(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】原子層堆積による多孔質体の耐プラズマ性コーティング
(51)【国際特許分類】
C23C 16/40 20060101AFI20230616BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
C23C16/40
H01L21/316 X
(21)【出願番号】P 2018123910
(22)【出願日】2018-06-29
(62)【分割の表示】P 2018021866の分割
【原出願日】2018-02-09
【審査請求日】2021-02-03
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】バヒド フィロウズドル
(72)【発明者】
【氏名】サマンス バンダ
(72)【発明者】
【氏名】ラジンダー ディンドサ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ビュン
(72)【発明者】
【氏名】ダナ マリー ロベル
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-306625(JP,A)
【文献】特開2008-273823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0141661(US,A1)
【文献】特表2013-525599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/40
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
多孔質体内に複数の細孔を含む多孔質体であって、複数の細孔は、それぞれ細孔壁を含み、多孔質体は、ガスを透過可能である多孔質体と、
多孔質体の表面上及び多孔質体内の複数の細孔の細孔壁上の耐プラズマ性コーティングであって、耐プラズマ性コーティングは約5nm~約3μmの厚さを有し、高純度Al
2O
3層と高純度Al
2O
3層上のY
2O
3-ZrO
2の固溶体から本質的になり、耐プラズマ性コーティングは、細孔壁をフッ素プラズマによる浸食から保護し、耐プラズマ性コーティングを有する多孔質体は、ガスを透過可能のままであり、耐プラズマ性コーティングは
空孔がなく、±20%より小さい厚さの変動を有する均一な厚さを有する耐プラズマ性コーティングを含み、
物品は半導体処理チャンバのコンポーネントである物品。
【請求項2】
Y
2
O
3
-ZrO
2
の固溶体が、約10~90モル%のY
2
O
3
と約10~90モル%のZrO
2
から本質的になる請求項1記載の物品。
【請求項3】
Y
2O
3-ZrO
2の固溶体が、
約40~80モル%のY
2O
3と
約20~60モル%のZrO
2
から本質的になる請求項1記載の物品。
【請求項4】
Y
2O
3-ZrO
2の固溶体が、
約60~70モル%のY
2O
3と
約30~40モル%のZrO
2
から本質的になる請求項1記載の物品。
【請求項5】
物品が、静電チャック用のセラミックプラグである請求項1記載の物品。
【請求項6】
希土類金属含有酸化物層に隣接した高純度金属酸化物層を含む請求項1記載の物品。
【請求項7】
多孔質体は
約5%~
約60%の空孔率を有する請求項1記載の物品。
【請求項8】
第1のタイプの層と第2のタイプの層の交互層のスタックを含み、
第1のタイプの層は、
約1オングストローム~
約20オングストロームの厚さを有する高純度金属酸化物を含み、
第2のタイプの層はY
2O
3-ZrO
2の固溶体から本質的になり、
約5オングストローム~
約100オングストロームの厚さを有する請求項1記載の物品。
【請求項9】
多孔質体は、第1の酸化物の焼結粒子と、第1の酸化物の焼結粒子に対して結合剤として作用する第2の酸化物とを含む二相材料から本質的になり、第1の酸化物は、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムからなる群から選択され、第2の酸化物は二酸化ケイ素である、請求項1記載の物品。
【請求項10】
多孔質体は、a)酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との混合物、b)酸化アルミニウムと酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との混合物、c)炭化ケイ素、d)窒化ケイ素、及びe)窒化アルミニウムと二酸化ケイ素との混合物からなる群から選択される、請求項1記載の物品。
【請求項11】
原子層堆積を実行し、高純度Al
2O
3層と高純度Al
2O
3層上のY
2O
3-ZrO
2の固溶体から本質的になる耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップであって、耐プラズマ性コーティングは複数の細孔を含む多孔質チャンバコンポーネント上に堆積され、複数の細孔は、それぞれ細孔壁を含み、多孔質チャンバコンポーネントは、ガスを透過可能であり、原子層堆積を実行するステップは、
耐プラズマ性コーティングを多孔質チャンバコンポーネントの表面上に堆積させるステップと、
多孔質チャンバコンポーネント内の複数の細孔の細孔壁上に耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップを含み、
耐プラズマ性コーティングは、約5nm~約3μmの厚さを有し、耐プラズマ性コーティングは、細孔壁をフッ素プラズマによる浸食から保護し、耐プラズマ性コーティングを有する多孔質チャンバコンポーネントは、原子層堆積を実施した後にガスを透過可能のままであり、耐プラズマ性コーティングは
空孔がなく、ほぼ均一な厚さを有し、
多孔性チャンバコンポーネントは半導体処理チャンバのコンポーネントである方法。
【請求項12】
耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップは、Y
2O
3とZrO
2の交互の堆積によりY
2O
3-ZrO
2固溶体を形成するステップを有し、Y
2O
3-ZrO
2固溶体を形成するステップは、堆積サイクルを実行するステップであって、
イットリウム含有前駆体を細孔壁上に吸着させるために、チャンバコンポーネントを含む堆積チャンバ内にイットリウム含有前駆体を注入するステップと、
酸素含有反応物質をイットリウム含有前駆体と反応させてY
2O
3の第1の層を形成するために、酸素含有反応物質を堆積チャンバ内に注入するステップと、
ジルコニウム含有前駆体を第1の層の表面上に吸着させるために、堆積チャンバ内にジルコニウム含有前駆体を注入するステップと、
前記酸素含有反応物質又は他の酸素含有反応物質をジルコニウム含有前駆体と反応させてZrO
2の第2の層を形成するために、前記酸素含有反応物質又は他の前記酸素含有反応物質を堆積チャンバ内に注入するステップと、
目標厚さが達成されるまで堆積サイクルを1回以上繰り返すステップとを含む堆積サイクルを実行するステップを含む、請求項
11記載の方法。
【請求項13】
耐プラズマ性コーティングをアニールして、Y
2O
3の第1の層とZrO
2の第2の層を相互拡散して、Y
2O
3-ZrO
2の固溶体を含む単一相を形成するステップを含む請求項
12記載の方法。
【請求項14】
多孔質チャンバコンポーネントは、第1の酸化物の焼結粒子と、第1の酸化物の焼結粒子に対して結合剤として作用する第2の酸化物とを含む二相材料から本質的になり、第1の酸化物は、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムからなる群から選択され、第2の酸化物は二酸化ケイ素である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
多孔質チャンバコンポーネントが、静電チャック用のセラミックプラグである請求項11記載の方法。
【請求項16】
多孔質チャンバコンポーネントの初期空孔度又は初期浸透性のうちの少なくとも1を決定するステップと、
多孔質チャンバコンポーネントの目標空孔率または目標浸透性の少なくとも1を決定するステップと、
初期空孔率から目標空孔率まで、又は、初期透過性から目標透過性までの少なくとも1を低下させる耐プラズマ性コーティングの目標厚さを決定するステップを含み、プラズマ耐性コーティングは目標厚さを有する請求項11記載の方法。
【請求項17】
Y
2
O
3
-ZrO
2
の固溶体が、約10~90モル%のY
2
O
3
と約10~90モル%のZrO
2
の混合物を含む請求項11記載の方法。
【請求項18】
Y
2O
3-ZrO
2の固溶体が、
約40~80モル%のY
2O
3と
約20~60モル%のZrO
2の混合物を含む請求項11記載の方法。
【請求項19】
Y
2
O
3
-ZrO
2
の固溶体が、約60~70モル%のY
2
O
3
と約30~40モル%のZrO
2
の混合物を含む請求項11記載の方法。
【請求項20】
プラズマ耐性コーティングを堆積させるステップは、
Y
2O
3及びZrO
2を共堆積して、Y
2O
3-ZrO
2の固溶体を含む相を形成するステップを含み、Y
2O
3-ZrO
2の固溶体を含む相を形成するステップは堆積サイクルを実行するステップであって、
Y
2O
3の第1前駆体とZrO
2の第2前駆体との混合物をチャンバコンポーネントを含む堆積チャンバに同時注入して、第1前駆物質と第2前駆物質を細孔壁に吸着させるステップと、
酸素含有反応物を堆積チャンバに注入し、第1の前駆体および第2の前駆体と反応させてY
2O
3-ZrO
2の固溶体を形成するステップと、
目標厚さに到達するまで堆積サイクルを1回以上繰り返すステップとを含む堆積サイクルを実行するステップを含む請求項11記載の方法。
【請求項21】
多孔質体は、酸化アルミニウムと酸化マグネシウムと二酸化ケイ素との混合物から本質的になる、請求項1記載の物品。
【請求項22】
耐プラズマ性コーティングは、約350℃で割れ及び剥離に対する耐性がある、請求項1記載の物品。
【請求項23】
酸化アルミニウムは約89.99%~約99.99%の純度を有する、請求項1記載の物品。
【請求項24】
酸化アルミニウムは約89.99%~約99.99%の純度を有する、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、物品、コーティングされたチャンバコンポーネント、及び耐プラ
ズマ性コーティングをチャンバコンポーネントにコーティングする方法に関する。耐プラ
ズマ性コーティングは、コンポーネント内の細孔壁を含む多孔質コンポーネントの全ての
表面をコーティングする高純度酸化物層を含むことができる。オプションとして、耐プラ
ズマ性コーティングは、希土類金属含有酸化物層及び/又は酸化アルミニウム層を含むこ
とができる。このコーティングは、原子層堆積のような非直線性技術を用いて形成される
。
【背景】
【0002】
様々な製造プロセスは、高温、高エネルギープラズマ、腐食性ガスの混合物、高ストレ
ス、及びそれらの組み合わせに半導体処理チャンバコンポーネントを曝露させる。これら
の極端な条件は、チャンバコンポーネントを腐食及び/又は浸食させ、チャンバコンポー
ネントの欠陥に対する感受性を増加させる可能性がある。このような極端な環境において
、これらの欠陥を低減し、コンポーネントの耐腐食性及び/又は耐浸食性を改善すること
が望ましい。
【0003】
保護コーティング膜は、典型的には、様々な方法(例えば、溶射、スパッタリング、イ
オンアシスト蒸着(IAD)、プラズマ溶射、又は蒸発技術)によってチャンバコンポー
ネント上に堆積される。これらの技術は、一般的に、そのようなチャンバコンポーネント
内の細孔の細孔壁上にコーティングを堆積させることができない。
【概要】
【0004】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、コーティングされた多孔質物品(例えば、静
電チャックからの多孔質プラグ)を含む。物品は、多孔質体内に複数の細孔を含み、複数
