(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】コンデンサ用フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20230613BHJP
C08G 61/08 20060101ALI20230613BHJP
B29C 55/02 20060101ALI20230613BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H01G4/32 511L
H01G4/32 551B
C08G61/08
B29C55/02
C08J5/18 CEZ
(21)【出願番号】P 2020503398
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2019005660
(87)【国際公開番号】W WO2019167682
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2018035655
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100209679
【氏名又は名称】廣 昇
(72)【発明者】
【氏名】加藤 絢子
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 慎介
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/052303(WO,A1)
【文献】特開平06-080793(JP,A)
【文献】特開平11-060971(JP,A)
【文献】特開平06-020869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
C08G 61/08
B29C 55/02
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を含み、
200℃で10分間加熱したときの熱収縮率が0.01%以上1.0%以下であり、
面配向係数が0.01以上であり、
密度が1.03×10
6g/m
3以上であり、
膜厚が15.0μm以下である、コンデンサ用フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のコンデンサ用フィルムを製造するコンデンサ用フィルムの製造方法であって、
未延伸フィルムを、延伸温度が前記ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のガラス転移温度Tg以上、前記ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の融点Tm以下、延伸倍率が1.5倍以上10倍以下の条件で、延伸処理する延伸処理工程と、
前記延伸処理工程により延伸された延伸フィルムを、加熱温度が150℃以上240℃以下、加熱時間が0.1分間以上600分間以下の条件で、加熱処理する加熱処理工程と、
前記加熱処理工程により加熱された延伸フィルムを、緩和温度が150℃以上240℃以下、緩和時間が0.1分間以上600分間以下の条件で、フィルム固定幅の縮小率が0%超20%以下で緩和処理する緩和処理工程と、を含む、コンデンサ用フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ用フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンデンサの1種であるフィルムコンデンサは、誘電体フィルムと金属層とが交互に配置された構造を有し、電荷を蓄えることができる素子である。
【0003】
近年、フィルムコンデンサは、小型化や大容量化が進められた結果、駆動時に発熱し易くなってきている。このため、フィルムコンデンサの誘電体フィルムとして用いられるフィルムには、耐熱性により優れることが求められている。
また、フィルムコンデンサを小型化するために、誘電体フィルムをより薄くすることが求められてきているが、誘電体フィルムを薄くすると、耐電圧特性(高電圧下でも絶縁状態が維持されるという特性)や作業性(工業的生産規模でも安定してフィルムコンデンサを製造し得るという性質)に劣る傾向があった。
【0004】
そこで、耐熱性、耐電圧特性、および作業性に優れるフィルムを誘電体フィルムとして有するフィルムコンデンサの検討がなされていた(例えば、特許文献1参照)。
また、高温環境下での寸法安定性に優れるフィルムを備えたバリアフィルムの検討がなされていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2016/052303号
【文献】国際公開2016/067893号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、分子鎖がフィルム面内に配向し、密度が十分に高いフィルムを提案するには至ってはおらず、高温での絶縁強度保持率、金属蒸着性、および成形性の点で改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、高温での絶縁強度保持率を向上させることができると共に、金属蒸着性および成形性を向上させることができるコンデンサ用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、コンデンサ用フィルムが、結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を含み、熱収縮率、面配向係数、密度、および膜厚が所定範囲内であることで、高温での絶縁強度保持率を向上させることができると共に、金属蒸着性および成形性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のコンデンサ用フィルムは、結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を含み、200℃で10分間加熱したときの熱収縮率が0.01%以上1.0%以下であり、面配向係数が0.01以上であり、密度が1.03×106g/m3(1.03g/cm3)以上であり、膜厚が15.0μm以下である、ことを特徴とする。このように、コンデンサ用フィルムが、結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を含み、熱収縮率、面配向係数、密度、および膜厚が所定範囲内であることで、高温での絶縁強度保持率を向上させることができると共に、金属蒸着性および成形性を向上させることができる。
なお、本発明において「結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物」とは、「融点Tmを有するジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物(すなわち、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物)」を意味する。
また、「熱収縮率」、「面配向係数」、「密度」、「膜厚」は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0010】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のコンデンサ用フィルムの製造方法は、上述したコンデンサ用フィルムを製造するコンデンサ用フィルムの製造方法であって、未延伸フィルムを、延伸温度が、前記ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のガラス転移温度Tg以上、前記ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の融点Tm以下、延伸倍率が1.5倍以上10倍以下の条件で、延伸処理する延伸処理工程と、前記延伸処理工程により延伸された延伸フィルムを、加熱温度が150℃以上240℃以下、加熱時間が0.1分間以上600分間以下の条件で、加熱処理する加熱処理工程と、前記加熱処理工程により加熱された延伸フィルムを、緩和温度が150℃以上240℃以下、緩和時間が0.1分間以上600分間以下の条件で、フィルム固定幅の縮小率が0%超20%以下で緩和処理する緩和処理工程と、を含む、ことを特徴とする。このように、上述したコンデンサ用フィルムの製造方法によれば、高温での絶縁強度保持率が高いコンデンサ用フィルムを金属蒸着性および成形性を向上して効率良く製造することができる。
なお、「フィルム固定幅の縮小率」とは、緩和処理工程において、フィルムの保持間隔を狭める割合を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温での絶縁強度保持率を向上させることができると共に、金属蒸着性および成形性を向上させることができるコンデンサ用フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、高温での絶縁強度保持率が高いコンデンサ用フィルムを金属蒸着性および成形性を向上して効率良く製造することができるコンデンサ用フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、保持装置の例を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、保持装置の例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0014】
(コンデンサ用フィルム)
本発明のコンデンサ用フィルムは、少なくとも、結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を含み、必要に応じて、アンチブロッキング剤等のその他の成分、を含む。
【0015】
<結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物>
結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物は、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物であって、延伸処理等を行うことにより、融点を有するフィルム状成形体が得られるものである。
【0016】
「結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物」とは、融点Tmを有する(すなわち、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる)ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物をいう。
ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の融点Tmは、特に制限はないが、200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることがさらに好ましく、250℃以上であることが特に好ましく、また、320℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、290℃以下であることがさらに好ましく、270℃以下であることが特に好ましい。
ここで、ジシクロペンタジエン開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%の重合体をいう。ジシクロペンタジエン開環重合体が有し得る構造単位としては、ジシクロペンタジエン類と共重合可能である単量体由来の構造単位である限り、特に制限なく、例えば、ノルボルネン類、環状オレフィン類、ジエン類、などの単量体由来の構造単位が挙げられる。
【0017】
結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物としては、例えば、特開2006-52333号公報に記載の、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物が挙げられる。
以下、「シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体」を「重合体(α)」といい、「重合体(α)の水素添加物」を「重合体(β)」という。
【0018】
結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、通常は、85℃以上であることが好ましく、87℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることがさらに好ましく、95℃以上であることが特に好ましく、170℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましく、105℃以下であることが特に好ましい。
【0019】
〔重合体(α)〕
重合体(α)はジシクロペンタジエン類を開環重合させることにより得られる。用いるジシクロペンタジエン類には、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在する。用いるジシクロペンタジエン類としては、エンド体及びエキソ体のいずれを用いることもできる。ここで、シクロペンタジエン類として、エンド体及びエキソ体のいずれか一方のみの異性体を単独で用いてもよいし、エンド体及びエキソ体が任意の割合で混在する異性体混合物を用いてもよい。中でも、重合体(β)の結晶性が高まり、耐熱性により優れるものとする観点からは、エンド体及びエキソ体の一方の立体異性体の割合を高くして、エンド体及びエキソ体のいずれかがジシクロペンタジエン類の主成分であることが好ましい。例えば、エンド体及びエキソ体の何れか一方の割合が、50質量%超であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらにより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、97質量%以上であることが特に好ましい。また、合成容易性の観点から、エンド体の割合が高いことが好ましい。
