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  • 特許-難燃性接着剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-13
(45)【発行日】2023-06-21
(54)【発明の名称】難燃性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20230614BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230614BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230614BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230614BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20230614BHJP
   C09J 121/00 20060101ALI20230614BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230614BHJP
   C08F 255/02 20060101ALI20230614BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20230614BHJP
   C08F 287/00 20060101ALI20230614BHJP
   C08F 291/00 20060101ALI20230614BHJP
   C08F 291/04 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J201/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J109/00
C09J121/00
C08F2/44 Z
C08F255/02
C08F265/06
C08F287/00
C08F291/00
C08F291/04
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021503854
(86)(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 CN2019075351
(87)【国際公開番号】W WO2020019703
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/096757
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】スン・チュンユー
(72)【発明者】
【氏名】チェン・ジンチエン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ユーヘン
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ・チョン
(72)【発明者】
【氏名】チウ・シュエユー
(72)【発明者】
【氏名】ウー・ハオ
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-096115(JP,A)
【文献】米国特許第06433091(US,B1)
【文献】特開2014-034668(JP,A)
【文献】国際公開第2008/038734(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/150818(WO,A1)
【文献】特開2012-149183(JP,A)
【文献】特開2001-261724(JP,A)
【文献】特開2001-261723(JP,A)
【文献】特表2014-520902(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157315(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 4/02
C08F 2/44
C08F 255/02
C08F 265/06
C08F 287/00
C08F 291/00
C08F 291/04
C09J 11/04
C09J 11/06
C09J 109/00
C09J 121/00
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)エチレン性不飽和モノマー、
b)高分子エラストマー、
c)開始剤、
d)ビニル末端液体ゴム、
e)熱伝導性フィラー、および
f)ジオルガニルホスフィン酸塩
を含んでな
前記ジオルガニルホスフィン酸塩の含有量は、接着剤組成物の総重量に基づいて1重量%以上10重量%未満である、接着剤組成物。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和モノマーは、(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記高分子エラストマーは、コアシェルポリマー、ブロックコポリマーゴム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記ビニル末端液体ゴムは、メタクリレート末端ポリブタジエン、アクリレート末端ポリブタジエン、メタクリレート末端ポリブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリレート末端ポリブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記ビニル末端液体ゴムは、メタクリレート末端ポリブタジエン、アクリレート末端ポリブタジエン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記熱伝導性フィラーは、金属水酸化物、金属酸化物、金属、セラミック、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記ジオルガニルホスフィン酸塩は、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
