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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】感圧センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/20 20060101AFI20230615BHJP
   G01G 19/44 20060101ALI20230615BHJP
   G01G 19/52 20060101ALI20230615BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
G01L1/20 G
G01G19/44 Z
G01G19/52 F
H01L29/84 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019004407
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020112477
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-10-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(さきがけ)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】竹井 邦晴
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3183657(JP,U)
【文献】特開2006-284276(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108760102(CN,A)
【文献】特開2002-318163(JP,A)
【文献】米国特許第5060527(US,A)
【文献】特開昭56-151331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00- 1/26
G01L 5/00- 5/28
G01G 1/00-23/48
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面を有する多孔質弾性シートであって、三次元的網目構造を有することにより当該シート内部に複数の細孔を有する、前記多孔質弾性シートと、
前記多孔質弾性シートの前記表面及びその内部の細孔内に設けられた少なくとも1つの第1電極と、
前記多孔質弾性シートの前記裏面及びその内部の細孔内に設けられた少なくとも1つの第2電極とを備え、
第1電極及び第2電極は、少なくとも一部が絶縁部を挟んで重なるように配置され、
前記絶縁部は、前記多孔質弾性シートの一部であり、かつ、細孔内に第1電極及び第2電極のいずれもが設けられていない部分であり、
第1電極及び第2電極は、第1電極と第2電極とが重なる部分に荷重が加えられると前記絶縁部の細孔を通して第1電極の一部と第2電極の一部とが接触するように設けられたことを特徴とする感圧センサ。
【請求項2】
前記多孔質弾性シートは、50%以上の空隙率を有する請求項1に記載の感圧センサ。
【請求項3】
第1電極又は第2電極は、金属粒子、金属繊維、金属ナノワイヤー、炭素粒子、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、導電性高分子及び導電性粒子のうち少なくとも1つを含む請求項1又は2に記載の感圧センサ。
【請求項4】
前記多孔質弾性シートは、ポリマー発泡体シート、紙、不織布及び織布のうち少なくとも1つを含む請求項1~3のいずれか1つに記載の感圧センサ。
【請求項5】
複数の第1電極は、それぞれ縦方向に伸びる直線状電極であり、かつ、横方向に並べて配置され、
複数の第2電極は、それぞれ横方向に伸びる直線状電極であり、かつ、縦方向に並べて配置され、
第1電極と第2電極とが重なる部分は、マトリックス状に配置された請求項1~4のいずれか1つに記載の感圧センサ。
【請求項6】
検出部をさらに備え、
前記検出部は、第1電極と第2電極との間の電気抵抗に基づき第1電極と第2電極とが重なる部分に荷重が加えられたこと又は加えられた荷重の大きさを検出するように設けられた請求項1~5のいずれか1つに記載の感圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力分布を測定することができる感圧センサが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。このような感圧センサを備えたベッドシートやマットを用いることにより人の状態(ベッドに寝ている状態、マットを踏んだ状態など)を計測・監視することが可能になる。
