(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】サンプル貯留装置
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20230616BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/26
(21)【出願番号】P 2018199369
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-08-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業」「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発/ヒト多能性幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発(網膜色素上皮・肝細胞)」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】牧野 穂高
(72)【発明者】
【氏名】久保 寛嗣
(72)【発明者】
【氏名】小川 徹也
(72)【発明者】
【氏名】紀ノ岡 正博
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113951(JP,A)
【文献】特開2012-200239(JP,A)
【文献】特開2019-136005(JP,A)
【文献】特開2019-138853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体と;
前記蓋体によって密閉可能なサンプル貯留容器と;
前記サンプル貯留容器の側部または前記蓋体に設けられた第1流体吸入部と;
前記サンプル貯留容器の側部または前記蓋体に設けられた第2流体吸入部と;
前記サンプル貯留容器の底部に設けられた第1流体排出部と;
前記サンプル貯留容器の側部または前記蓋体に設けられた第2流体排出部と;
前記第1流体吸入部に接続された第1流路であって、ここで前記第1流路は、サンプリング部と接続され、前記サンプリング部と流体連通している、前記第1流路と;
前記第2流体吸入部に接続された第2流路であって、ここで前記第2流路は、前記サンプル貯留容器の外部と連通している、前記第2流路と;
前記第1流体排出部に接続された第3流路であって、ここで前記第3流路は、その下流に第1流体排出手段が設けられている、前記第3流路と;
前記第2流体排出部に接続された第4流路であって、ここで前記第4流路は、その下流に第2流体排出手段が設けられている、前記第4流路と;
前記第1流路の流体を識別するための、第1流体識別センサと;
を備え、
ここで前記サンプリング部は、
前記第1流路に流体を導入するための排出口を有し、
ここで、前記第1流路が第1開閉機構を有し;前記第2流路が第2開閉機構を有し;前記第3流路が第3開閉機構を有し;そして前記第4流路が第4開閉機構を有し、
ここで、前記第1開閉機構が開く場合は前記第2開閉機構が閉じ、または、前記第2開閉機構が開く場合は前記第1開閉機構が閉じるよう作動し、
ここで、前記第3開閉機構が開く場合は前記第4開閉機構が閉じ、または、前記第4開閉機構が開く場合は前記第3開閉機構が閉じるよう作動することを特徴とする、
サンプル貯留装置。
【請求項2】
前記サンプル貯留容器の外側において、前記第2流体排出部の配置よりも低い位置に、第2流体識別センサをさらに備える、請求項1に記載のサンプル貯留装置。
【請求項3】
前記第3流路の流体を識別するための、第3流体識別センサをさらに備える、請求項1又は2に記載のサンプル貯留装置。
【請求項4】
前記第1流体排出部の周辺の流体を識別するための、第4流体識別センサをさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【請求項5】
前記第1流体排出手段および前記第2流体排出手段が、チューブポンプ又はピエゾポンプである、請求項1~4のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【請求項6】
前記第3流路と前記第4流路の下流部が、結合して一体となった第5流路を有し、
ここで前記第1流体排出手段は前記第2流体排出手段と同一のものであって、かつ、前記第1流体排出手段が前記第5流路に設けられていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【請求項7】
前記第1流路の途中から分岐した第6流路と;
前記第6流路に設けられた第3流体排出手段と;
前記第6流路に設けられた第5開閉機構と;
前記第1流路に設けられた第6開閉機構と
をさらに備え、
ここで前記第5開閉機構が開く場合は前記第6開閉機構が閉じ、または、前記第6開閉機構が開く場合は前記第5開閉機構が閉じるよう作動することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【請求項8】
前記第1流体識別センサと、前記第1開閉機構と、前記第2開閉機構と、前記第3開閉機構と、前記第4開閉機構と、前記第1流体排出手段と、前記第2流体排出手段とを制御するための制御部をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【請求項9】
前記第1流体識別センサと、前記第1開閉機構と、前記第2開閉機構と、前記第3開閉機構と、前記第4開閉機構と、前記第1流体排出手段と、前記第2流体排出手段と、前記第3流体排出手段と、前記第5開閉機構と、前記第6開閉機構とを制御するための制御部をさらに備える、請求項7に記載のサンプル貯留装置。
【請求項10】
前記蓋体が、サンプル回収手段を挿入可能な挿入部を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【請求項11】
前記サンプリング部がアイソレータの内部に設けられ、前記第1流路が前記アイソレータに設けられた液送ポートを介して、前記アイソレータの外部と繋がっていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【請求項12】
前記サンプリング部にサンプルを供給するためのサンプル供給手段、をさらに備える、請求項1~11のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【請求項13】
前記サンプリング部と連通した第7流路と;
前記第7流路に緩衝液を供給するための緩衝液供給部と;
前記第7流路に設けられた第4流体排出手段と、