硬化時の前記接着剤組成物は、2.3MPa以上のアルミニウム上でのラップ剪断強度を示す、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
硬化時の前記接着剤組成物は、UL94耐火試験において、厚さ6mmでV―0分類を示す、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
硬化時の前記接着剤組成物は、ASTM E1461に準拠して、0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を示す、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記エチレン性不飽和モノマーは、前記接着剤組成物の総重量の5重量%~50重量%の量で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記高分子エラストマーは、前記接着剤組成物の総重量の1重量%~40重量%の量で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記開始剤は、前記接着剤組成物の総重量の0.005重量%~5重量%の量で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
前記ビニル末端液体ゴムは、前記接着剤組成物の総重量の0.1重量%~10重量%の量で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
前記熱伝導性フィラーは、前記接着剤組成物の総重量の20重量%~90重量%の量で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
前記ジオルガニルホスフィン酸塩は、前記接着剤組成物の総重量の1重量%~8重量%の量で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項17】
5重量%~50重量%のエチレン性不飽和モノマー、1重量%~40重量%の高分子エラストマー、0.005重量%~5重量%の開始剤、0.1重量%~10重量%のビニル末端液体ゴム、20重量%~90重量%の熱伝導性フィラー、1重量%以上10重量%未満のジオルガニルホスフィン酸塩を含んでなり、前記重量%は前記接着剤組成物の総重量に基づく、接着剤組成物。
【請求項18】
2成分反応性接着剤配合物を提供するためのキットであって、前記キットは、成分Aチャンバーおよび成分Bチャンバーを含んでなり、前記成分Aチャンバーは成分A組成物を含有し、前記成分Bチャンバーは前記成分A組成物と反応可能な成分B組成物を含有し、前記成分A組成物および前記成分B組成物は、予め選択された重量比で組み合わせて、5重量%~50重量%のエチレン性不飽和モノマー、1重量%~40重量%の高分子エラストマー、0.005重量%~5重量%の開始剤、0.1重量%~10重量%のビニル末端液体ゴム、20重量%~90重量%の熱伝導性フィラー、1重量%以上10重量%未満のジオルガニルホスフィン酸塩を含んでなる接着剤組成物を生成でき、前記重量%は前記接着剤組成物の総重量に基づく、キット。
【請求項19】
前記成分Aチャンバーおよび前記成分Bチャンバーはそれぞれ、ドラム、バレルおよびバケツからなる群から選択される、請求項18に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、接着剤組成物、特に改善された接着強度、熱伝導率、および難燃性を有する電気デバイスで使用するための(メタ)アクリル接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一次電池、二次電池、コンデンサー等の電池は、車両用途の分野で広く使用されてきた。通常、二次電池は再充電して大規模にできる。リチウムイオン電池は、寿命や大容量などの優れた特性を備えていることから、二次電池として広く利用されている。しかし、リチウムイオン電池が過充電、短絡、逆接続、熱暴露などの異常な使用環境に曝されると、電気化学反応により電池内にガスが発生し、電池の内圧が上昇する。内圧の上昇により電池が膨潤し、特に電解液や活物質が部分的に分解し、過充電などの異常な使用時間が続くと電池の内圧や温度が急激に上昇し、爆発や火災をもたらすという危険が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、バッテリーパックの固定および絶縁に使用される接着剤には、ヒートシンクに熱を伝達したり、バッテリーパックから発生した熱を放散したりするための優れた熱伝導率、および火災のリスクを低減するための優れた難燃性を有することが必要とされる。一方、車両の電池パックの固定に使用される接着剤は、高温・低温下での揺れや振動などの外力により引き起こされる接着不良を回避するために、優れた接着強度を有することが望まれる。さらに、接着剤は、加熱または照射のための高価な装置による支援なしに、室温下で容易に硬化されることが望まれる。
【0004】
したがって、上記の懸念を克服することができ、車両、特に電池パックの固定のための車両への用途に適した難燃性接着剤組成物を開発する必要性が今なおある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の欠点を克服する接着剤組成物に関する。本発明の接着剤組成物は、硬化時に良好なラップ剪断強度を有する。本発明の接着剤組成物は、硬化時に優れた熱伝導率を示す。本発明の接着剤組成物は、硬化時に優れた難燃性を有する。さらに、接着剤組成物の適用は簡単であり、工業生産に適している。
【0006】
本発明は、一般に、
a)エチレン性不飽和モノマー、
b)高分子エラストマー、
c)開始剤、
d)ビニル末端液体ゴム、
e)熱伝導性フィラー、および
f)ジオルガニルホスフィン酸塩
を含んでなる、接着剤組成物を提供する。
【0007】
10重量%~40重量%のエチレン性不飽和モノマー、2重量%~40重量%の高分子エラストマー、0.005重量%~5重量%の開始剤、0.1重量%~5重量%のビニル末端液体ゴム、20重量%~90重量%の熱伝導性フィラー、1重量%~10重量%のジオルガニルホスフィン酸塩を含んでなり、前記重量%は前記接着剤組成物の総重量に基づく、接着剤組成物も開示される。
