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特許7296412光学系及び光学系を用いてマスク欠陥を補正する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-14
(45)【発行日】2023-06-22
(54)【発明の名称】光学系及び光学系を用いてマスク欠陥を補正する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/02 20060101AFI20230615BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20230615BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20230615BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230615BHJP
【FI】
G02B21/02
G02B21/00
G02B21/06
B23K26/00 G
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021005970
(22)【出願日】2021-01-18
(62)【分割の表示】P 2019529689の分割
【原出願日】2017-08-08
(65)【公開番号】P2021076853
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】102016214695.5
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】519046797
【氏名又は名称】カール ツァイス エスエムエス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】ゼーセルベルク マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリエフ ウラディミル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルテ ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】シュテルン ウリ
(72)【発明者】
【氏名】コーエン トメル
(72)【発明者】
【氏名】グレイツァー エレツ
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0003740(US,A1)
【文献】特表2013-544377(JP,A)
【文献】特表2013-506306(JP,A)
【文献】特開2015-060202(JP,A)
【文献】特開2006-106337(JP,A)
【文献】特開2015-210470(JP,A)
【文献】特開昭61-248023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系(1;101;201;301;401;501;601;701)であって、
少なくとも第1のレンズ要素を含む第1のレンズ要素群(9;109;209;309;409;509;609;709)と、
ビームをフォーカス(35;135;235;335;435;535;635;735)上に集束させるように設計された集束ユニット(13;113;213;313;413;513;613;713)であって、
前記集束ユニット(13;113;213;313;413;513;613;713)は、焦点位置を前記光学系の光軸に沿って変えることができるように該光学系の該光軸に沿って動くことができるように配置され、
前記集束ユニットは、少なくとも第2のレンズ要素を含む第2のレンズ要素群(11;111;211;311;411;511;611;711)、及び結像レンズ(15;115;215;315;415;515;615;715)を含み、
前記結像レンズ(15;115;215;315;415;515;615;715)は、瞳平面(21;121;221;321;421;521;621;721)を更に含む、
集束ユニット(13;113;213;313;413;513;613;713)と、
前記フォーカスを前記光軸に対して横方向に変位させることができるように設計された走査ユニット(7;107;307;407;507;607;707)と、
前記光学系の光軸に沿って互いに異なる前記集束ユニット(13;113;213;313;413;513;613;713)の少なくとも2つの位置でRMS波面誤差が100mλよりも小さいように設計された波面マニピュレータ(5;105;205;305;405;505;605;705)であって、
前記波面マニピュレータ(5;105;205;305;405;505;605;705)は、前記結像レンズの前記瞳平面(21;121;221;321;421;521;621;721)に若しくは該結像レンズの該瞳平面に対して共役である平面に配置され、
又は、前記走査ユニットは、前記結像レンズの前記瞳平面に対して共役である平面に配置され、前記波面マニピュレータは、光方向に該走査ユニットの上流に配置される、
波面マニピュレータ(5;105;205;305;405;505;605;705)と、を含み、
前記第2のレンズ要素群(11;111;211;311;411;511;611;711)のフォーカスは、前記集束ユニットの前記少なくとも2つの位置で前記結像レンズ(15;115;215;315;415;515;615;715)の前記瞳平面(21;121;221;321;421;521;621;721)に位置することを特徴とし、
前記結像レンズ(15;115;215;315;415;515;615;715)と前記第2のレンズ要素群(11;111;211;311;411;511;611;711)との間の距離は固定されることを特徴とする
光学系(1;101;201;301;401;501;601;701)。
【請求項2】
前記走査ユニット(7;107)は、傾斜可能ミラーとして具現化される、請求項1記載の光学系。
【請求項3】
前記走査ユニット(307;407;507;607;707)は、互いに垂直な方向に前記焦点位置を変える2つの音響光学偏向器を含む、請求項1記載の光学系。
【請求項4】
前記波面マニピュレータ(5;105;305;405;505;605;705)は、前記第1のレンズ要素群のフォーカスに位置決めされる、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項5】
前記走査ユニット(7;107;307;407;507;607;707)は、前記第1のレンズ要素群のフォーカスに位置決めされる、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項6】
前記波面マニピュレータ(105;305;405;505;605;705)は、変形可能ミラーとして設計される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項7】
前記集束ユニット(13;113;213;313;413;513;613;713)は、サンプル(17;117;217;317;417;517;617;717)の点が前記第1のレンズ要素群と前記集束ユニットとの間にある像平面内の像点に結像されるように設計される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項8】
前記光学系(1;101;201;301;401;501;601;701)は、サンプル側でテレセントリックである、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項9】
光源は、照明光を生成し、ビームスプリッタ(23;323;423;523;623;723)は、該照明光の一部が観察デバイス(25;325;425;525;625;725)に供給されるように前記光学系に配置される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項10】
前記観察デバイス(325;425;525;625;725)は、前記波面マニピュレータ(5;105;205;305;405;505;605;705)によって設定された波面を検出するために波面センサ(327;427;527;627;727)として具現化される、請求項に記載の光学系。
【請求項11】
前記波面センサ(327;427;527;627;727)によって記録されたデータを基準波面と比較し、かつ該基準波面からの前記測定された波面の偏位から計算された補正を前記波面マニピュレータ(5;105;205;305;405;505;605;705)に伝達する制御ユニットを含む、請求項10に記載の光学系。
【請求項12】
パルス式レーザである光源を含む、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項13】
光を用いてフォトリソグラフィマスクの欠陥を補正する方法であって、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の光学系を与える段階と、
前記光学系の光軸に沿って前記集束ユニットを用いて前記フォトリソグラフィマスク内の第1の焦点位置を集束させる段階と、
RMS波面誤差が100mλよりも小さいように波面マニピュレータを用いて波面を設定する段階と、
前記フォトリソグラフィマスク内の前記第1の焦点位置に第1の不可逆的変化を導入することによって該マスクの第1の不良を補正する段階と、
を含む方法。
【請求項14】
