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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】搬送機構
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/00 20060101AFI20230614BHJP
   C25C 1/08 20060101ALI20230614BHJP
   B65G 15/28 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C25C7/00 301
C25C1/08
B65G15/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019155352
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021031748
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 雅人
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-126873(JP,A)
【文献】実開昭54-149795(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00- 7/08
B65G 15/00-15/28
B65G 15/60-15/64
B23D 33/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
せん断機によって短冊状に形成された短冊状板を搬送する搬送機構であって、
前記せん断機は、
テーブル上に配された板状部材を上方から厚さ方向にせん断して短冊状板を形成し、該短冊状板を下方に落下させるものであり、
該搬送機構は、
前記せん断機のテーブルよりも下方に位置し、前記短冊状板を次工程に搬送する搬送部と、
該搬送部と前記せん断機でせん断された前記短冊状板が落下する位置の下方との間に配置され、前記短冊状板をその幅方向に沿って前記せん断機から前記搬送部に向けて移動させるベルト移動機構と、を備えており、
該ベルト移動機構は、
前記短冊状板が載せられるベルトの搬送面が前記せん断機から前記搬送部に向けて下傾するように構成されており、
前記短冊状板が配置される載置面を有する支持部材と、該支持部材を移動させる支持部材移動機構と、を備えた支持部を備えており、
該支持部の支持部材移動機構は、
前記せん断機による板状部材のせん断に合わせて、前記載置面が前記せん断機のテーブルの上面近傍に位置する上方位置と、前記載置面が前記ベルト移動機構のベルトの搬送面よりも下方に位置する下方位置と、の間で前記支持部材を移動させる
ことを特徴とする搬送機構。
【請求項2】
前記支持部の支持部材移動機構は、
前記支持部材の載置面が水平な状態を維持した状態で、該支持部材を前記上方位置と前記下方位置との間で移動させるリンク機構を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の搬送機構。
【請求項3】
記せん断機のテーブル上に配置された板状部材を前記搬送機構側に向けて押すプッシャ機構を備えており、
該プッシャ機構は、
該プッシャ機構が板状部材を押す方向に沿って伸縮するように直列に配置された複数のプッシャ装置を備えており、
該複数のプッシャ装置は、
板状部材の移動方向の基端側に位置するプッシャ装置は移動が固定されており、
他のプッシャ装置は板状部材の移動方向に沿って移動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載の搬送機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電解法による製造された電気ニッケルは、通常、25~100mm角程度の矩形ピース(ニッケルピース)の状態に加工されて、製品として出荷される。かかるニッケルピースは、矩形の電気ニッケル板を、まず、短冊状の板にせん断し、その短冊状の板をせん断することによってニッケルピースに加工される。
【0003】
電気ニッケルをニッケルピースに加工する加工設備は、以下のように構成される(特許文献1参照)。
【0004】
図5に示すように、吊り手が取り付けられた状態の電気ニッケルPは、まず、吊手が切断され、その後、ロボット等によって1次せん断機S1のテーブルT上に配置される。すると、1次せん断機S1において短冊状板STにせん断される。短冊状にせん断された短冊状板STは、搬送装置10によって2次せん断機S2に搬送される。そして、2次せん断機S2において、短冊状板STの軸方向と直交する方向(幅方向)に沿ってせん断される。すると、所定の大きさに形成されたニッケルピースNが製造される。
