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  • -エポキシ樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/66 20060101AFI20230614BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20230614BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230614BHJP
   C08L 63/02 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C08G59/66
C08K5/37
C08K3/013
C08L63/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020073906
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021169584
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】串原 直行
(72)【発明者】
【氏名】隅田 和昌
(72)【発明者】
【氏名】矢島 章
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-012679(JP,A)
【文献】特開2012-246425(JP,A)
【文献】特開2014-231588(JP,A)
【文献】特開2008-274083(JP,A)
【文献】特開2011-236303(JP,A)
【文献】特開2012-082281(JP,A)
【文献】特許第6667843(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08K 5/37
C08K 3/013
C08L 63/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E)成分を含有するエポキシ樹脂組成物であって
(A)下記(C)成分以外の、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、
(B)1分子中に3個以上のチオール基を有するチオール化合物、
(C)下記式(1)~(3)に示される化合物から選ばれるアルケニル基含有エポキシ樹脂と、下記平均組成式(4)のオルガノハイドロジェンシロキサンとの共重合体である、シリコーン変性エポキシ樹脂 (A)成分100質量部に対して0.5~20質量部、
【化1】
【化2】
【化3】
(上記式(1)~(3)において、R はグリシジル基であり、Xは水素原子又は臭素原子であり、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数である)
【化4】
(上記式(4)において、R は置換、又は非置換の、炭素数1~10の1価炭化水素基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルコキシ基、或いは炭素数2~10のアルケニルオキシ基であり、a、bは0.001≦a≦1、1≦b≦3、1<a+b≦4を満足する数であり、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子を1~1,000個有する)
(D)硬化促進剤 (A)成分100質量部に対して0.5~50質量部、
及び
(E)無機充填材 (A)成分100質量部に対して20~1,200質量部
前記(B)成分の量は、前記(A)及び(C)成分中の合計エポキシ基1モル当量に対し前記(B)成分中のチオール基のモル当量比が0.1~1.0となる量である、前記エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
上記(B)成分がチオール基を1分子中に4個以上有することを特徴とする、請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
上記(A)成分及び(C)成分中の合計エポキシ基1モル当量に対し、前記(B)成分中のチオール基のモル当量比が0.1~0.5未満である、請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
上記(D)成分が、リン化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ウレア化合物、アミンアダクト化合物、および尿素アダクト化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(E)無機充填材が球状である、請求項1~4のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
上記(E)成分が体積平均粒径0.01~50μmを有する、請求項5記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
上記式(1)~(3)において、nは0~50の整数であり、mは1~5の整数である、請求項1~6のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、下記式(5)に示される化合物である、請求項1~7のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【化5】
