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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】開環共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20230613BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20230613BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C08G61/08
C08L21/00
C08L65/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020516214
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2019015775
(87)【国際公開番号】W WO2019208239
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2018083021
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角替 靖男
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晋吾
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/133028(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/051819(WO,A1)
【文献】特表2015-531017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G61/
C08L65/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物由来の構造単位、および、シクロペンテン由来の構造単位を含む開環共重合体であって、
前記開環共重合体中の全繰り返し構造単位に対する、前記ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が25~90重量%であり、前記シクロペンテン由来の構造単位の含有割合が10~75重量%であり、
前記開環共重合体の重量平均分子量が、100,000~1,000,000であり、
前記開環共重合体中のシス/トランス比が、0/100~50/50である開環共重合体。
【化3】
(式中、R~Rは水素原子、炭素数1~20の鎖状炭化水素基、または、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、mは0である。)
【請求項2】
前記開環共重合体のガラス転移温度が、-70~10℃である請求項1に記載の開環共重合体。
【請求項3】
一般式(1)において、R~Rが、水素原子または炭素数1~3のアルキル基である請求項1または2に記載の開環共重合体。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載の開環共重合体を含むゴム組成物。
【請求項5】
架橋剤をさらに含有する請求項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項またはに記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開環共重合体に関し、より詳しくは、機械強度、伸び特性および反発弾性のいずれにも優れたゴム架橋物を与える開環共重合体に関する。また、本発明は、このような開環共重合体を用いて得られるゴム組成物および該ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シクロペンテンおよびノルボルネン化合物は、WClやMoClなどの周期表第6族遷移金属化合物と、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、テトラブチルスズなどの有機金属活性化剤とからなる、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒の存在下で、メタセシス開環重合することで、不飽和の直鎖状の開環重合体を与えることが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、シクロペンテンおよびノルボルネン化合物からなる開環共重合体であって、共重合体中の全繰返し構造単位に対して、シクロペンテン由来の構造単位が40~90重量%であり、ノルボルネン化合物由来の構造単位が10~60重量%であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が200,000~1,000,000である開環共重合体が開示されている。
【0004】
この特許文献1の技術によれば、シクロペンテンに、ノルボルネン化合物を開環共重合することにより、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性および低発熱性の向上を可能としている。しかしながら、この特許文献1では、靴底ゴムに求められる性能である機械強度、伸び特性および反発弾性を高度にバランスさせることについて、検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/133028号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、機械強度、伸び特性および反発弾性に優れたゴム架橋物を与えることのできる開環共重合体、ならびに、このような開環共重合体を用いて得られるゴム組成物、および、該ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、開環共重合体中、所定の割合にて、特定の構造を有するノルボルネン化合物由来の構造単位、および、単環の環状オレフィン由来の構造単位を含み、なおかつ、重量平均分子量およびシス/トランス比が特定の範囲にある開環共重合体によれば、これを用いて得られるゴム架橋物が、機械強度、伸び特性および反発弾性が高度にバランスされたものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、下記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物由来の構造単位、および、単環の環状オレフィン由来の構造単位を含む開環共重合体であって、前記開環共重合体中の全繰り返し構造単位に対する、前記ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が25~90重量%であり、前記単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合が10~75重量%であり、前記開環共重合体の重量平均分子量が、100,000~1,000,000であり、前記開環共重合体中のシス/トランス比が、0/100~50/50である開環共重合体が提供される。
【化1】
(式中、R~Rは水素原子、炭素数1~20の鎖状炭化水素基、または、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、mは0または1である。)
【0009】
前記開環共重合体のガラス転移温度が、-70~10℃であることが好ましい。
一般式(1)において、mが0であることが好ましい。
一般式(1)において、R~Rが、水素原子または炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。
単環の環状オレフィンが、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンおよびシクロオクテンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、開環共重合体を含むゴム組成物が提供される。
