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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ゲート駆動回路用電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
H02M1/08 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019212350
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021087234
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】宮島 一之
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-42394(JP,A)
【文献】特開2018-165940(JP,A)
【文献】特開2019-144922(JP,A)
【文献】実開昭59-69521(JP,U)
【文献】特開2017-201451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングトランジスタのゲート駆動を行うゲート駆動回路に電源電圧を供給するゲート駆動回路用電源回路であって、
定電圧源にゲートが接続される一方、ソースが第1の定電流源を介して電源に接続された電源回路用第1のMOSトランジスタと、前記電源回路用第1のMOSトランジスタのソースにゲートが接続された電源回路用第3及び第5のMOSトランジスタとを具備し、前記電源回路用第3及び第5のMOSトランジスタのソースから一定の電圧を前記ゲート駆動回路の終段に供給可能に構成されてなるゲート駆動回路用電源回路において、
ゲートが前記定電圧源に、ソースが第2の定電流源を介して前記電源に接続された電源回路用第2のMOSトランジスタが設けられ、
前記電源回路用第4のMOSトランジスタのゲートが前記電源回路用第1のトランジスタのソースに接続されることに代えて、前記電源回路用第2のMOSトランジスタのソースに接続され、
前記電源回路用第1のMOSトランジスタのソースに電源回路用第5のMOSトランジスタのゲートが接続される一方、当該電源回路用第5のMOSトランジスタのソースが第2の抵抗器を介して前記電源回路用第4のMOSトランジスタのソースに接続され、
前記電源回路用第5のMOSトランジスタのドレインがカレントミラー回路の入力段に接続され、前記カレントミラー回路の出力段が前記電源回路用第4のMOSトランジスタのゲートに接続され、前記電源回路用第5のMOSトランジスタのドレイン電流を前記カレントミラー回路を介して折り返させて、前記電源回路用第4のMOSトランジスタのゲートへの電流供給を可能とし、
前記電源回路用第1及び第2のMOSトランジスタにPチャンネルMOSFETを、前記電源回路用第3乃至第5のMOSトランジスタ及び前記スイッチングトランジスタにNチャンネルMOSFETを、前記電源回路用第6及び第7のMOSトランジスタにPチャンネルMOSFETを、それぞれ用いてなることを特徴とするゲート駆動回路用電源回路。
【請求項2】
前記電源回路用第4のMOSトランジスタのゲート電圧の上昇に応じて前記電源回路用第5のMOSトランジスタのドレイン電流を減少せしめる電流抑圧回路を設け、
前記電流抑圧回路は、抑圧回路用第1乃至第3のMOSトランジスタを具備し、
前記抑圧回路用第2のMOSトランジスタは、前記第2の抵抗器に代えて、そのソースが前記電源回路用第5のMOSトランジスタのソースに、ドレインがグランドに接続されて設けられる一方、
前記抑圧回路用第3のMOSトランジスタは、ドレインが前記電源に、ゲートが前記電源回路用第4のMOSトランジスタのゲートに、ソースが前記抑圧回路用第1のMOSトランジスタのソースに、それぞれ接続され、
前記抑圧回路用第1のMOSトランジスタは、ゲートがドレイン及び前記抑圧回路用第2のMOSトランジスタのゲートと接続されると共に、ドレインとグランドとの間に第3の定電流源が直列接続されて設けられ、
前記抑圧回路用第1及び第2のMOSトランジスタにPチャンネルMOSFETが、前記抑圧回路用第3のMOSトランジスタにNチャンネルMOSFETが、それぞれ用いられてなることを特徴とする請求項1記載のゲート駆動回路用電源回路。
【請求項3】
前記スイッチングトランジスタのソースが前記電源に接続される一方、
前記定電圧源が前記電源側に接続され、PチャンネルMOSトランジスタがNチャンネルMOSトランジスタに、NチャンネルMOSトランジスタがPチャンネルMOSトランジスタに置き換えられてなることを特徴とする請求項1記載のゲート駆動回路用電源回路
