(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】基板支持装置、基板処理装置、及び基板支持方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/08 20060101AFI20230616BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20230616BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20230616BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20230616BHJP
【FI】
B23Q3/08 A
H01L21/68 B
B23Q7/04 K
B23K26/57
(21)【出願番号】P 2019089279
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】316011226
【氏名又は名称】AIメカテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 孝生
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101676(JP,A)
【文献】特開2017-228696(JP,A)
【文献】特開2013-069969(JP,A)
【文献】特開2000-312989(JP,A)
【文献】特開2003-025174(JP,A)
【文献】特開2012-213836(JP,A)
【文献】特開2007-048828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/08
B23Q 7/04
H01L 21/677
H01L 21/683
B25B 11/00
B23K 26/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面に基板を支持する支持面を有する基板支持部と、
前記基板支持部の上方に設けられ、上下方向に進退して前記支持面上に載置された前記基板を上方から押さえる基板押さえ部と、
前記支持面から上方に向かって出没可能に設けられ、前記支持面上に載置される前記基板の下面を吸着する基板吸着部と、を備え、
前記基板吸着部は、
前記支持面に没入した状態で配置され、弾性変形可能な吸着パッドと、
前記吸着パッドを前記基板の下面に吸着させるための負圧を付与する負圧供給部と、をさらに備え、
前記吸着パッドは、反りを有する前記基板が下方に押し付けられることで前記基板に吸着し、前記基板の押し付けを解放した後の前記基板の反りによって弾性変形することで前記基板を吸着保持した状態で前記支持面上から突出する、基板支持装置。
【請求項2】
前記基板吸着部は、複数配置されている、請求項1に記載の基板支持装置。
【請求項3】
複数の前記基板吸着部は、前記基板支持部に載置される前記基板に対応して配置されている、請求項2に記載の基板支持装置。
【請求項4】
複数の前記基板吸着部は、前記基板支持部に載置される前記基板の中央部分と、前記中央部分から放射方向に沿った複数の位置とに配置されている、請求項3に記載の基板支持装置。
【請求項5】
前記基板は、矩形状であり、
複数の前記基板吸着部は、前記基板支持部に載置された前記基板の中央部分と、前記基板の4つの角部とにそれぞれ配置されている、請求項3に記載の基板支持装置。
【請求項6】
複数の前記基板吸着部は、矩形状の前記基板の外縁内側に沿って所定間隔で配置されている、請求項5に記載の基板支持装置。
【請求項7】
前記基板押さえ部は、前記基板支持部に載置された前記基板に対して複数カ所で押さえる、請求項1から
請求項6のいずれか一項に記載の基板支持装置。
【請求項8】
前記基板押さえ部は、前記基板の上面を吸着可能な吸着部を備え、前記吸着部により前記基板を吸着することにより、前記基板支持部に対する前記基板の搬入又は搬出を行う、請求項1から
請求項7のいずれか一項に記載の基板支持装置。
【請求項9】
前記基板押さえ部及び前記基板吸着部を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記支持面上に載置された基板を前記基板押さえ部により上方から押さえるように指示する押圧指示部と、
前記基板吸着部により前記基板の下面を吸着するように指示する吸着指示部と、を備える、請求項1から
請求項8のいずれか一項に記載の基板支持装置。
【請求項10】
請求項1から
請求項9のいずれか一項に記載の基板支持装置と、
前記基板支持装置の前記基板支持部に載置された前記基板を処理する基板処理部と、を備える基板処理装置。
【請求項11】
反りを有する基板を基板支持部の支持面上に載置して上方から押さえることと、
前記支持面に没入した状態で配置され、弾性変形可能な吸着パッドを、前記基板の下面
