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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】保持具及び保護カバー
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/32 20060101AFI20230614BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20230614BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20230614BHJP
   F16L 3/13 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H02G3/32
F16B2/22 C
F16L57/00 A
F16L3/13
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019053530
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020156231
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】奥野 正典
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 猛
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 明仁
(72)【発明者】
【氏名】長尾 吉晴
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-188380(JP,U)
【文献】実開昭59-103977(JP,U)
【文献】特開2004-218762(JP,A)
【文献】特開2018-157681(JP,A)
【文献】特開2018-99013(JP,A)
【文献】実開昭59-23174(JP,U)
【文献】特開2010-138943(JP,A)
【文献】実開昭49-109172(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/32
H02G 3/30
F16B 2/22
F16L 57/00
F16L 3/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状を構成し、前記枠状の一部を開放した挿入口部から枠内部に挿入される長尺体を保持する保持具であって、
前記枠状の一部を構成する基部と、
前記基部の一端から延びる第1腕部と、
前記基部の他端から延びる第2腕部と、
前記第1腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第1腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第1案内部と、
前記第2腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第2腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第2案内部とが設けられ、
前記第1案内部及び前記第2案内部で前記挿入口部を形成し、
前記第1案内部の前記第1腕部に対する変形性が、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性より高く、
前記第1案内部の先端が前記第2案内部の先端より枠内側に配置されるとともに、
前記第1案内部に、前記第2案内部に対して、枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐ係止部が設けられ、
前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性を抑制する変形抑制部が設けられた
保持具。
【請求項2】
前記第1腕部における前記基部に対する曲部が、他の部分より薄肉に形成された
請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記第1腕部における前記基部側に、前記第1案内部の傾斜方向と同方向に向く傾斜部が設けられた
請求項1又は請求項2に記載の保持具。
【請求項4】
枠状を構成し、前記枠状の一部を開放した挿入口部から枠内部に挿入される長尺体を保持する保持具であって、
前記枠状の一部を構成する基部と、
前記基部の一端から延びる第1腕部と、
前記基部の他端から延びる第2腕部と、
前記第1腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第1腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第1案内部と、
前記第2腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第2腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第2案内部とが設けられ、
前記第1案内部及び前記第2案内部で前記挿入口部を形成し、
前記第1案内部の前記第1腕部に対する変形性が、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性より高く、
前記第1案内部の先端が前記第2案内部の先端より枠内側に配置されるとともに、
前記第1案内部に、前記第2案内部に対して、枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐ係止部が設けられ、
前記第1腕部における前記基部に対する曲部が、他の部分より薄肉に形成された
保持具。
【請求項5】
枠状を構成し、前記枠状の一部を開放した挿入口部から枠内部に挿入される長尺体を保持する保持具であって、
前記枠状の一部を構成する基部と、
前記基部の一端から延びる第1腕部と、
前記基部の他端から延びる第2腕部と、
前記第1腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第1腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第1案内部と、
前記第2腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第2腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第2案内部とが設けられ、
前記第1案内部及び前記第2案内部で前記挿入口部を形成し、
前記第1案内部の前記第1腕部に対する変形性が、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性より高く、
前記第1案内部の先端が前記第2案内部の先端より枠内側に配置されるとともに、
前記第1案内部に、前記第2案内部に対して、枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐ係止部が設けられ、
前記第1腕部における前記基部側に、前記第1案内部の傾斜方向と同方向に向く傾斜部が設けられた
保持具。
【請求項6】
前記第1案内部に設けられた前記係止部が、
前記第2案内部の先端部に係止する、枠外側に向かう凸状である
請求項1乃至5のうちいずれかに記載の保持具。
【請求項7】
前記係止部が係止する前記第2案内部の前記先端部が、前記基部における延伸方向の中央位置に対応する位置に配置された
請求項6に記載の保持具。
【請求項8】
前記第1案内部及び前記第2案内部の前記基部に対する傾斜角度は同程度であるとともに、前記長尺体の挿入方向に対して対称な向きである
請求項1乃至7のうちいずれかに記載の保持具。
【請求項9】
前記第1腕部の前記基部に対する変形性が、前記第2腕部の前記基部に対する変形性より高い
請求項1乃至8のうちいずれかに記載の保持具。
【請求項10】
長尺体の端部に設けられた接続部と他の電気接続部とが接続された接続箇所を覆って保護する保護カバーであって、
前記接続箇所を覆うカバー本体と、
該カバー本体から延びる可撓性を有する可撓連結部と、
該可撓連結部に設けられ、前記接続部が前記カバー本体で覆われた前記長尺体を保持する保持具とを備え、
前記保持具は、
枠状を構成し、前記枠状の一部を開放した挿入口部から枠内部に挿入される前記長尺体を保持する保持具であって、
前記枠状の一部を構成する基部と、
前記基部の一端から延びる第1腕部と、
前記基部の他端から延びる第2腕部と、
前記第1腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第1腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第1案内部と、