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート駆動回路用電源回路に係り、特に、スイッチングレギュレータ等におけるスイッチングトランジスタのゲート駆動回路の電源供給を行う電源回路の動作効率、動作特性の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のバッテリーを電源として駆動されるスイッチング電源IC等のIC製品は、一般に5V~40V程度の電源電圧下で動作することが求められる。
このため、この種の製品におけるゲート駆動回路は、その内部に、5~10Vの電圧を出力する内部電源回路を設け、この電圧を、外付け又は内蔵される素子サイズの大きなトランジスタのゲート駆動を行うインバータの電源として供給する構成が採られることが多い。
【0003】
図5には、従来のゲート駆動回路とその電源回路の構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この従来回路について概説する。なお、この種の従来回路としては、例えば、特許文献1等に開示されたものなどが知られている。
外付けのNチャンネルMOS電界効果トランジスタ(以下、「NchMOSFET」と称する)であるスイッチングトランジスタMN_EXTは、インバータ部第1及び第2のトランジスタINVMP1,INVMN1を用いたインバータ回路を中心に構成されたゲート駆動回路101Aにより、ゲート駆動されるものとなっている。
【0004】
インバータ部第1のトランジスタINVMP1には、PチャンネルMOS電界効果トランジスタ(以下、「PchMOSFET」と称する)が、インバータ部第2のトランジスタINVMN1には、NchMOSFETが、それぞれ用いられており、NOT回路INV1を介して入力された制御信号に応じて、オン、オフされることで、スイッチングトランジスタMN_EXTのゲート駆動が行われる。
【0005】
また、電源回路用第1のトランジスタMP1、電源回路用第2のトランジスタMN1及び電源回路用第3のトランジスタMN2を中心にした内部電源回路102Aが構成されており、ゲート駆動回路101Aへ電源電圧を供給するものとなっている。
この従来回路においては、電源回路用第1のトランジスタMP1にはPchMOSFETが、電源回路用第2のトランジスタMN1及び電源回路用第3のトランジスタMN2にはNchMOSFETが、それぞれ用いられている。
【0006】
この内部電源回路102Aにおいては、ソースフォロアの電源回路用第2のトランジスタMN1及び電源回路用第3のトランジスタMN2のソース間に抵抗器Rが接続されており、その各々の接続点であるノードReg1,Reg2が内部電源回路102Aの電圧を出力する出力端子に相当するものとなっている。
電源回路用第2のトランジスタMN1、電源回路用第3のトランジスタMN2によってそれぞれ生成され、ノードReg1,Reg2にそれぞれ得られ出力される電圧は同一である。
【0007】
内部電源回路102Aがこのような構成を採るのは、外付けのスイッチングトランジスタMN_EXTをオンさせる際に、そのゲート容量をチャージするために瞬間的に数A程度の電流が流れ、ノードReg2の電圧が瞬間的に大きく低下するためである。
ノードReg1とノードReg2が短絡されている場合、インバータ部第1及び第2のトランジスタINVMP1,INVMN1のゲートを駆動する前段のNOT回路INV1の電圧も低下して、その出力電圧が不安定となる。
【0008】
これに対して、図5に示されたように抵抗器Rによって2つのノードReg1,Reg2を分離することによって、NOT回路INV1の電源電圧の低下を抑え、その出力電圧を安定させることとなる。
また、定電圧源VREFは、一般には、例えば、図7に一例が示されたように、定電流源I3とツェナーダイオードDz1とを用いて構成される場合があるが、このように構成された電圧源から電流をシンク又はソースすると、定電圧源VREFの出力電圧も変化し易くなる。
【0009】
この為、定電圧源VREFには、電源回路用第1のトランジスタMP1のゲートが接続され、そのソースは電源回路用第2のトランジスタMN1及び電源回路用第3のトランジスタMN2のゲートに接続された構成となっている。
例えば、電源電圧VDDが急激に増加した場合、電源回路用第2のトランジスタMN1及び電源回路用第3のトランジスタMN2のドレイン・ゲート間の寄生容量を介して、電流がドレインからゲートに流れ、ゲート電圧を引き上げようとする。
【0010】
ところが、電源回路用第1のトランジスタMP1があることで、この素子のゲート・ソース間電圧Vgsが増加して、寄生容量からの電流をグランドに流すことになるため、電源回路用第2のトランジスタMN1及び電源回路用第3のトランジスタMN2のゲート電圧変動が抑圧されることとなる。