本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、上記ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機械強度、伸び特性および反発弾性に優れたゴム架橋物を与えることのできる開環共重合体、ならびに、このような開環共重合体を用いて得られるゴム組成物、および、該ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<開環共重合体>
本発明の開環共重合体は、下記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物由来の構造単位、および、単環の環状オレフィン由来の構造単位を含む。
【0014】
【化2】
(式中、R~Rは水素原子、炭素数1~20の鎖状炭化水素基、または、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、mは0または1である。)
【0015】
上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物の具体例としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
【0016】
2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネンなどの無置換または鎖状炭化水素置換基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0017】
5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチル、2-メチル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、2-メチル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチルなどのアルコキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0018】
5-ノルボルネン-2-カルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸などのヒドロキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0019】
5-ヒドロキシ-2-ノルボルネン、5-ヒドロキシメチル-2-ノルボルネン、5,6-ジ(ヒドロキシメチル)-2-ノルボルネン、5,5-ジ(ヒドロキシメチル)-2-ノルボルネン、5-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)-2-ノルボルネン、および5-メチル-5-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)-2-ノルボルネンなどのヒドロキシル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0020】
5-ノルボルネン-2-カルバルデヒドなどのヒドロカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
3-メトキシカルボニル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸などのアルコキシカルボニル基とヒドロキシカルボニル基とを有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0021】
酢酸5-ノルボルネン-2-イル、酢酸2-メチル-5-ノルボルネン-2-イル、アクリル酸5-ノルボルネン-2-イル、およびメタクリル酸5-ノルボルネン-2-イルなどのカルボニルオキシ基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0022】
5-ノルボルネン-2-カルボニトリル、および5-ノルボルネン-2-カルボキサミドなどの窒素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0023】
5-クロロ-2-ノルボルネンなどのハロゲン原子を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0024】
5-トリメトキシシリル-2-ノルボルネン、5-トリエトキシシリル-2-ノルボルネンなどのケイ素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0025】
上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組合せて用いてもよい。上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物としては、上記一般式(1)において、mが0である一般式で表されるものが好ましい。また、上記一般式(1)において、R~Rは、お互いに結合して、環を形成しない基であれば特に限定されず、同一であっても異なっていてもよい。R~Rとしては、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましい。上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物としては、なかでも、2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンおよび5-ビニル-2-ノルボルネンがより好ましく、本発明の効果がより得られやすいという観点より、2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネンおよび5-エチル-2-ノルボルネンがさらに好ましい。
【0026】
単環の環状オレフィンとしては、環状構造を1個のみ有するオレフィンであれば特に限定されないが、たとえば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエンなどの環状ジオレフィン;などを挙げることができる。
【0027】
単環の環状オレフィンは、1種類を単独で使用しても2種類以上を組合せて用いてもよい。単環の環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンおよびシクロオクテンが好ましく、本発明の効果がより得られやすいという観点より、シクロペンテンおよびシクロオクテンがより好ましい。
【0028】
本発明の開環共重合体中における、全繰り返し構造単位に対する、ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合は、25~90重量%であり、好ましくは30~85重量%であり、より好ましくは40~85重量%であり、さらに好ましくは45~85重量%であり、特に好ましくは61~85重量%である。ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が低すぎると、得られるゴム架橋物が機械強度、伸び特性および反発弾性に劣るものとなってしまい、ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が高すぎると、得られるゴム架橋物が伸び特性および反発弾性に劣るものとなってしまう。
【0029】
本発明の開環共重合体中における、全繰り返し構造単位に対する、単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合は、10~75重量%であり、好ましくは15~70重量%であり、より好ましくは15~60重量%であり、さらに好ましくは15~55重量%であり、特に好ましくは15~39重量%である。単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合が低すぎると、得られるゴム架橋物が伸び特性および反発弾性に劣るものとなってしまい、単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合が高すぎると、得られるゴム架橋物が機械強度、伸び特性および反発弾性に劣るものとなってしまう。
