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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】固定用冶具
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/08 20060101AFI20230619BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20230619BHJP
【FI】
B23Q3/08 A
B24B41/06 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019145003
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021024048
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503234609
【氏名又は名称】佐々木工機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 政仁
(72)【発明者】
【氏名】境 久嘉
(72)【発明者】
【氏名】植田 兼史
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220483(JP,A)
【文献】特開2014-184502(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1347397(KR,B1)
【文献】特開平07-204961(JP,A)
【文献】実開昭55-006589(JP,U)
【文献】特開平05-084682(JP,A)
【文献】特開平04-300168(JP,A)
【文献】実開昭54-053369(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/08
B24B 41/06
B25B 11/00
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置台に固定する固定用治具であって、
本体部と、
前記本体部に設けられ、前記ワークを支持する支持部と、
弾性を有し、前記支持部を囲むようにリング状に設けられ先端が前記支持部よりも突出するリング状弾性部と、
前記支持部に設けられた吸引口から、前記支持部、前記リング状弾性部及び前記ワークに囲まれた領域の空気を吸引して、前記リング状弾性部を弾性変形させながら前記ワークを前記支持部に吸着させる吸引部と、
を備え
前記支持部は、中心に回動可能に設けられた球体を有し、
前記リング状弾性部の先端は、前記球体に形成された前記ワークを支持する球体支持面よりも突出している、固定用具。
【請求項2】
前記リング状弾性部は、円板状の前記支持部の周面を囲んでおり、先端側が半径方向の外方に位置するようにテーパ状に形成された囲み部を有する、
請求項1に記載の固定用冶具。
【請求項3】
前記支持部、前記リング状弾性部及び前記球体がそれぞれ設けられた3つの前記本体部を備え、
3つの前記球体に形成された前記球体支持面が、前記ワークを支持する、
請求項に記載の固定用冶具。
【請求項4】
前記吸引部は、前記本体部の外周もしくはチューブを介して離隔した位置に設けられ、前記領域の空気を吸引するために負圧を発生させる負圧発生部を有し、
前記本体部は、内部に形成され前記吸引口と前記負圧発生部を結ぶ吸引路を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載の固定用冶具。
【請求項5】
前記吸引口は、第1吸引口であり、
前記本体部は、前記載置台に対向する対向部を有し、
前記吸引部は、前記対向部に設けられた第2吸引口から前記対向部と前記載置台の間の空気を吸引して前記本体部を前記載置台に吸着させる、
請求項1からのいずれか1項に記載の固定用冶具。
【請求項6】
前記リング状弾性部は、第1リング状弾性部であり、
弾性を有し、前記対向部を囲むようにリング状に設けられ先端が前記対向部よりも突出する第2リング状弾性部を更に備え、
前記吸引部は、前記第2吸引口から、前記対向部、前記第2リング状弾性部及び前記載置台に囲まれた領域の空気を吸引して、前記第2リング状弾性部を弾性変形させながら前記本体部を前記載置台に吸着させる、
請求項に記載の固定用冶具。
【請求項7】
前記ワークが前記支持部に支持されていない状態では、前記第2吸引口から空気を吸引して前記本体部を前記載置台に吸着させる第1吸着状態にし、前記ワークが前記支持部に支持されると、前記第1吸引口及び前記第2吸引口から空気を吸引して前記本体部を前記載置台に吸着させると共に前記ワークを前記支持部に吸着させる第2吸着状態にする吸着切替部を更に備える、
請求項又はに記載の固定用冶具。
【請求項8】
前記本体部は、内部に形成され、前記第1吸引口、前記第2吸引口及び前記吸引部の間を結ぶ吸引路を有し、
前記吸着切替部は、前記吸引路内に先端側が前記第1吸引口から突出するように付勢された弁体を有し、
前記弁体は、
前記ワークが前記支持部に支持されていない状態では、前記吸引路の前記第1吸引口側を閉塞する閉塞位置に位置し、