【0011】
この場合、ノードReg1の出力電圧VReg1は、下記する式1の如くとなる。
【0012】
VReg1=VREF+|Vgsmp1|-|Vgsmn1|・・・式1
【0013】
ここで、VREFは定電圧源VREFの出力電圧、Vgsmp1は電源回路用第1のトランジスタMP1のゲート・ソース間電圧、Vgsmn1は電源回路用第2のトランジスタMN1のゲート・ソース間電圧であるとする。
【0014】
なお、電源回路用第2のトランジスタMN1及び電源回路用第3のトランジスタMN2が同一の閾値電圧Vthを有する素子を用いた場合、ノードReg2の電圧VReg2もほぼ同一の電圧となる。
このような従来回路において、外付けのスイッチングトランジスタのゲート容量が大きい場合、このスイッチングトランジスタをオンさせる際に、インバータ部第1のトランジスタINVMP1と電源回路用第3のトランジスタMN2により大きな電流を流す必要がある。
【0015】
そのためには、これらの素子のゲート幅を大きくする必要があり、それに伴い電源回路用第3のトランジスタMN2のゲート・ソース間の寄生容量Cgsは数10pF以上になる場合がある(図5参照)。
【0016】
図6には、上述した従来回路において、ICの外部に接続されたスイッチングトランジスタMN_EXTをオフからオンに切り替えた際の各ノードの電圧及び出力端子OUTのソース電流IOUTの状態が模式的に表された模式図が示されており、以下、同図について説明する。
【0017】
まず、図6において、”IN”は、ゲート駆動回路101Aに入力されるゲート駆動のための制御信号、”VREF_GATE”は、電源回路用第3のトランジスタMN2のゲート電圧を意味する(図5参照)。
インバータ部第1のトランジスタINVMP1がオフからオンに切り替わる際に(図6(A)参照)、ノードReg2の電圧VReg2が低下すると(図6(C)参照)、寄生容量Cgsを介して電源回路用第3のトランジスタMN2のゲートからソースに電流が流れて、MN2のゲートのノードの電圧が引き下げられることとなる(図6(B)参照)。
【0018】
このため、ノードReg2の電圧VReg2はさらに低下し、インバータ部第1のトランジスタINVMP1のゲート・ソース間電圧も減少するため、INVMP1を十分にオン状態とすることができず、出力端子OUTのソース電流IOUTが減少することとなる(図6(E)参照)。
【0019】
そして、時間の経過と共に定電流源I1(図5参照)の電流によりトランジスタMN2の寄生容量Cgsが充電されてゆくに従い、MN2のゲート電圧は回復するが(図6(B)参照)、その分、ソース電流IOUTの立ち上がりが遅れ(図6(E)参照)、結果としてスイッチングトランジスタMN_EXTがターンオンするまでの遷移時間が延長され(図6(D)参照)、ターンオン時の電力損失が増加する。
【0020】
上述のような従来回路における問題を解決する方策としては、例えば、コンデンサC1(図5参照)の容量を増やすことでソース電流IOUTの増加を図る方法や、定電流源I1の出力電流値を増やすことで、一度低下した電源回路用第3のトランジスタMN2のゲート電圧を早期に回復させる方法等が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】特開2017-201451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、上述のいずれの方策も回路の消費電流の増加を伴うため、必ずしも総合的に好ましい効果が期待できるとは限らないという問題がある。
【0023】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、ゲート駆動回路の消費電流の増加を抑圧しつつ、ゲート駆動回路の駆動対象となるスイッチングトランジスタのオン時間の短縮を図り、ターンオン時の電力損失を抑圧可能とするゲート駆動回路用電源回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るゲート駆動回路用電源回路は、
スイッチングトランジスタのゲート駆動を行うゲート駆動回路に電源電圧を供給するゲート駆動回路用電源回路であって、
定電圧源にゲートが接続される一方、ソースが第1の定電流源を介して電源に接続された電源回路用第1のMOSトランジスタと、前記電源回路用第1のMOSトランジスタのソースにゲートが接続された電源回路用第3及び第5のMOSトランジスタとを具備し、前記電源回路用第3及び第5のMOSトランジスタのソースから一定の電圧を前記ゲート駆動回路の終段に供給可能に構成されてなるゲート駆動回路用電源回路において、