前記第2腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第2腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第2案内部とが設けられ、
前記第1案内部及び前記第2案内部で前記挿入口部を形成し、
前記第1案内部の前記第1腕部に対する変形性が、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性より高く、
前記第1案内部の先端が前記第2案内部の先端より枠内側に配置されるとともに、
前記第1案内部に、前記第2案内部に対して、枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐ係止部が設けられた
保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用のワイヤハーネスなどの長尺体を保持する保持具及び保持具を備えた保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に装備された電装機器を接続するため、複数の被覆電線を束ねたワイヤハーネスなどの長尺体を例えば、配策するために所定箇所に固定したり、所定の範囲に規制したりするために、あるいは長尺体に別部品を取付けたりするために、クリップやクランプと呼ばれる保持具が用いられている。
【0003】
特許文献1に記載のクリップは、多芯ケーブルが挿入可能な開口部を有する把持部を備えており、把持部には多芯ケーブルに外嵌するための、開口部に連通する収容空間が設けられている。このようなクリップで多芯ケーブルを保持するためには、開口部より多芯ケーブルを挿入し、開口部側が開放するC型の収容空間に収容することとなる。
【0004】
しかしながら、開口部側が開放するC型の収容空間に収容した多芯ケーブルは外力によって多芯ケーブルが不用意に外れたり、外径が異なる多芯ケーブルをC型の収容空間で保持するには、多芯ケーブルの外径に合わせた複数種のクリップを準備する必要あった。
【0005】
このような問題に対し、特許文献2には、略平板状に形成された基板に対してヒンジを介して枢動可能に設けられた保持帯が備えられ、保持帯には基板に対して係止するロック部が設けられた長尺体保持具が開示されている。
【0006】
このような長尺体保持具で、ワイヤハーネスなどの長尺体を保持するためには、ロック部を解除し、基板に対して保持帯を枢動させて開放し、基板に対して長尺体を配置してから、保持帯を枢動させて閉じるとともに、ロック部を係止させることで保持することができる。
【0007】
上述のような構造により、基板と保持帯とで閉断面を構成できるため、保持する長尺体の外周を囲うことができ、外径が異なる保持帯であっても確実に保持することができる。しかしながら、長尺体を保持するためには、上述したように、ロック部の解除、基板に対する保持帯の開放、基板に対して長尺体を配置した後の保持帯の閉止、及びロック部の係止という作業が必要となり、容易に長尺体を保持することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-157681号公報
【文献】特開2010-19409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、長尺体を確実且つ容易に保持することができる保持具及び保護カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、枠状を構成し、前記枠状の一部を開放した挿入口部から枠内部に挿入される長尺体を保持する保持具であって、前記枠状の一部を構成する基部と、前記基部の一端から延びる第1腕部と、前記基部の他端から延びる第2腕部と、前記第1腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第1腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第1案内部と、前記第2腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第2腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第2案内部とが設けられ、前記第1案内部及び前記第2案内部で前記挿入口部を形成し、前記第1案内部の前記第1腕部に対する変形性が、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性より高く、前記第1案内部の先端が前記第2案内部の先端より枠内側に配置されるとともに、前記第1案内部に、前記第2案内部に対して、枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐ係止部が設けられ、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性を抑制する変形抑制部が設けられたことを特徴とする。
【0011】
上記長尺体は、被覆電線を束ねたワイヤハーネスなどの長尺状のものであり、所望の経路に配策するために所定箇所に固定したり、可動範囲を規制されたり、あるいは別部品を取付けたりする必要のあるものを指す。
上記係止部は、枠内側から枠外側に向かう方向、つまり前記長尺体の前記枠内部への挿入方向に対して反対方向である反挿入方向に係止すれば、前記第2案内部の端部あるいは途中部に係止してもよい。
【0012】
上述の前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性を抑制する変形抑制部は、前記第2案内部と前記第2腕部との接合部に設けたリブや厚肉部、さらには、高強度な材質で構成した接合部であってもよい。
【0013】
この発明により、前記保持具で前記長尺体を確実且つ容易に保持することができる。
詳述すると、前記腕部から延伸する案内部の変形によって形成される前記挿入口部から前記枠内部に前記長尺体を挿入することで前記長尺体を確実に保持することができる。
【0014】
また、前記第1案内部及び前記第2案内部で前記挿入口部を形成するため、案内部によって前記長尺体を前記枠内部へ案内して、前記枠内部に前記長尺体を挿入することができる。
さらに、前記第1案内部の前記第1腕部に対する変形性が、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性より高く、前記第1案内部の先端が前記第2案内部の先端より枠内側に配置されるとともに、前記第1案内部に設けた係止部を、前記第2案内部に対して、枠内側から枠外側に向かう方向に係止させることで、前記挿入口部を塞ぐことができ、つまり、前記基部、一対の前記腕部及び前記案内部並びに前記係止部とで閉断面を構成できる。そのため、仮に、前記保持具の前記枠内部に挿入された前記長尺体に外力が作用しても、前記枠内部から前記長尺体が不用意に外れることを防止できる。
【0015】
また、前記第1案内部に、前記第2案内部に対して枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐ前記係止部が設けられているため、前記枠内部に向かって傾斜する案内部に沿って前記長尺体を挿入するだけで、前記第1案内部が変形し、前記第2案内部への前記係止部の係止を解消し、前記挿入口部から前記枠内部に前記長尺体を挿入することができる。また、前記長尺体が前記挿入口部を通過すると、前記第1案内部の変形性によって前記係止部が前記第2案内部に枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐことができる。
【0016】
また、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性を抑制する変形抑制部が設けられていることにより、前記枠内部から前記長尺体を外れにくくすることができる。
詳述すると、前記係止部が係止する前記第2案内部が、変形抑制部によって前記第2腕部に対して変形性が抑制されるため、係止が外れにくくなり、前記長尺体が脱落するのを抑制できる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記第1腕部における前記基部に対する曲部が、他の部分より薄肉に形成されてもよい。
この発明により、前記第1腕部の前記基部に対する変形性が高くなり、前記枠内部に向かって傾斜する案内部に沿って長尺体を挿入する際の挿入力によって、前記基部に対する変形性が高い前記第1腕部が前記基部に対して変形するため、係止部が設けられた第1案内部及び第1腕部が変形し、第2案内部に係止する係止部の係止を解除しやすくなり、さらに容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記第1腕部における前記基部側に、前記第1案内部の傾斜方向と同方向に向く傾斜部が設けられてもよい。
この発明により、さらに容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0019】