の細孔のそれぞれが細孔壁を含む多孔質体を含む。多孔質体はガスを透過可能である。物
品は、多孔質体の表面上及び多孔質体内の複数の細孔の細孔壁上に耐プラズマ性コーティ
ングを更に含む。耐プラズマ性コーティングは、約5nm~約3μmの厚さを有すること
ができる。耐プラズマ性コーティングは、細孔壁を浸食から保護する。耐プラズマ性コー
ティングを有する多孔質体は、ガスを透過可能のままである
【0005】
いくつかの実施形態では、方法は、複数の細孔を含む多孔質チャンバコンポーネント上
に耐プラズマ性コーティングを堆積させるために原子層堆積を実行するステップを含み、
複数の細孔は、それぞれ細孔壁を含む。多孔質体は、ガスを透過可能である。原子層堆積
を実行するステップは、耐プラズマ性コーティングを多孔質チャンバコンポーネントの表
面上に堆積させるステップと、多孔質チャンバコンポーネント内の複数の細孔の細孔壁上
に耐プラズマ性コーティングを堆積させるステップとを含む。耐プラズマ性コーティング
は、約5nm~約3μmの厚さを有することができ、耐プラズマ性コーティングは、細孔
壁を浸食から保護し、耐プラズマ性コーティングを有する多孔質チャンバコンポーネント
は、原子層堆積を実施した後にガスを透過可能のままである。
【0006】
いくつかの実施形態では、方法は、複数の多孔質セラミックスプラグを一緒に堆積チャ
ンバ内にロードするステップを含む。複数の多孔質セラミックスプラグのうちの1つの多
孔質セラミックスプラグはガスを透過可能であり、複数の細孔を含み、複数の細孔はそれ
ぞれ細孔壁を含む。本方法は、複数の多孔質セラミックスプラグ上に酸化アルミニウムコ
ーティングを同時に堆積させるために原子層堆積を実行するステップを更に含む。複数の
多孔質セラミックスプラグのうちの1つの多孔質セラミックスプラグのための原子層堆積
を実行するステップは、多孔質セラミックスプラグの表面上に酸化アルミニウムコーティ
ングを堆積させるステップと、多孔質セラミックスプラグ内の複数の細孔の細孔壁上に酸
化アルミニウムコーティングを堆積させるステップとを含む。酸化アルミニウムコーティ
ングは、約5nm~約3μmの厚さを有することができる。酸化アルミニウムコーティン
グは、細孔壁を浸食から保護し、耐プラズマ性コーティングを有する多孔質セラミックス
プラグは、原子層堆積を行った後、ガスを透過可能なままである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示は、同様の参照符号が同様の要素を示す添付図面の図において、限定としてでは
なく例として示されている。本開示における「1つの」又は「一」実施形態への異なる参
照は、必ずしも同じ実施形態への参照ではなく、そのような参照は少なくとも1つを意味
することが留意されるべきである。
【
図2A】本明細書に記載の原子層堆積技術に係る堆積プロセスの一実施形態を示す。
【
図2B】本明細書に記載の原子層堆積技術に係る堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
【
図2C】本明細書に記載の原子層堆積技術に係る堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
【
図2D】本明細書に記載の原子層堆積技術に係る堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
【
図3A】本明細書に記載の原子層堆積を使用して耐プラズマ性コーティングを生成する方法を示す。
【
図3B】本明細書に記載の原子層堆積を使用して耐プラズマ性コーティングを生成する方法を示す。
【
図4A】実施形態に係る、静電チャックチャンバコンポーネントのためのプラグを示す。
【
図4B】静電チャック用のプラグ内の細孔の拡大図を示し、各細孔の内面は、本明細書に記載されているような耐プラズマ性コーティングでコーティングされている。
【
図4C】本明細書に記載の実施形態に従ってコーティングされた複数の多孔質セラミックスプラグを含む基板支持アセンブリを示す。
【
図5A】本明細書に記載の実施形態に従ってコーティングされた多孔質プラグの形態を示す上面図である。
【
図5B】本明細書に記載の実施形態に従ってコーティングされた多孔質プラグの断面図である。
【
図6】新規及び使用済みのセラミックス多孔質プラグのエネルギー分散型X線微量分析の結果を示すチャートである。
【詳細な説明】
【0008】
本明細書に記載の実施形態は、物品の多孔質セラミックス体内の細孔の細孔壁上に耐プ
ラズマ性コーティングを堆積させた物品、コーティングされたチャンバコンポーネント、
及び方法を網羅する。耐プラズマ性コーティングは、高純度金属酸化物層(例えば、高純
度酸化アルミニウム)又は希土類金属含有酸化物層(例えば、イットリウム含有酸化物層
)とすることができる。耐プラズマ性コーティングはまた、1以上の金属酸化物層並びに
1以上の希土類金属含有酸化物層を含む多層コーティングであってもよい。本明細書で使
用される場合、耐プラズマ性という用語は、少なくとも1つのタイプのガス並びに少なく
とも1つのタイプのガスの化学物質及びラジカルのプラズマに耐性があることを意味する
。物品は、多孔質セラミック材料とすることができる。堆積プロセスは、非直線的プロセ
ス(例えば、原子層堆積(ALD)プロセス)である。
【0009】
耐プラズマ性コーティングの厚さは、いくつかの実施形態では、約5nm~約300n
mとすることができる。耐プラズマ性コーティングは、チャンバコンポーネントの表面な
らびにチャンバコンポーネント内の細孔の細孔壁を実質的に均一な厚さでコンフォーマル
に覆うことができる。一実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、±20%未満の厚
さ変動、又は±10%未満の厚さ変動、又は±5%未満の厚さ変動、又はより小さい厚さ
変動を有する均一な厚さでコーティングされた下地表面(コーティングされた細孔壁を含
む)のコンフォーマルな被覆を有する。
【0010】
本明細書に記載の実施形態は、多孔質セラミックス体(例えば、静電チャック用の多孔
質セラミックスプラグ)内の細孔壁が、耐プラズマ性コーティングで効果的にコーティン
グされることを可能にする。多孔質セラミックス体は、1以上のガスを透過可能とするこ
とができる。細孔壁上の耐プラズマ性コーティングは、多孔質セラミックス体を詰まらせ
ることなく、細孔壁を1以上のガスによる浸食から保護することができる。したがって、
多孔質セラミックス体は、耐プラズマ性コーティングによってコーティングされた後、1
以上のガスを透過可能なままとすることができる。耐プラズマ性コーティングはまた、約
0%の空孔率で緻密である(例えば、耐プラズマ性コーティングは、実施形態では空孔無
しとすることができる)。耐プラズマ性コーティングは、プラズマエッチング化学物質(
例えば、CCl4/CHF3プラズマエッチング化学物質、HCl3Siエッチング化学
物質、及びNF3エッチング化学物質)からの腐食及び浸食に対して耐性があることが可
能である。
【0011】
ALDは、物品の表面との化学反応を介して材料の制御された自己制限的堆積を可能に
する。コンフォーマルプロセスではなく、ALDも均一プロセスである。高アスペクト比
構造(例えば、約3:1~300:1)を含む物品の露出された全ての面は、堆積された
材料と同じ又はほぼ同じ量を有する。本明細書で述べるように、多孔質セラミックス体内
の細孔の内壁も、多孔質セラミックス体を詰まらせることなく、又は多孔質セラミックス
体の透過性を低下させることなく、ALDプロセスを用いてコーティングされる。ALD
プロセスの典型的な反応サイクルは、前駆体(すなわち、単一の化学物質A)をALDチ
ャンバ内に溢れさせて、(物品内の細孔壁の表面を含む)物品の表面上に吸着されること
から始まる。その後、反応物質(すなわち、単一の化学物質R)がALDチャンバに導入
され、続いて洗い流される(フラッシュされる)前に、過剰の前駆体はALDチャンバか
ら洗い流される。ALDの場合、材料の最終的な厚さは、各反応サイクルが1原子層又は
1原子層の一部とすることができるある一定の厚さの層を成長するため、実行される反応
サイクルの数に依存する。
【0012】
高アスペクト比構造(例えば、細孔)を有する多孔質コンポーネント上にコーティング
を堆積するために典型的に使用される他の技術(例えば、プラズマ溶射コーティング及び
イオンアシスト蒸着)とは異なり、ALD技術は、そのような構造内(すなわち、多孔質
コンポーネント内の細孔の細孔壁上)に材料の層を堆積させることができる。更に、AL
D技術は、堆積中の亀裂形成を排除することができる、空隙の無い(すなわち、ピンホー
ルの無い)比較的薄い(すなわち、1μm以下の)コーティングを生成する。本明細書で
使用される「空孔の無い」という用語は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定され
たとき、コーティングの深さ全体に沿って、細孔、ピンホール、空隙、又は亀裂が無いこ
とを意味する。TEMは、明視野、暗視野、又は高解像度モードで、200kVで操作さ
れるTEMを用いて、集束イオンビームミリングによって調製された厚さ100nmのT
EM薄片を用いて行うことができる。対照的に、従来の電子ビームIAD又はプラズマ溶
射技術では、多孔質コンポーネント内の細孔の細孔壁はコーティングされない。その代わ
りに、多孔質コンポーネントの表面は、細孔を覆って塞ぐようにコーティングされ、多孔
質コンポーネントの透過性を減少又は排除する。
【0013】
多孔質の処理チャンバコンポーネント(例えば、静電チャック(ESC)用のプラグ)
は、これらの耐プラズマ性コーティングを有することにより、それらの性能に影響を与え
ずに過酷なエッチング環境内でコンポーネントを保護することからの恩恵を受ける。従来
の堆積方法はまた、プラグの空孔率を減少させ、したがってそれらの性能に影響を及ぼす
コーティングをもたらす可能性がある。プラグは、少なくともいくつかのガスを透過可能
であり、ガス粒子を濾過するか、又はESCの空洞内へのラジカル浸透を遮断し、ESC
における二次プラズマ光を防止するように設計される。したがって、いくつかの実施形態
の目的は、プラグの空孔率及び/又は透過率を維持することである。本明細書に記載され
た実施形態は、多孔質セラミック物品(例えば、前述の多孔質チャンバコンポーネント)
の内部細孔壁が、それらの空孔率又は透過率に影響を及ぼすことなく物品を保護する耐プ
ラズマ性コーティングでコーティングされることを可能にする。
【0014】
図1は、実施形態に係る耐プラズマ性コーティングでコーティングされた1以上のチャ
ンバコンポーネントを有する半導体処理チャンバ100の断面図である。処理チャンバ1
00は、プラズマ処理条件を有する腐食性プラズマ環境が提供されるプロセスに使用する
ことができる。例えば、処理チャンバ100は、プラズマエッチング装置又はプラズマエ
ッチングリアクタ、プラズマ洗浄装置、プラズマ強化CVD、又はALDリアクタなどの
ためのチャンバとすることができる。耐プラズマ性コーティングを含むことができるチャ
ンバコンポーネントの例には、静電チャック(ESC)150の多孔質セラミックスプラ
グが含まれる。以下でより詳細に説明される耐プラズマ性コーティングは、ALDプロセ
スによって施される。ALDは、複雑な形状及び高アスペクト比を有する構造を有する多
孔質コンポーネントを含む全てのタイプのコンポーネントに空孔の無い実質的に均一な厚
さのコンフォーマルなコーティングを施すことができる。
【0015】
耐プラズマ性コーティングは、金属酸化物層用の前駆体(例えば、アルミニウム含有前
駆体)を用いてALDを用いて成長させるか又は堆積させることができる。耐プラズマ性
コーティングは、追加的又は代替的に、希土類金属含有酸化物を堆積するための、又は希
土類金属含有酸化物を1以上の追加の酸化物と組み合わせて同時堆積するための1以上の
前駆体を用いてALDを用いて成長又は堆積させ、希土類含有酸化物層を形成することが
できる。一実施形態では、希土類金属含有酸化物層は、多結晶構造を有する。あるいはま
