。
【0067】
(4)(3)の酸処理を行なったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性と、(3)の酸処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、それぞれ下記に示すELISA法にて測定し、酸処理を行なった時のFc結合性タンパク質の抗体結合活性を、酸処理を行なわなかったときのFc結合性タンパク質の抗体結合活性で除することで、残存活性を算出した。
(4-1)ヒト抗体であるガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製)を、96穴マイクロプレートのウェルに1μg/wellで固定化し(4℃で18時間)、固定化終了後、2%(w/v)のSKIM MILK(BD社製)および150mMの塩化ナトリウムを含んだ20mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.4)によりブロッキングした。
(4-2)洗浄緩衝液(0.05%[w/v]のTween 20、150mMのNaClを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4))で洗浄後、抗体結合活性を評価するFc結合性タンパク質を含む溶液を添加し、Fc結合性タンパク質と固定化ガンマグロブリンとを反応させた(30℃で1時間)。
(4-3)反応終了後、前記洗浄緩衝液で洗浄し、100ng/mLに希釈したAnti-6His抗体(Bethyl Laboratories社製)を100μL/wellで添加した。
(4-4)30℃で1時間反応させ、前記洗浄緩衝液で洗浄した後、TMB Peroxidase Substrate(KPL社製)を50μL/wellで添加した。1Mのリン酸を50μL/wellで添加することで発色を止め、マイクロプレートリーダー(テカン社製)にて450nmの吸光度を測定した。
【0068】
(5)(4)の方法で約700株の形質転換体を評価し、その中から配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質と比較して酸安定性が向上したFc結合性タンパク質を発現する形質転換体を選択した。前記選択した形質転換体を培養し、QIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン社製)を用いて発現ベクターを調製した。
【0069】
(6)得られた発現ベクターに挿入されたFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド領域の配列をチェーンターミネータ法に基づくBig Dye Terminator Cycle Sequencing FS read Reaction kit(PEアプライドバイオシステム社製)を用いてサイクルシークエンス反応に供し、全自動DNAシークエンサーABI Prism 3700 DNA analyzer(PEアプライドバイオシステム社製)にて塩基配列を解析し、アミノ酸の変異箇所を特定した。なお当該解析の際、配列番号8または9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかをシークエンス用プライマーとして使用した。
【0070】
(5)で選択した形質転換体が発現するFc結合性タンパク質の、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるFc結合性タンパク質(Control)に対するアミノ酸置換位置および酸処理後の残存活性(%)をまとめたものを
図2に示す。Pro42Gln(この表記は配列番号2の42番目(配列番号1では47番目)のプロリンがグルタミンに置換されていることを表す、以下同じ)、Pro63Leu、Asn75Ser、Leu163His、Asp179Val、Leu190Ser、Ile198Val、Ile45Thr、Gln69Leu、Pro83LeuまたはThr123Proのアミノ酸置換を導入したFc結合性タンパク質は、Controlと比較し、酸安定性が向上していることがわかる。したがって、ヒトFcγRIIaの細胞外領域において、前記11箇所のアミノ酸置換のうち少なくともいずれか1つ以上有することで、酸安定性(耐酸性)が向上することがわかる。中でもLeu190Serは、残存活性が最も高いことから、ヒトFcγRIIaの細胞外領域において、少なくともLeu190Serのアミノ酸置換を有したFc結合性タンパク質は、酸安定性(耐酸性)が特に向上することがわかる。
【0071】
本実施例で取得した、酸安定性が向上したFc結合性タンパク質のうち、Leu190Serのアミノ酸置換を有したFc結合性タンパク質のアミノ酸配列を配列番号5に、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号6に、それぞれ示す。なお、配列番号5において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニン(Met)および28番目のグリシン(Gly)までがリンカー配列であり、29番目のグルタミン(Gln)から201番目の(Gln)までがFc領域に結合可能なポリペプチド(FcγRIIa-m7)、202番目および203番目までのグリシン(Gly)がリンカー配列であり、204番目から209番目のヒスチジン(His)がタグ配列である。またFcγRIIa-m7は、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、29番目のグルタミンから201番目のグルタミンまでのアミノ酸残基であり、ただし当該29番目から201番目までのアミノ酸残基において、Ile68Val、His80Gln、Ser84Thr、Asn90Thr、Asn91Ser、His125ArgおよびLeu190Serのア
ミノ酸置換を有する、ポリペプチドである。
【0072】
実施例3 さらなるアミノ酸置換の導入(その1)
実施例2で判明したFc結合性タンパク質の酸安定性向上に関与するアミノ酸置換を、FcγRIIa-m7にさらに導入することで、さらなる酸安定性向上を図った。アミノ酸置換の導入(集積)は主にPCRを用いて行ない、以下の(a)から(d)に示す4種類のポリペプチドを作製した。
(a)FcγRIIa-m7に対し、さらにIle45Thrのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m8Aと命名)
