IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JNC株式会社の特許一覧 ▶ JNCファイバーズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図1
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図2
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図3
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図4
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図5
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図6
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図7
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図8
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図9
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図10
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図11
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図12
  • 特許-複合繊維を含む不織布及びその製造方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】複合繊維を含む不織布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/482 20120101AFI20230614BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20230614BHJP
   A44B 18/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
D04H1/482
D04H1/541
A44B18/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019066167
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165035
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399120660
【氏名又は名称】JNCファイバーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】左 鵬
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-528339(JP,A)
【文献】国際公開第2008/015972(WO,A1)
【文献】特開平07-171011(JP,A)
【文献】特公昭58-010504(JP,B2)
【文献】特開平10-304909(JP,A)
【文献】特開2000-160464(JP,A)
【文献】特開2001-000212(JP,A)
【文献】特開2004-194730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 18/00
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己接着性を有する不織布を製造する方法であって、
偏心鞘芯型複合繊維及び並列型複合繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種類の複合繊維を含むウェブを形成する工程、
前記ウェブを熱処理して、ウェブを構成する前記複合繊維をコイル状に捲縮させて不織布を得る工程、及び
前記不織布の少なくとも片面にニードルパンチ加工を施す工程
を含む方法。
【請求項2】
前記熱処理が、スルーエア法で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニードルパンチ加工におけるパンチ密度が6~40回/cm2であり、針深度が8~26mmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法で製造された不織布。
【請求項5】
請求項4に記載の不織布を含む面ファスナー。
【請求項6】