【0030】
また、本発明の開環共重合体は、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物、および単環の環状オレフィンに加えて、これらと共重合可能な他の単量体を共重合したものであってもよい。このような他の単量体としては、芳香環を有する多環のシクロオレフィン、3環以上のノルボルネン化合物(ただし、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物を除く)などが例示される。芳香環を有する多環のシクロオレフィンとしては、フェニルシクロオクテン、5-フェニル-1,5-シクロオクタジエン、フェニルシクロペンテンなどが挙げられる。3環以上のノルボルネン化合物(ただし、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物を除く)としては、ジシクロペンタジエン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロ-9H-フルオレン、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などが挙げられる。本発明の開環共重合体中における、全繰り返し構造単位に対する、他の単量体由来の構造単位の含有割合は、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下であり、本発明においては、他の単量体由来の構造単位が実質的に含まれていないものであることが特に好ましい。
【0031】
本発明の開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の値として、100,000~1,000,000であり、好ましくは100,000~800,000であり、より好ましくは150,000~700,0000、さらに好ましくは200,000~600,000である。重量平均分子量(Mw)が低すぎると、得られるゴム架橋物が機械強度、伸び特性および反発弾性に劣るものとなってしまい、重量平均分子量(Mw)が高すぎると、製造および取扱いが難しくなる。また、本発明の開環共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.5~3.0である。
【0032】
本発明の開環共重合体のシス/トランス比は、0/100~50/50であり、好ましくは5/95~45/55であり、より好ましくは10/90~40/60であり、さらに好ましくは15/85~39/61である。上記のシス/トランス比とは、本発明の開環共重合体を構成する繰返し単位中に存在する二重結合のシス構造とトランス構造との含有割合(シス/トランスの比率)である。シス/トランス比が大きすぎると、得られるゴム架橋物が機械強度、伸び特性および反発弾性に劣るものとなってしまう。シス/トランス比を上記範囲とすることにより、本発明の開環共重合体を用いて得られるゴム架橋物を、機械強度、伸び特性および反発弾性に優れたものとすることができる。
【0033】
本発明の開環共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは-70~10℃であり、より好ましくは-65~0℃、さらに好ましくは-60~-2℃である。ガラス転移温度(Tg)を上記範囲とすることにより、本発明の開環共重合体を用いて得られるゴム架橋物を、機械強度、伸び特性および反発弾性により一層優れたものとすることができる。なお、開環共重合体のガラス転移温度は、たとえば、使用するノルボルネン化合物の種類および使用量を調整することにより、制御することができる。
【0034】
また、本発明の開環共重合体は、重合体鎖末端に変性基を有するものであってもよい。このような末端変性基を有することで、シリカに対する親和性をより高めることができる可能性があり、これにより、シリカを配合した際における、ゴム組成物中のシリカの分散性を高めることができ場合があり、結果として、ゴム架橋物とした場合における破断強度および耐摩耗性をより高めることができる場合がある。重合体鎖末端に導入する変性基としては、特に限定されないが、周期表第15族の原子、周期表第16族の原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する変性基であることが好ましい。
【0035】
末端変性基を形成するための変性基としては、シリカに対する親和性を高めることができ、これにより、ゴム架橋物とした場合における、破断強度および耐摩耗性をより良好なものとすることができるという観点より、窒素原子、酸素原子、リン原子、イオウ原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する変性基がより好ましく、これらのなかでも、窒素原子、酸素原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する変性基がさらに好ましい。
【0036】
窒素原子を含有する変性基としては、アミノ基、ピリジル基、イミノ基、アミド基、ニトロ基、ウレタン結合基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が例示される。酸素原子を含有する変性基としては、水酸基、カルボン酸基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、エポキシ基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が例示される。ケイ素原子を含有する変性基としては、アルキルシリル基、オキシシリル基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が例示される。リン原子を含有する変性基としては、リン酸基、ホスフィノ基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が例示される。イオウ原子を含有する変性基としては、スルホニル基、チオール基、チオエーテル基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が例示される。また、変性基としては、上記した基を複数含有する変性基であってもよい。これらのなかでも、ゴム架橋物とした場合における、破断強度および耐摩耗性をより向上させことができるという観点から特に好適な変性基の具体例としては、アミノ基、ピリジル基、イミノ基、アミド基、水酸基、カルボン酸基、アルデヒド基、エポキシ基、オキシシリル基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が挙げられ、シリカに対する親和性の観点より、オキシシリル基が特に好ましい。なお、オキシシリル基とは、ケイ素-酸素結合を有する基をいう。
【0037】
オキシシリル基の具体例としては、アルコキシシリル基、アリーロキシシリル基、アシロキシ基、アルキルシロキシシリル基、またはアリールシロキシシリル基などが挙げられる。また、アルコキシシリル基またはアリーロキシシリル基、アシロキシ基を加水分解してなるヒドロキシシリル基を挙げることができる。これらのなかでも、シリカに対する親和性の観点より、アルコキシシリル基が好ましい。
【0038】
アルコキシシリル基は、1つ以上のアルコキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリメトキシシリル基、(ジメトキシ)(メチル)シリル基、(メトキシ)(ジメチル)シリル基、(メトキシ)(ジクロロ)シリル基、トリエトキシシリル基、(ジエトキシ)(メチル)シリル基、(エトキシ)(ジメチル)シリル基、(ジメトキシ)(エトキシ)シリル基、(メトキシ)(ジエトキシ)シリル基、トリプロポキシシリル基などが挙げられる。
【0039】
