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  • 特許-フッ素樹脂の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】フッ素樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 14/18 20060101AFI20230614BHJP
   C08J 3/14 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C08F14/18
C08J3/14 CEW
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019061861
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020158712
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】坂口 孝太
(72)【発明者】
【氏名】長井 智成
(72)【発明者】
【氏名】下野 智弥
(72)【発明者】
【氏名】岩永 和也
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-209365(JP,A)
【文献】特開平02-245006(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137627(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/006841(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104380(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/018730(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/104160(WO,A1)
【文献】特開平08-034820(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0133660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 14/18
C08J 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素脂肪族環構造を含む単量体をラジカル重合開始剤の存在下で重合して含フッ素脂肪族環構造を含む下記一般式(1)で表されるフッ素樹脂Aを得る重合工程、及び
含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂Aとフッ素樹脂Aの80重量%以上が全部溶解する良溶媒bであるハイドロフルオロエーテルとを含むフッ素樹脂A溶液に対して、フッ素樹脂Aに対する貧溶媒cを加えることによりフッ素樹脂Aを析出させる析出工程を含む、但し、貧溶媒cは、溶解指標Rが4以上である、含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂の製造方法(但し、フッ素樹脂が-SO 2 F基を含む場合を除く)
【化1】
(式(1)中、Rf 1 、Rf 2 、Rf 3 、Rf 4 はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1~7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3~7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3~7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf 1 、Rf 2 、Rf 3 、Rf 4 は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
【請求項2】
前記重合工程では、下記一般式(4)で表される単量体を、ラジカル重合開始剤及びフッ素樹脂Aに対する良溶媒bであるハイドロフルオロエーテルの存在下で重合させて、一般式(1)で表されるフッ素樹脂を得る、請求項に記載のフッ素樹脂の製造方法。
【化2】
(式(4)中、Rf 5 、Rf 6 、Rf 7 、Rf 8 はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1~7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3~7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3~7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf 5 、Rf 6 、Rf 7 、Rf 8 は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
【請求項3】
前記析出工程が、フッ素樹脂Aと良溶媒bであるハイドロフルオロエーテルとを含むフッ素樹脂A溶液に、撹拌下、フッ素樹脂Aに対する貧溶媒cを加えることによりフッ素樹脂Aの粒子を析出させる工程である、請求項1~のいずれかに記載のフッ素樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記撹拌が、単位撹拌容量あたりの撹拌機モータ動力の値であるPv値が0.05~50kw/m3での撹拌である、請求項に記載のフッ素樹脂の製造方法。
【請求項5】
析出工程で得られるフッ素樹脂は、嵩密度が0.25~1.5g/cm3である、請求項1~のいずれかに記載のフッ素樹脂の製造方法。
【請求項6】
析出工程で得られるフッ素樹脂は、体積平均粒子径が5~2000μmである、請求項1~のいずれかに記載のフッ素樹脂の製造方法。
【請求項7】
析出工程で得られるフッ素樹脂は、重量平均分子量が5×104~3×105である、請求項1~のいずれかに記載のフッ素樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂(以下該フッ素樹脂)は非晶性を示し、透明性に優れ、撥液性、耐久性、電気特性等に優れるため、光学・電子分野などの様々な用途に用いられている。
【0003】
該フッ素樹脂として、例えば、特許文献1では、ペルフルオロ(4-ビニルオキシ-1-ブテン)の環化重合体、非特許文献1では、ポリ(パーフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)が報告されている。
【0004】
該フッ素樹脂は一般に溶液の形態で提供されることが多いが、溶融成形加工する場合、成形加工機内部への樹脂の連続した供給が可能となるため、樹脂の形態は粒子状であることが求められる。また、その他の広範囲な用途においても、ハンドリング性、溶解性の観点から樹脂の形態は粒子状であることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2014/156996号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Macromolecules、2005、38、4237-4245
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1において、該フッ素樹脂の粒子を得る方法として懸濁重合が例示されている。しかし、重合助剤として用いる分散剤や乳化剤が樹脂粒子の内部に残存し、異物となったり、または加熱した際の着色の原因となったりするため、該フッ素樹脂の透明性や電気特性等を損なう可能性があった。また、本発明者らによれば、懸濁重合は分散剤を用いないと粒子が得られないものであった。
