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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-15
(45)【発行日】2023-06-23
(54)【発明の名称】電子・電気機器部品屑の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/00 20060101AFI20230616BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20230616BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20230616BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
C22B1/00 601
C22B1/02
C22B7/00 F
C22B15/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021137502
(22)【出願日】2021-08-25
(62)【分割の表示】P 2019569193の分割
【原出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2021191897
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2018015547
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝志
(72)【発明者】
【氏名】武田 翼
(72)【発明者】
【氏名】大塚 教正
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190529(JP,A)
【文献】特開昭64-055395(JP,A)
【文献】特開2003-213348(JP,A)
【文献】特開2000-301131(JP,A)
【文献】特開2016-219402(JP,A)
【文献】大木達也ら,希少金属リサイクルのための物理選別技術開発,環境資源工学,日本,環境資源工学会,2011年11月01日,Vol.58, No.3,pp.95-100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子・電気機器部品屑中に含まれる製錬阻害物質としてSb、Al、Fe、Ni、Cl、Br、Fからなる群の中から選択される1種以上を含有する部品屑である粉状物、フィルム状部品屑、基板、合成樹脂類を選別して除去することにより、前記電子・電気機器部品屑中に含まれる製錬阻害物質を減少させる物理選別工程と、
前記物理選別工程後の前記電子・電気機器部品屑に対し、前記電子・電気機器部品屑を焼却する工程と、焼却物を破砕及び篩別する工程と、前記破砕及び篩別処理した処理物を銅製錬する工程とを含む製錬工程で処理する工程と
を備え
前記物理選別工程が、少なくとも二段階の風力選別を行って前記粉状物及び前記フィルム状部品屑を除去した後、重量物側に塊状のメタルを分離し、軽量物側に前記基板及び合成樹脂類を濃縮させ、前記軽量物に対してメタルソータによる選別工程を行うことを含む電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項2】
前記電子・電気機器部品屑中に含まれる製錬阻害物質を減少させる分、前記製錬工程での前記電子・電気機器部品屑の処理量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の電子・電気機器部品屑の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子・電気機器部品屑の処理方法に関し、特に、使用済み電子・電気機器のリサイクル処理に好適な電子・電気機器部品屑の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源保護の観点から、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器部品屑から、有価金属を回収することがますます盛んになってきており、その効率的な回収方法が検討され、提案されている。
【0003】
例えば、特開平9-78151号公報(特許文献1)では、有価金属を含有するスクラップ類を銅鉱石溶錬用自溶炉へ装入し、有価金属を炉内に滞留するマットへ回収させる工程を含む有価金属のリサイクル方法が記載されている。このようなリサイクル方法によれば、銅溶錬自溶炉での銅製錬にスクラップ処理を組み合わせることができるため、有価金属含有率が低いスクラップ類からでも低コストで有価金属を回収することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような銅溶錬自溶炉を用いた処理においては、電子・電気機器部品屑の処理量が増えると、電子・電気機器部品屑を構成する合成樹脂等の有機物に含まれる炭素成分が増加し、溶錬炉で過還元によるトラブルが発生する場合がある。一方で、電子・電気機器部品屑の処理量は近年増加する傾向にあるため、銅溶錬自溶炉での効率的な処理が望まれている。