前記ワークが前記支持部に支持されると、前記ワークによって押されて下方に移動して閉塞状態を開放する開放位置に位置する、
請求項に記載の固定用冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを載置台に固定する固定用冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを工作機械のテーブルに固定するためのワーク固定装置が利用されている(下記の特許文献1を参照)。このワーク固定装置は、ワークが載置されるクランプブロックの基準面に形成された吸着口から空気を吸引して、ワークの底面(吸着面)をクランプブロックの基準面に吸引吸着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-162610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワークが例えば鍛造品や成形品である場合には、ワークの吸着面の表面粗さが大きいケースや、吸着面がうねっている(平面度が低い)ケースがある。このようなワークでは、吸着面と基準面の隙間から空気が流入するため、吸着力が低下してしまい、適切にワークを吸着させることができないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、吸着面の表面粗さが大きいワークや吸着面の平面度が低いワークを適切に固定できる固定用冶具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、ワークを載置台に固定する固定用治具であって、本体部と、前記本体部に設けられ、前記ワークを支持する支持部と、弾性を有し、前記支持部を囲むようにリング状に設けられ先端が前記支持部よりも突出するリング状弾性部と、前記支持部に設けられた吸引口から、前記支持部、前記リング状弾性部及び前記ワークに囲まれた領域の空気を吸引して、前記リング状弾性部を弾性変形させながら前記ワークを前記支持部に吸着させる吸引部と、を備える固定用治具を提供する。
【0007】
また、前記リング状弾性部は、円板状の前記支持部の周面を囲んでおり、先端側が半径方向の外方に位置するようにテーパ状に形成された囲み部を有することとしてもよい。
【0008】
また、前記囲み部の厚さは、先端側に向かって小さくなっていることとしてもよい。
【0009】
また、前記リング状弾性部は、前記囲み部よりも半径方向の中心側に位置し、前記囲み部と連結している連結部を有し、前記連結部は、前記支持部及び前記本体部に上下に挟まれて固定されていることとしてもよい。
【0010】
また、前記支持部は、前記支持部の前記吸引口が設けられた上面から互いに離れて突出している3つの凸部を有し、前記リング状弾性部の先端は、前記凸部に形成された前記ワークを支持する凸支持面よりも突出していることとしてもよい。
【0011】
また、前記支持部は、中心に回動可能に設けられた球体を有し、前記リング状弾性部の先端は、前記球体に形成された前記ワークを支持する球体支持面よりも突出していることとしてもよい。
【0012】
また、前記固定用冶具は、前記支持部、前記リング状弾性部及び前記球体がそれぞれ設けられた3つの前記本体部を備え、3つの前記球体に形成された前記球体支持面が、前記ワークを支持することとしてもよい。
【0013】
また、前記吸引部は、前記本体部の外周もしくはチューブを介して離隔した位置に設けられ、前記領域の空気を吸引するために負圧を発生させる負圧発生部を有し、前記本体部は、内部に形成され前記吸引口と前記負圧発生部を結ぶ吸引路を有することとしてもよい。
【0014】
また、前記吸引口は、第1吸引口であり、前記本体部は、前記載置台に対向する対向部を有し、前記吸引部は、前記対向部に設けられた第2吸引口から前記対向部と前記載置台の間の空気を吸引して前記本体部を前記載置台に吸着させることとしてもよい。
【0015】
また、前記リング状弾性部は、第1リング状弾性部であり、前記固定用冶具は、弾性を有し、前記対向部を囲むようにリング状に設けられ先端が前記対向部よりも突出する第2リング状弾性部を更に備え、前記吸引部は、前記第2吸引口から、前記対向部、前記第2リング状弾性部及び前記載置台に囲まれた領域の空気を吸引して、前記第2リング状弾性部を弾性変形させながら前記本体部を前記載置台に吸着させることとしてもよい。
【0016】
また、前記固定用冶具は、前記ワークが前記支持部に支持されていない状態では、前記第2吸引口から空気を吸引して前記本体部を前記載置台に吸着させる第1吸着状態にし、前記ワークが前記支持部に支持されると、前記第1吸引口及び前記第2吸引口から空気を吸引して前記本体部を前記載置台に吸着させると共に前記ワークを前記支持部に吸着させる第2吸着状態にする吸着切替部を更に備えることとしてもよい。
【0017】
また、前記本体部は、内部に形成され、前記第1吸引口、前記第2吸引口及び前記吸引部の間を結ぶ吸引路を有し、前記吸着切替部は、前記吸引路内に先端側が前記第1吸引口から突出するように付勢された弁体を有し、前記弁体は、前記ワークが前記支持部に支持されていない状態では、前記吸引路の前記第1吸引口側を閉塞する閉塞位置に位置し、前記ワークが前記支持部に支持されると、前記ワークによって押されて下方に移動して閉塞状態を開放する開放位置に位置することとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吸着面の表面粗さが大きいワークや吸着面の平面度が低いワークを適切に固定できる固定用冶具を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。
