(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-16
(45)【発行日】2023-06-26
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置におけるオブジェクト
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20230619BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2021516771
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2019075801
(87)【国際公開番号】W WO2020069931
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-05-14
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ニキペロフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ベッカーズ,ヨハン,フランシスカス,マリア
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-268741(JP,A)
【文献】特表2017-526009(JP,A)
【文献】特開2010-087531(JP,A)
【文献】特開2000-281971(JP,A)
【文献】特開2009-020333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液浸リソグラフィ装置であって、
オブジェクトを備え、前記オブジェクトが、
基板及び外側層を備え、前記外側層が、使用中、液浸液と接触し、
前記外側層が希土類元素を含む組成物を有し、
前記組成物が無機及び/又は有機ケイ素ポリマを更に含む、
液浸リソグラフィ装置。
【請求項2】
前記ポリマがSi-O-Si-O主鎖を有する、請求項1の液浸リソグラフィ装置。
【請求項3】
前記ポリマが、メチル、エチル、プロピル、フェニル、ビニルから選択された1つ以上の基を有する、請求項1の液浸リソグラフィ装置。
【請求項4】
前記希土類元素が少なくとも部分的に酸化、窒化、ホウ化、炭化、又はケイ化される、請求項1の液浸リソグラフィ装置。
【請求項5】
前記オブジェクトが、前記基板と前記外側層との間に中間層を更に備える、請求項1又は2の液浸リソグラフィ装置。
【請求項6】
前記中間層が、SiO2、SiO2-xのうちの1つ以上を含む、請求項5のリソグラフィ液浸装置。
【請求項7】
前記外側層が、前記基板からの距離が増加するにつれて増加する前記層厚みを介する希土類元素の濃度勾配を有する、請求項1の液浸リソグラフィ装置。
【請求項8】
前記希土類元素が、0.1原子%から50原子%の前記濃度(原子百分率)で前記外側層の外側表面内に存在する、請求項1の液浸リソグラフィ装置。
【請求項9】
前記オブジェクトが、前記基板上に形成されるスルーホールのパターン及び/又は内部に形成されるステップを含む、少なくとも1つのパターン付き層を備え、前記外側層が前記パターン付き層の少なくとも一部の上に形成される、請求項1の液浸リソグラフィ装置。
【請求項10】
前記オブジェクトが、前記外側層の下の前記基板上に形成された放射遮断層を更に備える、請求項1から9のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
【請求項11】
前記オブジェクトがセンサである、請求項1から10のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
【請求項12】
リソグラフィ装置のためのオブジェクトであって、
基板及び外側層を備え、
水が前記外側層と75°以上の後退接触角を作り、
前記外側層が希土類元素を含む組成物を有し、
前記組成物が無機及び/又は有機ケイ素ポリマを更に含む、
リソグラフィ装置のためのオブジェクト。
【請求項13】
基板をコーティングする方法であって、
基板を提供すること、
(a)少なくとも1つのスパッタリングターゲット材料が希土類元素を含む、スパッタリング、及び、
(b)前駆体ガス/反応性ガスのうちの少なくとも1つが希土類元素を含む、PVD及び/又はCVD及び/又はALD、及び、
(c)プラズマ誘起(共)重合、及び、
(d)イオン源が金属蒸気アーク源であり、また蒸気が少なくとも部分的に希土類を含む、イオン注入、
のうちの少なくとも1つによって、希土類元素
と、ポリマ又はSiO2とを含む組成物を有する外側層を前記基板上に堆積させること、
を含
む、
基板をコーティングする方法。
【請求項14】
基板をコーティングする方法であって、
基板を提供すること、
それによって共重合及び/又は共有結合した無機単量体及び希土類元素を含む前記基板上に外側層を堆積させるために、揮発性物質の形の希土類元素及び無機/有機ケイ素ポリマ前駆体の化合物を含む、酸化性大気に前記基板を晒すこと、
を含む、基板をコーティングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2018年10月1日出願の欧州出願第18197937.8号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、オブジェクトに塗布された層をオブジェクトが有するリソグラフィ装置内のオブジェクトに関する。本発明は特に、リソグラフィ装置向けのセンサのためのセンサマーク、及び、リソグラフィ装置を使用するデバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板に所望のパターンを適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造において使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)のパターン(「設計レイアウト」又は「設計」と称されることも多い)を、基板(例えばウェーハ)上に提供された放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] 基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を用い得る。この放射の波長が、基板上にパターン形成されるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm及び13.5nmである。例えば193nmの波長を有する放射線を使用するリソグラフィ装置よりも小さなフィーチャを基板上に形成するためには、4nmから20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置が用いられ得る。