【0005】
銅溶錬自溶炉の過還元によるトラブルの発生を予防する手法の一つとして、電子・電気機器部品屑を銅溶錬自溶炉で処理する前に電子・電気機器部品屑を粉砕処理し、容量を小さくすることが提案されている。例えば、特開2015-123418号公報(特許文献2)では、銅を含む電気・電子部品屑を焼却後、所定のサイズ以下に粉砕し、粉砕した電気・電子部品屑を銅の溶錬炉で処理することが記載されている。
【0006】
しかしながら、電子・電気機器部品屑の処理量が増加することにより、電子・電気機器部品屑に含まれる物質の種類によっては、その後の銅製錬工程での処理に好ましくない物質(製錬阻害物質)が従来よりも多量に投入されることとなる。このような銅製錬工程に装入される製錬阻害物質の量が多くなると、電子・電気機器部品屑の投入量を制限せざるを得なくなる状況が生じる。
【0007】
従来より、天然の鉱石由来の製錬阻害物質も含め、銅製錬の溶錬工程における熱力学的な手法や電解工程における電解液の精製方法については数々の取り組みがされてきたが、天然の鉱石と比較して、製錬阻害物質の含有割合が著しく大きい電子・電気機器部品屑の処理方法には課題が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平9-78151号公報
【文献】特開2015-123418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記課題を鑑み、本発明は、製錬工程で処理する電子・電気機器部品屑の処理量を増大でき、有価金属を効率的に回収することが可能な電子・電気機器部品屑の処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討したところ、製錬工程に電子・電気機器部品屑に含まれる製錬阻害物質を極力持ち込まないような処理を行うことが有効であるとの知見を得た。
【0011】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、電子・電気機器部品屑中に含まれる製錬阻害物質を含む部品屑を選別して除去することにより、電子・電気機器部品屑中に含まれる製錬阻害物質を減少させる物理選別工程と、物理選別工程後の電子・電気機器部品屑に対し、電子・電気機器部品屑を焼却する工程と、焼却物を破砕及び篩別する工程と、破砕及び篩別処理した処理物を銅製錬する工程とを含む製錬工程で処理する工程とを備える電子・電気機器部品屑の処理方法が提供される。
【0012】
本発明の実施形態に係る処理方法において製錬阻害物質とは、銅製錬における製品、副製品の品質に影響を与える物質および/または銅製錬のプロセスに影響を与える物質を一例とする物質の総称を指す。
【0013】
製錬阻害物質としては具体的には以下の物質が挙げられる。例えば、銅製錬における製品である電気銅の品質規格に影響するアンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)等の元素、副産物のスラグの溶出基準の規制対象元素、硫酸の着色に影響する微細炭化水素粒子の元、或いは炉内での急激な燃焼、漏煙のほか局所加熱による設備劣化に影響する樹脂類、銅製錬のプロセスでスラグ組成に変化を与え、有価金属のスラグへの損失、いわゆるスラグロスに影響するアルミニウム(Al)、鉄(Fe)等の元素、排ガス処理設備の腐食および硫酸触媒の劣化に影響する塩素(Cl)、臭素(Br)、フッ素(F)等のハロゲン元素を含む物質等である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製錬工程で処理する電子・電気機器部品屑の処理量を増大でき、有価金属を効率的に回収することが可能な電子・電気機器部品屑の処理方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
-製錬工程-
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法は、有価金属を回収するための製錬工程において、電子・電気機器部品屑を処理する工程を有する。
【0016】
有価金属として銅を回収する場合は、溶錬炉を用いた製錬工程が行われる。製錬工程には、電子・電気機器部品屑を焼却する工程と、焼却物を破砕及び篩別する工程と、破砕及び篩別処理した処理物を銅製錬する工程とを備える。電子・電気機器部品屑を処理する工程は、焼却工程の前に行われることが好ましい。
【0017】