前記光学系の光軸に沿って前記集束ユニットを用いて前記フォトリソグラフィマスク内の第2の焦点位置を集束させる段階と、
前記RMS波面誤差が100mλよりも小さいように波面マニピュレータを用いて波面を設定する段階と、
前記フォトリソグラフィマスク内の前記第2の焦点位置に第2の不可逆的変化を導入することによって該マスクの第2の不良を補正する段階と、
を含む、請求項13に記載のフォトリソグラフィマスクの欠陥を補正する方法。
【請求項15】
前記フォトリソグラフィマスクの一部分にわたって前記焦点位置を横方向に走査する段階を更に含む、請求項13又は請求項14に記載のフォトリソグラフィマスクの欠陥を補正する方法。
【請求項16】
波面センサを用いて波面を測定する段階を含む、請求項13から請求項15のいずれか1項に記載のフォトリソグラフィマスクの欠陥を補正する方法。
【請求項17】
前記測定された波面を基準波面と比較する段階と、
前記RMS波面誤差が低減されるような補正波面をこの比較から計算する段階と、
前記補正波面から前記波面マニピュレータのための新しい制御信号を設定する段階と、
前記制御信号を前記波面マニピュレータに送信する段階と、
を含む、請求項16に記載のフォトリソグラフィマスクの欠陥を補正する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロリソグラフィに使用されるような光学系及びマスク内の欠陥を補正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体業界において絶えず高まる集積密度の結果として、ナノインプリント技術のためのフォトリソグラフィマスク又はテンプレートは、益々小さい構造をウェーハ上の感光層、すなわち、フォトレジストの上に結像しなければならない。これらの要件を満たすために、フォトリソグラフィマスクに対する露光波長が電磁スペクトルの近紫外範囲から中紫外範囲を経て遠紫外範囲にシフトしている。現在、ウェーハ上のフォトレジストを露光するために193nmの波長が標準的に使用されている。その結果、高い分解能によるフォトリソグラフィマスクの製造が益々複雑になり、したがって、益々費用負担の大きいものにもなる。将来、フォトリソグラフィマスクは、電磁スペクトルの極紫外(EUV)波長範囲内の実質的により短い波長(約13.5nm)を使用することになる。
【0003】
フォトリソグラフィマスクは、伝達均一度、平坦度、純度、及び温度安定度に関する非常に厳しい要件を満たす必要がある。相応の収量でフォトリソグラフィマスクを生産することができるためには、生産工程の終了時にマスクの欠陥(defect)又は不良(fault)を補正することが必要である。
【0004】
ナノインプリントリソグラフィのためのフォトリソグラフィマスク及びテンプレートの欠陥を補正するためにレーザ光源からのフェムト秒光パルスを使用することができる。この目的に対して、非常に小さいフォーカス領域の上に集束させることによるレーザ光源を用いて、高い局所エネルギ密度がフォトリソグラフィマスクの透明材料内又はテンプレート内に生成され、これは、透明材料の局所溶融に至る。この局所溶融は、透明材料の又はテンプレート材料の密度の局所変動を誘導する。下記では、局所密度変動をピクセルとも呼ぶ。下記では、材料の上へのレーザビームの局所印加による局所密度変動の導入を透明材料内へのピクセルの書込と呼ぶ。
【0005】
高強度を有するフェムト秒光パルスを用いた透明基板内のピクセルの生成は、光パルスの光子と基板の電子との相互作用ゾーン内に局所非線形光学過程を誘導する。透明基板内への複数の特に非対称のピクセルの導入は、透明基板の面上に配置されたパターン要素の局所的に変化する変位をもたらす。更に、透明基板内へのピクセルの書込は、ピクセルが透明基板の光伝達率を局所的に修正することで基板に対する2次効果に至る。
【0006】
フォトリソグラフィマスクの透明材料は、通常は数ミリメートルの厚みを有する。一例として、6.35mm溶融シリカで生成された透明基板を含むマスクが使用される。ピクセルが透明基板内に書き込まれる深度に依存して異なる補正効果が出現する。したがって、この深度寸法におけるピクセルの位置を制御することができることが望ましい。しかし、望ましい深度に依存して、望ましいフォーカス領域と光源の間に透明基板の異なる部分が位置する。透明基板の屈折率は周囲と異なるので、フォーカス領域の光学品質を変える波面誤差が導入される。
【0007】
類似の問題が顕微鏡、特にレーザ走査顕微鏡の分野にも出現する。この場合に、検査されるサンプルは、サンプル担体(sample carrier)に位置する。ここでもまた、どの焦点位置(focal position)でも良好な品質で結像すべきである様々な焦点位置まで駆動することが必要である。これは、基準波面からの波面の偏位(deviation)が小さくなければならないことを意味する。
【0008】
US 4,953,962は、異なるカバースリップ厚みによって導入される波面誤差を補償することができる結像レンズを提案している。そこでは、2つの可動レンズ要素と最後のレンズ要素及びサンプル間の修正可能距離とが補償目的で使用される。
【0009】
US 7,733,564 B2は、焦点位置を変えるための波面変調器(WFM)を有する顕微鏡を説明している。WFMは、結像レンズの前面レンズ要素とサンプルの間の作動距離が固定されたままに留まるにも関わらずサンプル内の焦点位置を変えることを可能にする。WFMは、結像レンズと中間像平面の間に配置される。ここでは、WMFの目的は、フォーカスをサンプル内に生成することにあり、サンプル内のその位置は変えることができる。しかし、フォーカスが十分な品質を有する焦点位置の範囲は、数マイクロメートルに制限される。
【0010】
US 2016/0161729 A1は、サンプルの構造化された照明のためのLCOS要素を有する光走査顕微鏡を説明しており、この要素は、これに加えて収差を補正するのにかつ集束させるのに使用される。
【0011】
波面マニピュレータ(wavefront manipulators)を有する更に別の顕微鏡は、US 2005/0207003 A1、EP 2 498 116 A1、DE 11 2013 006T5、及びUS 2015/0362713 A1から公知である。
【0012】
更に別の用途は、ガラスの内部の構造が同様に修正されるビトログラフィの分野に見出される。更に別の用途は、透明ポリマー溶液が光誘導重合によって硬化させられる液体ポリマーからの3D印刷(「光学的接着(optical bonding)」)に見出される。ここでは、ポリマー溶液は、サンプルとして作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】US 4,953,962
【文献】US 7,733,564 B2
【文献】US 2016/0161729 A1
【文献】US 2005/0207003 A1
【文献】EP 2 498 116 A1
【文献】DE 11 2013 006T5
【文献】US 2015/0362713 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、サンプル内のフォーカス(focus)の位置が大きい範囲にわたって変更される時にフォーカス領域(focus region)の優れた光学品質を保証する光学系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様により、本発明は、光軸に対して横方向にフォーカスを変位させることができるように設計された走査ユニットと、少なくとも第1のレンズ要素を含む第1のレンズ要素群と、ビームをフォーカスの上に集束させるように設計され、光学系の光軸に沿って焦点位置を変えることができるように光学系の光軸に沿って可動に配置された集束ユニット(focusing unit)とを有する光学系を含む。集束ユニットは、次に、少なくとも第2のレンズ要素と結像レンズとを含む第2のレンズ要素群を含む。結像レンズは瞳平面(pupil plane)を含む。光学系は、互いに異なる集束ユニットの少なくとも2つの焦点位置でRMS波面誤差が100mλよりも小さいように、好ましくは20mλよりも小さいように設計された波面マニピュレータを含む。ここでは、波面マニピュレータは、結像レンズの瞳平面に、又は結像レンズの瞳平面に対して共役である平面に配置される。これに代えて、結像レンズの瞳平面に対して共役である平面には走査ユニットを配置することもでき、同時に波面マニピュレータを光方向に走査ユニットの上流に配置することができる。集束ユニットの両方の焦点位置では、第2のレンズ要素群のフォーカスは、結像レンズの瞳平面に位置する。すなわち、波面マニピュレータ又は走査ユニットのいずれも、集束ユニットの位置決め(positioning)とは無関係に結像レンズの瞳平面内に結像される。
【0016】
本出願では、瞳平面は、絞りの平面又は絞りの像の平面を意味すると理解される。絞りは、開口の境界を定める要素を意味すると理解される。ここでは、これは、個別の不透明構成要素又は例えばマウントのような光学要素の境界とすることができる。
【0017】
同様に、本出願での光軸は、光学系の各部分を通って直線にのみ延びる光軸であると同じく理解される。特に、折り返しミラーによる光軸の偏向は、光軸の方向を変えるが、光学設計に対して影響しないか又は軽微な影響のみを有する。
【0018】
透明基板内のフォーカスの光学品質は、基準波面からの波面の偏位によって説明することができる。ここでは、予め決められた理想的な波面を基準波面と呼ぶ。この基準波面は、球面又は他に非球面である場合がある。レーザ走査顕微鏡では球面基準波面が多くの場合に使用される。非点収差波面(astigmatic wavefronts)のような非球面波面は、フォトマスクの補正から公知である。光源は、波長λを有する照明光を提供する。多数の光源が公知である。有利には、レーザ光源を使用することができる。レーザ光源は、連続的に又はパルス方式で作動させることができる。