をさらに備える、請求項1~12のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【請求項14】
前記第1流路が、前記第1流路内を通過する流体の移動を、前記サンプリング部から前記サンプル貯留容器の方向へ限定するための一方向弁を少なくとも1つ備える、請求項1~13のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【請求項15】
前記第1流路が、無菌接続継手を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル貯留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療など、細胞を培養する必要がある技術分野において、無菌状態を維持したまま、長期間培養する装置が開発されている。そのような装置において培養された細胞の状態を調べるためには、培養を行う空間の無菌性は維持したまま、培養液などを非無菌空間に搬出する必要がある。従来、細胞培養器内の培養液のサンプリングを行う場合、無菌空間であるインキュベータに隣接して設けられたパスボックスなどにインキュベータ内のサンプルを一旦搬出してから外部に取り出す必要があり、サンプリングに手間と時間がかかっていた。
【0003】
このような課題に対し、無菌状態に保たれたインキュベータ内に複数の細胞培養器を収容可能なアイソレータ方式のサンプリングシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。当該システムには、無菌空間を保つために培養液の流れを無菌空間の内部から外部に限定する一方向弁が設けられており、それにより、アイソレータ内部の無菌性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のサンプリングシステムは、チューブポンプにより生じた圧力を利用してサンプルを無菌空間から非無菌空間へ送出するものであった。しかしながら、サンプルを測定部で一定量貯留する必要がある分析装置を用いる場合、測定部に確実に基準量のサンプルを自動で貯留することが困難であった。特に分析装置の流路長が長くなると、流路の途中にサンプルが残存し、所望の量のサンプルを貯留することが困難であった。本発明は、流路の長短に関わらず、所望の量のサンプルを回収可能とする、新規のサンプル貯留装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対し、本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、サンプル貯留容器に接続した流路に流体識別センサを設けることによって、サンプル貯留容器に導入される流体(例えば、サンプル、空気、緩衝液など)を識別し、その識別情報を基に、サンプル貯留容器に導入される流体の量を制御し、所望の量のサンプルを貯留することが可能なサンプル貯留装置を開発するに至った。すわなち、本発明は、以下を含む。
【0007】
[1] 蓋体と;
前記蓋体によって密閉可能なサンプル貯留容器と;
前記サンプル貯留容器の側部または前記蓋体に設けられた第1流体吸入部と;
前記サンプル貯留容器の側部または前記蓋体に設けられた第2流体吸入部と;
前記サンプル貯留容器の底部に設けられた第1流体排出部と;
前記サンプル貯留容器の側部または前記蓋体に設けられた第2流体排出部と;
前記第1流体吸入部に接続された第1流路であって、ここで前記第1流路は、サンプリング部と接続するために用いられる、前記第1流路と;
前記第2流体吸入部に接続された第2流路であって、ここで前記第2流路は、前記サンプル貯留容器の外部と連通している、前記第2流路と;
前記第1流体排出部に接続された第3流路であって、ここで前記第3流路は、第1流体排出手段が設けられている、前記第3流路と;
前記第2流体排出部に接続された第4流路であって、ここで前記第4流路は、第2流体排出手段が設けられている、前記第4流路と;
前記第1流路の流体を識別するための、第1流体識別センサと;
を備え、
ここで、第1流体吸入部または前記第1流路が第1開閉機構を有し;第2流体吸入部または前記第2流路が第2開閉機構を有し;第1流体排出部または前記第3流路が第3開閉機構を有し;そして第2流体排出部または前記第4流路が第4開閉機構を有し、
ここで、前記第1開閉機構が開く場合は前記第2開閉機構が閉じ、または、前記第2開閉機構が開く場合は前記第1開閉機構が閉じるよう作動し、
ここで、前記第3開閉機構が開く場合は前記第4開閉機構が閉じ、または、前記第4開閉機構が開く場合は前記第3開閉機構が閉じるよう作動することを特徴とする、
サンプル貯留装置。
[2] 前記サンプル貯留容器の外側において、前記第2流体排出部の配置よりも低い位置に、第2流体識別センサをさらに備える、[1]に記載のサンプル貯留装置。
[3] 前記第3流路の流体を識別するための、第3流体識別センサをさらに備える、[1]又は[2]に記載のサンプル貯留装置。
[4] 前記第1流体排出部の周辺の流体を検出するための、第4流体識別センサをさらに備える、[1]~[3]のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
[5] 前記第1流体排出手段および前記第2流体排出手段が、チューブポンプ又はピエゾポンプである、[1]~[4]のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
[6] 前記第3流路と前記第4流路の下流部が、結合して一体となった第5流路を有し、
ここで前記第1流体排出手段は前記第2流体排出手段と同一のものであって、かつ、前記第1流体排出手段が前記第5流路に設けられていることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
[7] 前記第1流路の途中から分岐した第6流路と;
前記第6流路に設けられた第3流体排出手段と;
前記第6流路に設けられた第5開閉機構と;
前記第1流路に設けられた第6開閉機構と
をさらに備え、
ここで前記第5開閉機構が開く場合は前記第6開閉機構が閉じ、または、前記第6開閉機構が開く場合は前記第5開閉機構が閉じるよう作動することを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
[8] 第1流体識別センサと、前記第1開閉機構と、前記第2開閉機構と、前記第3開閉機構と、前記第4開閉機構と、前記第1流体排出手段と、前記第2流体排出手段とを制御するための制御部をさらに備える、[1]~[7]のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
