(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料
(51)【国際特許分類】
C04B 41/63 20060101AFI20230613BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230613BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C04B41/63
C08F290/06
E04G23/02 A
(21)【出願番号】P 2019051104
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】入江 博美
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-095002(JP,A)
【文献】特開2005-008717(JP,A)
【文献】特開2018-009155(JP,A)
【文献】特開昭62-036085(JP,A)
【文献】特開2001-270016(JP,A)
【文献】特開2006-328354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/63
E04G 23/02
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート樹脂(A)、(メタ)アクリル単量体(B)、光重合開始剤(C)、及びワックス(D)を含有する活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料であって、
前記(メタ)アクリレート樹脂(A)が、ウレタン(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含むものであり、前記(メタ)アクリレート樹脂(A)100質量部に対して、前記(メタ)アクリル単量体(B)が30~300質量部であり、前記光重合開始剤(C)が0.1~10質量部の範囲であり、前記ワックス(D)が0.1~5質量部の範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート樹脂(A)の重量平均分子量が400~15,000の範囲である請求項
1記載の活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外コンクリート構造物の保護材料には、短時間で施工を完了できる速硬化性、厚膜硬化性、柔軟性等が要求されている。このような材料としては、不飽和樹脂、光重合開始剤、増粘剤とを必須成分とする光硬化性樹脂コンパウンドを透視性光吸収フィルムで被覆した光硬化性樹脂コンパウンド等が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、この材料は現場施工の際、シートの貼付作業、及びフィルム剥離工程等を必要とするため、作業性の改善が要求されていた。そこで、硬化性に優れ、簡便な作業により、柔軟性、耐アルカリ性等に優れる塗膜が得られる材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、作業性に優れ、厚膜形成時においても硬化性に優れ、ひび割れ追従性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られるコンクリート保護材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリル単量体、光重合開始剤、及びワックスを特定の質量比で含有する活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料が、作業性に優れ、厚膜形成時においても硬化性に優れ、ひび割れ追従性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、メタ)アクリレート樹脂(A)、(メタ)アクリル単量体(B)、光重合開始剤(C)、及びワックス(D)を含有する活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料であって、前記(メタ)アクリレート樹脂(A)100質量部に対して、前記(メタ)アクリル単量体(B)が30~300質量部であり、前記光重合開始剤(C)が0.1~10質量部の範囲であり、前記ワックス(D)が0.1~5質量部の範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料は、作業性及び硬化性に優れ、ひび割れ追従性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られることから、コンクリート補修材、コンクリート用防水材などの各種土木建築材料の施工の際に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料は、(メタ)アクリレート樹脂(A)、(メタ)アクリル単量体(B)、光重合開始剤(C)、及びワックス(D)を含有する活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料であって、前記(メタ)アクリレート樹脂(A)100質量部に対して、前記(メタ)アクリル単量体(B)が30~300質量部であり、前記光重合開始剤(C)が0.1~10質量部の範囲であり、前記ワックス(D)が0.1~5質量部の範囲であるものである。
【0010】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル単量体」とは、アクリル単量体とメタクリル単量体の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリルロイル」とは、アクリロイルとメタクリロイルの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリル化合物とメタクリル化合物の一方又は両方をいう。
【0011】
前記(メタ)アクリレート樹脂(A)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレート樹脂(A)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0012】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート、及び、水酸基又はイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物を従来公知の方法で反応させて得られるものを用いることができる。
【0013】
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カプロラクトンポリオール、ブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、メチレンジフェニルジシソシアネートのホルマリン縮合体、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体等の芳香族系ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートなどを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノール型エポキシ化合物又はビスフェノール型エポキシ化合物とノボラック型エポキシ化合物とを混合したエポキシ化合物と、不飽和一塩基酸とを従来公知の方法で反応して得られるものを用いることができる。
【0018】