【0019】
基準波面からの波面の偏位は、RMS波面誤差、すなわち、基準波面からの偏位の二乗の正規化和の平方根によって定量化することができる。多くの場合に、このRMS波面誤差は、使用されるレーザ波長λの分率として指定される。したがって、例えば、1mλは、レーザ波長の千分の1に対応する。本出願に関して、フォーカスは、対応するRMS波面誤差が20mλよりも小さい場合に最高品質のものである。フォーカスは、20mλから100mλの範囲のRMS波面誤差に対して高い品質を有することになる。フォーカスは、100mλから200mλの範囲のRMS波面誤差に対して中程度の品質を有することになる。
【0020】
基準波面からの波面の偏位の物理的な原因は、透明材料の屈折率に見出すことができる。透明基板内で焦点位置が変わる時に、光軸の方向に透明基板の面からのフォーカスの距離の変化がある。したがって、光線は、異なる焦点位置の場合に透明基板内で異なる幾何学的経路を取る。例えば従来の顕微鏡での場合でのように、静止焦点位置に対する透明基板の移動によって焦点位置の変化がここで生成される場合に、光路の変化、すなわち、レーザ光源の波長での透明基板の屈折率と幾何学的経路の長さとの積の変化もある。
【0021】
一例として、透明材料が水である場合に、従来の波長の場合の屈折率は、約n≒1.33であると考えられる。溶融シリカで作られた物体の場合に、屈折率はn≒1.46であると考えられる。特に、2又は3以上の光子が瞬時に衝突しなければならない多光子過程に対して、十分な品質のフォーカスが必要である。
【0022】
透明基板の屈折率nが周囲媒体の屈折率に等しいか又は近い場合に、波面と基準波面の間の差は、焦点位置の変化の場合に変わらない。
【0023】
透明基板が平面板であり、かつ光軸上のフォーカスだけを考慮する場合に、異なるフォーカスの波面は、主として球面収差に起因して基準波面から偏位する。フォーカスが光軸上に位置せず、むしろそこから横方向にオフセットされる場合に、更に別の収差がこれに加えて発生する。基準波面からの波面の偏位の他の原因、例えば、平面板形態から偏位する幾何学的形態の結果として又は透明基板内の屈折率の不均一な分布の結果としての原因も可能である。波面マニピュレータの目的は、球面収差及び/又は他のソースからの他の収差を相殺する波面補正を導入することである。その結果、波面のRMSが100mλよりも小さい、好ましくは20mλよりも小さいフォーカスが、少なくとも2つの焦点位置で得られる。この波面補正は、異なる焦点位置では異なる場合がある。特に、それは、系の光軸に沿って及び同じく光軸に対して横方向に異なる場合がある。
【0024】
100mλよりも小さい、好ましくは20mλよりも小さいRMS波面誤差が達成されるように波面マニピュレータが波面を補正することができることを保証することができるために、波面マニピュレータ及び瞳平面は、波面マニピュレータの点上に入射する光線が瞳平面の厳密に1つの点上にも入射するように位置決めする(position)必要がある。この関連において、点は、純粋に数学的な幾何学用語としてではなく光学の文脈内で理解すべきである。波面マニピュレータのこの位置決めは、波面マニピュレータを結像レンズの瞳平面に直接に配置することによって達成することができる。更に別のオプションは、結像レンズの瞳平面に対して共役である平面に波面マニピュレータを配置すること、すなわち、この波面マニピュレータをこの瞳平面に結像することにある。
【0025】
結像レンズの瞳平面内への波面マニピュレータ又は走査ユニットの結像は、両方の焦点位置に関して与えられなければならない。言い換えれば、これらの要素は、集束ユニットの位置決めとは無関係にこの瞳平面内に結像される。
【0026】
基準波面からの波面の偏位及びしたがってフォーカス品質の悪化は、最良焦点位置からの距離の増大及び光学系の開口数NAの増加に伴って増大する。開口数、波長、及び異なる屈折率を有する使用材料に関して異なっている異なる光学系を比較することができるためには、RMS波面誤差によるフォーカス品質の評価に加えて幾何学的な広がりを系とは無関係に評価することができるパラメータが必要である。この目的に対して、本明細書では被写界深度に対するレイリー判断基準を使用する。これにより、レイリー長さ(Rayleigh length)dRが、dR=λn/(2NA2)として出現する。一例として、開口数NA=0.65、波長λ=532nm、及び屈折率n=1.52を有する光学系に対して、dR=0.96μmのレイリー長さが出現する。フォーカスが依然として良好な波面品質を有する範囲は、次に、考慮する光学系のレイリー長さの倍数として指定することができる。それによって異なる光学系を比較することが可能になる。
【0027】
したがって、本発明の更に別の態様は、500dRよりも大きい、好ましくは1000dRよりも大きい、特に好ましくは2200dRよりも大きいの集束範囲(focusing range)を有する光学系を提供することにある。良好な結像品質を同時に有するそのような大きい集束範囲は、集束ユニットが球面収差を補正する一方で焦点位置の位置決めを集束ユニットの移動によって設定することによって達成される。すなわち、特に、波面マニピュレータは、集束目的では使用されない。
【0028】
本発明の更に別の態様では、光学系は、フォーカスを光軸に対して横方向に変位させることができるように設計された走査ユニットを更に含む。そのような走査ユニットは、フォーカスをサンプル上の比較的大きい空間領域内で走査することを可能にする。一例として、この光学系がフォトリソグラフィマスクを検査するのに使用される場合に、マスクを横方向に機械的に移動することなくマスクの領域を走査することができる。これは、走査時間に対して有利な効果を有し、したがって、所与の単位時間内に検査することができるマスクの個数に対して有利な効果を有する。
【0029】
そのような走査ユニットは、多くの異なる方法で具現化することができる。傾斜可能ミラーは、1つの可能な実施形態とすることができる。そのようなミラーは、1次元走査を可能にするために1つの軸線の周りに傾斜可能にするか又は2次元走査を可能にするために互いに平行でない2つの軸線の周りに傾斜可能にすることができる。同様に、2次元走査を達成するために互いに平行でない軸線の周りに各々が傾斜可能な2つのミラーを光方向に連続して配置することができる。特に、傾斜軸が互いに対して垂直な場合が有利である。更に、2つのミラーのピボット点が互いに可能な限り密接する場合が有利である。2つのミラーのピボット点を互いの上に結像することも可能であり、かつ有利である。
【0030】
本発明の更に別の実施形態では、走査ユニットは、1又は2以上のAOD(音響光学偏向器(acousto-optic deflectors))を含む。2つのAODが使用される場合に、これらのAODを互いの上に結像することが同じく有利である。これらの構成要素では、これらを通過する音波を印加することによって光線の偏向角を変えることができる。これらの要素の利点は、高速応答時間及び望ましい偏向角を設定することを可能にする容易な制御性である。傾斜可能ミラーと同様に、AODは、1次元走査方向又は他に2次元で作動させることができる。同様に、2次元で作動するAODの代わりに1次元で作動するAODを2つ連続して配置することができる。2次元走査効果を達成するためには、個々のAODの2つの1次元走査方向が平行でないことが必要である。特に、走査方向が互いに対して垂直であることが有利である。
【0031】
本発明の更に別の態様では、光学系は光源を更に含み、波面マニピュレータは、光源と走査ユニットの間に配置される。この場合に、走査ユニットの場所又はその下流に絞りが配置される。したがって、波面マニピュレータはこの位置にあって瞳平面にはないが、それにも関わらず波面マニピュレータは平行ビーム経路にあり、したがって、波面マニピュレータ上の点を通って延びる全ての光線が結像レンズの瞳平面にある共通の点上にも入射するという重要な条件が満たされる。この条件は、波面マニピュレータが、光方向に走査ユニットの上流にある収束ビーム経路又は発散ビーム経路に配置される場合であっても満たすことができる。異なる横方向フォーカスは走査ユニットの位置決めによる以外は生成されないので、この構成では、走査ユニット自体が、結像レンズの瞳平面に対して共役である平面に配置されるならば十分である。したがって、走査ユニットは、結像レンズの瞳平面内に結像される。この結像は、波面マニピュレータが、集束ユニットの互いに異なる少なくとも2つの焦点位置でRMS波面誤差を100mλよりも小さくなるように、好ましくは20mλよりも小さくなるように補正することができることを保証することができる。
【0032】
本発明の更に別の態様では、波面マニピュレータは、結像レンズの瞳平面内に結像される。更に、本出願では、瞳平面が、特定の瞳平面に対して共役である全ての瞳平面を意味すること、及び視野平面が、それに対して共役である全ての視野平面を意味することも常に理解される。要約すると、更に別の好ましい位置が同じく存在する可能性がある場合であっても、波面マニピュレータを配置することができる3つの位置が好ましい。これらは、第1に結像レンズの瞳平面内への波面マニピュレータの配置、第2に結像レンズの瞳平面に対して共役である平面内への波面マニピュレータの配置、第3に走査ユニット自体が結像レンズの瞳平面に対して共役である平面に配置された状態での光方向に走査ユニットの上流への波面マニピュレータの配置である。瞳平面自体は、常に光学要素の間の空間に位置する必要はなく、レンズ要素に置くことができるので、結像レンズの瞳平面に対する共役平面内への配置は、容易にアクセス可能である点で有利である。更に、共役平面に波面マニピュレータを配置することは、この位置を固定したままに留めることができ、したがって、波面マニピュレータを集束ユニットの一部として移動する必要がないことで有利である。