【0008】
さらに、2成分反応性接着剤配合物を提供するためのキットであって、前記キットは、成分Aチャンバーおよび成分Bチャンバーを含んでなり、前記成分Aチャンバーは成分A組成物を含有し、前記成分Bチャンバーは前記成分A組成物と反応可能な成分B組成物を含有し、前記成分A組成物および前記成分B組成物は、予め選択された重量比で組み合わせて、本発明の接着剤組成物を生成するキットも開示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の2液反応性接着剤を分配するように改造された2チャンバーアプリケータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の節では、本発明をより詳細に説明する。そのように記載された各態様は、反対に明確に示されない限り、任意の他の態様または複数の態様と組み合わせてよい。特に、好ましいまたは有利であると示される任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示される任意の他の特徴または複数の特徴と組み合わせてよい。
【0011】
本発明の文脈において、使用される用語は、文脈が別段の指示をしない限り、以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0012】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、単数および複数の指示対象の両方を含む。
【0013】
本明細書で使用される「含んでなる(comprising)」、「含んでなる(comprises)」および「含まれる(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」または「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的または自由形式であり、さらなる未記載の部材、要素、またはプロセスステップを排除しない。
【0014】
数値の終点の記載には、それぞれの範囲内に含まれるすべての数値および分数、ならびに記載された終点が含まれる。
【0015】
本明細書で引用されているすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0016】
別段の定義がない限り、技術用語および科学用語を含む、本発明の開示に使用されるすべての用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味を有する。さらなるガイダンスによって、本発明の教示をより良好に理解するために用語の定義が含まれる。
【0017】
本発明の接着剤組成物は、
a)エチレン性不飽和モノマー、
b)高分子エラストマー、
c)開始剤、
d)ビニル末端液体ゴム、
e)熱伝導性フィラー、および
f)ジオルガニルホスフィン酸塩
を含んでなる。
【0018】
本発明の一実施形態において、エチレン性不飽和モノマーは、式(1):
【化1】
[式中、Rは、COOR、CN、CHO、SOH、PO(OH)またはCONRであり、R、RおよびRは、互いに独立して、水素またはC~C18-アルキル、好ましくはC~C12-アルキル、より好ましくはC~C-アルキルである]
により表される。
【0019】
エチレン性不飽和モノマー、好ましくはビニル不飽和モノマーとしては、限定されないが、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリルエステル、並びに、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、およびN-オクチルアクリルアミドが挙げられる。エチレン性不飽和モノマーは2つ以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
好ましくは、エチレン性不飽和モノマーは、(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびそれらの混合物から選択される。
【0021】
本発明において、エチレン性不飽和モノマーは、接着剤組成物の総重量に基づいて5重量%~50重量%、好ましくは10重量%~30重量%の量で存在する。
【0022】
本発明によれば、接着剤組成物は高分子エラストマーを含んでなる。高分子エラストマーは、好ましくはクロロスルホン化ポリエチレンまたは塩素化ポリエチレン、より好ましくはニトリルゴム粒子または粉末、全アクリルコポリマー樹脂または全アクリルゴム粒子、より好ましくはメタクリレート/アクリレートモノマーに可溶な高分子エラストマー、より好ましくはコアシェルポリマーまたはブロックコポリマーゴム、最も好ましくはポリクロロプレン、または前述の混合物である。
【0023】
ポリクロロプレンゴムは、好ましくはデュポンダウエラストマーから入手可能なネオプレンAD-5、AD-10またはWRTなどのネオプレンである。ブロックコポリマーゴムは、好ましくは、ブタジエンまたはイソプレンのいずれかとスチレン(例えば、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレン)、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン)、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)およびSB(スチレン-ブチレン))とのブロックコポリマーであり、Shell Chemical社から、KratonD-1155およびその他のKratonDグレードエラストマーとして、またはDexcoからVector2411IPとして入手可能である。ポリクロロプレンおよび/またはブロックコポリマーゴムの代わりに、メタクリレート/アクリレートモノマーなどのエチレン性不飽和モノマーに可溶である、約25℃未満のTgを有する他のエラストマーを使用することができる。そのような例は、エピクロロヒドリンのホモポリマー、および、そのコポリマーであってゼオンケミカルからHydrinとして入手可能なエチレンオキシドとのコポリマー、ゼオンからHyTempとして入手可能なアクリルゴムペレット、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルゴム、およびSBRゴム(ブタジエンとスチレンとのランダムコポリマー)である。