【0008】
また、光学・電子分野で求められる厳しいクリーン性を確保するためには、該フッ素樹脂の溶液をろ過して、異物を取り除いた後に造粒することが望ましい。そのためには、一旦、該フッ素樹脂を良溶媒に溶解して溶液の状態にする必要がある。しかしながら、本発明者らによれば、一般に再沈殿法として知られている、良溶媒に溶解させたポリマー溶液を貧溶媒に滴下し粉末を得る方法では、該フッ素樹脂はストランド状や綿状等の形態となるために、粒子として取り出すことが困難なうえ、得られるフッ素樹脂の嵩密度が非常に小さくなり紛体としての取扱い性に劣るという課題があった。
【0009】
また、本発明者らによれば、特許文献1および非特許文献に記載の樹脂は、不定形の形態を有しているため、樹脂の内部に取り込まれた溶媒を除去することが困難で、樹脂に溶媒が残存するために、加熱時の重量減少量が大きく、成形加工時に発泡等が生じ、あるいは成形加工時の作業環境を悪化させるという問題があった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、生産性に優れ、異物の除去が可能で、嵩密度が大きく、紛体としての取扱い性に優れ、加熱重量減少の小さい含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂粒子の特定の製造方法が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、以下の通りである。
[1]
含フッ素脂肪族環構造を含む単量体をラジカル重合開始剤の存在下で重合して含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂Aを得る重合工程、及び
含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂Aと良溶媒bとを含むフッ素樹脂A溶液に対して、フッ素樹脂Aに対する貧溶媒cを加えることによりフッ素樹脂Aを析出させる析出工程を含む、含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂の製造方法。
[2]
含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂Aが、下記一般式(1)で表されるフッ素樹脂である、[1]に記載のフッ素樹脂の製造方法。
【化1】
(式(1)中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1~7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3~7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3~7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
[3]
前記重合工程では、下記一般式(4)で表される単量体を、ラジカル重合開始剤及びフッ素樹脂Aに対する良溶媒bの存在下で重合させて、一般式(1)で表されるフッ素樹脂を得る、[2]に記載のフッ素樹脂の製造方法。
【化2】
(式(4)中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1~7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3~7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3~7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
[4]
前記析出工程が、フッ素樹脂Aと良溶媒bとを含むフッ素樹脂A溶液に、撹拌下、フッ素樹脂Aに対する貧溶媒cを加えることによりフッ素樹脂Aの粒子を析出させる工程である、[1]~[3]のいずれかに記載のフッ素樹脂の製造方法。
[5]
前記撹拌が、単位撹拌容量あたりの撹拌機モータ動力の値であるPv値が0.05~50kw/m3での撹拌である、[4]に記載のフッ素樹脂の製造方法。
[6]
良溶媒bが分子内に水素原子を有する含フッ素溶媒である、[1]~[5]のいずれかに記載のフッ素樹脂の製造方法。
[7]
析出工程で得られるフッ素樹脂は、嵩密度が0.25~1.5g/cm3である、[1]~[6]のいずれかに記載のフッ素樹脂の製造方法。
[8]
析出工程で得られるフッ素樹脂は、体積平均粒子径が5~2000μmである、[1]~[7]のいずれかに記載のフッ素樹脂の製造方法。
[9]
析出工程で得られるフッ素樹脂は、重量平均分子量が5×104~3×105である、[1]~[8]のいずれかに記載のフッ素樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、嵩密度が大きく、紛体としての取扱い性に優れ、加熱重量減少の小さい含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂粒子の製造方法を提供できる。本発明の製造方法は、生産性に優れ、異物の除去が可能であるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で製造した樹脂粒子の粒度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のフッ素樹脂の製造方法は、含フッ素脂肪族環構造を含む単量体をラジカル重合開始剤の存在下で重合して含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂Aを得る重合工程、及び含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂Aと良溶媒bとを含むフッ素樹脂A溶液に対して、フッ素樹脂Aに対する貧溶媒cを加えることによりフッ素樹脂Aを析出させる析出工程を含む。
【0016】
含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂(以下「フッ素樹脂A」という。)の構造としては、含フッ素脂肪族環構造を含むものであれば限定はないが、例えば、下記一般式(1)で表される残基単位を含むもの、ペルフルオロ(4-ビニルオキシ-1-ブテン)の環化重合体及び共重合体、ペルフルオロ(2、2-ジメチル-1、3-ジオキソール)の重合体及び共重合体、ペルフルオロ(2、2-ジメチル-1、3-ジオキソール)とテトラフルオロエチレンとの共重合体、2、2、4-トリフルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1、3-ジオキソールの重合体及び共重合体、2、2、4-トリフルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1、3-ジオキソールとテトラフルオロエチレンとの共重合体からなる群の少なくとも1種が例示できる。
【0017】
【化3】
(式(1)中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1~7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3~7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3~7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
【0018】