(b)FcγRIIa-m7に対し、さらにGln69Leuのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m8Bと命名)
(c)FcγRIIa-m7に対し、さらにPro83Leuのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m8Cと命名)
(d)FcγRIIa-m7に対し、さらにThr123Proのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m8Dと命名)
以下、各Fc結合性タンパク質の作製方法を詳細に説明する。
【0073】
(a)FcγRIIa-m8A
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中からIle45Thrを選択し、FcγRIIa-m7に集積したFcγRIIa-m8Aを作製した。具体的には、実施例2で得られたFcγRIIa-m7をコードするポリヌクレオチドに対して、Ile45Thrを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m8Aを作製した。
(a-1)実施例2で取得した、FcγRIIa-m7を含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号6)を鋳型とし、配列番号8および配列番号27に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCRを行なった。PCRは表2に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を98℃で5分間熱処理し、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行ない、最後に72℃で5分間熱処理することで行なった。増幅したPCR産物をアガロースゲル電気泳動に供し、そのゲルからQIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン製)を用いて精製した。精製したPCR産物をm8A-Fと命名した。
【0074】
【0075】
(a-2)(a-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号26および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8A-Sと命名した。
(a-3)(a-1)および(a-2)で得られた2種類のPCR産物(m8A-F、m8A-S)を混合し、表3に示す組成の反応液を調製した。当該反応液を98℃で5分間熱処理後、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を5サイクル行なうPCRを行ない、m8A-Fとm8A-Rを連結したPCR産物m8A-FLを得た。
【0076】
【0077】
(a-4)(a-3)で得られたPCR産物m8A-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとしてPCRを行なった。PCRは表4に示す組成の反応液を調製後、当該反応液を98℃で5分間熱処理し、98℃で10秒間の第1ステップ、55℃で5秒間の第2ステップ、72℃で1分間の第3ステップを1サイクルとする反応を30サイクル行なった。これによりFcγRIIa-m8Aをコードするポリヌクレオチドを作製した。
【0078】
【0079】
(a-5)(a-4)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(a-6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに一か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m8Aをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-m8Aを得た。
(a-7)pET-m8のヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
【0080】
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcγRIIa-m8Aのアミノ酸配列を配列番号11に、前記FcγRIIa-m8Aをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号10に示す。なお、配列番号11において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニン(Met)から28番目のグリシン(Gly)までがリンカー配列であり、29番目のグルタミン(Gln)から201番目のグルタミン(Gln)までがFcγRIIa-m8Aのアミノ酸配列(配列番号1の34番目から206番目までの領域に相当)、202番目および203番目のグリシン(Gly)がリンカー配列であり、204番目から209番目のヒスチジン(His)がタグ配列である。
【0081】
(b)FcγRIIa-m8B
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中からGln69Leuを選択し、FcγRIIa-m7に集積したFcγRIIa-m8Bを作製した。具体的には、実施例2で得られたFcγRIIa-m7をコードするポリヌクレオチドに対して、Gln69Leuを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m8Bを作製した。
(b-1)実施例2で取得した、FcγRIIa-m7を含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号6)を鋳型とし、配列番号8および配列番号29に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8B-Fと命名した。
(b-2)(b-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号28および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8B-Sと命名した。