【0033】
本発明の更に別の態様では、光学系は、変形可能ミラーとして設計された波面マニピュレータを含む。変形可能ミラーは、天体望遠鏡からマイクロリソグラフィ投影露光装置、更に測定用途までの多数の用途から公知である。変形可能ミラーの利点は、照明を受けないミラーの裏側から操作を行うことができることにある。その結果、ミラー上の全ての点にミラーの変形をもたらす要素を付加することができる。その結果、多数の補正波面を設定することができる。
【0034】
本発明の更に別の態様では、光学系は、サンプル上の点が像平面内の像点(image point)に結像されるように設計された集束ユニットを含む。すなわち、集束群から有限距離にあるサンプルの点は、同じく集束群から有限距離にある像点に結像される。
【0035】
本発明により、光学系は、少なくとも1つの第1のレンズ要素を含む第1のレンズ要素群(first lens-element group)を更に含み、集束ユニットは、少なくとも第2のレンズ要素を含む第2のレンズ要素群と結像レンズとを含み、第2のレンズ要素群のフォーカスは、結像レンズの瞳平面に位置する。更に、第1のレンズ要素群及び第2のレンズ要素群は、これらのレンズ要素群が一緒にケプラー系を形成するように設計することができる。その結果、結像レンズの瞳平面に対して共役である平面を形成することができる。このように第1のレンズ要素群及び第2のレンズ要素群はケプラー系を形成し、それによって波面マニピュレータ又は走査ユニットが結像レンズの瞳に結像される。第2のレンズ要素群は集束ユニットの一部であるが、第1のレンズ要素群は静止体の一部であり、すなわち、光学系の可動配置部品ではない結果として、波面マニピュレータは、結像レンズの瞳平面内に結像される。ここでは、第2のレンズ要素群のフォーカスは、集束ユニットの全ての位置に関して結像レンズの瞳平面に置かれる。更に、第1のレンズ要素群のフォーカスは、波面マニピュレータ上に置かれる。第1のレンズ要素群及び第2のレンズ要素群のこの配置の結果として、集束ユニットを移動することによってその結像特性を変えることなくケプラー系を延長又は短縮することができる。複数の瞳平面を有し、したがって、少なくとも1つの中間像も有する結像レンズを考えることができる。
【0036】
本発明の更に別の態様では、ケプラー系を有する走査ユニットは、集束ユニットの位置決めとは無関係に瞳平面内に結像される。この場合に、波面マニピュレータは、光方向に走査ユニットの上流に配置される。
【0037】
本発明の更に別の態様では、光学系は、サンプル側でテレセントリックであるように設計される。サンプル側でテレセントリックである光学系は、この場合に、サンプル平面、すなわち、フォーカスが生成される平面内の異なる点で光学系の光軸と平行に延びる主光線を有する光学系を意味すると理解される。そのような光学系は、サンプル内で互いに横方向に隣接する2つの点の基準波面からの波面の偏位が若干しか異ならない点で有利である。したがって、走査ユニットが像平面内の隣接点に集束する場合に、各フォーカスでの波面のそれぞれの未補正品質が非常に類似である。この場合に、100mλよりも小さい、好ましくは20mλよりも小さい基準波面からの波面のRMS偏位を取得するのに必要とされる波面マニピュレータによる波面の補正は、フォーカスの横方向位置と無関係である。したがって、走査ユニットによる走査中に補正を変える必要はない。
【0038】
サンプルの横方向の広がりに関して、サンプル全体が、走査ユニットを用いて到達することができる横方向空間領域よりもかなり大きい場合に、走査ユニットに加えてサンプルを配置するための位置決めユニットを使用するのが有利である。すなわち、例えば、マスク台を用いてマスクを0.1mmから数デシメートルまで又は数メートルまでにも至る経路に沿って配置することができる。次いで、この領域内に走査ユニットを用いて小さめの空間スケールでフォーカスを生成することができる。多くの場合に、そのような位置決めユニットを用いた配置は、走査ユニットを用いた調節よりも低速である。したがって、より高速な走査ユニットによって与えることができない位置決め範囲を必要とする場合にのみこの位置決めを実施することが有利である。
【0039】
本発明の更に別の態様では、本発明は、ビームスプリッタと観察デバイスを含み、ビームスプリッタは、光が観察デバイスに供給されるように配置される。サンプルの像を記録することができるように光学系に観察デバイスを追加することを有利とすることができる。光学系が顕微鏡、特にレーザ走査顕微鏡に使用される場合に、その使用に向けて像を観察するためのオプションが必須でさえある。それとは対照的に、装置がフォトリソグラフィに向けてマスクを処理するための装置である場合に、像の観察は必須ではないが、有利である場合がある。本出願では、観察デバイスは、複数の検出器を意味すると理解される。一例として、観察デバイスは、直接視覚観察のための対眼レンズ、又は他に例えばCCDカメラ又は波面センサのような画像センサとすることができる。特にレーザ走査顕微鏡の場合に、観察デバイスは累積式である場合もある。一例として、走査中に時間的に連続して記録された像点を組み合わせて全体像を形成することができる。この組合せはコンピュータ上で実施することができる。更に、複数の観察デバイスを設置することができる。
【0040】
したがって、観察デバイスは、本発明の更に別の態様では波面センサとして具現化される。波面センサの目的は、波面マニピュレータを用いて設定された波面を検出することである。波面センサの利点は、設定波面を検査することができる点である。この配置では、観察デバイスは、光源からの光を瞳平面内で観察するように機能する。
【0041】
本発明の更に別の態様では、本発明は、したがって、波面センサによって記録されたデータを基準波面と比較し、基準波面からの測定波面の偏位から計算された補正を波面マニピュレータに伝達する制御ユニットを更に含む。その結果、良好なフォーカス品質が得られるような波面センサの自動又は半自動の閉ループ制御を容易にする制御ループが与えられる。したがって、制御ユニットは、制御ユニットが波面マニピュレータの最初の調節後の波面センサのデータからRMS波面誤差が依然として予め決められたターゲット値、例えば、20mλ又は100mλよりも大きいことを計算した場合に、波面マニピュレータの特性を用いた補正制御変数を計算し、これらの変数を波面マニピュレータに伝達することができる。その後に、望ましいターゲット値が得られるまで波面マニピュレータの波面補正が変更される。波面マニピュレータのそのような特性は、多くの場合に正規化外乱に対する感度として指定される。一例として、従来のコンピュータ又は特殊電子構成要素を制御ユニットとして使用することができる。他のオプションも想定可能である。
【0042】
本発明の更に別の態様では、光学系の光源としてパルス式レーザが使用される。そのようなパルス式レーザは、非常に小さいフォーカス領域上に集束することによってフォトリソグラフィマスクの透明材料内に高い局所エネルギ密度を生成するのに特に適している。それにより、透明材料の局所溶融が引き起こされる。この局所溶融は、透明材料の密度の局所変動を誘導する。その結果、透明基板内に複数のピクセルを書き込むことができる。その結果、透明基板の面上に配置されたパターン要素の局所的に変化する変位をもたらすことができる。この技術は、レジストレーション補正として公知である。好ましくは、レジストレーション補正には非対称ピクセルが使用される。更に、周囲の材料と比較して修正された光伝達率を有するピクセルを透明材料内への透明基板内に書き込むことができる。この技術は、CD補正として公知である。好ましくは、CD補正には対称ピクセルが使用される。両方の方法は組み合わせることができる。
【0043】
本発明の更に別の態様は、フォトリソグラフィマスクの欠陥を補正する方法に関し、本方法は、
・上述の請求内容のいずれか1つに記載の光学系を与える段階と、
・集束ユニットを用いてフォトリソグラフィマスク内の光学系の光軸に沿った第1の焦点位置を集束させる段階と、
・RMS波面誤差が100mλよりも小さい、好ましくは20mλよりも小さいように波面マニピュレータを用いて波面を設定する段階と、
・フォトリソグラフィマスク内の第1の焦点位置に第1の不可逆的変化(irreversible change)を導入することによってマスクの第1の不良を補正する段階と、
を含む。
【0044】
書き込まれたピクセルの正確な効果は、マスクが光学系に配置される場合に光軸に沿った位置に依存する場合がある。したがって、補正目的のためのピクセルを基板内の第2の平面又は更に別の平面に導入することを有利とすることができる。この目的に対して、以下の段階:
・光学系の光軸に沿って集束ユニットを用いてフォトリソグラフィマスク内に第2の焦点位置を集束させる段階と、
・RMS波面誤差が100mλよりも小さい、好ましくは20mλよりも小さいように波面マニピュレータを用いて波面を設定する段階と、
・フォトリソグラフィマスク内の第2の焦点位置に第2の不可逆的変化を導入することによってマスクの第2の不良を補正する段階と、
を必要とする。
【0045】
フォトリソグラフィマスクを補正する目的に対して、焦点位置を横方向に迅速に変えることができることが有利である。特に、焦点位置の横方向走査が好適である。この目的に対して、走査ユニットを使用することができる。
【0046】