[9] 第1流体識別センサと、前記第1開閉機構と、前記第2開閉機構と、前記第3開閉機構と、前記第4開閉機構と、前記第1流体排出手段と、前記第2流体排出手段と、前記第3流体排出手段と、前記第5開閉機構と、前記第6開閉機構とを制御するための制御部をさらに備える、[7]に記載のサンプル貯留装置。
[10] 前記蓋体が、サンプル回収手段を挿入可能な挿入部を有する、[1]~[9]のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
[11] 前記第1流路の上流部が、サンプリング部と接続されていることを特徴とする、[1]~[10]のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【0008】
[12] 前記サンプリング部がアイソレータの内部に設けられ、前記第1流路が前記アイソレータに設けられた液送ポートを介して、前記アイソレータの外部と繋がっていることを特徴とする、[11]に記載のサンプル貯留装置。
[13] 前記サンプリング部にサンプルを供給するためのサンプル供給手段、をさらに備える、[11]又は[12]に記載のサンプル貯留装置。
【0009】
[14] 前記サンプリング部と連通した第7流路と;
前記第7流路に緩衝液を供給するための緩衝液供給部と;
前記第7流路に設けられた第4流体排出手段と、
をさらに備える、[11]~[13]のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
[15] 前記第1流路が、前記第1流路内を通過する流体の移動を、前記サンプリング部から前記サンプル貯留容器の方向へ限定するための一方向弁を少なくとも1つ備える、[1]~[14]のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
[16] 前記第1流路において、無菌接続継手を有する、[1]~[15]のいずれか1項に記載のサンプル貯留装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サンプリングシステムの流路長に関わらず、確実に所望の量のサンプルを回収することが可能となり、また、流路及びサンプル貯留容器内の洗浄も確実に履行できるようになる。これにより、例えば無菌的にサンプリングする必要があるサンプルを、自動で回収可能なサンプリングシステムを構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態のサンプル貯留装置の概略構成図である。
【
図2】一実施形態のサンプル貯留装置に接続された流路内部を示す概略構成図である。
【
図3】一実施形態のサンプル貯留装置の概略構成図である。
【
図4】一実施形態のサンプル貯留装置に使用されるアイソレータ及びその内部の概略構成図である。
【
図5-1】一実施形態のサンプル貯留装置に使用される無菌サンプリング流路キットの使用手順を示す概略図である。
【
図5-2】一実施形態のサンプル貯留装置に使用される無菌サンプリング流路キットの使用手順を示す概略図である。
【
図6-1】一実施形態のサンプル貯留装置の使用態様を示す図である。
【
図6-2】一実施形態のサンプル貯留装置の使用態様を示す図である。
【
図6-3】一実施形態のサンプル貯留装置の使用態様を示す図である。
【
図6-4】一実施形態のサンプル貯留装置の使用態様を示す図である。
【
図6-5】一実施形態のサンプル貯留装置の使用態様を示す図である。
【
図6-6】一実施形態のサンプル貯留装置の使用態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
1-1.サンプル貯留装置(第1態様)
図1は、本発明の一実施形態に係るサンプル貯留装置1の概略構成図である。一実施形態において、サンプル貯留装置1は、
蓋体10と;
前記蓋体10によって密閉可能なサンプル貯留容器11と;
前記サンプル貯留容器11の側部110に設けられた第1流体吸入部12と;
前記サンプル貯留容器11の側部110に設けられた第2流体吸入部13と;
前記サンプル貯留容器11の底部111に設けられた第1流体排出部14と;
前記サンプル貯留容器11の側部110に設けられた第2流体排出部15と;
前記第1流体吸入部12に接続された第1流路16であって、ここで前記第1流路16は、サンプリング部503と接続するために用いられる、前記第1流路16と;
前記第2流体吸入部13に接続された第2流路17であって、ここで前記第2流路17は、前記サンプル貯留容器11の外部と連通している、前記第2流路17と;
前記第1流体排出部14に接続された第3流路18であって、ここで前記第3流路18は、第1流体排出手段30が設けられている、前記第3流路18と;
前記第2流体排出部15に接続された第4流路19であって、前記第4流路19は、第2流体排出手段300が設けられている、前記第4流路19と;
前記第1流路16の流体を識別するための、第1流体識別センサ21と;
を備え、
ここで、前記第1流路16が第1開閉機構24を有し;前記第2流路17が第2開閉機構25を有し;前記第3流路18が第3開閉機構27を有し;そして前記第4流路19が第4開閉機構28を有している。
【0014】
図1において、蓋体10及びサンプル貯留容器11は、その断面図を示している。サンプル貯留容器11の開口部に蓋体10を脱着させ、サンプル貯留容器11の内部空間を密閉及び開放することができる。蓋体10は、サンプル貯留容器11を密閉することができればよく、例えば、嵌合や、螺着によって脱着するものであってもよい。蓋体10は、例えば、金属(例えば、ステンレス鋼)、コルク、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリルアミド誘導体、ポリスルホン、ポリカーボネート、セルロース、セルロース誘導体、ガラス、セラミックであってもよく、可撓性材料(例えば、ゴム栓(例えば、天然ゴム、合成ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムなど))であってもよい。
【0015】
サンプル貯留容器11は、所望の量のサンプルを十分に収容することができる。サンプル貯留容器11は、例えば、金属(例えば、ステンレス鋼)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリルアミド誘導体、ポリスルホン、ポリカーボネート、セルロース、セルロース誘導体、ガラス、セラミックなどであってもよいが、後述の第2流体識別センサ22によって、サンプル貯留容器11内部の流体を検出できるように、透明または半透明の材質が好ましい。
【0016】