た、希土類含有酸化物層は、非晶質構造を有していてもよい。希土類金属含有酸化物は、
イットリウム、タンタル、ジルコニウム、及び/又はエルビウムを含むことができる。例
えば、希土類金属含有酸化物は、イットリア(Y2O3)、酸化エルビウム(Er2O3
)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O5)等とすることができる
。実施形態では、希土類金属含有酸化物は、多結晶イットリアである。他の実施形態では
、希土類金属含有酸化物は、アモルファスイットリアである。希土類金属含有酸化物はま
た、1以上の希土類元素(例えば、イットリウム、ジルコニウム、及び/又はエルビウム
)と混合されたアルミニウムを含むことができる。希土類金属含有酸化物層を形成するた
めに、希土類金属含有酸化物と同時堆積することができる追加の1又は複数の酸化物は、
酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化エルビウム(E
r2O3)、又はそれらの組み合わせを含むことができる。多層耐プラズマ性コーティン
グのためのイットリウム含有酸化物層は、例えば、YxZryOz、YaZrxAlyO
z、YxAlyOz、又はYxEryOzとすることができる。イットリウム含有酸化物
は、空間群Ia-3(206)を有する立方体構造を有するイットリア石を有するイット
リア(Y2O3)であってもよい。
【0016】
一実施形態では、希土類金属含有酸化物層は、Y2O3、Er2O3、Y3Al5O1
2(YAG)、Er3Al5O12(EAG)、又はY4Al2O9(YAM)のうちの
1つである。希土類金属含有酸化物層はまた、YAlO3(YAP)、Er4Al2O9
(EAM)、ErAlO3(EAP)、Y2O3-ZrO2の固溶体、及び/又はY4A
l2O9とY2O3-ZrO2固溶体とを含むセラミックス化合物であってもよい。
【0017】
Y2O3-ZrO2の固溶体に関して、希土類金属含有酸化物層は、10~90モル分
率(モル%)の濃度のY2O3と、10~90モル%のZrO2とを含むことができる。
いくつかの例では、Y2O3-ZrO2の固溶体は、10~20モル%のY2O3と、8
0~90モル%のZrO2とを含むことができる、20~30モル%のY2O3と、70
~80モル%のZrO2とを含むことができる、30~40モルのY2O3と、60~7
0モル%のZrO2とを含むことができる、40~50モル%のY2O3と、50~60
モル%のZrO2とを含むことができる、60~70モル%のY2O3と、30~40モ
ル%のZrO2とを含むことができる、70~80モル%のY2O3と、20~30モル
%のZrO2とを含むことができる、80~90モル%のY2O3と、10~20モル%
のZrO2とを含むことができる、などである。
【0018】
Y4Al2O9とY2O3-ZrO2固溶体とを含むセラミックス化合物に関して、一
実施形態では、セラミックス化合物は、62.93モル分率(モル%)のY2O3と、2
3.23モル%のZrO2と、13.94モル%のAl2O3とを含む。別の一実施形態
では、セラミックス化合物は、50~75モル%の範囲のY2O3と、10~30モル%
のZrO2と、10~30モル%の範囲のAl2O3とを含むことができる。別の一実施
形態では、セラミックス化合物は、40~100モル%の範囲のY2O3と、0.1~6
0モル%のZrO2と、0.1~10モル%の範囲のAl2O3とを含むことができる。
別の一実施形態では、セラミックス化合物は、40~60モル%の範囲のY2O3と、3
0~50モル%のZrO2と、10~20モル%の範囲のAl2O3とを含むことができ
る。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、40~50モル%の範囲のY2O3と
、20~40モル%のZrO2と、20~40モル%の範囲のAl2O3とを含むことが
できる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、70~90モル%の範囲のY2O
3と、0.1~20モル%のZrO2と、10~20モル%の範囲のAl2O3とを含む
ことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、60~80モル%の範囲の
Y2O3と、0.1~10モル%のZrO2と、20~40モル%の範囲のAl2O3と
を含むことができる。別の一実施形態では、セラミックス化合物は、40~60モル%の
範囲のY2O3と、0.1~20モル%のZrO2と、30~40モル%の範囲のAl2
O3とを含むことができる。他の実施形態では、セラミックス化合物に対して他の配分を
使用することもできる。
【0019】
一実施形態では、希土類金属含有酸化物層に対して、Y2O3、ZrO2、Er2O3
、Gd2O3、及びSiO2の組み合わせを含む代替のセラミックス化合物が使用される
。一実施形態では、代替のセラミックス化合物は、40~45モル%の範囲のY2O3と
、0~10モル%のZrO2と、35~40モル%のEr2O3と、5~10モル%の範
囲のGd2O3と、5~15モル%のSiO2とを含むことができる。第1の例では、代
替のセラミックス化合物は、40モル%のY2O3と、5モル%のZrO2と、35モル
%のEr2O3と、5モル%のGd2O3と、15モル%のSiO2とを含む。第2の例
では、代替のセラミックス化合物は、45モル%のY2O3と、5モル%のZrO2と、
35モル%のEr2O3と、10モル%のGd2O3と、5モル%のSiO2とを含む。
第3の例では、代替のセラミックス化合物は、40モル%のY2O3と、5モル%のZr
O2と、40モル%のEr2O3と、7モル%のGd2O3と、8モル%のSiO2とを
含む。
【0020】
上記希土類金属含有酸化物層のいずれも、微量の他の物質(例えば、ZrO2、Al2
O3、SiO2、B2O3、Er2O3、Nd2O3、Nb2O5、CeO2、Sm2O
3、Yb2O3、又は他の酸化物)を含んでいてもよい。
【0021】
金属酸化物層は、単独で使用される場合、少なくともいくつかのプラズマに対するプラ
ズマ浸食からコンポーネントを保護する高純度酸化アルミニウム又は同様の材料を含むこ
とができる。これはまた、希土類金属含有酸化物層(使用された場合)のチャンバコンポ
ーネントへの接着を改善し、実施形態では最高約350℃(又は約200℃又は約200
℃~約350℃)の温度で耐プラズマ性コーティングの割れ及び剥離に対する耐熱性を提
供する。
【0022】
一実施形態では、処理チャンバ100は、内部容積106を囲むチャンバ本体102と
シャワーヘッド130とを含む。シャワーヘッド130は、シャワーヘッドベース及びシ
ャワーヘッドガス分配プレートを含むことができる。あるいはまた、シャワーヘッド13
0は、いくつかの実施形態では、蓋及びノズルによって置き換えてもよく、又は他の実施
形態では、複数のパイ形のシャワーヘッド区画及びプラズマ生成ユニットによって置き換
えてもよい。チャンバ本体102は、アルミニウム、ステンレス鋼、又は他の適切な材料
から製造することができる。チャンバ本体102は、一般的に、側壁108及び底部11
0を含む。
【0023】
外側ライナー116は、側壁108に隣接して配置され、チャンバ本体102を保護す
ることができる。外側ライナー116は、二層コーティングで製造及び/又はコーティン
グすることができる。一実施形態では、外側ライナー116は、酸化アルミニウムから製
造される。
【0024】
排気ポート126は、チャンバ本体102内に画定されることができ、内部容積106
をポンプシステム128に結合することができる。ポンプシステム128は、排気して処
理チャンバ100の内部容積106の圧力を調節するために使用される1以上のポンプ及
びスロットルバルブを含むことができる。
【0025】
シャワーヘッド130は、チャンバ本体102の側壁108上に支持することができる
。シャワーヘッド130(又は蓋)は、処理チャンバ100の内部容積106へのアクセ
スを可能にするように開放することができ、閉じている間は、処理チャンバ100に対し
てシールを提供することができる。ガスパネル158は、処理チャンバ100に結合され
て、処理ガス及び/又は洗浄ガスを、シャワーヘッド130又は蓋及びノズルを介して内
部容積106に提供することができる。シャワーヘッド130は、誘電体エッチング(誘
電体材料のエッチング)に使用される処理チャンバ用に使用することができる。シャワー
ヘッド130は、ガス分配プレート(GDP)133を含み、GDP133は、GDP1
33の全域にわたって複数のガス供給穴132を有する。シャワーヘッド130は、アル
ミニウムベース又は陽極酸化アルミニウムベースに接合されたGDP133を含むことが
できる。GDP133は、Si又はSiCから製造することができる、又はセラミックス
(例えば、Y2O3、Al2O3、Y3Al5O12(YAG)など)とすることができ
る。
【0026】
導体エッチング(導電性材料のエッチング)用に使用される処理チャンバでは、シャワ
ーヘッドではなく蓋を使用することができる。蓋は、蓋の中心穴に嵌合する中心ノズルを
含むことができる。蓋は、セラミックス(例えば、Al2O3、Y2O3、YAG)、又
はY4Al2O9とY2O3-ZrO2の固溶体とを含むセラミックス化合物とすること
ができる。ノズルもまた、セラミックス(例えば、Y2O3、YAG)、又はY4Al2
O9とY2O3-ZrO2の固溶体とを含むセラミックス化合物とすることができる。
【0027】
処理チャンバ100内で基板を処理するために使用することができる処理ガスの例は、
ハロゲン含有ガス(例えば、とりわけ、C2F6、SF6、SiCl4、HBr、NF3
、CF4、CHF3、CH2F3、F、NF3、Cl2、CCl4、BCl3、及びSi
F4)、及び他のガス(例えば、O2又はN2O)を含む。キャリアガスの例は、N2、
He、Ar、及び処理ガスに対して不活性な他のガス(例えば、非反応性ガス)を含む。
基板支持アセンブリ148は、シャワーヘッド130又は蓋の下方の処理チャンバ100
の内部容積106内に配置される。基板支持アセンブリ148は、処理中に基板144を
保持する。リング146(例えば、単一のリング)は、静電チャック150の一部を覆う
ことができ、覆われた部分が処理中にプラズマに曝露されないように保護することができ
る。一実施形態では、リング146はシリコン又は石英であってもよい。
【0028】
内側ライナー118は、基板支持アセンブリ148の周囲を覆うことができる。内側ラ
イナー118は、ハロゲン含有ガス耐性材料(例えば、外側ライナー116を参照して論
じられたもの)とすることができる。一実施形態では、内側ライナー118は、外側ライ
ナー116と同じ材料から製造されてもよい。
【0029】
一実施形態では、基板支持アセンブリ148は、台座152を支持する取り付けプレー
ト162と、静電チャック150とを含む。静電チャック150は、熱伝導ベース164
と、熱伝導ベースに接合剤138によって接合された静電パック166とを更に含み、接
合剤138は、一実施形態では、シリコーン接合剤とすることができる。静電パック16
6の上面は、図示の実施形態では、耐プラズマ性コーティング136によって覆うことが
できる。耐プラズマ性コーティング136は、熱伝導性ベース164及び静電パック16
6の外側及び側部周縁部を含む静電チャック150の露出面全体、ならびに静電チャック
内でアスペクト比の大きい他の幾何学的に複雑な部品又は穴に配置することができる。一
実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、静電パック166の1以上の穴に挿入され
るセラミックスプラグ(図示せず)内の細孔の細孔壁をコーティングする。セラミックス
プラグは、
図4A~
図4Cに関連して、以下でより詳細に説明する。取り付けプレート1
62は、チャンバ本体102の底部110に結合され、ユーティリティ(例えば、流体、
電力線、センサリードなど)を熱伝導ベース164及び静電パック166に経路付ける(
ルーティングする)ための通路を含む。
【0030】