図2図1に示す固定用冶具1の上面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4】固定用冶具1がワークWを吸引吸着した状態を説明するための模式図である。
図5】第2の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。
図6】固定用冶具1がワークWを吸引吸着した状態を説明するための模式図である。
図7】第3の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。
図8】第3の実施形態に係る支持体105の構成を説明するための模式図である。
図9図8に示す支持体105の上面図である。
図10図9のB-B断面図である。
図11】固定用冶具1がワークWを吸引吸着した状態を説明するための模式図である。
図12】第4の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。
図13】第5の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。
図14】固定用冶具1がワークWを吸引吸着した状態を説明するための模式図である。
図15】第6の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
(固定用冶具の構成)
本発明の第1の実施形態に係る固定用冶具の構成について、図1図4を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、第1の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。図2は、図1に示す固定用冶具1の上面図である。図3は、図2のA-A断面図である。図4は、固定用冶具1がワークWを吸引吸着した状態を説明するための模式図である。なお、図1及び図2では、説明の便宜上、チューブ44の一部のみが示されている。
【0022】
固定用冶具1は、図4に示すように、ワークWを載置台90に固定するための冶具である。ワークWは、例えば、セラミックスや非鉄合金等の非磁性のワークである。固定用冶具1は、ワークWの吸着面W1を吸引吸着した状態で、載置台90に対して固定する(図4参照)。第1の実施形態の固定用冶具1は、本体部10が磁性体であり、磁力によって載置台90に固定される。第1の実施形態では、一つの固定用冶具1が、ワークWを載置台90に対して固定する。
【0023】
載置台90は、一例として加工機である磁気チャックを有する平面研削盤の台であり、ワークWは、固定用冶具1を介して載置台90に固定された状態で加工される。この場合、ワークWが非磁性のワークであっても、ワークWを載置台90の任意の位置に固定できる。これにより、ワークWを加工しやすい位置や向きに、ワークWを載置台90に固定できるので、加工しやすくなる。
【0024】
なお、ワークWの吸着面W1は、ここでは図4に示すように表面粗さが大きく、平面度が低いものとする。固定用冶具1は、詳細は後述するが、上記の吸着面W1であっても、吸着面W1に密着して吸引領域の気密性を高められる構成となっている。
【0025】
固定用冶具1は、図1に示すように、支持体5と、吸引部40とを有する。支持体5は、図4に示すように、ワークWを支持しつつ載置台90に吸着される。支持体5は、本体部10と、支持部20と、吸引路28と、上スリーブ30とを有する。なお、ワークWが固定用冶具1に支持された際には、図4に示すように、ワークW、支持部20及び上スリーブ30によって囲まれた上吸引領域R1が形成される。
【0026】
本体部10は、固定用冶具1の本体を成す部分であり、ここでは円柱状に形成されている。本体部10は、ここでは鋼等の磁性材料から成る。本体部10は、載置台90に設けられた磁気チャックによって、載置台90の任意の位置に吸着されうる。
【0027】
支持部20は、図3に示すように本体部10の上方に設けられており、ワークWを支持可能である。支持部20は、円板状に形成されている。支持部20は、周方向に所定間隔で配置されたボルト等の締結部材80によって、本体部10に固定されている。支持部20の上面21aには、第1吸引口である吸引口22が設けられている。
【0028】
吸引口22は、上吸引領域R1の空気が吸引される開口である。吸引口22は、図3に示すように、吸引路28と繋がっている。上吸引領域R1の空気は、図4に示すように、吸引口22から吸引路28へ流れる。
【0029】
支持部20は、図1に示すように、吸引口22が形成された上面21aから突出している凸部24を有する。凸部24は、所定間隔で3つ設けられており、それぞれ同じ形状となっている。3つの凸部24の頂面24aは、それぞれ平面となっており、ワークWを支持する凸支持面として機能する。
【0030】
