(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化パターンの製造方法、硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20230613BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20230613BHJP
G03F 7/029 20060101ALI20230613BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230613BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20230613BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
G03F7/027 514
G03F7/031
G03F7/029
G03F7/004 501
C08F290/14
C08F2/50
(21)【出願番号】P 2022092957
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2019501408の分割
【原出願日】2018-02-22
【審査請求日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2017032368
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 伸行
(72)【発明者】
【氏名】鯉渕 由香里
(72)【発明者】
【氏名】生田目 豊
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200643(JP,A)
【文献】特開2016-008992(JP,A)
【文献】特開2017-004017(JP,A)
【文献】特開2015-187750(JP,A)
【文献】特開2008-070897(JP,A)
【文献】特開2015-127817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
C08F 290/14
C08F 2/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b1)成分
、(b2)成分
及び(d)成分を含む感光性樹脂組成物。
(a)下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体
(b1)下記式(11)で表される化合物及び下記式(12)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物
(b2)下記式(
b2-1)で表される化合
物
(d)下記式(d-1)で表される化合物
【化26】
(式(1)中、R
1は
4,4’-オキシジフタル酸二無水物に由来する構造であり、R
2は2価の有機基であり、R
3及びR
4は各々独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は炭素-炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
【化27】
(式(11)中、R
11は炭素数1~12のアルキル基であり、aは0~5の整数である。R
12は水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。R
13及びR
14は各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、フェニル基又はトリル基を示す。
式(12)中、R
15は、-OH、-COOH、-O(CH
2)OH、-O(CH
2)
2OH、-COO(CH
2)OH又は-COO(CH
2)
2OHであり、R
16及びR
17は各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基である。bは0~5の整数である。)
【化28】
【請求項2】
前記(b1)成分が前記式(11)で表される化合
物である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b1)成分の含有量が前記(a)成分100質量部に対して0.05~5.0質量部であり、前記(b2)成分の含有量が前記(a)成分100質量部に対して0.5~10.0質量部である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(b1)成分の含有量が前記(a)成分100質量部に対して0.05~1.0質量部である請求項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(b1)成分の含有量が前記(a)成分100質量部に対して0.15~0.60質量部である請求項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(b2)成分の含有量が前記(a)成分100質量部に対して0.5~5.0質量部である請求項1~5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(b1)成分の含有量と前記(b2)成分の含有量の質量比が1:3~1:30である請求項1~6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに(e)増感剤を含む請求項1~
7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜に活性光線を照射後、現像して樹脂パターンを得る工程と、
前記樹脂パターンを加熱処理する工程とを含む、
硬化パターンの製造方法。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項11】
請求項
10に記載の硬化物を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項12】
請求項
11に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化パターンの製造方法、硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜、及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路(LSI)の保護膜材料として、ポリイミド樹脂等の高い耐熱性を有する有機材料が広く適用されている。このようなポリイミド樹脂を用いた保護膜(硬化膜)は、ポリイミド前駆体又はポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して形成した樹脂膜を、加熱して硬化することで得られる。
電子機器の小型化及び高機能化に伴い、樹脂膜には高解像度化が求められている。また、多様なパターン形状(パターンプロファイル)を形成することが可能な樹脂組成物が求められている。