【0005】
1次せん断機S1によって形成された短冊状板STは、搬送装置10の曲面状のレール上に落下し、このレール上を滑って搬送装置10のコンベア11上に移動される。その後、コンベア11によって2次せん断機S2に搬送された短冊状板STは軸方向に沿って移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-022919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、1次せん断機S1によって形成された短冊状板STは搬送装置10のレール上に落下するが、落下した際の姿勢は制御できない。レール上に落下した姿勢が適切でなければ、短冊状板STはレール上を滑って移動できず、レール上に短冊状板STが滞留してしまい、設備の稼働が停止してしまう可能性がある。
【0008】
また、電気ニッケルPの厚さは均一ではなく、また、電気ニッケルPが付着していたカソード板が波打っていれば、電気ニッケルPも波打ったようになる。このため、短冊状板STは必ずしも均一な厚さの平板ではなく、略楕円形状や上下いずれかに凸状の断面形状になっている場合がある。断面が略楕円形状等の短冊状板STはレール上を滑って移動している間に回転しまう可能性がある。短冊状板STが回転すると、レール上の移動やレールからコンベア11への移動がうまくできず、この場合もレール上に短冊状板STが滞留してしまい、設備の稼働が停止してしまう可能性がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、短冊状板を安定して搬送することができる搬送設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の搬送機構は、せん断機によって短冊状に形成された短冊状板を搬送する搬送機構であって、前記せん断機は、テーブル上に配された板状部材を上方から厚さ方向にせん断して短冊状板を形成し、該短冊状板を下方に落下させるものであり、該搬送機構は、前記せん断機のテーブルよりも下方に位置し、前記短冊状板を次工程に搬送する搬送部と、該搬送部と前記せん断機でせん断された前記短冊状板が落下する位置の下方との間に配置され、前記短冊状板をその幅方向に沿って前記せん断機から前記搬送部に向けて移動させるベルト移動機構と、を備えており、該ベルト移動機構は、前記短冊状板が載せられるベルトの搬送面が前記せん断機から前記搬送部に向けて下傾するように構成されており、前記短冊状板が配置される載置面を有する支持部材と、該支持部材を移動させる支持部材移動機構と、を備えた支持部を備えており、該支持部の支持部材移動機構は、前記せん断機による板状部材のせん断に合わせて、前記載置面が前記せん断機のテーブルの上面近傍に位置する上方位置と、前記載置面が前記ベルト移動機構のベルトの搬送面よりも下方に位置する下方位置と、の間で前記支持部材を移動させることを特徴とする。
第2発明の搬送機構は、第1発明において、前記支持部の支持部材移動機構は、前記支持部材の載置面が水平な状態を維持した状態で、該支持部材を前記上方位置と前記下方位置との間で移動させるリンク機構を備えていることを特徴とする。
第3発明の搬送機構は、第1または第2発明において、前記移動機構は、前記せん断機のテーブル上に配置された板状部材を前記搬送機構側に向けて押すプッシャ機構を備えており、該プッシャ機構は、該プッシャ機構が板状部材を押す方向に沿って伸縮するように直列に配置された複数のプッシャ装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1、第2発明によれば、せん断機によって短冊状に形成された短冊状板をベルト機構のベルトの搬送面で受け止めて、受け止めた短冊状板を安定して搬送部に供給できる。短冊状板をベルト機構のベルトの搬送面上に安定して移動させることができる。
第3発明によれば、板状部材の搬送速度を速くできるので、設備の稼働効率を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ニッケルピース製造設備Sにおける第一せん断部S1と本実施形態の搬送機構10の概略説明図であって、(A)は第一せん断部S1の昇降部Lを除いた状態の概略平面図であり、(B)は概略側面図である。
図2】ニッケルピース製造設備Sにおける第一せん断部S1と本実施形態の搬送機構10の概略説明図であって、(A)はせん断された短冊状板STがせん断された状態において第一せん断部S1の昇降部Lを除いた状態の概略平面図であり、(B)はせん断された短冊状板STがせん断された状態の概略側面図である。