本発明の開環共重合体の重合体鎖末端における、変性基の導入割合は、特に限定されないが、変性基が導入された開環共重合体鎖末端数/開環共重合体鎖末端全数の百分率の値として、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上である。末端変性基の導入割合が高いほど、タイヤ用のゴム材料とする際に用いられる充填剤としてのシリカとの親和性が高く、これにより、低発熱性の向上効果が高くなるため、好ましい。なお、重合体鎖末端への変性基の導入割合を測定する方法としては、特に限定されないが、末端変性基として、オキシシリル基を導入する場合を例示すると、H-NMRスペクトル測定により求められるオキシシリル基に対応するピーク面積比と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められる数平均分子量とから求めることができる。
【0040】
本発明の開環共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは20~150、より好ましくは22~120、さらに好ましくは25~90である。ムーニー粘度を上記範囲とすることにより、常温および高温での混練を容易なものとすることができ、これにより加工性を良好なものとすることができる。
【0041】
<開環共重合体の製造方法>
本発明の開環共重合体を製造する方法は特に限定されないが、たとえば、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物と、単環の環状オレフィンとを、開環重合触媒の存在下で共重合させる方法が挙げられる。
【0042】
開環重合触媒としては、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物と、単環の環状オレフィンとを、開環共重合できるものであって、シス/トランス比を上記範囲とすることができることから、ルテニウムカルベン錯体が好ましい。
【0043】
ルテニウムカルベン錯体の具体例としては、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)-3,3-ジフェニルプロペニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)t-ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリン-2-イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3-ジシクロヘキシルイミダゾリン-2-イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリドが挙げられる。開環重合触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0044】
開環重合触媒の使用量は、(開環重合触媒:共重合に用いる単量体)のモル比で、通常1:500~1:2,000,000、好ましくは1:700~1:1,500,000、より好ましくは1:1,000~1:1,000,000の範囲である。
【0045】
重合反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶液中で行ってもよい。溶液中で共重合する場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であり、共重合に用いる上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物や単環の環状オレフィン、重合触媒などを溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒またはハロゲン系溶媒を用いることが好ましい。炭化水素系溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などを挙げることができる。また、ハロゲン系溶媒としては、たとえば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロアルカン;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン;などを挙げることができる。これらの溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0046】
上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物と、単環の環状オレフィンとを開環共重合させる際には、必要に応じて、得られる開環共重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤として、オレフィン化合物またはジオレフィン化合物を重合反応系に添加してもよい。
【0047】
オレフィン化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する有機化合物であれば特に限定されないが、たとえば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのα-オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;エチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、スチリルトリメトキシシランなどのケイ素含有ビニル化合物;2-ブテン、3-ヘキセンなどの二置換オレフィン;などが挙げられる。
【0048】
ジオレフィン化合物としては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエンなどの非共役ジオレフィンが挙げられる。
【0049】
分子量調整剤としてのオレフィン化合物およびジオレフィン化合物の使用量は、製造する開環共重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、共重合に用いる単量体に対して、モル比で、通常1/100~1/100,000、好ましくは1/200~1/50,000、より好ましくは1/500~1/10,000の範囲である。
【0050】
また、本発明の開環共重合体を、重合体鎖末端に、変性基を有するものとする場合には、分子量調整剤として、上述したオレフィン化合物やジオレフィン化合物に代えて、変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物を用いることが好ましい。このような変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物を用いることで、共重合により得られる開環共重合体の重合体鎖末端に、変性基を好適に導入することができる。
【0051】
変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物としては、変性基を有し、かつ、メタセシス反応性を有するオレフィン性炭素-炭素二重結合を1つ有する化合物であればよく、特に限定されない。たとえば、開環共重合体の重合体鎖末端にオキシシリル基を導入することを望む場合には、オキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素を重合反応系に存在させればよい。
【0052】
このようなオキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素の例としては、開環共重合体の重合体鎖の一方の末端(片末端)のみに変性基を導入するものとして、ビニル(トリメトキシ)シラン、ビニル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリメトキシ)シラン、アリル(メトキシ)(ジメチル)シラン、アリル(トリエトキシ)シラン、アリル(エトキシ)(ジメチル)シラン、スチリル(トリメトキシ)シラン、スチリル(トリエトキシ)シラン、スチリルエチル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリエトキシシリルメチル)エーテル、アリル(トリエトキシシリルメチル)(エチル)アミンなどのアルコキシシラン化合物;ビニル(トリフェノキシ)シラン、アリル(トリフェノキシ)シラン、アリル(フェノキシ)(ジメチル)シランなどのアリーロキシシラン化合物;ビニル(トリアセトキシ)シラン、アリル(トリアセトキシ)シラン、アリル(ジアセトキシ)メチルシラン、アリル(アセトキシ)(ジメチル)シランなどのアシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリメチルシロキシ)シランなどのアルキルシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリフェニルシロキシ)シランなどのアリールシロキシシラン化合物;1-アリルヘプタメチルトリシロキサン、1-アリルノナメチルテトラシロキサン、1-アリルノナメチルシクロペンタシロキサン、1-アリルウンデカメチルシクロヘキサシロキサンなどのポリシロキサン化合物;などが挙げられる。