高解像度化に対応すべく、樹脂組成物に含まれる感光剤についても様々な提案がなされており、高感度な感光剤が使用される場合がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/125469号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高感度の感光剤は、添加量のわずかな増減によってパターンプロファイルを大きく変えてしまうためパターン形状の制御が困難であった。また、その高感度性ゆえに最適な露光量の範囲が狭く、露光に際して厳密な露光量調整が必要となるため、取り扱い性が低かった。
本発明の目的は、取り扱い性に優れ、パターンプロファイルを容易に制御することができる感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の高感度な感光剤に特定の標準的な感度の感光剤を組み合わせることによって、感光性樹脂組成物の取り扱い性を大きく向上できること、及びパターンプロファイルの制御が容易になることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、以下の感光性樹脂組成物等が提供される。
1.下記(a)成分、(b1)成分及び(b2)成分を含む感光性樹脂組成物。
(a)下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体
(b1)下記式(11)で表される化合物及び下記式(12)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物
(b2)下記式(21)で表される化合物及び下記式(22)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物
【化1】
(式(1)中、R
1は4価の有機基であり、R
2は2価の有機基であり、R
3及びR
4は各々独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は炭素-炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
【化2】
(式(11)中、R
11は炭素数1~12のアルキル基であり、aは0~5の整数である。R
12は水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。R
13及びR
14は各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、フェニル基又はトリル基を示す。
式(12)中、R
15は、-OH、-COOH、-O(CH
2)OH、-O(CH
2)
2OH、-COO(CH
2)OH又は-COO(CH
2)
2OHであり、R
16及びR
17は各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基である。bは0~5の整数である。)
【化3】
(式(21)中、R
21は炭素数1~12のアルキル基であり、R
22及びR
23は各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数4~10のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基であり、cは0~5の整数である。
式(22)中、R
24及びR
25は各々独立に炭素数1~12のアルキル基であり、d及びeは各々独立に0~5の整数であり、s及びtは各々独立に0~3の整数であり、sとtの和は3である。)
2.前記(b1)成分が前記式(11)で表される化合物であり、前記(b2)成分が前記式(21)で表される化合物である1に記載の感光性樹脂組成物。
3.前記(b1)成分の含有量が前記(a)成分100質量部に対して0.05~5.0質量部であり、前記(b2)成分の含有量が前記(a)成分100質量部に対して0.5~10.0質量部である1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
4.前記(b1)成分の含有量が前記(a)成分100質量部に対して0.05~1.0質量部である1~3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
5.前記(b1)成分の含有量が前記(a)成分100質量部に対して0.15~0.60質量部である1~3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
6.前記(b2)成分の含有量が前記(a)成分100質量部に対して0.5~5.0質量部である1~5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
7.前記(b1)成分の含有量と前記(b2)成分の含有量の質量比が1:3~1:30である1~6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
8.さらに(d)架橋剤を含む1~7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
9.さらに(e)増感剤を含む1~8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
10.1~9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜に活性光線を照射後、現像して樹脂パターンを得る工程と、
前記樹脂パターンを加熱処理する工程とを含む、
硬化パターンの製造方法。
11.1~9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物。
12.11に記載の硬化物を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
13.12に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を有する電子部品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、取り扱い性に優れ、パターンプロファイルを容易に制御することができる感光性樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1の感光性樹脂組成物を用いて得られた樹脂パターンの断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】本発明の実施形態である層間絶縁膜、カバーコート層及び表面保護膜を有する半導体装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の感光性樹脂組成物、硬化パターンの製造方法、硬化物、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
本明細書において、「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、本明細書において感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、感光性樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、感光性樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。「(メタ)アクリロキシ」とは「メタクリロキシ」又は「アクリロキシ」を表し、「(メタ)アクリレート」は「メタクリレート」又は「アクリレート」を表す。