これらの感圧センサは、上部電極を設けた上部シートと、下部電極を設けた下部シートとをスペーサを挟んで重ね合わせた構造を有している。このスペーサにより上部電極と下部電極との間に空間が形成され、この空間により上部電極と下部電極とが電気的に絶縁されている。感圧センサに荷重が加わると、この荷重により上部電極と下部電極とが近づき接触し、上部電極と下部電極との間の電気抵抗が変化する。この電気抵抗の変化を検出することにより、感圧センサに加わった荷重を検出する。
また、グラフェン多孔質構造を利用したひずみセンサが知られている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-284276号公報
【文献】特開2005-274549号公報
【文献】特開2012-057991号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】ACS Applied Materials & Interfaces 2016, 8, 26458-26462
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の感圧センサは複雑な構造を有しているため、製造コストが大きい。また、従来の感圧センサでは、上部電極とスペーサと下部電極とを重ねた構造を有するため、長期間感圧センサを使用すると上部電極、スペーサまたは下部電極の位置がずれる場合や、スペーサの機能が低下する場合があり、耐久性が低い。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低減された製造コストで製造でき、耐久性の高い感圧センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面及び裏面を有する多孔質弾性シートと、前記多孔質弾性シートの前記表面及びその内部の細孔内に設けられた少なくとも1つの第1電極と、前記多孔質弾性シートの前記裏面及びその内部の細孔内に設けられた少なくとも1つの第2電極とを備え、第1電極及び第2電極は、少なくとも一部が絶縁部を挟んで重なるように配置され、前記絶縁部は、前記多孔質弾性シートの一部であり、かつ、細孔内に第1電極及び第2電極のいずれもが設けられていない部分であり、第1電極及び第2電極は、第1電極と第2電極とが重なる部分に荷重が加えられると前記絶縁部の細孔を通して第1電極の一部と第2電極の一部とが接触するように設けられたことを特徴とする感圧センサを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の感圧センサに含まれる第1電極及び第2電極は、第1電極と第2電極とが重なる部分に荷重が加えられると絶縁部の細孔を通して第1電極の一部と第2電極の一部とが接触するように設けられる。このため、感圧センサに荷重が加わると、第1電極と第2電極との間の電気抵抗を小さくすることができ、感圧センサに荷重が加わったこと又は加わった荷重の大きさを検出することができる。
本発明の感圧センサでは、第1電極、絶縁部及び第2電極を多孔質弾性シートの内部に設けるため、第1電極、絶縁部及び第2電極の位置がずれることない。このため、感圧センサが誤検知なく安定して荷重を検出することができる。また、感圧センサを曲げたときに誤検知することを抑制することができる。また、感圧センサがシンプルな構造を有することができ、感圧センサの製造コストを低減することができる。さらに、感圧センサの耐久性を向上させることができる。
本発明の感圧センサでは、多孔質弾性シートに第1電極及び第2電極を設けるため、本発明の感圧センサをマットレス、布団、座布団などに違和感なく設置することができ、看護管理や高齢者見守りに利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の感圧センサの概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態の感圧センサの断面を模式的に示した図である。
図3】本発明の一実施形態の感圧センサに荷重が加えられ圧縮された部分を上から見た模式図である。
図4】本発明の一実施形態の感圧センサの概略斜視図である。
図5図4の破線A-Aにおける感圧センサの概略断面図である。
図6図4の一点鎖線B-Bにおける感圧センサの概略断面図である。
図7】作製した感圧センサの写真である。