ゲートが前記定電圧源に、ソースが第2の定電流源を介して前記電源に接続された電源回路用第2のMOSトランジスタが設けられ、
前記電源回路用第4のMOSトランジスタのゲートが前記電源回路用第1のトランジスタのソースに接続されることに代えて、前記電源回路用第2のMOSトランジスタのソースに接続され、
前記電源回路用第1のMOSトランジスタのソースに電源回路用第5のMOSトランジスタのゲートが接続される一方、当該電源回路用第5のMOSトランジスタのソースが第2の抵抗器を介して前記電源回路用第4のMOSトランジスタのソースに接続され、
前記電源回路用第5のMOSトランジスタのドレインがカレントミラー回路の入力段に接続され、前記カレントミラー回路の出力段が前記電源回路用第4のMOSトランジスタのゲートに接続され、前記電源回路用第5のMOSトランジスタのドレイン電流を前記カレントミラー回路を介して折り返させて、前記電源回路用第4のMOSトランジスタのゲートへの電流供給を可能とし、
前記電源回路用第1及び第2のMOSトランジスタにPチャンネルMOSFETを、前記電源回路用第3乃至第5のMOSトランジスタ及び前記スイッチングトランジスタにNチャンネルMOSFETを、前記電源回路用第6及び第7のMOSトランジスタにPチャンネルMOSFETを、それぞれ用いてなるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、スイッチングトランジスタをオフからオンへ切り替える際に、ゲート駆動回路の終段に接続されるゲート駆動回路用電源回路の出力用のトランジスタのゲート電圧を引き上げるように構成したので、従来と異なり、スイッチングトランジスタのターンオン時間の短縮を図ることができると共に、ターンオン時の電力損失の抑圧に寄与するという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態におけるゲート駆動回路用電源回路の第1の回路構成例を示す回路図である。
図2】本発明の実施の形態におけるゲート駆動回路用電源回路の第2の回路構成例を示す回路図である。
図3】本発明の実施の形態におけるゲート駆動回路用電源回路の第3の回路構成例を示す回路図である。
図4】本発明の実施の形態におけるゲート駆動回路用電源回路の主要部における波形を模式的に示した模式図であって、図4(A)は駆動制御信号を模式的に示す模式図、図4(B)は電源回路用第4のMOSトランジスタのゲート電圧の変化を模式的に示す模式図、図4(C)はノードReg2の電圧変化を模式的に示す模式図、図4(D)はゲート駆動回路の出力端子の電圧変化を模式的に示す模式図、図4(E)はゲート駆動回路の出力端子の電流変化を模式的に示す模式図である。
図5】従来回路の一構成例を示す回路図である。
図6図5に示された従来回路の主要部における波形を模式的に示した模式図であって、図6(A)は駆動制御信号を模式的に示す模式図、図6(B)は電源回路用第3のMOSトランジスタのゲート電圧の変化を模式的に示す模式図、図6(C)はノードReg2の電圧変化を模式的に示す模式図、図6(D)はゲート駆動回路の出力端子の電圧変化を模式的に示す模式図、図6(E)はゲート駆動回路の出力端子の電流変化を模式的に示す模式図である。
図7】定電圧源の一構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図4を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、第1の回路構成例について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態におけるゲート駆動回路用電源回路は、例えば、従来同様、スイッチング電源ICにおいて用いられるスイッチングトランジスタのゲート駆動を行うゲート駆動回路の内部回路として設けられるものである。
図1には、ゲート駆動回路101と、このゲート駆動回路101と共に設けられたゲート駆動回路用電源回路102の第1の回路構成例が示されている。
【0028】
ゲート駆動回路101は、外付けのスイッチングトランジスタ(図1においては「MN_EXT」と表記)16のゲート駆動を行うものである。
本発明の実施の形態においては、スイッチングトランジスタ16にNチャンネルMOS電界効果トランジスタ(以下、「NchMOSFET」と称する)が用いられている。
ゲート駆動回路用電源回路102は、ゲート駆動回路101への電源供給、特に、インバータ部103に対する電源供給を担っている(詳細は後述)。
【0029】
本発明の実施の形態におけるゲート駆動回路101は、NOT回路(図1においては「INV1」と表記)20と、インバータ部103とに大別されて構成されたものとなっている。