吸引路28は、吸引口22から流入した空気が流れる流路である。吸引路28は、図3に示すように、本体部10及び支持部20に形成されている。吸引路28は、第1流路28aと、第2流路28bとを有する。
【0031】
第1流路28aは、一端側にて吸引口22と連通している。第1流路28aの他端側は、第2流路28bと連通している。第2流路28bは、第1流路28aと直交している。第2流路28bは、吸引部40のエジェクタ42の内部空間と連通している。上吸引領域R1の空気は、図4に示すように、吸引路28を介してエジェクタ42へ流れる。
【0032】
上スリーブ30は、図3に示すように、リング状に形成されている。上スリーブ30は、支持部20の外周面を囲むように配置されている。上スリーブ30は、弾性を有する。上スリーブ30は、ゴム等の弾性材料から成る。上スリーブ30の断面形状は、ここではL字状である。上スリーブ30は、囲み部32と、固定部34とを有する。
【0033】
囲み部32は、リング状に形成された部分である。囲み部32は、支持部20の外周面に隣接している。囲み部32の先端32aは、支持部20(具体的には凸部24の頂面24a)よりも突出している。例えば、先端32aは、頂面24aよりも0.5(mm)だけ突出している。
【0034】
吸引口22から空気が吸引される際に、弾性を有する囲み部32の先端32aがワークWに押圧されて弾性変形する(図4参照)。弾性変形した上スリーブ30の先端32aは、ワークWに密着する。
【0035】
囲み部32の厚さは、図3に示すように先端32a側に向かって薄くなっている。これにより、囲み部32の先端32aが弾性変形しやすくなる。なお、囲み部32の厚さは、一定の大きさであってもよい。先端32aの突出量は、ワークWに密着する際の弾性変形の度合いに応じて設定される。
【0036】
囲み部32の直径は、軸方向において一定の大きさではなく、囲み部32は、図3に示すようにテーパ状に形成されている。具体的には、囲み部32は、先端32a側が半径方向の外方に位置するように傾斜している。ただし、上記に限定されず、囲み部32の直径は、軸方向において一定の大きさであってもよい。
【0037】
固定部34は、囲み部32の下部と連結している連結部である。固定部34は、上スリーブ30の半径方向において囲み部32よりも中央側に位置している。具体的には、固定部34は、本体部10の支持部20の間に位置している。固定部34は、本体部10及び支持部20に上下に挟まれて固定されている。
【0038】
吸引部40は、支持部20に設けられた吸引口22から上吸引領域R1の空気を吸引して、上スリーブ30を弾性変形させながらワークWを支持部20に吸着させる。これにより、上スリーブ30がワークWの吸着面W1に密着するので、吸着面W1の表面粗さが大きかったり平面度が低かったりしても、上吸引領域R1に空気が流入することを防止できる。この結果、上吸引領域R1への空気の流入に起因して吸引力が低下することを抑制できる。
【0039】
吸引部40は、図1に示すように、エジェクタ42と、チューブ44とを有する。
エジェクタ42は、圧縮空気を利用して、吸引口22から空気を吸引するための負圧を発生させる負圧発生部の機能を有する。例えば、エジェクタ42は、内部を通過する圧縮空気の流速を大きくして、吸引口22から空気を吸引する負圧を発生させる。
【0040】
エジェクタ42は、図1に示すように、本体部10の外周面に設けられている。エジェクタ42は、例えば管状に形成されており、軸方向の一端側に形成された流入部42aと、軸方向の他端側に形成された排出部42bと、中央側に設けられた連通部42cとを有する。
【0041】
流入部42aは、チューブ44から圧縮空気が流入する部分である。排出部42bは、圧縮空気が排出される部分である。連通部42cは、吸引路28(具体的には、第2流路28b)と連通している部分である。吸引口22から吸引され吸引路28を流れる空気は、連通部42cからエジェクタ42内に流入する。すなわち、上吸引領域R1の空気は、エジェクタ42の連通部42cを通過する圧縮空気によって吸引口22から吸引され、その後、圧縮空気と共に排出部42bから排出される。
【0042】
チューブ44は、エジェクタ42の流入部42aとコンプレッサとを接続している。コンプレッサによって圧縮された圧縮空気が、チューブ44を流れて流入部42aからエジェクタ42へ流入した後に、排出部42bから排出される。
【0043】
(ワークWの固定時の作業例)
固定用冶具1を介してワークWを載置台90に固定する際の作業者の作業例について、説明する。
【0044】
作業者は、まず、載置台90の所望の位置に固定用冶具1を載せる。この際、固定用冶具1の本体部10が磁性を有するので、本体部10が載置台90に設けられた磁気チャックによって吸着固定される。
【0045】
次に、作業者は、固定用冶具1の支持部20の上にワークWを載せる。例えば、作業者は、ワークWの加工しやすい向きとなるように、ワークWを支持部20(具体的には、支持部20の凸部24)上に載せる。
【0046】
次に、作業者は、コンプレッサを動作させて圧縮空気を、吸引部40のエジェクタ42に供給する。エジェクタ42内を圧縮空気が通過する際に、エジェクタ42内に負圧が発生する。この負圧によって、上吸引領域R1の空気が吸引口22から吸引され、当該空気がエジェクタ42の排出部42bから排出される。このような空気の流れが発生することで、上吸引領域R1も負圧となり、負圧に起因する吸引力によってワークWが支持部20に吸着される。