前記ビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールA又はビスフェノールFとの反応により得られる1分子中に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物、メチルエピクロルヒドリンとビスフェノールA又はビスフェノールFとを反応させて得られるジメチルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とエピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ化合物等を用いることができる。これらのエポキシ化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記ノボラックタイプ型エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックと、エピクロルヒドリン又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ化合物等を用いることができる。これらのエポキシ化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記不飽和一塩基酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、モノメチルマレート、モノプロピルマレート、モノブテンマレート、ソルビン酸、モノ(2-エチルヘキシル)マレート等を用いることができる。これらの不飽和一塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する飽和ポリエステル又は不飽和ポリエステルを用いることができる。前記飽和ポリエステルは、飽和二塩基酸と多価アルコールとを縮合反応させたものであり、また、前記不飽和ポリエステルとは、α,β-不飽和二塩基酸と多価アルコールとを縮合反応させたものであり、いずれも末端に(メタ)アクリロイル基を有するものである。
【0022】
前記飽和二塩基酸、α,β-不飽和二塩基酸及び多価アルコールは、前記不飽和ポリエステルの合成に用いるものと同様のものを用いることができる。
【0023】
前記ポリエステル(メタ)アクリレートの製造方法としては、飽和ポリエステル又は不飽和ポリエステルとグリシジル(メタ)アクリレートと公知の方法により反応する方法が挙げられる。
【0024】
前記(メタ)アクリレート樹脂(A)は、光照射や加熱等によってラジカル重合を進行させる(メタ)アクリロイル基を有するものである。前記(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリロイル基当量としては、低粘度、硬化性、塗膜柔軟性のバランスをより向上できることから、200~8,000g/eqの範囲が好ましく、250~5,000g/eqの範囲がより好ましい。ここで、前記(メタ)アクリロイル基当量は、原料組成から計算により求められる値である。
【0025】
前記(メタ)アクリレート樹脂(A)の重量平均分子量は、低粘度、硬化性、塗膜柔軟性のバランスをより向上できることから、400~15,000の範囲が好ましい。
【0026】
本発明における平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0027】
前記(メタ)アクリレート(A)の平均官能基数は、低粘度、硬化性、塗膜柔軟性のバランスをより向上できることから、1.5~2.2の範囲が好ましく、1.8~2.0の範囲がより好ましい。
【0028】
前記(メタ)アクリル単量体(B)としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、3-メチルブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリル単量体;3-メトキシブチル(メタ)アクリレート)、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、オキシエチレンの付加モル数が1~15の範囲のメトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート等のエーテル基を有する(メタ)アクリル単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル単量体;ベンジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリル単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の窒素原子を有する(メタ)アクリル単量体などを用いることができる。これらの中でも、耐アルカリ性及び光硬化性により優れることから、アクリルアミド単量体が好ましい。また、これらの(メタ)アクリル単量体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記(メタ)アクリル単量体(B)の使用量は、低粘度で、硬化性に優れ、ひび割れ追従性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られることから、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、30~300質量部の範囲であるが、50~250質量部の範囲が好ましく、100~200質量部の範囲がより好ましい。
【0030】
前記光重合開始剤(C)としては、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物;4,4’-ジメチルアミノチオキサントン(別名=ミネラーズケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、α-アシロキシムエステル、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート(「バイアキュア55」)、2-エチルアンスラキノン等のアンスラキノン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルオパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン等を用いることができる。
【0031】
前記光重合開始剤(C)としては、硬化性がより向上することから、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドを用いることが好ましい。
【0032】
前記光重合開始剤(C)の使用量は、硬化性に優れ、ひび割れ追従性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られることから、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記(メタ)アクリル単量体(B)の合計100質量部に対して、0.1~10質量部の範囲であるが、0.15~8質量部の範囲がより好ましく、0.2~5質量部の範囲が特に好ましい。
【0033】
前記ワックス(D)は、酸素による硬化阻害を防止するものであり、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等が挙げられ、前記(メタ)アクリレート樹脂(A)や前記アクリル単量体(B)との相溶性や常温での乾燥性の観点からパラフィンワックスを用いることが好ましい。
【0034】
前記ワックス(D)の融点としては、前記(メタ)アクリレート樹脂(A)や前記アクリル重合性単量体(B)との相溶性や常温での乾燥性の観点から、40~75℃の範囲であることが好ましく、45~60℃の範囲が更に好ましい。なお、前記ワックス(D)の融点は、JIS K2235に基づいて測定される融点を示す。
【0035】