(b-3)(b-1)で得られたm8B-Fおよび(b-2)で得られたm8B-SをPCR産物とした他は、(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m8B-Fとm8B-Sを連結したPCR産物m8B-FLを得た。
(b-4)(b-3)で得られたPCR産物m8B-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m8Bをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(b-5)(b-4)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(b-6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに一か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m8Bをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m8Bを得た。
(b-7)pET-FcγRIIa-m8Bのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
【0082】
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcγRIIa-m8Bのアミノ酸配列を配列番号13に、前記FcγRIIa-m8Bをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号12に示す。なお、配列番号13において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニン(Met)から28番目のグリシン(Gly)までがリンカー配列であり、29番目のグルタミン(Gln)から201番目のグルタミン(Gln)までがFcγRIIa-m8Bのアミノ酸配列(配列番号1の34番目から206番目までの領域に相当)、202番目および203番目のグリシン(Gly)がリンカー配列であり、204番目から209番目のヒスチジン(His)がタグ配列である。
【0083】
(c)FcγRIIa-m8C
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中からPro83Leuを選択し、FcγRIIa-m7に集積したFcγRIIa-m8Cを作製した。具体的には、実施例2で得られたFcγRIIa-m7をコードするポリヌクレオチドに対して、Pro83Leuを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m8Cを作製した。
(c-1)実施例2で取得した、FcγRIIa-m7を含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号6)を鋳型とし、配列番号8および配列番号31に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8C-Fと命名した。
(c-2)(c-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号30および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8C-Sと命名した。
(c-3)(c-1)で得られたm8C-Fおよび(c-2)で得られたm8C-SをPCR産物とした他は、(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m8C-Fとm8C-Sを連結したPCR産物m8C-FLを得た。
(c-4)(c-3)で得られたPCR産物m8C-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m8Cをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(c-5)(c-4)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(c-6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに一か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m8Cをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m8Cを得た。
(c-7)pET-FcγRIIa-m8Cのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
【0084】
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcγRIIa-m8Cのアミノ酸配列を配列番号15に、前記FcγRIIa-m8Cをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号14に示す。なお、配列番号15において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニン(Met)から28番目のグリシン(Gly)までがリンカー配列であり、29番目のグルタミン(Gln)から201番目のグルタミン(Gln)までがFcγRIIa-m8Cのアミノ酸配列(配列番号1の34番目から206番目までの領域に相当)、202番目および203番目のグリシン(Gly)がリンカー配列であり、204番目から209番目のヒスチジン(His)がタグ配列である。
【0085】
(d)FcγRIIa-m8D
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中からThr123Proを選択し、FcγRIIa-m7に集積したFcγRIIa-m8Dを作製した。具体的には、実施例2で得られたFcγRIIa-m7をコードするポリヌクレオチドに対して、Thr123Proを生じさせる変異導入を行なうでFcγRIIa-m8Dを作製した。
(d-1)実施例2で取得した、FcγRIIa-m7を含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号6)を鋳型とし、配列番号8および配列番号33に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8D-Fと命名した。