【0009】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、下記(a)成分、(b1)成分及び(b2)成分を含む。
(a)下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体
(b1)下記式(11)で表される化合物及び下記式(12)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物
(b2)下記式(21)で表される化合物及び下記式(22)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物
【化4】
(式(1)中、R
1は4価の有機基であり、R
2は2価の有機基であり、R
3及びR
4は各々独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は炭素-炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
【化5】
(式(11)中、R
11は炭素数1~12のアルキル基であり、aは0~5の整数である。R
12は水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。R
13及びR
14は各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、フェニル基又はトリル基を示す。
式(12)中、R
15は、-OH、-COOH、-O(CH
2)OH、-O(CH
2)
2OH、-COO(CH
2)OH又は-COO(CH
2)
2OHであり、R
16及びR
17は各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基である。bは0~5の整数である。)
【化6】
(式(21)中、R
21は炭素数1~12のアルキル基であり、R
22及びR
23は各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数4~10のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基であり、cは0~5の整数である。
式(22)中、R
24及びR
25は各々独立に炭素数1~12のアルキル基であり、d及びeは各々独立に0~5の整数であり、s及びtは各々独立に0~3の整数であり、sとtの和は3である。)
本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくはネガ型の感光性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、特定の高感度な感光剤に特定の標準的な感度の感光剤を組み合わせることによって、高感度な感光剤のみを用いた場合に比べて、適用できる露光量の範囲(マージン)を大幅に拡大することができ、即ち、取り扱い性を大きく向上できる。また、標準的な感度の感光剤のみを用いた場合に比べて、感光剤の総添加部数を抑えることが可能となり、それによりアウトガスの発生を低減でき、さらにコストも削減できる。
また、本発明の感光性樹脂組成物は、感光剤の添加量増減に伴うパターンプロファイルの変化が緩やかであり、所望のパターンプロファイルを容易に得ることができる。
【0011】
以下、本発明に用いる各成分について説明する。
((a)成分)
(a)成分は、下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体である。
【化7】
(式(1)中、R
1は4価の有機基であり、R
2は2価の有機基であり、R
3及びR
4は各々独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は炭素-炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
【0012】
式(1)中のR1は、原料として用いられるテトラカルボン酸又はその二無水物に由来する構造である。R1に対応する原料としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。
【0013】
R
1の4価の有機基は、硬化膜の低応力化の観点から、下記式(2a)~(2e)で表される基のいずれかであることが好ましい。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化8】
(式(2d)中、X及びYは、各々独立に結合するベンゼン環と共役しない2価の基又は単結合を示す。
式(2e)中、Zはエーテル結合(-O-)又はスルフィド結合(-S-)である。)
【0014】
式(2d)のX及びYの「結合するベンゼン環と共役しない2価の基」は、例えば、-O-、-S-、又は下記式で表わされる2価の基である。
【化9】
(式中、R
5は炭素原子又は珪素原子である。R
6は各々独立に水素原子、又は、フッ素原子等のハロゲン原子である。)
【0015】
これら式(2a)~(2e)で表される基の中でも、式(2e)で表される基がより好ましい。
【0016】
また、R1に対応する原料としては、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、m-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス{4’-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス{4’-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス{4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸二無水物等を用いてもよい。
【0017】
式(1)中のR
2は、原料として用いるジアミン化合物に由来する構造である。
R
2の2価の有機基は、i線透過率の観点から下記式(5)で表わされる2価の有機基であることが好ましい。
【化10】
(式(5)中、R
30~R
37は各々独立に水素原子、フッ素原子又は1価の有機基であり、R
30~R
37の少なくとも1つはフッ素原子又は1価の有機基である。)
R
30~R
37の1価の有機基として、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)のアルキル基(例えばメチル基)、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)のフッ化アルキル基(例えばトリフルオロメチル基)等が挙げられる。
【0018】
R
2の2価の有機基は、i線透過率、入手のし易さの観点から式(6)で表わされる2価の有機基であることがより好ましい。
【化11】
(式(6)中、R
38及びR
39は各々独立にフッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。)