に吸着させることと、
前記基板を上方から押さえるのを解放して、前記基板に生じた反りに応じて
前記吸着パッドを弾性変形させ、前記基板を吸着保持した状態で前記支持面から上方に突出させることと、を含む基板支持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板支持装置、基板処理装置、及び基板支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して所定の処理を施す基板処理装置においては、処理に際して基板を基板支持面で吸着して回転させる基板支持装置が用いられている。この基板支持装置において、基板支持面で吸着する基板に反りが生じている場合、基板と基板支持面との間に隙間が生じるため、基板と基板支持面との間の真空(負圧)が破壊され、基板の吸着ができなくなってしまう場合がある。これに対し、基板載置面に設けられた同心円状の第一の溝部及び第一の溝部に交差する第二の溝部を有する吸引部と、基板の質量に対する吸引部における吸引力の比を所定の範囲に設定するエア排気部と、を備えることで、反りが生じた基板であっても吸着可能とする構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構成では、基板に対する吸引力を設定したときでも、基板に生じている応力によっては反りが解消されない場合があり、その結果、基板と基板支持面との間の真空が破壊されて、基板を吸着できなくなる可能性がある。また、基板の反りを解消するために強い吸着力に設定して、基板の反りを矯正したまま基板支持面に保持させておくと、基板を破損させる場合がある。
【0005】
本発明は、反りが生じた基板であっても容易かつ確実に保持することが可能な基板支持装置、基板処理装置、及び基板支持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、天面に基板を支持する支持面を有する基板支持部と、基板支持部の上方に設けられ、上下方向に進退して支持面上に載置された基板を上方から押さえる基板押さえ部と、支持面から上方に向かって出没可能に設けられ、支持面上に載置される基板の下面を吸着する基板吸着部と、を備え、基板吸着部は、支持面に没入した状態で配置され、弾性変形可能な吸着パッドと、吸着パッドを基板の下面に吸着させるための負圧を付与する負圧供給部と、をさらに備え、吸着パッドは、反りを有する基板が下方に押し付けられることで基板に吸着し、基板の押し付けを解放した後の基板の反りによって弾性変形することで基板を吸着保持した状態で支持面上から突出する、基板支持装置が提供される。
本発明の第1態様によれば、天面に基板を支持する支持面を有する基板支持部と、前記基板支持部の上方に設けられ、上下方向に進退して前記支持面上に載置された前記基板を上方から押さえる基板押さえ部と、前記支持面から上方に向かって出没可能に設けられ、前記支持面上に載置される前記基板の下面を吸着する基板吸着部と、を備える、基板支持装置が提供される。
【0007】
本発明の第2態様によれば、上記した第1態様の基板支持装置と、前記基板支持装置の前記基板支持部に載置された前記基板を処理する基板処理部と、を備える基板処理装置が提供される。
【0008】
本発明の態様に従えば、反りを有する基板を基板支持部の支持面上に載置して上方から押さえることと、支持面に没入した状態で配置され、弾性変形可能な吸着パッドを、基板の下面に吸着させることと、基板を上方から押さえるのを解放して、基板に生じた反りに応じて吸着パッドを弾性変形させ、基板を吸着保持した状態で支持面から上方に突出させることと、を含む基板支持方法が提供される。
本発明の第3態様によれば、基板支持部の支持面上に載置された基板を上方から押さえることと、前記基板の下面に基板吸着部を吸着させることと、前記基板を上方から押さえるのを解放して、前記基板に生じた反りに応じて前記基板吸着部を前記支持面から上方に突出させることと、を含む基板支持方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、支持面上に載置された基板を基板押さえ部で上方から押さえた状態で、基板吸着部で基板の下面を吸着させた後、基板に反りが生じている場合、基板吸着部が、基板の反り量に応じて支持面から上方に突出して基板の下面に吸着した状態を維持する。従って、反りが生じた基板であっても、基板吸着部が基板を吸着した状態を維持するので、基板を容易かつ確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る基板支持装置(基板処理装置)の一例を示す斜視断面図である。
【
図4】基板支持装置の基板リフト部の概略構成を示す断面図である。
【
図5】基板支持装置の基板吸着部の概略構成を示す断面図である。
【
図6】吸着パッドに付与される真空度(負圧)と、吸着パッドで発揮する吸着力との相関を示す図である。
【