【0047】
この際、凸部24を囲む上スリーブ30の先端32aが、ワークWに押圧されて弾性変形して、ワークWの吸着面W1に密着する。これにより、吸着面W1の表面粗さが大きかったり平面度が低かったりしても、上吸引領域R1に空気が流入することを防止できるので、上吸引領域R1の気密性を高められる。この結果、吸引力の低下を抑制できるので、ワークWが固定用冶具1を介して載置台90に適切に固定される。
【0048】
次に、作業者は、固定用冶具1を介して載置台90に固定されたワークWに対して、加工を行う。ワークWの加工が終了すると、エジェクタ42への圧縮空気の供給を停止して、ワークWの固定状態を解除する。
【0049】
(第1の実施形態における効果)
第1の実施形態の固定用冶具1は、支持部20を囲む上スリーブ30と、支持部20の吸引口22から上吸引領域R1の空気を吸引する吸引部40とを有する。吸引部40は、上スリーブ30を弾性変形させながらワークWを支持部20に吸着させる。
これにより、吸引部40がワークWを支持部20に吸着させる際に、上吸引領域R1を囲む上スリーブ30の先端32aが弾性変形してワークWに密着する。これにより、上吸引領域R1の気密性を高めることができる。
【0050】
比較例と対比しながら、より詳細に説明する。
比較例では、本実施形態とは異なり、上スリーブ30を設けずにワークWを支持部20に吸着させるものとする。この比較例では、ワークWの吸着面W1の表面粗さが大きいと、吸着面と支持部20の間に隙間が生じてしまい、当該隙間から上吸引領域R1に空気が流入するおそれがある。そして、吸引部40の吸引能力を超える空気が上吸引領域R1に流入すると、吸引力が低下してしまい、ワークWを支持部20に適切に吸着させることができない。
これに対して、本実施形態のように上スリーブ30を設ける場合には、上スリーブ30が弾性変形して吸着面W1に密着することで、上スリーブ30と吸着面W1の間に隙間が発生しないため、上吸引領域R1に空気が流入しない(気密性が高い)。この結果、吸引部40による吸引力の低下を抑制できるので、ワークWを支持部20に適切に吸着できる。
【0051】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る固定用冶具の構成について、図5及び図6を参照しながら説明する。以下では、主に、第1の実施形態の構成と異なる第2の実施形態の構成について説明する。
【0052】
図5は、第2の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。図6は、固定用冶具1がワークWを吸引吸着した状態を説明するための模式図である。
【0053】
第2の実施形態に係る固定用冶具1がワークWを支持する構成は、第1の実施形態と同様である。具体的には、第2の実施形態に係る固定用冶具1も、支持部20を囲む上スリーブ30を有する。
【0054】
一方で、第2の実施形態に係る固定用冶具1の載置台90に対向する部分の構成は、第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態では、本体部10が、載置台90の磁気チャックによって吸着される。これに対して、第2の実施形態では、載置台90が磁気チャック機能を有さない場合であり、本体部10が吸引部40によって載置台90に吸着される。
【0055】
第2の実施形態に係る固定用冶具1は、図5に示すように、本体部10の下面に形成された凹部50を有する。凹部50は、例えば円形状のくぼみである。凹部50は、固定用冶具1が載置台90に載置された際に、載置台90に対向する対向部である。
【0056】
凹部50は、図6に示すように、本体部10が載置台90に載せられた際に、載置台90の載置面92との間で下吸引領域R2を形成する。下吸引領域R2は、吸引部40によって空気が吸引される領域である。
【0057】
凹部50の底面には、下吸引領域R2と連通している下吸引口52が形成されている。下吸引口52は、本体部10内に形成された吸引路28と連通している。具体的には、下吸引口52は、吸引路28の第3流路28cと連通している。第3流路28cは、第2流路28bと連通している。下吸引口52から吸引された空気は、第3流路28c、第2流路28bの順に流れて、エジェクタ42から排出される。
【0058】
吸引部40は、下吸引領域R2の空気を下吸引口52から吸引する。吸引部40が下吸引領域R2の空気を吸引することで、本体部10が載置台90に吸着される。吸引部40は、上吸引領域R1の空気と、下吸引領域R2の空気とを、同時に吸引する。このため、ワークWが支持部20に吸着される際に、本体部10が載置台90に吸着される。この結果、ワークWが固定用冶具1を介して載置台90に固定される。
【0059】
第2の実施形態によれば、載置台90が磁気チャックを有しない場合(例えば、載置台90が測定装置の石定盤である場合)であっても、吸引部40が下吸引領域R2の空気を吸引することで、固定用冶具1を載置台90に吸着できる。これにより、簡易な構成の固定用冶具1によって、ワークWを載置台90に固定できる。