【0005】
[0005] 液浸リソグラフィ装置において、液体は液体閉じ込め構造によって液浸空間に閉じ込められる。液浸空間は、パターンが結像されるときに介する投影システムの最終光学素子と、パターンが転写される基板又は基板が保持される基板テーブルとの間である。液体は、流体シールによって液浸空間に閉じ込めることができる。液体閉じ込め構造は、例えば、液浸空間内の液体の流れ及び/又は位置を制御する際に支援するために、ガス流を作成又は使用することができる。ガス流は、液体を液浸空間に閉じ込めるためにシールを形成するのを支援することができる。基板支持テーブルの少なくとも一部は、最終光学素子に対する基板支持テーブルの移動に起因した液体の損失を減少させるために、親水性が制限されたコーティングを用いて被覆される。基板支持テーブルに統合されたセンサの少なくとも一部は、液体の損失を減少させるため、及び残りの液体の蒸発によって熱負荷を減少させるために、親水性が制限されたコーティングを用いて被覆される。
【0006】
[0006] 液浸リソグラフィ装置は、基板を支持する支持テーブルに統合されたいくつかのセンサに依拠する。これらのセンサは、
-基準フレームに対する基板/支持テーブルのアライメント、
-レンズの(再)調整、セットアップ、加熱補償、及び、
-レチクル(マスク)加熱補償、
のために使用される。
センサのマークは、支持テーブル内に一体化された透明(クォーツ)板上に堆積される薄膜層のスタックに統合され、また、
-DUVのための透過型空間フィルタ(Integrated Lens Interferometry At Scanner「ILIAS」センサ、パラレルILIASセンサ(PARIS)、透過型イメージセンサ「TIS」センサ機能)
-可視放射「VIS」、近赤外線「NIR」、中赤外線「MIR」のための反射型空間フィルタ(Smart Alignment Sensor Hybrid「SMASH」センサ機能)
として作用する。
【0007】
[0007] スタックの頂部表面(マークなし領域)からの反射はレベルセンサに使用される。
【0008】
[0008] 上部疎水性層(例えば、親水性が制限された層)は、例えば、深紫外線放射への露光に起因した劣化を被る。
【0009】
[0009] 疎水性層(例えば、親水性が制限された層)は、リソグラフィ装置における他のオブジェクトに塗布される。実際に、リソグラフィ装置における多くのオブジェクトは、塗布されたコーティング又は層を有する。コーティング又は層が劣化するのを防ぐことは困難な可能性がある。
【0010】
[0010] コーティング又は層の劣化は多くの理由で望ましくなく、この理由には、基板を結像するためのビームパス又はセンサに進入する場合、結像エラーを導入する可能性がある望ましくない粒子の生成、並びに、コーティング又は層が劣化すると、コーティング又は層(例えば、疎水性)の存在にとって望ましい特性がもはや存在しないという事実が含まれる。
【発明の概要】
【0011】
[0011] 耐劣化性が改善された外側層(例えば、コーティング)を伴うリソグラフィ装置においてオブジェクトを提供すること、例えば、疎水性(例えば、親水性が制限された)コーティング耐劣化性が改善されたセンサマークを提供することが望ましい。
【0012】
[0012] 一態様によれば、オブジェクトを備える液浸リソグラフィ装置が提供され、オブジェクトが基板及び外側層を備え、外側層が、使用中、液浸液と接触し、外側層が希土類元素を含む組成物を有する。
【0013】
[0013] 一態様によれば、基板及び外側層を備えるリソグラフィ装置のためのオブジェクトが提供され、水が外側層と少なくとも75°の後退接触角を作り、また外側層は希土類元素を含む組成物を有する。
【0014】
[0014] 一態様によれば、基板を提供することと、(a)少なくとも1つのスパッタリングターゲット材料が希土類元素を含む、スパッタリング、及び(b)前駆体ガス/反応性ガスのうちの少なくとも1つが希土類元素を含む、PVD及び/又はCVD及び/又はALD、及び(c)プラズマ誘起(共)重合、及び(d)イオン源が金属蒸気アーク源であり、また蒸気が少なくとも部分的に希土類を含む、イオン注入、のうちの少なくとも1つによって、希土類元素を含む組成物を有する外側層を基板上に堆積させることと、を含む、基板をコーティングする方法が提供される。
【0015】
[0015] 一態様によれば、基板を提供することと、それによって共重合及び/又は共有結合した無機単量体及び希土類元素を含む基板上に外側層を堆積させるために、揮発性物質の形の希土類元素及び無機/有機ケイ素ポリマ前駆体の化合物を含む、酸化性大気に基板を晒すことと、を含む、基板をコーティングする方法が提供される。
【0016】
[0016] 対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照しながら以下に本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】[0017]リソグラフィ装置を概略的に示す図である。
【
図2】[0018]リソグラフィ装置内で使用するための液体閉じ込め構造を概略的に示す図である。
【
図3】[0019]従来の透過型センサマークを介した断面図である。
【
図4】[0020]従来の反射型センサマークを介した断面図である。
【
図5】[0021]単一のクォーツ板内の
図3及び
図4のセンサマークを示す図である。
【
図6】[0022]Lipocerの構造を示す図である。
【
図7】[0023]本発明において改変されるLipocerの構造を示す図である。
【
図8】[0024]希土類元素酸化物についての前進水接触角を示す図である。
【
図9】[0025]SiO
2の構造を示す図である。
【