(d-2)(d-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号32および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm8D-Sと命名した。
(d-3)(d-1)で得られたm8C-Fおよび(d-2)で得られたm8C-SをPCR産物とした他は、(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m8D-Fとm8D-Sを連結したPCR産物m8D-FLを得た。
(d-4)(d-3)で得られたPCR産物m8D-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m8Dをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(d-5)(d-4)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(d-6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに一か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m8Dをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m8Dを得た。
(d-7)pET-FcγRIIa-m8Dのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
【0086】
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcγRIIa-m8Dのアミノ酸配列を配列番号17に、前記FcγRIIa-m8Dをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号16に示す。なお、配列番号17において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニン(Met)から28番目のグリシン(Gly)までがリンカー配列であり、29番目のグルタミン(Gln)から201番目のグルタミン(Gln)までがFcγRIIa-m8Dのアミノ酸配列(配列番号1の34番目から206番目までの領域に相当)、202番目および203番目のグリシン(Gly)がリンカー配列であり、204番目から209番目のヒスチジン(His)がタグ配列である。
【0087】
実施例4 Fc結合性タンパク質の酸安定性評価(その1)
(1)FcγRIIa-m6、ならびに実施例3で作製したFcγRIIa-m8A、FcγRIIa-m8B、FcγRIIa-m8CおよびFcγRIIa-m8Dを発現する形質転換体を、それぞれ50μg/mLのカナマイシンを含む3mLの2YT液体培地(ペプトン16g/L、酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム5g/L)に接種し、37℃で一晩、好気的に振とう培養することで前培養を行なった。
【0088】
(2)50μg/mLのカナマイシンを添加した20mLの2YT液体培地に前培養液を200μL接種し、37℃で好気的に振とう培養を行なった。
【0089】
(3)培養開始1.5時間後、培養温度を20℃に変更して30分間振とう培養した。その後、終濃度0.01mMとなるようIPTGを添加し、引き続き20℃で一晩、好気的に振とう培養を行なった。
【0090】
(4)培養終了後、遠心分離により集菌し、BugBuster Protein extraction kit(タカラバイオ製)を用いてタンパク質抽出液を調製した。
【0091】
(5)(4)で調製したタンパク質抽出液中のFcγRIIa-m6、FcγRIIa-m8A、FcγRIIa-m8B、FcγRIIa-m8CおよびFcγRIIa-m8Dの抗体結合活性を、実施例2(4)に記載のELISA法によって測定した。このとき、精製し定量したFcγRIIa-m6を用いて検量線を作製し、タンパク質濃度測定を行なった。
【0092】
(6)各Fc結合性タンパク質の濃度が10μg/mLとなるよう純水で希釈後、前記希釈した溶液50μLと20mMグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)溶液50μLとを混合し、30℃で24時間静置することで酸処理を行なった。その後、1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を4倍量加えることで中和し、Fc結合性タンパク質の抗体結合活性を、実施例2(4)に記載のELISA法によって測定した。
【0093】
(7)酸処理を行なった場合の抗体結合活性を、酸処理を行わなかったときの抗体結合活性で除することによって、残存活性を算出し、酸安定性を評価した。
【0094】
結果を表5に示す。実施例3で作製したFc結合性タンパク質のうち、FcγRIIa-m8BおよびFcγRIIa-m8DはFcγRIIa-m6と比較して残存活性が高いことから、FcγRIIa-m6に比べて酸安定性が向上していることが確認された。
【0095】
【0096】
実施例5 さらなるアミノ酸置換の導入(その2)
実施例2で判明したFc結合性タンパク質の酸安定性向上に関与するアミノ酸置換を、FcγRIIa-m8Dにさらに導入することで、さらなる酸安定性向上を図った。アミノ酸置換の導入(集積)は、主にPCRを用いて行ない、以下の(a)から(c)に示す3種類のポリペプチドを作製した。
(a)FcγRIIa-m8Dに対し、さらにIle45ThrおよびGln69Leuのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m10Aと命名)
(b)FcγRIIa-m8Dに対し、さらにIle45ThrおよびPro83Leuのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m10Bと命名)
(c)FcγRIIa-m8Dに対し、さらにGln69LeuおよびPro83Leuのアミノ酸置換を導入したポリペプチド(FcγRIIa-m10Cと命名)
以下、各Fc結合性タンパク質の作製方法を詳細に説明する。
【0097】
(a)FcγRIIa-m10A