詳述すると、長尺体を挿入する際の挿入力が前記第1案内部に作用するとともに、前記第1案内部に作用した挿入力が第1腕部にも作用する。このとき、前記第1腕部における前記基部側に設けられた傾斜部が前記第1案内部の傾斜方向と同方向に向いているため、第1腕部は、枠外側に向かうように湾曲変形し、第2案内部に係止する係止部の係止を解除しやすくなり、さらに容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0020】
またこの発明は、枠状を構成し、前記枠状の一部を開放した挿入口部から枠内部に挿入される長尺体を保持する保持具であって、前記枠状の一部を構成する基部と、前記基部の一端から延びる第1腕部と、前記基部の他端から延びる第2腕部と、前記第1腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第1腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第1案内部と、前記第2腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第2腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第2案内部とが設けられ、前記第1案内部及び前記第2案内部で前記挿入口部を形成し、前記第1案内部の前記第1腕部に対する変形性が、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性より高く、前記第1案内部の先端が前記第2案内部の先端より枠内側に配置されるとともに、前記第1案内部に、前記第2案内部に対して、枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐ係止部が設けられ、前記第1腕部における前記基部に対する曲部が、他の部分より薄肉に形成されたことを特徴とする。
【0021】
この発明により、前記保持具で前記長尺体を確実且つ容易に保持することができる。
詳述すると、前記腕部から延伸する案内部の変形によって形成される前記挿入口部から前記枠内部に前記長尺体を挿入することで前記長尺体を確実に保持することができる。
【0022】
また、前記第1案内部及び前記第2案内部で前記挿入口部を形成するため、案内部によって前記長尺体を前記枠内部へ案内して、前記枠内部に前記長尺体を挿入することができる。
さらに、前記第1案内部の前記第1腕部に対する変形性が、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性より高く、前記第1案内部の先端が前記第2案内部の先端より枠内側に配置されるとともに、前記第1案内部に設けた係止部を、前記第2案内部に対して、枠内側から枠外側に向かう方向に係止させることで、前記挿入口部を塞ぐことができ、つまり、前記基部、一対の前記腕部及び前記案内部並びに前記係止部とで閉断面を構成できる。そのため、仮に、前記保持具の前記枠内部に挿入された前記長尺体に外力が作用しても、前記枠内部から前記長尺体が不用意に外れることを防止できる。
【0023】
また、前記第1案内部に、前記第2案内部に対して枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐ前記係止部が設けられているため、前記枠内部に向かって傾斜する案内部に沿って前記長尺体を挿入するだけで、前記第1案内部が変形し、前記第2案内部への前記係止部の係止を解消し、前記挿入口部から前記枠内部に前記長尺体を挿入することができる。また、前記長尺体が前記挿入口部を通過すると、前記第1案内部の変形性によって前記係止部が前記第2案内部に枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐことができる。
【0024】
また、前記第1腕部における前記基部に対する曲部が、他の部分より薄肉に形成されていることにより、前記第1腕部の前記基部に対する変形性が高くなり、前記枠内部に向かって傾斜する案内部に沿って長尺体を挿入する際の挿入力によって、前記基部に対する変形性が高い前記第1腕部が前記基部に対して変形するため、係止部が設けられた第1案内部及び第1腕部が変形し、第2案内部に係止する係止部の係止を解除しやすくなり、さらに容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0025】
またこの発明は、枠状を構成し、前記枠状の一部を開放した挿入口部から枠内部に挿入される長尺体を保持する保持具であって、前記枠状の一部を構成する基部と、前記基部の一端から延びる第1腕部と、前記基部の他端から延びる第2腕部と、前記第1腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第1腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第1案内部と、前記第2腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第2腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第2案内部とが設けられ、前記第1案内部及び前記第2案内部で前記挿入口部を形成し、前記第1案内部の前記第1腕部に対する変形性が、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性より高く、前記第1案内部の先端が前記第2案内部の先端より枠内側に配置されるとともに、前記第1案内部に、前記第2案内部に対して、枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐ係止部が設けられ、前記第1腕部における前記基部側に、前記第1案内部の傾斜方向と同方向に向く傾斜部が設けられたことを特徴とする。
【0026】
この発明により、前記保持具で前記長尺体を確実且つ容易に保持することができる。
詳述すると、前記腕部から延伸する案内部の変形によって形成される前記挿入口部から前記枠内部に前記長尺体を挿入することで前記長尺体を確実に保持することができる。
【0027】
また、前記第1案内部及び前記第2案内部で前記挿入口部を形成するため、案内部によって前記長尺体を前記枠内部へ案内して、前記枠内部に前記長尺体を挿入することができる。
さらに、前記第1案内部の前記第1腕部に対する変形性が、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性より高く、前記第1案内部の先端が前記第2案内部の先端より枠内側に配置されるとともに、前記第1案内部に設けた係止部を、前記第2案内部に対して、枠内側から枠外側に向かう方向に係止させることで、前記挿入口部を塞ぐことができ、つまり、前記基部、一対の前記腕部及び前記案内部並びに前記係止部とで閉断面を構成できる。そのため、仮に、前記保持具の前記枠内部に挿入された前記長尺体に外力が作用しても、前記枠内部から前記長尺体が不用意に外れることを防止できる。
【0028】
また、前記第1案内部に、前記第2案内部に対して枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐ前記係止部が設けられているため、前記枠内部に向かって傾斜する案内部に沿って前記長尺体を挿入するだけで、前記第1案内部が変形し、前記第2案内部への前記係止部の係止を解消し、前記挿入口部から前記枠内部に前記長尺体を挿入することができる。また、前記長尺体が前記挿入口部を通過すると、前記第1案内部の変形性によって前記係止部が前記第2案内部に枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐことができる。
【0029】
さらにまた、前記第1腕部における前記基部側に、前記第1案内部の傾斜方向と同方向に向く傾斜部が設けられていることにより、さらに容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0030】
詳述すると、長尺体を挿入する際の挿入力が前記第1案内部に作用するとともに、前記第1案内部に作用した挿入力が第1腕部にも作用する。このとき、前記第1腕部における前記基部側に設けられた傾斜部が前記第1案内部の傾斜方向と同方向に向いているため、第1腕部は、枠外側に向かうように湾曲変形し、第2案内部に係止する係止部の係止を解除しやすくなり、さらに容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0031】
この発明の態様として、前記第1案内部に設けられた前記係止部が、前記第2案内部の先端部に係止する、枠外側に向かう凸状であってもよい。
この発明により、前記枠内部に挿入された前記長尺体をより確実に保持することができる。
【0032】