請求項5に記載の面ファスナーを含む創傷被覆材又は吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己接着性(自己付着性)を有する不織布に関する。より具体的には、不織布同士を積層し、軽く力をかけるだけで上層と下層の不織布が物理的な交絡により一体化し、且つ物理的な力により容易に一体化を解除できる不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は大量生産に適していて安価に製造できるだけでなく、通気性や伸縮性を有するため、吸収性物品、フィルター、包装材等、様々な分野で広く使用されている。例えば、不織布を用いた面ファスナー用止着材は、不織布の有する通気性及び伸縮性等の特性を活かすことができるため、衛生用品などに用いられている。
【0003】
このような面ファスナー用途に用いられる不織布として、特許文献1には、短繊維不織布のループ層と短繊維不織布の基材層とを含む、面ファスナー用のループ部材が開示されており、特許文献2には、複合不織布から構成されたフック・ループ型ファスナー用のループ材料が開示されており、特許文献3には、面ファスナーのメス材として使用できる、起毛様不織布が開示されている。
【0004】
その他、特許文献4には、分割型複合繊維を集積させてなる繊維ウェブに、部分的に熱及び圧力を与えて繊維フリースを得た後、該繊維フリースの少なくとも片面からニードルパンチ処理を施すことによって、熱圧着部外の区域に存在する分割型複合繊維の一部を他面に突出させて多数の繊維ループを生成させると共に、該ニードルパンチ処理の衝撃によって、突出させた分割型複合繊維を分割割繊して分割繊維群を発現させることを特徴とする起毛様不織布の製造方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に係る発明は、いずれも面ファスナーのループ部材(メス材)に関するものであり、これと係合するフック部材(オス材)を別に用意することが必要となる。また、特許文献4の方法で得られる起毛様不織布は、汚れ除去性能に優れた拭き布として用いられるものであって、面ファスナー機能を有するものではない。
【0006】
これに対して、不織布自体に自己接着性があれば、他の部材を使用しなくても不織布同士を付着させて一体化することが可能となる。例えば、このような不織布を止血ガーゼとして用いれば、必要な枚数のガーゼを重ねて軽く押さえることによって、あるいは折りたたんだ後、軽く押さえることによって、上層と下層のガーゼが互いに付着して一体化するため、傷の程度に合わせて、所望の厚みを有するガーゼを用意することが可能になる。また、例えば、このような不織布を包帯として用いれば、患部を覆うように複数回巻きつけた後、重ねた包帯同士を付着させて固定することができるため、包帯が外れにくくなり、さらに、包帯の端部をテープ等で止める必要もなくなるため、創傷の処置が容易になる。また、この自己接着性の程度が弱く、わずかな力で接着状態を解除することができる不織布であれば、接着をスピーディーに解除したり接着を再度やり直したりしたい場合に便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-113391号公報
【文献】特表2010-524573号公報
【文献】特開2002-302861号公報
【文献】特開平9-59861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明は、自己接着性により容易に接着することができるとともに、容易に接着状態を解除することができる不織布を提供することを課題とする。また、このような不織布を低コストで製造できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、偏心鞘芯型複合繊維及び並列型複合繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種類の複合繊維を用いて不織布用のウェブを形成し、スルーエア法などによって加熱することにより、前記複合繊維をコイル状に捲縮させて不織布を構成し、その後、当該不織布をニードルパンチ加工することによって、コイル状捲縮を構成している複合繊維を引っ張りほぐして、連続的又は非連続的な多数の環状捲縮部(スパイラル状捲縮部を含む)や、パイル状捲縮部(アーチ状や波形など、閉環構造を有さない捲縮部)や、直線又はゆるやかな曲線状の繊維を出現させることにより、これらが物理的に交絡することによって自己接着性(自己付着性)が生じることを見い出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、上記の課題を解決する以下の構成を有する。
[1]自己接着性を有する不織布を製造する方法であって、
偏心鞘芯型複合繊維及び並列型複合繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種類の複合繊維を含むウェブを形成する工程、
前記ウェブを熱処理して、ウェブを構成する前記複合繊維をコイル状に捲縮させて不織布を得る工程、及び
前記不織布の少なくとも片面にニードルパンチ加工を施す工程
を含む方法。