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Ile45ThrおよびGln69Leuを選択し、FcγRIIa-m8Dに集積したFcγRIIa-m10Aを作製した。具体的には、実施例3(d)で得られたFcγRIIa-m8Dをコードするポリヌクレオチドに対して、Ile45ThrおよびGln69Leuを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m10Aを作製した。
(a-1)実施例3(d)で取得した、FcγRIIa-m8Dを含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号16)を鋳型とし、配列番号8および配列番号27に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10A-Fと命名した。
(a-2)(a-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号26および配列番号29に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10A-Sと命名した。
(a-3)(a-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号28および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10A-Tと命名した。
(a-4)(a-1)で得られたm10A-F、(a-2)で得られたm10A-Sおよび(a-3)で得られたm10A-TをPCR産物とした他は、実施例3(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m10A-F、m10A-Sおよびm10A-Tを連結したPCR産物m10A-FLを得た。
(a-5)(a-4)で得られたPCR産物m10A-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m10Aをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(a-6)(a-5)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(a-7)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに三か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m10Aをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m10Aを得た。
(a-8)pET-FcγRIIa-m10Aのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
【0098】
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcγRIIa-m10Aのアミノ酸配列を配列番号19に、前記FcγRIIa-m10Aをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号18に示す。なお、配列番号19において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニン(Met)から28番目のグリシン(Gly)までがリンカー配列であり、29番目のグルタミン(Gln)から201番目のグルタミン(Gln)までがFcγRIIa-m10Aのアミノ酸配列(配列番号1の34番目から206番目までの領域に相当)、202番目および203番目のグリシン(Gly)がリンカー配列であり、204番目から209番目のヒスチジン(His)がタグ配列である。
【0099】
(b)FcγRIIa-m10B
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Ile45ThrおよびPro83Leuを選択し、FcγRIIa-m8Dに集積したFcγRIIa-m10Bを作製した。具体的には、実施例3(d)で得られたFcγRIIa-m8Dをコードするポリヌクレオチドに対して、Ile45ThrおよびPro83Leuを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m10Bを作製した。
(b-1)実施例3(d)で取得した、FcγRIIa-m8Dを含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号16)を鋳型とし、配列番号8および配列番号27に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10B-Fと命名した。
(b-2)(b-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号26および配列番号31に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10B-Sと命名した。
(b-3)(b-2)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号30および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10B-Tと命名した。
(b-4)(b-1)で得られたm10B-F、(b-2)で得られたm10B-Sおよび(b-3)で得られたm10B-TをPCR産物とした他は、実施例3(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m10B-F、m10B-Sおよびm10B-Tを連結したPCR産物m10B-FLを得た。
(b-5)(b-4)で得られたPCR産物m10B-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m10Bをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(b-6)(b-5)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(b-7)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに三か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m
10Bをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m10Bを得た。