(R は上述の通りであり、pは0~1,000の整数であり、qは0~20の整数であり、さらにp+qは、1<p+q<1,000を満たす整数である)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ樹脂組成物に関する。より詳細にはチオール化合物を含むエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、接着力に優れ、耐熱性、電気特性に優れることから、電気・電子機器部品、自動車部品などの分野で、接着剤や封止材として使用されている。近年、高温条件下での部品劣化を抑える目的や生産性向上の観点から、低温かつ短時間での硬化性を有するエポキシ樹脂組成物が求められている。
【0003】
低温かつ短時間で硬化可能なエポキシ樹脂組成物の硬化剤として、チオール系硬化剤が知られている。例えば、特許文献1及び2には、エポキシ樹脂とチオール化合物を有する組成物が記載されている。特許文献1には、化合物中に4つのチオール基を有しエポキシ樹脂の硬化剤として作用する化合物と、エポキシ樹脂と、硬化促進剤及びシランカップリング剤を含む、樹脂組成物が記載されている。特許文献1は、該チオール化合物は、高温多湿環境下で加水分解することなく、接着強度の低下が起こりにくいと記載している。特許文献2は、エポキシ樹脂、エステル構造含有ポリチオール化合物、及びカルボジイミドを含む樹脂組成物を記載している。該樹脂組成物は、耐湿性に優れると記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6534189号
【文献】特開2019-123825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載のような、チオール系硬化剤を含む従来のエポキシ樹脂組成物は、低温かつ短時間で硬化することはできるが、得られる硬化物はTgが低く、耐熱性が不十分であった。また高温高湿条件下で保管後に接着力が大幅に低下することから、信頼性の面でも満足のするものではなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、優れた低温硬化性及び保存安定性を有し、優れた耐熱性、及び耐湿性を有する硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、エポキシ樹脂、チオール化合物、シリコーン変性エポキシ樹脂、硬化促進剤、及び球状無機充填材を含むエポキシ樹脂組成物において、チオール基を3つ以上有する特定のチオール化合物を特定量で配合することにより、得られる組成物は優れた低温硬化性及び保存安定性を有し、且つ、優れた耐熱性、及び耐湿性を有する硬化物を与えることを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
下記(A)~(E)成分を含有するエポキシ樹脂組成物であって
(A)下記(C)成分以外の、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
(B)1分子中に3個以上のチオール基を有するチオール化合物、
(C)下記式(1)~(3)に示される化合物から選ばれるアルケニル基含有エポキシ樹脂と、下記平均組成式(4)のオルガノハイドロジェンシロキサンとの共重合体である、シリコーン変性エポキシ樹脂 (A)成分100質量部に対して0.5~20質量部、
【化1】
【化2】
【化3】
(上記式(1)~(3)において、R はグリシジル基(2,3-エポキシプロピル基)であり、Xは水素原子又は臭素原子であり、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数である)
【化4】
(上記式(4)において、R は置換、又は非置換の、炭素数1~10の1価炭化水素基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルコキシ基、或いは炭素数2~10のアルケニルオキシ基であり、a、bは0.001≦a≦1、1≦b≦3、1<a+b≦4を満足する数である)
(D)硬化促進剤 (A)成分100質量部に対して0.5~50質量部、
及び
(E)無機充填材 (A)成分100質量部に対して20~1,200質量部
前記(B)成分の量は、前記(A)及び(C)成分中の合計エポキシ基1モル当量に対し前記(B)成分中のチオール基のモル当量比が0.1~1.0となる量である、前記エポキシ樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、優れた低温硬化性及び保存安定性を有し、さらに耐熱性、耐湿性に優れる硬化物を与える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例にて、25℃から300℃までの間で試験片の寸法変化を測定した結果についての該寸法と温度との関係をプロットしたグラフの一例であり、ガラス転移温度の決定方法を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、チオール化合物、シリコーン変性エポキシ樹脂、硬化促進剤、及び球状無機充填材を含み、チオール化合物がチオール基を3つ以上有する特定のエポキシ化合物であることを特徴とする。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
(A)エポキシ樹脂
(A)エポキシ樹脂は本発明の主成分であり、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する。さらに、1分子中に芳香族環を1個以上有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0013】