以下、かかるゲート駆動回路101の具体的な回路構成について説明する。
NOT回路20は、ゲート駆動回路101へ外部から入力されるゲート駆動用の制御信号INを論理反転するための回路である。
NOT回路20の出力端子はインバータ部103の入力段に接続されている。
【0030】
インバータ部103は、ゲート駆動回路101の終段をなし、インバータ用第1及び第2のMOSトランジスタ(図1においては、それぞれ「INVMP1」、「INVMN1」と表記)7,15を用いて構成されている。本発明の実施の形態において、インバータ用第1のMOSトランジスタ7にはPchMOSFETが、インバータ用第2のMOSトランジスタ15にはNchMOSFETが、それぞれ用いられている。
【0031】
インバータ用第1及び第2のMOSトランジスタ7,15のゲートは相互に接続されてNOT回路20の出力端子に接続される一方、各々のドレインは相互に接続されると共に出力端子42に接続されている。
また、インバータ用第1のMOSトランジスタ7のソースは、後述するゲート駆動回路用電源回路102に接続されている。
さらに、インバータ用第2のMOSトランジスタ15のソースはグランドに接続されている。
【0032】
本発明の実施の形態におけるゲート駆動回路用電源回路102は、PchMOSFETを用いた電源用第1及び第2のMOSトランジスタ(図1においては、それぞれ「MP1」、「MP2」と表記)1,2と、NchMOSFETを用いた電源用第3乃至第5のMOSトランジスタ(図1においては、それぞれ「MN1」、「MN2」、「MN3」と表記)11~13と、PchMOSFETを用いた電源用第6及び第7のMOSトランジスタ(図1においては、それぞれ「MP6」、「MP7」と表記)3,4と、第1及び第2の定電流源21,22と、第1及び第2の抵抗器(図1においては、それぞれ「R1」、「R2」と表記)31,32と、定電圧源24を具備して構成されたものとなっている。
【0033】
以下、かかるゲート駆動回路用電源回路102の具体的な回路構成について説明する。
まず、電源用第1のMOSトランジスタ1のゲートは、定電圧源24の正極に接続され、定電圧源24の負極はグランドンに接続されている。
【0034】
また、電源用第1のMOSトランジスタ1のソースと電源端子41との間には、第1の定電流源21が直列接続されて設けられると共に、電源用第1のMOSトランジスタ1のソースは、電源用第3及び第5のMOSトランジスタ11,13のゲートと接続されている。
一方、電源用第1のMOSトランジスタ1のドレインはグランドに接続されている。
【0035】
電源用第2のMOSトランジスタ2は、ゲートが定電圧源24の正極に接続されている。
また、電源用第2のMOSトランジスタ2のソースと電源端子41との間には、第2の定電流源22が直列接続されて設けられると共に、電源用第2のMOSトランジスタ2のソースは、電源用第4のMOSトランジスタ12のゲート及び後述のカレントミラー回路の終段をなす電源用第7のMOSトランジスタ4のドレインと相互に接続されている。
一方、電源用第2のMOSトランジスタ2のドレインはグランドに接続されている。
【0036】
電源用第3のMOSトランジスタ11は、ドレインが電源端子41に接続される一方、ソースが、NOT回路20の正極電源端子と共に第1の抵抗器31を介してインバータ用第1のMOSトランジスタ7のソース及び電源用第4のMOSトランジスタ12のソースに接続されている。
NOT回路20の負極電源端子はグランドに接続されている。
なお、説明の便宜上、電源用第3のMOSトランジスタ11のソースと、NOT回路20の正極電源端子と、第1の抵抗器31の一端との相互の接続点を”ノードReg1”と、インバータ用第1のMOSトランジスタ7のソースと、電源用第4のMOSトランジスタ12のソースと、第1の抵抗器31の他端との相互の接続点を”ノードReg2”と、それぞれ称することとする。
【0037】
電源用第6及び第7のMOSトランジスタ3,4は、次述するように接続されてカレントミラー回路を構成している。
すなわち、電源用第6及び第7のMOSトランジスタ3,4のソースは、共に電源端子41に接続される一方、各々のゲートは相互に接続されると共に、電源用第6のMOSトランジスタ3のドレインに接続されている。これにより、電源用第6のMOSトランジスタ3は、いわゆるダイオード接続状態で設けられている。
【0038】
そして、カレントミラー回路の入力段をなす電源用第6のMOSトランジスタ3のドレインは、電源用第5のMOSトランジスタ13のドレインに接続されており、電源用第5のMOSトランジスタ13のソースは、第2の抵抗器32を介して電源用第4のMOSトランジスタ12のソースに接続されている。