一般式(1)で表される残基単位中のRf1、Rf2、Rf3、Rf4基はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1~7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3~7の分岐状のパーフルオロアルキル基、または炭素数3~7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示す。前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよい。また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。一般式(1)中のRf1、Rf2、Rf3、Rf4は、後述する一般式(4)中のRf5、Rf6、Rf7、Rf8とそれぞれ同義であり、以下に説明するRf1、Rf2、Rf3、Rf4の具体例は、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8の具体例でもある。
【0019】
炭素数1~7の直鎖状パーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ペンタデカフルオロヘプチル基等が挙げられる。炭素数3~7の分岐状パーフルオロアルキル基としては、例えば、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロイソブチル基、ノナフルオロsec-ブチル基、ノナフルオロtert-ブチル基等が挙げられる。炭素数3~7の環状パーフルオロアルキル基としては、例えば、ヘプタフルオロシクロプロピル基、ノナフルオロシクロブチル基、トリデカフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1~7のエーテル性酸素原子を有していてもよい直鎖状パーフルオロアルキル基としては、例えば、-CF2OCF3基、-(CF22OCF3基、-(CF22OCF2CF3基等が挙げられる。炭素数3~7のエーテル性酸素原子を有していてもよい環状パーフルオロアルキル基としては、例えば、2-(2,3,3,4,4,5,5,6,6-デカフルオロ)-ピリニル基、4-(2,3,3,4,4,5,5,6,6-デカフルオロ)-ピリニル基、2-(2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ)-フラニル基等が挙げられる。
【0020】
Rf1、Rf2、Rf3、Rf4の少なくともいずれか1種が炭素数1~7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3~7の分岐状のパーフルオロアルキル基または炭素数3~7環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種であるフッ素樹脂が、優れた耐熱性を示すという観点から好ましい。
【0021】
一般式(1)で表される残基単位の具体例としては、例えば下記一般式(2)で表される残基単位が挙げられる。
【0022】
【化4】
【0023】
このなかでも、耐熱性、成型加工性に優れるため、下記一般式(3)で表される残基単位を含むフッ素樹脂が好ましく、パーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)残基単位を含むフッ素樹脂がより好ましい。
【0024】
【化5】
【0025】
重合工程では、下記一般式(4)で表される単量体を、ラジカル重合開始剤及びフッ素樹脂Aに対する良溶媒bの存在下で重合させて、一般式(1)で表されるフッ素樹脂を得ることができる。
【化6】
式(4)中、Rf 5 、Rf 6 、Rf 7 、Rf 8 はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1~7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3~7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3~7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf 5 、Rf 6 、Rf 7 、Rf 8 は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。式(4)中のRf5、Rf6、Rf7、Rf8は、式(1)中のRf1、Rf2、Rf3、Rf4とそれぞれ同義である。
【0026】
重合工程は、ラジカル重合開始剤の存在下、一般式(4)で表される単量体の重合を行って一般式(1)で表される残基単位を含むフッ素樹脂Aを得る工程である。重合工程における重合方法に制限はないが、例えば、溶液重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合などの方法を挙げることができる。
【0027】
本発明の製造方法は、一般式(4)で表される単量体が一般式(8)で表されるパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)であり、一般式(1)で表される残基単位が一般式(9)で表されるパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)残基単位であることが特に好ましい。
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
ラジカル重合を行う際のラジカル重合開始剤としては、例えば、ビス(パーフルオロベンゾイル)ペルオキシド(PFBPO)、(CF3COO)2、(CF3CF2COO)2、(C37COO)2、(C49COO)2、(C511COO)2、(C613COO)2、(C715COO)2、(C817COO)2等のパーフルオロ有機過酸化物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシアセテート、パーフルオロ(ジ-trt-ブチルパーオキサイド)、ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーピバレート等の有機過酸化物;2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-ブチロニトリル)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0031】
ラジカル重合開始剤は、加熱重量減少量の小さいフッ素樹脂が得られ、加熱溶融後の黄変が抑制され、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少ないものとなる観点から、パーフルオロ有機過酸化物が好ましく、ビス(パーフルオロベンゾイル)ペルオキシド(PFBPO)が更に好ましい。ここで、パーフルオロ有機過酸化物とは有機過酸化物の水素原子がフッ素原子に置換された構造の化合物を示す。
【0032】
重合工程では、一般式(4)で表される単量体を、ラジカル重合開始剤及びフッ素樹脂Aに対する良溶媒bの存在下で重合させる。フッ素樹脂Aに対する良溶媒bとは、50℃においてフッ素樹脂Aを溶解可能な有機溶媒を意味する。溶解可能とは、重量平均分子量Mwが5~15×104のフッ素樹脂Aの少なくとも一部がその有機溶媒に溶解することを意味し、例えば、ある工程において採用される温度Tが50℃の場合、粉状又は綿状のフッ素樹脂A試料を20倍量(w/w)の、50℃の有機溶媒に5時間以上浸漬したときに、フッ素樹脂A試料の80重量%以上が溶媒に少なくとも一部又は全部が溶解する場合、この溶媒ものを良溶媒とすることができる。ここで、フッ素樹脂Aは、前記一般式(3)で表される残基単位を含むフッ素樹脂であることができる。
【0033】