該エポキシ樹脂はエポキシ基を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するものであればよく、従来公知のエポキシ樹脂であってよい。ただし、後述する(C)シリコーン変性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂である。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、レゾルシノールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能フェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物、並びにこれらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0014】
(A)成分は、25℃での粘度10~100,000mPa・s、好ましくは20~50,000mPa・sを有するのがよい。該粘度はJIS K 7117-1:1999に準じ、B型粘度計を用いて測定される。
【0015】
(A)成分の量は、エポキシ樹脂組成物全質量に対して4~60質量%であることが好ましく、8~55質量%がより好ましく、12~50質量%がさらに好ましい。
【0016】
(B)1分子中に3個以上のチオール基を有するチオール化合物
(B)成分はエポキシ樹脂の硬化剤として作用するポリチオール化合物であり、すなわち、上記(A)成分及び後述する(C)成分の硬化剤である。ポリチオール化合物は低温硬化性が高く、低温短時間でエポキシ樹脂を硬化させる。(B)成分は、1分子中に3個以上のチオール基を有することを特徴とし、好ましくは1分子中に4個以上、より好ましくは4~6個のチオール基を有する。チオール基の数が1分子中に2個以下ではガラス転移温度が低く、得られる硬化物の耐熱性や耐湿性に劣るため好ましくない。
【0017】
ポリチオール化合物としては、例えば、脂肪族ポリチオール化合物、芳香族ポリチオール化合物、エーテル結合を有するポリチオール化合物、エステル結合を有するポリチオール化合物、及びメルカプトアルキルグリコールウリル化合物などのその他特殊構造を有するポリチオール化合物が挙げられる。エステル結合を有するポリチオール化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンなどが挙げられる。メルカプトアルキルグリコールウリル化合物としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは1種単独でも2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ポリチオール化合物を、(A)成分及び後述する(C)成分中の全エポキシ基1モル当量に対し、ポリチオール化合物中のチオール基のモル当量比が0.1~1.0となる量で含有することを特徴とする。好ましくは、モル当量比が0.15~0.8、好ましくは0.18~0.6、更に好ましくは0.2~0.5未満、特に好ましくは0.2~0.4となる量である。該当量比が上記下限値未満では、低温硬化性が損なわれ、未反応のエポキシ基が残存し、ガラス転移温度が低下、あるいは密着性が低下するおそれがある。また上記上限値を超えると、未反応のチオール基が残存し、リフロー時又は温度サイクル時にクラックが発生するおそれがある。
特に好ましくは、(A)成分及び後述する(C)成分中の全エポキシ基1モル当量に対し、ポリチオール化合物中のチオール基のモル当量比が0.5未満、さらに好ましくは0.45以下、最も好ましくは0.4以下であるのがよい。下限値は上記の通り、0.1以上、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上であるのがよい。これにより組成物の低温速硬化性を確保しつつ、組成物の粘度が経時で変化することを抑制し、組成物の保存安定性をより向上することができる。また得られる硬化物はガラス転移温度が高く耐熱性に優れる。
尚、本発明において当量とは官能基1個当たりの分子量である。チオール当量は活性水素当量を意味する。上記当量比(モル当量比)とは、(A)成分及び(C)成分中に含まれるエポキシ1当量に対する(B)チオール化合物中のチオール当量(活性水素当量)の比であり、0.1~1.0、好ましくは上述した範囲の当量比となるチオール活性水素を含む樹脂量の(B)チオール化合物を反応させればよい。
【0019】
(C)シリコーン変性エポキシ樹脂
(C)成分はシリコーン変性エポキシ樹脂である。シリコーン変性エポキシ樹脂を含有することでエポキシ樹脂組成物の硬化性及び耐湿信頼性を向上する。該シリコーン変性エポキシ樹脂としては、アルケニル基含有エポキシ樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを反応させて得られる共重合体が挙げられる。アルケニル基含有エポキシ樹脂としては、例えば、下記式(1)~(3)に示されるものが挙げられる。
【化1】
【化2】
【化3】
【0020】
上記式(1)~(3)において、Rはグリシジル基(2,3-エポキシプロピル基)であり、Xは水素原子又は臭素原子であり、nは0以上の整数、好ましくは0~50、より好ましくは1~20の整数である。mは1以上の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1である。
【0021】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(4)で示される化合物が挙げられる。
(RSiO(4-a-b)/2 (4)
【0022】