一実施形態において、サンプル貯留容器11の側部110は、第1流体吸入部12と、第2流体吸入部13と、第2流体排出部15とを備えている。第1流体吸入部12、第2流体吸入部13、第2流体排出部15は、それぞれ、サンプル貯留容器11の内外を貫通する開口部を有している。第1流体吸入部12、第2流体吸入部13および第2流体排出部15は、所望のサンプル量がサンプル貯留容器11に収容された場合の液面より高い位置に設けられている。第1流体吸入部12、第2流体吸入部13および第2流体排出部15は、それぞれが略水平となる位置に設けられても良く、略垂直となる位置に設けられても良く、ランダムな位置に設けられても良く、サンプリングシステム全体の構成によって適宜変更することが可能である。他の実施態様において、第1流体吸入部12、第2流体吸入部13または第2流体排出部15は、例えばサンプル貯留容器11の開口部に取り付けられる蓋体10に設けられてもよい。
【0017】
サンプル貯留容器11の底部111は、第1流体排出部14を備えている。サンプル貯留容器11の底部111は、貯留されたサンプル等が貯留容器11から流出しやすく、第1流体排出部14と連結した箇所に位置しており、例えばサンプル貯流容器11の下端や、下端から側部へと傾斜した箇所であっても良い。第1流体排出部14は、サンプル貯留容器11の内外を貫通する開口部を有している。サンプル貯留容器11に貯留されたサンプルや緩衝液は、第1流体排出部14から排出される。
図1において、第1流体排出部14は、サンプル貯留容器11の側部110に設けられているが、サンプル貯留容器11の底面に設けられても良い。第1流体排出部14は、サンプリングシステム全体の構成によって適宜変更することが可能である。
【0018】
第1流体吸入部12には、第1流路16が接続されている。第1流路16は、サンプルが供給されるサンプリング部503と流体接続される。第1流路16には、第1流路16を通過する流体を識別するための、第1流体識別センサ21を備えている。第1流体識別センサ21により、第1流路16内を流れている流体の種類、例えば、サンプルを含む培地、緩衝液、または気体(例えば空気)を識別することができる。第1流体識別センサ21は、公知のセンサ、例えば光学式センサや近接センサを用いることができる(後述の第2流体識別センサ22、第3流体識別センサ23および第4流体識別センサ230にも適用される)。例えば、光学式センサを用いる場合、所定の波長の光を第1流路16に垂直に照射し、反射光または透過光を検出することによって、流体の種類を識別することができる。特に、第1流路16内を流れる流体の種類が変わる場合(例えば、緩衝液から空気に変わる場合など)、検出される信号が大きく変化するので、流体の種類が変わったことを識別することが可能となる。
【0019】
第2流体吸入部13には、第2流路17がその一端部において接続されている。第2流路17の他端部には通気フィルタ410が接続されており、第2流路17は、通気フィルタ410を介して、サンプル貯留容器11の外部と連通している。通気フィルタ410は、サンプル貯留容器11の内部が汚染されることを防止し、なおかつ、サンプル貯留容器11の外部から流体(特に空気)を吸入することを妨げないものであればよく、市販のフィルタを用いることができる。
【0020】
一実施態様において、第1流体排出部14には、第3流路18が接続されている。また、第3流路18には、流体を排出するための第1流体排出手段30が設けられている。第1流体排出手段30が作動することにより、サンプル貯留容器11に貯留された流体(例えば、サンプル、緩衝液または空気など)を排出することができる。
【0021】
一実施態様において、第2流体排出部15には、第4流路19が接続されている。また、第4流路19には、流体を排出するための第2流体排出手段300が設けられている。第2流体排出手段300が作動することにより、サンプル貯留容器11内の流体、特に気体(空気など)を排出することができる。
【0022】
図1に示される一実施態様において、第3流路18と第4流路19の下流部は、結合して一体となった第5流路20を形成している。この場合、第1流体排出手段30と第2流体排出手段300は同一のものであり、第5流路20に設けられる。
【0023】
第1流体排出手段30および/または第2流体排出手段300は、例えば、チューブポンプ(ペリスタポンプ)であってもよく、ピエゾポンプであってもよく、流体を送り出すことができるポンプであれば使用することができる。
【0024】
一実施形態において、第1流体排出手段30より下流の第3流路18(
図1の態様の場合は、第5流路20)には、廃液槽40が接続されている。廃液槽40には、通気チューブ41が接続され、さらに通気チューブ41に通気フィルタ410が接続されている。
図1の第5流路20を有さない場合は、第2流体排出手段300より下流の第4流路19は通気フィルタ410が接続されている。
【0025】
サンプル貯留装置1は、第1流路16は第1開閉機構24を有し;第2流路17は第2開閉機構25を有し;第3流路18は第3開閉機構27を有し;そして第4流路19は第4開閉機構28を有している。第1開閉機構24、第2開閉機構25、第3開閉機構27および第4開閉機構28は、流路を開閉する機構であればよく、例えば、開閉弁、好ましくはピンチバルブである。ピンチバルブであれば、流路を挟むことで、流路内の流体の流れを遮断することができる。一実施態様において、第1開閉機構24、第2開閉機構25、第3開閉機構27および第4開閉機構28が、ピンチバルブである場合、流路(第1流路16、第2流路17、第3流路18および第4流路19)は、滅菌可能であり、可撓性を有するチューブを用いることが好ましく、例えば、医療用チューブを採用することができる(例えば、シリコーンゴムチューブ、ポリエチレンチューブ、ポリイミドチューブ、フッ素系樹脂チューブなど)。
【0026】
サンプル貯留装置1において、第1開閉機構24が開く場合は第2開閉機構25が閉じ、または、第2開閉機構25が開く場合は第1開閉機構24が閉じるように作動する。一実施態様において、第1開閉機構24および第2開閉機構25は、第1開閉切り替え装置26によって、交互に開閉する。
【0027】
サンプル貯留装置1において、第3開閉機構27が開く場合は第4開閉機構28が閉じ、または、第4開閉機構28が開く場合は第3開閉機構27が閉じるよう作動する。一実施態様において、第3開閉機構27および第4開閉機構28は、第2開閉切り替え装置29によって、交互に開閉する。
【0028】
一実施態様において、第1開閉切り替え装置26および第2開閉切り替え装置29は、例えば、ピンチバルブ切り替え装置である。
【0029】
一実施態様において、サンプル貯留装置1は、サンプル貯留容器11の外側において、第1流体吸入部12、第2流体吸入部13及び第2流体排出部15の配置よりも低い位置に、第2流体識別センサ22をさらに備えている。第2流体識別センサ22により、必要サンプル量ライン220(例えば、