【0020】
重合体(α)は、結晶性を有する重合体(β)を与えるものであれば、ジシクロペンタジエン由来の繰り返し単位以外の繰り返し単位を有するものであってもよい。このような重合体(α)は、ジシクロペンタジエンと、ジシクロペンタジエン以外の単量体とを開環共重合させることにより製造することができる。
ジシクロペンタジエン以外の単量体としては、ジシクロペンタジエン以外の3環以上の多環式ノルボルネン系化合物、ノルボルネン骨格に縮合した環構造を有しない2環のノルボルネン系化合物、モノ環状オレフィン、及び環状ジエン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。
これらの単量体を用いる場合、その量は、全単量体に対して、通常、50質量%未満であり、0質量%超20質量%以下であることが好ましく、0質量%超10質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
-触媒-
重合体(α)の製造に用いる触媒は、ジシクロペンタジエンを開環重合させて、重合体(α)を生成させ得るものであれば、特に限定されないが、通常、開環重合触媒を用いる。開環重合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
このような開環重合触媒の好適例としては、ジシクロペンタジエンを開環重合させ、シンジオタクチック立体規則性を有する開環重合体を生成させうるもの、例えば、下記式(1)で表される金属化合物(以下、「金属化合物(1)」ということがある。)を触媒活性成分として含む開環重合触媒が挙げられる。
M(NR1)X4-a(OR2)a・Lb (1)
(式(1)において、
Mは、周期律表第6族の遷移金属原子からなる群より選択される金属原子を示し、
R1は、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、-CH2R3(R3は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。)で表される基を示し、
R2は、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示し、
Xは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を示し、
Lは、電子供与性の中性配位子を示し、
aは、0又は1の数を示し、
bは0~2の整数を示す。複数のX又は複数のLが存在するとき、複数のX又は複数のLは互いに同一であってもよいし、相異なっていてもよい。)
【0022】
金属化合物(1)を構成する金属原子(M)は、周期律表第6族の遷移金属原子(クロム、モリブデン、タングステン)からなる群より選択される。これらの中でも、クロム、モリブデン、及びタングステンが好ましく、モリブデン又はタングステンがより好ましく、タングステンが特に好ましい。
【0023】
金属化合物(1)は、金属イミド結合を含んでなるものである。
R1は、金属イミド結合を構成する窒素原子上の置換基である。
式(1)において、R1は、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、-CH2R3で表される基を示す。
R1の、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の炭素原子数は、特に制限されないが、6以上であることが好ましく、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。また、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;などが挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。さらに、R1において、3位、4位及び5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0024】
3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、無置換フェニル基;4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、4-メトキシフェニル基等の一置換フェニル基;3,5-ジメチルフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基等の二置換フェニル基;3,4,5-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリクロロフェニル基等の三置換フェニル基;2-ナフチル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-2-ナフチル基等の置換基を有していてもよい2-ナフチル基;が挙げられる。
【0025】
R1の、-CH2R3で表される基において、R3は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。
R3の、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素原子数は、特に限定されないが、1以上であることが好ましく、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、4以下であることが特に好ましい。また、このアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。さらに、前記置換基としては、例えば、フェニル基、4-メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;などが挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
R3の、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ベンジル基、ネオフィル基等が挙げられる。
【0026】
R3の、置換基を有していてもよいアリール基の炭素原子数は、特に制限されないが、6以上であることが好ましく、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。さらに、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
R3の、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基等が挙げられる。このアリール基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4-メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;等が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、R3で表される基としては、炭素原子数が1~20のアルキル基が好ましい。
【0028】
金属化合物(1)において、R2は、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。R2の、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、R3の、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
【0029】
金属化合物(1)は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基及びアルキルシリル基から選択される基を3個又は4個有してなる。すなわち、式(1)において、Xは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を表す。なお、金属化合物(1)において、Xで表される基が2以上あるとき、それらの基は互いに結合していてもよい。
【0030】
Xのハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Xの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、R3の、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
Xのアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
金属化合物(1)が1分子中に2以上のXを有する場合、それらのXは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、2以上のXが互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0031】
金属化合物(1)は、1個の金属アルコキシド結合又は1個の金属アリールオキシド結合を有するものであってもよい。この金属アルコキシド結合又は金属アリールオキシド結合を構成する酸素原子上の置換基(式(1)中のR2)は、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。R2の、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、前述のR3の、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
【0032】
金属化合物(1)は、1個又は2個の電子供与性の中性配位子を有するものであってもよい。
この電子供与性の中性配位子(式(1)中のL)としては、例えば、周期律表第15族又は第16族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。
その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン等のアミン類;が挙げられる。これらの中でも、エーテル類が好ましい。また、式(1)示される金属化合物が1分子中に2以上のLを有する場合、それらのLは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
【0033】
金属化合物(1)としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物が好ましい。即ち、式(1)中、Mがタングステン原子であり、且つ、R1がフェニル基である化合物が好ましい。さらに、その中でも、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体がより好ましい。
【0034】
金属化合物(1)の製造方法は、特に限定されない。例えば、特開平5-345817号公報に記載されるように、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物;3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類又は一置換メチルイソシアナート類;電子供与性の中性配位子(L);並びに、必要に応じて、アルコール類、金属アルコキシド及び金属アリールオキシド;を混合することにより、式(1)で示される金属化合物を製造することができる。前記の製造方法では、金属化合物(1)は、通常、反応液に含まれた状態で得られる。製造された金属化合物(1)は、結晶化等の精製処理により、金属化合物(1)を反応液から単離及び精製した後、得られた金属化合物(1)を開環重合反応に用いてもよいし、精製することなく、得られた反応液(混合液)をそのまま開環重合反応の触媒液として用いてもよい。
【0035】
開環重合触媒として用いる金属化合物(1)の使用量は、(金属化合物(1):単量体)のモル比で、1:100~1:2,000,000となる量であることが好ましく、1:500~1:1,000,000となる量であることがより好ましく、1:1,000~1:500,000となる量であることが特に好ましい。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となるおそれがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られないおそれがある。
【0036】
金属化合物(1)を用いて開環重合を行う際は、金属化合物(1)を単独で使用してもよいし、金属化合物(1)を他の成分と組み合わせて用いてもよい。例えば、金属化合物(1)と有機金属還元剤とを併用することにより、重合活性を向上させることができる。
【0037】
-有機金属還元剤-
有機金属還元剤としては、例えば、炭素数1~20の炭化水素基を有する周期律表第1族、第2族、第12族、第13族又は14族の有機金属化合物が挙げられる。中でも、有機リチウム、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム、又は有機スズが好ましく用いられ、有機アルミニウム又は有機スズが特に好ましく用いられる。また、有機金属還元剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