図8】電気抵抗測定実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の感圧センサは、表面及び裏面を有する多孔質弾性シートと、前記多孔質弾性シートの前記表面及びその内部の細孔内に設けられた少なくとも1つの第1電極と、前記多孔質弾性シートの前記裏面及びその内部の細孔内に設けられた少なくとも1つの第2電極とを備え、第1電極及び第2電極は、少なくとも一部が絶縁部を挟んで重なるように配置され、前記絶縁部は、前記多孔質弾性シートの一部であり、かつ、細孔内に第1電極及び第2電極のいずれもが設けられていない部分であり、第1電極及び第2電極は、第1電極と第2電極とが重なる部分に荷重が加えられると前記絶縁部の細孔を通して第1電極の一部と第2電極の一部とが接触するように設けられたことを特徴とする。
【0010】
本発明の感圧センサに含まれる多孔質弾性シートは50%以上の空隙率を有することが好ましい。このことにより、第1電極と第2電極とが重なる部分に荷重が加えられた場合に絶縁部の細孔を通して第1電極の一部と第2電極の一部とが接触することができる。
本発明の感圧センサに含まれる第1電極又は第2電極は、金属粒子、金属繊維、金属ナノワイヤー、炭素粒子、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、導電性高分子及び導電性粒子のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。このことにより、多孔質弾性シートの細孔内に第1電極又は第2電極を設けることができる。
【0011】
本発明の感圧センサに含まれる多孔質弾性シートは、ポリマー発泡体シート、紙、不織布及び織布のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
本発明の感圧センサにおいて、複数の第1電極はそれぞれ縦方向に伸びる直線状電極であることが好ましく、かつ、横方向に並べて配置されることが好ましい。また、複数の第2電極は、それぞれ横方向に伸びる直線状電極であることが好ましく、かつ、縦方向に並べて配置されることが好ましい。さらに、第1電極と第2電極とが重なる部分は、マトリックス状に配置されることが好ましい。このことにより、感圧センサに加えられた荷重の分布を測定することができる。
本発明の感圧センサは、検出部を備えることが好ましく、前記検出部は、第1電極と第2電極との間の電気抵抗に基づき第1電極と第2電極とが重なる部分に荷重が加えられたこと又は加えられた荷重の大きさを検出するように設けられることが好ましい。
【0012】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0013】
第1実施形態
図1は本実施形態の感圧センサの概略断面図である。
本実施形態の感圧センサ30は、表面3及び裏面4を有する多孔質弾性シート2と、多孔質弾性シート2の表面3及びその内部の細孔7内に設けられた少なくとも1つの第1電極5と、多孔質弾性シート2の裏面4及びその内部の細孔7内に設けられた少なくとも1つの第2電極6とを備え、第1電極5及び第2電極6は、少なくとも一部が絶縁部10を挟んで重なるように配置され、絶縁部10は、多孔質弾性シート2の一部であり、かつ、細孔7内に第1電極5及び第2電極6のいずれもが設けられていない部分であり、第1電極5及び第2電極6は、第1電極5と第2電極6とが重なる部分に荷重が加えられると絶縁部10の細孔7を通して第1電極5の一部と第2電極6の一部とが接触するように設けられたことを特徴とする。
また、感圧センサ30は、検出部11を備えることができる。
【0014】
感圧センサ30は、荷重が加わったことや荷重の大きさを検出するセンサである。感圧センサ30は触覚センサであってもよい。また、感圧センサ30は、抵抗変化型センサであってもよい。また、感圧センサ30は、フレキシブル感圧センサシートであってもよい。
多孔質弾性シート2は、表面3及び裏面4を有するシート形状を有し、弾性特性を有する多孔質材料からなる。この多孔質材料は、例えば、ポリマー発泡体、紙、不織布、織布などである。また、この多孔質材料は、絶縁体又は高抵抗の半導体である。また、多孔質弾性シートは、スポンジシートであってもよい。
多孔質弾性シート2の厚さは、例えば、0.1mm以上5cm以下とすることができ、好ましくは0.5mm以上5mm以下とすることができる。
【0015】