【0060】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る固定用冶具の構成について、図7図11を参照しながら説明する。以下では、主に、第1の実施形態及び第2の実施形態の構成と異なる第3の実施形態の構成について説明する。
【0061】
図7は、第3の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。図8は、第3の実施形態に係る支持体105の構成を説明するための模式図である。図9は、図8に示す支持体105の上面図である。図10は、図9のB-B断面図である。図11は、固定用冶具1がワークWを吸引吸着した状態を説明するための模式図である。
【0062】
第1の実施形態の固定用冶具1では、一つの支持体5がワークWを支持していた。これに対して、第3の実施形態では、複数の支持体105がワークWを支持する。具体的には、三つの支持体105が、ワークWを支持する。これにより、大きなサイズのワークWを安定して支持することができる。
【0063】
第3の実施形態の固定用冶具1は、図7に示すように、三つの支持体105と、吸引部140とを有する。三つの支持体105の構成は同一であるので、以下では、一つの支持体105を例に挙げて説明する。三つの支持体105は、それぞれ載置台90に吸着される。支持体105は、図8に示すように、本体部110と、支持部120と、上スリーブ130を有する。
【0064】
本体部110及び上スリーブ130は、第1の実施形態の本体部10及び上スリーブ30と同様な構成である。一方で、支持部120の構成は、第1の実施形態の支持部20の構成と異なる。第1の実施形態の支持部20は、ワークWを支持する3つの凸部24(図1)を有していた。これに対して、第3の実施形態の支持部120は、凸部24に代えて、ワークWを支持する球体124を有する。
【0065】
球体124は、本体部110の中心に設けられた凹部114の円錐面に接している。球体124は、回動可能に設けられている。球体124は、Dカットされた支持面124aを有する。支持面124aは、平らな面であり、ワークWを支持する。三つの支持体105の球体124は、それぞれ支持面124aがワークWの吸着面W1に接する姿勢となるように、凹部114の円錐面に接触しながら自由に回動して、ワークWを支持する。
【0066】
球体124の下方には、球体124の回動を規制する規制軸126が設けられている。規制軸126は、球体124の凹部124bに入り込んでいる。球体124が回動する際に、凹部124bの内壁面が規制軸126に接触することで、球体124の回動が所定範囲内に規制される。これにより、球体124の過大な回動を抑制できるので、ワークWを三つの支持体105の球体124に支持させやすくなる。
【0067】
上スリーブ130は、球体124を含む支持部120を囲んでいる。上スリーブ130の先端132aは、球体124の支持面124aよりも突出している。上スリーブ130の先端132aは、ワークWが支持部120(具体的には支持面124a)に吸着される際に、ワークWに押されて弾性変形してワークWに密着する。
【0068】
吸引部140は、支持部120、上スリーブ130及びワークWに囲まれた上吸引領域R1の空気を吸引する。吸引部140は、図7に示すように、三つのエジェクタ142と、チューブ144とを有する。
【0069】
三つのエジェクタ142は、それぞれ支持体105に一つずつ設けられている。エジェクタ142は、圧縮空気を利用して、吸引口122から空気を吸引するための負圧を発生させる。エジェクタ142の構成は、第1の実施形態のエジェクタ42と同様な構成である。
【0070】
チューブ144は、三つのエジェクタ142とコンプレッサとを接続している。コンプレッサによって圧縮された圧縮空気が、チューブ144を流れて三つのエジェクタ142へ流入した後に、排出される。
【0071】
チューブ144には、バルブ145及び分岐部146が設けられている。バルブ145は、圧縮空気の流量を調整する弁である。分岐部146は、三つのエジェクタ142に向けて圧縮空気の流れを分岐させる。
【0072】
第3の実施形態によれば、吸引部140がワークWを三つの支持体105の支持部120にそれぞれ吸着させる際に、上吸引領域R1を囲む上スリーブ130の先端132aが弾性変形してワークWに密着する。これにより、上吸引領域R1の気密性を高めることができる。この結果、吸引部140による吸引力の低下を抑制できるので、ワークWを支持部120に適切に吸着できる。
【0073】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る固定用冶具の構成について、図12を参照しながら説明する。
【0074】
図12は、第4の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。
第4の実施形態に係る固定用冶具1がワークWを支持する構成は、第3の実施形態と同様である。具体的には、第4の実施形態に係る固定用冶具1も、支持部120を囲む上スリーブ130を有する。
【0075】