【0024】
コアシェルポリマーは、好ましくは「コアシェル」型のグラフトコポリマーである。好ましいコアシェルポリマーは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)、およびメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)である。Blendex 338は、GEプラスチック製のABS粉末である。コアシェルポリマーのあまり好ましくない代替品は、Rohm and Haasの製品番号KM330およびKM323Bなどの全アクリルコポリマー樹脂である。好ましいニトリルゴム粉末は、グッドイヤー製のChemigum P-83として入手可能である。任意に、グッドイヤー製のSunigumなどの全てのアクリルゴム粒子を使用できる。膨潤するがモノマー溶液に溶解しない、当該技術分野で知られる他の樹脂フィラーをニトリルゴム粉末の代わりに使用して、ペーストタイプの粘性(consistency)を提供し、さらに硬化した接着剤を強化することができる。
【0025】
本発明において、高分子エラストマーは、接着剤組成物の総重量の1重量%~40重量%、好ましくは2重量%~20重量%の量で存在する。
【0026】
開始剤は、貯蔵寿命を延ばし、早期重合を防止または阻害するフリーラジカル重合開始剤であり、好ましくは、ヒドロキノン(HQ)、4-メトキシフェノール(MEHQ)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェノチアジン(PTZ)、および前述の混合物から選択される。
【0027】
本発明において、開始剤は、接着剤組成物の総重量の0.001重量%~0.2重量%、好ましくは0.005重量%~0.1重量%の量で存在する。
【0028】
開始剤は、フリーラジカル開始剤であり、好ましくは当該技術分野で公知のフリーラジカル開始剤であり、より好ましくはパーエステルまたは過酸、最も好ましくは有機ペルオキシドまたは有機ヒドロペルオキシドである。本発明の好ましい開始剤は、ベンゾイルペルオキシド(BPO)、tert-ブチルペルオキシベンゾエート(TBPB)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、およびtert-ブチルペルオキシドアセテートである。
【0029】
本発明において、開始剤は、接着剤組成物の総重量の0.005重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%の量で存在する。
【0030】
ビニル末端液体ゴムは、好ましくは、当該技術分野で知られるビニル末端液体ゴム(液体ポリブタジエンおよび/または液体ポリイソプレンおよびそれらのコポリマーなど)、より好ましくは、ガラス転移温度が0℃未満であるポリエーテルまたはポリエステルポリオールおよびビニル官能性末端基を有する他のオリゴマー材料であり、より好ましくはHycar VTBNなどのメタクリレート末端またはアクリレート末端ポリブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、最も好ましくはBFグッドリッチ製のHycarVTBなどのメタクリレート末端またはアクリレート末端ポリブタジエンである。
【0031】
本発明において、ビニル末端液体ゴムは、接着剤組成物の総重量の0.1重量%~10重量%、好ましくは1重量%~5重量%の量で存在する。
【0032】
本発明によれば、接着剤組成物はまた、硬化した接着剤に伝達される熱の放散を改善するための熱伝導性フィラーを含んでなる。熱伝導性フィラーの例は、金属水酸化物、金属酸化物、金属およびセラミックである。好ましくは、熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ケイ素、硼化チタン、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、金、および銀である。これらの熱伝導性フィラーの結晶形は、これらの化学種の任意の結晶形、例えば、六方晶または立方晶であってよい。フィラーの粒径を、好ましくは約10μm以上約150μm以下に調整した場合、接着剤組成物の粘度が基材への塗布に適している。フィラー特性を改善するために、シランまたはチタン酸塩で処理された表面を有する熱伝導性フィラーを使用してよい。用語「粒子径」は、フィラーの重心を通る直線を測定したときの最も大きい長さのサイズを意味する。フィラーの形状は、規則的または不規則な形状であってよく、例えば、多角形、立方体、楕円形、球、針、プレート、フレーク、またはそれらの組み合わせを含む。フィラーは、複数の結晶粒子の凝集粒子の形態であり得る。これらのフィラーのうち、酸化アルミニウムおよびシリカは、接着剤組成物への充填に優れているため、特に好ましい。硬化した接着剤に難燃性を与えることができ、また原料として容易に入手できるので、水酸化アルミニウムも好ましい。球状酸化アルミニウム粉末は、上海Bestryパフォーマンスマテリアルズ(株)が販売するBAKシリーズが市販されている。
【0033】
本発明において、熱伝導性フィラーは、接着剤組成物の総重量の20重量%~90重量%、好ましくは30重量%~80重量%の量で存在する。
【0034】
本発明の接着剤組成物はまた、組成物を硬化物にするためのジオルガニルホスフィン酸塩を含有する。難燃性フィラーとしてのジオルガニルホスフィン酸塩の組み込みは、接着剤組成物が硬化したときにUL 94 V-0分類の可燃性を達成し得るため、発明にとって重要である。
【0035】
以下の用語「ジオルガニルホスフィン酸塩」は、ジオルガニルホスフィン酸塩自体だけでなく、ジオルガニルジホスフィン酸塩およびそれらのポリマーも含む。
【0036】
一実施形態において、ジオルガニルホスフィン酸塩は、式(2)
【化2】
[式中、RおよびRは同一または異なるものであり、Hまたは直鎖状もしくは分岐状C-C-アルキル、および/またはアリールであり;
は直鎖状または分枝状C-C10-アルキレン、C-C10-アリレン、C-C10-アルキルアリレン、またはC-C10-アリールアルキレンであり;
Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K、および/またはプロトン化窒素塩基であり;
mは1~4であり;
nは1~4であり;および
xは1~4である]
により表されるジオルガニルモノホスフィン酸塩である。
【0037】
およびRは、同一または異なるものであり、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、および/またはフェニルであることが特に好ましい。
【0038】
は、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、tert-ブチレン、n-ペンチレン、n-オクチレン、またはn-ドデシレン;フェニレン、またはナフチレン;メチルフェニレン、エチルフェニレン、tert-ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、またはtert-ブチルナフチレン;フェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロペンまたはフェニルブチレンであることが好ましい。
【0039】
Mは、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、または亜鉛、特にアルミニウムまたは亜鉛であることが好ましい。
【0040】
プロトン化窒素塩基は、好ましくは、アンモニアまたは第一級、第二級、第三級、または第四級アミンのプロトン化形態である。
【0041】
mは2または3であることが好ましく;nは1または3であることが好ましく、xは1または2であることが好ましい。
【0042】
式(2)のジオルガニルホスフィン酸塩は、好ましくは、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン、およびそれらの任意の所望の混合物の群から選択される。ジオルガニルホスフィン酸塩は、クラリアントケミカルズからExolit OPシリーズの商品名で市販されている。
【0043】
本発明において、ジオルガニルホスフィン酸塩は、接着剤組成物の総重量の1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%の量で存在する。
【0044】
本発明者は、驚くべきことに、ホスファゼンおよびポリリン酸アンモニウムなど、当該技術分野で一般的に使用される他のリン含有難燃剤よりも、ジオルガニルホスフィン酸塩が(メタ)アクリレート系接着剤の可燃性を低下させるのに特により適していることを見出した。
【0045】
一実施形態において、接着剤組成物は、環状ホスファゼンオリゴマーなどのホスファゼンを6%未満含んでなり、好ましくは本質的に含まず、より好ましくは含まない。
【0046】
別の実施形態において、接着剤組成物は、ポリリン酸アンモニウムを6%未満含んでなり、好ましくは本質的に含まない、より好ましくは含まない。
【0047】
本発明によれば、接着剤組成物は、それが硬化されたときに、UL 94のV-0分類を達成し得る限り、任意に難燃性相乗剤を含有してよい。相乗剤としては、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、ペンタメラミントリホスフェート、トリメラミンジホスフェート、テトラキスメラミントリホスフェート、ヘキサキスメラミンペンタホスフェート、メラミンジホスフェート、メラミンテトラホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラムポリホスフェート、メレムポリホスフェート、および/またはメロンポリホスフェート、またはこれらの混合物などが例示できる。
【0048】
組成物は、任意に、エチレン性不飽和モノマーと開始剤との反応を促進するための触媒をも含み得る。伝統的に、そのような組成物は、第三級アミン、置換ホスフィン、第四級有機ホスホニウム化合物の塩、グアニジン、イミダゾールなどの触媒を組み込む。第三級アミンの代表的なものとしては、N,N-ジイソプロパノール-p-クロロアニリン、N,N-ジイソプロパノール-p-ブロモアニリン、N,N-ジイソプロパノール-p-ブロモ-m-メチルアニリン、N,N-ジメチル-p-クロロアニリン、N,N-ジメチル-p-ブロモアニリン、N、N-ジエチル-p-クロロアニリン、N、N-ジエチル-p-ブロモアニリン、N、N-ジメチル-p-アニリン、N、N-ジメチル-p-トルイジン(DMPT);N、N-ジエチル-p-トルイジン、N、N-ジイソプロパノール-p-トルイジン、ジヒドロキシエチル-p-トルイジン(DHEPT)、ビス(ヒドロキシエチル)-p-トルイジンが挙げられる。グアニジンとしては、ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、およびトルイルグアニジンが挙げられる。置換ホスフィンとしては、トリ(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリ(パラ-トリル)-ホスフィン、トリフェニルホスフィンおよびトリフェニルホスフィンが挙げられる。イミダゾールとしては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、および2-エチル-4-メチルイミダゾールが挙げられる。使用し得る第四級有機ホスホニウム化合物の塩としては、限定されないが、ロームおよびハースから市販されているエチルトリフェニルホスホニウム酸アセテート複合体などの有機ホスホニウム官能性酢酸エステル化合物が挙げられる。
【0049】