【0019】
式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体において、全ての式(1)で表される構造単位に対して、R2が式(5)又は式(6)で表される2価の有機基である構造単位の割合は、1~100mol%としてもよく、10~100mol%としてもよく、30~100mol%としてもよい。
【0020】
R2が式(5)又は(6)で表される2価の有機基である場合の原料としては、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(フルオロ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル等が挙げられる。
【0021】
また、R2が式(5)又は(6)で表される2価の有機基以外の2価の有機基である場合、対応するジアミン化合物を用いてもよく、このようなジアミン化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン、2,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、2,2’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジアミノジフェニルスルフィド、o-トリジン、o-トリジンスルホン、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、2,4-ジアミノメシチレン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ベンゾフェノンジアミン、ビス-{4-(4’-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2-ビス{4-(4’-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス{4-(3’-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、ジアミノポリシロキサン等が挙げられる。上述したジアミン化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体において、全ての式(1)で表される構造単位に対して、R2が式(5)又は(6)で表される2価の有機基以外の2価の有機基である構造単位の割合は、1~100mol%としてもよく、10~100mol%としてもよく、30~100mol%としてもよい。
【0023】
式(1)中のR3及びR4は、各々独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は炭素-炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。
【0024】
アルキル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~6)としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-デシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数5~15、さらに好ましくは炭素数6~12)としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0025】
炭素-炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基としては、アルキル基の炭素数が1~10である(メタ)アクリロキシアルキル基等が挙げられる。
アルキル基の炭素数が1~10である(メタ)アクリロキシアルキル基としては、(メタ)アクリロキシエチル基、(メタ)アクリロキシプロピル基、(メタ)アクリロキシブチル基等が挙げられる。
【0026】
R3及びR4の少なくとも一方が、炭素-炭素不飽和二重結合を有する有機基であることが好ましい。
【0027】
式(1)で表されるポリイミド前駆体の分子量は、ポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000~100,000であることが好ましく、15,000~100,000であることがより好ましく、20,000~85,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が10,000以上であると、硬化後の応力を充分に低下することができる。100,000以下であると、溶剤への溶解性がより向上し、溶液の粘度が減少して取り扱い性をより向上することができる。尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定することができ、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求めることができる。
【0028】
本発明で用いる(a)成分は公知の方法により合成することができ、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを付加重合させて合成することができる。テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物のモル比は通常1.0で行うが、分子量や末端残基を制御する目的で、0.7~1.3の範囲のモル比で行ってもよい。モル比が0.7~1.3であれば、得られるポリイミド前駆体の分子量を一定以上にすることができ、硬化後の低応力性を十分発現することができる。
【0029】
(a)ポリイミド前駆体の含有量は、感光性樹脂組成物中20~60質量%としてもよく、25~55質量%としてもよく、30~55質量%としてもよい。
【0030】
((b1)成分)
(b1)成分及び後述する(b2)成分は感光剤であり、通常、活性光線の照射によってラジカルを発生する。(b1)成分は、例えば、活性光線に対する感度が後述する(b2)成分より高い、高感度な感光剤である。
【0031】
(b1)成分は下記式(11)及び下記式(12)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物である。
【化12】
式(11)中、R
11は炭素数1~12のアルキル基であり、aは0~5の整数である。R
12は水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。R
13及びR
14は各々独立に水素原子、炭素数1~12(好ましくは炭素数1~4)のアルキル基、フェニル基又はトリル基を示す。aが2以上の整数の場合、R
11はそれぞれ同一でも異なってもよい。
【0032】
R11は、好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。aは好ましくは1である。R12は、好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくはエチル基である。R13及びR14は、好ましくは各々独立に炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0033】