一方で、第4の実施形態に係る固定用冶具1の載置台90に対向する部分の構成は、第3の実施形態とは異なる。第3の実施形態では、本体部110が、載置台90の磁気チャックによって吸着される。これに対して、第4の実施形態では、載置台90が磁気チャックを有さず、本体部110が吸引部140によって載置台90に吸着される。
【0076】
第4の実施形態に係る固定用冶具1は、図12に示すように、本体部110の下面に形成された凹部150を有する。凹部150は、例えば円形状のくぼみである。凹部150は、固定用冶具1が載置台90に載置された際に、載置台90に対向する対向部である。
【0077】
凹部150は、図12に示すように、本体部110が載置台90に載せられた際に、載置台90の載置面92との間で下吸引領域R2を形成する。下吸引領域R2は、吸引部140によって空気が吸引される領域である。
【0078】
凹部150の底面には、下吸引領域R2と連通している下吸引口152が形成されている。下吸引口152は、本体部110内に形成された吸引路128と連通している。具体的には、下吸引口152は、吸引路128の第3流路128cと連通している。第3流路128cは、第2流路128bと連通している。下吸引口152から吸引された空気は、第3流路128c、第2流路128bの順に流れて、エジェクタ142から排出される。
【0079】
吸引部140は、下吸引領域R2の空気を下吸引口152から吸引する。吸引部140が下吸引領域R2の空気を吸引することで、本体部110が載置台90に吸着される。吸引部140は、上吸引領域R1の空気と、下吸引領域R2の空気とを、同時に吸引する。このため、ワークWが支持部120に吸着される際に、本体部110が載置台90に吸着される。この結果、ワークWが固定用冶具1を介して載置台90に固定される。
【0080】
第4の実施形態によれば、載置台90が磁気チャックを有しない場合(例えば、載置台90が測定装置の石定盤である場合)であっても、吸引部140が下吸引領域R2の空気を吸引することで、固定用冶具1を載置台90に吸着できる。これにより、簡易な構成の固定用冶具1によって、ワークWを載置台90に固定できる。
【0081】
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係る固定用冶具の構成について、図13及び図14を参照しながら説明する。
【0082】
図13は、第5の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。図14は、固定用冶具1がワークWを吸引吸着した状態を説明するための模式図である。
【0083】
第4の実施形態では、吸引部140は、上吸引領域R1の空気と、下吸引領域R2の空気とを同時に吸引する。これに対して、第5の実施形態では、下吸引領域R2の空気のみを吸引する第1吸引状態と、上吸引領域R1及び下吸引領域R2の空気を同時に吸引する第2吸引状態とを切り替え可能となっている。第1吸引状態では、下吸引領域R2の空気のみを吸引して、本体部110を載置台90に吸着させる。第2吸引状態では、上吸引領域R1及び下吸引領域R2の空気を吸引して、ワークWを支持部120に吸着させると共に本体部110を載置台90に吸着させる。
【0084】
第4の実施形態の固定用冶具1は、吸引部140による第1吸引状態と、吸引部140による第2吸引状態とを切り替える吸着切替部160を有する。吸着切替部160は、ワークWが支持部120に支持されていない状態では第1吸引状態にし、ワークWが支持部120に支持されると第2吸引状態に切り替える。吸着切替部160は、ここでは、吸引路128内に設けられている。
【0085】
吸着切替部160は、吸引路128内での姿勢を変化することで、第1吸引状態と第2吸引状態とを切り替える。吸着切替部160は、弁体162と、ガイドロッド164と、ばね166とを有する。
【0086】
弁体162は、吸引路128内にて先端側が吸引口122から突出するように付勢されている。弁体162は、ワークWが支持部120に支持されていない状態では、吸引路128の第1流路128aを閉塞する閉塞位置(図13に示す位置)に位置する。一方で、弁体162は、ワークWが支持部120に支持されると、ワークWによって押されて下方に移動して閉塞状態を開放する開放位置(図14に示す位置)に位置する。弁体162は、突出部163aと、テーパ部163bと、凹部163cと、連通口163dとを有する。
【0087】
突出部163aは、弁体162の先端側の軸状の部分である。テーパ部163bは、円錐台形状の部分である。テーパ部163bが第1流路128aの絞り部128dに接触した状態では、第1流路128aを閉塞する。凹部163cは、弁体162の下側を凹ませた部分である。連通口163dは、凹部163cの側壁を貫通している開口である。
【0088】
ガイドロッド164は、弁体162の移動を案内する部材である。ガイドロッド164は、弁体162の下方に位置している。ガイドロッド164は、案内部165aと、連通路165bとを有する。
【0089】
案内部165aは、弁体162の凹部163cと嵌合しており、弁体162の移動を案内する。連通路165bは、ガイドロッド164を軸方向に貫通しており、空気が流れる通路である。
【0090】
ばね166は、弁体162を付勢する付勢部材である。ばね166は、例えばコイルばねである。ばね166は、弁体162とガイドロッド164の間に配置されている。