図3】本実施形態の搬送機構10が短冊状板STを搬送している状況の概略説明図である。
図4】本実施形態の搬送機構10が短冊状板STを搬送している状況の概略説明図である。
図5】ニッケルピース製造設備Sの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の搬送機構は、せん断機によって板状部材を短冊状にせん断した短冊状板を搬送する機構であって、短冊状板を所定の姿勢を維持した状態で移動させることができるものである。
【0014】
本実施形態の搬送機構は、板状の電気ニッケルからニッケルピースを製造する設備において、せん断機によって短冊状に形成した短冊状板を搬送する機構として使用することができるが、かかる用途に限定されない。例えば、段差があるコンベア間において、板状部材を乗り継ぎ等する際に使用することができる。
【0015】
以下では、本実施形態の搬送機構を、板状の電気ニッケルからニッケルピースを製造する設備において、電気ニッケルを短冊状にせん断する第一せん断機からせん断された短冊状板をニッケルピースを製造する第二せん断部に移動する機構に使用した場合を代表として説明する。
【0016】
<ニッケルピース製造設備S>
まず、本実施形態の搬送機構10が採用されるニッケルピース製造設備Sおよび、電気ニッケルPを短冊状にせん断する第一せん断機S1について簡単に説明する。
【0017】
図5に示すように、ニッケルピース製造設備Sは、電気ニッケルPを短冊状にせん断する第一せん断機S1と、短冊状にせん断された短冊状板STをさらにせん断してニッケルピースNを形成する第二せん断機S2と、を備えている。そして、第一せん断機S1と第二せん断機S2との間には、短冊状板STを第一せん断機S1から第二せん断機S2に搬送する本実施形態の搬送機構10が設けられている。
【0018】
したがって、電気ニッケルPをニッケルピース製造設備Sに供給すれば、第一せん断機S1によって電気ニッケルPをせん断して短冊状板STを形成し、その後、第二せん断機S2によって短冊状板STをせん断してニッケルピースNを形成し、外部にニッケルピースNを供給することができる。
【0019】
<第一せん断機S1>
図1(B)に示すように、第一せん断機S1は、電気ニッケルPを載せるテーブルTが設けられており、このテーブルTの先端側(図1では右側)、つまり、搬送機構10側には、電気ニッケルPをせん断する下刃B1が設けられている。
【0020】
また、テーブルT上には、テーブルTの上面に沿って電気ニッケルPをテーブルTの先端側に向かって押し出すプッシャ機構30が設けられている。このプッシャ機構30は、本実施形態の搬送機構10の一部を構成するものである。
【0021】
テーブルTの上方には、テーブルTに対して接近離間する昇降部Lが設けられており、この昇降部Lの下端には、下刃B1との間に電気ニッケルPを挟んでせん断する上刃B2が設けられている。
【0022】
また、昇降部Lの下部には、昇降部Lとともに昇降するストッパ部材Fが設けられている。このストッパ部材Fは、プッシャ機構30によって押し出された電気ニッケルPの移動を停止するものである。このストッパ部材Fは、そのプッシャ機構30側(図1では左側)に、プッシャ機構30によって押し出された電気ニッケルPが接触するストッパ面Faが設けられている。このストッパ面Faは、テーブルTの上面に沿って下刃B1から所定の距離だけ離れた位置になるように設けられている。しかも、ストッパ部材Fは、昇降部Lとともに昇降しても、ストッパ面Faの上端がテーブルTの上面よりも上方に位置しストッパ面Faの下端がテーブルTの上面よりも下方に位置した状態を維持するように設けられている。
【0023】
かかる構成であるので、テーブルT上に電気ニッケルPを載せて、昇降部Lが上昇した状態で、プッシャ機構30によって電気ニッケルPを押し出せば、所定の長さ(ストッパ部材Fのストッパ面Faから下刃B1までの距離)だけ、電気ニッケルPを下刃B1よりも突出させることができる(図1参照)。その状態で昇降部Lを下降させれば、下刃B1と上刃B2との間に電気ニッケルPを挟んでせん断することができる。すると、所定の幅を有する短冊状板STを形成することができる(図2参照)。
【0024】
<本実施形態の搬送機構10>
本実施形態の搬送機構10は、上述した第一せん断機S1によって形成された短冊状板STを、第二せん断機S2まで搬送する機構である。図1および図2に示すように、本実施形態の搬送機構10は、搬送部11と、この搬送部11と第一せん断機S1との間に設けられたベルト移動機構15と、を備えている。また、本実施形態の搬送機構10は、短冊状板STを支える支持部材21を有する支持部20および上述したプッシャ機構30も備えている。