有機リチウムとしては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、フェニルリチウム等が挙げられる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド等が挙げられる。有機亜鉛としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等が挙げられる。有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシド等が挙げられる。有機スズとしては、テトラメチルスズ、テトラ(n-ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等が挙げられる。
【0038】
有機金属還元剤の使用量は、金属化合物(1)1モルに対して、0.1モル以上であることが好ましく、0.2モル以上であることがより好ましく、0.5モル以上であることが特に好ましく、また、100モル以下であることが好ましく、50モル以下であることがより好ましく、20モル以下であることが特に好ましい。有機金属還元剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合活性を十分に高くできる。また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制することができる。
【0039】
-開環重合反応-
開環重合反応は、通常、有機溶媒中で行われる。
有機溶媒は、目的とする重合体(α)や重合体(β)を所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、重合反応や水素化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。
有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;これらを組み合わせた混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒としては、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、エーテル類が好ましい。また、有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0040】
開環重合反応は、例えば、単量体、金属化合物(1)、及び、必要に応じて有機金属還元剤を混合することにより、開始させることができる。これらの成分を添加する順序は、特に限定されない。例えば、単量体に金属化合物(1)と有機金属還元剤との混合物を添加して混合してもよいし、有機金属還元剤に単量体と金属化合物(1)との混合物を添加して混合してもよく、また、単量体と有機金属還元剤との混合物に金属化合物(1)を添加して混合してもよい。
各成分を混合するにあたっては、それぞれの成分の全量を一度に添加してもよいし、複数回に分けて添加してもよい。また、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に混合してもよい。
【0041】
開環重合反応開始時における反応液中の単量体の濃度は、特に制限はなく、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましく、また、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。単量体の濃度を前記範囲の下限値以上にすることにより、生産性を高くできる。また、単量体の濃度を前記範囲の上限値以下にすることにより、開環重合反応後の反応液の粘度を低くできるので、その後の水素化反応を容易に行うことができる。
【0042】
-活性調整剤-
重合反応系には、活性調整剤を添加してもよい。活性調整剤は、開環重合触媒の安定化、開環重合反応の反応速度及び重合体の分子量分布を調整する目的で使用される。
活性調整剤としては、官能基を有する有機化合物を用いうる。このような活性調整剤としては、例えば、含酸素有機化合物、含窒素有機化合物、含リン有機化合物が好ましい。
【0043】
含酸素有機化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチルアセテート等のエステル類;等が挙げられる。
含窒素有機化合物としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N-ジエチルアニリン等のアミン類;ピリジン、2,4-ルチジン、2,6-ルチジン、2-t-ブチルピリジン等のピリジン類;等が挙げられる。
含リン有機化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン類;トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート等のホスフェート類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;等が挙げられる。
これらの活性調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合反応系において活性調整剤を用いる場合、その量は、特に限定されないが、開環重合触媒として用いる金属化合物(1)100モル%に対して、0.01モル%~100モル%の範囲であることが好ましい。
【0044】
-分子量調整剤-
重合反応系には、重合体(α)の分子量を調整するために、分子量調整剤を添加してもよい。
分子量調整剤としては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等の酸素含有ビニル化合物;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン;等が挙げられる。分子量調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合反応系における分子量調整剤の量は、目的とする分子量に応じて適切に決定しうる。分子量調整剤の具体的な量は、用いる単量体100モル%に対して、0.1モル%~50モル%の範囲であることが好ましい。
【0045】
重合温度は、特に制限はないが、-78℃以上であることが好ましく、-30℃以上であることがより好ましく、また、+200℃以下であることが好ましく、+180℃以下であることがより好ましい。
重合時間は、特に制限はなく、反応規模にも依存するが、1分間から1000時間の範囲であることが好ましい。
【0046】
上述したような金属化合物(1)を含む開環重合触媒を用いて、上述したような条件でジシクロペンタジエンを含む単量体の開環重合反応を行うことにより、重合体(α)を効率よく製造することができる。
【0047】
重合体(α)は、通常、そのシンジオタクチック立体規則性の度合い(ラセモ・ダイアッドの割合(メソ/ラセモ比))を高めることで、結晶性を高くすることができる。
重合体(α)のラセモ・ダイアッドの割合(シンジオタクチック立体規則性の度合い)は、特に制限はないが、立体規則性の程度を高くする観点から、51%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることが特に好ましく、70%以上であることが最も好ましい。重合体(α)のラセモ・ダイアッドの割合は、開環重合触媒の種類を選択すること等により、調節することができる。
【0048】
ジシクロペンタジエン開環重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に制限はないが、1,000~1,000,000であることが好ましく、2,000~500,000であることがより好ましい。このような重量平均分子量を有する開環重合体を水素化反応に供することによって、成形加工性に優れた重合体(β)を得ることができる。開環重合体の重量平均分子量は、重合時に用いる分子量調整剤の添加量などを調節することにより、調節することができる。
ジシクロペンタジエン開環重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はないが、1.0~4.0であることが好ましく、1.5~3.5であることがより好ましい。このような分子量分布を有する開環重合体を水素化反応に供することによって、成形加工性に優れた重合体(β)を得ることができる。開環重合体の分子量分布は、重合反応時における単量体の添加方法や単量体の濃度により、調節することができる。
ジシクロペンタジエン開環重合体の重量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算値である。
【0049】
〔重合体(β)〕
重合体(α)の水素添加反応(炭素-炭素不飽和結合の水素化反応)を行うことにより、重合体(β)を製造することができる。
重合体(α)の水素添加反応は、例えば、常法に従って水素化触媒の存在下で、重合体(α)を含む反応系内に水素を供給することにより行うことができる。この水素化反応において、反応条件を適切に設定すれば、通常、水素化反応により水素添加物のタクチシチーが変化することはない。
【0050】
-水素化触媒-
水素化触媒としては、特に限定されず、オレフィン化合物の水素添加反応に一般に使用されている均一系触媒や不均一系触媒を適宜使用することができる。
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n-ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec-ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。中でも、貴金属錯体触媒が、分解温度が高いため、好ましい。
不均一系触媒としては、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、又はこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させてなる固体触媒が挙げられる。
水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0051】
-水素添加反応-
水素添加反応は、通常、不活性有機溶媒中で行われる。不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。不活性有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、不活性有機溶媒は、開環重合反応に用いた有機溶媒と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、不活性有機溶媒は、開環重合反応に用いた有機溶媒と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、開環重合反応の反応液に水素化触媒を混合して、水素添加反応を行ってもよい。
【0052】
水素添加反応の好ましい反応条件は、使用する水素化触媒によって異なる。
水素添加反応の反応温度は、特に制限はないが、-20℃以上であることが好ましく、-10℃以上であることがより好ましく、0℃以上であることが特に好ましく、また、+250℃以下であることが好ましく、+220℃以下であることがより好ましく、+200℃以下であることが特に好ましい。反応温度を、前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くでき、また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制できる。
水素添加反応の水素圧力は、特に制限はないが、0.01MPa以上であることが好ましく、0.05MPa以上であることがより好ましく、0.1MPa以上であることが特に好ましく、また、20MPa以下であることが好ましく、15MPa以下であることがより好ましく、10MPa以下であることが特に好ましい。水素圧力を、前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くでき、また、上限値以下にすることにより、高耐圧反応装置等の特別な装置が不要となり、設備コストを抑制できる。
水素添加反応の反応時間は、所望の水素化率が達成される任意の時間に設定してもよく、特に制限はないが、0.1時間~10時間以下であることが好ましい。
水素添加反応後は、通常、常法に従って、重合体(α)の水素添加物である重合体(β)を回収する。
【0053】
水素添加反応における水素化率(水素化された二重結合の割合)は、特に制限はないが、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらにより好ましく、98%以上であることが特に好ましく、99%以上であることが最も好ましい。水素化率が高くなるほど、重合体(β)の耐熱性がより向上する。
ここで、重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン-d4を溶媒として、145℃で、1H-NMR測定により算出しうる。
【0054】
重合体(β)においては、通常、水素添加反応に供した重合体(α)が有するシンジオタクチック立体規則性が維持される。したがって、重合体(β)は、シンジオタクチック立体規則性を有する。重合体(β)におけるラセモ・ダイアッドの割合(すなわち、ジシクロペンタジエンを開環重合して開環重合体を得て、当該開環重合体を水素化して得られる繰り返し単位についてのラセモ・ダイアッドの割合)は、重合体(β)が結晶性を有する限りにおいて特に限定されないが、51%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることが特に好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