詳述すると、仮に、前記保持具の前記枠内部に挿入された前記長尺体に外力が作用しても、前記第1案内部に設けられ、枠外側に向かう凸状である前記係止部が、前記第2案内部の先端部に係止するため、前記枠内部から前記長尺体が不用意に外れることをより確実に防止することができる。
【0033】
またこの発明の態様として、前記係止部が係止する前記第2案内部の前記先端部が、前記基部における延伸方向の中央位置に対応する位置に配置されてもよい。
この発明により、より容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0034】
詳述すると、前記第1案内部に設けられた前記係止部が、前記基部における延伸方向の中央位置に対応する位置に配置された前記第2案内部の先端部に係止するため、前記枠内部に向かって傾斜する案内部に沿って長尺体を挿入する際の挿入力を、係止を解除するように係止部に効率的に作用させることができ、より容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0035】
また、この発明の態様として、前記第1案内部及び前記第2案内部の前記基部に対する傾斜角度は同程度であるとともに、前記長尺体の挿入方向に対して対称な向きであってもよい。
上述の同程度とは、前記第1案内部及び前記第2案内部の前記基部に対する傾斜角度の差が±10度以内であること指す。
【0036】
この発明により、枠内部に長尺体をスムーズに挿入することができる。
詳述すると、前記第1案内部及び前記第2案内部の前記基部に対する傾斜角度は同程度であるとともに、前記長尺体の挿入方向に対して対称な向きであるため、前記案内部に沿って長尺体を挿入する際の挿入力を、前記基部に対する傾斜角度が同程度であり、前記長尺体の挿入方向に対して対称な向きである前記第1案内部及び前記第2案内部に対して略均等に作用させることができ、枠内部に長尺体をスムーズに挿入することができる。
【0037】
この発明により、前記枠内部から前記長尺体を外れにくくすることができる。
詳述すると、前記係止部が係止する前記第2案内部が、変形抑制部によって前記第2腕部に対して変形性が抑制されるため、係止が外れにくくなり、前記長尺体が脱落するのを抑制できる。
【0038】
またこの発明の態様として、前記第1腕部の前記基部に対する変形性が、前記第2腕部の前記基部に対する変形性より高くてもよい。
この発明により、さらに容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0039】
詳述すると、前記枠内部に向かって傾斜する案内部に沿って長尺体を挿入する際の挿入力によって、前記第2腕部の前記基部に対する変形性より高い前記第1腕部が前記基部に対して変形するため、係止部が設けられた第1案内部及び第1腕部が変形し、第2案内部に係止する係止部の係止を解除しやすくなり、さらに容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0040】
またこの発明の態様として、前記第1腕部における前記基部に対する曲部が、他の部分より薄肉に形成されてもよい。
この発明により、前記第1腕部の前記基部に対する変形性が高くなり、前記枠内部に向かって傾斜する案内部に沿って長尺体を挿入する際の挿入力によって、前記基部に対する変形性が高い前記第1腕部が前記基部に対して変形するため、係止部が設けられた第1案内部及び第1腕部が変形し、第2案内部に係止する係止部の係止を解除しやすくなり、さらに容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0041】
またこの発明の態様として、前記第1腕部における前記基部側に、前記第1案内部の傾斜方向と同方向に向く傾斜部が設けられてもよい。
この発明により、さらに容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0042】
詳述すると、長尺体を挿入する際の挿入力が前記第1案内部に作用するとともに、前記第1案内部に作用した挿入力が第1腕部にも作用する。このとき、前記第1腕部における前記基部側に設けられた傾斜部が前記第1案内部の傾斜方向と同方向に向いているため、第1腕部は、枠外側に向かうように湾曲変形し、第2案内部に係止する係止部の係止を解除しやすくなり、さらに容易に枠内部に長尺体を挿入することができる。
【0043】
またこの発明は、前記長尺体の端部に設けられた接続部と他の電気接続部とが接続された接続箇所を覆って保護する保護カバーであって、前記接続箇所を覆うカバー本体と、該カバー本体から延びる可撓性を有する可撓連結部と、該可撓連結部に設けられ、前記接続部が前記カバー本体で覆われた前記長尺体を保持する保持具とを備え、前記保持具は、枠状を構成し、前記枠状の一部を開放した挿入口部から枠内部に挿入される長尺体を保持する保持具であって、前記枠状の一部を構成する基部と、前記基部の一端から延びる第1腕部と、前記基部の他端から延びる第2腕部と、前記第1腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第1腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第1案内部と、前記第2腕部の前記基部側と反対側から延伸し、前記第2腕部に対して前記枠内部に向かって傾斜し、前記枠内部への前記長尺体の挿入を案内する第2案内部とが設けられ、前記第1案内部及び前記第2案内部で前記挿入口部を形成し、前記第1案内部の前記第1腕部に対する変形性が、前記第2案内部の前記第2腕部に対する変形性より高く、前記第1案内部の先端が前記第2案内部の先端より枠内側に配置されるとともに、前記第1案内部に、前記第2案内部に対して、枠内側から枠外側に向かう方向に係止し、前記挿入口部を塞ぐ係止部が設けられたことを特徴とする。
上述の接続部は、接続端子あるいは接続ターミナルを指し、他の電気接続部は接続端子やコネクタ、あるいはバッテリのポストなどを指す。
【0044】
この発明により、長尺体の端部に設けられた接続部が電気的且つ物理的に接続する接続箇所をカバー本体でカバーできるとともに、長尺体を保持する保持具に連結された可撓連結部を介してカバー本体を長尺体に取付けることができ、取外し時にカバー本体が紛失することを防止できる。さらに、接続箇所をカバー本体でカバーする状態において、可撓連結部を介して、長尺体の移動を規制することができる。そのため、接続箇所をカバー本体で安定してカバーすることができる。
【発明の効果】
【0045】
この発明によれば、長尺体を確実且つ容易に保持することができる保持具及び保護カバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】クランプの説明図。
図2】クランプにハーネスを挿入する際の動作説明図。
図3】クランプからハーネスを離脱させる際の動作説明図。
図4】クランプに対するハーネスを挿脱する際の荷重グラフ。
図5】保護カバーの斜視図。
図6】バッテリに保護カバーを装着した状態を示す斜視図。
図7】別の実施形態のクランプの説明図。
図8】別の実施形態のクランプにハーネスを挿入する際の動作説明図。
図9】別の実施形態のクランプからハーネスを離脱させる際の動作説明図。
図10】さらに別の実施形態のクランプの説明図。
図11】さらに別の実施形態のクランプにハーネスを挿入する際の動作説明図。
図12】さらに別の実施形態のクランプからハーネスを離脱させる際の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1はクランプ10Aの説明図を示し、図2はクランプ10Aにハーネス20を挿入する際の動作説明図を示し、図3はクランプ10Aからハーネス20を離脱させる際の動作説明図を示し、図4はクランプ10Aに対してハーネス20が挿脱する際の荷重グラフを示し、図5は保護カバー30の斜視図を示し、図6はバッテリ40に保護カバー30を装着した状態を示す斜視図を示している。
【0048】
詳述すると、図1(a)はクランプ10Aの斜視図を示し、図1(b)はクランプ10Aの正面図を示している。
また、クランプ10Aにハーネス20を挿入する際の動作説明図を示す図2における図2(a)はクランプ10Aの上方にハーネス20を配置した状態の正面図を示し、図2(b)はハーネス20をクランプ10Aの収容空間Sに挿入する途中のクランプ10Aの正面図を示し、図2(c)はハーネス20が挿入口部Eを通過する状態のクランプ10Aの正面図を示し、図2(d)はクランプ10Aの収容空間Sにハーネス20を収容した状態のクランプ10Aの正面図を示している。
【0049】
クランプ10Aからハーネス20を離脱させる際の動作説明図である図3における図3(a)は収容空間Sにハーネス20が収容された状態のクランプ10Aの正面図を示し、図3(b)は収容空間Sにおいてハーネス20が上方移動し、クランプ10Aから離脱する途中のクランプ10Aの正面図を示し、図3(c)は収容空間Sにおいてハーネス20がさらに上方移動した状態のクランプ10Aの正面図を示し、図3(d)はクランプ10Aからハーネス20が離脱した状態のクランプ10Aの正面図を示している。