ポリマー発泡体は、例えば、軟質ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム(低密度ポリエチレンフォーム)、ゴムスポンジ、シリコーンフォームなどである。ポリマー発泡体は、高分子材料の三次元的網目構造からなる骨格と、骨格が三次元的網目構造を有することにより発泡体内部に形成される多くの気泡(細孔7)とを有することができる。この場合、ポリマー発泡体に含まれる気泡(細孔7)は連続気泡となる。ポリマー発泡体の発泡倍率は、例えば10倍以上120倍以下とすることができる。
多孔質弾性シート2が紙、不織布又は織布である場合、繊維が骨格となり、繊維が重なること又は繊維が織られることにより形成される空間が細孔7となる。
多孔質弾性シート2は、50%以上の空隙率を有することができる。このことにより、絶縁部10の細孔7を通して第1電極5と第2電極6とを接触させることが可能になる。
【0016】
第1電極5は、多孔質弾性シート2の表面3及び多孔質弾性シート2の一部の細孔7内に設けられる。表面2の第1電極5と細孔7内の第1電極5とは連続している。例えば、図1に示した感圧センサ30のように、第1電極5は、多孔質弾性シート2の表面3上に形成された第1電極5と、多孔質弾性シート2の骨格に担持された第1電極5とを含む。第1電極5が担持されている多孔質弾性シート2の部分を第1担持部8という。第1担持部8では、多孔質弾性シート2の骨格の表面に第1電極5が担持されている。
【0017】
第2電極6は、多孔質弾性シート2の裏面4及び多孔質弾性シート2の一部の細孔7内に設けられる。裏面4の第2電極6と細孔7内の第2電極6とは連続している。例えば、図1に示した感圧センサ30のように、第2電極6は、多孔質弾性シート2の裏面4上に形成された第2電極6と、多孔質弾性シート2の骨格に担持された第2電極6とを含む。第2電極6が担持されている多孔質弾性シート2の部分を第2担持部9という。第2担持部9では、多孔質弾性シート2の骨格の表面に第2電極6が担持されている。
【0018】
第1電極5及び第2電極6は、第1電極5と第2電極6とが重なるように設けられる。また、第1電極5及び第2電極6は、第1担持部8(第1電極5)と第2担持部9(第2電極6)との間の多孔質弾性シート2に、第1電極5及び第2電極6のいずれもが設けられていない絶縁部10が形成されるように設けられる。絶縁部10では、多孔質弾性シート2の骨格の表面に第1電極5、第2電極6のいずれも担持されていない。絶縁部10を設けることにより、荷重が加えられていない感圧センサ30において第1電極5と第2電極6との間の電気抵抗を高くすることができる。
第1担持部8と第2担持部9との間の絶縁部10の厚さは、例えば0.05mm以上5mm以下とすることができる。
第1電極5と第2電極6との間の電気抵抗が十分に高い場合、感圧センサ30に荷重が加えられていない場合であっても第1担持部8と第2担持部9とがわずかに接触していてもよい。
【0019】
第1電極5(第1担持部8)又は第2電極6(第2担持部9)は、液体と導電性物質とを混合したペースト又は懸濁液を多孔質弾性シート2の表面3又は裏面4に塗布、印刷又はスプレーしペースト又は懸濁液を多孔質弾性シート2に浸み込ませ、さらに乾燥させることにより形成することができる。
ペースト又は懸濁液に含まれる導電性物質は、例えば、金属粒子(銀粒子、銅粒子、金粒子など)、金属繊維(銀繊維、銅繊維、金繊維など)、金属ナノワイヤー(銀ナノワイヤー、銅ナノワイヤー、金ナノワイヤーなど)、炭素粒子、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、導電性高分子(PEDOT:PSSなど)及び導電性粒子(ITO粒子など)のうち少なくとも1つを含むことができる。
ペースト又は懸濁液に含まれる液体は、水であってもよく、非水溶剤であってもよい。また、ペースト又は懸濁液は、増粘剤、分散剤、バインダーなどを含んでもよい。
【0020】
第1担持部8と第2担持部9との間の絶縁部10は、第1電極5の形成時又は第2電極6の形成時において、ペースト又は懸濁液の粘度や塗布量あるいは多孔質弾性シート2の細孔7の大きさ又は空隙率を調節して、ペースト又は懸濁液が多孔質弾性シート2に浸み込む深さを調節することにより、形成することができる。例えば、多孔質弾性シート2の厚さが3mmである場合、ペースト又は懸濁液が約1mmの深さにまで多孔質弾性シート2に浸み込むようにペースト又は懸濁液の粘度や塗布量あるいは多孔質弾性シート2の細孔7の大きさ又は空隙率を調節して第1担持部8(第1電極5)及び第2担持部9(第2電極6)を形成することができる。このことにより、第1担持部8と第2担持部9との間に厚さが約1mmの絶縁部10を形成することができる。
【0021】