接着剤組成物は、任意に、接着剤と金属基材との間の接着を向上するために、接着促進剤を含有してよい。本明細書で有用な接着促進剤は、1単位のビニルまたはアリル不飽和が存在する、ホスフィン酸のモノエステル、ホスホン酸およびリン酸のモノエステルおよびジエステルを有する公知のリン含有化合物である。ビニル不飽和が好ましい。リン含有接着促進剤の代表例としては、限定されないが、リン酸;2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート;ビス-(2-メタクリロキシロキシエチル)ホスフェート;2-アクリロイルオキシエチルホスフェート;ビス-(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート;メチル-(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート;エチル-メタクリロイルオキシエチルホスフェート;メチルアクリロイルオキシエチルホスフェート;エチルアクリロイルオキシエチルホスフェート;プロピルアクリロイルオキシエチルホスフェート、イソブチルアクリロイルオキシエチルホスフェート、エチルヘキシルアクリロイルオキシエチルホスフェート、ハロプロピルアクリロイルオキシエチルホスフェート、ハロイソブチルアクリロイルオキシエチルホスフェートまたはハロエチルヘキシルアクリロイルオキシエチルホスフェート;ビニルホスホン酸;シクロヘキセン-3-ホスホン酸;(α-ヒドロキシブテン-2-ホスホン酸;1-ヒドロキシ-1-フェニルメタン-1,1-ジホスホン酸;1-ヒドロキシ-1-メチル-1-ジホスホン酸;1-アミノ-1-フェニル-1,1-ジホスホン酸;3-アミノ-3-ヒドロキシプロパン-1,1-ジホスホン酸;アミノ-トリス(メチレンホスホン酸);γ-アミノ-プロピルホスホン酸;γ-グリシドキシプロピルホスホン酸;リン酸-モノ-2-アミノエチルエステル;アリルホスホン酸;アリルホスフィン酸;β―メタクリロイルオキシエチルホスフィン酸;ジアリルホスフィン酸;β―メタクリロイルオキシエチルホスフィン酸およびアリルメタクリロイルオキシエチルホスフィン酸が挙げられる。例としては、ロディアの商品名SipomerPAM-100およびPAM200、共栄社化学社の商品名LightEster PM-1およびPM-2、サートマーの商品名Sartomer CD9052またはCD9053で販売されているものがある。好ましい接着促進剤は、メタクリロイルオキシエチルホスフェートである。
【0050】
本明細書で有用なさらなる接着促進剤は、シリコーン原子に結合した不飽和有機部分、例えば、不飽和アクリル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、プロペニル基、ヘキセニル基、エチニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、ビニルシクロヘキシルエチル基、ジビニルシクロヘキシルエチル基、ノルボルネニル基、ビニルフェニル基またはスチリル基を有する公知のアルケニル官能性シランである。他のアルケニル官能性有機金属には、チタン酸ビニルアルキル、ジルコン酸塩、ジアクリル酸亜鉛、およびジメタクリル酸亜鉛などのチタン酸塩が含まれる。
【0051】
ワックスは、開放時間を増加させるために難燃性接着剤組成物に使用でき、好ましくはミツバチワックスまたは塩素化ワックスまたは他のワックス、より好ましくはIGインターナショナル製のワックス58である。キングインダストリーズ製のDisparlon 6200などのポリアミド粉末など、チキソトロピー剤および/または強化剤として作用する高分子樹脂を添加することができる。BHTなどの酸化防止剤も使用できる。他の任意の成分には、スカベンジャーまたはキレート剤、例えばEDTA、顔料、染料、強化繊維などが含まれる。
【0052】
接着剤組成物に任意に添加される適当な可塑剤は、高沸点温度溶媒または軟化剤であり得る。適当な可塑剤の例は、無水物または酸と、約6個の炭素原子から約13個の炭素原子を有する適当なアルコールとから作られたエステルである。他の適当な可塑剤には、アジピン酸塩、リン酸塩、安息香酸塩またはフタル酸エステル、ポリアルキレンオキシド、スルホンアミドなどが含まれる。可塑剤には、ジオクチルアジペート可塑剤(DOA)、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート可塑剤(TEG-EH)、トリオクチルトリメリテート可塑剤(TOTM)、グリセリルトリアセテート(トリアセチン可塑剤)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート可塑剤(TXIB)、ジエチルフタレート可塑剤(DEP)、ジオクチルテレフタレート可塑剤(DOTP)、ジメチルフタレート可塑剤(DMP)、ジオクチルフタレート可塑剤(DOP)、ジブチルフタレート可塑剤(DBP)、エチレンオキシド、トルエンスルホンアミド、およびジプロピレン安息香酸グリコールが含まれる。他の市販の可塑剤も有用であり得る。有用な安定剤はラジカル捕捉活性を備え、一般に次の考慮事項:樹脂系との適合性、処理温度での安定剤の温度安定性、安定剤が望ましくない着色を引き起こすかどうか、および安定剤が他の添加剤と相互作用しない、の少なくともいくつかを参照して選択される。
【0053】
本発明はまた、10重量%~40重量%のエチレン性不飽和モノマー、2重量%~40重量%の高分子エラストマー、0.02重量%~10重量%の開始剤、0.1重量%~5重量%のビニル末端液体ゴム、20重量%~90重量%の熱伝導性フィラー、1重量%~10重量%のジオルガニルホスフィン酸塩を含んでなる接着剤組成物を開示し、ここで、重量%は、接着剤組成物の総重量に基づく。
【0054】
当技術分野で知られているように、本発明の接着剤組成物は、成分Aおよび成分Bで調製され、成分Aチャンバーおよび成分Bチャンバーで分離されて維持される2成分の反応性接着剤である。チャンバーは、例えば、コンパートメントまたは別の容器またはバレルまたはバケツであり得る。成分Aおよび成分Bは、それらが反応し、最終的な接着剤を形成するときに、組み合わされる。当技術分野で知られているように、どの成分が成分Aに入れられ、どの成分が成分Bに入れられるかについては広い自由度がある。重要な要件は、反応を開始する成分が、それらと反応する材料とは分離または離れた状態を保つことである。これは、以下の実施例で確認できる。成分Aおよび成分Bへの典型的な分割は、当該技術分野で知られており、本明細書の実施例に示されている。通常、50重量部の成分Aは、50重量部の成分Bと組み合わされる。あるいは、A:Bの比は、約5:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3または約1:5または他の比であり得る。
【0055】