【0050】
図4(a)はクランプ10Aに対してハーネス20を挿入する際の荷重グラフであり、横軸はクランプ10Aに対するハーネス20の挿入量を示し、縦軸が挿入荷重を示している。図4(b)はクランプ10Aからハーネス20を離脱させる際の荷重グラフであり、横軸はクランプ10Aに対するハーネス20の離脱量を示し、縦軸が離脱荷重を示している。
【0051】
クランプ10Aは、略枠状を構成し、枠状の一部を開放した挿入口部Eから枠内部の収容空間Sに、自動車用のワイヤハーネス20(以下においてハーネス20という)などの長尺体を挿入して保持するものである。
【0052】
具体的には、クランプ10Aは、所定の厚み(肉厚)と奥行き方向の幅(図1において奥行き方向。以下において奥行き幅という)を有する帯状の樹脂製で構成されており、後述する各要素により上辺が略M字状となる略矩形の枠体を構成している。
【0053】
クランプ10Aは、変形して挿入口部Eを形成する案内部13,15が先端から延伸する一対のアーム部12,14と、両側からアーム部12,14のそれぞれが延びる基部11とが設けられ、先端から案内部13,15が延伸するアーム部12,14と基部11とで、上辺が略M字状となる略矩形の枠体を構成し、枠状の内部を、ハーネス20を保持する収容空間Sとしている。
【0054】
基部11の両側からそれぞれ延びる一対のアーム部のうち、図1乃至3において左側に図示する第2アーム部12は、基部11に対して直角方向に延び、その先端から第2案内部13が延伸している。
【0055】
第2案内部13は、第2アーム部12の上端から横幅方向外側上方(図1(b)において左上方向)に向かい、U字状に折り返して、横幅方向内側下方(図1(b)において右下方向)に延びて、その先端が第2アーム部12より横幅方向内側(図1(b)において右側)に位置し、正面視逆J字状に形成されている。なお、横幅方向とは、図1(b)における左右方向を指す。
また、第2アーム部12の下部の基部11との接合部分である下角部121は円弧状に形成している。
【0056】
第1アーム部14は、基部11に対してわずかに収容空間S側に傾斜する方向(図1(b)において左上方向)に延びるとともに、横幅方向外側(図1(b)において右側)に凸な正面視略への字状であり、その先端から第1案内部15が延伸している。
【0057】
第1案内部15は、第1アーム部14の上端から折り返して横幅方向内側下方(図1(b)において左下方向)に延び、その先端が第2案内部13の先端より下方において第2アーム部12側まで延びている。第2案内部13の先端より下方において第2アーム部12側まで延びる第1案内部15の先端には、枠外方向である上方に向かって直交方向に突出する凸状の係止爪16を設けている。
また、第1アーム部14の下部の基部11との接合部分である下角部141は円弧状に形成している。
【0058】
上述のように、第2アーム部12の上端から延伸した第2案内部13と、第1アーム部14の上端から延伸した第1案内部15とは、基部11に対する傾斜角度は同程度であるとともに、ハーネス20の挿入方向、基部11に直交する中心軸に対して対称な向きで傾斜している。その結果、第2アーム部12の上端から延伸した第2案内部13と、第1アーム部14の上端から延伸した第1案内部15とは、正面視略V字状を構成し、全体として、上辺が略M字状となる略矩形の枠体であるクランプ10Aを構成している。
【0059】
なお、第2アーム部12の上端から横幅方向外側上方に向かい、U字状に折り返して、横幅方向内側下方に延びる第2案内部13の剛性は高くなる。そのため、第2案内部13の第2アーム部12に対する変形性より、第1アーム部14の上端から折り返して横幅方向内側下方に延び、その先端が第2案内部13の先端より下方において第2アーム部12側まで延びている第1案内部15の第1アーム部14に対する変形性が高くなる。つまり、第2案内部13は第2アーム部12に対して変形しにくいものの、第2案内部13に比べて第1案内部15は第1アーム部14に対して変形しやすくなっている。
【0060】
また、第2アーム部12の高さ方向の中央付近から下角部121を通って基部11に至るとともに、下角部141を通って第1アーム部14の高さ方向の中央付近までの範囲に厚肉部17が形成されている。
【0061】
詳述すると、上述の範囲に亘って形成される厚肉部17は、クランプ10Aの奥行き幅方向(奥行き方向)の半分程度の奥側において、手前側に比べて2倍程度の厚みとなるように設けている。そして、上記範囲の両端は、徐々に薄くなるように形成している。
【0062】
このように構成されたクランプ10Aでハーネス20を保持するためには、アーム部12,14を変形させて第2案内部13と第1案内部15との間に挿入口部Eを形成し、ハーネス20を、挿入口部Eを通過させ、収容空間Sにハーネス20を収容する。
【0063】
具体的には、図2(a)に示すように、クランプ10Aの上方にハーネス20を配置する。より詳しくは、正面視略V字状を構成する第2案内部13と第1案内部15との間にハーネス20を配置する。
【0064】
そして、ハーネス20を下方に移動させることで、図2(b)に示すように、横幅方向内側に向かって下方に傾斜する案内部13,15に当接し、第2案内部13及び第1案内部15の間を横幅方向に広げる。
【0065】
図2(c)に示すように、さらにハーネス20を下方移動させると、第2アーム部12に対して変形しにくい第2案内部13は、第2アーム部12が横幅方向外側に湾曲して横幅方向外側に移動し、第2案内部13の変形性より第1アーム部14に対して変形しやすい第1案内部15は、第1アーム部14に対してより狭い曲げ角度になるとともに、第1アーム部14が横幅方向外側に湾曲して横幅方向外側に移動する。
【0066】
そして、第2案内部13の先端と第1案内部15の先端との間に挿入口部Eが形成され、挿入口部Eを通過させて、図2(d)に示すように、クランプ10Aの内部の収容空間Sにハーネス20を挿入して、収容空間Sでハーネス20を保持することとなる。
【0067】
このようにして、収容空間Sにハーネス20を収容して保持するクランプ10Aは、第2案内部13の先端と第1案内部15の先端との間にわずかな隙間はあるものの、第1アーム部14が離脱する方向、つまり上下方向には貫通していない。また、ハーネス20が離脱すべく上方に移動すると、第1アーム部14に対して変形しやすい第1案内部15にハーネス20が当接し、第1アーム部14の上端を支点として上方に第1案内部15が変形し、第1案内部15の先端に設けた係止爪16が第2案内部13の先端に係止するため(図3(b)参照)、不用意なハーネス20の離脱を防止することができる。
【0068】
このようにハーネス20の不用意な離脱が防止できるクランプ10Aからハーネス20を離脱させるためには、図3(b)に示すように、ハーネス20を上方移動させて第2案内部13の先端に係止爪16が係止した状態から、さらにハーネス20を上方移動させると、係止爪16が第2案内部13の先端に係止したまま、第2案内部13ごと第1案内部15が上方に変形する。
【0069】
このとき、第2アーム部12に対して変形しにくい第2案内部13は、第2アーム部12が横幅方向外側に湾曲変形し、横幅方向外側に移動する(図3(c)参照)。さらに、ハーネス20を上方に移動させると、上述のような変形が進み、係止爪16の係止が解消し、第2案内部13の先端と第1案内部15の先端との間に挿入口部Eが形成されて、ハーネス20をクランプ10Aから離脱させることができる。
【0070】
続いて、このように構成されたクランプ10Aのハーネス20の挿入に要する荷重(以下において挿入荷重という)と、クランプ10Aからのハーネス20の離脱に要する荷重(以下において離脱荷重という)について確認する試験を行った結果について、図4とともに説明する。
【0071】
なお、当該確認試験では、第1案内部15の先端に係止爪16が形成されていないクランプを比較例1とし、また、図4(c)に示すようなU字型のクランプを比較例2として荷重を比較した。また、図4においてパターンAがクランプ10Aの結果を示している。
【0072】
図4(a)に示すように、ハーネス20の挿入荷重は、いずれも挿入当初は同程度であるものの、比較例1や比較例2の挿入荷重が低下していく挿入後半において、クランプ10Aの挿入荷重は低下しないことがわかった。このことから、係止爪16を有するクランプ10Aの挿入荷重は、挿入後半でも低下しないものの、その荷重値自体は比較例1や比較例2と比べて極端に大きくならないことがわかった。
【0073】
これに対し、図4(b)に示すように、係止爪16を備えていない比較例1やU字型の比較例2に比べてクランプ10Aからのハーネス20の離脱荷重は、離脱量とともに大きく増えていくことがわかった。
【0074】
また、その数値から、比較例1と比較例2とは挿入荷重と同程度の離脱荷重で離脱するが、クランプ10Aは挿入荷重の約7~8倍程度の離脱荷重が作用しないと離脱しないことがわかった。
