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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】オフセット補正装置および位置測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20230613BHJP
   G01D 5/20 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
G01D5/244 B
G01D5/20 110E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019119521
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021004828
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】林 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森 洋篤
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-57316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 - 5/252
G01D 5/39 - 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンコーダから出力された検出信号の振幅が所定範囲内に入るように前記検出信号のゲインを調整することで前記振幅を調整する振幅調整部と、
前記検出信号の振幅中心のオフセットを補正するオフセット補正部と、
前記ゲインの段階的に設定された値と、前記ゲインの各値に対応してオフセット量を予め格納する格納部と、を備え、
前記オフセット補正部は、前記振幅調整部が前記ゲインを変化させる場合に、前記格納部に格納された関係を参照し、変化後の前記ゲインに対応する前記オフセット量を取得し、取得した前記オフセット量に基づいて前記オフセットを補正することを特徴とするオフセット補正装置。
【請求項2】
前記格納部において、前記オフセット量は、所定のゲインに対応するオフセット量に対する変化率として格納されていることを特徴とする請求項1に記載のオフセット補正装置。
【請求項3】
前記振幅調整部は、前記ゲインの値に応じて、前記所定範囲を変動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオフセット補正装置。
【請求項4】
前記格納部に格納されている前記ゲインと前記オフセットとの関係は、書き込み可能であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のオフセット補正装置。
【請求項5】
エンコーダから出力された検出信号の振幅が所定範囲内に入るように前記検出信号のゲインを調整することで前記振幅を調整する振幅調整部と、
前記検出信号の振幅中心のオフセットを補正するオフセット補正部と、
前記ゲインとオフセット量との関係を予め格納する格納部と、を備え、
前記格納部において、前記オフセット量は、所定のゲインに対応するオフセット量に対する変化率として格納され、
前記オフセット補正部は、前記振幅調整部が前記ゲインを変化させる場合に、前記格納部に格納された前記関係を参照し、変化後の前記ゲインに対応する前記オフセット量を取得し、取得した前記オフセット量に基づいて前記オフセットを補正することを特徴とするオフセット補正装置。
【請求項6】
エンコーダから出力された検出信号の振幅が所定範囲内に入るように前記検出信号のゲインを調整することで前記振幅を調整する振幅調整部と、
前記検出信号の振幅中心のオフセットを補正するオフセット補正部と、
前記ゲインとオフセット量との関係を予め格納する格納部と、を備え、
前記振幅調整部は、前記ゲインの値に応じて、前記所定範囲を変動させ、
前記オフセット補正部は、前記振幅調整部が前記ゲインを変化させる場合に、前記格納部に格納された前記関係を参照し、変化後の前記ゲインに対応する前記オフセット量を取得し、取得した前記オフセット量に基づいて前記オフセットを補正することを特徴とするオフセット補正装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のオフセット補正装置と、
前記エンコーダと、