【0025】
<搬送部11>
図1および図2に示すように、搬送部11は、チェーンコンベアやベルトコンベア等の一般的なコンベアであり、短冊状板STを安定した状態(つまり所定の姿勢に維持した状態)で搬送できるものである。搬送部11として採用する機構はとくに限定されず、公知のコンベア機構を採用することができる。例えば、図1および図2に示すように、搬送部11として、互いに平行な一対のチェーン12,12によって短冊状板STの軸方向の両端を支えた状態で、短冊状板STを搬送する構成を採用することができる。
【0026】
<ベルト移動機構15>
図1および図2に示すように、搬送部11の第一せん断機S1側の端部と第一せん断機S1のテーブルTとの間には、ベルト移動機構15が設けられている。このベルト移動機構15は、互いに平行な一対のベルト16,16を備えている。
一対のベルト16,16は、実質的に同じ構造に形成されているので、以下では、図1(B)および図2(B)に基づいて、図1(A)および図2(A)で下側に位置するベルト16でその構造を説明する。
【0027】
このベルト16は、その上方の部分16aが、その上流側端部(第一せん断機S1側の端部)から下流側端部(搬送部11側の端部)に向かって移動するように、その作動が制御されている。
【0028】
また、ベルト16は、その上流側端部が下流側端部よりも上方に位置するように配設されている。つまり、ベルト16は、上方の部分16aの上面(搬送面)が上流側端部から下流側端部に向かって下傾する下傾面となるように配設されている。
【0029】
しかも、ベルト16は、側面から見たときに(図1(B)および図2(B)参照)、下流側端部が搬送部11のチェーン12と重なるように設けられている。言い換えれば、ベルト16の搬送面が、側面から見たときに、チェーン12の上面と交差するように設けられている。
【0030】
ベルト移動機構15が以上のような構成を有しているので、第一せん断機S1でせん断された短冊状板STを高い位置で一対のベルト16,16上に載せることができる。
【0031】
そして、一対のベルト16,16が上流側端部から下流側端部に向かって移動することによって、短冊状板STを滑らせたりすることなく搬送部11に向かって移動させることができる。すると、姿勢を安定させた状態で短冊状板STを搬送部11に向かって移動させることができる。
【0032】
しかも、一対のベルト16,16の下流側端部では、搬送面が搬送部11の一対のチェーン12,12の上面と交差するように設けられているので、スムースかつ短冊状板STの姿勢変化を抑えつつ、ベルト移動機構15から搬送部11に短冊状板STを移載することができる。
【0033】
なお、一対のベルト16,16の搬送面と一対のチェーン12,12の上面とが交差する角度θは、上記のようにベルト移動機構15から搬送部11に移載できる角度であればよく、とくに限定されない。例えば、角度θは10~20°であればよく12~17°がより好ましい。
【0034】
一対のベルト16,16の形状や素材はとくに限定されない。短冊状板STを安定して搬送できる形状や素材であればよい。例えば、ベルト16は、平ベルトでもよいが、Vベルトを使用すればプーリとの間の滑りが生じにくいので、一対のベルト16,16間で移動速度や位置のズレが生じにくく、短冊状板STの安定した搬送を実現しやすくなる。また、ベルト16の素材は、短冊状板STが搬送面上を滑りにくい素材であることが望ましい。例えば、一対のベルト16,16の素材として、ゴムやウレタンを挙げることができる。また、金属製のベルトを一対のベルト16,16として使用することも可能である。
【0035】
<支持部20>
支持部20は、第一せん断機S1でせん断された短冊状板STを支えて、ベルト移動機構15の一対のベルト16,16上に受け渡す機能を有するものである。
【0036】
<ベルト16>
図1および図2に示すように、支持部20は、一対のベルト16,16の外方に配置された一対の支持部材21,21を備えている。この一対の支持部材21,21は、その上面に短冊状板STの端部が配置される配置面21aを備えている。
【0037】
なお、一対の支持部材21,21は、上面に配置面21aが形成されていればよく、その形状はとくに限定されない。
また、配置面21aの形状もとくに限定されず、単なる平面を配置面21aとしてもよいし、短冊状板STの端部を収容する凹み等を設けて、その内底面を配置面21aとしてもよい。
【0038】
<支持部材移動機構22>