【0075】
これは、上述したように、ハーネス20の離脱時に係止爪16が第2案内部13の先端に係止することに起因するが、離脱荷重が大きいということからクランプ10Aは不用意な離脱を防止できることであり、逆に、離脱力の小さな比較例1や比較例2ではハーネス20が不用意に離脱する可能性が高いと考えられる。
【0076】
上述のように、枠状を構成し、枠状の一部を開放した挿入口部Eから収容空間Sに挿入されるハーネス20を保持するクランプ10Aは、枠状の一部を構成する基部11と、基部11の一端から延びる第1アーム部14と、基部11の他端から延びる第2アーム部12と、第1アーム部14の先端側から延伸し、第1アーム部14に対して収容空間Sに向かって傾斜し、収容空間Sへのハーネス20の挿入を案内する第1案内部15と、第2アーム部12の先端側から延伸し、第2アーム部12に対して収容空間Sに向かって傾斜し、収容空間Sへのハーネス20の挿入を案内する第2案内部13とが設けられ、第1案内部15及び第2案内部13で挿入口部Eを形成し、第1案内部15の第1アーム部14に対する変形性が、第2案内部13の第2アーム部12に対する変形性より高く、第1案内部15の先端が第2案内部13の先端より枠内側である下方に配置されるとともに、第1案内部15に、第2案内部13に対して、枠内側から枠外側に向かう方向(上向き)に係止し、挿入口部Eを塞ぐ係止爪16が設けられているため、クランプ10Aでハーネス20を確実且つ容易に保持することができる。
【0077】
詳述すると、アーム部12,14から延伸する案内部13,15の変形によって形成される挿入口部Eから収容空間Sにハーネス20を挿入することでハーネス20を確実に保持することができる。
【0078】
また、先端から第1案内部15が延伸する備えた第1アーム部14は、横幅方向外側に凸な正面視略への字状であるため、ハーネス20の挿入時において横幅方向外側に湾曲しやすく、第1案内部15を横幅方向外側に移動させて容易に挿入口部Eを形成し、ハーネス20の挿入荷重を低下することができる。
【0079】
また、第1案内部15及び第2案内部13で挿入口部Eを形成するため、案内部13,15によってハーネス20を収容空間Sへ案内して、収容空間Sにハーネス20を挿入することができる。
さらに、第1案内部15の第1アーム部14に対する変形性が、第2案内部13の第2アーム部12に対する変形性より高く、第1案内部15の先端が第2案内部13の先端より枠内側である下方に配置されるとともに、第1案内部15に設けた係止爪16を、第2案内部13に対して、枠内側から枠外側に向かう方向(上向き)に係止させることで、挿入口部Eを塞ぐことができ、つまり、基部11、アーム部12,14及び案内部13,15並びに係止爪16とで閉断面を構成できる。そのため、仮に、クランプ10Aの収容空間Sに挿入されたハーネス20に外力が作用しても、収容空間Sからハーネス20が不用意に外れることを防止できる。
【0080】
また、第1案内部15に、第2案内部13に対して枠内側から枠外側に向かう方向(上向き)に係止し、挿入口部Eを塞ぐ係止爪16が設けられているため、収容空間Sに向かって傾斜する案内部13,15に沿ってハーネス20を挿入するだけで、第1案内部15が変形し、第2案内部13への係止爪16の係止を解消し、挿入口部Eから収容空間Sにハーネス20を挿入することができる。
【0081】
また、ハーネス20が挿入口部Eを通過すると、第1案内部15の変形性によって係止爪16が第2案内部13に枠内側から枠外側に向かう方向(上向き)に係止し、挿入口部Eを塞ぐことができる。
また、第1案内部15に設けられた係止爪16が、第2案内部13の先端に係止する、枠外側に向かう凸状であるため、収容空間Sに挿入されたハーネス20をより確実に保持することができる。
【0082】
詳述すると、仮に、クランプ10Aの収容空間Sに挿入されたハーネス20に外力が作用しても、第1案内部15に設けられ、枠外側に向かう凸状である係止爪16が、第2案内部13の先端に係止するため、収容空間Sからハーネス20が不用意に外れることをより確実に防止することができる。
【0083】
また、第1案内部15及び第2案内部13の基部11に対する傾斜角度は同程度であるとともに、ハーネス20の挿入方向に対して対称な向きであるため、収容空間Sにハーネス20をスムーズに挿入することができる。
【0084】
詳述すると、第1案内部15及び第2案内部13の基部11に対する傾斜角度は同程度であるとともに、ハーネス20の挿入方向に対して対称な向きであるため、案内部13,15に沿ってハーネス20を挿入する際の挿入力を、基部11に対する傾斜角度が同程度であり、ハーネス20の挿入方向に対して対称な向きである第1案内部15及び第2案内部13に対して略均等に作用させることができ、収容空間Sにハーネス20をスムーズに挿入することができる。
【0085】
このように構成されたクランプ10Aは、バッテリ40のポスト(図示省略)とハーネス20との接続箇所を保護する保護カバー30に設けることができる。
詳しくは、図5に示すように、保護カバー30は、バッテリ40のポストを囲繞するカバー本体31と、カバー本体31の一部から延びる、可撓性を有する可撓連結部32と、可撓連結部32の先端に設けられたクランプ10Aとで構成されている。なお、保護カバー30は、すべて一体構成された樹脂製であるが、別体で構成してもよい。
【0086】
このように構成された保護カバー30は、バッテリ40の上面に設けた+側のポストにカバー本体31を装着するとともに、ハーネス20の端部に設けたターミナル(図示省略)が上記ポストに接続されたハーネス20をクランプ10Aで保持して、装着する。
【0087】
また、ハーネス20を保持するクランプ10に連結された可撓連結部32を介してカバー本体31をハーネス20に取付けることができ、取外し時にカバー本体31が紛失することを防止できる。
さらに、接続箇所をカバー本体31でカバーする状態において、可撓連結部32を介して、ハーネス20の移動を規制することができる。そのため、接続箇所をカバー本体31で安定してカバーすることができる。
【0088】
次に、図7乃至図9とともに、クランプ10Aとは異なる実施形態のクランプ10Bについて説明する。
以下におけるクランプ10Bの説明では、クランプ10Aと異なる構成について説明し、同じ構成については、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0089】
図7はクランプ10Bの説明図を示し、図8はクランプ10Bにハーネス20を挿入する際の動作説明図を示し、図9はクランプ10Bからハーネス20を離脱させる際の動作説明図を示している。
【0090】
詳述すると、図7(a)はクランプ10Bの斜視図を示し、図7(b)はクランプ10Bの正面図を示している。
また、クランプ10Bにハーネス20を挿入する際の動作説明図を示す図8における図8(a)はクランプ10Bの上方にハーネス20を配置した状態の正面図を示し、図8(b)はハーネス20をクランプ10Bの収容空間Sに挿入する途中のクランプ10Bの正面図を示し、図8(c)はハーネス20が挿入口部Eを通過する状態のクランプ10Bの正面図を示し、図8(d)はクランプ10Bの収容空間Sにハーネス20を収容した状態のクランプ10Bの正面図を示している。
【0091】
クランプ10Bからハーネス20を離脱させる際の動作説明図である図9における図9(a)は収容空間Sにハーネス20が収容された状態のクランプ10Bの正面図を示し、図9(b)は収容空間Sにおいてハーネス20が上方移動し、クランプ10Bから離脱する途中のクランプ10Bの正面図を示し、図9(c)はクランプ10Bからハーネス20が離脱した状態のクランプ10Bの正面図を示している。
【0092】
クランプ10Bは、クランプ10Aより上下方向の高さが低いものの、概略的な構成は同様の構成で構成している。以下において異なる構成について説明する。
クランプ10Aの第1アーム部14は、基部11に対してわずかに収容空間S側に傾斜する方向に延びる、横幅方向外側に凸な正面視略への字状に形成したが、クランプ10Bの第1アーム部14Bは、横幅方向外側に凸な正面視略への字状であるものの、下半部分14Bbが横幅方向外側(図7(b)において右上方向)に傾斜するように構成されている。
これにより、第1アーム部14Bの下半部分14Bbと、第1アーム部14Bの先端から延伸する第1案内部15Bとは、共に左下から右上に向かう方向、同じ傾斜方向を向いている。
【0093】
また、下角部121Bの厚肉部17Bを一様な厚みで形成しているのに対し、図7(b)のa部拡大図に示すように、下角部141Bの厚肉部17Bを他の部分より薄く形成している。
【0094】
クランプ10Aでは、第2案内部13を、第2アーム部12の上端から横幅方向外側上方に向かい、U字状に折り返して、横幅方向内側下方に延びて、その先端が第2アーム部12より横幅方向内側に位置し、正面視逆J字状に形成したが、クランプ10Bの第2案内部13Bは、第2アーム部12Bの上端をV字状に折り返して形成している。その上で、V字状に折り返して形成した第2案内部13Bと第2アーム部12Bとの内角側を連結して補強するリブ18を設けている。