前記オフセット補正装置によって前記オフセットが補正された前記検出信号に基づいて、位置を演算する演算装置と、を備えることを特徴とする位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、オフセット補正装置および位置測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スケールと検出ヘッドとの間の相対的な位置を検出するエンコーダにおいて、位置検出信号として二相正弦波信号を用いる方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。これらのエンコーダにおいて、スケールと検出ヘッドとの相対的な姿勢変動によって、検出信号の強度が変化することがある。
【0003】
そこで、検出信号の強度が所定範囲に入るように、検出信号のゲインを自動的に調整するオートゲインコントロール(AGC:Automatic Gain Control)が行われる。しかしながら、AGCによって検出信号の振幅中心がオフセットすることがある。そこで、オフセットを自動で調整する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】小型化をはかったリニアエンコーダ「FIBER SCALE」、ミツトヨ 森洋篤,川田洋明,高橋知隆
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-25871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術では、補正のために正弦波の周期における一定範囲の測定点を必要とするため、ゲイン切り替えのタイミングからオフセット補正が適応されるまでに、タイムラグが生じる。
【0007】
1つの側面では、タイムラグを抑制しつつオフセットを補正することができるオフセット補正装置および位置測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、本発明に係るオフセット補正装置は、エンコーダから出力された検出信号の振幅が所定範囲内に入るように前記検出信号のゲインを調整することで前記振幅を調整する振幅調整部と、前記検出信号の振幅中心のオフセットを補正するオフセット補正部と、前記ゲインの段階的に設定された値と、前記ゲインの各値に対応してオフセット量を予め格納する格納部と、を備え、前記オフセット補正部は、前記振幅調整部が前記ゲインを変化させる場合に、前記格納部に格納された関係を参照し、変化後の前記ゲインに対応する前記オフセット量を取得し、取得した前記オフセット量に基づいて前記オフセットを補正することを特徴とする。
【0010】
上記オフセット補正装置において、前記格納部において、前記オフセット量は、所定のゲインに対応するオフセット量に対する変化率として格納されていてもよい。
【0011】
上記オフセット補正装置において、前記振幅調整部は、前記ゲインの値に応じて、前記所定範囲を変動させてもよい。
【0012】
上記オフセット補正装置は、前記格納部に格納されている前記ゲインと前記オフセットとの関係は、書き込み可能であってもよい。本発明に係る他のオフセット補正装置は、エンコーダから出力された検出信号の振幅が所定範囲内に入るように前記検出信号のゲインを調整することで前記振幅を調整する振幅調整部と、前記検出信号の振幅中心のオフセットを補正するオフセット補正部と、前記ゲインとオフセット量との関係を予め格納する格納部と、を備え、前記格納部において、前記オフセット量は、所定のゲインに対応するオフセット量に対する変化率として格納され、前記オフセット補正部は、前記振幅調整部が前記ゲインを変化させる場合に、前記格納部に格納された前記関係を参照し、変化後の前記ゲインに対応する前記オフセット量を取得し、取得した前記オフセット量に基づいて前記オフセットを補正することを特徴とする。本発明に係る他のオフセット補正装置は、エンコーダから出力された検出信号の振幅が所定範囲内に入るように前記検出信号のゲインを調整することで前記振幅を調整する振幅調整部と、前記検出信号の振幅中心のオフセットを補正するオフセット補正部と、前記ゲインとオフセット量との関係を予め格納する格納部と、を備え、前記振幅調整部は、前記ゲインの値に応じて、前記所定範囲を変動させ、前記オフセット補正部は、前記振幅調整部が前記ゲインを変化させる場合に、前記格納部に格納された前記関係を参照し、変化後の前記ゲインに対応する前記オフセット量を取得し、取得した前記オフセット量に基づいて前記オフセットを補正することを特徴とする。
【0013】
1つの態様では、位置測定装置は、上記いずれかのオフセット補正装置と、前記エンコーダと、前記オフセット補正装置によって前記オフセットが補正された前記検出信号に基づいて、位置を演算する演算装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
タイムラグを抑制しつつオフセットを補正することができるオフセット補正装置および位置測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は検出ヘッドを例示する図であり、(b)はスケールを例示する図である。
図2】位置算出を例示する図である。