式(11)で表される化合物としては、例えば、下記式(11-1)で表される化合物が挙げられ、BASFジャパン株式会社製「IRGACURE OXE 02」として入手可能である。
【化13】
【0034】
【化14】
式(12)中、R
15は、-OH、-COOH、-O(CH
2)OH、-O(CH
2)
2OH、-COO(CH
2)OH又は-COO(CH
2)
2OHであり、R
16及びR
17は各々独立に水素原子、炭素数1~12(好ましくは炭素数1~6)のアルキル基、炭素数4~10のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基である。bは0~5の整数である。bが2以上の整数の場合、R
15はそれぞれ同一でも異なってもよい。
R
15は、好ましくは-O(CH
2)
2OHである。bは好ましくは0又は1である。R
16は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はヘキシル基である。R
17は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基であり、より好ましくはメチル基又はフェニル基である。
【0035】
式(12)で表される化合物としては、例えば下記式(12-1)で表される化合物が挙げられ、BASFジャパン株式会社製「IRGACURE OXE 01」として入手可能である。また、下記式(12-2)で表される化合物が挙げられ、株式会社ADEKA製「NCI-930」として入手可能である。
【化15】
【0036】
((b2)成分)
(b2)成分は、例えば、活性光線に対する感度が(b1)成分より低い、標準的な感度の感光剤である。(b2)成分は下記式(21)及び下記式(22)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物である。
【化16】
式(21)中、R
21は炭素数1~12のアルキル基であり、R
22及びR
23は各々独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基(好ましくは炭素数1~4)、炭素数1~12のアルコキシ基(好ましくは炭素数1~4)、炭素数4~10のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基であり、cは0~5の整数である。cが2以上の整数の場合、R
21はそれぞれ同一でも異なってもよい。
【0037】
cは好ましくは0である。R22は、好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。R23は、好ましくは炭素数1~12のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
【0038】
式(21)で表される化合物としては、例えば下記式(21-1)で表される化合物が挙げられ、Lambson社製「G-1820(PDO)」として入手可能である。
【化17】
【0039】
【化18】
式(22)中、R
24及びR
25は各々独立に炭素数1~12(好ましくは炭素数1~4)のアルキル基であり、d及びeは各々独立に0~5の整数であり、s及びtは各々独立に0~3の整数であり、sとtの和は3である。dが2以上の整数の場合、R
24はそれぞれ同一でも異なってもよい。eが2以上の整数の場合、R
25はそれぞれ同一でも異なってもよい。sが2以上の整数の場合、括弧内の基はそれぞれ同一でも異なってもよい。tが2以上の整数の場合、括弧内の基はそれぞれ同一でも異なってもよい。
【0040】
dは好ましくは0である。R25は、好ましくは各々独立に炭素数1~4のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。eは好ましくは2~4の整数であり、より好ましくは3である。sとtの組合せ(s、t)は、好ましくは(1,2)又は(2,1)である。
【0041】
式(22)で表される化合物としては、例えば下記式(22-1)で表される化合物が挙げられ、BASFジャパン株式会社製「IRGACURE TPO」として入手可能である。また、下記式(22-2)で表される化合物が挙げられ、BASFジャパン株式会社製「IRGACURE BAPO」として入手可能である。
【化19】
【0042】
(b1)成分として上記式(11)で表される化合物を用い、かつ、(b2)成分として上記式(21)で表される化合物を用いると好ましい。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物における(b1)成分の含有量は、通常、(a)成分100質量部に対して0.05~5.0質量部であり、好ましくは0.05~1.0質量部であり、より好ましくは0.15~0.6質量部である。
【0044】
本発明の感光性樹脂組成物における(b2)成分の含有量は、通常、(a)成分100質量部に対して0.5~10.0質量部であり、好ましくは0.5~5.0質量部である。
【0045】
(b1)成分の含有量が(a)成分100質量部に対して0.05~5.00質量部であり、かつ、(b2)成分の含有量が(a)成分100質量部に対して0.5~10.0質量部であると好ましい。
【0046】
(b1)成分と(b2)成分の含有量の質量比は、好ましくは1:3~1:30であり、より好ましくは1:5~1:20である。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物における(b1)成分と(b2)成分の合計量は、好ましくは(a)成分100質量部に対して0.6~11.0質量部であり、より好ましくは1.0~5.0質量部であり、さらに好ましくは1.15~4.6質量部である。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物の、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、又は99.9質量%以上が、(a)、(b1)、(b2)及び後述する(c)成分(溶剤)であってもよいし、(a)、(b1)、(b2)及び(c)成分、並びに後述するその他の任意成分から選択される1以上の成分であってもよい。
本発明の感光性樹脂組成物は、本質的に(a)、(b1)、(b2)及び(c)成分からなってもよいし、本質的に(a)、(b1)、(b2)及び(c)成分、並びに後述するその他の任意成分から選択される1以上の成分からなってもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(a)、(b1)、(b2)及び(c)成分のみ、又は(a)、(b1)、(b2)及び(c)成分、並びに後述するその他の任意成分から選択される1以上の成分のみからなってもよい。
【0049】
(任意成分)
本発明の感光性樹脂組成物は、上記の成分に加えて、必要に応じて任意成分を含んでもよい。任意成分としては、溶剤((c)成分)、架橋剤((d)成分)、増感剤((e)成分)、有機シラン化合物((f)成分)、その他の成分等が挙げられる。
【0050】
((c)成分)