図6-1参照)まで、サンプルや緩衝液が、サンプル貯留容器11を貯留できたかどうかを判定することができる。また、必要以上にサンプル貯留容器11に流体が流入することを防止することができる。なお、第2流体識別センサ22は、第2流体排出部15の配置よりも低い位置に備えられていればよく、第1流体吸入部12、及び第2流体吸入部13よりも高い位置に備えられたものであってもよい。
【0030】
一実施態様において、サンプル貯留装置1は、第3流路18の流体を識別するための、第3流体識別センサ23をさらに備えている。第3流体識別センサ23により、サンプル貯留容器11に貯留された流体(例えば、サンプル、緩衝液など)が確実に排出されたことを確認することができる。
【0031】
一実施態様において、サンプル貯留装置1は、第1流体排出部14の周辺の流体を識別するための、第4流体識別センサ230をさらに備えている。第4流体識別センサ230により、サンプル貯留容器11の第1流体排出部14の周辺に貯留された流体(例えば、サンプル、緩衝液など)の有無を確認することができる。
【0032】
本発明にかかるサンプル貯留装置1は、例えば、公知のインキュベータ内、安全キャビネット内、アイソレータ内または任意の場所に設置することができる。好ましくは、サンプル貯留装置1は、アイソレータ6を使用する無菌サンプリング装置とともに使用される。
【0033】
図示されないが、一実施態様において、サンプル貯留装置1は、第1流体識別センサ21と、第1開閉機構24と、第2開閉機構25と、第3開閉機構27と、第4開閉機構28と、第1流体排出手段30と、第2流体排出手段300とを制御するための制御部(例えば、CPUユニット)を備えても良い。当該制御部によって、サンプル貯留装置1を適切に制御し、確実にサンプリングすることができる。当該制御部は、さらに第2流体識別センサ22、第3流体識別センサ23、第4流体識別センサ230を制御するものであってもよい。
【0034】
一実施態様において、蓋体10は、サンプル回収手段31を挿入可能な挿入部(図示しない)を有する。例えば、蓋体10が可撓性材料(例えば、ゴム栓(例えば、天然ゴム、合成ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムなど))からなる蓋体10である場合、サンプル回収手段31の先端が鋭利であれば(例えば、
図6-4参照)、蓋体10を貫通して、サンプル貯留容器11の内部にサンプル回収手段31を挿入することができる。また、可撓性材料の復元力により、サンプル回収手段31を抜去後に貫通孔が塞がり、サンプル貯留容器11の内部空間を再び密封状態に保つことが出来る。挿入部は可撓性材料であることが好ましく、蓋体10の少なくとも一部が可撓性材料であることが好ましい。また、挿入部は、サンプル回収手段31の直径よりも小さい貫通孔を有していてもよい。
【0035】
一実施態様において、第1流路16の上流部は、サンプリング部503と接続されている。サンプリング部503は、第1流路16と直接または間接的に流体連通しており、サンプルを導入するための開口部を有している。サンプリング部503は、第7流路506を介して、緩衝液供給部501と流体接続されている。第7流路506は、第4流体排出手段508を備えており、第4流体排出手段508が作動することにより、緩衝液502がサンプリング部503へと供給される。サンプリング部503の底部の排出口503aには、サンプル供給手段510の先端部が挿入される。第4流体排出手段508は、例えば、チューブポンプ(ペリスタポンプ)であってもよく、ピエゾポンプであってもよく、流体を送り出すことができるポンプであれば使用することができる。緩衝液502としては、サンプルSPに含まれる物質の性質を変化させないように、pHの変動を最小限に抑える性質を有する溶液を使用することができ、例えば、細胞の培養に用いられる液体培地(例えば、DMEM、RPMI-1640等)の他、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液、HEPPS緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などを用いることができる。緩衝液502は、回収するサンプルSPの種類や目的に応じて適宜選択することができる。また、緩衝液502の代わりに、水や生理食塩水を用いてもよい。
【0036】
サンプル供給手段510は、内部の気圧を陰圧又は陽圧に変化させることにより、流体の吸入及び排出を行うことができるものであり、例えば、ピペットやチューブなどを採用することができる(例えば、
図3および
図4を参照)。サンプル供給手段510がピペットである場合、その先端部は交換可能なディスポーザブルタイプのピペットチップであることが好ましい。ディスポーザブルタイプのピペットチップであれば、サンプル毎に容易にチップを交換することが可能であり、サンプル間のクロスコンタミネーションを防止することができる。ディスポーザブルのピペットチップは、市販のものを使用することができ、取り扱うサンプル量や用途に応じて、例えば、1μL、10μL、20μL、100μL、200μL、250μL、300μL、500μL、1000μL、1200μL、2000μL、またはそれ以上の容量用のピペットチップを用いることができる。サンプル供給手段510は、サンプル間のクロスコンタミネーションを防止するためにフィルタを有するものであってもよい。
【0037】
他の実施態様において、図示しないが、サンプリング部503の排出流路503bの一部は、サンプル供給手段510から供給される流体が漏れることを防止するためのシール部材(例えば、Oリングやパッキン、内部に気体や液体などを注入することで膨張する中空のシール部材など)を備えてもよい。この場合、サンプリング部503に接続されている流路の一部は、大気と連通可能な流路を有しており(例えば、開閉機構を備えている)、例えば
図3に示される第3流体排出手段36を備えていない。シール部材により、サンプル供給手段510を排出流路503bに直接挿入した場合に、サンプル供給手段510から供給されるサンプルSPおよび緩衝液502などの液体、ならびに気体などの流体に圧力を加えながら、第1流路16へと送り出すことが可能となる。
【0038】
また、さらに他の実施態様において、サンプル供給手段510の先端部は、サンプリング部503の排出口503aを覆うフランジ部を有していてもよい(図示しない)。この場合、フランジ部又は排出口503aの周辺部には、流体が漏れることを防止するためのシール部材(例えば、パッキン又はOリング)が設けられている。