【0091】
ワークWが支持部120に支持されていない状態では、ばね166によって付勢された弁体162は、図13に示す閉塞位置に位置する。一方で、ワークWが支持部120に支持された状態では、弁体162は、ワークWに押圧されるため、ばね166の付勢力に抗い閉塞位置から開放位置(図14)へ移動する。
【0092】
第5の実施形態によれば、ワークWを支持部120に支持させるか否かによって第1吸引状態と第2吸引状態を切り替えられるので、ワークWを固定用冶具1を介して載置台90に固定する際の作業者の作業性が向上する。
【0093】
なお、上記では、支持部120の中心に球体124が設けられていることとしたが、これに限定されない。例えば、球体124に代えて、第2の実施形態のように3つの凸部24が設けられていてもよい。
【0094】
<第6の実施形態>
第6の実施形態に係る固定用冶具の構成について、図15を参照しながら説明する。
【0095】
図15は、第6の実施形態に係る固定用冶具1の構成を説明するための模式図である。
【0096】
第2の実施形態の固定用冶具1においては、本体部10の上方に上スリーブ30が設けられている。これに対して、第6の実施形態では、本体部210の上方に加えて下方にもスリーブが設けられている。
【0097】
第6の実施形態の固定用冶具1の支持体205は、本体部210と、支持部220と、上スリーブ230と、対向部260と、下スリーブ270とを有する。本体部210、支持部220及び上スリーブ230の構成は、第2の実施形態の本体部10、支持部20及び上スリーブ30と同様な構成であるので、詳細な説明を省略する。なお、下スリーブ270が第2リング状弾性部に該当する。
【0098】
対向部260は、本体部210の下方に設けられており、固定用冶具1が載置台90に載置された際に載置台90に対向する。対向部260は、ここでは支持部220と同一形状(円板)となっている。対向部260は、ボルト等の締結部材によって、本体部210に固定されている。対向部260の下面261aには、吸引口262が設けられている。また、対向部260には、三つの凸部264が設けられている。凸部264の頂面264aが、載置台90の載置面92に接する。
【0099】
下スリーブ270は、対向部260を囲むように配置されている。下スリーブ270は、ゴム等の弾性部材から成り、弾性を有する。下スリーブ270は、上スリーブ230と同一形状(すなわちリング形状)となっている。下スリーブ270は、囲み部272と、固定部274とを有する。
【0100】
囲み部272は、リング状に形成された部分である。囲み部272は、対向部260の外周面に隣接している。囲み部272の先端272aは、対向部260(具体的には凸部264の頂面264a)よりも突出している。
吸引口262から空気が吸引される際に、弾性を有する囲み部272の先端272aが載置台90に押圧されて弾性変形する。弾性変形した下スリーブ270の先端272aは、載置台90に密着する。
【0101】
固定部274は、囲み部272の下部と繋がっている。固定部274は、下スリーブ270の半径方向において囲み部272よりも中央側に位置している。具体的には、固定部274は、本体部210の対向部260の間に位置している。固定部274は、本体部210及び対向部260に上下に挟まれて固定されている。
【0102】
吸引部240は、対向部260に設けられた吸引口262から、対向部260、下スリーブ270及び載置台90に囲まれた下吸引領域R2の空気を吸引して、下スリーブ270を弾性変形させながら対向部260を載置台90に吸着させる。
【0103】
第6の実施形態によれば、ワークWを固定用冶具1の支持部220に適切に吸着させることに加えて、固定用冶具1の対向部260を載置台90に適切に吸着させることが可能となる。特に、載置台90の面の表面粗さが大きかったり、平面度が低かったりする場合には、下スリーブ270を設けることによる効果が一層発揮される。
【0104】
なお、第6の実施形態の固定用冶具1は、放電加工機に用いることができる。具体的には、放電加工機の水槽の加工液内の底に設けた載置台90に、固定用冶具1を介してワークWを固定する。吸引部240のエジェクタ242は、本体部210から外されて、水槽外に設けられる。上述した上スリーブ230及び下スリーブ270を設けることで、吸着させる際に液が流入することを抑制できる。
【0105】
また、第6の実施形態は、第2の実施形態に係る固定用冶具1に下スリーブ270を設けたものとして説明したが、これに限定されない。例えば、下スリーブ270は、第3、第4及び第5の実施形態に係る固定用冶具1に設けられてもよい。
【0106】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0107】
1 固定用冶具
10 本体部
20 支持部
22 吸引口
24 凸部
28 吸引路
30 上スリーブ
32 囲み部
34 固定部
40 吸引部
42 エジェクタ
50 凹部
52 下吸引口
90 載置台
124 球体
160 吸着切替部
162 弁体
270 下スリーブ
R1 上吸引領域
R2 下吸引領域
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15