(c)成分としては、感光性樹脂組成物中の成分を十分に溶解できるものであれば特に制限はないが、(a)成分であるポリイミド前駆体を十分に溶解する極性溶剤が好ましく、極性溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレンカーボネート、乳酸エチル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物における(c)成分の含有量に特に制限はないが、(a)成分100質量部に対して、50~300質量部が好ましく、50~250質量部がより好ましく、100~200質量部がさらに好ましい。
【0052】
((d)成分)
架橋剤(後述する(f)有機シラン化合物とは異なる)としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4-ビニルトルエン、4-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0053】
架橋剤を含有する場合、架橋剤の含有量は(a)成分100質量部に対して、1~100質量部とすることが好ましく、1~75質量部とすることがより好ましく、1~50質量部とすることがさらに好ましい。
【0054】
((e)成分)
増感剤としては、例えば、7-N,N-ジエチルアミノクマリン、7-ジエチルアミノ-3-テノニルクマリン、3,3’-カルボニルビス(7-N,N-ジエチルアミノ)クマリン、3,3’-カルボニルビス(7-N,N-ジメトキシ)クマリン、3-チエニルカルボニル-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、3-ベンゾイルクマリン、3-ベンゾイル-7-N,N-メトキシクマリン、3-(4’-メトキシベンゾイル)クマリン、3,3’-カルボニルビス-5,7-(ジメトキシ)クマリン、ベンザルアセトフェノン、4’-N,N-ジメチルアミノベンザルアセトフェノン、4’-アセトアミノベンザル-4-メトキシアセトフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノン、ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(N-エチル,N-メチル)ベンゾフェノン、4,4’-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる
【0055】
増感剤を含有する場合、含有量は(a)ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1~3.0質量部とすることがより好ましく、0.1~1.0質量部とすることがさらに好ましい。
【0056】
((f)成分)
有機シラン化合物としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバメート、3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N―フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
有機シラン化合物を含むと、感光性樹脂組成物の硬化後の基板への密着性を向上することができる。
【0057】
有機シラン化合物を含有する場合、有機シラン化合物の含有量は(a)成分100質量部に対して、0.5~15質量部とすることがより好ましく、0.5~10質量部とすることがさらに好ましい。
【0058】
(その他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物は、防錆性をより向上させる観点から防錆剤を含んでもよい。防錆剤としては、5-アミノ-1H-テトラゾール、1-メチル-5-アミノ-テトラゾール、1-メチル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-カルボキシメチル-5-アミノ-テトラゾール等が挙げられる。これらのテトラゾール化合物は、その水溶性塩であってもよい。
防錆剤を含む場合の含有量は、(a)成分100質量部に対して0.05~5.0質量部が好ましく、0.5~4.0質量部がより好ましい。
【0059】
また、本発明の感光性樹脂組成物は安定剤を含んでもよい。安定剤としては、1,4,4-トリメチル-2,3-ジアザビシクロ[3.2.2]-ノナ-2-エン-N,N-ジクソイド等公知の化合物を用いることができる。
安定剤を含む場合の含有量は、(a)成分100質量部に対して0.05~5.0質量部が好ましく、0.1~2.0質量部がより好ましい。
【0060】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上述の感光性樹脂組成物を硬化することで得ることができる。本発明の硬化物は、パターン硬化膜として用いてもよく、パターンがない硬化膜として用いてもよい。
本発明の硬化物の膜厚は、1~20μmが好ましい。
【0061】
本発明の硬化パターンの製造方法は、本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程(塗膜形成工程)、形成した塗膜に活性光線を照射する工程(露光工程)、現像して樹脂パターンを得る工程(現像工程)、及び樹脂パターンを加熱処理する工程(加熱処理工程)を含む。
【0062】
塗膜形成工程において、感光性樹脂組成物を基板上に塗布する方法としては、浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、スピンコート法等が挙げられる。
基板としては、シリコンウエハ、金属基板、セラミック基板等が挙げられる。
【0063】
感光性樹脂組成物を基板上に塗布した後、溶剤を加熱により除去(乾燥)することによって、粘着性の少ない塗膜(感光性樹脂膜)を形成することができる。
乾燥する際の加熱温度は80~130℃であることが好ましく、乾燥時間は30~300秒であることが好ましい。乾燥はホットプレート等の装置を用いて行なうことが好ましい。
【0064】
露光工程では、得られた塗膜に所望のパターンが描かれたマスクを通して活性光線を照射することで露光を行う。
本発明の感光性樹脂組成物はi線露光用に好適であるが、照射する活性光線としては、紫外線、遠紫外線、可視光線、電子線、X線等を用いることができる。
【0065】
露光工程の後、現像工程において、未露光部を適当な現像液で溶解除去することによって、所望のパターンを得ることができる。
現像液としては特に制限はないが、1,1,1-トリクロロエタン等の難燃性溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、酢酸エステル類等の良溶媒;これら良溶媒と低級アルコール、水、芳香族炭化水素等の貧溶媒との混合溶剤などが用いられる。現像後は必要に応じて貧溶媒(例えば、水、エタノール、2-プロパノール、PGMEA(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート))等でリンス洗浄を行う。
【0066】
加熱処理工程における加熱温度は、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。加熱処理の時間は、20分間~6時間が好ましく、30分間~3時間がより好ましい。