図8】基板支持装置、及び基板処理部を示す断面図である。
【
図9】コントローラの機能ブロック構成の一例を示す図である。
【
図10】実施形態に係る基板支持方法を含む基板処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図11】基板支持装置において、リフトピンを上方に突出させた状態を示す図である。
【
図12】基板支持装置において、前工程から搬入された基板を、上方に突出させたリフトピン上で受け取る状態を示す図である。
【
図13】基板支持装置において、基板を、上方に突出させたリフトピン上に載置した状態を示す図である。
【
図14】基板支持装置において、リフトピンを下降させ、基板を基板支持テーブルの支持面上に載置した状態を示す図である。
【
図15】基板支持装置において、基板支持テーブル上に載置された基板を、基板押さえ部で押さえる状態を示す図である。
【
図16】基板支持装置において、基板を基板支持テーブルの支持面に沿わせた状態で、基板を吸着パッドで吸着している状態を示す図である。
【
図17】基板支持装置において、基板支持テーブルの支持面上で外周部が上方に沿った基板を、吸着パッドで吸着保持している状態を示す図である。
【
図18】基板支持装置において、基板支持テーブルの支持面上で中央部が上方に沿った基板を、吸着パッドで吸着保持している状態を示す図である。
【
図19】基板処理方法において、所定の処理が施された基板を後工程に向けて搬出するに際し、基板に積層されていた支持部材を取り外した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこの実施形態に限定されない。また、図面においては実施形態の各構成をわかりやすくするために、一部を大きく又は強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造又は形状、縮尺等が異なっている場合がある。
【0012】
図1は、実施形態に係る基板支持装置、基板処理装置の一例を示す斜視断面図である。
図2は、基板支持装置2の主要部を示す正面図である。
図3は、基板支持装置2を示す平面図である。
図1から
図3に示すように、基板処理装置1は、基板支持装置2と、基板処理部3(
図7参照)と、コントローラ9(
図9参照)と、を主に備える。本実施形態において、基板処理装置1は、基板100に対して、例えば、レーザ光を用いた処理を行う。なお、基板処理装置1により基板100に対して施す処理は、レーザ光を用いた処理に限らず、基板100の洗浄処理等、他の処理であってもよい。
【0013】
基板支持装置2は、基板支持テーブル(基板支持部)4と、基板リフト部5と、基板吸着部6と、基板押さえ部7と、を主に備えている。基板支持テーブル4は、平面視矩形状で、上下方向に所定の厚さを有している。
図1及び
図3に示すように、基板支持テーブル4は、基板支持テーブル4の下方に設けられたガイド部材44X、44Yに沿って、水平面内で互いに直交する2方向に移動可能に設けられている。基板支持テーブル4は、図示しない駆動部(例えば、駆動シリンダなど)によって、それぞれのガイド部材44X、44Yに沿って進退駆動される。
【0014】
図4は、基板支持装置2の基板リフト部5の概略構成を示す断面図である。
図5は、基板支持装置2の基板吸着部6の概略構成を示す断面図である。
図2、
図4、及び
図5に示すように、基板支持テーブル4において上方を向く天面4tは、基板100を支持する支持面41として用いられる。基板支持テーブル4には、複数のピン孔42と、複数のパッド収容孔43と、が形成されている。各ピン孔42、及び各パッド収容孔43は、それぞれ平面視において円形であり、基板支持テーブル4を上下方向に貫通している。
【0015】
図4に示すように、基板リフト部5は、基板支持テーブル4に設けられている。基板リフト部5は、複数のリフトピン51と、ブラケット52と、リフトシリンダ(図示無し)と、を備えている。複数のリフトピン51は、水平方向に間隔をあけて設けられている。各リフトピン51は、上下方向に延びている。各リフトピン51は、基板支持テーブル4のピン孔42に挿入されている。基板支持テーブル4の下面には、リフトピン51を上下方向に移動可能に支持するガイドブッシュ55が設けられている。
【0016】
ブラケット52は、水平方向に延びており、複数のリフトピン51の下端部を一体に連結している。リフトシリンダ(図示無し)は、ブラケット52を上下方向に昇降駆動する。複数のリフトピン51は、リフトシリンダ(図示無し)でブラケット52を昇降させることによって、上下方向に昇降する。複数のリフトピン51は、その上端51tが基板支持テーブル4の支持面41以下の高さで支持面41から上方に突出していない位置(没入位置)と、上端51tが支持面41から上方に突出した位置(突出位置)との間で出没可能となっている。
【0017】
図1から