熱伝導ベース164及び/又は静電パック166は、1以上のオプションの埋設された
加熱素子176、埋設された熱アイソレータ174、及び/又は導管168、170を含
み、基板支持アセンブリ148の横方向の温度プロファイルを制御することができる。導
管168、170は、導管168、170を介して温度調節流体を循環させる流体源17
2に流体的に結合することができる。一実施形態では、埋設されたアイソレータ174は
、導管168、170の間に配置することができる。ヒータ176は、ヒータ電源178
によって調整される。導管168、170及びヒータ176を使用して、熱伝導ベース1
64の温度を制御することができる。導管及びヒータは、静電パック166及び処理され
る基板(例えば、ウェハ)144を加熱及び/又は冷却する。静電パック166及び熱伝
導ベース164の温度は、コントローラ195を使用して監視することができる複数の温
度センサ190、192を使用して監視することができる。
【0031】
静電パック166は、複数のガス通路(例えば、溝、メサ、及びパック166の上面に
形成することができる他の表面構造)を更に含むことができる。ガス通路は、静電パック
166内に穿孔された孔を介して熱伝達(又は裏面)ガス(例えば、He)の供給源に流
体結合させることができる。動作中、裏面ガスは、制御された圧力でガス通路内に供給さ
れ、静電パック166と基板144との間の熱伝達を向上させることができる。Heビア
孔は、Heを透過可能な多孔質セラミックスプラグによって塞がれてもよい。多孔質セラ
ミックスプラグはまた、半導体処理チャンバ100を洗浄するために使用される腐食性ガ
ス及びプラズマを少なくとも部分的に透過可能とすることができる。多孔質セラミックス
プラグは、腐食性ガスのガス粒子を濾過し、そのような腐食性ガスが基板支持体アセンブ
リ内に侵入するのを防止することができる。多孔質セラミックスプラグは、静電パック1
66内のHeビア内に二次プラズマが形成されるのを更に防止することができる。しかし
ながら、多孔質セラミックスプラグは、繰り返しの洗浄サイクルの後に腐食する可能性が
ある。更に、多孔質セラミックスプラグの化学的性質は、多孔質セラミックスプラグがフ
ッ素に曝されると変化する可能性がある(例えば、多孔質セラミックスプラグは、Siを
失い、フッ素を獲得する可能性がある)。したがって、多孔質セラミックスプラグは、多
孔質セラミックスプラグの寿命を延ばすために、本明細書の実施形態に従ってコーティン
グすることができる。
【0032】
静電パック166は、チャッキング電源182によって制御される少なくとも1つのク
ランプ電極180を含む。クランプ電極180(又は静電パック166又はベース164
内に配置された他の電極)は、処理チャンバ100内の処理ガス及び/又は他のガスから
形成されたプラズマを維持するための整合回路188を介して1以上のRF電源184、
186に更に結合することができる。RF電源184、186は、一般的に、約50kH
z~約3GHzの周波数と、最大約10000ワットの電力を有するRF信号を生成する
ことができる。
【0033】
図2Aは、(物品内の細孔壁を含む)物品上に耐プラズマ性コーティングを成長又は堆
積させるためのALD技術による堆積プロセスの一実施形態を示す。
図2Bは、(物品内
の細孔壁を含む)物品上に多層耐プラズマ性コーティングを成長又は堆積させるためのA
LD技術による堆積プロセスの一実施形態を示す。
図2Cは、本明細書に記載されるよう
な原子層堆積技術による堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
図2Dは、本明細書に記
載されるような原子層堆積技術による堆積プロセスの別の一実施形態を示す。
【0034】
様々なタイプのALDプロセスが存在し、特定のタイプは、いくつかの要因(例えば、
コーティングされるべき表面、コーティング材料、表面とコーティング材料との間の化学
的相互作用など)に基づいて選択することができる。様々なALDプロセスの一般的な原
理は、自己限定的に一度に1つずつ表面と化学的に反応するガス状化学前駆体のパルスに
コーティングされる表面を繰り返し曝露させることによって薄膜層を成長させることを含
む。
【0035】
図2A~
図2Dは、表面を有する物品210を示す。物品210は、静電チャック又は
基板支持アセンブリのための多孔質セラミックスプラグを含むが、これに限定されない種
々の多孔質処理チャンバコンポーネント(例えば、半導体処理チャンバコンポーネント)
を表すことができる。物品210は、セラミックス、金属-セラミックス複合材料(例え
ば、AlO/SiO、AlO/MgO/SiO、SiC、SiN、AlN/SiOなど)
、金属(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼)、ポリマー、ポリマーセラミック複合材
料、マイラー、ポリエステル、又は他の適切な材料から製造され、AlN、Si、SiC
、Al
2O
3、SiO
2などの材料を更に含むことができる。一実施形態では、物品21
0は、第1の酸化物の焼結粒子と、第1の酸化物の焼結粒子の結合剤として作用する第2
の酸化物とを含む二相材料から構成されるセラミックス多孔質プラグである。二相材料は
、多孔質マトリックス中に配置することができる。例えば、第1の酸化物はAl
2O
3又
はAlNとすることができ、第2の酸化物はSiO
2とすることができる。これらの材料
の課題は、SiO
2含有相がフッ素化学物質に対してほとんど耐性が無く、非常に速くエ
ッチング除去されて多孔質マトリックスを破壊し、微粒子の生成を招くことである。
【0036】
ALDの場合、表面上への前駆体の吸着又は吸着された前駆体との反応物質の反応は、
「半反応」と呼ぶことができる。第1の半反応の間、前駆体は、前駆体を表面上に完全に
吸着可能にするのに十分な時間の間、(物品210内の細孔壁の表面上を含む)物品21
0の表面上にパルスされる。前駆体が表面上の有限数の利用可能な部位に吸着され、表面
上に均一な連続吸着層を形成するので、吸着は自己限定的である。前駆体によって既に吸
着された任意の部位は、吸着した部位が均一な連続コーティング上に新たな利用可能な部
位を形成する処理に付されない限り、及び/又はそのような処理に付されるまで、同じ前
駆体によって更に吸着することができなくなる。例示的な処理は、プラズマ処理、均一な
連続吸着層をラジカルに曝露することによる処理、又は表面に吸着された直近の均一な連
続層と反応することができる異なる前駆体の導入とすることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、2以上の前駆体が共に注入され、物品の表面上に吸着される
。過剰な前駆体は、酸素含有反応物質が注入されて固体の単相又は多相層(例えば、YA
Gの層、Y2O3-ZrO2の相など)を形成するために吸着物と反応するまで汲み出さ
れる。この新鮮な層は、次のサイクルで前駆体を吸着する準備ができている。
【0038】
図2Aにおいて、物品210の表面が第1の前駆体260で完全に吸着されて吸着層2
14を形成するまで、物品210は、第1の期間の間、前駆体260に導入することがで
きる。続いて、物品210は、第1の反応物質265に導入され、吸着層214と反応し
て、固体層216を成長させることができる(例えば、これによって層216は、完全に
成長又は堆積される。ここで成長及び堆積という用語は、本明細書内で交換可能に使用す
ることができる)。第1前駆体260は、高純度金属酸化物(例えば、高純度酸化アルミ
ニウム)のための前駆体とすることができる。層216が酸化物である場合、第1の反応
物質265は、酸素、水蒸気、オゾン、純酸素、酸素ラジカル、又は別の酸素源とするこ
とができる。従って、ALDを用いて層216を形成することができる。層216は、耐
プラズマ性コーティングとすることができるか、又は多層耐プラズマ性コーティングのう
ちの1つの層とすることができる。
【0039】
層216が高純度アルミナ(HP-Al2O3)層である一例では、(細孔の内部を含
む)物品の表面上のすべての反応部位が消費されるまでの第1の期間の間、第1の前駆体
260(例えば、トリメチルアルミニウム(TMA))に物品210(例えば、ESC用
の多孔質セラミックスプラグ)を導入することができる。残りの第1の前駆体260を洗
い流し、次いでH2Oの第1の反応物質265をリアクタに注入して、第2の半サイクル
を開始する。H2O分子が第1の半反応によって生成されたAl含有吸着層と反応した後
、HP-Al2O3の層216が形成される。
【0040】
層216は、均一で、連続的であり、コンフォーマルとすることができる。層216は
、実施形態において空孔が無い(例えば、ゼロの空孔率を有する)、又は約ゼロの空孔率
(例えば、0%~0.01%の空孔率)を有することができる。層216は、単一のAL
D堆積サイクル後、いくつかの実施形態では、1原子層未満~数原子の厚さを有すること
ができる。いくつかの有機金属前駆体分子は大きい。反応物質265と反応した後、大き
な有機配位子は無くなり、はるかに小さな金属原子を残す可能性がある。(例えば、前駆
体260の導入に続いて反応物質265が導入されるステップを含む)1つの完全なAL
Dサイクルは、単一の原子層未満になる可能性がある。例えば、TMA及びH2Oによっ
て成長させたAl2O3単分子層は、典型的には、約0.9Å/サイクル~約1.3Å/
サイクルの成長速度を有し、一方、Al2O3格子定数は、a=4.7Å及びc=13Å
(三方晶構造の場合)である。
【0041】
複数の完全なALD堆積サイクルを実施して、1原子~数原子の追加の部分によって厚
さに追加する(例えば、前駆体260の導入、洗い流し、反応物質265の導入、及び再
び洗い流しを含む)各完全サイクルによって、より厚い層216を堆積させることができ
る。図示されているように、最高n回の完全サイクルが実行され、層216を成長させる
ことができ、ただし、nは1よりも大きい整数値である。実施形態では、層216は、約
5nm~約3μmの厚さを有する。更なる一実施形態では、層216は、約5nm~約3
00nmの厚さを有する。層216は、実施形態において約10nm~約150nm、他
の実施形態において約50nm~100nmの厚さを有することができる。
【0042】
層216は、堅牢な耐プラズマ性及び機械的特性を提供する。層216は、腐食からコ
ンポーネントを保護し、絶縁耐力を向上させることができ、希土類金属含有酸化物層の(
例えば、多孔質セラミックス、又はAl6061、Al6063で形成された)コンポー
ネントへのより良好な接着力を提供することができ、及び最高約200℃、又は最高約2
50℃、又は約200℃~約250℃の温度で耐プラズマ性コーティングの割れを防止す
ることができる。更なる実施形態では、層216は、最高約350℃の温度で耐プラズマ
性コーティングの割れを防止することができる。堆積のためにALDが使用されるので、
高アスペクト比の構造(例えば、シャワーヘッド内のガス送出孔又は多孔質材料内の細孔
)の内面をコーティングすることができ、従って、コンポーネントの全体を腐食環境への
曝露から保護することができる。
【0043】
層216は、実施形態において約89.99%~約99.99%の純度を有するHP-
Al2O3とすることができる。高純度のA2O3は、ESCプラグに使用される典型的
なセラミックス材料よりも、プラズマ腐食に対して著しく耐性がある。更に、HP-Al
2O3は、共通元素(例えば、アルミニウム及び酸素)のために、セラミックス及びアル
ミニウムベースのコンポーネントに対して良好な接着性を有する。同様に、HP-Al2
O3は、これもまた共通元素(すなわち、酸化物)のために、希土類金属含有酸化物に対
して良好な接着性を有する。これらの改良された界面は、ひび割れを開始しやすい界面欠
陥を減少させる。
【0044】
図2Bは、
図2Aを参照して説明したような層216の堆積を含む堆積プロセス201
を説明する。しかしながら、
図2Bの堆積プロセス201は、多層耐プラズマ性コーティ
ングを形成するための追加層220の堆積を更に含む。したがって、層216が完成した