図3】検出ヘッドとスケールとの間のギャップ量を基準位置から変動させた場合の、受信コイルから得られる検出信号の信号強度を例示する図である。
図4】所定の閾値を設定してAGCを行った場合の信号強度を例示する図である。
図5】正弦波の中心値の変動を例示する図である。
図6】検出信号の誤差を例示する図である。
図7】(a)は実施形態に係る位置測定装置の構成を例示する図であり、(b)はオフセット格納部に格納されているテーブルを例示する図である。
図8】精度誤差を例示する図である。
図9】各ゲインにおける閾値を複数種類設定した場合の出力信号の信号強度を例示する図である。
図10】オフセット格納部に格納されているテーブルを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態の説明に先立って、エンコーダの一例について説明する。図1(a)は、検出ヘッド201を例示する図である。図1(b)は、スケール204を例示する図である。検出ヘッド201およびスケール204は、それぞれ略平板形状を有し、所定の隙間を介して対向配置される。
【0017】
図1(a)で例示するように、検出ヘッド201には、送信コイル202、受信コイル203などが設けられている。送信コイル202は、矩形コイルを構成している。受信コイル203は、送信コイル202の内側に配置されている。
【0018】
図1(b)で例示するように、スケール204においては、複数の結合コイル205が、測定軸に沿って周期的に配列されている。各結合コイル205は、互いに離間しており、互いに絶縁されている。各結合コイル205は、送信コイル202と電磁結合するとともに、受信コイル203と電磁結合する。
【0019】
送信コイル202に電流を流し、結合コイル205を介して受信コイル203に発生する起電力を検出信号として測定する。この検出信号を用いて、スケール204の測定軸における位置を測定することができる。
【0020】
このようなエンコーダでは、例えば、検出信号として、位相が互いに90度異なる二相正弦波信号(A相信号およびB相信号)が用いられる。この方式では、図2で例示するように、位相が互いに90度ずれた2相(A相およびB相)の正弦波でリサージュを描き、リサージュの中心点を基準にした場合の出力点Pの角度θによって、位置の算出が行われる。このようなエンコーダでは、検出ヘッド201とスケール204との相対的な姿勢変動は、二相正弦波信号の強度変化および波形の乱れを引き起こし、検出不良や精度悪化の要因となる。
【0021】
図3は、検出ヘッド201とスケール204との間のギャップ量を基準位置から変動させた場合の、受信コイル203から得られる検出信号の信号強度を例示する図である。検出信号の信号強度は、振幅のことである。図3において、横軸はギャップ変化を示し、縦軸は信号強度を示す。図3で例示するように、ギャップ量が大きくなるほど信号強度が低下し、ギャップ量が小さくなるほど信号強度が大きくなる。
【0022】
図3の例では、ギャップ量が基準位置から-0.2mm変化して信号強度が検出範囲外まで増加(オーバーレンジ)している。この場合、正常な位置算出が困難となる。このことは、エンコーダが取付けられている装置本体の摺動時に位置ずれが起き、検出ヘッド201とスケール204との間の相対位置が変化した場合や、装置本体が設置初期の状態から経時的に位置変動を起こしたりした場合に、エンコーダ本来の性能が発揮できないことを意味している。
【0023】
そこで、信号強度の大小に応じて検出信号のゲインを自動的に調整するオートゲインコントロール(AGC:Automatic Gain Control)を用いることで、エンコーダ使用中の姿勢変動による信号強度の変化を低減することができる。図4は、所定の閾値を設定してAGCを行った場合の信号強度を例示する図である。図4において、横軸はギャップ量を示し、縦軸は信号強度を示す。図4で例示するように、AGCを行うことで、ギャップ量が大きくなっても小さくなっても、信号強度が所定の範囲内に収まるようになる。したがって、エンコーダを設置する装置の摺動性能に依存せず、経時変化にも強いエンコーダを実現することができる。
【0024】
一方、上述したように、エンコーダの出力位置をリサージュの中心点からの角度によって算出する場合には、エンコーダ設置後に信号調整を行って中心値をゼロに調整するためのオフセット補正が必要となる。
【0025】
しかしながら、オフセットの補正後、実際の測定中に検出ヘッド201とスケール204との間の相対的な位置変動などにより、信号強度が変化することがある。この信号強度の変化に応じてAGCによるゲイン調整を行うと、図5で例示するように、検出信号として得られる正弦波の中心値も変動する場合がある。中心値に変動δが生じると、図6で例示するように、出力点Pの角度θが角度θ’に変化し、検出信号の値に誤差が生じる。ゲインの変化比率が大きいほど誤差の値も大きくなる。
【0026】