図3に示すように、基板吸着部6は、基板支持テーブル4に設けられている。基板吸着部6は、基板支持テーブル4に複数配置されている。複数の基板吸着部6は、基板支持テーブル4に載置される基板100に対応して配置されている。具体的には、複数の基板吸着部6は、基板支持テーブル4に載置される基板100の下面100bに下方から対向する位置に配置されている。
【0018】
図1及び
図3に示すように、複数の基板吸着部6は、基板支持テーブル4に載置される基板100の中央部分100cと、基板100の外周部100dとに配置されている。複数の基板吸着部6は、矩形状の基板100の外縁100g内側に沿って所定間隔で配置されている。複数の基板吸着部6は、基板支持テーブル4に載置される基板100の中央部分100cと、中央部分100cから放射方向に沿った複数の位置100eとに配置されている。複数の基板吸着部6は、基板支持テーブル4に載置された基板100の中央部分100cと、基板100の4つの角部101とにそれぞれ配置されている。
【0019】
図5に示すように、各基板吸着部6は、支持面41から上方に向かって出没可能に設けられ、支持面41上に載置される基板100の下面100bを吸着する。基板吸着部6は、パッド本体61と、弾性部62と、負圧供給部63と、を備えている。パッド本体61は、上下方向に延び、基板支持テーブル4のパッド収容孔43内に挿入されて配置されている。パッド本体61は、基板支持テーブル4の下面に設けられた支持ブラケット66に、ナット67A,67Bにより固定されている。ナット67A、67Bは、支持ブラケット66を上下方向から挟み込むように設けられている。
【0020】
パッド本体61の上端部には、基板100の下面100bに吸着可能な吸着パッド64が設けられている。パッド本体61及び吸着パッド64には、上下方向に貫通する貫通孔61h、64hが形成されている。吸着パッド64は、ゴム系材料等の弾性を有する材料から形成されている。吸着パッド64は、弾性部62として、上下方向に伸縮可能な蛇腹部65を有している。吸着パッド64は、その先端64sが基板支持テーブル4の支持面41と上下方向で同一位置に設けられている。吸着パッド64は、基板100の下面100bに吸着する。
【0021】
図5中における二点鎖線で示すように、吸着パッド64が基板100の下面100bに吸着した状態で、基板100の下面100bが支持面41から上方に変位すると、吸着パッド64は上方に伸びるように弾性変形し、先端64sが支持面41から上方に突出する。吸着パッド64の先端64sが支持面41よりも上方に突出した状態で、吸着パッド64には、弾性部62としての蛇腹部65により下方に向けて弾性力が付与される。
【0022】
負圧供給部63は、吸着パッド64を基板100の下面に吸着させるための負圧を付与するための流路である。負圧供給部63は、パッド本体61及び吸着パッド64の貫通孔61h、64hである。パッド本体61には、真空ポンプ等の図示しない負圧発生源が、図示しない配管を介して接続されている。負圧発生源で発生した負圧は、配管(図示無し)、パッド本体61及び吸着パッド64の貫通孔61h、64hを介し、吸着パッド64に付与される。吸着パッド64を基板100の下面100bに突き当てた状態で、負圧発生源で発生した負圧を、負圧供給部63を介して付与することで、吸着パッド64は基板100を吸着保持する。
【0023】
ここで、
図6は、吸着パッド64に付与される真空度(負圧)と、吸着パッド64で発揮する吸着力との相関を示す図である。この
図6に示すように、負圧供給部63を介して吸着パッド64に付与される真空度が高いほど、吸着パッド64で発揮される基板100の吸着力は高くなる。なお、
図6に示すグラフは、真空度と吸着力との相関の一例を示しており、例えば、吸着パッド64の形状等によって傾き等が変化する。
【0024】
図1及び
図2に示すように、基板押さえ部7は、基板支持テーブル4の上方に設けられている。基板押さえ部7は、上下方向に進退可能(昇降可能)に設けられている。基板押さえ部7は、支持面41上に載置された基板100を上方から押さえるように動作する。基板押さえ部7は、基板支持テーブル4に載置された基板100を複数カ所で押さえる。基板押さえ部7は、フレーム71と、複数の押さえ部材72と、アクチュエータ73と、を有する。
【0025】
図7は、基板押さえ部7の構成を示す断面図である。
図7に示すように、フレーム71は、平面視矩形状で、基板支持テーブル4とほぼ同等の大きさを有している。複数の押さえ部材72は、フレーム71に、ナット75A、75Bにより固定されている。複数の押さえ部材72は、それぞれの下端にパッド(吸着部)74を有している。パッド74は、図示しない負圧源に接続されており、基板100(積層体103)の上面100tに吸着可能である。
【0026】