上記式(4)において、Rは置換、或いは非置換の、炭素数1~10の1価炭化水素基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルコキシ基、或いは炭素数2~10のアルケニルオキシ基である。1価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基や、これらの炭化水素基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子等で置換したハロゲン置換1価炭化水素基が挙げられる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。アルケニルオキシ基の例としては、ビニルオキシ基、プロペノキシ基、イソプロペノキシ基等が挙げられる。
【0023】
a、bは0.001≦a≦1、1≦b≦3、1<a+b≦4を満足する数であり、好ましくは0.01≦a≦0.1、1.8≦b≦2、1.85≦a+b≦2.1である。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子を1~1,000個、好ましくは2~400個、さらに好ましくは5~200個有するものが望ましい。
【0024】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、式(5)に示される化合物が挙げられる。
【化4】
は上述の通りであり、好ましくはメチル基或いはフェニル基である。pは0~1,000の整数、好ましくは3~400の整数であり、qは0~20の整数、好ましくは0~5の整数であり、より好ましくはq=0である。さらにp+qは、1<p+q<1,000であり、好ましくは2<p+q<400、さらに好ましくは5<p+q<200を満たす整数である。
【0025】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記式の化合物を挙げることができる。
【化5】
【0026】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、重量平均分子量100~100,000であることが好ましく、より好ましくは500~20,000である。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量が前記範囲内である場合、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンと反応させるアルケニル基含有エポキシ樹脂の構造或いは重量平均分子量に応じて、オルガノハイドロジェンポリシロキサンがマトリクスに均一に分散した均一構造、或いはオルガノハイドロジェンポリシロキサンがマトリクスに微細な層分離を形成する海島構造が出現する。
【0027】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量が比較的小さい場合、特に100~10,000である場合は均一構造が形成される。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量が比較的大きい場合、特に10,000~100,000である場合は海島構造が形成される。均一構造と海島構造とは、用途に応じてどちらかを選択すればよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量が100未満の場合、得られる硬化物が剛直で脆くなるため好ましくない。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量が100,000より大きい場合、海島構造が大きくなり、得られる硬化物に局所的な応力が発生するため好ましくない。
【0028】
本発明において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量であり、下記条件で測定できる。
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/min
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL (試料濃度:0.5質量%-テトラヒドロフラン溶液)
検出器:示差屈折率計(RI)
【0029】
アルケニル基含有エポキシ樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを反応させる方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、白金系触媒の存在下で、アルケニル基含有エポキシ樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させる方法が挙げられる。このようにして、シリコーン変性エポキシ樹脂を得ることができる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、アルケニル基含有エポキシ樹脂が有するアルケニル基1モルに対し、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するSiH基が0.1~1モルとなる量で共重合させることが好ましい。
【0030】
上記(C)シリコーン変性エポキシ樹脂は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.5~20質量部であることが好ましく、より好ましくは1~15質量部であり、更に好ましくは2~10質量部である。
【0031】
(D)硬化促進剤