[2]前記熱処理が、スルーエア法で行われる、[1]に記載の方法。
[3]前記ニードルパンチ加工におけるパンチ密度が6~40回/cm2であり、針深度が8~26mmである、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法で製造された不織布。
[5]前記[4]に記載の不織布を含む面ファスナー。
[6]前記[5]に記載の面ファスナーを含む創傷被覆材又は吸収性物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の不織布は、不織布を構成する複合繊維のコイル状捲縮部をほぐすことにより形成された、連続的又は非連続的な多数の環状捲縮部、パイル状捲縮部、直線又はゆるやかな曲線状の繊維等を有しているため、不織布を2枚重ねて軽く圧をかけることにより、これらが物理的に交絡して自己接着性を示す。また、本発明の不織布は、上記捲縮部の存在により、通気性及び伸縮性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、捲縮の状態を説明する図であって、Aは隣り合う環状体同士が密着したコイル状捲縮部1を模式的に示し、BとCは、連続的な環状捲縮部2を模式的に示す図である。
図2図2は、捲縮の状態を説明する図であって、Aは非連続的な環状捲縮部3と、パイル状捲縮部4とを示す模式図であり、Bはパイル状捲縮部4における、a(パイル状捲縮部の立ち上がる両部分を結んだ直線の長さ)と、b(パイル状捲縮部の頂点から、aに垂直に引いた直線の長さ)を示す模式図である。
図3図3は、実施例1のスルーエア不織布(ニードルパンチ加工前)のマイクロスコープ写真(倍率200倍)である。
図4図4は、実施例1のニードルパンチ不織布のマイクロスコープ写真(倍率200倍)である。
図5図5は、実施例2のニードルパンチ不織布のマイクロスコープ写真(倍率200倍)である。
図6図6は、実施例2のニードルパンチ不織布の別のマイクロスコープ写真(倍率200倍)である。
図7図7は、実施例3のスルーエア不織布(ニードルパンチ加工前)のマイクロスコープ写真(倍率200倍)である。
図8図8は、実施例3のニードルパンチ不織布のマイクロスコープ写真(倍率200倍)である。
図9図9は、実施例3のニードルパンチ不織布の別のマイクロスコープ写真(倍率200倍)である。
図10図10は、各捲縮形状に関するマイクロスコープ写真であり、Aはコイル状捲縮部を、Bはスパイラル状に回転しながら伸びる捲縮部を、Cの点線部分はパイル状捲縮と非連続的な捲縮部を示す。
図11図11は、本発明の不織布の表面同士を接触させた際の物理的な交絡を示すマイクロスコープ写真である(倍率20倍)。
図12図12は、本発明の不織布の表面同士を接触させた際の物理的な交絡を示すマイクロスコープ写真である(倍率200倍)。
図13図13は、本発明の不織布の表面同士を接触させた際の物理的な交絡を示すマイクロスコープ写真である(倍率200倍)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の不織布は、偏心鞘芯型複合繊維及び/又は並列型複合繊維(サイド・バイ・サイド型複合繊維)を含む。これらの複合繊維は、潜在捲縮性複合繊維と呼ばれており、加熱処理を施すと、複合繊維を構成する2種類の成分の熱収縮差によって、コイル状の三次元捲縮が発現して、捲縮が顕在化する。このような潜在捲縮性複合繊維を使用すると、その三次元捲縮により、嵩高で軽量の不織布を得ることができる。
【0014】
本発明で使用される前記複合繊維の繊度は、1~5dtexが好ましく、2~4dtexがより好ましい。繊度をこの範囲とすることにより、コイル状捲縮が発現しやすくなる。なお、複合繊維の横断面形状は、円形に限らず、扁平型等の非円形であってもよい。
【0015】
本発明で使用される複合繊維は、通常は、融点の異なる少なくとも2種類の熱可塑性樹脂成分から構成される。偏心鞘芯型の場合は、融点の低い樹脂成分(例えば、融点が123~134℃の樹脂)が鞘成分として、融点の高い樹脂成分(例えば、融点が150~170℃の樹脂)が芯成分として使用される。本発明で使用される複合繊維において、融点が低い樹脂成分と融点が高い樹脂成分の面積比(繊維軸方向に垂直な切断面における面積比)は、30~70/70~30の範囲であることが好ましく、さらに40~60/60~40の範囲であることが好ましい。なお、本発明で使用する複合繊維は、特許文献4で使用されているような分割型複合繊維ではないことが好ましい。
【0016】
前記熱可塑性樹脂成分として、ポリオレフィン系(例えば、ポリプロピレン、プロピレン共重合体[プロピレンを主成分とし、これと他のα-オレフィンとの共重合体;例えば、エチレン-プロピレン二元共重合体、プロピレン-ブテン-1二元共重合体、プロピレン-ヘキセン-1二元共重合体等]、ポリエチレン等)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド系(例えば、ナイロン6等)、PHBH(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート重合体)のような生分解性ポリエステルが例示できる。複合繊維における低融点成分と高融点成分の具体的な組み合わせとしては、エチレン-プロピレン共重合体(低融点成分)とホモポリプロピレン(高融点成分)、ポリエチレン(低融点成分)とポリプロピレン(高融点成分)等が例示できる。