後、層216を有する物品210は、層216が1以上の追加の前駆体270で完全に吸
着されて吸着層218を形成するまで、第2の持続時間の間に追加の1以上の前駆体27
0に導入させることができる。続いて、物品210を反応物質275に導入して、吸着層
218と反応させて、固体希土類金属含有酸化物層220(単純化のために第2の層22
0とも呼ばれる)を成長させることができる(例えば、これによって第2の層220は完
全に成長又は堆積される)。この実施形態では、層216は、アモルファス金属酸化物(
例えば、アモルファスHP-Al
2O
3)とすることができる。したがって、第2の層2
20は、ALDを用いて層216上に完全に成長又は堆積される。一例では、前駆体27
0は、第1の半サイクルで使用されるイットリウム含有前駆体とすることができ、反応物
質275は、第2の半サイクルで使用されるH
2Oとすることができる。
【0045】
第2の層220は、イットリウム含有酸化物層又は他の希土類金属含有酸化物層を形成
し、これは、均一で、連続的、かつコンフォーマルとすることができる。第2の層220
は、実施形態では1%未満、更なる実施形態では0.1%未満、及び実施形態では約0%
の非常に低い空孔率を有する、又は更なる別の実施形態では空孔が無いことが可能である
。第2の層220は、単一の完全なALD堆積サイクルの後に、1原子未満~数原子(例
えば、2~3原子)の厚さを有することができる。複数のALD堆積段階を実施して、よ
り厚い第2の層220を堆積させることができ、各段階で1原子~数原子の追加の部分が
厚さに追加される。図示されるように、完全堆積サイクルは、m回繰り返されて、第2の
層220が目標厚さを有するようにすることができ、ただし、mは1より大きい整数値で
ある。実施形態では、第2の層220は、約5nm~3μmの厚さを有することができる
。他の実施形態では、第2の層220は、約5nm~約300nmの厚さを有することが
できる。第2の層220は、実施形態では、約10nm~約20nmの厚さを有すること
ができ、又はいくつかの実施形態では、約50nm~約60nmの厚さを有することがで
きる。他の実施形態では、第2の層220は、約90nm~約110nmの厚さを有する
ことができる。
【0046】
層216の厚さに対する第2の層220の厚さの比は、200:1~1:200とする
ことができる。層216の厚さに対する第2の層220の厚さのより高い比(例えば、2
00:1、100:1、50:1、20:1、10:1、5:1、2:1など)は、より
良好な耐腐食性及び耐浸食性を提供し、一方、層216の厚さに対する第2の層220の
厚さのより低い比(例えば、1:2、1:5、1:10、1:20、1:50、1:10
0、1:200)は、より良好な耐熱性(例えば、熱サイクルによって引き起こされる割
れ及び/又は層間剥離に対する改善された耐性)を提供する。
【0047】
第2の層220は、上述の希土類金属含有酸化物層のいずれかであってもよい。例えば
、第2の層220は、単独又は1以上の他の希土類金属酸化物と組み合わせたY2O3と
することができる。いくつかの実施形態では、第2の層220は、ALDによって同時堆
積された少なくとも2つの希土類金属含有酸化物前駆体の混合物から形成された単相材料
(例えば、Y2O3、Er2O3、Al2O3、ZrO2のうちの1以上の組み合わせ)
である。例えば、第2の層220は、YxZryOz、YxEryOz、Y3Al5O1
2(YAG)、Y4Al2O9(YAM)、Y2O3安定化ZrO2(YSZ)、又はY
4Al2O9と、Y2O3-ZrO2の固溶体とを含むセラミックス化合物のうちの1つ
とすることができる。一実施形態では、層216はアモルファスHP-Al2O3であり
、第2の層220は、単独又は1以上の他の希土類金属酸化物材料と単相にある多結晶又
はアモルファスのイットリウム含有酸化物化合物(例えば、Y2O3、YxAlyOz、
YxZryOz、YxEryOz)である。従って、層216は、イットリウム含有酸化
物層の堆積前に堆積された応力緩和層とすることができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、第2の層220は、Er2O3、Y2O3、Al2O3、又
はZrO2を含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の層220は、ErxA
lyOz(例えば、Er3Al5O12)、ErxZryOz、EraZrxAlyOz
、YxEryOz、又はEraYxZryOz(例えば、Y2O3、ZrO2、及びEr
2O3の単相固溶体)のうちの少なくとも1つの多成分材料である。第2の層220はま
た、Y3Al5O12(YAG)、Y4Al2O9(YAM)、Y2O3安定化ZrO2
(YSZ)、又はY4Al2O9と、Y2O3-ZrO2の固溶体とを含むセラミックス
化合物のうちの1つであってもよい。一実施形態では、第2の層220は、エルビウム含
有化合物(例えば、Er2O3、ErxAlyOz、ErxZryOz、EraZrxA
lyOz、YxEryOz、又はEraYxZryOz)である。
【0049】
図2C~
図2Dを参照すると、いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティングは
、3以上の層を含む。具体的には、耐プラズマ性コーティングは、酸化物層と希土類金属
含有酸化物層との交互層のシーケンスを含むことができる、又は層216と、希土類金属
含有酸化物層のための交互層のシーケンスとを含むことができる。いくつかの実施形態で
は、希土類金属含有酸化物層は交互サブ層の層である。例えば、希土類金属含有酸化物層
は、Y
2O
3とAl
2O
3の一連の交互サブ層、Y
2O
3とZrO
2の一連の交互サブ層
、Y
2O
3とAl
2O
3とZrO
2との一連の交互サブ層などとすることができる。
【0050】
図2Cを参照すると、層216を有する物品210を堆積チャンバに挿入することがで
きる。表面層216は、
図2A又は
図2Bを参照して説明したように形成することができ
る。あるいはまた、層が上に形成されていない物品210を提供することができる。物品
210は、層216又は物品210が1以上の追加の前駆体280に完全に吸着されて吸
着層222を形成するまでの間、1以上の前駆体280に導入することができる。続いて
、物品210は、反応物質282に導入されて、吸着層222と反応して、固体金属酸化
物層224を成長させることができる。従って、金属酸化物層224は、ALDを使用し
て表面層216の上に完全に成長又は堆積される。一例では、前駆体280は、第1の半
サイクルで使用されるイットリウム含有前駆体とすることができ、反応物質282は、第
2の半サイクルで使用されるH
2Oとすることができる。金属酸化物層224は、Y
2O
3、ZrO
2、Al
2O
3、Er
2O
3、Ta
2O
5、又は別の酸化物のうちの第1のも
のであってもよい。
【0051】
層216及び金属酸化物層224を有する物品210は、金属酸化物層224の表面が
1以上の前駆体284で完全に吸着されて吸着層226を形成するまでの間、1以上の前
駆体284に導入することができる。続いて、物品210は、反応物質286に導入され
て、吸着層226と反応して、追加の固体金属酸化物層228を成長させることができる
。従って、追加の金属酸化物層228は、ALDを用いて金属酸化物層224の上に完全
に成長又は堆積される。一例では、前駆体284は、第1の半サイクルで使用されるジル
コニウム含有前駆体とすることができ、反応物質286は、第2の半サイクルで使用され
るH2Oとすることができる。金属酸化物層224は、Y2O3、ZrO2、Al2O3
、Er2O3、Ta2O5、又は別の酸化物のうちの第2のものであってもよい。
【0052】
図示のように、金属酸化物224及び第2の金属酸化物228の堆積は、n回繰り返し
て、交互層のスタック237を形成することができる(ただし、nは2より大きい整数値
である)。nは、目標とされる厚さ及び特性に基づいて選択される有限数の層を表すこと
ができる。交互層のスタック237は、複数の交互サブ層を含む希土類金属含有酸化物層
と考えることができる。従って、前駆体280、反応物質284、前駆体284、及び反
応物質286は、順次繰り返して導入され、追加の交互層230、232、234、23
6などを成長又は堆積させることができる。層224、224、230、232、234
、236等の各々は、単一原子層未満から数原子層の厚さを有する非常に薄い層とするこ
とができる。例えば、TMA及びH2Oによって成長させたAl2O3単分子層は、典型
的には、約0.9~約1.3Å/サイクルの成長速度を有し、一方、Al2O3格子定数
は、a=4.7Å及びc=13Å(三方晶構造の場合)である。
【0053】
上述の交互層224~236は1:1の比を有し、第2の金属酸化物の各単一層に対し
て第1の金属酸化物の単一層が存在する。しかしながら、他の実施形態では、異なる種類
の金属酸化物層の間に他の比(例えば、2:1、3:1、4:1など)が存在してもよい
。例えば、一実施形態では、各ZrO2層に対して2つのY2O3層を堆積させることが
できる。また、交互層224~236のスタック237は、2種類の金属酸化物層の交互
の連なりとして記載されている。しかしながら、他の実施形態では、3種類以上の金属酸
化物層が交互スタック237内に堆積されてもよい。例えば、スタック237は、3つの
異なる交互層(例えば、Y2O3の第1の層、Al2O3の第1の層、ZrO2の第1の
層、Y2O3の第2の層、Al2O3の第2の層、ZrO2の第2の層など)を含むこと
ができる。
【0054】
交互層のスタック237が形成された後、アニール処理が実行され、異なる材料の交互
層を互いに拡散させ、単相又は多相を有する複合酸化物を形成させることができる。従っ
て、アニール処理後、交互層237のスタックは、単一の希土類金属含有酸化物層238
となることができる。例えば、スタック中の層がY2O3、Al2O3、及びZrO2で
ある場合、得られる希土類金属含有酸化物層238は、Y4Al2O9と、Y2O3-Z
rO2の固溶体とを含むセラミックス化合物となることができる。スタック中の層がY2
O3及びZrO2である場合、Y2O3-ZrO2の固溶体を形成することができる。
【0055】
図2Dを参照すると、層216を有する物品210を堆積チャンバに挿入することがで
きる。あるいはまた、このような層216を有さない物品210を堆積チャンバに挿入す
ることができる。層216は、
図2A又は
図2Bを参照して説明したように形成すること
ができる。物品210は、層216又は物品210が1以上の前駆体290で完全に吸着
されて吸着層240を形成するまでの間、1以上の前駆体290に導入することができる
。その後、物品210は、反応物質292に導入されて、吸着層240と反応して固体希
土類酸化物層242を成長させることができる。前駆体290及び反応物質292は、実
施形態では、前駆体270及び反応物質275に対応することができる。従って、希土類
酸化物層242は、ALDを用いて層216の上に完全に成長又は堆積される。前駆体2
90を導入し、次いで反応物質292を導入するプロセスは、n回繰り返して、希土類酸
化物層242を目標厚さにすることができる(ただし、nは1より大きい整数)。
【0056】
層216及び/又は希土類酸化物層242を有する物品210は、希土類酸化物層24
2の表面が1以上の前駆体294で完全に吸着されて吸着層244を形成するまでの間、
1以上の前駆体294に導入することができる。続いて、物品210を反応物質296に
導入して、吸着層244と反応させてバリア層246を成長させることができる。前駆体
294及び反応物質296は、実施形態では、前駆体260及び反応物質265に対応す
ることができる。従って、バリア層244は、表面層216と同じ材料組成を有してもよ
い。バリア層246は、ALDを用いて希土類酸化物層242の上に完全に成長又は堆積
される。前駆体294を導入し、次いで反応物質296を導入するプロセスは、1~2回