ラセモ・ダイアッドの割合が高いものほど、すなわち、シンジオタクチック立体規則性の高いものほど、高い融点を有するジシクロペンタジエン開環重合体の水素添加物となる。
【0055】
なお、上述の重合体(α)および重合体(β)のラセモ・ダイアッドの割合は、13C-NMRスペクトルを測定し、該スペクトルデータに基づいて定量することができる。例えば、1,2,4-トリクロロベンゼン-d3とオルトジクロロベンゼン-d4の混合溶媒を用いて、200℃で、inverse-gated decoupling法を適用して、13C-NMR測定を行い、オルトジクロロベンゼン-d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比からラセモ・ダイアッドの割合を決定できる。
【0056】
重合体(β)は、結晶性を有するもの(すなわち、融点を有するフィルム状成形体が得られるもの)である。融点の温度範囲は、特に制限はないが、通常、260~275℃である。
このような融点を有する重合体(β)は、成形性と耐熱性とのバランスにより優れる。重合体(β)の融点は、そのシンジオタクチック立体規則性の度合い(ラセモ・ダイアッドの割合)を調節したり、用いる単量体の種類を選択したりすること等により、調節することができる。
重合体(β)を用いる際、重合体(β)のみを用いてもよいし、重合体(β)にその他の成分を添加してもよい。
【0057】
<アンチブロッキング剤>
その他の成分として添加されるアンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ等の無機物質からなる無機微粒子;アクリル系架橋樹脂、メラミン系熱硬化性樹脂等の有機物質からなる有機微粒子;ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、シリコン-アクリル系複合材料などの有機無機粒子;などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、滑り性の点で、無機微粒子、脂肪酸金属塩が好ましく、脂肪酸金属塩、が特に好ましい。
アンチブロッキング剤の微粒子の数平均粒径としては、特に制限はなく、すべり性の点で、0.01μm以上であることが好ましく、また、透明性の点で、1.5μm以下であることが好ましい。
【0058】
<その他の成分>
アンチブロッキング剤以外のその他の成分としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックスやフィッシャートロプシュワックスやポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;アンチブロッキング剤以外のフィラー、及び、軟質重合体等の重合体(β)以外の高分子材料;等が挙げられる。また、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0059】
その他の成分を使用する場合、その他の成分の使用量は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、目的に応じて適宜決定することができる。その他の成分の含有量としては、特に制限はないが、結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることが特に好ましい。
【0060】
本発明のコンデンサ用フィルムは、例えば、上記結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体の水素添加物を含む組成物を公知の成形方法により成形して得た後述の未延伸フィルムについて、後述のコンデンサ用フィルムの製造方法における各工程(延伸処理工程、加熱処理工程、緩和処理工程)を施すことにより得られる。
以下、コンデンサ用フィルムについて詳述する。
【0061】
<コンデンサ用フィルムの熱収縮率>
200℃で10分間加熱したときのコンデンサ用フィルムの熱収縮率は、0.01%以上1.0%以下である限り、特に制限はないが、作業性の点で、0.02%以上であることが好ましく、0.03%以上であることがより好ましく、0.04%以上であることが特に好ましく、また、耐熱性の点で、0.9%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.7%以下であることが特に好ましい。
この熱収縮率は、例えば、高すぎない延伸温度で延伸処理を行ったり、適度な温度である程度の時間をかけて加熱処理を行ったりすることにより、小さくすることができる。
なお、「熱収縮率」は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0062】
<コンデンサ用フィルムの面配向係数>
コンデンサ用フィルムの面配向係数は、0.01以上である限り、特に制限はないが、フィルムの表面均一性の点で、0.0102以上であることが好ましく、0.0104以上であることがより好ましく、0.0106以上であることが特に好ましく、また、得られ易さの点で、0.03以下であることが好ましく、0.025以下であることがより好ましく、0.02以下であることが特に好ましい。
コンデンサ用フィルムの面配向係数が0.01以上であると、コンデンサ用フィルムの面内に分子鎖が並ぶ割合が大きくなる。ここで、コンデンサ用フィルムに電圧が印加されると、電圧印加方向に対して垂直方向に電子が並んで電子が流れにくくなり、コンデンサ用フィルムの絶縁性が向上する。また、コンデンサ用フィルムの面配向係数が0.01以上であると、コンデンサ用フィルムの表面(面状)の均一性が向上されるため、コンデンサ用フィルムの蒸着性も向上される。
なお、「面配向係数」は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0063】
<コンデンサ用フィルムの密度>
コンデンサ用フィルムの密度は、1.03×106g/m3以上である限り、特に制限はないが、耐熱性の点で、1.0305×106g/m3以上であることが好ましく、1.0310×106g/m3以上であることがより好ましく、1.0315×106g/m3以上であることが特に好ましく、また、得られ易さの点で、1.50×106g/m3以下であることが好ましく、1.48×106g/m3以下であることがより好ましく、1.45×106g/m3以下であることが特に好ましい。
コンデンサ用フィルムの密度が1.03×106g/m3以上であると、コンデンサ用フィルムの非晶部分が少なくなることで、コンデンサ用フィルムの結晶性が高くなり、コンデンサ用フィルムの成形性、耐熱性、および絶縁性が向上する。
ここで、ジシクロペンタジエン開環重合体の水素添加物のラセモ・ダイアッドの割合(メソ/ラセモ比)が高いと、コンデンサ用フィルムの密度が高くなる傾向がある。
なお、「密度」は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0064】
<コンデンサ用フィルムの膜厚>
コンデンサ用フィルムの膜厚は、15.0μm以下である限り、特に制限はないが、屈曲性向上、成形時におけるシワやズレの発生の抑制、製品小型化の点で、10.0μm以下であることが好ましく、8.0μm以下であることがより好ましく、5.0μm以下であることが特に好ましく、4.0μm以下であることが最も好ましい。
コンデンサ用フィルムの膜厚が10.0μm以下であると、屈曲性が向上し、成形時におけるシワやズレの発生を抑制することができ、さらにコンデンサ用フィルムを用いた製品を小型化することができる。
なお、「膜厚」は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0065】
<コンデンサ用フィルムの静摩擦係数>
コンデンサ用フィルムの静摩擦係数は、特に制限はないが、コンデンサ用フィルムを用いてコンデンサを製造する際の作業性の点で、0.01以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、0.50以上であることが特に好ましく、また、コンデンサ用フィルムを用いてコンデンサを製造する際の作業性の点で、1.00以下であることが好ましく、0.90以下であることがより好ましい。
コンデンサ用フィルムの静摩擦係数は、例えば、延伸処理において、延伸倍率を高くしたり、延伸速度を速めたりすることや、適度な温度で所定の時間をかけて加熱処理を行ったりすることで、小さくすることができ、また、ラセモ・ダイアッドの割合や、水素化率が高い重合体(β)を用いることで、静摩擦係数がより小さいコンデンサ用フィルムを製造することができる。
なお、「静摩擦係数」は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0066】
<コンデンサ用フィルムの軟化点>
コンデンサ用フィルムの軟化点は、特に制限はないが、コンデンサ用フィルムを用いてコンデンサを製造する際の作業性の点で、250℃以上であることが好ましく、252℃以上であることがより好ましく、255℃以上であることが特に好ましく、また、コンデンサ用フィルムの得られ易さの点で、320℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることが特に好ましい。
コンデンサ用フィルムの軟化点は、例えば、延伸処理において、延伸倍率を高くしたり、延伸速度を速めたりすることで、高くすることができ、また、ラセモ・ダイアッドの割合や、水素化率が高い重合体(β)を用いることで、より高い軟化点のコンデンサ用フィルムを得ることができる。
なお、「軟化点」は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0067】
<コンデンサ用フィルムのtanδ>
コンデンサ用フィルムのtanδは、特に制限はないが、コンデンサ用フィルムの得られ易さの点で、0.0001以上であることが好ましく、0.0002以上であることがより好ましく、0.0003以上であることが特に好ましく、また、コンデンサ用フィルムの耐電圧特性の点で、0.0010以下であることが好ましく、0.0008以下であることがより好ましく、0.0006以下であることが特に好ましい。
コンデンサ用フィルムのtanδは、例えば、加熱処理において長時間の加熱を避けることにより小さくすることができる。また、重合体(β)中に不純物として含まれる金属量を低減することで、tanδがより小さいコンデンサ用フィルムを製造することができる。
なお、「tanδ」は、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0068】
<コンデンサ>
本発明のコンデンサ用フィルムは、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理が任意に施された後、所定の大きさに裁断されて、コンデンサの材料として用いられる。
コンデンサ用フィルムを用いたコンデンサとしては、コンデンサ用フィルムと金属層とが交互に積層された積層型のフィルムコンデンサ(特開昭63-181411号公報、特開平3-18113号公報等);テープ状のコンデンサ用フィルムと金属層を巻き込んだ巻回型のフィルムコンデンサ(特開昭60-262414号公報、特開平3-286514号公報等);等が挙げられる。
これらのコンデンサの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を利用することができる。
【0069】
[金属層]
コンデンサを構成する金属層としては、特に制限はなく、従来のフィルムコンデンサの金属層(電極層ともいわれる)と同様のものが挙げられる。
金属層を構成する金属は、導電性金属であれば特に限定されず、例えば、アルミニウム、亜鉛、金、白金、銅等が挙げられる。
【0070】
金属層は、これらの金属の金属箔を用いることにより、形成することができる。また、コンデンサ用フィルム表面に金属を蒸着させて得られた蒸着金属被膜を金属層として用いることもできる。
金属層が、金属箔を用いて形成されたものである場合、金属層の厚さは、特に制限はなく、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることが特に好ましく、また、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが特に好ましい。金属層が、蒸着金属被膜である場合、金属層の厚さは、特に制限はなく、1nm以上であることが好ましく、20nm以上であることが好ましく、また、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
【0071】
金属層としては、薄く、且つ、コンデンサ用フィルムとの密着性に優れる金属層を効率よく形成することができ、より小さく、かつ、耐久性に優れるフィルムコンデンサを製造することができることから、蒸着金属被膜が好ましい。
金属層として蒸着金属被膜を利用する場合、蒸着金属被膜の形成方法は特に限定されず、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を適宜利用することができる。
蒸着金属被膜は一層であってもよく、多層化されていてもよい。多層化された蒸着金属皮膜としては、例えば、特開平2-250360号公報に記載の蒸着金属皮膜が挙げられる。
【0072】