【0067】
本発明の硬化パターンは厚さが1μm以上であることが好ましく、保護膜として使用するためには5μm以上であることがより好ましく、通常20μm以下である。
【0068】
[硬化物の用途]
本発明の硬化物(硬化パターン)は、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜又は再配線層等として用いることができる。これら層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び再配線層は電子部品に用いることができる。これにより、信頼性が高い電子部品を得ることができる。
【0069】
本発明の電子部品は、半導体装置や多層配線板等に使用することができる。前記半導体装置や多層配線板は、各種電子デバイス等に使用できる。
本発明の電子部品は、上述の層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び再配線層から選択される1以上を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【0070】
本発明の層間絶縁膜、カバーコート層及び表面保護膜を有する半導体装置の概略断面図を
図2に示す。層間絶縁層(層間絶縁膜)1の上にはAl配線層2が形成され、その上部にはさらに絶縁層(絶縁膜)3(例えばP-SiN層)が形成され、さらに素子の表面保護層(表面保護膜)4が形成されている。Al配線層2のパット部5からは再配線層6が形成され、外部接続端子であるハンダ、金等で形成された導電性ボール7との接続部分である、コア8の上部まで伸びている。さらに表面保護層4の上には、カバーコート層9が形成されている。再配線層6は、バリアメタル10を介して導電性ボール7に接続されているが、この導電性ボール7を保持するために、カラー11が設けられている。このような構造のパッケージを実装する際には、さらに応力を緩和するために、アンダーフィル12を介することもある。
【実施例】
【0071】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
製造例1
[ポリマーIの合成]
4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)31.02g(100mmol)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)26.03g(100mmol)、ハイドロキノン0.1g及び触媒量のDBU(ジアザビシクロウンデセン)を、118gのNMP中に溶解して、室温で48時間撹拌してエステル(ODPA-HEMAエステル)溶液を得た。
ODPA-HEMAエステル溶液を氷浴中で冷却しながら、塩化チオニル26.17g(220mmol)を反応溶液の温度が10℃を超えないようにして滴下した後、1時間撹拌して、酸塩化物溶液を調製した。
【0073】
別途、2,2’-ジメチルベンジジン(DMAP)21.23g(100mmol)、ピリジン34.80g(440mmol)、ハイドロキノン0.8gを85gのNMPに溶解した溶液を準備し、先に調製した酸塩化物溶液に、氷浴中で冷却しながら反応溶液の温度が10℃を超えないようにして滴下した。
滴下終了後、反応液を蒸留水に滴下して生じた沈殿物をろ別して集め、蒸留水で数回洗浄した後、真空乾燥してポリアミド酸エステル(ポリマーI)を得た。ポリマー1の重量平均分子量は35,000であった。
【0074】
ポリマー1の重量平均分子量は、GPC法標準ポリスチレン換算により求め、以下の条件で測定した。
ポリマー1(0.5mg)に対して溶剤[テトラヒドロフラン(THF)/N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)=1/1(容積比)]1mLの溶液を用いて測定した。
測定装置:検出器 株式会社島津製作所製RID-20AD
ポンプ :株式会社島津製作所製LC-20AD
株式会社島津製作所製C-R4A Chromatopac
測定条件:カラム Gelpack GL-S300MDT-5×2本
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr(0.03mol/L)、H3PO4(0.06mol/L)
流速:1.0mL/min、検出器:UV270nm
【0075】
製造例2
[ポリマーIIの合成]
撹拌機、温度計を備えた1.0Lのフラスコ中に、ODPA62.0g(199.9mmol)、HEMA5.2g(40.0mmol)及び触媒量の1,4-ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタントリエチレンジアミンを250.0gのNMP中に溶解して、45℃で1時間撹拌した後25℃まで冷却し、m-フェニレンジアミン5.5g(50.9mmol)、オキシジアニリン(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)23.8g(118.9mmol)及び乾燥したNMP100mLを加えた後45℃で150分撹拌した後、室温へ冷却した。この溶液へトリフルオロ酢酸無水物78.5g(373.8mmol)を滴下した後、20分撹拌した後、HEMA53.1g(408.0mmol)を加え45℃で20時間撹拌した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミド酸エステルを得た(ポリマーII)。
ポリマーIIの重量平均分子量は35,000であった。
【0076】
ポリマーIIの重量平均分子量は、GPC法標準ポリスチレン換算により求め、製造例1と同じ条件で測定した。
【0077】
実施例1~17、比較例1~6
[感光性樹脂組成物の調製]
表1に示す成分及び配合量にて、実施例1~17及び比較例1~6の感光性樹脂組成物を調製した。表1の配合量は、(a)成分100質量部に対する、各成分の質量部である。
用いた各成分は以下の通りである。
【0078】
[(a)成分]
・ポリマーI:製造例1で得られたポリマーI
・ポリマーII:製造例2で得られたポリマーII
【0079】
[(b1)成分]
・b1-1:下記構造を有する化合物(BASFジャパン株式会社製、商品名「IRGACURE OXE 02」)
【化20】
【0080】
[(b2)成分]
・b2-1:下記構造を有する化合物(Lambson社製、商品名「G-1820(PDO)」)
【化21】
【0081】
[(c)成分]
・NMP
【0082】
[(d)成分]
・d-1:下記構造を有する化合物(SARTOMER社製、商品名「TEGDMA」
【化22】
・d-2:下記構造を有する化合物(新中村化学工業株式会社製、商品名「A-TMMT」)
C-(CH
2OOC-CH=CH
2)
4
・d-3:下記構造を有する化合物(新中村化学工業株式会社製、商品名「ATM-35E」)
【化23】
(n11+n12+n13+n14=35)
【0083】
[(e)成分]
・e-1:下記構造を有する化合物(Aldrich社製、商品名「EMK」)(Etはエチル基を表す。)
【化24】
【0084】
[(f)成分]