検出部11は、第1電極5と第2電極6との間の電気抵抗に基づき第1電極5と第2電極6とが重なる部分に荷重が加えられたことを検出するように設けられる。検出部11は、例えば、第1電極5と第2電極6との間に電圧を印加できるように設けられた電源部12と、第1電極5と第2電極6との間に流れる電流を測定できるように設けられた電流計13と、電流計13の測定値に基づき第1電極5と第2電極6との間の電気抵抗の変化を検出し第1電極5と第2電極6とが重なる部分に荷重が加えられたことを検出するように設けられた制御部とを備えることができる。制御部は例えばコンピュータ、マイクロコントローラなどである。
【0022】
第1電極5及び第2電極6は、第1電極5と第2電極6とが重なる部分が圧縮されると絶縁部10の細孔7を通して第1電極5(第1担持部8)の一部と第2電極6(第2担持部9)の一部とが接触するように設けられる。このことにより、感圧センサ30に荷重が加えられたときに、第1電極5と第2電極6との間の電気抵抗を小さくすることができ、第1電極5と第2電極6とが重なる部分に荷重が加えられたことを検出することができる。このことを図2図3を使って説明する。
【0023】
図2(a)、図2(b)は、本実施形態の感圧センサ30の断面を模式的に示した図である。図2(a)に示したように、感圧センサ30に荷重を加えていない状態では、第1担持部8(第1電極5)と第2担持部9(第2電極6)との間に絶縁部10が存在するため、第1担持部8の骨格17の表面の第1電極5と第2担持部9の骨格18の表面の第2電極6とは接触しない。このため、第1電極5と第2電極6との間に電圧を印加しても第1電極5と第2電極6との間に電流は流れず、第1電極5と第2電極6との間の電気抵抗は高くなる。
【0024】
図2(b)に示したように、第1担持部8と、絶縁部10と、第2担持部9とが重なる部分に重り15を用いて荷重を加えると、第1担持部8の骨格17、絶縁部10の骨格19、第2担持部9の骨格18は変形又は座屈し、荷重が加えられた部分が圧縮される。
図3は、図2(b)に示したように感圧センサ30に荷重が加えられ圧縮された部分21を上から見た模式図である。圧縮された部分21では、多孔質弾性シート2の細孔7がつぶれ、第1担持部8の骨格17、絶縁部10の骨格19及び第2担持部9の骨格18が重なっている。このため、図3に示した接触部分22のような、第1担持部8の骨格17と第2担持部9の骨格18との間に絶縁部10の骨格19が存在しない部分では、絶縁部10の細孔7を通して第1担持部8の骨格17の表面の第1電極5と、第2担持部9の骨格18の表面の第2電極6とが接触する。このため、第1電極5と第2電極6との間に電圧を印加すると、第1電極5と第2電極6との間に電流が流れ、第1電極5と第2電極6との間の電気抵抗は低くなる。このような電気抵抗の低下を検出部11を用いて検出することにより、感圧センサ30は、第1電極5と第2電極6とが重なる部分に荷重が加えられたことを検出することができる。
【0025】
多孔質弾性シート2は弾性特性を有するため、感圧センサ30に加えた荷重を取り除くと、感圧センサ30は、図2(a)に示したような元の形状に戻る。このため、感圧センサ30に加えられた荷重を取り除くと、第1電極5と第2電極6との間の電気抵抗は再び高くなる。このような電気抵抗の上昇を検出部11を用いて検出することにより、感圧センサ30は、第1電極5と第2電極6とが重なる部分に加えられていた荷重が取り除かれたことを検出することができる。
【0026】
第2実施形態
図4は第2実施形態の感圧センサの概略斜視図であり、図5図4の破線A-Aにおける感圧センサの概略断面図であり、図6図4の一点鎖線B-Bにおける感圧センサの概略断面図である。
本実施形態の感圧センサ30は、複数の第1電極5a~5jと複数の第2電極6a~6jとを備える。各第1電極5及び各第2電極6については、第1実施形態において説明したためここでは省略する。
【0027】
複数の第1電極5a~5jは、多孔質弾性シート2の表面において、それぞれ縦方向に伸びる直線状電極であり、かつ、横方向に並べて配置される。また、複数の第2電極6a~6jは、多孔質弾性シート2の裏面において、それぞれ横方向に伸びる直線状電極であり、かつ、縦方向に並べて配置される。さらに、第1電極5a~5jと第2電極6a~6jとが重なる部分は、マトリックス状に配置される。例えば、図4図6に示した感圧センサ30は、10本の第1電極5a~5jと、10本の第2電極6a~6jとを有している。