(コンデンサ用フィルムの製造方法)
本発明のコンデンサ用フィルムの製造方法は、少なくとも、延伸処理工程と、加熱処理工程と、緩和処理工程とを含み、必要に応じて、その他の工程、を含む。
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。また、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。さらに、長尺のフィルムの長手方向は、通常は製造ラインにおけるフィルム搬送方向と平行である。
【0073】
<延伸処理工程>
延伸処理工程は、未延伸フィルム(原反フィルム)を、所定の延伸温度および延伸倍率で、延伸処理する工程である。
【0074】
未延伸フィルムの延伸方法としては、特に制限はなく、任意の延伸方法を用いうる。例えば、未延伸フィルムを長手方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸法)、未延伸フィルムを幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸法)等の、一軸延伸法;未延伸フィルムを長手方向に延伸すると同時に幅方向に延伸する同時二軸延伸法、未延伸フィルムを長手方向及び幅方向の一方に延伸した後で他方に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;未延伸フィルムを幅方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸する方法(斜め延伸法);などが挙げられる。
【0075】
前記の縦一軸延伸法としては、例えば、ロール間の周速の差を利用した延伸方法などが挙げられる。
また、前記の横一軸延伸法としては、例えば、テンター延伸機を用いた延伸方法などが挙げられる。
さらに、前記の同時二軸延伸法としては、例えば、ガイドレールに沿って移動可能に設けられ且つ未延伸フィルムを固定しうる複数のクリップを備えたテンター延伸機を用いて、クリップの間隔を開いて未延伸フィルムを長手方向に延伸すると同時に、ガイドレールの広がり角度により未延伸フィルムを幅方向に延伸する延伸方法などが挙げられる。
また、前記の逐次二軸延伸法としては、例えば、ロール間の周速の差を利用して未延伸フィルムを長手方向に延伸した後で、その未延伸フィルムの両端部をクリップで把持してテンター延伸機により幅方向に延伸する延伸方法などが挙げられる。
さらに、前記の斜め延伸法としては、例えば、未延伸フィルムに対して長手方向又は幅方向に左右異なる速度の送り力、引張り力又は引取り力を付加しうるテンター延伸機を用いて未延伸フィルムを斜め方向に連続的に延伸する延伸方法などが挙げられる。
【0076】
[未延伸フィルム(原反フィルム)]
未延伸フィルムは、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を含む延伸されていないフィルムである。この未延伸フィルムは、例えば、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、注型成形法、圧縮成形法等の樹脂成型法によって製造しうる。これらの中でも、厚みの制御が容易であることから、押出成形法によって未延伸フィルムを製造することが好ましい。
押出成形法によって未延伸フィルム(原反フィルム)を製造する場合、その押出成形法における製造条件は、下記の通りである。シリンダー温度(溶融樹脂温度)は、特に制限はないが、250℃以上であることが好ましく、260℃以上であることがより好ましく、330℃以下であることが好ましく、310℃以下であることがより好ましい。キャストロール温度は、特に制限はないが、45℃以上であることが好ましく、160℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。冷却ロール温度は、特に制限はないが、25℃以上であることが好ましく、45℃以上であることがより好ましく、150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
未延伸フィルムの厚みは、特に制限はないが、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、また、1mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。
【0077】
[延伸温度]
延伸温度は、特に制限はないが、延伸時におけるフィルム破断抑制、および、クリップ外れによる生産性低下抑制の点で、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のガラス転移温度Tg以上であることが好ましく、具体的には、95℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、105℃以上であることが更により好ましく、110℃以上であることが特に好ましく、また、熱収縮率が小さいコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の融点Tm以下であることが好ましく、具体的には、120℃以下であることが好ましく、118℃以下であることがより好ましく、116℃以下であることが特に好ましい。
延伸温度をジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のガラス転移温度Tg以上融点Tm以下とすることにより、未延伸フィルムに含まれる重合体分子を適切に配向させることができる。
【0078】
[延伸倍率]
延伸倍率は、特に制限はないが、軟化点が高いコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、1.5倍以上であることが好ましく、1.52倍以上であることがより好ましく、1.55倍以上であることが更により好ましく、1.58倍以上であることが特に好ましく、また、靭性に優れるコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることが好ましく、4.5倍以下であることがより好ましく、4倍以下であることが特に好ましい。ここで、例えば二軸延伸法のように異なる複数の方向に延伸を行う場合、延伸倍率は各延伸方向における延伸倍率の積で表される総延伸倍率のことである。なお、延伸倍率を前記範囲の上限値以下にすることにより、フィルムが破断する可能性を小さくできるので、コンデンサ用フィルムの製造を容易に行うことができる。
【0079】
[延伸速度]
延伸速度は、特に制限はないが、軟化点が高いコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、100mm/分以上であることが好ましく、150mm/分以上であることがより好ましく、200mm/分以上であることが特に好ましく、また、延伸時におけるフィルム破断抑制、および、クリップ外れによる生産性低下抑制の点で、30,000mm/分以下であることが好ましく、20,000mm/分以下であることがより好ましく、5000mm/分以下であることが特に好ましい。
【0080】
前記のような延伸処理を未延伸フィルムに施すことにより、所望の特性を有するコンデンサ用フィルムを得ることができる。さらに、未延伸フィルムに延伸処理を施すことにより、加熱処理工程(結晶化工程)における大きな結晶粒の発生を抑制できるので、結晶粒に起因する白化を抑制でき、そのためコンデンサ用フィルムの透明性を高めることができる。
【0081】
<加熱処理工程>
加熱処理工程は、延伸処理工程により延伸された延伸フィルムを、所定の加熱温度および加熱時間で、加熱処理する工程である。
【0082】
前記延伸処理によって得られた延伸フィルムを加熱処理する際、加熱方法は特に限定されず、公知の方法を適宜利用することができる。
加熱方法としては、延伸フィルムを台に固定した後、これを熱処理オーブン、赤外線ヒーター等の加熱装置を用いて加熱する方法が挙げられる。
【0083】
[加熱温度]
加熱温度は、特に制限はないが、熱収縮率が小さいコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることが更により好ましく、180℃以上であることが特に好ましく、また、熱収縮率が小さいコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、240℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがより好ましく、210℃以下であることが特に好ましい。
【0084】
[加熱時間]
加熱時間は、特に制限はないが、熱収縮率が小さいコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、0.1分間以上であることが好ましく、0.2分間以上であることがより好ましく、0.3分間以上であることが更により好ましく、0.4分間以上であることが特に好ましく、また、tanδが小さいコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、600分間以下であることが好ましく、300分間以下であることがより好ましく、200分間以下であることが更により好ましく、100分間以下であることがさらに好ましく、30分間以下であることが特に好ましい。
【0085】
この際に用いる加熱装置としては、加熱装置と延伸フィルムとの接触が不要であることから、延伸フィルムの雰囲気温度を上昇させうる加熱装置が好ましい。好適な加熱装置の具体例を挙げると、オーブン及び加熱炉が挙げられる。
延伸フィルムを用意した後で、延伸フィルム中に含まれるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を結晶化させるために、加熱処理工程を行う。加熱処理工程では、延伸フィルムの少なくとも二辺を保持して緊張させた状態で所定の温度範囲にすることで、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を結晶化させる結晶化処理を行う。
【0086】
延伸フィルムを緊張させた状態とは、延伸フィルムに張力がかかった状態をいう。ただし、この延伸フィルムを緊張させた状態には、延伸フィルムが実質的にさらに延伸される状態を含まない。また、実質的にさらに延伸されるとは、延伸フィルムのいずれかの方向への延伸倍率が通常1.1倍以上になることをいう。
【0087】
延伸フィルムを保持する場合、適切な保持具によって延伸フィルムを保持する。保持具は、延伸フィルムの辺の全長を連続的に保持しうるものでもよく、間隔を空けて間欠的に保持しうるものでもよい。例えば、所定の間隔で配列された保持具によって延伸フィルムの辺を間欠的に保持してもよい。
【0088】
加熱処理工程において、延伸フィルムは、当該延伸フィルムの少なくとも二辺を保持されて緊張した状態にされる。これにより、保持された辺の間の領域において延伸フィルムの熱収縮による変形が妨げられる。延伸フィルムの広い面積において変形を妨げるためには、対向する二辺を含む辺を保持して、その保持された辺の間の領域を緊張した状態にすることが好ましい。例えば、矩形の枚葉の延伸フィルムでは、対向する二辺(例えば、長辺同士、又は、短辺同士)を保持して前記二辺の間の領域を緊張した状態にすることで、その枚葉の延伸フィルムの全面において変形を妨げることができる。また、長尺の延伸フィルムでは、幅方向の端部にある二辺(即ち、長辺)を保持して前記二辺の間の領域を緊張した状態にすることで、その長尺の延伸フィルムの全面において変形を妨げることができる。このように変形を妨げられた延伸フィルムは、熱収縮によってフィルム内に応力が生じても、シワ等の変形の発生が抑制される。
【0089】
加熱処理工程における変形をより確実に抑制するためには、より多くの辺を保持することが好ましい。よって、例えば、枚葉の延伸フィルムでは、その全ての辺を保持することが好ましい。具体例を挙げると、矩形の枚葉の延伸フィルムでは、四辺を保持することが好ましい。
【0090】
延伸フィルムの辺を保持しうる保持具としては、延伸フィルムの辺以外の部分では延伸フィルムと接触しないものが好ましい。このような保持具を用いることにより、より平滑性に優れるコンデンサ用フィルムを得ることができる。
【0091】
また、保持具としては、保持具同士の相対的な位置を加熱処理工程においては固定しうるものが好ましい。このような保持具は、加熱処理工程において保持具同士の位置が相対的に移動しないので、加熱処理工程における延伸フィルムの実質的なさらなる延伸を抑制しやすい。
【0092】
好適な保持具としては、例えば、矩形の延伸フィルム用の保持具として、型枠に所定間隔で設けられ延伸フィルムの辺を把持しうるクリップ等の把持子が挙げられる。また、例えば、長尺の延伸フィルムの幅方向の端部にある二辺を保持するための保持具としては、テンター延伸機に設けられ延伸フィルムの辺を把持しうる把持子が挙げられる。
【0093】
長尺の延伸フィルムを用いる場合、その延伸フィルムの長手方向の端部にある辺(即ち、短辺)を保持してもよいが、前記の辺を保持する代わりに延伸フィルムの加熱処理工程を施される領域の長手方向の両側を保持してもよい。例えば、延伸フィルムの加熱処理工程を施される領域の長手方向の両側に、延伸フィルムを熱収縮しないように保持して緊張させた状態にしうる保持装置を設けてもよい。このような保持装置としては、例えば、2つのロールの組み合わせ、押出機と引き取りロールとの組み合わせ、などが挙げられる。
これらの組み合わせによって延伸フィルムに搬送張力等の張力を加えることで、加熱処理工程を施される領域において当該延伸フィルムの熱収縮を抑制できる。そのため、前記の組み合わせを保持装置として用いれば、延伸フィルムを長手方向に搬送しながら当該延伸フィルムを保持できるので、コンデンサ用フィルムの効率的な製造ができる。