【0017】
また、前記複合繊維が、偏心鞘芯型の場合、鞘成分が、ポリオレフィン系エラストマーであることが好ましく、エラストマー成分を2~20重量%及びオレフィン成分を98~80重量%含有しており、2~45g/10分のMFRを示すことが好ましい。また、このようなポリオレフィン系エラストマーを、並列型複合繊維に用いてもよい。
【0018】
前記ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-プロピレン非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)が挙げられる。
【0019】
偏心鞘芯型複合繊維及び並列型複合繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種類の複合繊維を含むウェブは、熱風等で熱処理されることで、前記複合繊維に、熱収縮と熱接着とが生じることで不織布となる。熱処理後の不織布中では、複合繊維に三次元捲縮が発現しており、主に、環状体同士が密着して連なるコイル状捲縮(図1A参照)が観察される。熱風等の熱処理の温度は、複合繊維を構成する樹脂成分のうち、融点の低い樹脂成分の溶融開始温度よりも高く、融点の高い樹脂成分の溶融開始温度よりも低いことが好ましい。例えば、熱処理の温度は、融点の低い樹脂成分の溶融開始温度よりも10℃以上高い温度が好ましく、また融点の高い樹脂成分の溶融開始温度よりも20℃以上低いことが好ましい。
【0020】
不織布を製造するためのウェブには、前述の複合繊維に加えて、他の熱接着性を有する繊維や、天然繊維(木質繊維等)、再生繊維(レーヨン等)、半合成繊維(アセテート等)や化学繊維、合成繊維(ポリエステル、アクリル、ナイロン、塩化ビニル等)等のいわゆる熱接着性繊維でない繊維(以下、「非熱接着性繊維」と言う)を含んでもよい。「非熱接着性繊維」とは、不織布を製造する際に行われる熱接着において、熱接着に関与するような熱的変化(溶融又は軟化)を生じない繊維をいう。本発明の複合繊維(偏心鞘芯型複合繊維/並列型複合繊維)以外の繊維が含まれる場合、ウェブの全重量に対する本発明の複合繊維の割合は、発明の効果を阻害しない限り制限されないが、例えば、60~100重量%とすることができ、好ましくは70~100重量%であり、より好ましくは80~100重量%であり、特に好ましくは90~100重量%である。特に、偏心鞘芯型複合繊維または並列型複合繊維のみから構成される不織布が好ましい。
【0021】
カード機でウェブを作成する場合、前記複合繊維は捲縮を有することが好ましい。例えば、クリンパーでジグザグ形状の機械捲縮を付与することが好ましい。捲縮数は、5~15山/2.54cmが好ましく、5~8山/2.54cmがより好ましい。また、カード機にかける複合繊維は、好ましくは30~126mm、より好ましくは38~64mmの短繊維にカットされることが好ましい。
【0022】
また、異なる種類の偏心鞘芯型複合繊維/並列型複合繊維を含むウェブを複数重ねてから、下記に説明する熱処理を行ってもよい。あるいは、偏心鞘芯型複合繊維/並列型複合繊維からなるウェブと、偏心鞘芯型複合繊維/並列型複合繊維ではない繊維からなるウェブとを重ねてから、下記に説明する熱処理を行ってもよい。
【0023】
ウェブを熱処理する方法の好ましい例として、例えば、ウェブを支持搬送する搬送支持体を備えた熱処理装置など(例えば、熱風循環式オーブン、熱風貫通式熱処理機、熱風吹き付け式熱処理機)を用いる、いわゆるスルーエア法(エアースルー法とも称される)により、ウェブ全体を加熱する方法が挙げられる。ウェブにロール等で圧をかけると、コイル状捲縮が発現しにくくなるため、ウェブに機械的圧力をかけない加熱方法(熱圧着しない方法)が好ましい。
スルーエア法の条件は、前記複合繊維を熱収縮させて、コイル状捲縮を発現させることができれば、特に制限されない。例えば、デジタルマイクロスコープで不織布の表面を観察した際(倍率200倍)、マイクロスコープ視野のほぼ全体にわたって、コイル状捲縮が観察されるように、熱処理条件を設定すればよい。また、コイル状捲縮部の直径(完全な円形でない場合は最大径を意味する)は、20~90μmであることが好ましく、40~70μmであることがより好ましい。
適切な熱処理条件は、使用する複合繊維やウェブの厚み等によっても異なるが、例えば、温度100~130℃、より好ましくは105~125℃、特に好ましくは110~120℃で、処理時間40~180秒間、より好ましくは50~120秒、特に好ましくは60~80秒間とすることができる。風速は、0.2~3.0m/sec、より好ましくは1.2~2.4m/secとすることができる。