良溶媒bとなり得る溶媒としては、例えば、パーフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロオレフィン又は芳香族フッ素化合物からなる群の少なくとも1種であることが好ましく、さらに好ましくはパーフルオロヘキサン、パーフルオロ-N-メチルモルホリン、パーフルオロ-N-プロピルモルホリン、パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロメチルジブチルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、CF3CF2CHCl2、CF3CHFCHFCF2CF3、CF3CF2CF2CF2CF2CF2H、CF3(CF25CH2CH3、C49OCH3、C49OC25、C25CF(OCH3)C37)、ヘキサフルオロベンゼンからなる群の少なくとも1種であることが好ましい。
【0034】
例えば、フロリナートFC-5052、FC-72、FC-770、FC-3283、FC-40、FC-43(いずれも3Mジャパン社製)等のパーフルオロカーボン;アサヒクリンAK-225(旭硝子社製)等のハイドロクロロフルオロカーボン;バートレルXF(三井・ケマーズ社製)、アサヒクリンAC-2000、AC-6000(いずれも旭硝子社製)等のハイドロフルオロカーボン;Novec7100、Novec7200、Novec7300(3Mジャパン社製)等のハイドロフルオロエーテル;オプテオンSF10(三井・ケマーズ社製)等のハイドロフルオロオレフィン;ヘキサフルオロベンゼン等の芳香族含フッ素溶媒;等が挙げられる。良溶媒の好ましい具体例としては、Novec7300(スリーエムジャパン社製、C25CF(OCH3)C37)が挙げられる。
【0035】
嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量の小さいフッ素樹脂が得られることから、良溶媒は含フッ素溶媒であることが好ましく、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン等の分子内に水素原子を有する脂肪族含フッ素溶媒;又は芳香族含フッ素溶媒であることが更に好ましく、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン等の分子内に水素原子を有する含フッ素溶媒であることがまた更に好ましく、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルであることがまた更に好ましく、ハイドロフルオロエーテルであることが特に好ましい。ここで水素原子を有する脂肪族含フッ素溶媒は飽和であっても不飽和であっても良く、直鎖状であっても、環状であっても良い。
【0036】
重合工程における条件、例えば、重合温度、重合時間、ラジカル重合開始剤の濃度、単量体の濃度、単量体に対する開始剤の使用比率、溶媒の使用量などは、使用する単量体、ラジカル重合開始剤、溶媒等の種類等を考慮して、適宜決定できる。例示は以下の通りである。重合温度は、例えば、30~70℃の範囲、重合時間は、例えば、5~96時間の範囲、ラジカル重合開始剤の濃度は、例えば、単量体に対して0.1~5モル%の範囲、単量体の濃度は、例えば、単量体と溶媒の合計に対して5~40重量%の範囲であることができる。但し、これらの数値範囲は、例示であり、これらの範囲に限定される意図ではない。特に、単量体の濃度は、単量体の種類及び溶媒の種類に応じ、かつ生成する重合体の溶媒への溶解性も考慮して適宜決定される。
【0037】
重合には、単量体、ラジカル重合開始剤に加えて、連鎖移動剤等を併用することが、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られる観点から好ましい。連鎖移動剤としては特に制限はないが、例えば、水素原子又は塩素原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含有する炭素数1~20の有機化合物を用いることができる。ここで連鎖移動剤とはフッ素樹脂のラジカル重合時に系中に存在していることにより分子量を低下させる効果を有する物質を表す。連鎖移動剤の具体例としては、トルエン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水素原子を含有する炭素数1~20の有機化合物;クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ベンジルクロリド、ペンタフルオロベンジルクロリド、ペンタフルオロベンゾイルクロリド等の塩素原子を含有する炭素数1~20の有機化合物等が挙げられる。なかでも、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量が小さく、加熱溶融後の黄変を抑制しつつ、フッ素樹脂の分子量を制御でき、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れる観点から塩素原子を含有する炭素数1~20の有機化合物であることが好ましく、一般式(A)で表されることが更に好ましい。
【0038】
【化9】
【0039】
(式(A)中、mは0~3の整数、nは1~3の整数であり、pは0~1の整数であり、qは0~1の整数であり、m+n+p+qは4である。R1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1~19の炭化水素基又は酸素原子であり、前記酸素原子は隣り合う炭素原子と2重結合を形成していても良い。R1及びR2の炭素数の合計は1~19であり、前記炭化水素基は酸素原子、フッ素原子、塩素原子から選ばれる1以上の原子を有していても良く、水素原子を有していなくても良い。また炭化水素基は直鎖状であっても、分岐状であっても、脂環状であっても、芳香環状であっても良く、R1及びR2が互いに連結して炭素数3~19の環を形成していても良い。)
【0040】
なかでも、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量が小さく、加熱溶融後の黄変を抑制しつつ、フッ素樹脂の分子量を制御でき、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れる観点から水素原子と塩素原子を含有する炭素数1~20の有機化合物であることが更に好ましい。水素原子と塩素原子を含有する炭素数1~20の有機化合物としては、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ベンジルクロリド、ペンタフルオロベンジルクロリド等が挙げられる。また、水素原子と塩素原子を含有する炭素数1~20の有機化合物において、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量が小さく、加熱溶融後の黄変を抑制しつつ、フッ素樹脂の分子量を制御でき、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れる観点から、水素原子と塩素原子は個数比で水素原子:塩素原子=1:9~9:1の範囲であることが好ましく、1:9~5:5の範囲であることが更に好ましい。また、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量が小さく、加熱溶融後の黄変を抑制しつつ、フッ素樹脂の分子量を制御でき、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れる観点から、水素原子と塩素原子を含有する炭素数1~20の有機化合物は下記一般式(B)又は(C)で表されることが好ましく、一般式(B)で表されることが更に好ましい。
【0041】
【化10】