(b-8)pET-FcγRIIa-m10Bのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
【0100】
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcγRIIa-m10Bのアミノ酸配列を配列番号21に、前記FcγRIIa-m10Bをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号20に示す。なお、配列番号21において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニン(Met)から28番目のグリシン(Gly)までがリンカー配列であり、29番目のグルタミン(Gln)から201番目のグルタミン(Gln)までがFcγRIIa-m10Bのアミノ酸配列(配列番号1の34番目から206番目までの領域に相当)、202番目および203番目のグリシン(Gly)がリンカー配列であり、204番目から209番目のヒスチジン(His)がタグ配列である。
【0101】
(c)FcγRIIa-m10C
実施例2で明らかとなった酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Gln69LeuおよびPro83Leuを選択し、FcγRIIa-m8Dに集積したFcγRIIa-m10Cを作製した。具体的には、実施例3(d)で得られたFcγRIIa-m8Dをコードするポリヌクレオチドに対して、Gln69LeuおよびPro83Leuを生じさせる変異導入を行なうことでFcγRIIa-m10Cを作製した。
(c-1)実施例3(d)で取得した、FcγRIIa-m8Dを含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号16)を鋳型とし、配列番号8および配列番号29に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10C-Fと命名した。
(c-2)(c-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号28および配列番号31に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10C-Sと命名した。
(c-3)(c-1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号30および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様の方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm10C-Tと命名した。
(c-4)(c-1)で得られたm10C-F、(c-2)で得られたm10C-Sおよび(c-3)で得られたm10C-TをPCR産物とした他は、実施例3(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m10C-Fとm10C-S、およびm10C-Tを連結したPCR産物m10C-FLを得た。
(c-5)(c-4)で得られたPCR産物m10C-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m10Cをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(c-6)(c-5)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(c-7)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに三か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m10Cをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m10Cを得た。
(c-8)pET-FcγRIIa-m10Cのヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
【0102】
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcγRIIa-m10Cのアミノ酸配列を配列番号23に、前記FcγRIIa-m10Cをコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号22に示す。なお、配列番号23において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニン(Met)から28番目のグリシン(Gly)までがリンカー配列であり、29番目のグルタミン(Gln)から201番目のグルタミン(Gln)までがFcγRIIa-m10Cのアミノ酸配列(配列番号1の34番目から206番目までの領域に相当)、202番目および203番目のグリシン(Gly)がリンカー配列であり、204番目から209番目のヒスチジン(His)がタグ配列である。
【0103】
実施例6 さらなるアミノ酸置換の導入(その3)
実施例2で判明したFc結合性タンパク質の酸安定性向上に関与するアミノ酸置換の中から、Ile45Thr、Gln69LeuおよびPro83Leuを選択し、FcγRIIa-m8Dにさらに導入することで、さらなる酸安定性向上を図った。具体的には、実施例5(a)で得られたFcγRIIa-m10Aをコードするポリヌクレオチドに対して、Pro83Leuを生じさせる変異導入を行なうことで作製した(FcγRIIa-m11と命名)。以下、FcγRIIa-m11の作製方法を詳細に説明する。
【0104】
(1)実施例5(a)で取得した、FcγRIIa-m10Aを含んだFc結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号18)を鋳型とし、配列番号8および配列番号31に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm11-Fと命名した。
【0105】
(2)(1)と同じポリヌクレオチドを鋳型とし、配列番号30および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-1)と同様な方法でPCRおよびPCR産物の精製を行なった。精製したPCR産物をm11-Sと命名した。
【0106】