また、電源用第4のMOSトランジスタ12のドレインは電源端子41に接続されている。
【0039】
次に、かかる構成における回路動作について、図4を参照しつつ説明する。
図4は、ゲート駆動回路101及びゲート駆動回路用電源回路102が設けられたICの外部に設けられて接続されたスイッチングトランジスタ16をオフからオンに切り替えた際の主要部の波形を模式的に示した模式図である。
まず、スイッチングトランジスタ16がオフからオンに切り替わる際には、インバータ部第1のトランジスタ7がオフからオンに切り替わり(図4(A)参照)、出力端子42の電圧を引き上げようとする。ところが、スイッチングトランジスタ16のゲート容量が大きいため、出力端子42の電圧が上昇するまで時間がかかるため、オンしているインバータ部第1のトランジスタ7のドレイン・ソース間の抵抗を介してノードReg2の電圧VReg2が出力端子42の電圧まで一時的に引き下げられることとなる(図4(C)参照)。このため、寄生容量Cgsを介して電源回路用第4のMOSトランジスタ12のゲート・ソース間に電流が流れて、ゲートのノードの電圧が引き下げられることとなる(図4(B)参照)。
【0040】
一方、電源回路用第5のMOSトランジスタ13のゲート電圧は、電源回路用第3のMOSトランジスタ11のゲートと接続されているため、大きく変化することはない。
その結果、電源回路用第5のMOSトランジスタ13のゲート・ソース間の電位差が増加して、電源回路用第5のMOSトランジスタ13のドレイン電流が増加することとなる。
【0041】
この電源回路用第5のMOSトランジスタ13のドレイン電流は、電源回路用第6及び第7のMOSトランジスタ3,4で構成されるカレントミラー回路で折り返され、電源回路用第4のMOSトランジスタ12のゲート電圧が引き上げられることとなる。
そのため、電源回路用第4のMOSトランジスタ12及びインバータ用第1のMOSトランジスタ7のゲート・ソース間の電位差は素早く回復して(図4(B)及び図4(C)参照)、結果として、出力電流IOUTの立ち上がり時間が短縮されることとなる(図4(D)及び図4(E)参照)。
【0042】
スイッチングトランジスタ16のターンオン後、一定時間が経過すると、スイッチングトランジスタ16のゲート電圧は上昇し(図4(D)参照)、その一方、電源回路用第5のMOSトランジスタ13のゲート・ソース間電位差は減少する。そのため、電源回路用第5のMOSトランジスタ13のドレイン電流は減少し、電源回路用第7のMOSトランジスタ4の電流が減少するまたはカレントミラー動作が停止することとなる。
【0043】
第2の抵抗器32は、電源回路用第5のMOSトランジスタ13のドレイン電流を制限するためのものである。
すなわち、例えば、出力端子42がグランドに短絡された場合、電源回路用第4のMOSトランジスタ12のゲート電圧が回復しても電源回路用第5のMOSトランジスタ13のドレイン電流が流れ続け、電源回路用第2のMOSトランジスタ2に過剰な電流を流すこととなる。このような場合、第2の抵抗器32が無いとすると、電源回路用第2のMOSトランジスタ2に過剰な電流が流れ続けて、同トランジスタ2の破壊、或いは、電源用第4のMOSトランジスタ12のゲート・ソース間の電位差が素子の耐圧を越えることによる同トランジスタ12の破壊を招く畏れがある。
【0044】
これに対して、本発明の実施の形態のように第2の抵抗器32を設けることで電源回路用第5のMOSトランジスタ13のドレイン電流が一定値以下に制限されるため、上述のようなトランジスタ破壊に至る事態が確実に防止される。
【0045】
次に、第2の回路構成例について、図2を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の回路構成例は、第1の回路構成例において、出力端子42がグランドに短絡された場合、電源回路用第7のMOSトランジスタ4のドレイン電流が流れつづけ、電源回路用第2のMOSトランジスタ2のゲート電圧が素子の耐圧以上となる事態を防止する観点から以下に説明する電流抑圧回路が図1に示された第1の回路構成例に付加されたものである。
【0046】
すなわち、電流抑圧回路104は、PchMOSFETを用いた抑圧回路用第1及び第2のMOSトランジスタ(図2においては、それぞれ「MP5」、「MP6」と表記)5,6と、NchMOSFETを用いた抑圧回路用第3のMOSトランジスタ(図2においては「MN4」と表記)14と、第3の定電流源23を主たる構成要素として構成されたものとなっている。
以下、具体的な回路構成について説明する。
まず、抑圧回路用第1及び第2のMOSトランジスタ5,6は、次述するようにカレントミラー回路を構成している。