(D)成分は硬化促進剤であり上記(A)成分及び(C)成分であるエポキシ樹脂と、(B)チオール化合物との反応を促進する。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂とチオール化合物の硬化促進剤として公知のものであればよい。例えばトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート等のリン化合物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等の第3級アミン化合物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、1,1-ジメチル尿素、1,1,3-トリメチル尿素、1,1-ジメチル-3-エチル尿素、1,1-ジメチル-3-フェニル尿素、1,1-ジエチル-3-メチル尿素、1,1-ジエチル-3-フェニル尿素、1,1-ジメチル-3-(3,4-ジメチルフェニル)尿素、1,1-ジメチル3-(p-クロロフェニル)尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(DCMU)などのウレア化合物、アミン化合物とエポキシ化合物との反応生成物などのアミンアダクト化合物、アミン化合物とイソシアネート化合物または尿素化合物との反応生成物などの尿素アダクト化合物等が挙げられる。中でも固形のイミダゾール化合物やアミンアダクト化合物が好ましい。
【0032】
(D)成分の配合量は、上述の(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.5~50質量部であることが好ましく、特に1~40質量部であることがより好ましい。1~40質量部であれば、組成物の硬化物の耐熱性及び耐湿性のバランスが悪くなったり、成形時の硬化速度が非常に遅く又は速くなったりするおそれがない。
【0033】
(E)無機充填材
(E)成分は無機充填材であり、エポキシ樹脂組成物の熱膨張率低下及び耐湿信頼性向上の目的で添加される。無機充填材は球状であるのが好ましい。本発明において「球状」とは、アスペクト比が2.0以下、好ましくは1.5以下であるような形状の粒子を指す。無機充填材が球状粒子であることにより、エポキシ樹脂組成物の粘度をより低下させることができ、25℃で液状のエポキシ樹脂を好適に与えることができる。
【0034】
該球状無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、クリストバライト等のシリカ類、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物類、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等の窒化物類などが挙げられる。中でも、材料の入手容易性や品質の安定性等を勘案するとシリカ類が好ましく用いられる。これら無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.01~50μm、更に好ましくは0.05~30μmであり、用途に応じて選択することができる。平均粒径は、例えばレーザー回折法で測定される体積平均粒径であればよい。また、無機充填材の種類は、1種単独でも2種以上を併用することもできる。
【0035】
上記無機充填材は、樹脂成分と無機充填材との結合強度を強くするために、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理されることが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールとγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応物、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-(チイラニルメトキシ)プロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0036】
本発明の組成物における無機充填材の含有量は、上記(A)エポキシ樹脂100質量部に対して20~1,200質量部、好ましくは50~1,000質量部、より好ましくは100~800質量部であるのがよい。
【0037】
その他の添加剤
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記(A)~(E)成分の所定量を配合することによって得られるが、その他の添加剤を必要に応じて本発明の目的、効果を損なわない範囲で添加することができる。かかる添加剤としては、反応抑制剤、難燃剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、接着付与剤、低応力剤、着色剤、及びカップリング剤等が挙げられる。
【0038】
前記反応抑制剤は、貯蔵安定性を向上させる目的で添加され、特に制限されることなく公知のものを全て使用することができる。該反応抑制剤としては、例えば、ホウ酸エステル化合物、アルミキレート化合物、リン酸エステル化合物、バルビツール酸等が挙げられる。
【0039】
前記難燃剤は、難燃性を付与する目的で添加され、特に制限されることなく公知のものを全て使用することができる。該難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、シリコーン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン等が挙げられる。
【0040】
前記イオントラップ剤は、樹脂組成物中に含まれるイオン不純物を捕捉し、熱劣化や吸湿劣化を防ぐ目的で添加され、特に制限されることなく公知のものを全て使用することができる。イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス化合物、希土類酸化物等が挙げられる。