図1を参照すると、ノズル24を備えるバレル12を有するアプリケーターまたはキット10が示されている。バレル12は、2つの別個のチャンバーまたは区画、本発明の接着剤組成物の成分Aを含有する第1チャンバー14、および本発明の接着剤組成物の対応する成分Bを含有する第2チャンバー16を含む。アプリケーター10はまた、デュアルプランジャーハンドル22によって結合された一対のプランジャー18および20を有する。ハンドル22が押し下げられると、成分Aおよび成分Bは、それぞれのチャンバーから押し出され、ノズル24から出てくるときに合流および混合される。次いで、好ましくはさらに一緒に混合され、完全に反応して最終的な接着剤を形成することができる。あるいは、成分Aの55ガロンドラムまたはバレルまたはチャンバーと、成分Bの55ガロンペールまたはチャンバーとを含んでなり、A:B比が1:1で混合されるキットを提供し得る。
【0056】
本発明はまた、2成分反応性接着剤配合物を提供するためのキットであって、前記キットは、成分Aチャンバーおよび成分Bチャンバーを含んでなり、前記成分Aチャンバーは成分A組成物を含有し、前記成分Bチャンバーは前記成分A組成物と反応可能な成分B組成物を含有し、前記成分A組成物および前記成分B組成物は、予め選択された重量比で組み合わせて、10重量%~40重量%のエチレン性不飽和モノマー、2重量%~40重量%の高分子エラストマー、0.02重量%~10重量%の開始剤、0.1重量%~5重量%のビニル末端液体ゴム、20重量%~90重量%の熱伝導性フィラー、1重量%~10重量%のジオルガニルホスフィン酸塩を含んでなる接着剤組成物を生成でき、前記重量%は前記接着剤組成物の総重量に基づく、キットも提供する。
【0057】
本発明の接着剤は、好ましくは、輸送、自動車、および一般産業市場において、表面処理を全くまたは最小限に抑えて、金属、複合材料、および/またはプラスチック部材を接着するために使用される。接着剤は、高い引張強度、剥離強度、難燃性、熱伝導率および耐久性が要求される場合に使用することが好ましい。本発明の接着剤におけるビニル末端液体ゴム、高分子エラストマー、熱伝導性フィラーおよび難燃剤の組み合わせは、難燃性、熱放散効果、ならびに強靭性および低温衝撃の分野で向上された性能をもたらすと考えられる。
【0058】
硬化時の接着剤組成物は、2.3Mpa以上のアルミニウム上でのラップ剪断強度を示す。
【0059】
硬化時の接着剤組成物は、UL94耐火試験において、厚さ6mmでV-0分類を示す。
【0060】
本発明の接着剤組成物は、好ましくは、25℃で液体の形態である。組成物のブルックフィールド粘度は、好ましくは、25℃で50cPs~1,000,000cPsである。
【0061】
硬化時の接着剤組成物は、ASTM E1461に準拠して、0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を示す。
【0062】
以下の実施例は、当業者が本発明をよりよく理解し、実践するのを助けることを意図している。本発明の範囲は、実施例により限定されないが、添付の特許請求の範囲で定義される。特に明記されていない限り、すべての部および%は重量に基づく。
【実施例
【0063】
以下の材料が実施例で使用された。MMAはエボニック製のメタクリル酸メチルである。MAAはSinopharm製のメタクリル酸である。EHMAは、エボニック製のメタクリル酸エチルヘキシルである。Kraton D-1155は、クレイトン製の高分子エラストマーである。H-VTBは、クレイバレー製のビニル末端液体ゴムである。TPPはSinopharm製のトリスフェニルホスフィンである。P1-Mは、共栄社製の接着促進剤である。DMPTは、Sinopharm製のN、N-ジメチル-p-トルイジンである。ワックス58は、Sinopharm製のワックスである。BAK-5は、Bestry製の球状酸化アルミニウム粉末である。SJR-20は、エストーネ製のシリカフィラーである。Exolit OP 935は、クラリアントケミカルズ製のトリスジエチルホスフィン酸アルミニウム塩である。クラリアントケミカルズ製のExolitAP422は、式(NHPO[式中、nは、20~1000、特に200~1000である]で表される流動性のある粉状のポリリン酸アンモニウムであり、水に溶けにくい。クラリアントケミカルズ製のExolit AP750は、相乗剤としてのトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの芳香族カルボン酸エステルとともに、高分子ポリリン酸アンモニウムを含んでなるハロゲン不合の難燃性混合物である。BHTは、Sinopharm製の2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールである。BPOはSinopharm製のベンゾイルペルオキシドである。EPON 828は、Hexion Specialty Chemicals GmbH製のビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。Kraton G 1652は、クレイトン製のSEBSコポリマーである。DINAは、Wengiang Chemical製のアジピン酸ジイソノニルである。ウルトラマリン青色顔料は、Tianlanから入手可能である。
【0064】
実施例(Ex.)および比較例(CEx.)として、2成分接着剤組成物を調製した。組成物の成分Aは、混合物が完全に溶解するまで、熱伝導性フィラーを除くすべての成分をスピードミキサーDAC400(FlakTek社製)で十分に混合し、次いで、熱伝導性フィラーを混合物に加え、十分に混合することにより、表1の成分および量に従って配合し、成分Aを得た。組成物の成分Bは、4gのBPO、2.34gのEpon828、1.3gのKraton G 1652、2.33gのDINA、および0.03gのウルトラマリン青色顔料を含有する。成分Bのすべての成分は、3ロールミルを使用することにより十分に混合されて、均一な成分Bを得た。成分Aおよび成分Bは、基材に塗布されるときに一緒に混合された。
【0065】
表1.接着剤組成物の成分Aの配合(グラム)
【表1】
【0066】
性能評価
Al(アルミニウム)とAlの基材の間、AlとPET(ポリエチレンテレフタレート)の基材の間に、二重のラップ接合を形成した。これらの基材はすべて、厚さ127μmであり、25.4mm×12.5mmのオーバーラップせん断組立品である。基材を接着剤組成物で被覆し、以下の方法に従って、接着強度、熱伝導率、難燃性について試験した。