【0047】
すなわち、抑圧回路用第1及び第2のMOSトランジスタ5,6は、各々のゲートが相互に接続されると共に、抑圧回路用第1のMOSトランジスタ5のドレインと接続されている。かかる抑圧回路用第1のMOSトランジスタ5は、いわゆるダイオード接続されたものとなっている。
そして、抑圧回路用第1のMOSトランジスタ5のドレインとグランドとの間には、第3の定電流源23が直列接続されて設けられている。
抑圧回路用第2のMOSトランジスタ6のドレインは、グランドに接続されている。
【0048】
また、抑圧回路用第1のMOSトランジスタ5のソースは、抑圧回路用第3のMOSトランジスタ14のソースに接続される一方、抑圧回路用第2のMOSトランジスタ6のソースは、電源回路用第5のMOSトランジスタ13のソースに接続されている。
さらに、抑圧回路用第3のMOSトランジスタ14のドレインは電源端子41に接続される一方、ゲートは電源回路用第2のMOSトランジスタ2のソースと電源回路用第4のMOSトランジスタ12のゲートの相互の接続点に接続されている。
【0049】
かかる構成においては、例えば、出力端子42がグランドに短絡され、ノードReg2の電圧VReg2が低下すると、電源回路用第4のMOSトランジスタ12の寄生容量Cgsにより電源回路用第4のMOSトランジスタ12のゲートのノード電圧が引き下げられる。同時に抑圧回路用第3のMOSトランジスタ14のゲートのノードの電圧が引き下げられるため、抑圧回路用第2のMOSトランジスタ6のソース電圧が引き下げられ、電源回路用第5のMOSトランジスタ13のゲート・ソース間電差が増加して、電源回路用第5のMOSトランジスタ13のドレイン電流が増加し、電源回路用第4のMOSトランジスタ12のゲート電圧が引き上げられる。電源回路用第4のMOSトランジスタ12のゲート電圧が上昇するに従い、電源回路用第5のMOSトランジスタ13のゲート・ソース間電位差が減少して、電源回路用第5のMOSトランジスタ13のドレイン電流は減少する。このため、電源回路用第4のMOSトランジスタ12のゲート電圧が上がり過ぎることはなく、素子耐圧を越えることによる素子破壊が防止されるものとなっている。
【0050】
また、かかる構成においては、図1に示された第1の回路構成例における第2の抵抗器32を不要とするため、通常動作において、電源回路用第2のMOSトランジスタ2のゲート電圧が一時的に低下した際に、抵抗器を用いる場合に比して、より多くのプルアップ電流を流すことができ、より短い時間で出力電流IOUTを立ち上げることが可能となる。
【0051】
なお、上述の実施の形態においては、スイッチングトランジスタ16にNchMOSFETを用いた場合の回路構成を説明したが、図3に示されたように、図1に示された回路におけるNchMOSFETをPchMOSFETに変え、PchMOSFETをNchMOSFETに変え、さらに、図1の回路構成とは逆に定電圧源24の正極を電源電圧VDD側に接続することで、PchMOSFETを用いたスイッチングトランジスタを駆動可能とする構成にすることができる。
【0052】
なお、図3においては、図1に示された構成要素に対応する構成要素について、図1におけるその構成要素の符号の後に”A”を接尾辞として付加して、図1との対応を理解容易としている。
また、図3において、”PW1”は、電源回路用第1のMOSトランジスタ1Aを、”PW2”は、電源回路用第2のMOSトランジスタ2Aを、”PW3”は、電源回路用第3のMOSトランジスタ11Aを、”PW4”は、電源回路用第4のMOSトランジスタ12Aを、”PW5”は、電源回路用第5のMOSトランジスタ13Aを、”PW6”は、電源回路用第6のMOSトランジスタ3Aを、”PW7”は、電源回路用第7のMOSトランジスタ4Aを、”MP_EXT”は、スイッチングトランジスタ16Aを、それぞれ表している。
【0053】
なお、具体的な回路接続は、図1に示された第1の回路構成例においてトランジスタの種類を変えたことに対応する変更がある点を除けば、基本的には第1の回路構成例と同一で、本質的な変更は無いので、ここでの詳細な説明は省略することとする。
【産業上の利用可能性】
【0054】
ゲート駆動回路の消費電流の増加を抑圧しつつ、ゲート駆動回路の駆動対象となるスイッチングトランジスタのオン時間の短縮とターンオン時の電力損失抑圧が所望されるゲート駆動回路用電源回路に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
101…ゲート駆動回路
102…ゲート駆動回路用電源回路
103…インバータ部
104…電流抑圧回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7