以下に制限されるものではないが、本実施形態に係る製錬工程としては、例えば自溶炉法を用いた銅製錬工程が好適に利用できる。自溶炉法を用いた銅製錬工程としては、例えば、自溶炉のシャフトの天井部から銅精鉱と溶剤と電子・電気機器部品屑を装入する。装入された精鉱及び電子・電気機器部品屑が、自溶炉のシャフトにおいて溶融し、自溶炉のセットラーにおいて例えば50~68%の銅を含むマットとそのマットの上方に浮遊するスラグとに分離される。電子・電気機器部品中の銅、金、銀などの有価金属は、自溶炉内を滞留するマットへ吸収されることで、電子・電気機器部品屑中から有価金属を回収できる。
【0018】
銅製錬においては、銅を製造するとともに、金、銀などの貴金属をより多く回収するために、処理する原料として銅、金、銀など有価金属の含有量の多い電子・電気機器部品屑をできるだけ多く投入して処理することが重要である。
【0019】
一方、電子・電気機器部品屑には、銅製錬における製品、副製品の品質に影響を与える物質および/または銅製錬のプロセスに影響を与える製錬阻害物質が含有される。例えば、上述のようなアンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)等の元素を含有する物質の溶錬炉への投入量が多くなると、銅製錬で得られる電気銅の品質が低下する場合がある。
【0020】
また、銅製錬などの非鉄金属製錬工程では、精鉱の酸化によって発生する二酸化硫黄から硫酸を製造するが、二酸化硫黄に炭化水素が混入すると、産出される硫酸が着色する場合がある。炭化水素の混入源としては、例えばプラスチックなどの合成樹脂類などが挙げられるが、銅製錬へ持ち込まれる電子・電気機器部品屑の構成によっては、このような合成樹脂類が多く含まれる場合がある。合成樹脂類は、溶錬炉内での急激な燃焼、漏煙のほか局所加熱による設備劣化を生じさせる恐れもある。
【0021】
更に、Al、Feなどが溶錬炉内に一定以上の濃度で存在すると、例えば、銅製錬のプロセスでスラグ組成に変化を与え、有価金属のスラグへの損失、いわゆるスラグロスに影響する場合もある。また、Cl、Br、F等のハロゲン元素が溶錬炉へ投入される電子・電気機器部品屑中に多く含まれていると、銅製錬の排ガス処理設備の腐食や硫酸触媒の劣化を引き起こす場合がある。このような製錬阻害物質の混入の問題は、電子・電気機器部品屑の処理量が多くなるにつれて顕在化し、製錬工程に負担がかかるという問題が生じてきている。
【0022】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法によれば、製錬工程の前に、電子・電気機器部品屑中に含まれる製錬阻害物質を減少させるための工程を備える。これにより、製錬工程に持ち込まれる製錬阻害物質の割合を極力抑えることが可能になるとともに、電子・電気機器部品屑中に含まれる製錬阻害物質を減少させる分だけ、製錬工程において電子・電気機器部品屑の処理量を増加させることが可能になる。即ち、従来において電子・電気機器部品屑中の製錬阻害物質の含有率が高い場合は、製錬工程の安定した操業のために、一定量の電子・電気機器部品屑しか投入することできなかったが、本発明の実施の形態に係る処理方法によれば、製錬工程の前に、電子・電気機器部品屑中に含まれる製錬阻害物質を減少させるための工程を備えることで、電子・電気機器部品屑の処理量を従来よりもより多くすることができるとともに、銅及び有価金属を含む電子・電気機器部品屑の割合を多くして、銅及び有価金属を効率的に回収することが可能となる。
【0023】
電子・電気機器部品屑中に含まれる製錬阻害物質の除去量は多ければ多い程望ましいが、部品屑によっては製錬阻害物質と有価金属とを同時に有する部品屑も存在する。以下に制限されるものではないが、電子・電気機器部品屑の原料全体の製錬阻害物質のうちの1/2、より好ましくは2/3以上を重量比で除去することにより、電子・電気機器部品屑を銅製錬工程において安定的に処理することができる。さらに、製錬工程において、製錬阻害物質の処理できる限界量が現状と同等であれば、電子・電気機器部品屑の原料全体の製錬阻害物質を少なくすることで、銅製錬工程においては、製錬阻害物質の少ない電子・電気機器部品屑をより多く処理できることとなる。
【0024】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑には、様々な種類の部品屑が混在し、供給を受ける電子・電気機器部品屑の種類によって、金属、プラスチック等の含有割合もそれぞれ異なる。このような電子・電気機器部品屑を製錬工程で処理する場合に、製錬工程に持ち込まれる製錬阻害物質を減少させるための有効且つ効果的な手法について検討した結果、電子・電気機器部品屑を部品単位に区別し、製錬阻害物質を含む部品屑を部品単位で選択的に除去することが有効であることが分かった。
【0025】
製錬阻害物質を含む部品屑を部品単位で除去するための一つの手段としては、例えば、所定の物理選別装置を用いた物理選別工程を利用することができる。物理選別装置を用いた物理選別工程を採用することによって、従来のように電子・電気機器部品屑の原料を全量焼却又は粉砕処理してから製錬処理する場合に比べて、製錬工程に持ち込まれる原料の受け入れ量を約2倍以上に増加させることができる上、製錬工程の負担も軽減できる。また、例えば電子・電気機器部品屑を全量焼却又は粉砕処理した焼却物又は粉状物から製錬阻害物質を選択的に抽出する場合に比べて選別効率が向上する。