基板押さえ部7は、複数の押さえ部材72のパッド74を基板100の上面100tに上方から押し当てることで、基板100を押さえ、基板支持テーブル4の支持面41上に沿わせる。また、基板押さえ部7は、複数の押さえ部材72のパッド74を基板100の上面100tに押し当てた状態で、図示しない負圧源によってパッド74に負圧を作用させることにより、基板100の上面100tを複数個所で吸着保持する。
【0027】
アクチュエータ73は、フレーム71を、少なくとも上下方向に移動させる。アクチュエータ73は、複数の押さえ部材72で基板100を吸着保持したまま、フレーム71を少なくとも上下方向に移動させることで、基板100を搬送する。このような基板押さえ部7は、基板100を、基板支持テーブル4の支持面41上に対して搬入又は搬出する。
【0028】
図8は、基板支持装置2、及び基板処理部3を示す断面図である。基板処理部3は、基板支持テーブル4の支持面41上に載置された基板100に対して、所定の処理を施す。本実施形態では、基板処理部3は、基板100に対して、レーザ光を照射する。基板処理部3は、レーザ光を基板100に照射する照射ノズル31と、レーザ光を発する図示しないレーザ光源と、レーザ光源から照射ノズル31にレーザ光を導く図示しないレーザ光学系と、を備えている。
【0029】
基板処理装置1は、基板処理部3で、照射ノズル31から基板支持テーブル4の支持面41上の基板100にレーザ光を照射しつつ、基板支持テーブル4をガイド部材44X、44Y(
図1参照)に沿って水平面内で互いに直交する2方向に移動させることで、基板100(積層体103)に所定のレーザ加工を施す。
【0030】
本実施形態において、基板100には、その上面に、例えばガラス製で板状の支持部材102が積層されている。支持部材102は、基板100の上面100tを覆うように設けられている。基板100の上面100tと支持部材102とは、接合材(図示無し)の膜により接合されている。接合材の膜(層)は、反応層又は分離層と称される場合がある。基板処理部3は、基板100と支持部材102との積層体103にレーザ光を照射することで、接合材(図示無し)による接合を解除する。なお、基板処理部3で基板100に対して施す処理は、上記した以外であってもよい。例えば、基板処理部3で施す処理として、基板100に対する洗浄処理であってもよい。
【0031】
図9は、コントローラ9の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図9に示すように、コントローラ9は、基板押さえ部7、基板リフト部5、基板吸着部6、及び基板処理部3を制御する。コントローラ9は、例えば、CPU、メインメモリ、記憶装置、通信装置等を備え、各種情報の処理、情報の記憶、情報の入出力、情報の通信(送受信)等を行うコンピュータシステムである。コントローラ9は、搬入受付部91と、リフト指示部92と、押圧指示部93と、吸着指示部94と、処理指示部95と、搬出指示部96と、を備える。
【0032】
搬入受付部91は、基板処理装置1の前工程から搬送されてくる基板100(積層体103)の搬入を受け付ける。搬入受付部91は、前工程から基板100が搬送されてくることを、前工程から出力される信号、又は前工程からの搬送工程に設けられたセンサからの信号等に基づいて受け付ける。
【0033】
リフト指示部92は、搬入受付部91で基板100が前工程から搬送されてくることを受け付けると、基板リフト部5にリフトピン51を上方に突出させる指示信号を出力する。リフト指示部92は、指示信号に基づき、基板リフト部5に、リフトシリンダ(図示無し)によりブラケット52を上昇させ、複数のリフトピン51の上端51tを支持面41から上方に突出させる動作を実行させる。
【0034】
リフト指示部92は、支持面41から上方に突出させた複数のリフトピン51上に、前工程から搬送されてきた基板100が載置されたら、基板リフト部5に、リフトピン51を下降させる指示信号を出力する。リフト指示部92は、基板リフト部5に、リフトシリンダ(図示無し)によりブラケット52を下降させ、複数のリフトピン51の上端51tが基板支持テーブル4の支持面41以下の高さとなり、支持面41から上方に突出しないようにする動作を実行させる。この動作により、複数のリフトピン51上に載置された基板100(積層体103)が、基板支持テーブル4の支持面41上に載置される。
【0035】
押圧指示部93は、基板100(積層体103)が支持面41上に載置されたら、基板押さえ部7に対して、基板100を上方から押さえるよう、指示信号を出力する。押圧指示部93は、基板押さえ部7に、アクチュエータ73でフレーム71を下降させ、複数の押さえ部材72を支持面41上の基板100(積層体103)の上面100tに上方から押し当てる動作を実行させる。この動作より、支持面41上の基板100は複数の押さえ部材72によって上方から押さえつけられる。
【0036】