波面は、フォトリソグラフィマスクの欠陥が補正される時に波面センサを用いて測定することができる。この測定の利点は、波面マニピュレータの設定を検査することができる点である。この検査は、補正作動中に連続的に又は特別に選択されたモニタ時間に実施することができる。
【0047】
次に、フォトリソグラフィマスクの欠陥が補正される時に制御ループを生成することが可能であり、この制御ループは、測定波面を
・基準波面と比較する段階と、
・比較からRMS波面誤差が低減されるような補正波面を計算する段階と、
・補正波面から波面マニピュレータに対する新しい制御信号を設定する段階と、
・制御信号を波面マニピュレータに送信する段階と、
を用いて更に処理する。
【0048】
波面が補正された後に、波面を再度測定することができ、新しくより正確な補正を決定することができる。こうして制御ループが構成される。
【0049】
本発明の例示的実施形態を図を参照して下記でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】第1の実施形態の概略的なレンズ要素セクションを同様に表されたサンプルの中心に位置するフォーカスと共に示す図である。
図2】第1の実施形態での結像レンズの概略的な拡大レンズ要素セクションを同様に表されたサンプルの中心に位置するフォーカスと共に示す図である。
図3】5つの異なる焦点位置に対応する第1の実施形態の集束群の5つの異なる設定を示す図である。
図4】波面マニピュレータの半径方向座標に沿った5つの焦点位置に関する波面マニピュレータの光路長の変化を左手の列に示し、第1の実施形態の同じ5つの焦点位置での関連のRMS波面誤差を右手の列に示す図である。
図5】変形可能ミラーが波面マニピュレータとして使用される第2の実施形態の概略的なレンズ要素セクションを示す図である。
図6】波面マニピュレータが結像レンズの瞳平面に配置された第3の実施形態の概略的なレンズ要素セクションを示す図である。
図7】波面マニピュレータが結像レンズの瞳平面に対して共役である平面に配置され、光学系が偏光ビームスプリッタを含む第4の実施形態の概略的なレンズ要素セクションを示す図である。
図8】光学系が2つのAODと観察デバイスとを含む第5の実施形態の概略的なレンズ要素セクションを示す図である。
図9】変形可能ミラーの半径方向座標に沿った5つの焦点位置に関するこのミラーの変形を左手の列に示し、第5の実施形態の同じ5つの焦点位置での関連のRMS波面誤差を右手の列に示す図である。
図10】第6の実施形態での概略的なレンズ要素セクションを示す図である。
図11】第7の実施形態での概略的なレンズ要素セクションを示す図である。
図12】第8の実施形態での概略的なレンズ要素セクションを示す図である。
図13】変形可能ミラーの半径方向座標に沿った5つの焦点位置に関するこのミラーの変形を左手の列に示し、第8の実施形態の同じ5つの焦点位置での関連のRMS波面誤差を右手の列に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、本発明の第1の例示的実施形態を概略図に示している。この場合のフォーカスの品質は、球面基準波面に関連する。光学系1は、0.4という開口数(NA)を有する。サンプル17は、n=1.461という屈折率を有する。光源は、λ=532nmの波長を有する。したがって、この光学系1ではdR=2.43μmのレイリー長さがもたらされる。光学系1に関する光学データを表1に要約している。この表では、材料NF2、NBK7、NSF5、NLASF44、NPK51、及びNKZFS4はSchottから市販のガラスであり、SNBH51はOharaからのガラスであり、これらのガラスの屈折率は当業者には公知である。更に、これらのガラスのカタログは、例えば、Code V又はOSLOのような市販の光学設計プログラム内に収められている。
【0052】
光学系1は、フォーカス35上に光線を集束させるように設計され、焦点位置を光学系の光軸に沿って変えることができるようにこの光軸に沿って可動な方式で配置された集束ユニット13を含む。ここでは、集束ユニット13は、瞳平面21を有する結像レンズ15を含む。瞳平面21は絞り19の像として出現する。この実施形態では、絞り19は、2D走査ミラー7上に設けられる。更に、光学系は、集束ユニット13の互いに異なる少なくとも2つの焦点位置で波面誤差のRMSが100mλよりも小さい、好ましくは20mλよりも小さいように設計された波面マニピュレータ5を含む。波面マニピュレータ5と集束ユニット13の瞳平面21とは、互いに異なる少なくとも2つの焦点位置に関して波面マニピュレータ5の同じ点上に入射する光線が瞳平面21内の共通の点上に入射するように互いに対して配置される。
【0053】
光学系1は第1のレンズ要素群9を更に含み、集束ユニット13は、第2のレンズ要素群11と結像レンズ15とを含む。この例示的実施形態では、この第1のレンズ要素群9は、接合部材として具現化された2つのレンズ要素から構成される。第1のレンズ要素群9の焦点距離(focal length)はf1=200.4mmである。第2のレンズ要素群11も、接合部材として同様に具現化され、f2=80.1mmの焦点距離を有する。ビーム経路は、第1のレンズ要素群9のレンズ要素と第2のレンズ要素群11のレンズ要素との間にある折り返しミラー31によって折り返される。通常そのような折り返しミラー31は、設置空間、すなわち、光学系1の幾何学的寸法に関する要件を満たすために導入される。通常これらの折り返しミラー31は、いかなる更に別の光学機能も持たない平面ミラーである。当業者には、要件に依存してそのような視野ミラーを追加又は除去することができることが公知である。
【0054】
焦点距離flens=8.09mmを有するテレセントリック結像レンズ15が、光方向に第2のレンズ要素群11の下流に配置される。結像レンズ15は、サンプル側でテレセントリックであり、すなわち、結像レンズ15の波面マニピュレータ側の瞳は、結像レンズ15の後側焦点面(rear focal plane)に等しい。したがって、光学系1全体は、サンプル側でテレセントリックであるように設計される。結像レンズ15の瞳平面21はアクセス不能であり、結像レンズ15のレンズ要素に位置する。この例では、集束ユニット13内には第2のレンズ要素群11及び結像レンズ15以外に更に別の光学要素は存在しない。
【0055】
第2のレンズ要素群11のフォーカスは、結像レンズ15の瞳平面21に位置する。結像レンズ15と第2のレンズ要素群11は、光学系1の光軸と平行に可動であるプラットフォーム上に一緒に配置される。それにより、結像レンズ15と第2のレンズ要素群11とを含む集束ユニット13が形成される。検査されるサンプル17を同じく例示しており、サンプル17は、結像レンズ15に対面する側に平面を有する。集束ユニット13を光学系1の光軸と平行に移動することにより、サンプル17内の焦点位置を同じく光軸と平行な方式で変えることができる。したがって、集束ユニット13は、結像レンズ15から有限距離に位置するサンプルの点が第2の折り返しミラー31と集束ユニット13の間にある像平面内の像点に結像されるように設計される。したがって、像平面は、集束ユニット13から有限距離に位置する。
【0056】
(表1)
【0057】
横方向、すなわち、この場合の光軸に対して垂直な平面での焦点位置の変化は、走査ユニット7によってもたらされる。この例示的実施形態では、走査ユニット7は、2つの非平行軸に傾斜可能なミラーとして具現化される。これらの非平行傾斜軸の交点を2D走査ミラーのピボット点と呼ぶ。2D走査ミラーは、そのピボット点が第1のレンズ要素群のフォーカスに位置するように配置される。したがって、2D走査ミラーの中心から始まる光線は、第1のレンズ要素群と第2のレンズ要素群11の間にある領域内で光軸と平行に延びることになる。これらの光線は、第2のレンズ要素群11によって偏向され、集束ユニット13の瞳21上に結像される。その結果、2D走査ミラーのピボット点は、集束ユニット13の瞳21に結像される。集束ユニット13が移動される場合に集束ユニット13の瞳21内への2D走査ミラーのピボット点のこの結像も達成されることが本発明の基本的な特質である。
【0058】
集束ユニット13の要素は、2D走査ミラーから始まる光ビームが口径食を受けない程十分に大きいものであるように選択しなければならない。集束ユニット13の瞳21の直径Dpupilに対して重要な条件が出現する。DWFMが、照明光によって照明される波面マニピュレータ5の円形領域の直径を表し、f1及びf2が、それぞれ第1のレンズ要素群9及び第2のレンズ要素群11の焦点距離を表す場合に、以下の関係式が満たされるように変数を選択しなければならない。
【数1】
【0059】
この例示的実施形態では、波面マニピュレータ5は透過性要素として具現化され、2D走査ミラーのサンプル17から遠い側に隣接して配置される。そのような透過性波面マニピュレータ5は、液晶に基づく空間的光照射野変調器としての標準的な光学要素として市販されている。
【0060】
したがって、ビーム経路は、下記で概説するように光学系1を通って延びる。光源からの照明光はビームスプリッタ23によって反射され、波面マニピュレータ5を通過し、2D走査ミラー7によって反射され、第1のレンズ要素群9及び第2のレンズ要素群11によって結像レンズ15の瞳21に結像され、それによって最終的にサンプル17内でz=3.175mmの深度の場所にフォーカスが生成される。
【0061】
図1に示す光学系1は、集束ユニット13に対面するサンプルの側の平面の下の3.175mmの深度の場所に球面基準波面に対して良好な品質を有するフォーカスを生成する。したがって、結像レンズは、事実上収差なく3.175mmの深度の場所にあるサンプル点を無限遠に結像するように設計される。したがって、この場合に、波面マニピュレータ5はその中立状態の近くにあり、かつ波面の形態に対して小さい影響のみを有する。集束ユニット13を移動することによってサンプル17の平面からの異なる距離にある異なる焦点位置が設定された場合に、波面マニピュレータ5は、ここでもまたRMS波面誤差が100mλよりも小さい、好ましくは20mλよりも小さいように波面を補正することになる。その結果、波面マニピュレータはもはや中立状態にない。