【0053】
また、開環共重合体の重合体鎖の両方の末端(両末端)に変性基を導入するものとして、ビス(トリメトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、2-ブテン-1,4-ジ(トリメトキシシラン)、2-ブテン-1,4-ジ(トリエトキシシラン)、1,4-ジ(トリメトキシシリルメトキシ)-2-ブテンなどのアルコキシシラン化合物;2-ブテン-1,4-ジ(トリフェノキシシラン)などのアリーロキシシラン化合物;2-ブテン-1,4-ジ(トリアセトキシシラン)などのアシロキシシラン化合物;2-ブテン-1,4-ジ[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]などのアルキルシロキシシラン化合物;2-ブテン-1,4-ジ[トリス(トリフェニルシロキシ)シラン]などのアリールシロキシシラン化合物;2-ブテン-1,4-ジ(ヘプタメチルトリシロキサン)、2-ブテン-1,4-ジ(ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン)などのポリシロキサン化合物;などが挙げられる。
【0054】
オキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物などの変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物は、開環共重合体の重合体鎖末端への変性基の導入作用に加えて、分子量調整剤としても作用するため、変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物の使用量は、製造する開環共重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、共重合に用いる単量体に対して、モル比で、通常1/100~1/100,000、好ましくは1/200~1/50,000、より好ましくは1/500~1/10,000の範囲である。
【0055】
重合反応温度は、特に限定されないが、好ましくは-100℃以上であり、より好ましくは-50℃以上、さらに好ましくは0℃以上、特に好ましくは20℃以上である。また、重合反応温度の上限は特に限定されないが、好ましくは120℃未満であり、より好ましくは100℃未満、さらに好ましくは90℃未満、特に好ましくは80℃未満である。重合反応時間も、特に限定されないが、好ましくは1分間~72時間、より好ましくは10分間~20時間である。
【0056】
重合反応により得られる開環共重合体には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合してもよい。重合溶液として開環共重合体を得た場合において、重合溶液から開環共重合体を回収するためには、公知の回収方法を採用すればよく、たとえば、スチームストリッピングなどで溶媒を分離した後、固体をろ別し、さらにそれを乾燥して固形状の開環共重合体を取得する方法などが採用できる。
【0057】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物には、上述した本発明の開環共重合体に、常法に従って、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、シリカ以外の充填剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0058】
架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’-メチレンビス-o-クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基をもったアルキルフェノール樹脂;などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄がより好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部である。
【0059】
架橋促進剤としては、たとえば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジオルトトリルグアニジン、1-オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤;ジエチルチオウレアなどのチオウレア系架橋促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩などのチアゾール系架橋促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系架橋促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが特に好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部である。
【0060】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸や酸化亜鉛などを用いることができる。架橋活性化剤の配合量は適宜選択されるが、高級脂肪酸の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部であり、酸化亜鉛の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05~10重量部、より好ましくは0.5~3重量部である。
【0061】
プロセス油としては、鉱物油や合成油を用いてよい。鉱物油は、アロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイルなどが通常用いられる。その他の配合剤としては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコーンオイルなどの活性剤;カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどのシリカ以外の充填剤;石油樹脂、クマロン樹脂などの粘着付与剤;ワックスなどが挙げられる。
【0062】
本発明のゴム組成物は、シリカを含有することもできる。
【0063】
シリカとしては、特に限定されないが、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのなかでも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
シリカとしては、窒素吸着比表面積が、50~300m/gであるものが好ましく、80~220m/gであるものがより好ましく、100~170m/gであるものが特に好ましい。比表面積がこの範囲であると、開環共重合体とシリカとの親和性が特に良好となる。また、シリカのpHは、7未満であることが好ましく、より好ましくは5~6.9である。なお、窒素吸着比表面積は、ASTMD3037-81に準拠して、BET法にて測定することができる。
【0065】
本発明のゴム組成物中における、シリカの配合量は、ゴム組成物中の上述した本発明の開環共重合体を含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは1~150重量部、より好ましくは10~120重量部、さらに好ましくは15~100重量部、特に好ましくは20~80重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の破断強度および耐摩耗性をより適切に高めることができる。