前記ワックス(D)の使用量は、常温乾燥性やリコート性の点から、前記(メタ)アクリレート樹脂(A)と前記アクリル単量体(B)との合計100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲であるが、0.15~4質量部の範囲がより好ましく、0.2~2質量部の範囲が特に好ましい。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料は、前記(メタ)アクリレート樹脂(A)、前記(メタ)アクリル単量体(B)、前記光重合開始剤(C)、及びワックス(D)を必須成分として含有するものであるが、必要に応じてその他の添加剤等を含有していてもよい。
【0037】
前記その他の添加剤としては、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、溶媒、防錆剤、チキソ付与剤、増感剤、レベリング剤、粘着付与剤、帯電防止剤、難燃剤硬化剤、硬化促進剤、顔料、充填剤、補強材、骨材等が挙げられる。
【0038】
本発明の活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料を硬化させる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源または硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧または高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、自然光等を光源とする紫外線、または走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料は、例えば、セメントコンクリート、アスファルトコンクリート、モルタルコンクリート、レジンコンクリート、透水コンクリート、ALC(Autoclaved Lightweight Aerated Concrete)板等のコンクリートの保護材料として用いることができる。
【0040】
本発明の活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料は、作業性及び硬化性に優れ、ひび割れ追従性及び耐アルカリ性に優れる塗膜が得られることから、コンクリート補修材、防水材などの各種土木建築材料の施工の際に好適に用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、平均分子量は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0042】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0043】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0044】
(合成例1:ウレタンアクリレート(A-1)の合成)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、数平均分子量3000のポリオキシプロピレングリコール(以下、「PPG3000」と略記する。)を85.5質量部、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール(以下、「PTMG1000」と略記する。)400.2質量部、数平均分子量400のポリエチレングリコール(以下、「PEG400」と略記する。)103.0質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(以下、「HEA」と略記する。)17.0質量部、2,6-ジ-ターシャリーブチル-クレゾール(以下、「BHT」と略記する。)1.5質量部、p-メトキシフェノール0.2質量部を添加した。反応容器内温度が40℃になるまで昇温した後、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する)98.8質量部添加した。そこで、ジオクチルスズジネオデカネート0.01質量部添加し、1時間かけて80℃まで昇温した。その後、80℃で12時間ホールドし、全てのイソシアネート基が消失していることを確認後、冷却し、アクリロイル当量6,500g/eq、重量平均分子量13,500のウレタン(メタ)アクリレート(A-1)を得た。
【0045】
(合成例2:エポキシアクリレート(A-2)の合成)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、ビスフェノール型エポキシ化合物(DIC株式会社製「エピクロン850」)1850質量部、アクリル酸860質量部、ハイドロキノン1.36質量部およびトリエチルアミン10.8質量部を仕込み、120℃まで昇温させ、同時間で10時間反応させ、アクリロイル当量256g/eq、重量平均分子量512のエポキシアクリレート(A-2)を得た。
【0046】
(合成例3:ポリエステルアクリレート(A-3)の合成)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、アジピン酸146部、ジエチレングリコール95.5質量部を仕込み、エステル化触媒としてモノブチルチンオキサイドを0.5質量部添加し、205℃で11時間反応させた。その後、140℃まで冷却し、次いでグリシジルメタクリレート25.6を投入し、10時間反応させ、アクリロイル当量367.5g/eq、重量平均分子量735のポリエステルアクリレート(A-3)を得た。
【0047】
(実施例1:活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)の調製及び評価)
攪拌機、還流冷却管、温度計を備えた遮光容器に、合成例1で得たウレタンアクリレート(A-1)40質量部、ノルマルオクチルアクリレート(以下、「nOA」と略記する。)45質量部、アクリロイルモルホリン(以下、「ACMO」と略記する。)15質量部、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(以下、「光重合開始剤(C-1)」と略記する。)1.5質量部、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル0.5質量部、トリフェニルホスフィン0.5質量部、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン0.1質量部、130°Fパラフィンワックス(以下、「ワックス(D-1)」と略記する。)1.0質量部を添加し、80℃で均一になるまで撹拌した。その後、200メッシュ金網で濾過し、活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)を得た。
【0048】
[作業性(粘度)の評価]
上記で得られた活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)を25℃の条件下、B型粘度計(東機産業株式会社製「TV-22」)で測定し、下記の基準により評価した。
○:2,000mPa・s未満
×:2,000mPa・s以上
【0049】
[塗膜表面硬化性の評価]
上記で得られた活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)を23℃の環境下、コンクリート平板に刷毛で2.0kg/m2塗布し、蛍光ケミカルランプ(3mW/cm2)を3分間照射した。その3分後に塗膜表面を指触し、下記基準により塗膜表面の硬化性を評価した。
○:タックなし
×:タックあり
【0050】
[厚膜硬化性の評価]
上記で得られた活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)を23℃の環境下、離型PETフィルムに刷毛で2.0kg/m2塗布し、蛍光ケミカルランプ(3mW/cm2)を3分間照射した。その3分後に塗膜を基材から剥がし、塗膜の裏面(基材側の面)を指触し、下記基準により厚膜硬化性を評価した。