【0041】
上記その他の成分の配合量は本発明のエポキシ樹脂組成物の用途により相違するが、通常は、合計で組成物全体の5質量%以下の量であればよい。
【0042】
エポキシ樹脂組成物の製造方法
本発明のエポキシ樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものでない。
例えば、(A)エポキシ樹脂と(B)チオール化合物と(C)シリコーン変性エポキシ樹脂と(D)硬化促進剤と(E)球状無機充填材とを、同時に又は別々に必要に応じて加熱処理を行いながら混合、撹拌、溶解及び/又は分散させることにより組成物を得ればよい。また、用途によって、(A)~(E)成分の混合物に、離型剤、難燃剤及びイオントラップ剤などのその他の添加剤のうち少なくとも1種を添加して混合し、本発明のエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物は好ましくは25℃で液状である。組成物の粘度は、25℃にて1~650Pa・sであるのがよく、より好ましくは5~500Pa・sであるのがよい。粘度は、JIS Z 8803:2011に準じ、E型粘度計を用いて測定される。
【0044】
組成物の製造方法、並びに、混合、撹拌及び分散を行う装置については、特に限定されない。例えば、撹拌及び加熱装置を備えたライカイ機、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、又はマスコロイダー等を用いることができ、これらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。エポキシ樹脂組成物の硬化条件は特に制限されないが、たとえば、60~200℃、好ましくは80~180℃の範囲にある温度で、30分~10時間、好ましくは1~5時間加熱すればよい。本発明のエポキシ樹脂組成物は低温かつ短時間での硬化が可能である。そのため、70℃~130℃の範囲にある温度で、10分間~2時間程度でも良好に硬化することができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0046】
実施例及び比較例にて用いた各成分は以下の通りである。
(A)エポキシ樹脂
(A1)エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品(ZX1059、25℃での粘度1,900~2,600mPa・s:新日鉄住金化学社製)
(A2)エポキシ樹脂:ナフタレン型エポキシ樹脂(HP4032D、25℃での粘度25Pa・s:DIC社製)
【0047】
(B)チオール化合物
(B1)チオール化合物:1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル(TS-G、四国化成工業社製)
(B2)チオール化合物:1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトプロピル)グリコールウリル(C3TS-G、四国化成工業社製)
(B3)チオール化合物:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート) (カレンズMT PE1、昭和電工社製)
(B4)チオール化合物:1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン
(カレンズMT NR1、昭和電工社製)
(B5)比較用チオール化合物:
テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(EGMP-4、SC有機化学社製)
【0048】
(C)シリコーン変性エポキシ樹脂
リフラックスコンデンサー、温度計、撹拌機及び滴下ロートを具備した内容積1リットルの四つ口フラスコへ、下記式(6)
【化6】
で表されるアリルグリシジルエーテルで変性されたフェノールノボラック樹脂(フェノール当量125、アリル当量1,100)200g、クロロメチルオキシラン800g、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド0.6gをそれぞれ入れて加熱し、温度110℃で3時間撹拌混合した。これを冷却して温度70℃とし、160mmHgに減圧してから、この中に水酸化ナトリウムの50%水溶液128gを共沸脱水しながら3時間かけて滴下した。得られた内容物を減圧して溶剤を留去し、次いでメチルイソブチルケトン300gとアセトン300gの混合溶剤にて溶解させた後、水洗し、これを減圧下で溶剤留去して下記式(7)
【化7】
で表されるアリル基含有のエポキシ樹脂(アリル当量1590、エポキシ当量190)を得た。このエポキシ樹脂とメチルイソブチルケトン170g、トルエン330g、2質量%の白金濃度の2-エチルヘキサノール変性塩化白金酸溶液0.07gを入れ、1時間の共沸脱水を行ない、還流温度にて下記式(8)
【化8】
で表されるオルガノポリシロキサン133gを滴下時間30分にて滴下した。更に、同一温度で4時間撹拌して反応させた後、得られた内容物を水洗し、溶剤を減圧下で留去したところ黄白色不透明固体の共重合体が得られた。エポキシ当量は280であり、ASTM D4287に従い、コーン/プレート粘度計を用いて測定した150℃でのICI溶融粘度は800mPa.sであり、ケイ素含有量31質量%であった。
【0049】
(D)硬化促進剤
(D1)2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ-PW、四国化成社製)
(D2)アミン-エポキシアダクト系潜在性硬化触媒(商品名:フジキュアーFXR-1081、株式会社T&K TOKA社製)