吸着指示部94は、支持面41上の基板100が基板押さえ部7によって上方から押さえつけられた状態で、基板吸着部6に対して、基板100の下面100bを吸着するように指示信号を出力する。吸着指示部94は、基板吸着部6に、図示しない負圧発生源で発生した負圧を、負圧供給部63を介して、基板100の下面100bに突き当たった吸着パッド64に付与させる動作を実行させる。この動作により、吸着パッド64のそれぞれは基板100を吸着保持する。
【0037】
処理指示部95は、基板吸着部6で吸着保持された基板100(積層体103)に対して、基板処理部3で所定の処理を実行するよう、基板処理部3に指示信号を出力する。処理指示部95は、基板処理部3に、照射ノズル31から基板支持テーブル4の支持面41上の基板100にレーザ光を照射しつつ、基板支持テーブル4を、ガイド部材44X、44Yに沿って水平面内で互いに直交する2方向に移動させることで、基板100(積層体103)に対して所定のレーザ加工を施す動作を実行させる。
【0038】
搬出指示部96は、基板処理部3によって所定の処理が施された基板100を後工程に向けて搬出するよう、基板押さえ部7に指示信号を出力する。搬出指示部96は、基板押さえ部7に、アクチュエータ73によりフレーム71を下降させ、複数の押さえ部材72を支持面41上の基板100の上面100tに上方から押し当てる動作を実行させる。搬出指示部96は、さらに、基板吸着部6において複数の吸着パッド64で基板100の下面100bを吸着させる動作と、基板押さえ部7において複数の押さえ部材72で積層体103の支持部材102を吸着させる動作とを実行させる。
【0039】
さらに、搬出指示部96は、基板押さえ部7に、アクチュエータ73によりフレーム71を上昇させる動作を実行させる。これらの動作により、複数の押さえ部材72で吸着した支持部材102は、支持面41上の基板100から引き離される。すなわち、複数の押さえ部材72が支持部材102を吸着して上昇することで、基板吸着部6により吸着された基板100から支持部材102を分離させる動作が実行される。
【0040】
次に、上記したような基板処理装置1における基板100の処理方法について説明する。以下に説明する基板100の処理方法は、基板支持装置2による基板100の支持方法を含んでいる。
図10は、実施形態に係る基板支持方法を含む基板処理方法の一例を示すフローチャートである。
【0041】
図10に示すように、本実施形態における基板100の処理方法では、以下のステップS1からS8が実行される。まず、ステップS1において、基板処理装置1の搬入受付部91は、基板処理装置1の前工程から搬送されてくる基板100(積層体103)の搬入を受け付ける。搬入受付部91は、前工程から基板100が搬送されてくることを、前工程から出力される信号、又は前工程からの搬送工程に設けられたセンサからの信号等に基づいて受け付ける。
【0042】
図11は、基板支持装置2において、リフトピン51を上方に突出させた状態を示す図である。ステップS2において、リフト指示部92は、基板リフト部5にリフトピン51を上方に突出させる指示信号を出力する。
図11に示すように、基板リフト部5は、リフト指示部92から出力された指示信号を受け付けると、リフトシリンダ(図示無し)により、ブラケット52を上昇させ、複数のリフトピン51の上端51tを、支持面41から上方に突出させる。
【0043】
図12は、基板支持装置2において、前工程から搬入された基板100を、上方に突出させたリフトピン51上で受け取る状態を示す図である。
図13は、基板支持装置2において、基板100を、上方に突出させたリフトピン51上に載置した状態を示す図である。ステップS3において、基板処理装置1は、前工程から搬入される基板100を受け取る。
図12に示すように、基板100(積層体103)は、例えば、基板処理装置1の外部に設けられた移送装置200の複数の支持アーム201上に支持されて搬入される。
図13に示すように、基板100(積層体103)は、支持面41から上方に突出した複数のリフトピン51上に載置される。
【0044】
図14は、基板支持装置2において、リフトピン51を下降させ、基板100を基板支持テーブル4の支持面41上に載置した状態を示す図である。ステップS4において、リフト指示部92は、基板リフト部5にリフトピン51を下降させる指示信号を出力する。
図14に示すように、基板リフト部5は、リフト指示部92から出力された指示信号を受け付けると、リフトシリンダ(図示無し)によりブラケット52を下降させ、複数のリフトピン51の上端51tが基板支持テーブル4の支持面41以下の高さとなり、支持面41から上方に突出しないようにする。この動作により、複数のリフトピン51上に載置された基板100(積層体103)が、基板支持テーブル4の支持面41上に載置される。
【0045】
図15は、基板支持装置2において、基板支持テーブル4上に載置された基板100を、基板押さえ部7で押さえる状態を示す図である。ステップS5において、押圧指示部93は、基板押さえ部7に対して、基板100(積層体103)を上方から押さえるよう指示信号を出力する。