・f-1:γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(United Chemical Technologies社製、商品名「UCT-801」)
【0085】
[他の成分]
・Taobn:1,4,4-トリメチル-2,3-ジアザビシクロ[3.2.2]-ノナ-2-エン-N,N-ジクソイド(Hampford Research社製、商品名「Taobn」)
・5ATz:下記構造を有する化合物(東京化成工業株式会社製、商品名「5-アミノ-1H-テトラゾール」)
【化25】
【0086】
【0087】
[感光性樹脂組成物の評価]
得られた感光性樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。
(樹脂パターンの製造)
得られた感光性樹脂組成物を6インチシリコンウエハ上にスピンコート法によって塗布し、110℃のホットプレート上で4分間加熱し、溶剤を揮発させ、膜厚13μmの塗膜を得た。この塗膜をシクロペンタノンに浸漬した場合に完全に溶解するまでの時間の2倍を現像時間として設定した。得られた塗膜について、スクウェアホールパターンを有するフォトマスクを介してi線ステッパーFPA-3000iW(キヤノン株式会社製)を用いて、表2に示す露光量で露光を行った。露光後の塗膜を、シクロペンタノンに浸漬して上記現像時間でパドル現像した後、PGMEAでリンス洗浄を行い、樹脂パターンを得た。
【0088】
(パターンプロファイルの評価)
実施例1,2,5,7,8,10、13及び比較例2~6で得られた樹脂パターンについて、断面形状(パターンプロファイル)を走査型電子顕微鏡によって観察し、基板に対するパターンのテーパー角度を、テーパーの中点での傾きを測定することによって求めた。結果を表2に示す。また、(b1)成分と(b2)成分それぞれの(a)成分に対する質量部を表2中に示す。
実施例1で得られたパターンプロファイルの走査型顕微鏡写真を
図1に示す。また、当該パターンにおけるテーパーの中点での傾きを示す補助線を
図1に示す。実施例1で得られたパターンの基板に対するテーパー角度は75°であった。
尚、表2中に記載のない実施例、比較例については当該評価を行わなかった。
【0089】
【0090】
比較例2~4から、高感度の感光剤(b1-1)のみによってもパターンプロファイルの調整が可能であることが分かった。しかしながら、添加量のわずかな変化によってパターンのテーパー角度が急激に変化してしまい、厳密な角度調整が困難であった。また、後述するように、当該感光剤の添加量を増やすと、適用できる露光量の範囲が小さくなってしまい、感光性樹脂組成物の取り扱い性が低くなるという不都合もある。
また、比較例5及び6から、標準的な感度の感光剤(b2-1)のみを用いる場合、添加量を変更してもパターンプロファイルはほとんど変化しなかった。
【0091】
一方、本発明の感光性樹脂組成物は、高感度の感光剤と標準的な感度の感光剤を併用するため、添加量と混合比を適宜調節することによって、テーパー角度を容易に調整することができる。また、添加量の増減に伴うパターンプロファイルの変化が緩やかであり、所望のパターンプロファイルを容易に得られた。
【0092】
(解像度)
得られた感光性樹脂組成物を6インチシリコンウエハ上にスピンコート法によって塗布し、110℃のホットプレート上で4分間加熱し、溶剤を揮発させ、膜厚13μmの塗膜を得た。この塗膜をシクロペンタノンに浸漬した場合に完全に溶解するまでの時間の2倍を現像時間として設定した。得られた塗膜について、フォトマスクを介してi線ステッパーFPA-3000iW(キヤノン株式会社製)を用いて、100mJ/cm
2~1100mJ/cm
2において100mJ/cm
2刻みで露光を行ったウエハを、シクロペンタノンに浸漬してパドル現像した後、PGMEAでリンス洗浄を行い、樹脂パターンを得た。
解像(現像)できたスクウェアホールパターンのマスク寸法の最小値を解像度(μm)とし、以下の基準に沿って評価した。結果を表3に示す。また(b1)成分と(b2)成分それぞれの(a)成分に対する質量部を表3中に示す。
A:解像度10μm以下
B:解像度10μm超15μm以下
C:解像度15μm超30μm以下
D:解像度30μm超
【表3】
【0093】
比較例1~4より、高感度の感光剤(b1-1)のみを用いた場合、10μm以下の高い解像度が得られる露光量の範囲(「最適露光量範囲」とする)が小さかった。特に、添加量が多い場合の最適露光量範囲は極めて狭く、感光性樹脂組成物の取り扱い性が低かった(比較例1~3)。
一方、本発明の感光性樹脂組成物は、高感度の感光剤と標準的感度の感光剤とを併用することによって、同量の高感度感光剤のみを用いた場合に比べて最適露光量範囲が大きくなった。例えば、(b1)成分のみを0.2質量部用いた場合の最適露光量範囲は300~700mJ/cm2であるのに対し(比較例4)、同量の(b1)成分に加えて(b2)成分を用いた場合の最適露光量範囲は少なくとも200~800mJ/cm2(実施例9)、最大で200~1100mJ/cm2(実施例11)となり、取り扱い性が大きく向上した。尚、実施例15の最適露光量範囲は200~400mJ/cm2であるが、これはポリマーIIの特性によるものであり、ポリマーIIに(b1)成分のみを組み合わせた場合の最適露光量範囲はさらに小さくなるものと考えられる。
また、(b1)成分の含有量を0.3質量部以下にすることによって、最適露光量範囲が一定以上の水準に達するため、感光性樹脂組成物の取り扱い性に優れることが分かった。
【0094】
(硬化パターンの製造)
上記の解像度評価で現像を行った樹脂パターンを、縦型拡散炉(光洋リンドバーグ株式会社製)を用いて、窒素雰囲気下、225℃で1時間加熱硬化して、硬化パターンを得た。良好な硬化パターンが得られた。
【0095】
(現像後残膜率)
上記の解像度評価で現像を行った樹脂パターンについて、現像前の膜厚(13μm)と現像後の膜厚から下記式により現像後残膜率を算出し、以下の基準に沿って評価した。結果を表4に示す。また(b1)成分と(b2)成分それぞれの(a)成分に対する質量部を表4中に示す。
現像後残膜率(%)=(現像後膜厚/現像前膜厚)×100
膜厚の測定は、光干渉式膜厚計「ラムダエース VM-2210」(大日本スクリーン製造株式会社製)で行った。尚、現像後の膜厚は、樹脂パターンにおいてパターンを形成していない部分について測定を行った。
A:現像後残膜率85%以上
B:現像後残膜率80%以上85%未満
C:現像後残膜率80%未満
【表4】
【0096】
表4より、(b1)成分と(b2)成分を併用している実施例は、同量の(b1)成分のみを用いる比較例と比較して、80%以上の高い残膜率が得られる露光量範囲が広いことが分かる。また、(b1)成分が(a)成分100質量部に対して0.3質量部以上であると、0.2質量部の場合と比較して、高い残膜率が得られる露光量範囲がさらに広いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体装置等の電子部品の保護膜材料やパターン膜形成材料として好適に使用することができる。
【0098】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献及び本願のパリ優先の基礎となる日本出願明細書の内容を全てここに援用する。