図5図6に示したように、第1電極5と第2電極6とが重なった各部分では、第1担持部8と第2担持部9との間に絶縁部10が配置される。この構成は、第1実施形態の感圧センサ30の構成と同様である。このため、第1電極5と第2電極6とが重なった部分に荷重が加わると、絶縁部10の細孔7を通して第1担持部8の骨格17の表面の第1電極5と、第2担持部9の骨格18の表面の第2電極6とが接触する。このときに、第1電極5と第2電極6との間に電圧を印加すると、第1電極5と第2電極6との間に電流が流れ、第1電極5と第2電極6との間の電気抵抗は低くなる。
【0028】
検出部11は、第1電極5と第2電極6とが重なった部分に荷重が加えられたこと又はこの部分に加えられた荷重の大きさを順次検出するように設けられる。
例えば、図4図6に示した感圧センサ30では、まず、検出部11は、電源部12を用いて第1電極5aと第2電極6aとの間に電圧を印加し、第1電極5aと第2電極6aとが重なった部分に荷重が加えられたこと又はこの部分に加えられた荷重の大きさを検出する。次に、検出部11は、電源部12を用いて第1電極5aと第2電極6bとの間に電圧を印加し、第1電極5aと第2電極6bとが重なった部分に荷重が加えられたこと又はこの部分に加えられた荷重の大きさを検出する。検出部11は、このような検出を、第1電極5a~5jと第2電極6a~6jとが重なる各部分について順次行う。このことにより、感圧センサ30に加えられた荷重の分布を測定することができる。
【0029】
また、検出部11は、第1電極5a~5jと第2電極6a~6jとが重なる各部分についての検出を繰り返し行うことができる。このことにより、感圧センサ30に加えられた荷重の分布の変化を監視することができる。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。第1実施形態についての記載は、矛盾がない限り第2実施形態について当てはまる。
【0030】
感圧センサの作製実験
多孔質弾性シートに、縦方向に伸びる3本の第1電極と、横方向に伸びる3本の第2電極を形成し、感圧センサを作製した。多孔質弾性シートには、フィルター用の軟質ポリウレタンフォーム(厚さ3mm)を用いた。
第1電極及び第2電極は、水、カーボンナノチューブ及びキサンタンガム(増粘剤)を含むペーストを多孔質弾性シートの表面及び裏面に塗布し浸み込ませ、塗布層を乾燥させることにより形成した。
図7(a)は作製した感圧センサの写真である。作製した感圧センサは、第1電極と第2電極とが重なった部分が9箇所形成されている。
【0031】
電気抵抗測定実験
作製した感圧センサの第1電極と第2電極とが重なった部分の1つに様々な荷重を加えて第1電極と第2電極との間の電気抵抗値を測定した。測定では、測定対象とした第1電極と第2電極とに配線を用いてデジタルマルチメーター(テスター)を接続し、第1電極と第2電極との間の電気抵抗値を測定した。測定結果を図8に示す。また、測定対象とした第1電極と第2電極とが重なった部分において作製した感圧センサを切断して、感圧センサの切断面の写真を撮影した。撮影した写真を図7(b)に示す。
図7(b)に示した写真から、第1電極(第1担持部)と第2電極(第2担持部)との間に絶縁部が形成されていることがわかる。
【0032】
電気抵抗測定では、感圧センサに荷重を加えていない場合には、第1電極と第2電極との間の電気抵抗は測定できないほど高かった。また、約12Nの荷重を感圧センサに加えると、約160kΩの電気抵抗値が測定され、17~20Nの荷重を感圧センサに加えると約108kΩの電気抵抗値が測定された。従って、荷重が大きくなると、第1電極と第2電極との間の電気抵抗は小さくなることがわかった。これは、荷重が大きくなると第1電極と第2電極とが接触する面積が大きくなるためと考えられる。また、このことから、第1電極と第2電極との間の電気抵抗値から感圧センサに加えられた荷重の大きさを計測できることがわかった。
また、約38N以上の荷重を感圧センサに加えると、約72kΩの電気抵抗値が測定された。これは、感圧センサに加える荷重が一定の値を超えると、第1電極と第2電極とが接触する面積がほぼ変わらなくなるためと考えられる。
以上の実験結果から、第1電極と第2電極との間の電気抵抗に基づき第1電極と第2電極とが重なる部分に荷重が加えられたこと又は加えられた荷重の大きさを検出することができることがわかった。
【符号の説明】
【0033】
2: 多孔質弾性シート 3:表面 4:裏面 5:第1電極 6:第2電極 7:細孔 8:第1担持部 9:第2担持部 10:絶縁部 11:検出部 12:電源部 13:電流計 15:重り 17:第1担持部の骨格 18:第2担持部の骨格 19:絶縁部の骨格 21:圧縮された部分 22:接触部分 30:感圧センサ
図1
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図7
図8