図1および図2に示すように、一対の支持部材21,21は、一対の支持部材移動機構22,22によって移動されるようになっている。なお、一対の支持部材移動機構22,22は、一対の支持部材21,21が同期して移動するようにその作動が制御されている。一対の支持部材21,21が同期して移動するとは、一対の支持部材21,21が移動するタイミングや移動方向およびその位置(上下方向の位置及び左右方向の位置)が一致するように移動することを意味している。
【0039】
一対の支持部材移動機構22,22は、実質的に同じ構造に形成されているので、以下では、図1(A)および図2(A)において下側に位置する支持部材移動機構22でその構造を説明する。
【0040】
図1および図2に示すように、支持部材移動機構22は、第一リンクアーム23、第二リンクアーム24、固定部材25、連結部材27、シリンダ機構26、から構成されている。
【0041】
第一リンクアーム23および第二リンクアーム24は、いずれも一端が軸などを介して支持部材21に対して回転可能に連結されており、いずれも他端が軸などを介して固定部材25に対して回転可能に連結されている。この第一リンクアーム23、第二リンクアーム24は、互いに平行であって支持部材21との連結位置から固定部材25との連結位置までの距離が同じ長さになるように構成されている。そして、固定部材25は、機器のフレーム等に固定されて移動できないようになっている。つまり、支持部材21、第一リンクアーム23、第二リンクアーム24、固定部材25によって、固定部材25を静止節とする平行クランク機構を構成するようになっている
【0042】
また、第二リンクアーム24の他端は、固定部材25に対して回転可能に設けられた軸25aに固定されており、この軸25aには、連結部材27の一端が固定されている。つまり、第二リンクアーム24または連結部材27のいずれかが軸25aを支点として揺動すると、他方も揺動するように設けられている。
【0043】
そして、連結部材27の他端は、軸などを介してシリンダ機構26のロッドと回転可能に連結されている。そして、このシリンダ機構26は、そのシリンダボディが機器のフレーム等に軸などを介して回転可能に連結されている。
【0044】
支持部材移動機構22が上記のような構成であるので、シリンダ機構26を伸縮させれば、連結部材27の揺動に伴って、第一リンクアーム23および第二リンクアーム24の一端、つまり、支持部材21を上下に移動させることができる。
【0045】
しかも、支持部材移動機構22は、支持部材21が上下に移動した際に、配置面21aが第一せん断機S1のテーブルTの上面近傍に位置する位置(上方位置、図1(B)参照)と、配置面21aがベルト移動機構25のベルト26の搬送面よりも下方に位置(下方位置、図4(B)参照)と、の間で移動するように、調整されている。
【0046】
なお、支持部材21の配置面21aが第一せん断機S1のテーブルTの上面近傍に位置するとは、第一せん断機S1に電気ニッケルPをせん断した際に、その作業の邪魔にならない程度にテーブルTの近傍に位置することを意味している。例えば、第一せん断機S1の昇降部Lが下降した際に、上刃B2が最も下方まで移動した際におけるテーブルTの上面と上刃B2の下端の位置よりもわずかに下方(例えば2~3mm程度)に位置する場合を意味している。
【0047】
そして、シリンダ機構26は、第一せん断機S1のせん断作業に合わせて、適切な位置に支持部材21の配置面21aが配置されるように、制御部によって作動(つまり伸縮)が制御されている。例えば、第一せん断機S1の昇降部Lが上昇している状態から昇降部Lが最も下方まで下降するまでの間は、支持部材21の配置面21aが上方位置に配置されるように、シリンダ機構26は作動される。そして、昇降部Lが最も下方まで下降したのち、昇降部Lが上昇を開始すると、支持部材21の配置面21aが下方位置まで移動するように、シリンダ機構26は作動される。そして、支持部材21の配置面21aが下方位置まで移動した後、所定の期間は下方位置に配置された状態で維持され、その後、支持部材21の配置面21aが上方位置に配置されるように、シリンダ機構26は作動される。
【0048】
なお、支持部材21の配置面21aが下方位置まで移動した後、下方位置に配置された状態で維持される期間は、とくに限定されない。支持部材21が下方位置から上方位置に移動する際に、短冊状板STが、ベルト26の搬送面の位置における支持部材21の配置面21aの移動経路から移動する時間を確保できる程度の期間であればよい。
また、下方位置まで移動してからすぐに上方位置に向かって支持部材21が移動するようにしてもよい。つまり、ベルト26の搬送面の位置を支持部材21の配置面21aが通過する際には、短冊状板STがその位置から移動されているのであれば、支持部材21は下方位置に配置された状態で維持されなくてもよい。
【0049】