実行して、希土類酸化物層内の結晶成長を防止することができる薄いバリア層246を形
成することができる。
【0057】
図示のように、希土類酸化物242及びバリア層228の堆積をm回繰り返して、交互
層のスタック248を形成することができる(ただし、mは1より大きい整数値である)
。Nは、目標とされた厚さ及び特性に基づいて選択される有限数の層を表すことができる
。交互層のスタック248は、複数の交互のサブ層を含む希土類金属含有酸化物層と考え
ることができる。
【0058】
図2Dに示される最終構造は、表面高純度金属酸化物層216(例えば、アモルファス
金属酸化物)と、希土類金属含有酸化物242と第2の酸化物又は他のセラミックス22
8との交互層のスタック248とを含む耐プラズマ性コーティングでコーティングされた
物品210の断面側面図である。
【0059】
第2の酸化物又は他のセラミックスは、いくつかの実施形態において表面層を形成する
ために使用される酸化物(例えば、Al2O3)と同じ酸化物であってもよい。あるいは
また、第2の酸化物又はセラミックスは、表面層を形成するために使用される酸化物とは
異なる酸化物であってもよい。
【0060】
希土類金属含有酸化物の各層は、約5~10オングストロームの厚さを有することがで
き、ALDプロセスの約5~約10サイクルを実行することによって形成することができ
、各サイクルは、希土類金属含有酸化物の1つのナノレイヤー(又は、1つのナノレイヤ
ーよりもわずかに少ない又は多いナノレイヤー)を形成する。一実施形態では、希土類金
属含有酸化物の各層は、約6~約8ALDサイクルを使用して形成される。第2の酸化物
又は他のセラミックスの各層は、単一のALDサイクル(又は数回のALDサイクル)か
ら形成することができ、1原子未満~数原子の厚さを有することができる。希土類金属含
有酸化物の層は、それぞれ、約5~100オングストロームの厚さを有することができ、
第2の酸化物の層は、実施形態では、それぞれ約1~20オングストロームの厚さを有す
ることができ、更なる実施形態では、1~4オングストロームの厚さを有することができ
る。希土類金属含有酸化物242及び第2の酸化物又は他のセラミックス228の交互層
のスタック248は、約5nm~約3μmの合計厚さを有することができる。希土類金属
含有酸化物の層242の間の第2の酸化物又は他のセラミックス246の薄層は、希土類
金属含有酸化物層における結晶形成を防止することができる。これにより、アモルファス
イットリア層を成長可能にすることができる。
【0061】
図2A~
図2Dを参照して説明された実施形態では、表面反応(例えば、半反応)が順
次行われ、様々な前駆体及び反応物質は、実施形態においては接触していない。新しい前
駆体又は反応物質の導入に先立って、ALDプロセスが行われるチャンバは、不活性キャ
リアガス(例えば、窒素又は空気)でパージして、未反応の前駆体及び/又は表面前駆体
反応副生成物を除去することができる。前駆体は各層で異なり、イットリウム含有酸化物
層又は他の希土類金属含有酸化物層のための第2の前駆体は、2つの希土類金属含有酸化
物前駆体の混合物として、これらの化合物の同時堆積を促進して、単相材料層を形成する
ことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの前駆体が使用され、他の実施
形態では、少なくとも3つの前駆体が使用され、更に別の実施形態では、少なくとも4つ
の前駆体が使用される。
【0062】
ALDプロセスは、プロセスのタイプに応じて様々な温度で行うことができる。特定の
ALDプロセスに対して最適な温度範囲は、「ALD温度ウィンドウ」と呼ばれる。AL
D温度ウィンドウより低い温度は、不良な成長速度と非ALDタイプの堆積をもたらす可
能性がある。ALD温度ウィンドウより高い温度は、化学気相成長(CVD)機構を介し
て起こる反応をもたらす可能性がある。ALD温度ウィンドウは、約100℃~約400
℃の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、ALD温度ウィンドウは、約1
20~300℃である。いくつかのALDプロセスは、約20℃~約400℃の温度で実
施することもできる。
【0063】
ALDプロセスは、複雑な幾何学的形状、高アスペクト比の孔(例えば、細孔)、及び
三次元構造を有する物品及び表面上に均一な厚さを有するコンフォーマルな耐プラズマ性
コーティングを可能にする。各前駆体の表面への十分な曝露時間は、前駆体が分散し、そ
の三次元の複雑な構造の全てを含む表面全体と完全に反応することを可能にする。高アス
ペクト比の構造においてコンフォーマルALDを得るために利用される曝露時間は、アス
ペクト比の2乗に比例し、モデリング技術を使用して予測することができる。また、AL
D技術は、原材料(例えば、粉末原料及び焼結されたターゲット)の長期かつ困難な製造
を必要とせずに、特定の組成物又は配合物のインサイチューでオンデマンドの材料合成を
可能にするので、他の通常使用されるコーティング技術よりも有利である。いくつかの実
施形態では、ALDを使用して、約3:1~約300:1のアスペクト比の物品をコーテ
ィングする。
【0064】
本明細書に記載のALD技術を用いて、多成分膜(例えば、YxAlyOz(例えば、
Y3Al5O12)、YxZryOz、YaZrxAlyOz、YxEryOz、YxE
ryFz、又はYwErxOyFz)を、上記で説明され、以下の例においてより詳細に
説明されるように、(例えば、希土類金属含有酸化物を単独で又は1以上の他の酸化物と
組み合わせて成長させるために使用される前駆体の適切な混合物によって)成長、堆積、
又は同時堆積することができる。
【0065】
図3Aは、多孔質の物品(例えば、実施形態に係る多孔質処理チャンバコンポーネント
(例えば、ESC用プラグ))内の多孔質壁上に耐プラズマ性コーティングを形成する方
法300を示す。方法300は、本明細書に記載される任意の物品をコーティングするた
めに使用することができる。本方法は、オプションとして、耐プラズマ性コーティングに
対する組成を選択することによって開始してもよい。組成の選択及び形成方法は、同じエ
ンティティによって、又は複数のエンティティによって実行されてもよい。
【0066】
本方法は、ブロック305において、酸性溶液で物品を洗浄することをオプションとし
て含むことができる。一実施形態では、物品は酸性溶液の浴中に浸される。酸性溶液は、
実施形態において、フッ化水素酸(HF)溶液、塩酸(HCl)溶液、硝酸(HNO3)
溶液、又はそれらの組み合わせとすることができる。酸性溶液は、物品から表面汚染物質
を除去することができる、及び/又は物品の表面から酸化物を除去することができる。物
品を酸性溶液で洗浄することにより、ALDを用いて堆積されたコーティングの品質を改
善することができる。一実施形態では、約0.1体積%~約5.0体積%のHFを含む酸
性溶液を使用して、石英から作られたチャンバコンポーネントを洗浄する。一実施形態で
は、約0.1体積%~約20体積%のHClを含む酸性溶液を使用して、Al2O3から
作られた物品を洗浄する。一実施形態では、約5体積%~約15体積%のHNO3を含む
酸性溶液を使用して、アルミニウム及び他の金属から作られた物品を洗浄する。
【0067】
ブロック310において、物品は、ALD堆積チャンバ内にロードされる。ブロック3
20において、本方法は、ALDを使用して物品の表面上に耐プラズマ性コーティングを
堆積させるステップを含む。耐プラズマ性コーティングは更に、物品内の細孔の細孔壁上
に堆積される。一実施形態では、ブロック325において、ALDが実行され、金属酸化
物層(例えば、Al2O3層などの)を堆積させる。一実施形態では、ブロック330に
おいて、ALDは、オプションとして実行され、希土類金属含有酸化物層を単独で、又は
1以上の他の酸化物と共に堆積又は同時堆積させる。ALDは、耐プラズマ性コーティン
グの表面粗さを、コーティングされる物品の下地の表面の表面粗さと一致させることがで
きる、実施形態において実行されるような非常にコンフォーマルなプロセスである。耐プ
ラズマ性コーティングは、いくつかの実施形態では、約5nm~約3μmの合計厚さを有
することができる。耐プラズマ性コーティングは、実施形態では約0%の空孔率を有して
もよく、又は実施形態では空孔が無くてもよく、約±5%以下、±10%以下、又は±2
0%以下の厚さばらつきを有してもよい。
【0068】
一実施形態では、ブロック335において、ALDを実行して、希土類金属含有酸化物
と追加の酸化物の交互層のスタックを堆積させる。追加の酸化物は、本明細書に記載の酸
化物のいずれであってもよい。あるいはまた、単一層を形成してもよい。
【0069】
いくつかの例では、多孔質物品の空孔率及び/又は透過率を減少させることが有益な場
合がある。いくつかの実施形態では、細孔の細孔壁上の耐プラズマ性コーティングの厚さ
は、多孔質材料の空孔率及び透過率に影響を及ぼす可能性がある。コーティングの厚さを
空孔率の減少及び/又は透過率の減少に対してマッピングする特徴付けを行うことができ
る。特徴付けは、その後、多孔質物品の初期空孔率及び/又は初期透過率を目標空孔率及
び/又は透過率まで減少させるために使用することができる。例えば、第1のコーティン
グ厚さは、60%から50%まで空孔率を減少させることができ、第2のコーティング厚
さは、60%から40%まで空孔率を減少させることができる。出発空孔率及び目標空孔
率(又は出発透過率及び目標透過率)を決定することができる。出発空孔率(又は出発透
過率)を目標の空孔率(又は目標透過率)に低下させるコーティング厚さを決定すること
ができる。耐プラズマ性コーティングは、次に、空孔率及び/又は透過率が目標空孔率及
び/又は目標透過率を達成するように、目標厚さまで堆積させることができる。
【0070】
イットリウム含有酸化物層は、イットリウム含有酸化物を含み、1以上の追加の希土類
金属酸化物を含むことができる。イットリウムを含む希土類含有酸化物材料は、イットリ
ウム含有酸化物が一般的に高い安定性、高い硬度、及び優れた耐浸食特性を有するので、
実施形態において耐プラズマ性コーティングを形成するために使用することができる。例
えば、Y2O3は、最も安定な酸化物の1つであり、標準生成ギブス自由エネルギー(Δ
Gf)が-1816.65kJ/molであり、Y2O3と大部分のプロセス化学物質と
の反応が標準条件下では熱力学的に不利であることを示している。本明細書の実施形態に
従って堆積されたY2O3を有する第1の金属酸化物層及び希土類金属含有酸化物層を含
む耐プラズマ性コーティングはまた、多くのプラズマ及び化学環境に対して低い浸食速度
(例えば、200ワットのバイアス及び500℃で直接NF3プラズマ化学物質に曝露さ
れたときの約0μm/秒の浸食速度)を有することができる。例えば、200ワットと5
00℃での直接NF3プラズマの1時間の試験では、測定可能な浸食は生じなかった。耐
プラズマ性コーティングを形成することができるイットリウム含有酸化物化合物の例とし
ては、Y2O3、YxAlyOz(例えば、Y3Al5O12)、YxZryOz、Ya
ZrxAlyOz、又はYxEryOzを含む。耐プラズマ性コーティング中のイットリ
ウム含有量は、約0.1原子%から100原子%近くまで及ぶことができる。イットリウ
ム含有酸化物の場合、イットリウム含有量は、約0.1原子%から100原子%近くまで
及び、酸素含有量は、約0.1原子%から100原子%近くまで及ぶことができる。
【0071】
耐プラズマ性コーティングを形成することができるエルビウム含有酸化物化合物の例と
しては、Er2O3、ErxAlyOz(例えば、Er3Al5O12)、ErxZry
Oz、EraZrxAlyOz、YxEryOz、及びEraYxZryOz(例えば、
Y2O3、ZrO2、及びEr2O3の単相固溶体)を含む。耐プラズマ性コーティング
中のエルビウム含有量は、約0.1原子%から約100原子%近くまで及ぶことができる
。エルビウム含有酸化物の場合、エルビウム含有量は、約0.1原子%から100原子%