【0095】
なお、このように形成した第2案内部13Bは、上述のクランプ10Aの第2案内部13と同程度の長さであるものの、第2アーム部12の上端から横幅方向外側上方に向かい、U字状に折り返した第2案内部13と異なり、第2アーム部12Bの上端をV字状に折り返して形成した第2案内部13Bの先端は、基部11の横幅方向の中央に対応する位置に位置することとなる。そのため、第1案内部15Bもクランプ10Aの第1案内部15に比べて長く形成されている。
【0096】
このように構成されたクランプ10Bでハーネス20を保持するためには、アーム部12B,14Bを変形させて第2案内部13Bと第1案内部15Bとの間に挿入口部Eを形成し、ハーネス20を、挿入口部Eを通過させ、収容空間Sにハーネス20を収容する。
【0097】
具体的には、図8(a)に示すように、クランプ10Bの上方にハーネス20を配置する。より詳しくは、正面視略V字状を構成する第2案内部13Bと第1案内部15Bとの間にハーネス20を配置する。
そして、ハーネス20を下方に移動させることで、図8(b)に示すように、横幅方向内側に向かって下方に傾斜する第2案内部13B及び第1案内部15Bに当接し、案内部13B,15Bの間を横幅方向に広げる。
【0098】
図8(c)に示すように、さらにハーネス20を下方移動させると、第2アーム部12Bに対して変形しにくい第2案内部13Bは、第2アーム部12Bが横幅方向外側に湾曲して横幅方向外側に移動し、第2案内部13Bの変形性より第1アーム部14Bに対して変形しやすい第1案内部15Bは、第1アーム部14Bに対してより狭い曲げ角度になるとともに、第1アーム部14Bが横幅方向外側に湾曲して横幅方向外側に移動する。そして、第2案内部13Bの先端と第1案内部15Bの先端との間に挿入口部Eが形成され、挿入口部Eを通過させて、図8(d)に示すように、クランプ10Bの内部の収容空間Sにハーネス20を挿入して、収容空間Sでハーネス20を保持することとなる。
【0099】
このようにして、収容空間Sにハーネス20を収容して保持するクランプ10Bは、クランプ10Aと同様に、第2案内部13Bの先端と第1案内部15Bの先端との間は上下方向には貫通していない。また、ハーネス20が離脱すべく上方に移動すると第1案内部15Bにハーネス20が当接し、第1アーム部14Bの上端を支点として上方に第1案内部15Bが変形し、第1案内部15Bの先端に設けた係止爪16が第2案内部13Bの先端に係止するため(図9(b)参照)、不用意なハーネス20の離脱を防止することができる。
【0100】
このようにハーネス20の不用意な離脱が防止できるクランプ10Bからハーネス20を離脱させるためには、図9(b)に示すように、ハーネス20を上方移動させて第2案内部13Bの先端に係止爪16が係止した状態から、さらにハーネス20を上方移動させると、厚肉部17Bが薄肉である下角部141Bによって第2アーム部12Bより変形しやすい第1アーム部14B、及び第1案内部15Bが、係止爪16が第2案内部13Bの先端に係止したまま変形する。
【0101】
このとき、第2アーム部12Bに対して変形しにくい第2案内部13Bは、第2アーム部12Bが横幅方向外側に湾曲変形し、横幅方向外側に移動する(図9(b)参照)。さらに、ハーネス20を上方に移動させると、上述のような変形が進み、係止爪16の係止が解消し、第2案内部13Bの先端と第1案内部15Bの先端との間に挿入口部Eが形成されて、ハーネス20をクランプ10Bから離脱させることができる。
【0102】
このように構成されたクランプ10Bのハーネス20の挿入に要する挿入荷重と、クランプ10Bからのハーネス20の離脱に要する離脱荷重について、上述のクランプ10A及び上述のU字型のクランプ(図4(c)参照)と比較したところ、ハーネス20の挿入荷重はあまり変わらなかったが、クランプ10Aやクランプ10Bからのハーネス20の離脱荷重は、U字型のクランプ比べて数倍大きくなることがわかった。
【0103】
これは、上述したように、ハーネス20の離脱時に係止爪16が第2案内部13Bの先端に係止することに起因するが、離脱荷重が大きいということからクランプ10Aやクランプ10Bは不用意な離脱を防止できることであり、逆に、離脱力の小さな比較例2ではハーネス20が不用意に離脱する可能性が高いと考えられる。
【0104】
上述したような異なる構成を有するクランプ10Bもクランプ10Aと同様の効果があるとともに、さらに以下の効果を奏する。
具体的には、係止爪16が係止する第2案内部13Bの先端が、基部11における延伸方向(横幅方向)の中央位置に対応する位置に配置されているため、より容易に収容空間Sにハーネス20を挿入することができる。
【0105】
詳述すると、第1案内部15Bに設けられた係止爪16が、基部11における延伸方向(横幅方向)の中央位置に対応する位置に配置された第2案内部13Bの先端に係止するため、収容空間Sに向かって傾斜する案内部13B,15Bに沿ってハーネス20を挿入する際の挿入力を、係止を解除するように係止爪16に効率的に作用させることができ、より容易に収容空間Sにハーネス20を挿入することができる。
【0106】
また、第2案内部13Bの第2アーム部12Bに対する変形性を抑制するリブ18が設けられているため、収容空間Sからハーネス20を外れにくくすることができる。
詳述すると、係止爪16が係止する第2案内部13Bが、リブ18によって第2アーム部12Bに対して変形性が抑制されるため、第2案内部13Bに対する第1案内部15Bの係止が外れにくくなり、ハーネス20が収容空間Sから外れて不用意に脱落することを防止することができる。
【0107】
また、第1アーム部14Bの基部11に対する変形性が、第2アーム部12Bの基部11に対する変形性より高いため、さらに容易に収容空間Sにハーネス20を挿入することができる。
【0108】
詳述すると、収容空間Sに向かって傾斜する案内部13B,15Bに沿ってハーネス20を挿入する際の挿入力によって、第2アーム部12Bの基部11に対する変形性より高い第1アーム部14Bが基部11に対して変形するため、係止爪16が設けられた第1案内部15B及び第1アーム部14Bが変形し、第2案内部13Bに係止する係止爪16の係止を解除しやすくなり、さらに容易に収容空間Sにハーネス20を挿入することができる。
【0109】
また、第1アーム部14Bにおける基部11に対する下角部141Bが、他の部分より薄肉に形成されているため、第1アーム部14Bの基部11に対する変形性が高くなり、収容空間Sに向かって傾斜する案内部13B,15Bに沿ってハーネス20を挿入する際の挿入力によって、基部11に対する変形性が高い第1アーム部14Bが基部11に対して変形するため、係止爪16が設けられた第1案内部15B及び第1アーム部14Bが変形し、第2案内部13Bに係止する係止爪16の係止を解除しやすくなり、さらに容易に収容空間Sにハーネス20を挿入することができる。
【0110】
また、第1アーム部14Bにおける基部11側に、第1案内部15Bの傾斜方向と同方向に向く下半部分14Bbが設けられているため、さらに容易に収容空間Sにハーネス20を挿入することができる。
【0111】
詳述すると、ハーネス20を挿入する際の挿入力が第1案内部15Bに作用するとともに、第1案内部15Bに作用した挿入力が第1アーム部14Bにも作用する。このとき、第1アーム部14Bにおける基部11側に設けられた下半部分14Bbが第1案内部15Bの傾斜方向と同方向に向いているため、第1アーム部14Bは、枠外側に向かうように湾曲変形し、第2案内部13Bに係止する係止爪16の係止を解除しやすくなり、さらに容易に収容空間Sにハーネス20を挿入することができる。
このようにクランプ10Aに対して同等以上の効果を奏するクランプ10Bも、クランプ10Aのように保護カバー30に設けても、同様の効果を奏することができる。
【0112】
次に、図10乃至図12とともに、上述のクランプ10Aやクランプ10Bとは異なる実施形態のクランプ10Cについて説明する。
以下におけるクランプ10Cの説明では、クランプ10Aやクランプ10Bと異なる構成について説明し、同じ構成については、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0113】
図10はクランプ10Cの説明図を示し、図11はクランプ10Cにハーネス20を挿入する際の動作説明図を示し、図12はクランプ10Cからハーネス20を離脱させる際の動作説明図を示している。
【0114】
詳述すると、図10(a)はクランプ10Cの斜視図を示し、図10(b)はクランプ10Cの正面図を示している。