支持部材移動機構22は、上述したような平行クランク機構に限られず、支持部材21の配置面21aの姿勢を維持した状態で支持部材21を上下に移動させることができる他のリンク機構を採用してもよい。
また、支持部材移動機構22はリンク機構に限られず、支持部材21の配置面21aの姿勢を維持した状態で支持部材21を上下に移動させることができる構造であればよい。例えば、シリンダ機構やラックアンドピニオン機構等によって支持部材21を上方位置と下方位置との間で昇降させる構造としてもよい。
【0050】
<本実施形態の搬送機構10の作動>
以下に、本実施形態の搬送機構10の作動を説明する。
【0051】
まず、せん断する電気ニッケルPが第一せん断機S1のテーブルTに載せられると、プッシャ機構30が作動し、プッシャ機構30によって電気ニッケルPがテーブルTの先端側に押し出される。この状態では、支持部材移動機構22のシリンダ機構26が収縮しており、支持部20の一対の支持部材21,21は、リンク機構によって上方位置に配置されている(図1および図3(A)参照)。なお、搬送部11の一対のチェーン12,12や、ベルト移動機構25の一対のベルト26,26は、上述した所定の方向に移動している。
【0052】
電気ニッケルPがストッパ部材Fのストッパ面にあたると、プッシャ機構30は作動を停止する。すると、第一せん断機S1の昇降部Lが下降し、電気ニッケルPがせん断され短冊状板STが形成される。短冊状板STはせん断されると同時に下方に落下するが、一対の支持部材21,21が上方位置に配置されているので、短冊状板STの両端部が一対の支持部材21,21の配置面21a上に載った状態になる(図3(B)参照)。このとき、一対の支持部材21,21の配置面21aが第一せん断機S1のテーブルT近傍に位置しているので、短冊状板STは、せん断される前の状態に近い姿勢で一対の支持部材21,21の配置面21a上に載ることになる。
【0053】
短冊状板STが形成されると、第一せん断機S1の昇降部Lは上昇する一方、支持部材移動機構22のシリンダ機構26が伸長して、リンク機構によって一対の支持部材21,21は上方位置から下方位置まで移動する。このとき、一対の支持部材21,21は、その配置面21aが上方位置とほぼ同じ姿勢に維持された状態で移動するので、短冊状板STは安定した姿勢で下方に移動する。つまり、上方位置において一対の支持部材21,21の配置面21aに載せられた姿勢のままで短冊状板STは下方に移動する。
【0054】
一対の支持部材21,21が下方に移動すると、一対の支持部材21,21の配置面21aはやがてベルト移動機構25の一対のベルト26,26の搬送面の位置を通過する。すると、短冊状板STは一対のベルト26,26の搬送面上に載せられた状態となり、一対のベルト26,26によって短冊状板STは搬送部11に向かって移動される(図4(A)、(B)参照)。ここで、短冊状板STは、一対の支持部材21,21の配置面21aに載せられている状態のままで、一対の支持部材21,21の配置面21aから一対のベルト26,26の搬送面に移載される。したがって、一対のベルト26,26の搬送面に載せられた短冊状板STの姿勢は、一対の支持部材21,21の配置面21aに載せられている状態を維持した状態となる。そして、一対のベルト26,26によって搬送された短冊状板STは、一対のベルト26,26から搬送部11の一対のチェーン12,12上に移載され、搬送部11によって次工程に搬送される。
【0055】
シリンダ機構26がさらに伸長すると、一対の支持部材21,21がさらに下降し下方位置まで移動する(図4(B)参照)。その状態で所定の期間維持されると、支持部材移動機構22のシリンダ機構26が収縮して、リンク機構によって一対の支持部材21,21は下方位置から上方位置まで移動する(図3(A)参照)。
【0056】
そして、一対の支持部材21,21が上方位置まで移動する間に、第一せん断機S1の昇降部Lは所定の位置まで上昇して停止する。昇降部Lの上昇が停止すると、プッシャ機構30は、ストッパ部材Fのストッパ面にあたるまで電気ニッケルPを押し出すように作動し、その後作動を停止する。すると、第一せん断機S1の昇降部Lが下降し、電気ニッケルPがせん断され短冊状板STが形成される。このときには、一対の支持部材21,21が上方位置に配置されているので、短冊状板STの両端部は一対の支持部材21,21によって支持される。
【0057】
以上のような作動が繰り返されることによって、電気ニッケルPから連続して短冊状板STを形成することができ、形成された短冊状板STは、本実施形態の搬送機構10によってその姿勢を安定させた状態で、次工程に搬送することができる。
【0058】
<プッシャ機構30>
プッシャ機構30は、第一せん断機S1のテーブルTの上面に沿って電気ニッケルPをテーブルTの先端側に向かって押し出すものであり、かかる機能を実現するものであれば、その構成はとくに限定されない。