【0039】
一実施態様において、サンプル供給手段510は気体供給手段511を備えている(
図4を参照)。気体供給手段511は、気体Gをサンプル供給手段510に送り出す機構を有する。気体供給手段511は、圧縮した気体Gを送り出す機構を有するものであればよく、例えば、シリンジや、圧縮した気体を含むボンベなどを用いることができる。好ましくは、気体を吸入及び排出できる機能を有するものであり、例えば、シリンジを採用することができる。気体供給手段511がシリンジであれば、ピストン511a(
図4参照)を引くことにより、サンプル供給手段510内を陰圧にすることができ、サンプル供給手段510内に流体を吸入することができる。また、ピストン511aを押すことにより、圧縮した気体Gをサンプル供給手段510内へと供給することができる。流体の吸入及び排出のいずれも実施することができる点により、気体供給手段511はシリンジが好ましい。
【0040】
図2は、サンプリング部503から導入されたサンプルSP、緩衝液502および気体(G1及びG2)が第1流路16内を移動する様子を模式的に示した図である。緩衝液502により洗浄された第1流路16において、緩衝液502が存在する領域の後に第1気体G1が存在する領域を設けることにより、サンプルSPと緩衝液502とが混合することを防止することができる。第1気体G1が存在する領域は、第1流路16の下流に設けられた任意の流体排出手段を駆動させることにより供給されても良く、サンプル供給手段510によって気体G1が供給されてもよい。
【0041】
第1気体G1が存在するが第1流路16において、第1気体G1の後にサンプルSPをサンプル供給手段510によって供給する(工程(1))。その後、が第1流路16内のサンプルSPの後に、サンプル供給手段510によって第2気体G2を供給し、サンプルSPを第1流路16の下流へと送達させる(工程(2))。第1気体G1の体積量は、緩衝液502とサンプルSPとが混合されない量であればよく、限定されない。また、気体G2の体積量は、サンプルSPを第1流路16またはその下流の部材の所定の位置に移動させることができる量であればよく、適宜変更することができる。なお第1気体G1と第2気体G2は、サンプルSPを挟み込むために用いられるものであればいかなるものであってもよく、同一種類の気体であってもよく、別種類の気体であってもよい。
【0042】
1-2.サンプル貯留装置(第2態様)
図3は、他の実施態様のサンプル貯留装置1aを示す概略構成図である。基本的な構成は、
図1のサンプル貯留装置1と同じであり、サンプル貯留装置1と同一の参照番号を有する部材は、サンプル貯留装置1の各部材と同一の機能を発揮するため、ここでは省略する。
【0043】
サンプル貯留装置1aは、サンプル貯留装置1の構成に加え、さらに、
第1流路16の途中から分岐した第6流路32と;
前記第6流路32に設けられた第3流体排出手段36と;
前記第6流路32に設けられた第5開閉機構33と;
前記第1流路16に設けられた第6開閉機構34と、備えている。
【0044】
第5開閉機構33および第6開閉機構34は、流路を開閉する機構であればよく、例えば、開閉弁、好ましくはピンチバルブである。ピンチバルブであれば、流路を挟むことで、流路内の流体の流れを遮断することができる。一実施態様において、第5開閉機構33および第6開閉機構34が、ピンチバルブである場合、流路(第1流路16および第6流路32)は、滅菌可能であり、可撓性を有するチューブを用いることが好ましく、例えば、医療用チューブを採用することができる(例えば、シリコーンゴムチューブ、ポリエチレンチューブ、ポリイミドチューブ、フッ素系樹脂チューブなど)。
【0045】
サンプル貯留装置1aにおいて、第5開閉機構33が開く場合は第6開閉機構34が閉じ、または、第6開閉機構34が開く場合は第5開閉機構33が閉じるよう作動する。一実施態様において、第5開閉機構33および第6開閉機構34は、第3開閉切り替え装置35によって、交互に開閉する。
【0046】
第3流体排出手段36は、例えば、チューブポンプ(ペリスタポンプ)であってもよく、ピエゾポンプであってもよく、流体を送り出すことができるポンプであれば使用することができる。
【0047】
サンプル貯留装置1aに、第1流路16の途中から分岐した第6流路32を有することにより、例えば、サンプル貯留容器11に貯留されたサンプルを、サンプル回収手段31によって回収している間であっても、サンプリング部503へ緩衝液502を流し続けることが可能となり、後述するアイソレータ6の内部空間の無菌性を維持することが可能となる。
【0048】
図示されないが、一実施態様において、サンプル貯留装置1aは、第1流体識別センサ21と、第1開閉機構24と、第2開閉機構25と、第3開閉機構27と、第4開閉機構28と、第1流体排出手段30と、第2流体排出手段300と、第3流体排出手段36と、第5開閉機構33と、第6開閉機構34とを制御するための制御部(例えば、CPUユニット)を備えても良い。当該制御部によって、サンプル貯留装置1aを適切に制御し、確実にサンプリングすることができる。
【0049】
一実施態様において、サンプル貯留装置1aは、サンプリング部503がアイソレータ6の内部に設けられ、第1流路16がアイソレータ6に設けられた液送ポート63を介して、アイソレータ6の外部と繋がっている。
【0050】
アイソレータ6とは、環境及び従事者の直接介入から物理的に完全に隔離された無菌操作区域を有する装置であって、除染した後にHEPAフィルタ又はULPAフィルタ等により、ろ過した空気を供給し、外部環境からの汚染の危険性を防ぎながら連続して使用することができる装置をいう。
図3(又は
図4を参照)のアイソレータ6は、無菌チャンバ61によって、外部空間と隔離されており、図示されないが、HEPAフィルタ又はULPAフィルタを備えている。さらに、アイソレータ6は、図示されないが、アイソレータ内部空間Sを除染するための除染手段を備えている。「除染」とは、再現性のある方法によって生存微生物を除去し、または予め指定されたレベルまで減少させることをいう。除染手段とは、「除染」を実現するために用いられる手段であり、例えば、除染剤を用いる手段、プラズマ処理を行う手段、ガンマ線を用いる手段、紫外線を用いる手段等を採用することができるが、これに限定されない。好ましくは、除染剤を用いる手段である。除染剤の例としては、例えば、過酸化水素又は過酢酸のミスト若しくは蒸気、オゾンガス、二酸化塩素ガス、エチレンオキサイドガスなどが挙げられる。これらの除染手段を用いることにより、アイソレータ内部空間Sを除染することができる。
【0051】