そこで、エンコーダから出力される検出信号のオフセットを自動的に補正する技術を用いることが考えられる。しかしながら、補正のために正弦波の周期における一定範囲の測定点を必要とする場合には、ゲイン切り替えのタイミングから補正が適応されるまでに、タイムラグが生じる。また、補正のための演算負荷も生じ、測定のスループットに悪影響が生じる。また、補正によってゲイン切り替え後の誤差の増加を抑えることはできるが、ゼロにはできない。
【0027】
そこで、以下の実施形態においては、タイムラグを抑制しつつオフセットを補正することができるオフセット補正装置および位置測定装置について説明する。
【0028】
(実施形態)
図7(a)は、実施形態に係る位置測定装置100の構成を例示する図である。図7(a)で例示するように、位置測定装置100は、エンコーダ10、オフセット補正装置20、演算装置30などを備える。エンコーダ10は、位相が互いに異なる正弦波信号を出力すれば特に検出原理が限定されるものではなく、光電式エンコーダ、電磁誘導式エンコーダなどである。また、エンコーダ10は、リニアエンコーダ、ロータリーエンコーダなどである。本実施形態においては、エンコーダ10は、一例として、位相が90度異なる2相正弦波信号(A相信号およびB相信号)を出力するものとする。
【0029】
オフセット補正装置20は、2つのA/Dコンバータ21a,21b、振幅調整部22、オフセット補正部23、信号強度計算部24、AGC部25、オフセット格納部26などを備える。オフセット格納部26は、図7(b)で例示するように、ゲインの各設定値G1,G2,G3…とオフセット量との関係をテーブルとして格納する。ゲインの設定値とオフセット量との関係は、予め実験等によって取得しておくことができる。
【0030】
A/Dコンバータ21aは、エンコーダ10が出力するA相信号を所定のサンプリング周期でサンプリングすることで、A相信号をデジタル化する。A/Dコンバータ21bは、エンコーダ10が出力するB相信号を所定のサンプリング周期でサンプリングすることで、B相信号をデジタル化する。
【0031】
振幅調整部22は、A相信号およびB相信号にゲイン(増幅率)を掛け合わせることによって、A相信号およびB相信号の振幅を調整する。オフセット補正部23は、振幅調整後のA相信号およびB相信号の中心値のオフセットを補正する。例えば、位置測定装置100の初期設定として、初期ゲインがユーザによって設定される。また、位置測定装置100の初期設定として、オフセット補正部23によるオフセット量がユーザによって設定される。
【0032】
信号強度計算部24は、初期設定後の実測定時に、オフセット補正後のA相信号およびB相信号の信号強度(振幅)を計算する。AGC部25は、信号強度計算部24の計算結果に応じて、A相信号およびB相信号の信号強度が検出範囲に入るようにAGCを行う。具体的には、AGC部25は、A相信号およびB相信号の信号強度が第1閾値を下回った場合にはゲインを大きい値にし、信号強度が第1閾値よりも大きい第2閾値を上回った場合にはゲインを小さい値にする。AGC部25は、得られたゲインを振幅調整部22に設定する。振幅調整部22は、設定されたゲインを用いて、A相信号およびB相信号の振幅を調整する。この場合において、AGC部25は、オフセット格納部26を参照し、振幅調整部22に設定したゲインに対応するオフセット量を読み込み、オフセット補正部23に設定する。オフセット補正部23は、設定されたオフセット量を用いて、A相信号およびB相信号のオフセットを補正する。
【0033】
演算装置30は、振幅調整部22による振幅調整後であってオフセット補正部23によるオフセット補正後のA相信号およびB相信号を用いて、位置を演算する。具体的には、エンコーダ10において、測定軸における検出ヘッドとスケールとの相対的な位置変位量を演算する。
【0034】
本実施形態によれば、実験等でゲインの切り替えを行った際に生じたオフセット量を予め取得し、ゲインとオフセット量との関係をオフセット格納部26にしておくことで、AGCを実施してゲインを切り替えた場合のオフセット補正量を適切に設定することができる。この場合、オフセット量を読み込むだけでよいため、ゲインの切り替えと略同時にオフセットの補正が行われる。以上のことから、タイムラグを抑制しつつオフセットを補正することができる。
【0035】
また、初期設定後に経時変化が生じた場合でも、適切にゲインを調整することができるとともに、適切にオフセットを補正することができる。また、オフセット量を読み込むだけでオフセットを補正できることから、演算負荷が抑制される。それにより、位置測定のスループットへの影響を抑制することができる。また、ゲインとオフセット量との関係を予めオフセット格納部26に格納する際に、オフセットをゼロにするオフセット量を取得しておけば、ゲイン切り替え後のオフセットをゼロにすることができるようになる。
【0036】