【0024】
前記熱処理による不織布の熱収縮率は、熱処理前にウェブのMD方向に測定した、所定のポイント間の長さをx値とし、熱処理後の同じポイント間の長さを測定してy値とした際に、以下の式で求められる収縮率が、10%以上90%以下であることが好ましい。例えば30%以上90%未満、50%以上85%以下、70%以上83%以下とすることができる。
【数1】
【0025】
本発明に係る方法は、前記熱処理後に得られた不織布に、ニードルパンチ加工を施すことを特徴とする。ニードルパンチ加工は、不織布を製造するために一般的に使用されている加工方法であり、ニードルパンチ加工のみで、繊維を機械的に絡めて不織布を製造するために使用されることも、サーマルボンド法を行う前の前処理(ウェブの仮止め)のために使用されることもある。
上記一般的な使用方法の場合、ニードルパンチ加工は、繊維同士を交絡させる目的で使用されるが、本発明では、熱処理により生じたコイル状捲縮部をほぐして、連続/非連続的な環状捲縮部や、パイル状捲縮部等を出現させる目的で、ニードルパンチ加工を行うことを特徴とする。
【0026】
ニードルパンチ加工の条件は、所望する不織布の自己接着力の程度や、不織布の目付等によって変動するが、一般的に、ニードル密度(針が不織布1cm2に何回埋入したかを表す)が、好ましくは6~40回/cm2の範囲、より好ましくは10~30回/cm2の範囲、特に好ましくは15~25回/cm2の範囲となるように、ニードル加工機を設定することが好ましい。また、各ニードルのバーブ数は、例えば、好ましくは3~8であり、より好ましくは4~6の範囲とすることができる。針深度は、例えば、好ましくは8~26mmであり、より好ましくは10~20mmの範囲とすることができる。
また、ニードルパンチ加工は、不織布の片面だけでなく、両面に行ってもよい。
【0027】
本発明において、コイル状捲縮部とは、図1Aに示すように、一本の繊維が熱収縮によって螺旋状に回転しながら三次元捲縮しているものを意味する。
【0028】
本発明では、前記熱処理によって前記複合繊維を捲縮させてコイル状捲縮部を発現させた後、ニードルパンチ加工を施すため、熱処理で生じたコイル状捲縮部の多くは、ニードルのバーブによってほぐされる。そのため、各環状体間にスペースがあり、複数の環状体が隣り合って存在する連続的な環状捲縮部(図1B・C)や、非連続的に存在する環状捲縮部(図2の符号3)、及び、パイル状捲縮部(図2の符号4)を有する。
本発明の連続的な環状捲縮部は、図1Bに示すように、回転面の向きがほぼ同じ環状体が連なっている捲縮部(例えば、回転面と直行する方向に直線的に伸びるスパイラル状捲縮部)でもよく、図1Cに示すように、回転面の向きが異なる環状体が連なっている捲縮部でもよい。
また、本発明において、非連続的な環状捲縮部とは、環状捲縮と隣り合う捲縮部が環状を呈していないもの(図2の符号3)、あるいは、環状捲縮同士の距離が離れているため、連続的と認識されないものを意味する。
連続/非連続的な環状捲縮部は、前記コイル状捲縮部の直径(完全な円形でない場合は最大径を意味する。以下同じ)よりも大きな直径を有する(例えば、コイル捲縮が40~60μmの直径を有するのに対して、環状捲縮は80~110μmの直径を有する)。
【0029】
本発明において、パイル状捲縮部とは、図2の符号4に示すように、山形、アーチ形、波形など、凸部が観察され且つ閉環構造を有さないものを意味する。本発明の不織布は、パイル状捲縮部の立ち上がる両部分を直線で結んだ際の直線の長さをaとし、パイル状捲縮部の頂点(前記直線aから垂直方向に最も離れている点)から、前記直線aに垂直に引いた直線の長さをbとした際、bの長さは、40μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。またa、bのいずれかの値が大きくなることで、本発明の不織布は、不織布同士を重ね合わせると、重ね合わせた際に物理的な力により、パイル状捲縮部が、不織布中の環状捲縮部(スパイラル状捲縮部を含む)と交絡し、一体化しやすくなると考えられる。言い換えると、本発明の不織布では、特にパイル状捲縮部と、スパイラル状捲縮部やその他の環状捲縮部(連続あるいは非連続的な環状部分)が、フックのオス・メスになって交絡することによって、自己接着性が出現すると考えられる(図11、12、13参照)。
【0030】
本発明の不織布は、図4~6、8及び9のマイクロスコープ写真に示すように、構造又は特性を言葉で適切に特定することが難しく、かつ、かかる構造又は特性を測定に基づき解析し特定することも困難であるが、本発明の不織布をマイクロスコープで観察すると、少なくともその片面において、連続な環状捲縮部と、非連続的な環状捲縮部と、パイル状捲縮部とが混在した状態が確認できる。また、場合によっては、コイル状捲縮の状態で残っている捲縮部や、直線状又は曲線形状の繊維も確認できる。ニードルパンチによりコイル状捲縮部が引っ張りほぐされるため、本発明の不織布では、一般的に、隣接する環状捲縮とは回転面の向き及び直径の異なる多数の環状捲縮が観察される。