また、クランプ10Cにハーネス20を挿入する際の動作説明図を示す図11における図11(a)はクランプ10Cの上方にハーネス20を配置した状態の正面図を示し、図11(b)はハーネス20をクランプ10Cの収容空間Sに挿入する途中のクランプ10Cの正面図を示し、図11(c)はハーネス20が挿入口部Eを通過する状態のクランプ10Cの正面図を示し、図11(d)はクランプ10Cの収容空間Sにハーネス20を収容した状態のクランプ10Cの正面図を示している。
【0115】
クランプ10Cからハーネス20を離脱させる際の動作説明図である図12における図12(a)は収容空間Sにハーネス20が収容された状態のクランプ10Cの正面図を示し、図12(b)は収容空間Sにおいてハーネス20が上方移動し、クランプ10Cから離脱する途中のクランプ10Cの正面図を示し、図12(c)は収容空間Sにおいてハーネス20がさらに上方移動した状態のクランプ10Cの正面図を示し、図12(d)はクランプ10Cからハーネス20が離脱した状態のクランプ10Cの正面図を示している。
【0116】
クランプ10Cは、クランプ10Aよりは上下方向の高さが低く、クランプ10Bと同等程度の高さで形成されており、概略的な構成は同様の構成で構成している。以下で、クランプ10Aやクランプ10Bと異なる構成について説明する。
【0117】
クランプ10Aの第1アーム部14は、基部11に対してわずかに収容空間S側に傾斜する方向に延びる、横幅方向外側に凸な正面視略への字状に形成したが、クランプ10Cの第1アーム部14Cは、クランプ10Bの第1アーム部14Bと同様に、横幅方向外側に凸な正面視略への字状であるものの、下半部分14Cbが横幅方向外側に傾斜するように構成されている。
これにより、下半部分14Cbと、第1アーム部14Cの先端から延伸する第1案内部15Cとは、共に左下から右上に向かう方向、同じ傾斜方向を向いている。
【0118】
クランプ10Aでは、第2案内部13を、第2アーム部12の上端から横幅方向外側上方に向かい、U字状に折り返して、横幅方向内側下方に延びて、その先端が第2アーム部12より横幅方向内側に位置し、正面視逆J字状に形成したが、クランプ10Cの第2案内部13Cは、第2アーム部12Cの上端をV字状に折り返して形成している。その上で、クランプ10Bの第2案内部13Bは、V字状に折り返して形成した第2案内部13Bと第2アーム部12Bとの内角側を連結して補強するリブ18を設けていたが、クランプ10Cの第2案内部13Cは、第2アーム部12Cとの上角部131を他の部分に比べて厚肉で形成している。
【0119】
なお、このように形成した第2案内部13Cは、上述のクランプ10Aの第2案内部13と同程度の長さであるものの、第2アーム部12の上端から横幅方向外側上方に向かい、U字状に折り返した第2案内部13と異なり、第2アーム部12Cの上端をV字状に折り返して形成した第2案内部13Cの先端は、基部11の横幅方向の中央に対応する位置に位置することとなる。そのため、第1案内部15Cもクランプ10Aの第1案内部15に比べて長く形成されている。
【0120】
このように構成されたクランプ10Cでハーネス20を保持するためには、アーム部12C,14Cを変形させて第2案内部13Cと第1案内部15Cとの間に挿入口部Eを形成し、ハーネス20を、挿入口部Eを通過させ、収容空間Sにハーネス20を収容する。
【0121】
具体的には、図11(a)に示すように、クランプ10Cの上方にハーネス20を配置する。より詳しくは、正面視略V字状を構成する第2案内部13Cと第1案内部15Cとの間にハーネス20を配置する。
【0122】
そして、ハーネス20を下方に移動させることで、図11(b)に示すように、横幅方向内側に向かって下方に傾斜する案内部13C,15Cに当接し、第2アーム部12C、第1アーム部14C及び第1案内部15Cが全体的に変形して、第2案内部13C及び第1案内部15Cの間を横幅方向に広げる。
【0123】
図11(c)に示すように、さらにハーネス20を下方移動させると、第2アーム部12Cに対して変形しにくい第2案内部13Cは、第2アーム部12Cが横幅方向外側に湾曲して横幅方向外側に移動し、第2案内部13Cの変形性より第1アーム部14Cに対して変形しやすい第1案内部15Cは、第1アーム部14Cに対してより狭い曲げ角度になるとともに、第1アーム部14Cが横幅方向外側に湾曲して横幅方向外側に移動する。そして、第2案内部13Cの先端と第1案内部15Cの先端との間に挿入口部Eが形成され、挿入口部Eを通過させて、図11(d)に示すように、クランプ10Cの内部の収容空間Sにハーネス20を挿入して、収容空間Sでハーネス20を保持することとなる。
【0124】
このようにして、収容空間Sにハーネス20を収容して保持するクランプ10Cは、クランプ10Bと同様に、上下方向には貫通しておらず、ハーネス20が離脱すべく上方に移動すると第1案内部15Cに当接し、第1案内部15Cが上方に変形し、第1案内部15Cの係止爪16が第2案内部13Cの先端に係止するため(図12(C)参照)、不用意なハーネス20の離脱を防止することができる。
【0125】
このようにハーネス20の不用意な離脱が防止できるクランプ10Cからハーネス20を離脱させるためには、図12(b)に示すように、ハーネス20を上方移動させて第2案内部13Cの先端に係止爪16が係止した状態から、さらにハーネス20を上方移動させると、係止爪16が第2案内部13Cの先端に係止したまま、第2案内部13Cごと第1案内部15Cが変形する。
【0126】
このとき、第2アーム部12Cに対して変形しにくい第2案内部13Cは、第2アーム部12Cが横幅方向外側に湾曲変形し、横幅方向外側に移動する(図12(c)参照)。さらに、ハーネス20を上方に移動させると、上述のような変形が進み、係止爪16の係止が解消し、第2案内部13Cの先端と第1案内部15Cの先端との間に挿入口部Eが形成されて、ハーネス20をクランプ10Cから離脱させることができる。
【0127】
このように構成されたクランプ10Cのハーネス20の挿入に要する挿入荷重と、クランプ10Cからのハーネス20の離脱に要する離脱荷重について、上述のクランプ10A及び上述のU字型のクランプ(図4(c)参照)と比較したところ、ハーネス20の挿入荷重はあまり変わらなかったが、クランプ10Aやクランプ10Cからのハーネス20の離脱荷重は、U字型のクランプ比べて数倍大きくなることがわかった。
【0128】
これは、上述したように、ハーネス20の離脱時に係止爪16が第2案内部13の先端に係止することに起因するが、離脱荷重が大きいということからクランプ10Aやクランプ10Cは不用意な離脱を防止できることであり、逆に、離脱力の小さな比較例2ではハーネス20が不用意に離脱する可能性が高いと考えられる。なお、上述したような異なる構成を有するクランプ10Cもクランプ10Aと同様の効果があることが確認できた。
そのため、クランプ10Cも、クランプ10Aのように保護カバー30に設けても、同様の効果を奏することができる。
【0129】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の接続装置は、上述の実施形態の挿入口部は挿入口部Eに対応し、
以下同様に、
枠内部は収容空間Sに対応し、
長尺体はハーネス20に対応し、
保持具はクランプ10A,10B,10Cに対応し、
基部は基部11に対応し、
第1案内部は第1案内部15,15B,15Cに対応し、
第2案内部は第2案内部13,13B,13Cに対応し、
第1腕部は第1アーム部14,14B,14Cに対応し、
第2腕部は第2アーム部12,12B,12Cに対応し、
係止部は係止爪16に対応し、
変形抑制部はリブ18及び上角部131に対応し、
曲部は下角部141Bに対応し、
傾斜部は下半部分14Bb,14Cbに対応し、
接続部はターミナルに対応し、
電気接続部はポストに対応し、
保護カバーは保護カバー30に対応し、
カバー本体はカバー本体31に対応し、
可撓連結部は可撓連結部32に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0130】
例えば、上述の説明ではクランプ10A,10B,10Cで、被覆電線を束ねたハーネス20を保持したが、例えば、ケーブルなど、所望の経路に配策するために所定箇所に固定したり、可動範囲を規制されたりする長尺状体であってもよい。
【0131】
また、係止爪16は、第2案内部13の先端部に係止するように構成したが、収容空間Sからハーネス20が離脱する方向に係止すれば、第2案内部13の途中部分に係止するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0132】
10A,10B,10C…クランプ
11…基部
12,12B,12C…第2アーム部
13,13B,13C…第2案内部
14,14B,14C…第1アーム部
14Bb,14Cb…下半部分
15,15B,15C…第1案内部
16…係止爪
18…リブ
20…ハーネス
30…保護カバー
31…カバー本体
32…可撓連結部
131…上角部
141B…下角部
E…挿入口部
S…収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12