近くまで及ぶことができ、酸素含有量は、約0.1原子%~100原子%近くまで及ぶこ
とができる。
【0072】
有利には、Y2O3及びEr2O3は混和性である。Y2O3とEr2O3との任意の
組み合わせに対して単相固溶体を形成することができる。例えば、わずかに0モル%を超
えるEr2O3とわずかに100モル%を下回るY2O3との混合物を組み合わせて同時
堆積して、単相固溶体である耐プラズマ性コーティングを形成することができる。また、
わずかに0モル%を超えるE2O3とわずかに100モル%を下回るY2O3との混合物
を組み合わせて、単相固溶体である耐プラズマ性コーティングを形成することができる。
YxEryOzの耐プラズマ性コーティングは、0モル%超~100モル%未満のY2O
3と、0モル%超~100モル%未満のEr2O3とを含むことができる。いくつかの顕
著な例には、90~99モル%のY2O3と1~10モル%のEr2O3、80~89モ
ル%のY2O3と11~20モル%のEr2O3、70~79モル%のY2O3と21~
30モル%のEr2O3、60~69モル%のY2O3と31~40モル%のEr2O3
、50~59モル%のY2O3と41~50モル%のEr2O3、40~49モル%のY
2O3と51~60モル%のEr2O3、30~39モル%のY2O3と61~70モル
%のEr2O3、20~29モル%のY2O3と71~80モル%のEr2O3、10~
19モル%のY2O3と81~90モル%のEr2O3、及び1~10モル%のY2O3
と90~99モル%のEr2O3を含む。YxEryOzの単相固溶体は、約2330℃
未満の温度で単斜立方状態を有することができる。
【0073】
有利には、ZrO2をY2O3及びEr2O3と組み合わせて、ZrO2、Y2O3、
及びEr2O3の混合物を含む単相固溶体を形成することができる(例えば、EraYx
ZryOz)。YaErxZryOzの固溶体は、立方晶系、六方晶系、正方晶系及び/
又は立方体の蛍石構造を有することができる。YaErxZryOzの固溶体は、0モル
%超~60モル%のZrO2と、0モル%超~99モル%のEr2O3と、0モル%超~
99モル%のY2O3とを含むことができる。使用することができるZrO2のいくつか
の顕著な量は、2モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、30モル%
、50モル%、及び60モル%を含む。使用することができるEr2O3及び/又はY2
O3のいくつかの顕著な量は、10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50
モル%、60モル%、70モル%、80モル%、及び90モル%を含む。
【0074】
YaZrxAlyOzの耐プラズマ性コーティングは、0モル%超~60モル%のZr
O2、0モル%超~99モル%のY2O3、及び0モル%超~60モル%のAl2O3を
含むことができる。使用することができるZrO2のいくつかの顕著な量は、2モル%、
5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、30モル%、50モル%、及び60モ
ル%を含む。使用することができるY2O3のいくつかの顕著な量は、10モル%、20
モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、
及び90モル%を含む。使用することができるAl2O3のいくつかの顕著な量は、2モ
ル%、5モル%、10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、及び
60モル%を含む。一例では、YaZrxAlyOzの耐プラズマ性コーティングは、4
2モル%のY2O3、40モル%のZrO2、及び18モル%のAl2O3を含み、層状
構造を有する。別の一例では、YaZrxAlyOzの耐プラズマ性コーティングは、6
3モル%のY2O3、10モル%のZrO2、及び27モル%のAl2O3を含み、層状
構造を有する。
【0075】
実施形態では、表面層及びY2O3、YxAlyOz(例えば、Y3Al5O12)、
YxZryOz、YaZrxAlyOz、又はYxEryOzの希土類金属含有酸化物層
を含む耐プラズマ性コーティングは、低いガス放出速度、約1000V/μmのオーダー
の絶縁破壊電圧、約1E-8トール/秒未満の気密性(リークレート)、約600~約9
50又は約685のビッカース硬さ、スクラッチテストで測定して約75mN~約100
mN又は約85mNの接着力、及び室温でのX線回折によって測定して約-1000~-
2000MPa(例えば、約-1140MPa)膜応力を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、ALDのために、ジエチルア
ルミニウムエトキシド、トリス(エチルメチルアミド)アルミニウム、アルミニウムse
c-ブトキシド、アルミニウムトリブロミド、アルミニウムトリクロライド、トリエチル
アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、又はトリス(ジ
エチルアミド)アルミニウムから選択される酸化アルミニウム前駆体から形成することが
できる。
【0077】
いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、イットリアであるか、又はイ
ットリアを含み、希土類金属含有酸化物層を形成するために使用される酸化イットリウム
前駆体は、ALDのために、トリス(N、N-ビス(トリメチルシリル)アミド)イット
リウム(III)、又はイットリウム(III)ブトキシドから選択されることができる
。
【0078】
いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、酸化ジルコニウムを含む。耐
プラズマ性コーティングが酸化ジルコニウムを含む場合、酸化ジルコニウム前駆体は、A
LDのために、臭化ジルコニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(
IV)tert-ブトキシド、テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム(IV)、テ
トラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム(IV)、又はテトラキス(エチルメチルアミ
ド)ジルコニウム(IV)を含む。これらの酸化ジルコニウム前駆体のうちの1以上は、
酸化イットリウム前駆体と共に同時堆積させてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティングは、酸化エルビウムを更に含むこ
とができる。酸化エルビウム前駆体は、ALDのために、トリス-メチルシクロペンタジ
エニルエルビウム(III)(Er(MeCp)3)、エルビウムボランアミド(Er(
BA)3)、Er(TMHD)3、エルビウム(III)トリス(2,2,6,6-テト
ラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、又はトリス(ブチルシクロペンタジエニル)
エルビウム(III)から選択することができる。
【0080】
図3Bは、一実施形態に係る多孔質セラミックス物品(例えば、ESC用の多孔質セラ
ミックスプラグ)上に耐プラズマ性コーティングを形成する方法350を示す。本方法は
、オプションとして耐プラズマ性コーティング用の組成物を選択することによって開始す
ることができる。組成物の選択及び形成方法は、同じエンティティによって、又は複数の
エンティティによって実行されてもよい。
【0081】
方法350のブロック352では、(例えば、多孔質ESCプラグの)物品の表面を、
酸性溶液を用いて洗浄する。酸性溶液は、方法300のブロック305に関して上述した
酸性溶液のいずれであってもよい。その後、物品をALD堆積チャンバにロードすること
ができる。
【0082】
ブロック355によると、本方法は、ALDを介して(物品内の細孔の細孔壁を含む)
物品の表面上にアモルファスHP-Al2O3の第1の層を堆積させるステップを含む。
アモルファスHP-Al2O3は、約5nm~約300nmの厚さを有することができる
。ブロック360によると、本方法は、ALDを介してアモルファスHP-Al2O3の
表面層上にイットリウム含有酸化物前駆体及び別の酸化物前駆体の混合物を同時堆積させ
る(すなわち、1ステップ内で堆積させる)ことによって第2の層を形成するステップを
更に含む。第2の層は、例えば、Al2O3又はEr2O3又はZrO2との単一相内に
Y2O3を含むことができる。あるいはまた、第2の層は、複数の相(例えば、Y4Al
2O9の相)と、Y2O3-ZrO2の固溶体を含む別の相とを含むことができる。
【0083】
上述のように、希土類金属含有酸化物層は、複数の異なる酸化物の混合物を含むことが
できる。このような希土類金属含有酸化物層を形成するために、前述のイットリア前駆体
、酸化エルビウム前駆体、アルミナ前駆体、及び/又は酸化ジルコニウム前駆体の任意の
組み合わせを、ALD堆積チャンバに共に導入して、様々な酸化物を同時堆積させ、単相
又は多相を有する層を形成することができる。ALD堆積又は同時堆積は、オゾン、水、
O-ラジカル、又は酸素供与体として機能し得る他の前駆体の存在下で実行することがで
きる。
【0084】
ブロック370では、追加の層が追加されるべきかどうか(例えば、多層スタックが形
成されるべきかどうか)を決定することができる。追加の層を追加する場合、本方法はブ
ロック355に戻ることができ、追加のAl2O3層を形成することができる。さもなけ
れば、本方法はブロック375に進むことができる。
【0085】
ブロック375では、チャンバコンポーネント上の物品(例えば、チャンバコンポーネ
ント)及び耐プラズマ性コーティングの両方の層が加熱される。加熱は、アニーリングプ
ロセス、熱サイクルプロセス、及び/又は半導体処理中の製造ステップを介して行われて
もよい。一実施形態では、熱サイクルプロセスは、製造後のチェックとして試験片(クー
ポン)に対して実行され、品質管理のための割れを検出し、試験片は、部品が処理中に経
験する可能性のある最高温度に循環(サイクル)される。熱サイクル温度は、部品が使用
される特定の1つのアプリケーション又は複数のアプリケーションに依存している。例え
ば、(
図4A~
図4Cに示す)セラミックスESCの場合、試験片は、室温と250℃と
の間で循環させることができる。温度は、物品、表面、及び膜層の構成材料に基づいて選
択され、これによってそれらの完全性を維持し、これらのコンポーネントのいずれか又は
全てを変形、分解、又は溶融させないようにすることができる。
【0086】
図4A~
図4Cは、一実施形態に係るESC用のコーティングされた多孔質セラミック
スプラグ405を示す。
図4Aは、ESC用の多孔質セラミックスプラグ405を示す。
多孔質セラミックスプラグ405は、セラミックス材料(例えば、AlO/SiO、Al
O/MgO/SiO、SiC、SiN、AlN/SiOなど)で作ることができる。セラ
ミックスプラグ405は、本明細書の実施形態に記載されたような耐プラズマ性コーティ
ングの使用によって性能が改善され得る多孔質セラミックチャンバコンポーネントの一例
に過ぎない。本明細書に開示された耐プラズマ性コーティングでコーティングしたときに
、他の多孔質セラミックチャンバコンポーネントの性能も改善され得ることが理解される
べきである。本明細書に示されるようなプラグ405は、高いアスペクト比を有する複雑
な形状及び穴(すなわち、細孔)を有する表面を有する半導体処理チャンバコンポーネン
トの図として選択された。セラミックスプラグ405は、腐食性化学物質(例えば、フッ
素)に曝される可能性があり、耐プラズマ性コーティングでコーティングされていないと
きは、プラグとのプラズマ相互作用のために浸食される。
【0087】
セラミックスプラグ405は、複数の細孔を有し、そのうちの1つ408が
図4Bに示
されている。セラミックスプラグ405は、約5%~約60%の空孔率を有することがで