【0094】
加熱処理工程では、前記のように延伸フィルムの少なくとも二辺を保持して緊張させた状態で、当該延伸フィルムを、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のガラス転移温度Tg以上、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の融点Tm以下の温度(150℃~240℃)にする。前記のような温度にされた延伸フィルムにおいては、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の結晶化が進行する。そのため、この加熱処理工程により、結晶化したジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を含む加熱延伸フィルム(結晶化フィルム)が得られる。この際、加熱延伸フィルムの変形を妨げながら緊張した状態にしているので、加熱延伸フィルムの平滑性を損なうことなく、結晶化を進めることができる。
【0095】
<緩和処理工程>
緩和処理工程は、加熱処理工程により加熱された延伸フィルムを、所定の緩和温度および緩和時間で、フィルム固定幅の所定の縮小率で緩和処理する工程である。
【0096】
[緩和温度]
緩和温度は、特に制限はないが、熱収縮率が小さいコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることが更により好ましく、180℃以上であることが特に好ましく、また、tanδが小さいコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、240℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがより好ましく、210℃以下であることが特に好ましい。
また、加熱処理工程から冷却を経ずに引き続いて緩和処理工程を行う場合には、緩和処理工程における加熱延伸フィルムの処理温度は、加熱処理工程での温度と同じであることが好ましい。これにより、緩和処理工程における加熱延伸フィルムの温度ムラを抑制したり、コンデンサ用フィルムの生産性を高めたりできる。
【0097】
[緩和時間]
緩和時間は、特に制限はないが、熱収縮率が小さいコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、0.1分間以上であることが好ましく、0.2分間以上であることがより好ましく、0.3分間以上であることが更により好ましく、0.4分間以上であることが特に好ましく、また、tanδが小さいコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、600分間以下であることが好ましく、300分間以下であることがより好ましく、200分間以下であることが更により好ましく、100分間以下であることが特に好ましい。
【0098】
[フィルム固定幅の縮小率]
フィルム固定幅の縮小率は、縦の縮小率および横の縮小率のそれぞれが、特に制限はないが、熱収縮率が小さいコンデンサ用フィルムを効率よく製造することができる点で、0%超であることが好ましく、0.2%以上であることがより好ましく、0.4%以上であることが更により好ましく、0.6%以上であることが特に好ましく、また、フィルムの表面(面状)の均一性の点で、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、13%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
なお、「フィルム固定幅の縮小率」とは、緩和処理工程において、フィルムの保持間隔を狭める割合を意味する。
【0099】
加熱処理工程の後で、加熱処理工程で得られた加熱延伸フィルムを熱収縮させ残留応力を除去するために、緩和処理工程を行う。緩和処理工程では、加熱処理工程で得られた加熱延伸フィルムを平坦に維持しながら、所定の温度範囲で、前記加熱延伸フィルムの緊張を緩和する緩和処理を行う。
【0100】
加熱延伸フィルムの緊張を緩和する、とは、保持装置によって保持されて緊張した状態から加熱延伸フィルムを解放することをいい、加熱延伸フィルムが緊張していなければ加熱延伸フィルムが保持装置で保持されていてもよい。このように緊張が緩和されると、加熱延伸フィルムは熱収縮を生じうる状態となる。緩和処理工程では、加熱延伸フィルムに熱収縮を生じさせることによって、コンデンサ用フィルムに加熱時において生じうる応力を解消している。そのため、本発明のコンデンサ用フィルムの高温環境下での熱収縮を小さくできるので、高温環境下での寸法安定性に優れるコンデンサ用フィルムが得られる。
【0101】
加熱延伸フィルムの緊張の緩和は、一時に行ってもよく、時間をかけて連続的又は段階的に行ってもよい。ただし、得られるコンデンサ用フィルムの波打ち及びシワ等の変形の発生を抑制するためには、緊張の緩和は、連続的又は段階的に行うことが好ましい。
【0102】
前記の加熱延伸フィルムの緊張の緩和は、加熱延伸フィルムを平坦に維持しながら行う。ここで加熱延伸フィルムを平坦に維持する、とは、加熱延伸フィルムに波打ち及びシワといった変形を生じないように加熱延伸フィルムを平面形状に保つことをいう。これにより、得られるコンデンサ用フィルムの波打ち及びシワ等の変形の発生を抑制できる。
【0103】
前記のような緩和処理工程において枚葉の加熱延伸フィルムに緩和処理を施す場合、例えば、その加熱延伸フィルムの四辺を保持しながら、保持部分の間隔を連続的又は段階的に狭める方法を採用しうる。この場合、加熱延伸フィルムの四辺において保持部分の間隔を同時に狭めてもよい。また、一部の辺において保持部分の間隔を狭めた後で、別の一部の辺の保持部分の間隔を狭めてもよい。さらに、一部の辺の保持部分の間隔を狭めないで維持してもよい。また、一部の辺の保持部分の間隔は連続的又は段階的に狭め、別の一部の辺の保持部分の間隔を一時に狭めてもよい。
【0104】
また、前記のような緩和処理工程において長尺の加熱延伸フィルムに緩和処理を施す場合、例えば、テンター延伸機を用いて、クリップを案内しうるガイドレールの間隔を加熱延伸フィルムの搬送方向において狭めたり、隣り合うクリップの間隔を狭めたりする方法が挙げられる。
【0105】
前記のように、加熱延伸フィルムを保持した状態で保持部分の間隔を狭めることで加熱延伸フィルムの緊張の緩和を行う場合、間隔を狭める程度は、加熱処理工程において得られた加熱延伸フィルムに残留していた応力の大きさに応じて設定しうる。
加熱処理工程を施すことにより得られた加熱延伸フィルムには大きな応力が残留する傾向がある。そのため、この加熱延伸フィルムの緊張を緩和するために保持部分の間隔を狭める程度は、大きくすることが好ましい。
【0106】
<<加熱処理工程及び緩和処理工程の例>>
以下、上述した加熱処理工程及び緩和処理工程の例について説明する。この例は、枚葉の延伸フィルムを用いて枚葉のコンデンサ用フィルムを製造する方法の例を示す。ただし、加熱処理工程及び緩和処理工程は、この例に限定されない。
【0107】
図1及び
図2は、保持装置の例を模式的に示す平面図である。
図1に示すように、保持装置100は、枚葉の延伸フィルム(原反フィルム)10を保持するための装置であって、型枠110と、型枠110に位置調整を可能に設けられた複数の保持具としてクリップ121、122、123及び124を備える。クリップ121、クリップ122、クリップ123及びクリップ124は、それぞれ、延伸フィルム10の辺11、辺12、辺13及び辺14を把持しうるように設けられている。
【0108】
このような保持装置100を用いて加熱処理工程を行う場合、保持装置100に、ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を含む樹脂からなる延伸フィルム10を取り付ける。具体的には、クリップ121~124で延伸フィルム10を把持することで、延伸フィルム10の四辺11~14を保持して緊張させた状態にする。そして、このように緊張した状態の延伸フィルム10を、図示しないオーブンにより、延伸フィルム10に含まれるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のガラス転移温度Tg以上、前記ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の融点Tm以下の温度範囲(150℃~240℃)に加熱する。
【0109】
これにより、延伸フィルム10に含まれるジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の結晶化が進行して、
図2に示すように、加熱延伸フィルム(結晶化フィルム)20が得られる。この際、延伸フィルム10の四辺11~14が保持されて緊張した状態となっていたので、加熱延伸フィルム20には熱収縮による変形は生じない。そのため、通常は、加熱延伸フィルム20には、熱収縮を生じさせようとする応力が残留している。
【0110】
その後、前記のように製造された加熱延伸フィルム20には、緩和処理工程が行われる。前記の加熱延伸フィルム20は、加熱処理工程が終わった時点においては、保持装置100のクリップ121、クリップ122、クリップ123及びクリップ124に、当該加熱延伸フィルム20の辺21、辺22、辺23及び辺24を保持されている。緩和処理工程では、この加熱延伸フィルム20を、引き続きジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物のガラス転移温度Tg以上、前記ジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物の融点Tm以下の温度範囲(150℃~240℃)に加熱した状態で、保持装置100のクリップ121~124の間隔I121、I122、I123及びI124を狭める。これにより、加熱延伸フィルム20の熱収縮による寸法変化に追従するように、クリップ121~124による加熱延伸フィルム20の保持部分の間隔は狭まる。そのため、加熱延伸フィルム20は、平坦に維持しながら緊張を緩和されて、枚葉のコンデンサ用フィルムが得られる。
【0111】
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、例えば、得られたコンデンサ用フィルムに表面処理を行ってもよい。
【実施例】
【0112】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
実施例および比較例において、「(1)ジシクロペンタジエンの開環重合体の分子量(重量平均分子量及び数平均分子量)」、「(2)ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物のガラス転移温度及び融点」、「(3)ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物のラセモ・ダイアッドの割合」、「(4)コンデンサ用フィルムの軟化点(℃)
」、「(5)コンデンサ用フィルムの熱収縮率(%)」、「(6)コンデンサ用フィルムのtanδ」、「(7)コンデンサ用フィルムの静止摩擦係数」、「(8)コンデンサ用フィルムの面配向係数」、「(9)コンデンサ用フィルムの密度(g/cm3)」、および「(10)コンデンサ用フィルムの膜厚(μm)」については、下記の方法で測定し、また、「(11)絶縁破壊強度の評価」、「(12)金属蒸着性の評価」、および「(13)成形性の評価」については、下記の方法で評価した。
【0113】
<(1)ジシクロペンタジエンの開環重合体の分子量(重量平均分子量及び数平均分子量)>
ジシクロペンタジエンの開環重合体を含む溶液を採取して、測定用試料とした。得られた測定用試料について、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システムHLC-8320(東ソー社製)で、Hタイプカラム(東ソー社製)を用い、温度40℃の下、テトラヒドロフランを溶媒として、ジシクロペンタジエンの開環重合体の分子量をポリスチレン換算値として求めた。
【0114】
<(2)ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物のガラス転移温度及び融点>
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を測定用試料とした。得られた測定用試料を、窒素雰囲気下、320℃に加熱してから、液体窒素を用いて、冷却速度-10℃/分にて室温まで急冷した。示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温し、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物のガラス転移温度及び融点を求めた。
【0115】
<(3)ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物のラセモ・ダイアッドの割合>
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を測定用試料とした。オルトジクロロベンゼン-d4/1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)-d3(混合比(質量基準)1/2)を溶媒として、200℃でinverse-gateddecoupling法を適用して13C-NMR測定を行い、ラセモ・ダイアッドの割合(メソ/ラセモ比)を求めた。具体的には、オルトジクロロベンゼン-d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて、ラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