図8の「補正無し」は、エンコーダ10における検出ヘッドとスケールとのギャップを-0.2mm変動させた際に、オフセット格納部26に格納された関係を用いてオフセット補正を行わなかった場合の精度誤差を例示している。図8の「補正有り」は、-0.2mm変動させた際に、オフセット格納部26に格納された関係を用いてオフセット補正を行った場合の精度誤差を例示している。オフセット補正を行わないことによるオフセット誤差が大きいほど、精度誤差は大きくなる。図8の例では、「補正無し」の場合と比較して「補正有り」の場合の精度誤差が約80%低減されたことがわかる。
【0037】
なお、振幅調整部22は、ゲインの値に応じて、AGCを行う場合の閾値を変動させてもよい。例えば、振幅調整部22は、ゲイン設定値の切り替え閾値を各ゲイン設定値に応じて異なる値に設定することで、基準位置でのゲイン設定値を広範囲で使用してもよい。例えば、各ゲインにおける閾値を複数種類設定した場合の出力信号の信号強度を図9に例示する。これにより、AGCによって広いギャップ変動に対応できるとともに、基準位置付近ではゲイン切り替えを行わずオフセット変動による誤差を最小限に保つ領域を広く取ることができる。
【0038】
オフセット格納部26は、書き換え不可であってもよいが、書き換え可であってもよい。例えば、外部機器から位置測定装置100のインタフェースを介して、オフセット格納部26に格納されているゲインとオフセット量との関係を書き換え可能としてもよい。この構成では、必要に応じて、オフセット格納部26に格納されている情報を更新できるようになる。
【0039】
(第2実施形態)
第1実施形態では、ゲインとオフセット量との複数の組み合わせがオフセット格納部26に格納されていたが、それに限られない。第2実施形態では、図10で例示するように、実験等でゲインの切り替えを行った際に生じたオフセット量の変化率をオフセット格納部26に格納しておく。
【0040】
例えば、各ゲインでのオフセット変化率の作成は、予め製造者が行うことができる。製品出荷後、ユーザが設置した環境において任意のゲイン位置で信号を1回読み取り、オフセット値(絶対量)を計算させる。補正テーブルの1箇所にその値を導入すれば、他のゲインに対応するオフセット補正量は設定した変化率から自動的に計算することができる。ユーザは、任意の1箇所のみで信号を取得すればよいので、作業負担は最小でありながら、製造時と使用時の環境変化・姿勢変動の影響などを抑制し、使用環境を反映したオフセット格納部を作成でき、測定の高精度化を図ることができる。
【0041】
図7の構成では、A相の信号およびB相の信号に対して共通の信号調整部およびオフセット補正部が設けられている。一方で、A相およびB相のオフセット量は、同一にはならないことがある。例えば、あるゲインにおける補正量はA相が50、B相が80など、ズレが生じることがある。共通の補正量で対応すると、高精度化が困難となるおそれがある。しかしながら、共通の変化率を格納しておき、A相およびB相それぞれ得られた任意位置でのオフセット量に対して倍率を掛けると、A相およびB相のそれぞれに応じたオフセット補正量が計算され、より高精度な測定が可能となる。
【0042】
例えば、ゲイン1でのオフセット量が実際の使用時に100だったとすると、自動的に、ゲイン2110、ゲイン3は119.9と計算される。各相それぞれにこの計算を行うこともできる。
【0043】
本実施形態によれば、実験等でゲインの切り替えを行った際に生じたオフセット量を予め取得し、オフセット量の変化率をオフセット格納部26にしておくことで、AGCを行ってゲインを切り替えた場合のオフセット補正量を適切に設定することができる。それにより、測定精度が向上する。また、ゲインの切り替えと同時にオフセットの補正が行われるため、ゲインの切り替えから補正適応までのタイムラグが抑制される。また、ゲインの切り替え時に、オフセット量の変化率を読み込んで乗算するだけでよいため、演算負荷等が抑制される。
【0044】
上記各例において、振幅調整部22が、エンコーダから出力された検出信号の振幅が所定範囲内に入るように前記検出信号のゲインを調整することで前記振幅を調整する振幅調整部の一例として機能する。オフセット補正部23が、前記検出信号の振幅中心のオフセットを補正するオフセット補正部の一例として機能する。オフセット格納部26が、前記ゲインと前記オフセット量との関係を予め格納する格納部の一例として機能する。
【0045】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 エンコーダ
20 オフセット補正装置
21a,21b A/Dコンバータ
22 振幅調整部
23 オフセット補正部
24 信号強度計算部
25 AGC部
26 オフセット格納部
30 演算装置
100 位置測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10