図15に示すように、基板押さえ部7は、押圧指示部93からの指示信号を受け付けると、アクチュエータ73によりフレーム71を下降させ、複数の押さえ部材72のパッド74を、支持面41上の積層体103の支持部材102に上方から押し当てる。
【0046】
この動作により、支持面41上の基板100は、複数の押さえ部材72によって上方から押さえつけられる。このとき、複数の押さえ部材72は、積層体103の支持部材102に対して吸着せずに上方から押し付けるだけとしてもよいし、積層体103の支持部材102に押し付けた状態で、基板100が位置ズレしないように、パッド74により基板100の上面100tを吸着保持するようにしてもよい。また、ステップS5では、複数の押さえ部材72により、反った基板100を支持面41に密着又はほぼ密着させるように押さえつけてもよいし、基板100の一部に支持面41との間に所定の隙間が生じる程度に押さえつけてもよい。
【0047】
ステップS5において、複数の押さえ部材72により基板100の一部に支持面41との間に隙間が生じる程度に押さえつける場合、所定の隙間は、例えば、次のステップS6において基板吸着部6により吸着を開始した際、吸引する力によって吸着パッド64が基板100の下面100bまで上方に伸びて吸着するような距離であれば、基板100を支持面41に密着又はほぼ密着させる必要はない。
【0048】
ステップS6において、基板吸着部6に対して、基板100の下面100bを吸着するように指示信号を出力する。基板吸着部6は、吸着指示部94からの指示信号を受け付けると、図示しない負圧発生源で発生した負圧を、負圧供給部63を介して、基板100の下面100bに突き当たった吸着パッド64に付与する。この動作により、基板押さえ部7によって上方から押さえつけられた支持面41上の基板100が、複数の吸着パッド64のそれぞれによって吸着保持される。
【0049】
図16は、基板支持装置2において、基板100を基板支持テーブル4の支持面41に沿わせた状態で、基板100を吸着パッド64で吸着している状態を示す図である。
図16に示すように、基板100(積層体103)に反りが生じていなければ、基板100の下面100bは、その全体が支持面41上に密着又はまたはほぼ密着した状態で、複数の吸着パッド64に吸着保持される。また、基板100(積層体103)に反りが生じている場合、反りが矯正されることによって基板100に生じる応力(元の沿った状態に戻る力)が、吸着パッド64による下方への弾性力よりも小さければ、基板100の下面100bは、その全体が支持面41上に密着した状態で、複数の吸着パッド64に吸着保持される。
【0050】
図17は、基板支持装置2において、基板支持テーブル4の支持面41上で外周部100dが上方に反った基板100を、吸着パッド64で吸着保持している状態を示す図である。
図18は、基板支持装置2において、基板支持テーブル4の支持面41上で中央部分100cが上方に反った基板100を、吸着パッド64で吸着保持している状態を示す図である。
【0051】
図17及び
図18に示すように、基板100(積層体103)に反りが生じている場合、反りが矯正されることによって基板100に生じる応力が、吸着パッド64による下方への弾性力よりも大きければ、基板100の反りが矯正されている部分で下面100bが支持面41から浮き上がる。下面100bが支持面41から浮き上がった部分では、吸着パッド64が下面100bに吸着したまま、支持面41よりも上方に突出するように伸びた状態となる。
【0052】
具体的には、例えば、
図17に示すように、反りによって基板100の外周部100dの下面100bが支持面41から浮き上がると、基板支持テーブル4の外周部100dに位置する吸着パッド64は、下面100bに吸着した状態を維持しながら、支持面41よりも上方に突出するように伸びた状態となる。この場合、基板支持テーブル4の中央部に位置する吸着パッド64の先端64sは、支持面41よりも上方に突出せずに下面100bを吸着している。
【0053】
複数の基板吸着部6の吸着パッド64は、基板100の外周部100d、中央部分100cから放射方向に沿った複数の位置100e、基板100の4つの角部101、及び矩形状の基板100の外縁100g内側に配置されている。従って、基板100の外周部100dが浮き上がると、この浮き上がった部分に位置している吸着パッド64が吸着を維持しながら上方に突出した状態となる。すなわち、基板100の外周部100dが浮き上がった場合であっても、複数の吸着パッド64による吸着が維持されるので、基板100を確実に吸着保持することができる。
【0054】
また、
図18に示すように、反りによって基板100の中央部分100cが支持面41から浮き上がると、基板支持テーブル4の中央部に位置する吸着パッド64は、下面100bに吸着した状態を維持しながら、先端64sが支持面41よりも上方に突出するように伸びた状態となる。すなわち基板100の中央部分100cが浮き上がった場合であっても、複数の吸着パッド64による吸着が維持されるので、基板100を確実に吸着保持することができる。