【0116】
<(4)コンデンサ用フィルムの軟化点>
得られたコンデンサ用フィルムを任意の部位で、直径5mmの円形に切り出して測定サンプルを得た。得られた測定サンプルを、熱機械分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、SS6100)を用いて、10℃/分の昇温条件で加熱し、コンデンサ用フィルムの軟化点を測定した。測定結果を表1に示す。
【0117】
<(5)コンデンサ用フィルムの熱収縮率(%)>
得られたコンデンサ用フィルムを任意の部位で、500mm×500mmの正方形に切り出して測定サンプルを得た。このとき、正方形の各辺が、コンデンサ用フィルム製造時の流れ方向(MD方向)と幅方向(TD方向)に一致するようにした。
得られた測定サンプルを、オーブンを用いて、200℃で10分間加熱し、加熱前後のMD方向及びTD方向の長さの変化量を調べ、コンデンサ用フィルムの熱収縮率を算出した。なお、この熱収縮率は、MD方向とTD方向の平均値である。測定結果を表1に示す。
【0118】
<(6)コンデンサ用フィルムのtanδ>
得られたコンデンサ用フィルムを任意の部位で、150mm×1mmの大きさに切り出して測定サンプルを得た。得られた測定サンプルについて、ネットワークアナライザ(アジレント社製、N5230A)を用いて、周波数1GHzにおけるtanδを測定した。測定結果を表1に示す。
【0119】
<(7)コンデンサ用フィルムの静止摩擦係数>
トライボギア表面性測定機(新東科学製、TYPE38)を用いて、ASTM D1894に準拠し、コンデンサ用フィルムとボール圧子間の静摩擦係数を測定した。荷重は200g、速度は100mm/minとした。測定結果を表1に示す。
【0120】
<(8)コンデンサ用フィルムの面配向係数>
得られたコンデンサ用フィルムについて、屈折率を測定する屈折率測定器(Axometrics社製、「AxoScan」)で、MD方向、TD方向、ND(厚み)方向の屈折率(それぞれ、Nx、Ny、Nzとする)を測定し、下記式(2)にて面配向係数を算出した。
ΔP=(Nx+Ny)/2-Nz (2)
なお、面配向係数が大きいことは、MD・TD面内の屈折率(Nx、Ny)が高く、面内に分子鎖が配向していることを示す。測定結果を表1に示す。
【0121】
<(9)コンデンサ用フィルムの密度(g/cm3)>
得られたコンデンサ用フィルムについて、自動比重計(株式会社東洋精機製作所製、商品名:「DSG-1」)を用いて、コンデンサ用フィルムの密度(g/cm3)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0122】
<(10)コンデンサ用フィルムの膜厚(μm)>
得られたコンデンサ用フィルムについて、フィルム厚み測定器(株式会社フジワーク製、商品名:「HKT-1216」)を用いて、コンデンサ用フィルムの膜厚(μm)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0123】
<(11)絶縁破壊強度の評価>
得られたコンデンサ用フィルムについて、JIS C2151に示される平板電極法に従って、絶縁破壊強度を測定した。測定結果(23℃、120℃、150℃)を表1に示す。なお、測定装置は絶縁破壊電圧測定装置(ヤマヨ試験機社製、YST-243-100RHO)を用い、絶縁破壊電圧をコンデンサ用フィルムの厚みで割った平均値を絶縁破壊強度とした。120℃、150℃での測定は、熱風オーブンに、電極および測定サンプルをセットし、10分間保持した後に昇圧を開始して、上記と同様に、JIS C2151に示される平板電極法に従って測定した。
下記評価基準により、絶縁破壊強度を評価した。評価結果を表1に示す。
<<評価基準>>
○:23℃の絶縁破壊強度に対する150℃の絶縁破壊強度の保持率が60%以上
×:23℃の絶縁破壊強度に対する150℃の絶縁破壊強度の保持率が60%未満
【0124】
<(12)金属蒸着性の評価>
得られたフィルムの片面にコロナ処理を施し、表面抵抗が5Ω/□となるようにアルミニウムを真空蒸着した。この際、長手方向に平行に幅4mmのストライプ状のマージン部を設けた。下記評価基準により、金属蒸着性を評価した。評価結果を表1に示す。
<<評価基準>>
○:真空蒸着時に熱変形なし、金属蒸着面に蒸着ムラなし、マージン歪みなし
△:真空蒸着時に熱変形なし、金属蒸着面に蒸着ムラあり
×:真空蒸着時に熱変形あり
【0125】
<(13)成形性の評価>
得られた金属蒸着フィルムを長さ300mm、幅40mmに切削し、蒸着面と非蒸着面が接するように15枚積層し、端面のずれがないように巻き取ることで巻回体を作製した。その後、得られた巻回体を120℃の温度で熱プレスした。上記巻回体において、熱プレス後に下記の不良モードの有無を目視で確認した。評価結果を表1に示す。
<<不良モード>>
・熱プレスによる巻回体端部の巻きずれ
・中心部を基準としたときの対称となる部分の総厚みの不一致
・切削により巻回体の断面を形成した際のフィルムのヨレや隙間同様の巻回体を5個作製し、不良モードが見られた巻回体の個数を以下のように評価した。下記評価基準により、成形性を評価した。評価結果を表1に示す。
<<評価基準>>
◎:0個
○:1個
×:2個以上
【0126】
(製造例1:ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物の製造)
内部を窒素置換した金属製耐圧反応容器に、有機溶媒であるシクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン類であるジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)のシクロヘキサン溶液(濃度70%)42.8部(ジシクロペンタジエンとして30部)、分子量調整剤である1-ヘキセン1.91部を加え、全容を53℃に加熱した。一方、開環重合触媒としての金属化合物であるテトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエン(有機溶媒)に溶解して得られた溶液に、開環重合触媒としての有機金属還元剤であるジエチルアルミニウムエトキシドのn-ヘキサン溶液(濃度19%)0.061部を加えて10分間撹拌し、開環重合触媒溶液を調製した。この開環重合触媒溶液を前記反応器内に添加し、53℃で4時間、開環重合反応を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液200部に、停止剤として、1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃で1時間撹拌し、重合反応を停止させた。その後、吸着剤であるハイドロタルサイト様化合物(製品名「キョーワード(登録商標)2000」、協和化学工業社製)を1部加えて、60℃に加温し、1時間撹拌した。濾過助剤(製品名「ラヂオライト(登録商標)#1500」昭和化学工業社製)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(製品名「TCP-HX」、ADVANTEC東洋社製)を用いて、吸着剤を濾別し、ジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液を得た。
この溶液の一部を用いて、ジシクロペンタジエン開環重合体の分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は28,100、数平均分子量(Mn)は8,750、分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
得られたジシクロペンタジエン開環重合体を含む溶液200部(重合体含有量30部)に、シクロヘキサン100部、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加し、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。反応液は、固形分が析出したスラリー液であった。
反応液を遠心分離することにより、固形分と溶液とを分離し、固形分を、60℃で24時間減圧乾燥し、ジシクロペンタジエン開環重合体の水素添加物28.5部を得た。
水素化反応における不飽和結合の水素化率は99%以上、ジシクロペンタジエン開環重合体の水素添加物のガラス転移温度は98℃、融点は262℃であった。また、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。なおここで、重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン-d4を溶媒として、145℃で、1H-NMR測定により算出した。
【0127】
(製造例2.未延伸フィルムの製造)
製造例1で得たジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合して、フィルムの材料となる樹脂を得た。
前記の樹脂を、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出機(東芝機械社製「TEM-37B」)に投入した。前記の二軸押出機によって、樹脂を熱溶融押出成形によりストランド状の成形体に成形した。この成形体をストランドカッターにて細断して、樹脂のペレットを得た。前記の二軸押出機の運転条件を、以下に示す。
・バレル設定温度:270℃~280℃
・ダイ設定温度:250℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダー回転数:50rpm
引き続き、得られたペレットを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機に供給した。このフィルム成形機を用いて、前記の樹脂からなる長尺の未延伸フィルム(厚み50μm、1辺の長さ155mm)を、2m/分の速度でロールに巻き取る方法にて製造した。前記のフィルム成形機の運転条件を、以下に示す。ここで、未延伸フィルムの厚みおよび1辺の長さは、スクリュー回転数を適宜調整することで、調整した。
・バレル温度設定:280℃~290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:30rpm
得られた未延伸フィルムのヘイズを測定したところ、0.2%であった。
なお、未延伸フィルムのヘイズは、未延伸フィルムを選択した任意の部位で50mm×50mmの正方形の薄膜サンプルに切り出し、その後、薄膜サンプルについて、ヘイズメーター(日本電色工業社製「5000」)を用いてヘイズを測定した。
【0128】
(実施例1)
<1-1.延伸処理工程>
製造例2で得た長尺の未延伸フィルムを、任意の部位で90mm×90mmの正方形に切り出した。この切り出しは、切り出された未延伸フィルムの正方形の辺が長尺の未延伸フィルムの長手方向又は幅方向に平行になるように行った。そして、切り出された未延伸フィルムを、多槽式二軸延伸複屈折配向軸測定装置(エトー社製)に設置した。この多槽式二軸延伸複屈折配向軸測定装置は、フィルムの四辺を把持しうる複数のクリップを備え、このクリップを移動させることによってフィルムを延伸できる構造を有している。この多槽式二軸延伸複屈折配向軸測定装置を用いて、未延伸フィルムを、長尺の未延伸フィルムの長手方向に対応する縦方向へ延伸倍率1.48倍で延伸し、その後、長尺の未延伸フィルムの幅方向に対応する横方向へ延伸倍率1.48倍で延伸して(総延伸倍率2.2倍で延伸して)、延伸フィルムを得た。多槽式二軸延伸複屈折配向軸測定装置の運転条件を、以下に示す。
・延伸速度:200mm/分
・延伸温度:110℃
【0129】
<1-2.加熱処理工程>
延伸フィルムの四辺を前記の多槽式二軸延伸複屈折配向軸測定装置のクリップに把持させることにより、加熱延伸フィルムを多槽式二軸延伸複屈折配向軸測定装置に取り付けた。そして、クリップに前記の延伸フィルムの四辺を把持させることで、延伸フィルムを緊張した状態にした。そして、この延伸フィルムに、200℃で30秒間、オーブン内で加熱処理を行うことにより、延伸フィルムに含まれるジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を結晶化させる結晶化工程を行って、加熱延伸フィルムを得た。
得られた加熱延伸フィルムのヘイズを測定したところ、ヘイズは0.36%であった。
なお、加熱延伸フィルムのヘイズは、加熱延伸フィルムを選択した任意の部位で50mm×50mmの正方形の薄膜サンプルに切り出し、その後、薄膜サンプルについて、ヘイズメーター(日本電色工業社製「5000」)を用いてヘイズを測定した。
【0130】
<1-3.緩和処理工程>
こうして得た加熱延伸フィルムの四辺を前記の多槽式二軸延伸複屈折配向軸測定装置のクリップに把持させることにより、加熱延伸フィルムを多槽式二軸延伸複屈折配向軸測定装置に取り付けた。そして、温度200℃において、加熱延伸フィルム(結晶化フィルム)を平坦に維持しながら加熱延伸フィルムの緊張を緩和する緩和処理工程を行って、コンデンサ用フィルムを得た。この緩和処理工程では、多槽式二軸延伸複屈折配向軸測定装置のクリップを加熱延伸フィルムの面内方向に移動させることで、クリップ間距離を縮小させることにより、加熱延伸フィルムの緊張を緩和させた。また、前記のクリップ間距離は、30秒間をかけて、加熱延伸フィルムの縦方向に3%、加熱延伸フィルムの横方向に3%縮小させた。