(3)(1)で得られたm11-Fおよび(2)で得られたm11-SをPCR産物とした他は、実施例3(a-3)と同様な方法でPCRを行ない、m11-Fとm11-Sを連結したPCR産物m11-FLを得た。
【0107】
(4)(3)で得られたPCR産物m11-FLを鋳型とし、配列番号8および配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドをPCRプライマーとした他は、実施例3(a-4)と同様な方法でPCRを行なった。これによりFcγRIIa-m11をコードするポリヌクレオチドを作製した。
【0108】
(5)(4)で得られたポリヌクレオチドを精製後、制限酵素NcoIとHindIIIで消化し、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
【0109】
(6)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養した。回収した菌体(形質転換体)からプラスミドを抽出することで、FcγRIIa-m7に対してさらに四か所アミノ酸置換したポリペプチドである、FcγRIIa-m11をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドpET-FcγRIIa-m11を得た。
【0110】
(7)pET-FcγRIIa-m11のヌクレオチド配列の解析を、実施例2(6)と同様の方法で行なった。
【0111】
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加したFcγRIIa-m11のアミノ酸配列を配列番号25に、前記FcγRIIa-m11をコードするポリヌクレオチドの配列を配列番号24に示す。なお、配列番号25において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニン(Met)から28番目のグリシン(Gly)までがリンカー配列であり、29番目のグルタミン(Gln)から201番目のグルタミン(Gln)までがFcγRIIa-m11のアミノ酸配列(配列番号1の34番目から206番目までの領域に相当)、202番目および203番目のグリシン(Gly)がリンカー配列であり、204番目から209番目のヒスチジン(His)がタグ配列である。
【0112】
実施例7 Fc結合性タンパク質の酸安定性評価(その2)
(1)FcγRIIa-m6、実施例5で作製したFcγRIIa-m10A、FcγRIIa-m10BおよびFcγRIIa-m10C、ならびに実施例6で作製したFcγIIa-m11を発現する形質転換体を、実施例4(1)から(4)と同様な方法で培養し抽出することで、これらタンパク質を調製した。
【0113】
(2)(1)で調製したタンパク質抽出液中のFcγRIIa-m6、3種類のFcγRIIa-m10、およびFcγRIIa-m11の抗体結合活性を、実施例2(4)に記載のELISA法によって測定した。このとき、精製し定量したFcγRIIa-m6を用いて検量線を作製し、タンパク質濃度測定を行なった。
【0114】
(3)各Fc結合性タンパク質の濃度が10μg/mLとなるよう純水で希釈後、前記希釈した溶液50μLと20mMグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)溶液50μLとを混合し、30℃で24時間静置することで酸処理を行なった。その後、1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を4倍量加えることで中和し、Fc結合性タンパク質の抗体結合活性を、実施例2(4)に記載のELISA法によって測定した。
【0115】
(4)酸処理を行なった場合の抗体結合活性を、酸処理を行わなかったときの抗体結合活性で除することによって、残存活性を算出し、酸安定性を評価した。
【0116】
結果を表6に示す。FcγRIIa-m10A、FcγRIIa-m10CおよびFcγRIIa-m11はFcγRIIa-m6と比較して残存活性が高いことから、FcγRIIa-m6に比べて酸安定性が向上していることが確認された。中でもFcγRIIa-m11は残存活性が95.3%と高く、酸安定性が特に向上したFc結合性タンパク質といえる。
【0117】
【0118】
実施例8 ループ領域にあるアミノ酸残基の欠失
さらなる酸安定性向上のため、公知データベースに登録されているFcγRIIaの結晶構造データ(PDB ID:1FCG)の知見に基づき、FcγRIIaにおけるループ領域に位置しているアミノ酸残基を欠失させた。具体的には、下記(a)から(j)に示す、実施例6で得られたFcγRIIa-m11のうち、ループ領域(配列番号25の58番目のグルタミンから67番目のセリンまでの領域)の一部または全てのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質を下記の方法で作製した。
(a)FcγRIIa-m11のうち、62番目のセリンを欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del1と命名)
(b)FcγRIIa-m11のうち、62番目のセリンおよび64番目のグルタミン酸を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del2と命名)
(c)FcγRIIa-m11のうち、62番目のセリンから64番目のグルタミン酸までのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del3と命名)
(d)FcγRIIa-m11のうち、61番目のアルギニンから64番目のグルタミン酸までのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del4と命名)
(e)FcγRIIa-m11のうち、61番目のアルギニンから65番目のセリンまでのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del5と命名)
(f)FcγRIIa-m11のうち、60番目のアラニンから65番目のセリンまでのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del6と命名)
(g)FcγRIIa-m11のうち、59番目のグリシンから65番目のセリンまでのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del7と命名)