【0062】
サンプル17内に埋め込まれた小さい物体は、散乱効果又は蛍光効果によって2次光源として機能し、かつ照明光の一部を顕微鏡の方向に伝達して戻す。この観察光は、光学系1を逆の経路に沿って、すなわち、サンプル17から波面マニピュレータ5の方向に通過する。したがって、結像レンズ15、第2のレンズ要素群11、第1のレンズ要素群9、及び波面マニピュレータ5は、2回通過される。観察光の一部は、それが少なくとも部分的にビームスプリッタ面を通って伝達されるように設計されたビームスプリッタ23の場所にある観察ユニット25に供給される。この例示的実施形態では、中間像を生成する更に別のレンズ要素群が続く。中間像の位置にピンホールを取り付けることができ、例えば、フォトダイオード、画像センサ、対眼鏡、及び/又は別の検出装置の形態にある光検出ユニットをそれに続けることができる。
【0063】
図2は、結像レンズ15とサンプル17とを含む光学系1の部分を拡大形式に示している。2D走査ミラー7の異なる走査角に属する3つの異なる光ビームの光線が、サンプル17内の同じ深度の場所で異なるフォーカスを形成する。結像レンズ内に入射する光線の延長線に沿った瞳平面21の位置が示されている。この例での瞳平面21が結像レンズ15の最初のレンズ要素に位置することを確認することができる。
【0064】
集束ユニット13を移動することによって光軸に沿った焦点位置、すなわち、サンプル17内のフォーカスの深度を選択することができる。ここでは、集束ユニット13は、光軸に沿って変位される。集束ユニット13のみが可動配置を有する。光学系1の全ての他の構成要素は、光軸と平行な固定位置に留まることができる。特に、サンプル及び第1のレンズ要素群9を光軸と平行に移動する必要はない。しかし、サンプル17は、依然としてサンプル台を用いて横方向に変位させることができる。有利なことに、この場合に、サンプル台を用いてサンプル17を光軸と平行に移動する必要も、光学系1が内部に設けられた装置の部分を移動する必要も全くない。
【0065】
図3は、光学系1の光軸に沿って異なる焦点位置に対する集束ユニット13の位置を示している。z=0mmからz=6.35mmの範囲にある5つの焦点位置が表されている。各焦点位置には、RMS波面誤差が可能な最大限度まで最小にされるような波面マニピュレータ5の特定の設定が関連付けられる。集束ユニット13の幾何学的変位によって光路差(OPD)が導入される。光学系はz=3.75mmの焦点位置に向けて設計されるので、この焦点位置では考慮する全ての光線に関してOPDは非常に小さい。これは、波面マニピュレータ5によって導入されたOPDを照明光の主光線に対する光線位置に依存してプロットした図4の左手の列にあるグラフ内で確認することができる。図4の右手の列は、波面マニピュレータ5による横方向焦点位置に対する補正の後に得られたRMS波面誤差をプロットしている。
【0066】
0mm<z<6.35mmの焦点位置に関する最高のフォーカス品質は、光軸からのフォーカスの100μmの横方向距離に対する20mλよりも小さいRMS値によって得られることを見ることができる。この値は、2600dRの被写界深度範囲に対応する。100mλよりも小さいRMS波面誤差を有するフォーカスの品質が用途に対して十分である場合に、光軸からのフォーカスの横方向距離は140μmよりも大きいことさえ可能である。第2のレンズ要素群と結像レンズとは固定された相互間距離を有するので、結像レンズの瞳平面内の第2のレンズ要素群のフォーカスは、集束ユニットの変位とは無関係なままに留まる。したがって、走査ユニットは、集束群の全ての位置に関して結像レンズの瞳平面内に結像される。
【0067】
図5は、本発明の第2の実施形態を示している。この実施形態は、ここでは、波面マニピュレータ105が適応変形可能ミラー(DFM)として具現化されることにおいてのみ第1の実施形態と異なる。可能な焦点位置及びそれぞれのフォーカス品質は、第1の実施形態と区別がつかない。DFMは傾斜され、光学系101の光軸を屈曲させる。構造に基づいて、DFMの幾何学面は円形又は矩形とすることができる。しかし、DFM上の光のフットプリントは、傾斜したDFM105上での円形照明の場合は楕円形である。DFM105の面は、光ビームのOPDを変える、したがって、フォーカスでの波面を変えるために変形することができる。変形可能ミラー105は、光軸に対して45°だけ傾斜され、必要な変形もフットプリントの中心に関してもはや回転対称ではない。
【0068】
図6は、本発明の第3の実施形態を概略図に示している。ここでは、装置の目的は、サンプル内にフォーカスを生成することのみである。したがって、ここでは、観察デバイスを必要としない。有利なことに、そのような構成は、例えば、いわゆる3Dプリンタに対して使用することができる。
【0069】
レーザビームは、光源内で生成され、2D走査ユニットによって反射される。これらは図6の左手側に配置されるが、図には示していない。走査ユニットは、ビームを2次元で案内するために2つの1D走査ミラー又は2つの音響光学偏向器(AOD)で構成することができる。2つの1D走査デバイスが使用される場合に、両方の1D走査デバイスのピボット点は、例えばケプラー系又はオフナーリレーのようなリレー系を用いて互いの上に結像することができる。
【0070】
走査ユニットに加えて、この実施形態での光学系201は、少なくとも1つのレンズ要素を含む第1のレンズ要素群209と、少なくとも1つのレンズ要素を含む第2のレンズ要素群211と、透過性波面マニピュレータ205と、テレセントリック結像レンズ215とで構成される。結像レンズ215は、アクセス可能な瞳平面221を含む。透過性波面マニピュレータ205は、結像レンズ215の瞳平面221の近く又はその中に配置される。波面マニピュレータ205の上には絞り219が直接に配置される。したがって、絞り219は、開口ビームの境界を形成し、瞳平面221の位置を定める。第2のレンズ要素群211、波面マニピュレータ205、及び結像レンズ215は、これらを光学系201の光軸に沿って一緒に移動することができるように配置される。したがって、結像レンズ215と第2のレンズ要素群211と波面マニピュレータ205とは一緒に集束ユニット213を形成する。したがって、第1のレンズ要素群209の焦点面に配置された走査ユニットのピボット点は、結像レンズ215の瞳平面221内の点の上に結像され、したがって、波面変調器205上に結像される。これは、集束ユニット213が光軸に沿って変位した場合であっても当て嵌まる。集束ユニット213を移動することによってサンプル217内の焦点位置を調節することができる。波面マニピュレータ205を用いて波面を補正することによって最高品質のフォーカスをサンプル217内部の異なる焦点位置で生成することができる。
【0071】
図7は、本発明の第4の実施形態を概略図に示している。一例として、そのような装置は、サンプル317内にフォーカスを生成するのに適している。この場合に、サンプル317はフォトリソグラフィのためのフォトマスクである。パルス式レーザを用いてマスクの透明材料を照射することにより、透明材料を不可逆的に変えることができる。多くの場合に、フォトリソグラフィマスクの透明材料は溶融シリカである。透明基板内への複数の非対称ピクセルの導入は、透明基板の面上に配置されたパターン要素の局所的に変化する変位をもたらす。その結果、マスクのいわゆるレジストレーションを局所的に補正することができる。更に、透明基板内へのピクセルの書込によってピクセルが透明基板の光伝達率を局所的に修正するので、基板に対する2次効果が引き起こされる。その結果、マスク構造の臨界寸法(CD)の結像を補正することができる。両方の補正は、一緒に実施することができる。光学系301に関する光学データを表2に要約している。この表では、材料NBK7、NSF5、NLASF44、NPK51、及びNKZFS4は、Schottから市販のガラスであり、SNBH51は、Oharaからのガラスであり、これらのガラスの屈折率は当業者には公知である。更に、これらのガラスのカタログは、例えば、Code V又はOSLOのような市販の光学設計プログラム内に収められている。
【0072】
(表2)

【0073】
可能な限り点状であるピクセルだけではなく、細長い広がりを有する非対称ピクセルもフォトリソグラフィマスクのレジストレーションを補正するのに有利であることは公知である。そのようなピクセル形態は、非点収差フォーカスによって生成することができる。すなわち、この場合に、基準波面は球面ではなく、予め決められた非点収差歪曲を有する。非点収差フォーカスの生成は、波面マニピュレータ305によって行うことができる。好適なことに、必要な波面修正は、例えば、いわゆるフリンジ正規化でのゼルニケ多項式のような2次元基底関数によって説明することができる。非点収差フォーカスの軸線、すなわち、空間でのその位置は、波面マニピュレータによって設定された適切に予め決められた波面によって予め決めることができる。これは、可動光学構成要素なしでフォーカスの位置合わせが可能である点で有利である。
【0074】