【0026】
-物理選別工程-
本発明における「電子・電気機器部品屑」とは、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器を破砕した屑であり、回収された後、適当な大きさに破砕されたものを指す。本発明では、電子・電気機器部品屑とするための破砕は、処理者自身が行ってもよいが、市中で破砕されたものを購入等したものでもよい。
【0027】
破砕方法として、特定の装置には限定されず、せん断方式でも衝撃方式でもよいが、できる限り、部品の形状を損なわない破砕が望ましい。従って、細かく粉砕することを目的とする粉砕機のカテゴリーに属する装置は含まれない。
【0028】
本実施形態に係る電子・電気機器部品屑は、基板、パーツ、筐体などに使われる合成樹脂類(プラスチック)、線屑、メタル、フィルム状部品屑、破砕や粉砕によって生じる粉状物、その他、からなる部品屑に分類することができ、処理目的に応じて更に細かく分類することができる。以下に限定されるものではないが、本実施形態では、粒度50mm以下に破砕されており、且つ部品屑として単体分離されている割合が70%以上の電子・電気機器部品屑を好適に処理することができる。
【0029】
物理選別工程では、一実施態様において、Sbを含有する部品屑、或いは製錬阻害物質として、Sb、Al、Fe、Niからなる群の中から選択される1種以上を含有する物質を除去することが好ましい。Sbを含有する物質を除去するためには、Sbを含む合成樹脂類を除去することにより本発明の効果を得ることができる。Sbを含む合成樹脂類を含む部品屑としては、例えば、配線を有さない廃プリント基板の屑、導線の被覆などがある。
【0030】
製錬阻害物質として、Al、Fe、Niからなる群の中から選択される1種以上を含有する物質を除去するためには、例えば、鉄、アルミニウム、SUSなどのメタル類を除去する方法がある。これら部品屑を以下の物理選別工程により部品単位で選択的に除去することで、電子・電気機器部品屑に含まれる製錬阻害物質を極力持ち込まないようにすることができる。
【0031】
また、Cl、Br、F等のハロゲン元素を多く含有する物質としては、塩化ビニール樹脂、または耐熱性などを持つテフロン(登録商標)や耐熱性ABSなどの合成樹脂類などが挙げられる。これらを選択的に除去することにより、電子・電気機器部品屑中の製錬阻害物質を有効に除去することができる。
【0032】
物理選別手法としては、少なくとも原料である電子・電気機器部品屑に対して少なくとも2段階の風力選別工程と、メタルソータによる選別工程を少なくとも実施することが好ましい。
【0033】
(1) 第1の風力選別工程
風力選別は、数ある物理選別の方法のうち、多くの物量を処理する用途に適した方法であり、物理選別手法の最初の段階に用いられることが好ましい。本実施形態に係る物理選別手法では、最初の段階で風力選別工程を少なくとも2段階実施することが好ましい。
【0034】
第1の風力選別工程では、原料である電子・電気機器部品屑に対し、以降の選別工程に悪影響を与える物質としての粉状物とフィルム状部品屑(フィルム状樹脂、アルミ箔等)を選別除去する。後工程に対する前処理の役割であり、粗選別に位置づけられる。
【0035】
風力選別は、軽量物と重量物に分かれるが、軽量物である粉状物とフィルム状部品屑(樹脂、アルミ箔等)は焼却前処理工程を経由して銅製錬工程に送られ、重量物は、次工程である第2の風力選別工程に送られる。
【0036】
以下の条件に制限されるものではないが、第1の風力選別機の風量を5~20m/s、より好ましくは5~12m/s、更には5~10m/s程度、更には6~8m/sで設定することができる。
【0037】
(2) 第2の風力選別工程
第2の風力選別工程では、塊状のメタルや部品単体を重量物として分離し、軽量物側に基板、プラスチックなどの合成樹脂類を濃縮させる。軽量物側に濃縮された基板、合成樹脂類は、次工程であるメタルソータを用いた選別処理に送られる。
【0038】
以下の条件に制限されるものではないが、例えば、第2の風力選別機の風量を5~20m/s、より好ましくは10~18m/s、更には15~18m/s、更には16~17m/s程度で設定することができる。
【0039】
(3) メタルソータを用いた選別処理
メタルソータは、処理対象物中の金属物を検知するメタルセンサーと、処理対象物の位置を検出するセンサとを備え、指定された物(金属物又は非金属物)をエアーバルブからの気流で撃ち落とすための装置である。本実施形態では、メタルソータにより、金属を実質的に含む基板(金属物)と、金属を実質的に含まない基板及び合成樹脂類(非金属物)とに分類することに用いられる。指定物として非金属物を撃ち落とした場合、メタルソータにより打ち落とされなかった選別物側には、銅、貴金属等の有価金属を含む基板が濃縮されるため、これを上述の製錬工程における処理対象物とすることにより、より少ない部品屑の投入量で有価金属の回収効率を上げることができる。