(式(B)中、m、nはそれぞれ独立して1~3の整数であり、pは0~1の整数であり、qは0~1の整数であり、m+n+p+qは4である。R1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1~19の炭化水素基であり、R1 p及びR2 qの炭素数の合計は0~19であり、前記炭化水素基は酸素原子、フッ素原子、塩素原子から選ばれる1以上の原子を有していても良く、水素原子を有していなくても良い。また炭化水素基は直鎖状であっても、分岐状であっても、脂環状であっても、芳香環状であっても良く、R1及びR2が互いに連結して炭素数3~19の環を形成していても良い。)
【0042】
【化11】
【0043】
(式(C)中、m、n、u、vはそれぞれ独立して0~3の整数であり、m+uは1~5であり、n+vは1~5であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立して0~1の整数であり、m+n+p+qは3であり、r+s+u+vは3であり、R1、R2、R3、R4、R5はそれぞれ独立して炭素数1~18の炭化水素基であり、R1、R2、R3、R4、R5の炭素数の合計は0~18であり、前記炭化水素基は酸素原子、フッ素原子、塩素原子から選ばれる1以上の原子を有していても良く、水素原子を有していなくても良い。また炭化水素基は直鎖状であっても、分岐状であっても、脂環状であっても、芳香環状であっても良く、R1、R2、R3、R4、R5から選ばれる2以上の基は互いに連結して炭素数3~19の環を形成していても良く、その環が複数あっても良い。)
【0044】
一般式(A)で表される塩素原子を含有する炭素数1~20の有機化合物としては、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ベンジルクロリド、ペンタフルオロベンジルクロリド、ペンタフルオロベンゾイルクロリド等が挙げられる。一般式(B)で表される水素原子と塩素原子を含有する炭素数1~20の有機化合物としては、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ベンジルクロリド、ペンタフルオロベンジルクロリド等が挙げられる。一般式(C)で表される水素原子と塩素原子を含有する炭素数1~20の有機化合物としては、1,1,1-トリクロロエタン等が挙げられる。
【0045】
さらに、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量が小さく、加熱溶融後の黄変を抑制しつつ、溶融時の脱泡性およびクラック発生を両立し、更に溶融時の脱泡性、耐熱性に優れ、溶融粘度が低く、クラック発生が少ないフッ素樹脂が得られ、更に収率にも優れたものとなることから、連鎖移動剤の量が前記単量体と連鎖移動剤の合計に対し、0.01~95重量%であることが好ましく、1~50重量%であることが更に好ましく、3~50重量%であることが更に好ましい。
【0046】
析出工程では、含フッ素脂肪族環構造を含むフッ素樹脂Aと良溶媒bとを含むフッ素樹脂A溶液に対して、フッ素樹脂Aに対する貧溶媒cを加えることによりフッ素樹脂Aを析出させる。
【0047】
フッ素樹脂Aに対する貧溶媒cとは、フッ素樹脂Aを溶解しにくい溶媒を意味し、例えば、重量平均分子量Mwが5~15×104のフッ素樹脂A試料を20倍量(w/w)の50℃の溶媒に5時間以上浸漬し、25℃に冷却したときに、フッ素樹脂A試料の溶媒への溶解量が20重量%未満、好ましくは、10重量%未満の溶媒を貧溶媒とすることができる。さらに、本発明においては、フッ素樹脂Aに対する貧溶媒は、良溶媒にフッ素樹脂を溶解したフッ素樹脂A溶液からフッ素樹脂Aを析出させることができる溶媒でもある。貧溶媒は、好ましくは、フッ素樹脂Aをある良溶媒に溶解させた溶液を、25℃において良溶媒の10倍量の溶媒に滴下した際にフッ素樹脂Aが析出する溶媒である。ここで、フッ素樹脂Aは、前記一般式(3)で表される残基単位を含むフッ素樹脂であることができる。
【0048】
貧溶媒cとなり得る溶媒としては、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール、1,2,2,3,3,4,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、1H,1H-ペンタフルオロプロパノール、1H,1H-ヘプタフルオロブタノール、2-パーフルオロブチルエタノール、4,4,4-トリフルオロブタノール、1H,1H,3H-テトラフルオロプロパノール、1H,1H,5H-オクタフルオロプロパノール、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプタノール、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチルエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル、1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテル等の分子内に水素原子を有する含フッ素溶媒;ヘキサン、ヘプタン、トルエン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のフッ素不含の有機溶媒からなる群の少なくとも1種が挙げられる。
【0049】
生産性に優れ、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れ、加熱重量減少量の小さいフッ素樹脂が得られることから、前記貧溶媒は含フッ素溶媒であることが好ましく、分子内に水素原子を有する含フッ素溶媒であることが更に好ましく、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、2,2,2-トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール、1,2,2,3,3,4,4-ヘプタフルオロシクロペンタンからなる群の少なくとも1種が更に好ましい。貧溶媒は、経済性の観点からは、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のフッ素不含の有機溶媒が好ましい。
【0050】
ある溶媒が、良溶媒又は貧溶媒であるかどうかは、該有機溶媒が有する極性がある特定の範囲にあるかどうかでも評価することができる。具体的には、ハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameters)に基づいて、ある特定の範囲の極性を有する溶媒を良溶媒又は貧溶媒とすることができる。ただし、上述の良溶媒又は貧溶媒の定義・判定方法と異なる場合には、上述の定義・判定方法による分類を正とする。
【0051】
ハンセン溶解度パラメーターは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、ハンセン(Hansen)が分散項δD、極性項δP、水素結合項δHの3成分に分割し、3次元空間に示したものである。分散項δDは、分散力による効果を示し、極性項δPは、双極子間力による効果を示し、水素結合項δHは、水素結合力の効果を示す。3次元空間において、ある樹脂の座標とある溶媒の座標とが離れるほど、該樹脂は該溶媒に溶解しにくい。
【0052】
ハンセン溶解度パラメーターの定義および計算方法は、下記の文献に記載されている。CharlesM.Hansen著、「HansenSolubilityParameters:AUsersHandbook」、CRCプレス、2007年。また、文献値が知られていない溶媒については、コンピュータソフトウエア(HansenSolubilityParametersinPractice(HSPiP))を用いることによって、その化学構造から簡便にハンセン溶解度パラメーターを推算できる。
【0053】