第4の実施形態での光学系301は、光線をフォーカスの上に集束させるように設計されて焦点位置を光学系301の光軸に沿って変えることができるように光学系301の光軸に沿って可動な方式で配置された集束ユニット313を含む。ここでは、集束ユニット313は瞳平面321を含む。瞳平面321は絞り319の像として出現する。更に、光学系301は、集束ユニット313の互いに異なる少なくとも2つの焦点位置で波面誤差のRMSが100mλよりも小さい、好ましくは20mλよりも小さいように設計された波面マニピュレータ305を含む。この実施形態では、絞り319は、波面マニピュレータ305の上又はその直ぐ上流に設けられる。波面マニピュレータ305と結像レンズ315の瞳平面321とは、互いに異なる少なくとも2つの焦点位置に関して波面マニピュレータ305の同じ点上に入射する光線が瞳平面321内の共通の点上に入射するように互いに対して配置される。
【0075】
光学系301は、第1のレンズ要素群309を更に含む。集束ユニット313は、第2のレンズ要素群311と結像レンズ315を含み、第2のレンズ要素群311のフォーカスは、結像レンズ315の瞳平面321に位置する。
【0076】
照明は、パルス式レーザによってもたらされる。照明光は直線偏光される。例えば、3mmのビーム直径を有するレーザビームが、2D走査ユニット307を通過する。走査ユニット307は、ビームを2次元で案内するために2つの音響光学偏向器(AOD)から構成される。光が偏向される2つのAODの軸線は、互いに対して垂直である。利用可能な走査角度は、それぞれのAODに印加される超音波周波数に依存する。AODの最大走査角度は約1°に制限される。f=25mm及びf=125mmの焦点距離をそれぞれ有する2つのレンズ要素で作られたケプラー系が、AODの間の点を波面センサ上に結像する。更に、ケプラー系は、平行照明光の直径を3mmから15mmに5倍だけ拡大する。
【0077】
ケプラー系と第1のレンズ要素群309との間には、偏光ビームスプリッタ(PBS)323と、照明光の直線偏光の方向に対して45°だけ回転した軸線を有するλ/4板329とが存在する。照明ビームの偏光が選択され、入射ビームがPBS323によって反射されるように偏光ビームスプリッタ323が設計される。1回目の通過後に、λ/4板329は直線偏光光を回転偏光光に変換する。次いで、光は、変形可能ミラー305として具現化された波面マニピュレータ305上に入射する。変形可能ミラー305での反射の後に、光はλ/4板329を更に1回通り、直線偏光光に再度変換される。この時点で偏光方向は元の偏光方向に対して垂直であり、したがって、光は、偏光ビームスプリッタ323を今度は透過的に通過する。
【0078】
DFM305は、第1のレンズ要素群309の焦点面に配置される。第2のレンズ要素群311のフォーカスは、結像レンズ315の瞳平面321に位置する。結像レンズ315の瞳平面321はアクセス不能である。これは、波面マニピュレータ305が結像レンズ315の瞳の共役平面に配置されることを意味する。したがって、DFM305の面形態の変化は、光波長(OPD)の2倍の変化をもたらし、したがって、波面の2倍の変化ももたらす。第2のレンズ要素群と結像レンズは、固定された相互間距離を有するので、結像レンズの瞳平面内の第2のレンズ要素群のフォーカスは、集束ユニットの変位とは無関係なままに留まる。したがって、波面マニピュレータは、集束群の全ての位置に関して結像レンズの瞳平面内に結像される。
【0079】
第2のレンズ要素群311と結像レンズ315の間のビーム経路には、更に別のビームスプリッタ323が配置される。ビームスプリッタ323は、照明光の一部がビームスプリッタ面によって反射され、照明光の一部が観察ユニット325に供給されるように設計される。ビームスプリッタ層の適切な設計によって照明光の予め決められた部分を観察ユニット325に供給することができる。多くの場合に、僅かな部分のみ、例えば、1%、5%、又は10%が選択される。この例示的実施形態では、この観察デバイス325は、波面マニピュレータ305によって設定された波面を検出するための波面センサ327として具現化される。波面センサ327は、結像レンズ315の瞳平面321内の波面を測定するのに使用される。波面センサ327の入口窓は、第2のレンズ要素群311の焦点面に配置される。波面センサ327は、波面を特徴付けるのに適するデータを測定する。制御ユニット(この図には示していない)が、波面センサ327によって記録されたデータを処理する。この処理は、基準波面と比較する段階と、この比較から補正波面を計算する段階と、補正波面から波面マニピュレータ305に対する新しい制御信号を設定する段階と、制御信号を波面マニピュレータ305に送信する段階とを含む。波面が補正された後に、波面を再度測定することができ、新しい精緻な補正を決定することができる。こうして制御ループが構成される。
【0080】
結像レンズ315と観察デバイス325と第2のレンズ要素群311とは、光学系の光軸と平行に可動であるプラットフォーム上に一緒に配置される。それにより、結像レンズ315と観察デバイス325と第2のレンズ要素群311とを含む集束ユニット313が形成される。検査されるサンプル317も同じく例示しており、サンプル317は、結像レンズ315に対面する側に平面を有する。集束ユニット313を光学系301の光軸と平行に移動することにより、サンプル317内の焦点位置は、同じく光軸と平行な方式で変えることができる。
【0081】
任意的に、集束ユニット313は、更に別の要素を含むことができる。設置空間の制限を満たすために又は光学フィルタに向けて更に別のλ/2板又はλ/4板、偏向ミラーを取り付ける必要がある場合がある。λ/4板又はλ/2板は、比較的大きいリターデーションを有することができる。複数の波長のリターデーションは、垂直通過の範囲では偏光光学特性に対して効果を持たないので、高次の要素を市販で入手することができる。ここでは、次数は、波長の整数倍数によって指定される。高次の波長板は損傷にそれ程影響されず、より費用効果的に生産することができる点で有利である。欠点は、偏光光学効果の高めの角度依存性にある。
【0082】
この実施形態では、結像レンズ315はサンプル側でテレセントリック実施形態を有する。したがって、サンプル317の結像レンズ315に対面する平面側から同じ距離に位置するが、異なる横方向位置を有する焦点位置は、事実上同じ波面誤差を有する。したがって、波面マニピュレータ305によって設定する必要がある必要補正波面は、光学系の光軸と平行な集束ユニット313の位置にしか実質的に依存しない。これは、走査ユニットを用いた横方向走査中に波面補正を変える必要はない点で有利である。その結果、フォトリソグラフィマスクに対するより効率的かつより安定した高速補正法を達成することができる。
【0083】
フォトマスクの横方向の広がりは、走査ユニット307によって達成することができる焦点位置の横方向変位と比較して大きい。フォトマスクの透明材料内のいずれかの位置にフォーカスを生成するために、フォトマスクは横方向位置決めユニット(この図には示していない)に付加される。それによってマスク317の高速で正確な横方向配置が可能になる。更に、サンプルが位置決めユニットによって横方向に移動される間にフォトマスクの補正を実施することができる。これは、フォーカスが透明材料内の異なる焦点位置に生成される間に、サンプルが光学系に対する速度v≠0m/sを有することを意味する。この移動中のピクセル書込の結果として、フォトマスク317を補正するのに短い時間しか必要とされない。
【0084】
図8は、本発明の第5の実施形態を概略図に示している。第5の実施形態によるそのような装置は、サンプル内にフォーカスを生成するのに適している。この場合に、サンプルは、フォトリソグラフィのためのフォトマスク417である。装置は、フォトリソグラフィのためのマスクをその透明材料内の不可逆的変化を用いて補正するために使用することができる。照明は、パルス式レーザによってもたらされる。照明光は、直線偏光される。基本構造は、第4の実施形態の構造と同様である。
【0085】
第5の実施形態での光学系401は、光線をフォーカスの上に集束させるように設計されて焦点位置を光学系401の光軸に沿って変えることができるように光学系401の光軸に沿って可動な方式で配置された集束ユニット413を含む。ここでは、集束ユニット413は瞳平面421を含む。後者は、絞り419の像として出現する。更に、光学系401は、集束ユニット413の互いに異なる少なくとも2つの焦点位置で波面誤差のRMSが100mλよりも小さい、好ましくは20mλよりも小さいように設計された波面マニピュレータ405を含む。この実施形態では、絞り419は、波面マニピュレータ405の上又はその直ぐ上流に設けられる。波面マニピュレータ405と結像レンズ415の瞳平面421とは、互いに異なる少なくとも2つの焦点位置に関して波面マニピュレータ405の同じ点上に入射する光線が瞳平面421内の共通の点上に入射するように互いに対して配置される。
【0086】
光学系401は、第1のレンズ要素群409を更に含む。集束ユニット413は、第2のレンズ要素群411と結像レンズ415を含み、第2のレンズ要素群411のフォーカスは、結像レンズ415の瞳平面421に位置する。第2のレンズ要素群と結像レンズは、固定された相互間距離を有するので、結像レンズの瞳平面内の第2のレンズ要素群のフォーカスは、集束ユニットの変位とは無関係なままに留まる。したがって、波面マニピュレータは、集束群の全ての位置に関して結像レンズの瞳平面内に結像される。
【0087】
照明は、パルス式レーザによってもたらされる。照明光は、直線偏光される。例えば、3mmのビーム直径を有するレーザビームが、2D走査ユニット407を通過する。走査ユニット407は、ビームを2次元で案内するために2つの音響光学偏向器(AOD)から構成される。光が偏向される2つのAODの軸線は互いに対して垂直である。ケプラー系を形成する2つの更に別のレンズ要素群が、2D走査ユニットと波面マニピュレータ405の間に配置される。この例示的実施形態では、これらのレンズ要素群は、60mm及び150mmの焦点距離を有する。これらのレンズ要素群は、走査ユニット407のピボット点を波面マニピュレータ405上に結像するように機能する。この例では、波面マニピュレータ405の上又はその近くに絞り419が配置される。結像レンズ415の瞳平面421は、この絞りの像によって設定される。