【0040】
メタルソータは、処理対象物中に粉状物などが混入していると、選別時に粉状物が舞い上げられてカメラの視界が悪くなり、カメラを用いた除去対象物の特定が困難になる場合がある。本発明の実施の形態に係る方法によれば、メタルソータを用いた選別処理の選別効率低下の原因となる、電子・電気機器部品屑中に含まれる粉状物、フィルム状部品屑などが第1の風力選別工程で取り除かれているため、粉状物が処理中に舞い上がることによるメタルソータの動作不良及び選別効率の低下を抑えることができる。
【0041】
更に、本発明の実施の形態によれば、第2の風力選別工程及びメタルソータ処理によって、有価金属を多く含む基板を濃縮処理することができるため、その後の銅製錬工程において、より少ない部品屑の投入量で有価金属の回収効率を高めることができる。
【0042】
金属を濃縮させるための一般的な物理選別手法においては、まず磁力選別等を行うことによって金属を回収することが行われるが、有価物含有量の多い部品も磁性を持っていることが多く、製錬阻害物質との分離性が極めて低いことが分かった。また、磁力選別装置は単位時間当たりの処理量が限定されるため、大量に部品屑を選別することも難しい。本発明の実施の形態に係る処理方法によれば、物理選別の初期段階において、まず風力選別を2段階に分けて行うことにより、多量の部品屑を一気に選別処理することができるため、選別処理の初期段階に磁力選別等の処理を行う場合に比べてより多くの電子・電気機器部品屑(原料)を選別処理することができる。そして、二段階の風力選別の後、処理に時間を要するメタルソータ処理を組み合わせることによって、電子・電気機器部品屑の処理量を増大しながら、製錬阻害物質を除去して、有価金属を効率的に回収することができる。
【0043】
(その他の選別処理)
上記の選別処理に加えて、以下に示す選別処理を適宜組み合わせることも可能である。例えば、電子・電気機器部品屑の種類によっては、目視で確認しても容易に判別できるほど線屑が多く含有されている場合がある。その場合は、第1の風力選別工程よりも前に比較的大きな線屑等を手選別又はロボットなどにより機械選別するようにしてもよい。
【0044】
第1の風力選別工程によって、粉状物が十分に選別できていない場合には、第1の風力選別工程と第2の選別工程の間、或いは第2の選別工程の後に篩別工程を入れ、粉状物をさらに選別除去することが好ましい。篩別工程の篩は、進行方向に長孔を有するスリット状の網を用いることが好ましく、この場合には導線屑も除去できる。篩別後の粉状物及び導線屑は、焼却前処理工程を経由して銅製錬工程に送ることで、部品屑中の有価金属をより効率的に回収できる。
【0045】
第2の風力選別工程で得られた重量物の中には、銅製錬工程で処理すべき基板屑が一部混入する場合がある。よって、第2の風力選別で得られた重量物を、磁選、渦電流、カラーソータ等により更に分類することができる。
【0046】
金属含有比率が高いということは、金属を含む部品屑が多く存在することを意味する。金属と検知される部品屑同士の間に合成樹脂類などの非金属物が存在する場合、その間隔がメタルセンサーの検知範囲以内の時には一つの金属と誤検知され、金属物と金属物との間にある非金属物であるプラスチックなどの合成樹脂類がエアーバルブではじかれず、金属物として取り扱われる場合がある。このため、メタルソータによる分離を行う前に、磁選、渦電流、カラーソータ等による分離を行い、金属含有比率を下げることにより、メタルソータの誤検知を抑制することができる。
【0047】
第2の風力選別工程で選別された基板は、部品が除去された基板であっても、その部品と基板とを繋ぐリード線が基板に残っているケースが多い。そのリード線の多くは、鉄やニッケル、もしくはこれらの合金であり、これらは強磁性物質である。第2の風力選別工程の後にリード線が残っている基板を除去することが可能な高磁力選別工程を組み合わせることで、メタルソータに送られる処理対象物質中の金属含有比率を下げておくことができる。カラーソータは色によって選別対象物を見分けることができるソータであるが、メタル色や基板の緑色と合成樹脂類の黒色や白色を識別することができるので、これを用いることで、メタルソータに送られる処理対象物中の金属含有比率を下げておくことができる。
なお、本発明の実施の形態において「除去」或いは「分離」とは、100%除去又は分離する態様を示すものだけでなく対象物中重量比30%以上、より好ましくは50質量%以上除去するような態様を含むものである。
【0048】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法によれば、製錬工程で電子・電気機器部品屑を粉状に粉砕する前に部品屑の状態で製錬阻害物質を含む部品屑を部品単位で選別して除去する工程を具備することにより、製錬工程で処理する電子・電気機器部品屑の処理量を増大させることができ、有価金属を効率的に回収することが可能な電子・電気機器部品屑の処理方法が提供できる。