こうして得たコンデンサ用フィルムの「軟化点(℃)」、「熱収縮率(%)」、「tanδ」、「静止摩擦係数」、「面配向係数」、「密度(g/cm3)」、および「膜厚(μm)」については、前述した方法によって測定し、また、「絶縁破壊強度」、「金属蒸着性の評価」、および「成形性」を、前述した方法によって評価した。
【0131】
(実施例2)
実施例1において、厚み50μm、1辺の長さ155mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を2.2倍とし、「1-3.緩和処理工程」における縮小率を縦3%および横3%とする代わりに、厚み100μm、1辺の長さ115mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸工程」における総延伸倍率を3.1倍(縦方向:1.76倍、横方向:1.76倍)とし、「1-3.緩和処理工程」における縮小率を縦5%および横5%としたこと以外は、実施例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0132】
(実施例3)
実施例1において、厚み50μm、1辺の長さ155mmの未延伸フィルムを用い、「1-2.加熱処理工程」における加熱温度を200℃とし、「1-3.緩和処理工程」における緩和温度を200℃とする代わりに、厚み25μm、1辺の長さ155mmの未延伸フィルムを用い、「1-2.加熱処理工程」における加熱温度を240℃とし、「1-3.緩和処理工程」における緩和温度を240℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0133】
(実施例4)
実施例1において、厚み50μm、1辺の長さ155mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における延伸温度を110℃とし、「1-1.延伸処理工程」における延伸速度を200mm/分とする代わりに、厚み20μm、1辺の長さ155mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における延伸温度を95℃とし、「1-1.延伸処理工程」における延伸速度を1000mm/分としたこと以外は、実施例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0134】
(実施例5)
実施例1において、厚み50μm、1辺の長さ155mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における延伸温度を110℃とし、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を2.2倍とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱時間を0.5分とし、「1-3.緩和処理工程」における緩和時間を0.5分とし、「1-3.緩和処理工程」における縮小率を縦3%および横3%とする代わりに、厚み20μm、1辺の長さ210mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における延伸温度を115℃とし、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を1.6倍(縦方向:1.26倍、横方向:1.26倍)とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱時間を20分とし、「1-3.緩和処理工程」における緩和時間を3分とし、「1-3.緩和処理工程」における縮小率を縦1%および横1%としたこと以外は、実施例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0135】
(実施例6)
実施例1において、厚み50μm、1辺の長さ155mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を2.2倍とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱温度を200℃とし、「1-3.緩和処理工程」における縮小率を縦3%および横3%とする代わりに、厚み100μm、1辺の長さ135mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を2.6倍(縦方向:1.61倍、横方向:1.61倍)とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱温度を220℃とし、「1-3.緩和処理工程」における縮小率を縦4%および横4%としたこと以外は、実施例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0136】
(実施例7)
実施例1において、「未延伸フィルムの製造」において、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物100部に酸化防止剤1.1部を混合する代わりに、「未延伸フィルムの製造」において、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物100部に酸化防止剤1.1部およびアンチブロッキング剤(シリカ粒子(粒径0.5μm、アドマテックス社製、製品名:「アドマファインシリカSC2500-SQ」))0.05部を混合したこと以外は、実施例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0137】
(比較例1)
実施例1において、厚み50μm、1辺の長さ155mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における延伸温度を110℃とし、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を2.2倍とし、「1-1.延伸処理工程」における延伸速度を200mm/分とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱時間を0.5分とし、「1-3.緩和処理工程」を行う代わりに、厚み150μm、1辺の長さ170mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における延伸温度を100℃とし、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を2.0倍(縦方向:1.41倍、横方向:1.41倍)とし、「1-1.延伸処理工程」における延伸速度を10000mm/分とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱時間を20分とし、「1-3.緩和処理工程」を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0138】
(比較例2)
実施例1において、厚み50μm、1辺の長さ155mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における延伸温度を110℃とし、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を2.2倍とし、「1-1.延伸処理工程」における延伸速度を200mm/分とし、「1-3.緩和処理工程」における縮小率を縦3%および横3%とする代わりに、厚み150μm、1辺の長さ170mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における延伸温度を100℃とし、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を2.0倍(縦方向:1.41倍、横方向:1.41倍)とし、「1-1.延伸処理工程」における延伸速度を10000(mm/分)とし、「1-3.緩和処理工程」における縮小率を縦4%および横3%としたこと以外は、実施例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0139】
(比較例3)
比較例1において、厚み150μm、1辺の長さ170mmの未延伸フィルムを用いる代わりに、厚み50μm、1辺の長さ170mmの未延伸フィルムを用いたこと以外は、比較例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0140】
(比較例4)
実施例1において、厚み50μm、1辺の長さ155mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における延伸温度を110℃とし、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を2.2倍とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱温度を200℃とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱時間を0.5分とし、「1-3.緩和処理工程」における緩和温度を200℃とする代わりに、厚み100μm、1辺の長さ115mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における延伸温度を130℃とし、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を3.1倍(縦方向:1.76倍、横方向:1.76倍)とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱温度を240℃とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱時間を20分とし、「1-3.緩和処理工程」における緩和温度を240℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0141】
(比較例5)
実施例1において、厚み50μm、1辺の長さ155mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を2.2倍とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱時間を0.5分とし、「1-3.緩和処理工程」における縮小率を縦3%および横3%とする代わりに、厚み20μm、1辺の長さ235mmの未延伸フィルムを用い、「1-1.延伸処理工程」における総延伸倍率を1.4倍(縦方向:1.18倍、横方向:1.18倍)とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱時間を2分とし、「1-3.緩和処理工程」における縮小率を縦1%および横1%としたこと以外は、実施例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0142】
(比較例6)
実施例1において、「1-2.加熱処理工程」における加熱温度を200℃とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱時間を0.5分とし、「1-3.緩和処理工程」における緩和温度を200℃とする代わりに、「1-2.加熱処理工程」における加熱温度を140℃とし、「1-2.加熱処理工程」における加熱時間を2分とし、「1-3.緩和処理工程」における緩和温度を140℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作、測定、および評価を行った。
【0143】
【0144】
表1より、結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物を含み、200℃で10分間加熱したときの熱収縮率が0.01%以上1.0%以下であり、面配向係数が0.01以上であり、密度が1.03×106g/m3以上であり、膜厚が15.0μm以下である実施例1~7のコンデンサ用フィルムは、比較例1~6のコンデンサ用フィルムと比較して、高温での絶縁強度保持率を向上させることができると共に、金属蒸着性および成形性を向上させることができることが分かる。
比較例3では、熱収縮率が5.6%と高いため、蒸着熱によりコンデンサ用フィルムがたるんでしまって成形性も低下している。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明によれば、高温での絶縁強度保持率を向上させることができると共に、金属蒸着性および成形性を向上させることができるコンデンサ用フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、高温での絶縁強度保持率が高いコンデンサ用フィルムを金属蒸着性および成形性を向上して効率良く製造することができるコンデンサ用フィルムの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0146】
10 延伸フィルム(原反フィルム)
11 延伸フィルムの辺
12 延伸フィルムの辺
13 延伸フィルムの辺
14 延伸フィルムの辺
20 加熱延伸フィルム(結晶化フィルム)
21 加熱延伸フィルムの辺
22 加熱延伸フィルムの辺
23 加熱延伸フィルムの辺
24 加熱延伸フィルムの辺
100 保持装置
110 型枠
121 クリップ
122 クリップ
123 クリップ
124 クリップ