【0066】
本発明のゴム組成物には、開環共重合体とシリカとの親和性をより向上させる目的で、シランカップリング剤をさらに配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどや、特開平6-248116号公報に記載されているγ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類を挙げることができる。なかでも、テトラスルフィド類が好ましい。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは1~15重量部である。
【0067】
また、本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、上述した本発明の開環共重合体以外のゴムを含んでいてもよい。本発明の開環共重合体以外のゴムとしては、たとえば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、乳化重合SBR(スチレン-ブタジエン共重合ゴム)、溶液重合ランダムSBR(結合スチレン5~50重量%、ブタジエン部分の1,2-結合含有量10~80%)、高トランスSBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70~95%)、低シスBR(ポリブタジエンゴム)、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70~95%)、スチレン-イソプレン共重合ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合ゴム、乳化重合スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、高ビニルSBR-低ビニルSBRブロック共重合ゴム、ポリイソプレン-SBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。なかでも、NR、BR、IR、SBRが好ましく用いられる。これらのゴムは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
本発明のゴム組成物中の開環共重合体の含有割合は、ゴム成分の全量に対して、10重量%以上とすることが好ましく、20重量%以上とすることがより好ましく、30重量%以上とすることが特に好ましい。この割合が低すぎると、破断強度および耐摩耗性の向上効果が得られなくなるおそれがある。
【0069】
本発明のゴム組成物は、常法に従って各成分を混練することにより得ることができる。たとえば、架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と開環共重合体などのゴム成分とを混練後、その混練物に架橋剤と架橋促進剤とを混合してゴム組成物を得ることができる。架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と開環共重合体などのゴム成分との混練温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは120~180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒間~30分間である。架橋剤と架橋促進剤との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却後に行われる。
【0070】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~12時間、特に好ましくは3分~6時間である。
【0071】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0072】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0073】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、機械強度、伸び特性および反発弾性に優れるものである。そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。また、本発明のゴム架橋物は、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、およびスタッドレスタイヤなどの各種タイヤにおいて、トレッド、カーカス、サイドウォール、およびビード部などのタイヤ各部位に好適に用いることができる。本発明のゴム架橋物は、特に、靴底ゴムとして、好適に用いることができる。
【実施例
【0074】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験、評価は下記によった。
【0075】
<分子量>
テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、開環共重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を、ポリスチレン換算値として測定した。測定装置としてHLC-8320GPC(東ソー社製)を用いた。測定は、TSKgelSuperMultiporeHZ-H(東ソー社製)を4本直列に繋いだカラムを用い、流速0.35ml/分、サンプル注入量10μml、カラム温度40℃の条件で行った。
【0076】
<ノルボルネン化合物構造単位および単環の環状オレフィン構造単位の割合>
開環共重合体中の単量体組成比を、H-NMRスペクトル測定から求めた。すなわち、重クロロホルムを溶媒として、H-NMR測定を行い、二重結合由来の5.0~5.5ppmのシグナルの積分比と、ノルボルネン化合物由来の2.3~3.0ppmのシグナルの積分比に基づいて決定した。
【0077】
<主鎖二重結合のシス/トランス比>
開環共重合体の主鎖二重結合のシス/トランス比を、13C-NMRスペクトル測定から求めた。すなわち、重クロロホルムを溶媒として、13C-NMR測定を行い、シスを示す134.0ppm付近(ノルボルネン化合物単位連鎖由来)、130.0ppm付近(単環の環状オレフィン構造単位連鎖由来)、135.4ppm付近(ノルボルネン化合物構造単位/単環の環状オレフィン構造単位の交互連鎖由来)のシグナルの積分比 と、トランスを示す133.0ppm付近(ノルボルネン化合物単位連鎖由来)、130.5ppm付近(単環の環状オレフィン構造単位連鎖由来)、128.4ppm付近(ノルボルネン化合物構造単位/単環の環状オレフィン構造単位の交互連鎖由来)のシグナルの積分比 から求めた。
【0078】
<ガラス転移温度(Tg)>
開環共重合体のガラス転移温度(Tg)を、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温で測定した。
【0079】
<引張試験>
試料となるゴム組成物を160℃で20分間プレス架橋して試験片を作製し、得られた架橋物シートを、列理方向に対して平行方向に、ダンベル状6号形に打ち抜くことで、ダンベル状試験片を得た。そして、得られたダンベル状試験片について、試験機として引張試験機(製品名「TENSOMETER10K」、ALPHA TECHNOLOGIES社製、ロードセル式 1kN)を使用し、JIS K6251:2010に準拠して、23℃、500mm/分の条件にて、引張試験を行い、引張強度と切断時伸び(以下、伸びという)を測定した。
【0080】
<反発弾性試験>
試料となるゴム組成物を、金型を用いて、加圧しながら160℃で、25分間プレス成形して、直径29mm、厚さ12.5mmの円柱状のゴム架橋物を得た。そして、得られた円柱状のゴム架橋物について、試験機としてリュプケ式反発弾性試験機(高分子計器社製)を使用して、JIS K6255:1996に準拠して、23℃、保持力:29~39Nの条件にて、反発弾性率を測定した。
【0081】
《実施例1》