【0031】
本発明において、不織布の少なくとも片面におけるパイル状捲縮部の数は、4個/mm2以上であることが好ましい。より好ましくは、8個/mm2以上であり、特に好ましくは、10個/mm2以上である。単位面積あたりのパイル状捲縮部の数が4個以上であると、不織布同士を重ね合わせた場合、パイル状捲縮部が、不織布中の環状捲縮部等と交絡し、一体化しやすくなる(すなわち、自己接着性が発揮される)と考えられる。
【0032】
本発明において、自己接着性とは、不織布を2枚重ねて手で軽く押さえるだけで、あるいは、軽く力をかけるだけで(例えば、1g/cm2の力を加えるだけで)、上層と下層の不織布が付着し、上層の不織布だけをつかんで持ち上げると、下層の不織布も上層の不織布に付着したまま持ち上がり、そのまま保持しても(例えば1分間又は10分間)下層の不織布が落下しない状態を意味する。
なお、ループ・フック式の面ファスナーは、ループ部材とフック部材が係合することにより、強い接着力を示すが、本発明の不織布は、環状体とパイル等の交絡により緩く結合しているだけであるため、わずかな力(例えば、0.02Nの力)をかけるだけで2枚の不織布を引き離すことができ、引き離す際の音も生じない。
【0033】
また、本発明の不織布は、通常、裏面同士、表面同士、裏面と表面の組み合わせのいずれでも自己接着性を示すため、接着面の組み合わせの制限を受けることなく、様々な用途に使用することができる。
【0034】
本発明によって得られる自己接着性不織布の目付は、10~200g/m2であることが好ましく、30~90g/m2であることがより好ましく、40~70g/m2であることが特に好ましい。
【0035】
本発明に係る不織布は、コイル状捲縮部、連続的/非連続的な環状捲縮部、パイル状捲縮部を有するため、適度な伸縮性を有するとともに、肌触りも優れており、通気性を有する。さらに、接着のために化学物質を使用しないことから、有害成分を含まず皮膚刺激性も少ない。また、物理的な接合により一体化することができ、同時に、物理的な力により容易に剥がれるという面ファスナー機能を有するため、包帯やガーゼ(例えば、止血ガーゼ)等の創傷被覆材や、吸収性物品(例えば、使い捨ておむつ)用の面ファスナーとして利用することができ、ループ材とフック材を別々に用意しなくてもよいため便利である。
また、本発明に係る不織布は、不織布を製造するために一般的に用いられているスルーエア法及びニードルパンチ法で製造できるため、新たな機械を導入する必要がなく、低労力・低コストで製造することができる。
【実施例
【0036】
以下に本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。しかしながら本発明は、以下の実施例に記載された内容に限定されるものではない。
【0037】
a及びbの測定方法
KEYENCE製デジタルマイクロスコープVHX-6000(商品名)を用い、不織布の表面を倍率200倍にて3D撮影した。得られた3D写真のデータを用いて、1000μm×1000μmの範囲内にあるパイル状捲縮部のa,bを計測した。計測には、VHX-6000に付属されているプログラムを使用した。
【0038】
弾性不織布の伸長回復率(50%伸長時の伸長回復率)の測定方法
幅25mm長さ200mmの不織布試験片を、不織布の機械方向を長さ方向にして作製する。引張試験機オートグラフAG-500D(株式会社島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度200mm/分で50%まで伸長させた後、同じ速度で戻し、弾性不織布に掛かる負荷を0とした。その直後、再び同じ速度で50%まで伸長させ、負荷が再び始まる時の伸びた長さをLmmとした。伸長回復率は下記式に従って求めた。
50%伸長時の伸長回復率(%)={(100*1-L)/100*1}×100
*1:チャック間の試験片の最初の長さ(mm)
【0039】
[実施例1]
プロピレンコポリマー(エチレンとプロピレンとの共重合体。MFR=16g/10min)とホモポリプロピレン(MFR=10g/min)をサイドバイサイドで複合紡糸して、繊度3.3dtexの並列型複合繊維を得た(繊維軸方向に垂直な切断面におけるプロピレンコポリマーとホモポリプロピレンの面積比は、約50対50)。この複合繊維に機械捲縮(ジグザグ状の捲縮)を付与し、平均捲縮数8山/2.54cmの複合繊維を得た。この複合繊維を、51mm長の短繊維にカットし、カード機によりウェブとし、得られたウェブを120℃の熱風循環式スルーエア加工機(走行速度8.5m/分、120℃、1分間、風速1.2m/sec)で加熱することによって、収縮率80%のスルーエア不織布を得た。この不織布の表面を前記デジタルマイクロスコープで撮影した写真を図3に示す。不織布を構成する複合繊維が熱収縮することにより発現したコイル状の捲縮部が視野全体に渡って観察された。