【0059】
一方、電気ニッケルPのせん断は、プッシャ機構30によって電気ニッケルPが押し出されることによって開始される。すると、電気ニッケルPのせん断速度を速くして設備の稼働効率を高くする上では、プッシャ機構30による電気ニッケルPの押し出し速度を速くすることが必要になる。プッシャ機構30による電気ニッケルPの押し出し速度を速くする方法として、例えば、プッシャ機構30を以下のような構造とすることができる。
【0060】
図1および図2に示すように、第一せん断機S1のテーブルT上には、第一プッシャ装置31が配設されている。この第一プッシャ装置31は、シリンダであり、その軸方向(つまり伸縮方向)がテーブルTの上面と平行かつ電気ニッケルPの搬送方向と平行(言い換えれば、ストッパ部材Fのストッパ面Faと直交)となるように設けられている。この第一プッシャ装置31のロッドの先端にはプレート31aが設けられている。このプレート31aは、テーブルTの上面に設けられた一対のレール33,33に案内されて移動するように設けられている。一対のレール33,33は、その軸方向が第一プッシャ装置31の軸方向と平行となるように設けられている。したがって、第一プッシャ装置31が伸縮すれば、一対のレール33,33に案内されて、第一プッシャ装置31の軸方向に沿ってプレート31aが移動するようになっている。
【0061】
図1および図2に示すように、プレート31aの前面には、第二プッシャ装置32の基端が連結されている。この第二プッシャ装置32は、その軸方向(つまり伸縮方向)が第一プッシャ装置31の軸方向とほぼ同軸となるように設けられている。つまり、第二プッシャ装置32は、第一プッシャ装置31と直列になるように配設されている。この第二プッシャ装置32は、テーブルTの上面に設けられた一対のレール33,33の間に位置するレール34に案内されて移動するように設けられている。このレール34は、その軸方向が第一プッシャ装置31の軸方向と平行、つまり、一対のレール33,33の軸方向と平行になるように設けられている。この第二プッシャ装置32のロッドの先端にはプレート32aが設けられている。このプレート32aは、電気ニッケルPを押して移動させるものであり、テーブルTの上面をローラ等によって移動するように設けられている。したがって、第一プッシャ装置31または第二プッシャ装置32が伸縮すれば、第一プッシャ装置31および第二プッシャ装置32の軸方向に沿って、プレート32aを移動させることができる。
【0062】
そして、第一プッシャ装置31と第二プッシャ装置32は、同じタイミングで伸長が開始するようにその作動が図示しない制御部によって制御されている。つまり、第一プッシャ装置31が伸長すると、第二プッシャ装置32はプレート31aによって移動されながら伸長するように作動が制御されている。このようなタイミングで第二プッシャ装置32が伸長すれば、プレート32aは、第一プッシャ装置31の伸長速度に第二プッシャ装置32の伸長速度を加えた速度で伸長することになる。つまり、第一プッシャ装置31単体や第二プッシャ装置32単体での伸長速度よりも速い速度でプレート32aを移動させることができる。すると、各プッシャ装置31,32を大型化したりしなくても、プレート32aの移動速度、言い換えれば電気ニッケルPの押し出し速度を速くできる。つまり、上記のごときプッシャ機構30を採用すれば、設備の大型化等をしなくても、設備の稼働効率を高くすることができる
【0063】
なお、上記例では、2つのプッシャ装置が直列に配設されている場合を説明したが、プッシャ装置は3つ以上直列に設けてもよい。この場合でも、複数のプッシャ装置は、その軸方向が直列になるように配置され、テーブルTの基端側(電気ニッケルPの移動方向の基端側)に位置するプッシャ装置の移動を固定し、他のプッシャ装置は軸方向に沿って移動可能に設ける。そして、複数のプッシャ装置が同じタイミングで伸長を開始するように複数のプッシャ装置の作動を制御すれば、各プッシャ装置の伸長速度以上の押し出し速度で電気ニッケルPを移動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の搬送機構は、短冊状の板状部材をその幅方向に沿って移動させる設備に適している。
【符号の説明】
【0065】
10 搬送設備
11 搬送部
15 ベルト移動機構
16 ベルト
20 支持部
21 支持部材
21a 配置面
22 支持部材移動機構
30 プッシャ機構
31 第一プッシャ装置
32 第一プッシャ装置
S ニッケルピース製造設備
S1 第一せん断機
T テーブル
S2 第二位せん断機
P 電気ニッケル
ST 短冊状板
図1
図2
図3
図4
図5