アイソレータ6の内外を隔離する無菌チャンバ61には、液送ポート本体63cが設けられている。液送ポート本体63cは、円筒状であってもよく、中空の直方体状であってもよく、限定されない。液送ポート本体63cにより無菌チャンバ61の内外が連通される。液送ポート本体63cの液送ポート開口部631及び液送ポート開口部630には、液送ポート内蓋63a及び液送ポート外蓋63bをそれぞれ嵌めることができ、液送ポート開口部631及び液送ポート開口部630を密閉することができる。液送ポート63は、少なくとも液送ポート内蓋63a、液送ポート外蓋63b及び液送ポート本体63cを含んでいる。液送ポート内蓋63aは、第8流路504が貫通しており、液送ポート内蓋63aの第8流路504が貫通している部分はシール部材等により流体が漏れないようシールされている。
【0052】
第8流路504は、サンプリング部503の排出流路503bと連通している。サンプリング部503に供給されたサンプル又は緩衝液502は、サンプリング部503の排出流路503bと連通した第8流路504を通ってアイソレータ6の外部へと排出され、さらに第8流路504と流体連結された第1流路16へと送り出される。
【0053】
一実施形態において、第8流路504は、第8流路504内の流体の移動を、サンプリング部503から液送ポート63の方向へ限定するための、少なくとも1つの一方向弁505が備えられている。これにより、アイソレータ6の内部方向へ、流体が逆流することを防止することができる。
【0054】
本発明に用いられる全ての流路(第1~第8流路)の内壁は、液体の濡れ性が低い、すなわち疎水性であることが好ましい。これにより、少量のサンプルSPであっても、流路の内壁にサンプルSPが付着することを防止することができ、サンプルSPを効率的にアイソレータ6の外部へと送達することが可能となる。本発明に用いられる流路としては、滅菌可能であり、可撓性を有するチューブを用いることができ、例えば、医療用チューブを採用することができる(例えば、シリコーンゴムチューブ、ポリエチレンチューブ、ポリイミドチューブ、フッ素系樹脂チューブなど)。
【0055】
一実施態様において、第8流路504は、その流路の途中に無菌接続継手507を備えてもよい。無菌接続継手507は、無菌接続継手(オス型)507a及び無菌接続継手(メス型)507bを組み合わせ、無菌接続継手(オス型)507a及び無菌接続継手(メス型)507bの開口をそれぞれ密閉するメンブレンストリップ5070を引っ張って剥がし、無菌接続継手(オス型)507a及び無菌接続継手(メス型)507bをロックすることにより、無菌的に連結することができる。無菌接続継手507は市販されているものを利用することができ、例えば、ポール社(米国)やザルトリウス社(ドイツ)やコールダー・プロダクツ・カンパニー社(米国)などから入手することができる。無菌接続継手(オス型)507a及び無菌接続継手(メス型)507bは、入れ替えて利用することができる。第8流路504の途中であって、液送ポート内蓋63aの下流に無菌接続継手(オス型)507a(又は無菌接続継手(メス型)507b)を備えることにより、アイソレータの内外を無菌的に接続する流路を最小限化することができる。また、無菌接続継手507により、無菌接続継手507の下流の流路を自由に設計することが可能となる。
【0056】
2.サンプル貯留装置に使用される無菌サンプリング流路キットの使用手順
一実施態様における、サンプル貯留装置1aを使用可能な状態に準備するための手順について説明する(
図5)。
【0057】
本発明のサンプル貯留装置1aは、無菌サンプリング流路キット50を用いることができる。一実施態様において、無菌サンプリング流路キット50は:
サンプリング部503と;
前記サンプリング部503と連通した第8流路504と;
前記第8流路504に設けられ、前記第8流路504内の流体の移動を、前記サンプリング部503から前記液送ポート63の方向へ限定するための、少なくとも1つの一方向弁505と;を備えている。
【0058】
他の実施態様において、無菌サンプリング流路キット50は、
図5-1(A)に示す様に、サンプリング部503と連通した第7流路506と、第7流路506に流体を供給するための緩衝液供給部501と、第7流路506に設けられた第4流体排出手段508と、をさらに備えてもよい。また、他の実施形態において、無菌サンプリング流路キット50は、さらに第8流路504の下流端には無菌接続継手を有していてもよい。無菌サンプリング流路キット50に含まれる上記の各部材は、個別の滅菌バッグ500に封入されていてもよく、
図5-1(A)に示す様に、同一の滅菌バッグ500に封入されていてもよい。滅菌バッグ500に封入された無菌サンプリング流路キット50の各部材は、例えば、ガンマ線又は電子線によって予め滅菌されている。
【0059】
上述の無菌サンプリング流路キット50は、アイソレータ6の液送ポート本体63cの開口、又は、アイソレータ6に別途設けられた除染パスボックス(図示しない)からアイソレータ6の内部へ搬入される(
図5-1(A))。その後、外側の液送ポート開口部630を液送ポート外蓋63bで密閉し、アイソレータ6の内部及び無菌サンプリング流路キット50を除染する(
図5-1(B))。液送ポート内蓋63aは、
図5-1のように滅菌バッグ500に封入された状態で提供されてもよく、滅菌バッグ500とは別にアイソレータ6内に提供されてもよい。
【0060】
除染完了後、アイソレータ6に設けられた、アイソレータ6の外部から操作者の腕を挿入可能なグローブ62を用いて、滅菌バッグ500を開封し、各部材を組み立てる。第8流路504、一方向弁505及び無菌接続継手(オス型)507aを液送ポート本体63cの内部に入れ、第8流路504が貫通している液送ポート内蓋63aにより密閉する(
図5-2(C))。アイソレータ6の外部から、液送ポート外蓋63bを外し、第8流路504、一方向弁505及び無菌接続継手(オス型)507aを液送ポート本体63cより取り出す。その後、無菌接続継手(メス型)507bを一端に有する第1流路16と無菌接続継手507によって無菌的に連結させる。以上により、本発明の無菌サンプリング流路キットを用いたサンプル貯留装置1aが使用可能となる。
【0061】
3.サンプル貯留装置を使用したサンプルの貯留方法
図6(
図6-1~
図6-4)では、一実施態様のサンプル貯留装置1aの動作を示す模式図である。
【0062】
上記2.に従って、アイソレータ6の内部に設置したサンプリング部503と接続したサンプル貯留装置1aを使用したサンプルの貯留方法を図および以下の表を参照しながら説明する。
【0063】
【0064】
表1において、「作動対象部材」とは、各工程で作動させるサンプル貯留装置1aの各部材をいい、表1では略称として示している。各部材の参照部材番号は、「作動対象部材」の下に記載された番号に相当し、上記で説明した参照部材番号と一致する。