【0067】
接着強度
各硬化接着剤の接着強度は、Instron 5669テスターにより測定した。接着剤組成物を適用したAl-Al、Al-PET組立品を室温で24時間硬化させ、ASTM 1002に従って試験した。
【0068】
熱伝導率
硬化した接着剤の熱伝導率は、ASTM E1461に従って測定した。試験片の厚さは1.6mmであり、直径は12.7mmである。
【0069】
難燃性
硬化した接着剤の難燃性は、UL 94 規格に従って測定した。硬化したサンプルは、127mm×12.7mm×6mmのサイズに切断した。分類がV-0と決定された場合、評価は「合格」とした。分類がV-1以上と決定された場合、評価は「不合格」とした。
【0070】
試験結果を表2~4に示した。本発明のすべての実施例が、優れた接着強度、熱伝導率および難燃性を示し、したがって、車両バッテリーの接着および絶縁に適用するのに適することが明らかである。比較例では、難燃剤の欠如、従来の難燃剤、または無機フィラーの欠如(有機成分のより高い負荷を引き起こす)が原因で、UL 94試験においてV-0分類を達成できなかった。
【0071】
表2.接着強度の試験結果(MPa)
【表2】
【0072】
表3.熱伝導率の試験結果(W/(m・K))
【表3】
【0073】
表4.難燃性の試験結果(UL 94)
【表4】
本発明は以下の態様を含む。
[1]a)エチレン性不飽和モノマー、
b)高分子エラストマー、
c)開始剤、
d)ビニル末端液体ゴム、
e)熱伝導性フィラー、および
f)ジオルガニルホスフィン酸塩
を含んでなる、接着剤組成物。
[2]前記エチレン性不飽和モノマーは、(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載の接着剤組成物。
[3]前記高分子エラストマーは、コアシェルポリマー、ブロックコポリマーゴム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載の接着剤組成物。
[4]前記ビニル末端液体ゴムは、メタクリレート末端ポリブタジエン、アクリレート末端ポリブタジエン、メタクリレート末端ポリブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、アクリレート末端ポリブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載の接着剤組成物。
[5]前記ビニル末端液体ゴムは、メタクリレート末端ポリブタジエン、アクリレート末端ポリブタジエン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載の接着剤組成物。
[6]前記熱伝導性フィラーは、金属水酸化物、金属酸化物、金属、セラミック、およびそれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載の接着剤組成物。
[7]前記ジオルガニルホスフィン酸塩は、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載の接着剤組成物。
[8]硬化時の前記接着剤組成物は、2.3MPa以上のアルミニウム上でのラップ剪断強度を示す、[1]に記載の接着剤組成物。
[9]硬化時の前記接着剤組成物は、UL94耐火試験において、厚さ6mmでV―0分類を示す、[1]に記載の接着剤組成物。
[10]硬化時の前記接着剤組成物は、ASTM E1461に準拠して、0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を示す、[1]に記載の接着剤組成物。
[11]前記エチレン性不飽和モノマーは、前記接着剤組成物の総重量の5重量%~50重量%、好ましくは10重量%~30重量%の量で存在する、[1]に記載の接着剤組成物。
[12]前記高分子エラストマーは、前記接着剤組成物の総重量の1重量%~40重量%、好ましくは2重量%~20重量%の量で存在する、[1]に記載の接着剤組成物。
[13]前記開始剤は、前記接着剤組成物の総重量の0.005重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%の量で存在する、[1]に記載の接着剤組成物。
[14]前記ビニル末端液体ゴムは、前記接着剤組成物の総重量の0.1重量%~10重量%、好ましくは1重量%~5重量%の量で存在する、[1]に記載の接着剤組成物。
[15]前記熱伝導性フィラーは、前記接着剤組成物の総重量の20重量%~90重量%、好ましくは30重量%~80重量%の量で存在する、[1]に記載の接着剤組成物。
[16]前記ジオルガニルホスフィン酸塩は、前記接着剤組成物の総重量の1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%の量で存在する、[1]に記載の接着剤組成物。
[17]5重量%~50重量%のエチレン性不飽和モノマー、1重量%~40重量%の高分子エラストマー、0.005重量%~5重量%の開始剤、0.1重量%~10重量%のビニル末端液体ゴム、20重量%~90重量%の熱伝導性フィラー、1重量%~10重量%のジオルガニルホスフィン酸塩を含んでなり、前記重量%は前記接着剤組成物の総重量に基づく、接着剤組成物。
[18]2成分反応性接着剤配合物を提供するためのキットであって、前記キットは、成分Aチャンバーおよび成分Bチャンバーを含んでなり、前記成分Aチャンバーは成分A組成物を含有し、前記成分Bチャンバーは前記成分A組成物と反応可能な成分B組成物を含有し、前記成分A組成物および前記成分B組成物は、予め選択された重量比で組み合わせて、5重量%~50重量%のエチレン性不飽和モノマー、1重量%~40重量%の高分子エラストマー、0.005重量%~5重量%の開始剤、0.1重量%~10重量%のビニル末端液体ゴム、20重量%~90重量%の熱伝導性フィラー、1重量%~10重量%のジオルガニルホスフィン酸塩を含んでなる接着剤組成物を生成でき、前記重量%は前記接着剤組成物の総重量に基づく、キット。
[19]前記成分Aチャンバーおよび前記成分Bチャンバーはそれぞれ、ドラム、バレルおよびバケツからなる群から選択される、[18]に記載のキット。
図1