【0040】
更に、このスルーエア不織布の片面をニードルパンチ加工機によって加工した。使用したニードルは、1本当たり6個のバーブを有する、太さ1.2mm(型番15*18*40*3.5)のニードルであり、パンチ密度が20回/cm2、針深度が10mmとなるように加工機を設定した。ニードルパンチ加工後、不織布の表面(ニードル挿入面)をマイクロスコープで観察したところ(図4参照)、コイル状捲縮が崩されて生じた連続的な環状捲縮部、非連続的な環状捲縮部に加えて、パイル状捲縮部が観察された。また、ニードルパンチ加工前のコイル状捲縮ほど一方向に連続していないものの、コイル状捲縮として視認される捲縮部も確認できた。
実施例1で得られた不織布の目付は60g/m2であった。
【0041】
このようにして得られたニードルパンチ不織布を、2.5mm(MD方向)×10mm(CD方向)にカットし(面積25mm2)、2枚の不織布の表面(ニードル挿入面)同士を重ね合わせて軽く押さえた(最大0.9N程度の力をかけた)後、株式会社島津製作所のオートグラフAG-500Dにて、速度200mm/minの引っ張り試験を行った。MD方向の引っ張り強度は0.6Nであった。なお、この不織布の自己接着力は、ニードル挿入面同士が重なるように2枚の不織布を重ねた場合が最も高いものの、ニードル挿入面(表面)とベッドプレート側の面(裏面)が接するように組み合わせても、裏面同士が接するように組み合わせても、積層した2枚の不織布を手で軽く押さえるだけで互いに付着し、いずれの場合も、上層側の不織布を持ち上げると、下層側の不織布が上層側の不織布に付着した状態で持ち上がり、1分間経過しても下層の不織布が落下しなかった。また、いずれの場合も、わずかな力(0.02N)で、一体化した二枚の不織布を引き離すことが可能であった。
【0042】
また、ニードルパンチ不織布をMD方向に力をかけてその回復性を測定した。50%伸長時の伸長回復率は45%であった。
【0043】
また、マイクロスコープを用いて得られた3D写真のデータを用いて、1000μm×1000μmの範囲内にあるパイル状捲縮(22個)のa,bを計測した。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から明らかなように、b>aのパイル状捲縮部も、a<bのパイル状捲縮部も確認された。特にaまたはbが100μm以上のものが多かった。
【0046】
[実施例2]
実施例1で得られたスルーエア不織布を、スルーエア不織布より大きい面積の不織布(20g/m2)の上に積層し、この積層体をニードルパンチ加工機により、パンチ密度20回/cm2、針深度10mmで加工した。加工後、ニードルパンチ加工で一体化した積層体から、前記スルーエア不織布(ニードルパンチ不織布)を分離した。得られたニードルパンチ不織布は、カード工程で得られたウェブに対する収縮率が65%であった。また、このニードルパンチ不織布の目付は45g/m2であった。
この不織布の表面(ニードル挿入面)を、マイクロスコープで観察したところ(図5及び図6参照)、連続的な環状捲縮部、非連続的な環状捲縮部、パイル状捲縮部、直線又はゆるやかな曲線状の繊維が観察された。また、コイル状捲縮として認識される捲縮部も存在した。1000μm×1000μmの視野において、10個以上のパイル状捲縮部が確認できた。
この不織布の自己接着性を確認したところ、実施例1のニードルパンチ不織布と同様、表面同士、裏面同士、表面と裏面のいずれを組み合わせても、積層して手で軽く押さえるだけで、互いに付着し、いずれの場合も、上層側の不織布を持ち上げると、下層側の不織布が上層側の不織布に付着したままの状態で持ち上がり、1分間経過しても下層の不織布が落下しなかった。また、いずれの場合も、わずかな力(例えば、0.02N)で、一体化した二枚の不織布を引き離すことが可能であった。
【0047】
このようにして得られたニードルパンチ不織布を、2.5mm(MD方向)×10mm(CD方向)にカットし(面積25mm2)、2枚の不織布の表面同士(ニードル挿入面同士)又は裏面同士(ベッドプレート側の面同士)を重ね合わせて軽く押さえた後、株式会社島津製作所のオートグラフAG-500Dにて、速度200mm/minの引っ張り試験を行った。MD方向の引っ張り強度はニードル挿入面で0.2N、ベッドプレート側の面で0.1Nであった。
【0048】
[実施例3]
実施例1で得られたウェブを、低密度ポリエチレン(融点120℃)とホモポリプロピレンとからなる同心鞘芯型複合繊維(2.1dtex、カット長38mm、及び、複合繊維の横断面における低密度ポリエチレンとホモポリプロピレンの面積比:50/50)のウェブの上に載せて、二層ウェブを形成した。この二層ウェブにおける同心鞘芯型複合繊維の割合は33重量%であり、並列型複合繊維の割合は67重量%であった。この二層ウェブを120℃の熱風循環式スルーエア加工機で熱処理(風速1.2m/sec 加熱時間1分間)した後、ニードルパンチ加工機により、パンチ密度20回/cm2、針深度10mmで加工して、ニードルパンチ不織布を得た。得られたニードルパンチ不織布は、カード工程で得られたウェブに対して、収縮率が10%であった。また、このニードルパンチ不織布の目付は、35g/m2であった。