(D3)アミン-エポキシアダクト系潜在性硬化触媒(商品名:フジキュアーFXR-1121、株式会社T&K TOKA社製)
【0050】
(E)無機充填材
(E1)球状溶融シリカ:体積平均粒径14μmの溶融球状シリカ(龍森社製)
【0051】
(F)その他の成分
(F1)反応抑制剤:ホウ酸トリイソプロピル化合物(TCI社製)
【0052】
上記各成分を表1に記載の配合量(質量部)にて混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。各組成物、及び、各組成物を硬化して成る硬化物について、以下に示す方法により、粘度、保存安定性、硬化性、ガラス転移温度(Tg)、耐熱性、耐湿性の評価試験を行った。結果を表1に示す。尚、表1に記載の「当量比」とは、(A)成分及び(C)成分中のエポキシ当量に対する(B)成分中のチオール当量(活性水素当量)の比であり、モル当量を意味する。
【0053】
(1)粘度の測定
上記実施例1~17及び比較例1~7で得られたエポキシ樹脂組成物はいずれも25℃で液状であった。JIS Z 8803:2011に準じ、25℃の粘度を測定した(初期粘度)。すなわち、25℃の測定温度で、E型粘度計を用いて、試料をセットして2分後の粘度を測定した。
【0054】
(2)保存安定性の確認
各エポキシ樹脂組成物を25℃で8時間保持した後の粘度を、上記と同様に測定した。上記初期粘度に対する8時間後の粘度の比率(%)を求め、保存安定性を評価した。
【0055】
(3)硬化性の確認
実施例及び比較例の各エポキシ樹脂組成物を80℃に設定したホットプレート上に0.1g計量した。1時間経過後、樹脂組成物のタックのないものを○、タックがあるものを×とした。
【0056】
硬化物サンプルの作製
実施例及び比較例の各エポキシ樹脂組成物を80℃×1時間、さらに120℃×1時間で加熱硬化して成型し硬化物を得た。
【0057】
(4)ガラス転移温度(Tg)の測定
上記で得た硬化物を、5×5×15mmの試験片にそれぞれを加工した後、それらの試験片を熱膨張計TMA8140C(株式会社リガク社製)にセットした。そして、昇温プログラムを昇温速度5℃/分に設定し、19.6mNの一定荷重が加わるように設定した後、25℃から300℃までの間で試験片の寸法変化を測定した。この寸法変化と温度との関係をグラフにプロットした(グラフの一例を図1に示す)。このようにして得られた寸法変化と温度とのグラフから、下記に説明するガラス転移温度の決定方法により、実施例及び比較例におけるガラス転移温度を求めた。
【0058】
ガラス転移温度(Tg)の決定方法
図1に示すように、変曲点の温度以下で寸法変化-温度曲線の接線が得られる任意の温度2点をT及びTとし、変曲点の温度以上で同様の接線が得られる任意の温度2点をT’及びT’とした。T及びTにおける寸法変化をそれぞれD及びDとして、点(T、D)と点(T、D)とを結ぶ直線と、T’及びT’における寸法変化をそれぞれD’及びD’として、点(T’、D’)と点(T’、D’)とを結ぶ直線との交点をガラス転移温度(T)とした。
【0059】
(5)耐熱性(150℃保管後の接着力保持率)
実施例及び比較例の各エポキシ樹脂組成物を型に流し込み、上面の直径2mm、下面の直径5mm、高さ3mmの円錐台形状の試験片を得た。該試験片をアルミニウム板上に載せ、該試験片を80℃で1時間、さらに120℃で1時間加熱して硬化させた。硬化後、得られた試験片を室温の状態まで冷却して剪断接着力を測定し、その測定結果を初期値とした。得られた試験片を150℃のオーブンにて150時間保管後、室温の状態まで冷却して剪断接着力を測定した。150℃保管後の接着力保持率は、より詳細には下記式で算出した。
150℃保管後の接着力保持率=150℃で150時間保管後の剪断接着力/初期値×100(%)
【0060】
(6)耐湿性(PCT保管後の接着力保持率)
実施例及び比較例の各エポキシ樹脂組成物を型に流し込み、上面の直径2mm、下面の直径5mm、高さ3mmの円錐台形状の試験片を得た。該試験片をアルミニウム板上に載せ、該試験片を80℃で1時間、さらに120℃で1時間加熱して硬化させた。硬化後、得られた試験片を室温の状態まで冷却して剪断接着力を測定し、その測定結果を初期値とした。得られた試験片をPCT(121℃/湿度100%/2atm)にて96時間保管後、室温の状態まで冷却して剪断接着力を測定した。PCT保管後の接着力保持率は、より詳細には下記式で算出した。
PCT保管後の接着力保持率=PCTで96時間保管後の剪断接着力/初期値×100(%)
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
表4に示す通り、チオール基を2個しか有さないチオール化合物を硬化剤として用いた比較例4の組成物は、得られる硬化物のガラス転移温度が低く耐熱性に劣り、また耐湿性にも劣る。チオール化合物の配合量が多い比較例1~3の組成物は経時で粘度上昇し、保存安定性に劣った。また特に比較例2及び3の組成物は低温短時間での硬化性に劣った。さらには、比較例1~3の組成物から得られる硬化物はガラス転移温度が低く耐熱性に劣り、また耐湿性にも劣る。
これに対し、表2、4の実施例に示す通り、本発明のエポキシ樹脂組成物は、経時での粘度変化が少なく保存安定性に優れ、低温短時間でも良好に硬化する。さらに、得られる硬化物はガラス転移温度が比較例の硬化物に比べて高く、耐熱性及び耐湿性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、保存安定性に優れ、且つ、低温かつ短時間で硬化し、耐熱性及び耐湿性に優れる硬化物を与える。従って、電気・電子機器部品、自動車部品などの接着剤や封止剤として好適に利用することができる。
図1