本発明においては、HSPiP 5th Edditionを用い、データベースに登録されている有機溶媒についてはその値を、登録されていない有機溶媒については推算値を用いる。
【0054】
樹脂のハンセン溶解度パラメーターについては、樹脂を良溶媒に溶解した溶液をハンセン溶解度パラメーターが確定している数多くの異なる溶媒に加えた際に樹脂が溶解するかを確認することによって決定することができる。具体的には、試験に用いた全ての溶媒のハンセン溶解度パラメーターの座標を3次元空間に示した際、樹脂Aの溶解度が80重量%以上の溶媒の座標がすべて球の内側に内包され、樹脂Aの溶解度が20重量%未満の溶媒の座標が球の外側になるような球(溶解度球)を探し出し、溶解度球の中心座標を樹脂のハンセン溶解度パラメーターとする。
【0055】
そして、溶解度試験に用いられなかったある溶媒のハンセン溶解度パラメーターの座標が(δD、δP、δH)であった場合、該座標が溶解度球の内側に内包されれば、該有機溶媒は良溶媒であると考えられる。一方、該座標が溶解度球の外側にあれば、該有機溶媒は貧溶媒であると考えられる。
【0056】
本発明において一般式(5)で表されるパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)残基単位を含む樹脂のハンセン溶解度パラメーターとしては、下記一般式(6)で表される化合物(一般式(5)で表される化合物の五量体)のハンセン溶解度パラメーターを、HSPiPを用いて推算した値を用い、一般式(6)で表される化合物の推算したハンセン溶解度パラメーターδD、δP、δHは、それぞれ、11.6、3.5、1.4(MPa1/2)であった。
【0057】
【化12】
【0058】
(式(6)中、Rf9、Rf10、Rf11、Rf12はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1~7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3~7の分岐状のパーフルオロアルキル基または炭素数3~7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示す。前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよい。また、Rf9、Rf10、Rf11、Rf12は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)。
【0059】
そして、ハンセン溶解度パラメーターから式(7)によって計算される、樹脂との溶解指標Rを求めた際に、良溶媒は溶解性指標Rが4未満であることが好ましく、貧溶媒は溶解性指標Rが4以上であることが好ましい。
R=4×{(δD1-δD22+(δP1-δP22+(δH1-δH220.5 ・・・(7)
ここでδD1、δP1、δH1はそれぞれ前記樹脂粒子のハンセン溶解度パラメーターの分散項、極性項および水素項、δD2、δP2、δH2はそれぞれ前記溶媒のハンセン溶解度パラメーターの分散項、極性項および水素項である。
【0060】
たとえば、パーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)残基単位を含む樹脂との親和性Raが4以上である溶媒として下記の有機溶媒を挙げることができる。
【0061】
【表1】
【0062】
析出工程では、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量の小さい樹脂が得られる観点から、フッ素樹脂A溶液に、フッ素樹脂A溶液に対する貧溶媒cを加えることによりフッ素樹脂Aを析出させる。
【0063】
析出工程は、好ましくは、フッ素樹脂Aと良溶媒bとを含むフッ素樹脂A溶液に、撹拌下、フッ素樹脂Aに対する貧溶媒cを加えることによりフッ素樹脂Aの粒子を析出させる。
【0064】
生産性に優れ、粒子の互着が防止され、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量の小さいフッ素樹脂が得られることから、貧溶媒cと混合した後の良溶媒b:貧溶媒cの重量比は、1:99~90:10の範囲であることが好ましく、1:99~70:30がより好ましく、1:99~50:50が更に好ましく、3:97~60:40が一層好ましい。
【0065】
撹拌は、生産性に優れ、粒子の互着が防止され、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量の小さいフッ素樹脂が得られることから単位撹拌容量あたりの撹拌機モータ動力の値であるPv値が0.05~50kw/m3での撹拌であることが好ましい。Pv値は0.2~50kW/m3がより好ましく、0.5~30kW/m3が一層好ましく、0.5~10kW/m3がより一層好ましい。ここでPv値(kW/m3)は以下の式(10)により算出することができる。
【0066】
【数1】
(ここで、Np:動力数、ρ:溶液の密度(kg/m3)、n:撹拌翼の回転数(rpm)、d:撹拌翼の直径(mm)、V:溶液量(L)を表す。)
【0067】
式(10)におけるNpは動力数と呼ばれる無次元数で、撹拌翼の形状により変化する。このNpは例えば、「化学装置1995年8月号71-79頁」や「神鋼ファウドラー技報vol.28、No.8(1984年10月)、13-16頁」などの公知の文献により得ることができる。この際、翼幅bと撹拌翼の直径dの比b/dが文献に記載の撹拌翼と異なる場合には、以下の式(11)により算出することができる。
【0068】
実際のNp=文献に記載のNp×(実際のb/d)/(文献に記載のb/d) (11)
(ここで、Np:動力数、b:撹拌翼の翼幅(mm)、d:撹拌翼の直径(mm)を表す。)
【0069】
析出工程で得られた、樹脂が析出しているフッ素樹脂A溶液において、得られる樹脂の互着が防止され、紛体としての取扱い性に優れた樹脂が得られることから、貧溶媒cを添加する貧溶媒添加工程を行うことが好ましい。貧溶媒添加工程における貧溶媒cの添加量は、生産性に優れ、粒子の互着が防止され、粉体としての取扱い性に優れた樹脂が得られることから、析出工程で得られたフッ素樹脂A含有溶液の重量に対して、0.1倍以上の貧溶媒cを添加することが好ましく、好ましくは0.5倍以上1倍以上の貧溶媒cを添加することが更に好ましい。尚、貧溶媒添加工程で用いる貧溶媒cは、析出工程で用いる貧溶媒cと同一でも異なっていても良い。
【0070】
本発明においては、他にいかなる工程を追加しても良いが、析出工程または貧溶媒添加工程後に、固液分離により固体を取り出す分離工程を含んでいても良い。固液分離方法には特に限定はないが、例えば、加圧ろ過、減圧ろ過、遠心分離、遠心ろ過等が挙げられる。用いるフィルターのサイズには限定は無いが、例えば、補足粒子径が30μm以下のフィルター等が挙げられる。用いるフィルターの材質には限定は無いが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、PTFE、PES等が挙げられる。
【0071】
本発明においては、他にいかなる工程を追加しても良く、フッ素樹脂Aの粒子を洗浄する洗浄工程及び/又は乾燥させる乾燥工程を含んでいても良い。洗浄工程においては、貧溶媒cを用いることが好ましく、貧溶媒cは、好ましくは25℃において、フッ素樹脂Aを析出させる有機溶媒である。乾燥方法には特に限定はないが、例えば、真空乾燥、減圧乾燥、常圧乾燥、送風乾燥、振盪乾燥、温風乾燥、加熱乾燥などが挙げられる。尚、乾燥工程で用いる貧溶媒cは、貧溶媒添加工程で用いる貧溶媒c及び析出工程で用いる貧溶媒cと同一でも異なっていても良い。
【0072】