【0049】
実施例3のスルーエア不織布(ニードルパンチ加工前)の写真を図7に示し、ニードルパンチ加工後の写真を図8及び図9に示す。図7に示すように、実施例3の不織布は、実施例1のウェブ(並列型複合繊維からなるウェブ)に、同心鞘芯型複合繊維からなるウェブを重ねて熱処理しているため、熱処理後は、コイル状に捲縮した並列型複合繊維と、ほとんど捲縮していない同心鞘芯型複合繊維が観察された。このスルーエア不織布をニードルパンチ加工すると、図8に示すように、コイル状捲縮が崩されること、及び、捲縮していない繊維と絡み合うこと等により、連続的/非連続的な環状捲縮部や、パイル状捲縮部や、直線/又はゆるやかな曲線状の繊維が観察された。1000μm×1000μmの視野において、10個以上のパイル状捲縮部が確認できた。また、図9では、コイル状捲縮として視認される捲縮部も観察された。
この不織布の自己接着性を確認したところ、実施例1のニードルパンチ不織布と同様、表面同士、裏面同士、表面と裏面のいずれを組み合わせても、積層して手で軽く押さえるだけで、互いに付着し、いずれの場合も、上層側の不織布を持ち上げると、下層側の不織布が上層側の不織布に付着したままの状態で持ち上がり、1分間経過しても下層の不織布が落下しなかった。また、いずれの場合も、わずかな力(例えば、0.02N)で、一体化した二枚の不織布を引き離すことが可能であった。
【0050】
[比較例1]
ポリプロピレン(MFR=20g/min、2重量%のエラストマー含有。サンアロマー製「PM822V」)と、別のポリプロピレン(MFR=10g/min、日本ポリプロ製「MA3H」)を用い、複合紡糸装置にて、230℃で熱溶融紡糸を行い、90℃でネック延伸工程を行って、更に90℃で乾燥した。得られたトウをカットして、繊維長45mm、繊度2.2dtexの並列型複合繊維を得た。
得られた並列型複合繊維をカード機にてウェブとし、そのウェブの表裏をドラフト紙で挟み、設定温度120℃のオーブンにて5分間加熱し、目付け50g/m2の不織布を得た。
得られた不織布をマイクロスコープで観察したところ、一面にコイル状捲縮部が観察され、パイル状捲縮部は0個/mm2であった。また、この不織布を2枚重ねて軽く押さえた場合、どの面の組み合わせでも、2枚の不織布は互いに付着せず、上層の不織布のみをつかんで持ち上げると、上層の不織布のみが持ち上がった。
なお、比較例1の不織布も、ニードルパンチ加工を行うことで自己接着性を発現させることが可能である。
【0051】
[実施例4]
プロピレンコポリマー(エチレンとプロピレンとの共重合体。MFR=31g/10min)と、ホモポリプロピレン(MFR=5g/min)を複合紡糸して、繊度2.6dtexの並列型複合繊維を得た(繊維軸方向に垂直な切断面におけるプロピレンコポリマーとホモポリプロピレンの面積比は、約60対40)。この複合繊維に機械捲縮(ジグザグ状の捲縮)を付与し、平均捲縮数5山/2.54cmの複合繊維を得た。この複合繊維を、51mm長の短繊維にカットし、カード機によりウェブとし、得られたウェブを120℃の熱風循環式スルーエア加工機で、風速0.2m/secにて3分間加熱することで、収縮率75%のスルーエア不織布を得た。この不織布の表面を前記デジタルマイクロスコープで観察したところ、不織布を構成する複合繊維が熱収縮することにより発現したコイル状捲縮部が視野全体に渡って観察された。
【0052】
更に、このスルーエア不織布の片面をニードルパンチ加工機によって加工した。使用したニードルは、1本当たり6個のバーブを有する、太さ1.2mm(型番15*18*40*3.5)のニードルであり、パンチ密度が20回/cm2、針深度が10mmとなるように加工機を設定した。ニードルパンチ加工後、不織布の表面(ニードル挿入面)をマイクロスコープで観察したところ、連続的な環状捲縮部、非連続的な環状捲縮部、コイル状捲縮部に加えて、パイル状捲縮部が観察された。1000μm×1000μmの視野において、8個のパイル状捲縮部が確認できた。得られた不織布の目付は55g/m2であった。
この不織布の自己接着性を確認したところ、実施例1のニードルパンチ不織布と同様、表面同士、裏面同士、表面と裏面のいずれを組み合わせても、積層して手で軽く押さえるだけで、互いに付着し、いずれの場合も、上層側の不織布を持ち上げると、下層側の不織布が上層側の不織布に付着したままの状態で持ち上がり、1分間経過しても下層の不織布が落下しなかった。また、いずれの場合も、わずかな力(例えば、0.02N)で、一体化した二枚の不織布を引き離すことが可能であった。
【符号の説明】
【0053】
1.コイル状捲縮部
2.連続的な環状捲縮部
3.非連続的な環状捲縮部
4.パイル状捲縮部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13