【0088】
第4の例示的実施形態で上述したような第2のレンズ要素群411と結像レンズ415の間に配置された第1の観察ユニット425に加えて、この実施形態は、更に別の観察ユニット425を含む。ビーム経路にダイクロイックビームスプリッタ423が配置され、このビームスプリッタは、観察光がビームスプリッタ面によって反射され、観察光の一部が更に別の観察ユニット425に供給されるように設計される。ここでは、この更に別の観察ユニット425は、光学要素が上流に配置された画像センサとして具現化される。ダイクロイックビームスプリッタ423は、532nmの波長を有する光を透過させ、455nm±10nmの波長を有する光を反射するように設計される。したがって、この更に別の観察ユニット425を作動させるための更に別の光源が必要である。ピクセルを書き込むことによってフォトマスクを処理するために532nmの波長を有するパルス式レーザが使用され、更に別の観察ユニット425を作動させるために455nm±10nmの波長を有する更に別の光源が使用される。この更に別の照明光源は、図8には示していない。更に別の光源は、サンプル417の上方、下方、又は隣に配置することができる。更に別の観察デバイス425の画像センサは、横方向位置決めユニットの正確な位置をモニタするために、及び/又は位置決めユニットを制御するための制御ループに位置決めユニットの位置データを使用するために使用することができる。更に、画像センサの画像を用いてフォトマスク417の透明材料の処理を観察することができる。これらの画像は、マスクの補正の視覚制御のために、したがって、補正品質を保証するために使用することができる。
【0089】
左手の列の図では、図9は、この場合は変形可能ミラー(DFM)として具現化された波面マニピュレータ405のサグ(sag)を示している。変形可能ミラー上の横方向の半径方向位置をx軸上に指定している。各個々の図は、光軸と平行な焦点位置に対応する。ここでは、フォーカスの深度は、サンプル417の結像レンズ415に対面する平面からの距離として測定したものである。図は、0mm、2.5mm、5mm、7.5mm、及び10mmの深度での焦点位置に関して示したものである。波面マニピュレータ405のサグは、図のy軸上に示している。波面マニピュレータ405による補正の後に得られたRMS波面誤差は、光軸と平行な同じ焦点位置(深度)に関して図9の右手の列に横方向焦点位置に依存してプロットしている。
【0090】
第5の実施形態の光学系401は、dR=2.43μmのレイリーパラメータを有する。被写界深度範囲は、約4100・dRである。120mmまでの横方向焦点位置に対して20mλよりも小さいRMS波面誤差が得られる。RMS波面誤差は20mλの値よりも大きいが、120μmから180μmまでの横方向焦点位置に関する又はそれよりも大きい横方向焦点位置に関しても100mλを有意に下回ったままに留まる。
【0091】
図10は、本発明の第6の実施形態を概略図に示している。第6の実施形態での光学系501は、光線をフォーカス535上に集束させるように設計されて焦点位置を光学系501の光軸に沿って変えることができるように光学系501の光軸に沿って可動な方式で配置された集束ユニット513を含む。ここでは、集束ユニット513は瞳平面521を含む。後者は、絞り519の像として出現する。更に、光学系501は、集束ユニット513の互いに異なる少なくとも2つの焦点位置で波面誤差のRMSが100mλよりも小さい、好ましくは20mλよりも小さいように設計された波面マニピュレータ505を含む。この実施形態では、絞り519は、波面マニピュレータ505の上又はその直ぐ上流に設けられる。波面マニピュレータ505と結像レンズ513の瞳平面521とは、互いに異なる少なくとも2つの焦点位置に関して波面マニピュレータ505の同じ点上に入射する光線が瞳平面521内の共通の点上に入射するように互いに対して配置される。光学系501は、第1のレンズ要素群509を更に含む。集束ユニット513は、第2のレンズ要素群511と結像レンズ515を含み、第2のレンズ要素群511のフォーカスは、結像レンズ515の瞳平面521に位置する。
【0092】
走査ユニット507は、連続して配置された2つのAODを含む。波面マニピュレータ505は、変形可能ミラーとして具現化される。本発明の第4の実施形態及び第5の実施形態とは対照的に、光源によって波面マニピュレータ505の面上に放射された光ビームの平均入射角は0°とは有意に異なる。これは、波面マニピュレータ505の面法線が、反射前の光学系501の光軸、及び反射後の光学系の光軸のいずれとも一致しないことを意味する。これは、ビームスプリッタ及びλ/4板のいずれも使用する必要がない点で有利である。一方、変形可能ミラーの容易な入手性及び操作性からもたらされる利点が維持される。
【0093】
第2のレンズ要素群511と結像レンズ515の間のビーム経路には、更に別の偏光ビームスプリッタ523が配置される。偏光ビームスプリッタ523は、観察光がビームスプリッタ面によって反射され、観察光の一部が観察ユニット525に供給されるように設計される。この例示的実施形態では、この観察デバイス525は、波面マニピュレータ505によって設定された波面を検出するための波面センサ527として具現化される。
【0094】
結像レンズ515と観察デバイス525と第2のレンズ要素群511とは、光学系501の光軸と平行に可動であるプラットフォーム上に一緒に配置される。それにより、結像レンズ515と観察デバイス525と第2のレンズ要素群511とを含む集束ユニット513が形成される。
【0095】
この実施形態では、第2のレンズ要素群511は、f2=60mmの焦点距離を有するように具現化される。
【0096】
図11は、本発明の第7の実施形態を概略図に示している。この実施形態は、第6の実施形態と非常に類似している。ここでは、光源から波面マニピュレータ605上に入射する光の平均入射角は0°から若干しか偏位しない。
【0097】
光学系601の光軸に対する波面マニピュレータ605の面法線の傾斜角を可能な限り小さく保つのが好適である。その結果、波面マニピュレータ605上への最大発生入射角も同じく小さく保たれる。それによって全ての光線に対して均一な反射率を達成することが容易になる。更に、変形可能ミラーは、次に、大きい横方向焦点位置の場合により小さい収差しか引き起こさない。
【0098】
第6の実施形態の利点に加えて、一部のレンズ要素が追加で2回通過を受けることで一部のレンズ要素が節約される。
【0099】
図12は、本発明の第8の実施形態を概略図に示している。第8の実施形態からの光学系701は、少なくとも1つの第1のレンズ要素を含む第1のレンズ要素群709と集束ユニット713とを含み、集束ユニット713は、少なくとも第2のレンズ要素を含む第2のレンズ要素群711と結像レンズ715とを含み、結像レンズ715は、少なくとも1つの瞳平面721とフォーカス735とを含み、集束ユニット713は、焦点位置を光学系の光軸に沿って変えることができるように光学系701の光軸に沿って可動に配置される。第2のレンズ要素群711のフォーカスは、結像レンズ715の瞳平面721に位置する。更に、光学系701は、結像レンズ715の互いに異なる少なくとも2つの焦点位置で波面誤差のRMSが100mλよりも小さい、好ましくは20mλよりも小さいように設計された波面マニピュレータ705を含む。
【0100】
この実施形態では、波面マニピュレータ705は変形可能ミラーとして具現化される。波面マニピュレータ705は、第1のレンズ要素群709の焦点面に配置され、第2のレンズ要素群711によって結像レンズ715の瞳721に結像される。結像レンズ715の瞳721は第2のレンズ要素群711の焦点面に位置するので、波面マニピュレータ705はこの瞳に結像される。この結像は、集束ユニット713の位置とは無関係である。
【0101】
2D走査ユニット707のピボット点の近くの点が瞳の中心に結像される。走査ユニット707は、レーザビームと光軸の間の角度が0°と2.5°の間の範囲で調節可能であるようにレーザビームを偏向する。この範囲は、結像レンズ715の瞳内の0°と1.25°の間の角度範囲に対応する。結像レンズ715の焦点距離は3.29mmである。したがって、横方向焦点位置は、2・3.29mm・tan(1.25°)≒144μmの直径を有する円によって表される。
【0102】
サンプル717内の開口数はNA=0.6である。サンプルは、n=1.335の屈折率を有する水であり、光源の波長は532nmである。したがって、レイリー長さは、dR=(λ・n)/(2・NA2)=0.986μmである。
【0103】
サンプル内の横方向焦点位置は、0<z<5280の深度範囲で光学系701の光軸と平行に設定することができる。この深度範囲は5350・dRの深度範囲に対応する。
【0104】
図13は、変形可能ミラー705のサグ及びRMS波面誤差としてのフォーカス品質を示している。72μmまでの横方向焦点位置と5350・dRまでの深度とを含む全範囲にわたって100mλよりも小さいRMS波面誤差のみを有するフォーカスの品質が高いことを確認することができる。用途に対してそれよりも悪いフォーカス品質で十分である場合に、横方向焦点位置のより大きい広がりを選択することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13