本発明の製造方法で得られるフッ素樹脂は、嵩密度が例えば、0.25~1.5g/cm3であることが、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量の小さいフッ素樹脂が得られる観点から好ましい。嵩密度は、0.30~1.0g/cm3であことがより好ましく、0.35~0.7g/cm3であことがさらに好ましい。嵩密度の測定は、以下のように実施される。単位容量あたりの高さを予め測定した容積13.5mLのガラス製サンプル管(水10mLを入れた時の液面高さが2.8cm)にフッ素樹脂Aを秤量して入れ、その時の粉の高さと粉の重量から、以下の式に従って、嵩密度を算出した。
嵩密度=(粉の重量(g))/((粉の高さ(cm)/0.28(cm/mL))
【0073】
本発明の製造方法で得られるフッ素樹脂は、流動性が高く、成型加工機等に対する連続した供給が可能となり、嵩密度が高く、加熱重量減少量の小さいフッ素樹脂が得られることから、体積平均粒子径が5μm~2000μmであることが好ましく、5μm~1000μmが更に好ましく、5μm~500μmであることが更に好ましい。本発明の製造方法で得られるフッ素樹脂は、流動性・成形性がより向上することから、90%粒子径が2500μm以下、さらには2000μm以下、またさらには1000μm以下であることが好ましい。
【0074】
本発明の製造方法で得られるフッ素樹脂は、微細な粒子の含有量が低くなり、粉塵化がより防止され、流動性がより向上することから、10%粒子径が3μm以上であることが好ましい。
【0075】
本発明の製造方法で得られるフッ素樹脂の体積平均粒子径、90%粒子径、10%粒子径、及び粒子径分布は、レーザー回折散乱法による粒子径分布測定(体積分布)で評価することができる。レーザー回折散乱法による粒子径分布は、樹脂粒子を水中又はメタノール等の有機溶媒中に分散させて測定することで測定することができる。レーザー散乱計として、マイクロトラック・ベル株式会社製のマイクロトラックを例示することができる。
【0076】
体積平均粒子径とは、Mean Volume Diameterとも言われ、体積基準で表した平均粒子径であり、粒子径分布を各粒径チャンネルごとに区切り、各粒径チャンネルの代表粒径値をd、各粒径チャンネルごとの体積基準のパーセントをvとした時に、Σ(vd)/Σ(v)で表される。
【0077】
10%粒子径とは、その粉体の集団の全体積を100%として累積量を求めた時、その累積量が10%となる点の粒子径を表す。90%粒子径とは、その粉体の集団の全体積を100%として累積量を求めた時、その累積量が90%となる点の粒子径を表す。
【0078】
本発明の製造方法で得られるフッ素樹脂は、成形加工時に発泡しにくい樹脂粒子となることから、250℃加熱時の重量減少量が1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることが好ましい。また、250℃加熱時の重量減少量の最小量については特に限定は無いが、例えば、0.001重量%以上を例示できる。また、本発明の樹脂粒子は、成形加工時に発泡しにくい樹脂粒子となることから、樹脂中に含まれる残存溶媒量が1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることが好ましい。ここで、250℃加熱時の重量減少量とは、TG-DTAを用いて、エアー気流下で10℃/minで40℃から昇温した際の250℃における重量減少量を示し、(1-(250℃におけるサンプル重量)/(秤量したサンプル重量))×100)から求められる。
【0079】
本発明の製造方法で得られるフッ素樹脂は、生産性に優れ、粒子の互着が防止され、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量の小さいフッ素樹脂が得られるという観点から、重量平均分子量が5×104~5×105であることが好ましい。より好ましくは重量平均分子量Mwは5×104~3×105の範囲である。重量平均分子量Mwがこの範囲にあることで、せん断速度10-2s、250℃における溶融粘度が1×102~3×105Pa・sであることができ、その結果、溶融成形加工性に優れる。さらに、溶融時の脱泡性にも優れる。また、重量平均分子量Mwがこの範囲にあることで、加熱冷却時のクラック発生の少ないものとなる。本発明のフッ素樹脂は、生産性に優れ、粒子の互着が防止され、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量の小さいフッ素樹脂が得られ、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れる観点から、好ましくは重量平均分子量Mwが5×104~2×105の範囲であり、重量平均分子量Mwがこの範囲にあることで、せん断速度10-2s、250℃における溶融粘度が1×102~2×104Pa・sであることができ、その結果、溶融成形加工性に優れ、更に脱泡性にも優れるため好ましい。生産性に優れ、粒子の互着が防止され、嵩密度が高く、粉体としての取扱い性に優れた粒子が得られ、加熱重量減少量の小さいフッ素樹脂が得られ、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れる観点から、更に好ましくは重量平均分子量Mwが5×104~1.5×105の範囲である。
【0080】
本発明のフッ素樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、例えば標準試料として分子量既知の標準ポリメタクリル酸メチル、溶離液として標準試料とフッ素樹脂の両方を溶解可能な溶媒を用い、試料と標準試料の溶出時間、標準試料の分子量から算出することができる。前記溶液液としては、アサヒクリンAK-225(旭硝子株式会社製)に、AK-225に対して10wt%の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(和光純薬工業製)を添加したものを挙げることができる。
【実施例
【0081】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
【0082】
<物性測定方法>
(1)重量平均分子量Mw
東ソー(株)製のカラムTSKgel SuperHZM-M、RI検出器を備えたゲルパーミッションクロマトグラフィーを用いて測定を行った。溶離液としてアサヒクリンAK-225(旭硝子株式会社製)に、AK-225に対して10wt%の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(和光純薬工業製)を添加したものを用いた。標準試料としてAgilent製の標準ポリメタクリル酸メチルを用い、試料と標準試料の溶出時間からポリメタクリル酸メチル換算の重量平均分子量Mwを算出した。
【0083】
(2)体積平均粒子径、10%粒子径、90%粒子径の測定
マイクロトラック・ベル株式会社製マイクロトラックMT3000を用い、分散媒としてメタノ-ルを使用して体積平均粒子径(単位:μm)、10%粒子径、90%粒子径を測定した。
【0084】
(3)Pv値の算出
単位撹拌容量あたりの撹拌機モータ動力の値であるPv値は以下の式より算出した。4枚ナナメパドル撹拌翼(翼径50mm、斜め45°)を用いた時のNpは4.2を用いた。
【数2】
(ここで、Np:動力数、ρ:溶液の密度(kg/m3)、n:撹拌翼の回転数(rpm)、d:撹拌翼の直径(mm)、V:溶液量(L)を表す。)。
【0085】
(4)嵩密度の算出
単位容量あたりの高さを予め測定した容積13.5mLのガラス製サンプル管(水10mLを入れた時の液面高さが2.8cm)にフッ素樹脂Aを秤量して入れ、その時の粉の高さと粉の重量から、以下の式に従って、嵩密度を算出した。
嵩密度=(粉の重量(g))/((粉の高さ(cm)/0.28(cm/mL))
【0086】
(5)250℃加熱重量減少量の算出