【0065】
表1において、「緩衝液用ポンプ」、「ポンプ(1)」および「ポンプ(2)」は、それぞれ、「第4流体排出手段508」、「第3流体排出手段36」および「第1流体排出手段30」を示す。「ON」は、対象のポンプが作動中であることを示す。「OFF」は、対象のポンプが停止中であることを示す。
【0066】
表1において、「バルブ(1)」、「バルブ(2)」および「バルブ(3)」は、それぞれ「第3開閉切り替え装置35」、「第1開閉切り替え装置26」および「第2開閉切り替え装置29」に相当する。表1の「上」および「下」の記載は、
図6の配管図において開放されている開閉機構の位置を示す。例えば、「バルブ(1)」が「上」であれば、第5開閉機構33が「開」で、第6開閉機構34が「閉」の状態であることを示す。
【0067】
表1において、「センサ(1)」、「センサ(2)」および「センサ(3)」は、それぞれ、「第1流体識別センサ21」、「第2流体識別センサ22」および「第3流体識別センサ23」に相当する。「センサ(1)」は、緩衝液、空気またはサンプルを判別する。センサ(2)は、必要サンプル量ラインまで所望の液体が貯留できたかどうかを判別する。センサ(3)は、サンプル貯留容器11から液体が排出されたかどうかを判別する。表1の「L」は「液体」が検出されることを示し、「A」は「空気」が検出されたことを示す。
【0068】
工程を、上記の工程1~13に分けて説明する。
【0069】
工程1.緩衝液(の灌流):
本工程によって、緩衝液502を、継続的にサンプリング部503へと供給し、第6流路32を通って、廃液槽40へと排出する(
図6-1参照)。アイソレータ6内で培養細胞を培養中、本工程が実施することで、アイソレータ6の内部が汚染されることを防止する。
【0070】
工程2.空気層(の導入):
緩衝液用ポンプを停止し、ポンプ(1)の作用により、アイソレータ6の内部の空気を、サンプリング部503を介して、第8流路504へと導入する。
【0071】
工程3.サンプル注入:
工程2によって所望の量の空気を第8流路504へと導入した後、工程3を実施する。サンプル供給手段510に含まれるサンプルをサンプリング部503へ吐出し、サンプルを注入する(
図6-2参照)。
【0072】
工程4.空気層の検知:
工程2で導入した空気層を、センサ(1)によって検出する。
【0073】
工程5.サンプルの検知:
工程3で導入したサンプルを、センサ(1)によって検出する。
【0074】
工程6.サンプルの引込:
工程5の後、バルブ(1)、バルブ(2)およびバルブ(3)を切り替え、サンプルを、第1流路16を介してサンプル貯留容器11へと導入する。
【0075】
工程7. サンプルの貯留:
センサ(1)によって空気層を検出することでサンプルの最後尾を検出する。その後、緩衝液用ポンプを作動させ、緩衝液502をサンプリング部503へと導入する。本工程は、センサ(2)によって、サンプルが必要サンプル量ラインまで貯留されたことを確認するまで継続する(
図6-3参照)。
【0076】
工程8.サンプル計測:
サンプル回収手段31を、蓋体10の挿入部から挿入し、サンプルを回収する(必要に応じて、サンプルの所望の性質を計測する)。この時、緩衝液502を、継続的にサンプリング部503へと供給し、第6流路32を通って、廃液槽40へと排出させ、アイソレータ6の内部の無菌性を保つ(
図6-4)。
【0077】
工程9.サンプル排出:
工程8の終了後、残存したサンプルは、サンプル貯留容器11の第1流体排出部14から排出させる。
【0078】
工程10.サンプル排出完了:
センサ(3)が、空気層を検出したら、サンプルの排出は完了する。
【0079】
工程11.緩衝液の貯留(洗浄)
サンプル貯留容器11に緩衝液502を貯留させる。センサ(2)によって緩衝液502が必要サンプル量ラインまで貯留されたことを確認するまで継続する(
図6-5参照)。
【0080】
工程12.緩衝液の排出(洗浄)
緩衝液502をサンプル貯留容器11の第1流体排出部14から排出させる。センサ(3)が空気層を検出したら、本工程は終了する(
図6-6参照)。
【0081】
工程13.緩衝液(の灌流):
基本的には、上記工程1と同様の工程である。
【0082】
工程1~13を実施することにより、アイソレータ6の内部の無菌性は担保しつつ、所望のサンプルを所望の時期に回収することができる。上記工程1~13は、任意の工程を繰り返してもよく、例えば、工程11及び12を所望の回数繰り返すことにより、サンプル貯留容器11の内部に残存したサンプルを十分に洗い流すことができるようになる。
【0083】
上記工程1~13は、上述の制御部によって制御することができ、自動でサンプリングを可能とする自動サンプリング装置を具現化することができるようになる。
【0084】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0085】
1、1a サンプル貯留装置
10 蓋体
11 サンプル貯留容器
110 側部
111 底部
12 第1流体吸入部
13 第2流体吸入部
14 第1流体排出部
15 第2流体排出部
16 第1流路
17 第2流路
18 第3流路
19 第4流路
20 第5流路
21 第1流体識別センサ
22 第2流体識別センサ
220 必要サンプル量ライン
23 第3流体識別センサ
230 第4流体識別センサ
24 第1開閉機構
25 第2開閉機構
26 第1開閉切り替え装置
27 第3開閉機構
28 第4開閉機構
29 第2開閉切り替え装置
30 第1流体排出手段
300 第2流体排出手段
31 サンプル回収手段
32 第6流路
33 第5開閉機構
34 第6開閉機構
35 第3開閉切り替え装置
36 第3流体排出手段
40 廃液槽
400 廃液
41 通気チューブ
410 通気フィルタ
50 無菌サンプリング流路キット
500 滅菌バッグ
501 緩衝液供給部
502 緩衝液
503 サンプリング部
503a 排出口
503b 排出流路
504、504a、504b 第8流路
505 一方向弁
506 第7流路
507 無菌接続継手
507a 無菌接続継手(オス型)
507b 無菌接続継手(メス型)
5070 メンブレンストリップ
508 第4流体排出手段
509 細胞培養部
510 サンプル供給手段
511 気体供給手段
511a ピストン
512 吸引チューブ
6 アイソレータ
61 無菌チャンバ
62 グローブ
63 液送ポート
63a 液送ポート内蓋
63b 液送ポート外蓋
63c 液送ポート本体
630、631 液送ポート開口部
S アイソレータ内部空間
SP サンプル
CL 培養細胞
G 気体
G1 第1気体
G2 第2気体