○:固形(硬化)
×:液状(未硬化)
【0051】
[耐アルカリ性の評価]
モルタル(150×70×10mm)に対し、上記で得られた活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)を23℃環境下、コンクリート平板に刷毛で2.0kg/m2塗布し、蛍光ケミカルランプ(3mW/cm2)を3分間照射し、評価用試験体を作製した。本試験体を飽和水酸化カルシウム水溶液に半浸漬した後、40℃雰囲気下で30日間養生した。養生後、試験体塗膜の外観を目視観察し、膨れ、割れ等の外観変化を下記の基準により評価した。
○:外観変化なし
×:外観変化あり
【0052】
[ゲル分率の測定]
剥離PETフィルム上に、上記で得られた活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)を膜厚が500μmとなるように塗布した後、蛍光ケミカルランプ(3mW/cm2)を3分間照射し、硬化塗膜を得た。この硬化塗膜を50×10mmに加工し、トルエンに24時間浸漬した。浸漬後、80℃で4時間乾燥し、下記式によりゲル分率(%)を算出し、下記の基準により硬化性を評価した。
ゲル分率(%)=(トルエン浸漬後の塗膜の質量/トルエン浸漬前の塗膜の質量)×100(%)
○:ゲル分率が70%以上
×:ゲル分率が70%未満
【0053】
[下地接着性の評価]
コンクリート舗道板(300×300×60mm)に上記で得られた活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)を0.2kg/m2塗布した後、蛍光ケミカルランプ(3mW/cm2)を3分間照射して評価用試験体を作製した。本試験体について建研式接着試験で引張接着強度を測定し、下記の基準により下地接着性を評価した。
○:下地破壊
×:界面剥離
【0054】
[ひび割れ追従性の評価]
120×70×10mm(ノッチ入り)のモルタル板に上記で得られた活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)を膜厚500μmとなるように塗布した後、蛍光ケミカルランプ(3mW/cm2)を3分間照射し、評価用試験体を得た。本試験体をJSCE-K-532に準拠してひび割れ追従性を評価した。試験開始から塗膜が破断し始めるまでの変位量を測定し、下記の基準により、ひび割れ追従性を評価した。
○:変位量が2mm以上
×:変位量が2mm未満
【0055】
(実施例2~4:活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(2)~(4)の調製及び評価)
実施例1で用いたウレタンアクリレート(A-1)を、表1に示す(メタ)アクリレート樹脂に変更した以外は、実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(2)~(4)を調製後、各物性を評価した。
【0056】
(実施例5:活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(5)の調製及び評価)
実施例1で用いたnOA 45質量部及びACMO 15質量部を、NOA 35質量部及びイソボルニルアクリレート(以下、「IBXA」と略記する。)10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(5)を調製後、各物性を評価した。
【0057】
(実施例6:活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(6)の調製及び評価)
実施例1で用いた光重合開始剤(C-1)を、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(以下、「光重合開始剤(C-2)」と略記する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(6)を調製後、各物性を評価した。
【0058】
(実施例7:活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(7)の調製及び評価)
実施例1で用いた光重合開始剤(C-1)を、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(以下、「光重合開始剤(C-3)」と略記する。)に変更した以外は、実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(7)を調製後、各物性を評価した。
【0059】
(実施例8:活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(8)の調製及び評価)
実施例1で用いたワックス(D-1)の配合量を、0.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(8)を調製後、各物性を評価した。
【0060】
(実施例9:活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(9)の調製及び評価)
実施例1で用いたワックス(D-1)の配合量を、2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(9)を調製後、各物性を評価した。
【0061】
(実施例10:活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)の評価)
活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)について、照度条件を1.0mWに変更した以外は、実施例1と同様にして、各物性を評価した。
【0062】
(実施例11:活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)の評価)
活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(1)について、照度条件を5.0mWに変更した以外は、実施例1と同様にして、各物性を評価した。
【0063】
(比較例1:活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(R1)の調製及び評価)
実施例1で用いたワックス(D-1)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(R1)を調製後、各物性を評価した。硬化性が不良のため評価が困難な物性については、評価しなかった。
【0064】
(比較例2:活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(R2)の調製及び評価)
実施例1で用いたワックス(D-1)の配合量を、10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料(R2)を調製後、各物性を評価した。硬化性が不良のため評価が困難な物性については、評価しなかった。
【0065】
上記で得られた活性エネルギー線硬化型コンクリート保護材料の組成及び評価結果を表1~3に示す。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
実施例1~11の本発明のコンクリート保護材料は、低粘度で優れた作業性を有し、硬化性、耐アルカリ性、下地接着性、及びひび割れ追従性に優れる塗膜が得られることが確認された。
【0070】
比較例1は、本発明の必須成分であるワックス(D)を含有しない例であるが、塗膜の表面硬化性が不十分であることが確認された。
【0071】
比較例2は、(メタ)アクリレート樹脂(A)100質量部に対するワックス(D)の含有量が、本発明の上限である5質量部を超える例であるが、厚膜硬化性が不十分であることが確認された。