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたガラス反応容器に、ノルボルネン化合物として2-ノルボルネン(NB)100部、単環の環状オレフィンとしてシクロペンテン(CPE)100部、トルエン394部および1-ヘキセン0.24部を加えた。次に、トルエン10部に溶解したジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)0.012部を加え、室温で4時間重合反応を行った。重合反応後、過剰のビニルエチルエーテルを加えることにより重合を停止した。
【0082】
重合溶液を2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)を含む大過剰のメタノールに注ぎ、沈殿した重合体を回収し、メタノールで洗浄した後、50℃で3日間、真空乾燥して、開環共重合体124部を得た。得られた開環共重合体の数平均分子量(Mn)は155,000、重量平均分子量(Mw)は365,000で、2-ノルボルネン構造単位/シクロペンテン構造単位比は72/28(重量比)、シス/トランス比は17/83、ガラス転移温度(Tg)は-4℃であった。
【0083】
上記にて得られた開環共重合体100部を容積250mlのバンバリーミキサーで素練りし、それに、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):163m/g)50部、およびプロセスオイル(商品名「アロマックス T-DAE」、JX日鉱日石エネルギー社製)8部、シランカップリング剤(ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、商品名「Si69」、デグッサ社製)3部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練した。その混練物に、酸化亜鉛(亜鉛華1号)3部、ステアリン酸(商品名「SA-300」、ADEKA社製)2.0部、および老化防止剤(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)2.0部を添加し、2.5分間混練して、バンバリーミキサーからゴム組成物を排出させた。混練終了時のゴム組成物の温度は150℃であった。このゴム組成物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練した後、バンバリーミキサーからゴム組成物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られたゴム組成物と、硫黄1.5部および架橋促進剤:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーDM」)0.9部、架橋促進剤:1,3-ジ-o-トリルグアニジン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーDT」)0.6部、および、架橋促進剤:テトラメチルチウラムモノスルフィド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーTS」)0.1部を混練した後、シート状のゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、引張強度、伸び、反発弾性率を評価した。表1にその結果を示す。なお、これらの評価は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0084】
《実施例2》
ノルボルネン化合物として2-ノルボルネン120部、単環の環状オレフィンとしてシクロオクテン(COE)80部とし、1-ヘキセン0.34部とした以外は実施例1と同様にして、開環共重合体194部を得た。得られた開環共重合体の数平均分子量(Mn)は103,000、重量平均分子量(Mw)は249,000で、2-ノルボルネン構造単位/シクロオクテン構造単位比は59/41(重量比)、シス/トランス比は18/82、ガラス転移温度(Tg)は-32℃であった。
【0085】
上記にて得られた開環共重合体について、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、引張強度、伸び、反発弾性率を評価した。表1にその結果を示す。なお、これらの評価は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0086】
《実施例3》
ノルボルネン化合物として5-エチル-2-ノルボルネン(EtNB)150部、単環の環状オレフィンとしてシクロペンテン50部とし、1-ヘキセン0.20部とした以外は実施例1と同様にして、開環共重合体175部を得た。得られた開環共重合体の数平均分子量(Mn)は185,000、重量平均分子量(Mw)は402,000で、5-エチル-2-ノルボルネン構造単位/シクロペンテン構造単位比は81/19(重量比)、シス/トランス比は21/79、ガラス転移温度(Tg)は-18℃であった。
【0087】
上記にて得られた開環共重合体について、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、引張強度、伸び、反発弾性率を評価した。表1にその結果を示す。なお、これらの評価は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0088】
《実施例4》
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたガラス反応容器に、ノルボルネン化合物として2-ノルボルネン100部、単環の環状オレフィンとしてシクロペンテン100部、トルエン394部および1-ヘキセン0.12部を加えた。次に、トルエン10部に溶解した(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.006部を加え、室温で4時間重合反応を行った。重合反応後、過剰のビニルエチルエーテルを加えることにより重合を停止した。
【0089】
重合溶液を2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)を含む大過剰のメタノールに注ぎ、沈殿した重合体を回収し、メタノールで洗浄した後、50℃で3日間、真空乾燥して、開環共重合体160部を得た。得られた開環共重合体の数平均分子量(Mn)は122,000、重量平均分子量(Mw)は268,000で、2-ノルボルネン構造単位/シクロペンテン構造単位比は62/38(重量比)、シス/トランス比は35/65、ガラス転移温度(Tg)は-25℃であった。
【0090】
上記にて得られた開環共重合体について、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、引張強度、伸び、反発弾性率を評価した。表1にその結果を示す。なお、これらの評価は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0091】
《実施例5》
ノルボルネン化合物として2-ノルボルネン40部、単環の環状オレフィンとしてシクロペンテン160部とし、1-ヘキセン0.20部とした以外は実施例1と同様にして、開環共重合体111部を得た。得られた開環共重合体の数平均分子量(Mn)は122,000、重量平均分子量(Mw)は275,000で、2-ノルボルネン構造単位/シクロペンテン構造単位比は32/68(重量比)、シス/トランス比は18/82、ガラス転移温度(Tg)は-55℃であった。
【0092】
上記にて得られた開環共重合体について、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、引張強度、伸び、反発弾性率を評価した。表1にその結果を示す。なお、これらの評価は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0093】
《比較例1》
ノルボルネン化合物として2-ノルボルネン20部、単環の環状オレフィンとしてシクロペンテン180部とし、1-ヘキセン0.17部とした以外は実施例1と同様にして、開環共重合体120部を得た。得られた開環共重合体の数平均分子量(Mn)は131,000、重量平均分子量(Mw)は283,000で、2-ノルボルネン構造単位/シクロペンテン構造単位比は21/79(重量比)、シス/トランス比は17/83、ガラス転移温度(Tg)は-75℃であった。