(h)FcγRIIa-m11のうち、59番目のグリシンから66番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del8と命名)
(i)FcγRIIa-m11のうち、59番目のグリシンから67番目のセリンまでのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del9と命名)
(j)FcγRIIa-m11のうち、58番目のグルタミンから67番目のセリンまでのアミノ酸残基を欠失させたFc結合性タンパク質(FcγRIIa-m11-Del10と命名)
(1)前記10種類のFc結合性タンパク質欠失体を含んだポリヌクレオチド((a)FcγRIIa-m11-Del1:配列番号34、(b)FcγRIIa-m11-Del2:配列番号36、(c)FcγRIIa-m11-Del3:配列番号38、(d)FcγRIIa-m11-Del4:配列番号40、(e)FcγRIIa-m11-Del5:配列番号42、(f)FcγRIIa-m11-Del6:配列番号44、(g)FcγRIIa-m11-Del7:配列番号46、(h)FcγRIIa-m11-Del8:配列番号48、(i)FcγRIIa-m11-Del9:配列番号50、(j)FcγRIIa-m11-Del10:配列番号52)を人工遺伝子合成により作製した(ファスマック社に依頼)。
【0119】
(2)(1)で作製したポリヌクレオチドを、制限酵素NcoIとHindIIIで消化した発現ベクターpETMalE(特開2011-206046号公報)にライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
【0120】
(3)得られた形質転換体を、実施例4(1)から(4)と同様な方法で培養し抽出することで、これらタンパク質を調製した。
【0121】
シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加した(a)FcγRIIa-m11-Del1のアミノ酸配列を配列番号35に、シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加した(b)FcγRIIa-m11-Del2のアミノ酸配列を配列番号37に、シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加した(c)FcγRIIa-m11-Del3のアミノ酸配列を配列番号39に、シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加した(d)FcγRIIa-m11-Del4のアミノ酸配列を配列番号41に、シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加した(e)FcγRIIa-m11-Del5のアミノ酸配列を配列番号43に、シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加した(f)FcγRIIa-m11-Del6のアミノ酸配列を配列番号45に、シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加した(g)FcγRIIa-m11-Del7のアミノ酸配列を配列番号47に、シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加した(h)FcγRIIa-m11-Del8のアミノ酸配列を配列番号49に、シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加した(i)FcγRIIa-m11-Del9のアミノ酸配列を配列番号51に、シグナル配列およびポリヒスチジンタグを付加した(j)FcγRIIa-m11-Del10のアミノ酸配列を配列番号53に、それぞれ示す。なおこれら配列において、1番目のメチオニン(Met)から26番目のアラニン(Ala)までがMalEシグナルペプチドであり、27番目のメチオニン(Met)から28番目のグリシン(Gly)までがリンカー配列であり、C末端側ヒスチジン(His)6残基がタグ配列であり、C末端から7番目および8番目のグリシン(Gly)がリンカー配列であり、その他の領域がFc領域に結合可能なポリペプチド(FcγRIIa-m11-Del1、FcγRIIa-m11-Del2、FcγRIIa-m11-Del3、FcγRIIa-m11-Del4、FcγRIIa-m11-Del5、FcγRIIa-m11-Del6、FcγRIIa-m11-Del7、FcγRIIa-m11-Del8、FcγRIIa-m11-Del9またはFcγRIIa-m11-Del10)である。
【0122】
実施例9 Fc結合性タンパク質の酸安定性評価(その3)
(1)実施例6で作製したFcγRIIa-m11を発現する形質転換体を、実施例4(1)から(4)と同様な方法で培養し抽出することでタンパク質を調製した。
【0123】
(2)(1)および実施例8で調製したタンパク質抽出液中の抗体結合活性を、実施例2(4)に記載のELISA法によって測定した。このとき、精製し定量したFcγRIIa-m6を用いて検量線を作製し、タンパク質濃度測定を行なった。なお、FcγRIIa-m11-Del8、同Del9および同Del10は、タンパク質発現量が不十分のため、タンパク質濃度測定ができなかった。
【0124】
(3)各Fc結合性タンパク質の濃度が10μg/mLとなるよう純水で希釈後、前記希釈した溶液50μLと20mMグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)溶液50μLとを混合し、30℃で72時間静置することで酸処理を行なった。その後、1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を4倍量加えることで中和し、Fc結合性タンパク質の抗体結合活性を、実施例2(4)に記載のELISA法によって測定した。
【0125】
(4)酸処理を行なった場合の抗体結合活性を、酸処理を行なわなかったときの抗体結合活性で除することにより、残存活性を算出し、酸安定性を評価した。
【0126】
結果を表7に示す。FcγRIIa-m11-Del1およびFcγRIIa-m11-Del5はFcγRIIa-m11と比較して72時間処理後の残存活性が高いことから、FcγRIIa-m11に比べて長期間における酸安定性が向上していることが確認された。
【0127】
【配列表】