アルミ製サンプルパン(株式会社日立ハイテクサイエンス社製SSC000E030)にサンプル約10~15mgを秤量し、TG/DTA装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA6200AST2)にて、計装エアー気流下(160mL/min)で40℃から300℃まで10℃/minで昇温し、250℃における重量減少量(1-(250℃におけるサンプル重量)/(秤量したサンプル重量))×100)を求め、250℃加熱重量減少量とした。
【0087】
実施例1
容量75mLのガラスアンプルに開始剤としてビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド0.173g(0.000410モル)、単量体としてパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)20.0g(0.0820モル)、重合溶媒としてNovec7300(スリーエムジャパン社製、C25CF(OCH3)C37)80.00g、連鎖移動剤としてクロロホルム(和光純薬社製)2.22g(0.0186モル)を入れ、凍結脱気による窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した(単量体/溶剤=20/80(wt/wt))。このアンプルを55℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル溶液重合を行ったところ、樹脂が溶解した粘稠な液が得られた。室温まで冷却後アンプルを開封し、粘度調整のため樹脂溶液を100gのNovec7300で希釈して樹脂希釈溶液を作製した(固形分濃度10重量%)。
【0088】
この溶液を4枚ナナメパドル撹拌翼(翼径50mm、翼幅12mm、斜め45°)、スリーワンモーター、ウォーターバスを備えた容量1000mLのセパラブルフラスコに移し、600rpmで撹拌しながら(Pv値:20.6kw/m3)、420gのゼオローラH(日本ゼオン製、1,2,2,3,3,4,4-ヘプタフルオロシクロペンタン)をゆっくり加えることにより粒子状の固体が得られた(ゼオローラH/Novec7300=70/30(wt/wt)、添加終了後のPv値:6.1kw/m3)。吸引ろ過を行い、アセトン洗浄を2回行い、加熱下で真空乾燥することでフッ素樹脂Aの粒子を得た。得られた樹脂は体積平均粒子径92μm、10%粒子径が19μm、90%粒子径が198μmの微粒子であり、粗粒の殆ど無いものであった。得られたフッ素樹脂の重量平均分子量Mwは7.9×104であった。フッ素樹脂の評価結果を表2に示す。
【0089】
比較例1
非特許文献1のTable 2のSample93の記載に従って行った。ただし、再沈精製時のポリマー濃度については記載が無かったため、10wt%まで希釈して行った。容量75mLのガラスアンプルに開始剤としてビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド0.0880g(0.000209モル)、単量体としてパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)20.0g(0.0820モル)、重合溶媒としてヘキサフルオロベンゼン32.63gを入れ、凍結脱気による窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した(単量体/溶剤=38/62(wt/wt))。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル溶液重合を行ったところ、樹脂が溶解した粘稠な液が得られた。室温まで冷却後アンプルを開封し、粘度調整のため樹脂溶液をヘキサフルオロベンゼン147gで希釈して樹脂希釈溶液を作製した。アンカー翼を備えたビーカーにクロロホルム1Lを入れ、攪拌下、前記の樹脂希釈溶液をビーカーに加えることで樹脂を析出させ、析出した樹脂をろ過により回収後、真空乾燥することにより、不定形のパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)樹脂を得た。得られたフッ素樹脂について、代表的な大きさのものを定規で大きさを測ったところ、大きさは約10mmであった。得られたフッ素樹脂の重量平均分子量Mwは3.7×105であった。フッ素樹脂の評価結果を表2に示す。
【0090】
参考例1
容量75mLのガラスアンプルに開始剤としてビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド0.173g(0.000410モル)、単量体としてパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)20.0g(0.0820モル)、重合溶媒としてNovec7300(スリーエムジャパン社製、C25CF(OCH3)C37)80.00g、連鎖移動剤としてクロロホルム(和光純薬社製)2.22g(0.0186モル)を入れ、凍結脱気による窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した(単量体/溶剤=20/80(wt/wt))。このアンプルを55℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル溶液重合を行ったところ、樹脂が溶解した粘稠な液が得られた。室温まで冷却後アンプルを開封し、粘度調整のため樹脂溶液を100gのNovec7300で希釈して樹脂希釈溶液を作製した(固形分濃度10重量%)。アンカー翼を備えたプラスチック製カップにアセトン2Lを入れ、攪拌下、前記の加圧ろ過した樹脂希釈溶液をビーカーに加えることで樹脂を析出させ、析出した樹脂をろ過により回収後、アセトン洗浄を2回行い、真空乾燥することにより、粉末状のパーフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)樹脂を得た。得られたフッ素樹脂の重量平均分子量Mwは5.2×104であった。フッ素樹脂の評価結果を表1に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
参考例2
実施例1で作製したフッ素樹脂A(重量平均分子量Mw=7.9×104)を50℃でフッ素樹脂Aの20倍量(w/w)の各種有機溶媒に5時間以上浸漬し、溶解するかを目視で確認したところ、以下の通りの結果となった。
溶解する:FC-72、FC-770、Novec7200、Novec7300、ヘキサフルオロベンゼン。これらの溶媒に溶解した溶液を25℃まで冷却したところ、いずれも溶解した状態を維持していた。いずれも、溶け残りは殆ど無く、溶解度90wt%以上のものであった。
溶解しない:ゼオローラH、AE-3000、トリフルオロエタノール、酢酸エチル、クロロホルム、アセトン、ヘキサン。いずれも、25℃に冷却後、ろ過、乾燥後のフッ素樹脂Aの回収率は80%を超え、溶解度は20wt%未満のものであった。
【0093】
参考例3
フッ素樹脂A(重量平均分子量Mw=7.9×104)をNovec7300に固形分濃度10重量%で溶解させたフッ素樹脂A溶液を25℃でフッ素樹脂A溶液の10倍量の以下の有機溶媒に滴下した際、固体が析出するかを目視で確認したところ、以下の通りの結果となった。
固体は析出しなかった:FC-72、FC-770、Novec7200、Novec7300、ヘキサフルオロベンゼン。いずれも、析出物は無く、溶解度90wt%以上のものであった。
固体が析出した:ゼオローラH、AE-3000、トリフルオロエタノール、酢酸エチル、クロロホルム、アセトン、ヘキサン。いずれも、ろ過、乾燥後のフッ素樹脂Aの回収率は80%を超え、溶解度は20wt%未満のものであった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、フッ素樹脂に関連する分野において有用である。
図1