【0094】
上記にて得られた開環共重合体について、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、引張強度、伸び、反発弾性率を評価した。本評価結果を基準指数100として、表1に示した。
【0095】
《比較例2》
ノルボルネン化合物として2-ノルボルネン200部のみを用い、単環の環状オレフィンを使用せず、1-ヘキセン0.30部とした以外は実施例1と同様にして、ノルボルネン化合物開環重合体185部を得た。得られたノルボルネン化合物開環重合体の数平均分子量(Mn)は158,000、重量平均分子量(Mw)は350,000で、2-ノルボルネン構造単位のみからなる重合体であり、シス/トランス比は24/76、ガラス転移温度(Tg)は31℃であった。
【0096】
上記にて得られたノルボルネン化合物開環重合体について、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、引張強度、伸び、反発弾性率を評価した。表1にその結果を示す。なお、これらの評価は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0097】
《比較例3》
1-ヘキセン1.60部とした以外は実施例1と同様にして、開環共重合体97部を得た。得られた開環共重合体の数平均分子量(Mn)は27,000、重量平均分子量(Mw)は59,000で、2-ノルボルネン構造単位/シクロペンテン構造単位比は68/32(重量比)、シス/トランス比は17/83、ガラス転移温度(Tg)は-10℃であった。
【0098】
上記にて得られた開環共重合体について、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、引張強度、伸び、反発弾性率を評価した。表1にその結果を示す。なお、これらの評価は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0099】
《参考例1》
ジイソブチルアルミニウムモノ(n-ブトキシド)/トルエン溶液(2.5重量%)の調製
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に、トルエン88部、および25.4重量%のトリイソブチルアルミニウム/n-ヘキサン溶液(東ソー・ファインケム社製)7.8部を加えた。-45℃に冷却し、激しく攪拌しながら、n-ブタノール1.02部(トリイソブチルアルミニウムに対して当モル量)をゆっくりと滴下した。その後、攪拌しながら室温になるまで放置し、ジイソブチルアルミニウムモノ(n-ブトキシド)/トルエン溶液(2.5重量%濃度)を調製した。
【0100】
《比較例4》
窒素雰囲気下、ガラス容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液8.7部、および参考例1で調製した2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n-ブトキシド)/トルエン溶液4.3部を加え、10分間攪拌し、次いで酢酸エチル0.039部を加えて10分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、ノルボルネン化合物として2-ノルボルネン100部、単環の環状オレフィンとしてシクロペンテン100部、および1-ヘキセン0.35部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液13部を加えて、25℃で6時間重合反応を行った。6時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のイソプロパノールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)を含む大過剰のイソプロパノールに注いだ。沈殿した重合体を回収し、メタノールで洗浄した後、50℃で3日間、真空乾燥して、開環共重合体115部を得た。得られた開環共重合体の数平均分子量(Mn)は134,000、重量平均分子量(Mw)は321,000で、2-ノルボルネン構造単位/シクロペンテン構造単位比は68/32(重量比)、シス/トランス比は65/35、ガラス転移温度(Tg)は-15℃であった。
【0101】
上記にて得られた開環共重合体について、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、引張強度、伸び、反発弾性率を評価した。表1にその結果を示す。なお、これらの評価は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0102】
《比較例5》
ノルボルネン化合物としてジシクロペンタジエン(DCPD)100部とした以外は実施例1と同様にして、開環共重合体124部を得た。得られた開環共重合体の数平均分子量(Mn)は99,000、重量平均分子量(Mw)は258,000で、ジシクロペンタジエン構造単位/シクロペンテン構造単位比は60/40(重量比)、シス/トランス比は17/83、ガラス転移温度(Tg)は34℃であった。
【0103】
上記にて得られた開環共重合体について、実施例1と同様にしてゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、引張強度、伸び、反発弾性率を評価した。表1にその結果を示す。なお、これらの評価は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示す結果より、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物と、単環の環状オレフィンとを開環共重合してなり、ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が25~90重量%であり、単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合が10~75重量%であり、重量平均分子量が、100,000~1,000,000であり、シス/トランス比が、0/100~50/50である開環共重合体は、引張強度、切断時伸びおよび反発弾性率がいずれも高いゴム架橋物を与えるものであったことから、機械強度、伸び特性および反発弾性のいずれにも優れたゴム架橋物を与えるものであり、靴底ゴム用途として好適なものであった(実施例1~5)。
【0106】
一方、ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が25重量%未満であり、単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合が75重量%超である開環重合体は、機械強度、伸び特性および反発弾性のいずれにも劣るゴム架橋物を与えるものであった(比較例1)。また、ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が90重量%超であり、単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合が10重量%未満である開環重合体は、伸び特性および反発弾性が劣るゴム架橋物を与えるものであった(比較例2)。
また、開環共重合体の重量平均分子量が、100,000未満である場合には、これを架橋してなるゴム架橋物は、機械強度、伸び特性および反発弾性のいずれにも劣るものであった(比較例3)。
また、開環共重合体中のシス/トランス比が、50/50を超える場合には、これを架橋してなるゴム架橋物は、機械強度、伸び特性および反発弾性のいずれにも劣るものであった(比較例4)。
さらに、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物以外のノルボルネン化合物と、単環の環状オレフィンとを開環共重合した場合には、これを架橋してなるゴム架橋物は、伸び特性および反発弾性が劣るものであった(比較例5)。