【0055】
ステップS7では、処理指示部95は、基板吸着部6で吸着保持された基板100に対し、基板処理部3で所定の処理を実行するよう、基板処理部3に指示信号を出力する。
図8に示すように、基板処理部3は、処理指示部95からの指示信号を受け付けると、照射ノズル31から基板支持テーブル4の支持面41上の基板100にレーザ光を照射しつつ、基板支持テーブル4を、ガイド部材に44X、44Y(
図1、
図3参照)沿って水平面内で互いに直交する2方向に移動させる。この動作により、基板100と支持部材102との積層体103において、接合材(図示無し)による接合が解除される。
【0056】
図19は、実施形態に係る基板処理方法において、所定の処理が施された基板100を後工程に向けて搬出するに際し、基板100に積層されていた支持部材102を取り外した状態を示す断面図である。
【0057】
ステップS8では、搬出指示部96は、基板処理部3によって所定の処理が施された基板100(積層体103)を後工程に向けて搬出するよう、基板押さえ部7に指示信号を出力する。
図15に示すように、基板押さえ部7は、搬出指示部96から指示信号を受け付けると、アクチュエータ73によりフレーム71を下降させ、複数の押さえ部材72を、支持面41上の積層体103の支持部材102に上方から押し当てる。
【0058】
次いで、基板吸着部6では、複数の吸着パッド64で基板100の下面100bを吸着しつつ、基板押さえ部7における複数の押さえ部材72のパッド74で積層体103の支持部材102を吸着する。この状態で、
図19に示すように、アクチュエータ73によりフレーム71を上昇させる。その結果、複数の押さえ部材72で吸着された支持部材102は、支持面41上の基板100から引き離される。その後、基板押さえ部7で吸着保持した支持部材102を所定の位置に搬出する。さらに、支持面41上の基板100を、基板押さえ部7、又は他の基板搬送機構により保持し、後工程に向けて基板処理装置1(基板支持装置2)から搬出する。
【0059】
このように、本実施形態に係る基板支持装置2及び基板処理装置1によれば、基板支持テーブル4の支持面41上に載置された基板100を基板押さえ部7で上方から押さえた状態で、基板吸着部6で基板100の下面を吸着させるので、基板吸着部6によって基板100が吸着保持される。また、基板100に反りが生じている場合、基板吸着部6は、基板100の反り量に応じて、基板100の下面を吸着したまま、支持面41から上方に突出する。その結果、基板100の反りを無理に矯正しなくとも、反りが生じたままの状態で基板100を吸着保持することができる。従って、本実施形態によれば、反りが生じた基板100を容易かつ確実に保持することができる。
【0060】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記した実施形態では、吸着パッド64は、弾性部62として、上下方向に伸縮可能な蛇腹部65を有する構成を例に挙げて説明しているが、この構成に限定されない。パッド本体に対して下方に向けた弾性力を付与するのであれば、例えば、弾性部としてコイルスプリング等が用いられてもよい。
【0061】
また、上記した実施形態では、基板支持テーブル4に基板リフト部5を備える構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。例えば、基板リフト部5を省略してもよい。この場合、基板支持テーブル4上に基板100を搬入する装置、又は、基板支持テーブル4上から基板100を搬出する装置が適宜用いられる。この搬入搬出装置の構成は任意である。
【0062】
また、上記した実施形態では、基板100に支持部材102を積層した積層体103を、基板支持装置2又は基板処理装置1における取り扱い対象とする構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。例えば、支持部材102を設けずに(積層体103とせずに)、基板100単体を基板支持装置2又は基板処理装置1における取り扱い対象としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1・・・基板処理装置、2・・・基板支持装置、3・・・基板処理部、4・・・基板支持テーブル(基板支持部)、4t・・・天面、6・・・基板吸着部、7・・・基板押さえ部、9・・・コントローラ、41・・・支持面、61・・・パッド本体、62・・・弾性部、63・・・負圧供給部、64・・・吸着パッド、74・・・パッド(吸着部)、93・・・押圧指示部、94・・・吸着指示部、100・・・基板、100b・・・下面、100c・・・中央部分、100e・・・放射方向に沿った複数の位置、100g・・・外縁、100t・・・上面、101・・・角部