きる。細孔408(及び/又は細孔によって形成されたセラミックスプラグ405を通る
チャネル)は、長さの直径に対する比(L:D)として定義される高いアスペクト比を有
することができ、高いアスペクト比は、約3:1~約300:1、又は約50:1~約1
00:1の範囲とすることができる。細孔408の表面415は、耐プラズマ性コーティ
ング420を有し、これは本明細書で上記の耐プラズマ性コーティングのいずれかに対応
することができる。耐プラズマ性コーティング420は、細孔408の表面415上にH
P-Al
2O
3材料などを含んでもよく、それは実施形態において非晶質とすることがで
きる。いくつかの実施形態では、HP-Al
2O
3層の純度は、約89.99%~約99
.99%とすることができる。単層コーティング420は、単層コーティング420があ
っても、細孔408はその通常の動作中にHeガスを透過可能であるように、細孔408
を通る流路412に殆ど又は全く影響を及ぼさない。耐プラズマ性コーティング420は
、ALD技術を用いて、セラミックスプラグ405の外面上ならびにセラミックスプラグ
405内の細孔408の細孔壁415上に成長又は堆積される。
【0088】
ALD技術は、複雑な幾何学的形状及び細孔の大きなアスペクト比にもかかわらず、細
孔408の細孔壁415上に比較的均一な厚さ及びゼロ空孔率の(すなわち、空孔の無い
)コンフォーマルなコーティングを可能にする。耐プラズマ性コーティング420は、プ
ラズマ相互作用を低減し、その性能に影響を与えることなくプラグの耐久性を向上させる
ことができる。ALDで堆積された耐プラズマ性コーティング420は、その機能を妨げ
ないように、細孔408及びセラミックスプラグ405の外面の相対的な形状及び幾何学
的構成を維持する。同様に、耐プラズマ性コーティングは、他の多孔質セラミックスチャ
ンバコンポーネントに施される場合、コンポーネントの機能を損なわないように、コンポ
ーネントの表面及び細孔壁の形状及び幾何学的構成を維持することができる。コーティン
グはまた、耐プラズマ性を提供し、多孔質物品の内部に対する耐浸食性及び/又は耐腐食
性を改善することができる。
【0089】
耐プラズマ性コーティング420のプラズマに対する耐性は、コーティングされたコン
ポーネントの操作及びプラズマへの曝露期間全体を通じて、「ミクロン/時間(μm/時
)」の単位を有することができる「エッチング速度」(ER)を通して測定される。異な
る処理時間の後に測定を行ってもよい。例えば、測定は、処理前、又は約50処理時間に
、又は約150処理時間に、又は約200処理時間などとすることができる。ESCプラ
グ又は任意の他の処理チャンバコンポーネント上に成長又は堆積された耐プラズマ性コー
ティングの組成の変化は、複数の異なるプラズマ抵抗又は浸食速度値をもたらすことがで
きる。また、様々なプラズマに曝露された単一の組成を有する耐プラズマ性コーティング
420は、複数の異なるプラズマ抵抗又は浸食速度値を有することができる。例えば、耐
プラズマ性材料は、第1のタイプのプラズマに関連する第1のプラズマ抵抗又は浸食速度
、及び第2のタイプのプラズマに関連する第2のプラズマ抵抗又は浸食速度を有すること
ができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、耐プラズマ性コーティング420は、第1の層と、オプショ
ンとして第1の層の上にある第2の希土類金属含有酸化物層(図示せず)を含むことがで
きる。第1の層はHP-Al2O3を含むことができ、希土類金属含有酸化物層が存在す
るとき、第1の層は非晶質HP-Al2O3層を含むことができる。希土類金属含有酸化
物層は、単独で又は追加の希土類金属酸化物(例えば、酸化エルビウム、酸化ジルコニウ
ムなど)と共に酸化イットリウムを含むことができる。希土類金属含有酸化物層は、任意
の希土類金属含有酸化物材料(例えば、本明細書で上記したもの)を有することができる
。各層は、ALDプロセスを用いてコーティングすることができる。ALDプロセスは、
その高いアスペクト比にもかかわらず、細孔壁がセラミックスプラグ405の内側にある
にもかかわらず、各細孔408の細孔壁全体にわたって空孔の無い均一な厚さのコンフォ
ーマルなコーティング層を成長させることができ、同時に、多成分コーティングは、セラ
ミックスプラグの細孔を塞がないように十分に薄くすることができることを確実にする。
【0091】
図4Cは、本明細書に記載の実施形態に係る耐プラズマ性コーティングでコーティング
された複数の多孔質セラミックスプラグ405、435を含む基板支持アセンブリ422
を示す。基板支持アセンブリ422は、取り付けプレート465、絶縁プレート460、
設備プレート458、及び熱伝導ベース455と静電パック430から構成された静電チ
ャックを含み、静電パック430は、接着剤450(例えば、シリコーン接着剤)によっ
て熱伝導性ベース455に接合される。Oリング445を熱伝導性ベース455及び静電
パック430の周囲の接着450の周りに配置して、接着剤450を保護してもよい。絶
縁プレート460は、例えば、レクソライト(rexolite)又は他のプラスチック
とすることができ、接地されたハードウェアの下から(例えば、取り付けプレート465
から)電気的絶縁を提供することができる。基板支持アセンブリ422は、静電パック4
30、接着剤450、熱伝導ベース455、設備プレート458、絶縁プレート460、
及び/又は取り付けプレート465を貫通する1以上の孔を含むことができる。1つ又は
複数の多孔質セラミックスプラグ435、405が孔に挿入され、腐食性ガス及びプラズ
マが貫通孔に侵入するのを防ぐことができる。耐プラズマ性コーティングは、1以上の孔
に挿入されたセラミックスプラグ405、435内の細孔の細孔壁をコーティングする。
取り付けプレート465は、ユーティリティ(例えば、流体、電力線、センサリードなど
)を熱伝導ベース460及び静電パック455に経路付け(ルーティング)するための通
路を含む。
【0092】
静電パック455は、複数のガス通路(例えば、静電パック430の上面に形成するこ
とができる溝、メサ、及び他の表面構造)を更に含むことができる。ガス通路は、前述の
細孔を介して熱伝達(又は裏面)ガス(例えば、He)の供給源に流体結合することがで
きる。動作中、裏面ガスは、制御された圧力でガス通路に供給されて、静電パック430
と支持された基板との間の熱伝達を向上させることができる。上述したように、孔は、H
eを透過可能な多孔質セラミックスプラグ405、435によって塞がれたHeビアホー
ルとすることができる。多孔質セラミックスプラグはまた、半導体処理チャンバ430を
洗浄するために使用される腐食性ガス及びプラズマを少なくとも部分的に透過可能とする
ことができる。多孔質セラミックスプラグは、腐食性ガスのガス粒子を濾過し、そのよう
な腐食性ガスが基板支持体アセンブリ内に浸透するのを防止することができる。多孔質セ
ラミックスプラグ405、435は更に、二次的なプラズマが基板支持アセンブリ422
の孔内に形成されるのを更に防止することができる。
【0093】
静電パック430は、少なくとも1つのクランプ電極440を含む。クランプ電極44
0(又は静電パック430に配置された他の電極)は更に、処理チャンバ内で処理ガス及
び/又は他のガスから形成されたプラズマを維持するための整合回路を介して1以上のR
F電源に結合することができる。多孔質セラミックスプラグ405、435上の耐プラズ
マ性コーティングは、処理中にプラズマに対して耐腐食性を提供する。
【0094】
以下の実施例は、本明細書に記載された実施形態の理解を助けるために記載されており
、本明細書に記載され特許請求される実施形態を具体的に限定するものとして解釈される
べきではない。当業者の知識の範囲内にある、現在知られているか又は後に開発される全
ての均等物の置換を含むそのような変形、及び実験設計における処方の変更又は軽微な変
更は、本明細書に組み込まれた実施形態の範囲内にあるとみなされるべきである。これら
の実施例は、上述の方法300又は方法350を実行することによって達成することがで
きる。
【0095】
実施例1-多孔質セラミック基板上でのHP-Al
2O
3表面層を形成
図5Aは、本明細書に記載の実施形態に従ってコーティングされた多孔質プラグの形態
を示す上面図である。
図5Bは、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して画像化された本
明細書に記載の実施形態に従ってコーティングされた多孔質プラグの断面図である。アモ
ルファス酸化アルミニウム(Al
2O
3)コーティングの耐プラズマ性コーティング52
0を、アルミナ及び二酸化ケイ素から構成される多孔質プラグ515上に堆積させた。A
l
2O
3の耐プラズマ性コーティング520は、原子層堆積を使用して多孔質プラグ51
5上に堆積され、約40nmの厚さを有する。耐プラズマ性コーティング用の前駆体は、
1~数mトールから1~数トールのスケールの圧力及び約100~250℃の温度で基板
に導入された。図示のように、コーティング520は、多孔質プラグ515の細孔を塞が
ない。
【0096】
図6は、新しい多孔質プラグ505、第1の使用済み多孔質プラグ510、及び第2の
使用済み多孔質プラグ515に対するエネルギー分散型X線微量分析の結果を示す。この
結果は、新しい多孔質プラグと比較して、ケイ素(Si)の著しく低い含有量と、フッ素
(F)の高い含有量を示している。このようなケイ素の喪失及びフッ素の添加は、本明細
書に記載されているように、多孔質プラグ内の細孔の細孔壁上に耐プラズマ性コーティン
グを施すことによって緩和される。
【0097】
前述の説明は、本発明のいくつかの実施形態の良好な理解を提供するために、具体的な
システム、コンポーネント、方法等の例などの多数の具体的な詳細を説明している。しか
しながら、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施
することができることが当業者には明らかであろう。他の例において、周知のコンポーネ
ント又は方法は、本発明を不必要に不明瞭にしないために、詳細には説明しないか、単純
なブロック図形式で提示されている。従って、説明された具体的な詳細は、単なる例示で
ある。特定の実装では、これらの例示的な詳細とは異なる場合があるが、依然として本発
明の範囲内にあることが理解される。
【0098】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」への参照は、その実施形
態に関連して記載された特定の構成、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含ま
れることを意味している。従って、本明細書を通じて様々な場所における「1つの実施形
態では」又は「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を指す
ものではない。また、用語「又は」は、排他的な「又は」ではなく包含的な「又は」を意
味することを意図している。「約」又は「ほぼ」という用語が本明細書で使用される場合
、これは提示される公称値が±10%以内で正確であることを意味することを意図してい
る。
【0099】
本明細書内の本方法の操作は、特定の順序で図示され説明されているが、特定の操作を
逆の順序で行うように、又は特定の操作を少なくとも部分的に他の操作と同時に実行する
ように、各方法の操作の順序を変更することができる。別の一実施形態では、異なる操作
の命令又は副操作は、断続的及び/又は交互の方法とすることができる。
【0100】
なお、上記の説明は例示であり、限定的ではないことを意図していることが理解される
べきである。上記の説明を読み理解することにより、多くの他の実施形態が当業者にとっ
て明らかとなるであろう。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を、そのよう
な特許請求の範囲が権利を与える均等物の全範囲と共に参照して決定されるべきである。