図10】[0026]本発明において改変されるSiO
2の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0027] 本文献では、「放射」及び「ビーム」という用語は、特に明記しない限り、紫外線(例えば、波長が365nm、248nm、193nm、157nm又は126nmの波長)を含む、すべてのタイプの電磁放射を包含するために使用される。
【0019】
[0028] 「レチクル」、「マスク」、又は「パターニングデバイス」という用語は、本文で用いる場合、基板のターゲット部分に生成されるパターンに対応して、入来する放射ビームにパターン付き断面を与えるため使用できる汎用パターニングデバイスを指すものとして広義に解釈され得る。また、この文脈において「ライトバルブ」という用語も使用できる。古典的なマスク(透過型又は反射型マスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)以外に、他のそのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイを含む。
【0020】
[0029]
図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示したものである。この装置は、
-任意選択で、放射ビームB(例えばUV放射又はDUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
-パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続された支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
-特定のパラメータに従った、例えば基板Wのテーブルの表面を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された、支持テーブル、例えば、1つ以上のセンサを支持するためのセンサテーブル、あるいは基板(例えば、レジストコートされた製品基板)Wを保持するように構築された基板テーブル又はウェーハテーブルWTと、
-パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つ以上のダイを含む)に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSと、を備える。
【0021】
[0030] リソグラフィ装置は、投影システムPSと基板Wとの間の液浸空間を満たすように、基板Wの少なくとも一部が、相対的に高い屈折率を有する液浸液、例えば超純水(UPW)などの水によって覆われ得るタイプであり得る。液浸液は、リソグラフィ装置内の他の空間、例えばパターニングデバイスMAと投影システムPSとの間にも印加可能である。液浸技法は、投影システムの開口数を増やすために使用することができる。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板Wなどの構造を液浸液内に浸さなければならないということは意味せず、むしろ「液浸」は、露光中、投影システムPSと基板Wとの間に液浸液があることを意味するにすぎない。投影システムPSから基板Wへのパターン付き放射ビームBの経路は、完全に液浸液を介する。投影システムPSの最終光学素子と基板Wとの間に液浸液を提供するための配置において、液体閉じ込め構造は、投影システムPSの最終光学素子と投影システムPSに対向するステージ又はテーブルの対向表面との間の液浸空間の境界の、少なくとも一部に沿って延在する。
【0022】
[0031] 動作中、イルミネータILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して放射源SOから放射ビームを受ける。照明システムILは、放射を誘導し、整形し、及び/又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、及び/又はその他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使用して放射ビームBを調節し、パターニングデバイスMAの平面において、その断面にわたって所望の空間及び角度強度分布が得られるようにしてもよい。
【0023】
[0032] 本明細書で用いられる「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、及び/又は液浸液の使用や真空の使用のような他のファクタに合わせて適宜、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム、及び/又は静電気光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈するべきである。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用される場合、これは更に一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0024】
[0033] リソグラフィ装置は、2つ以上の支持テーブル、例えば、2つ以上の支持テーブル、あるいは、1つ以上の支持テーブルと1つ以上のクリーニングテーブル、センサテーブル、又は測定テーブルとの組み合わせを有するタイプとすることができる。例えばリソグラフィ装置は、投影システムの露光側に位置する2つ以上のテーブルを備えるマルチステージ装置であり、各テーブルは1つ以上のオブジェクトを備える、及び/又は保持する。一例において、テーブルの1つ以上は、投影システムからの放射を測定するためにセンサを保持することができる。一例において、マルチステージ装置は、放射感応性基板を保持するように構成された第1のテーブル(すなわち、支持テーブル)、及び、放射感応性基板を保持するように構成されない第2のテーブル(下記では一般に、限定はしないが、測定テーブル、センサテーブル、及び/又はクリーニングテーブルと呼ばれる)を備える。第2のテーブルは、放射感応性基板以外の1つ以上のオブジェクトを備えること、及び/又は保持することができる。こうした1つ以上のオブジェクトは、投影システムからの放射を測定するためのセンサ、1つ以上のアライメントマーク、及び/又は(例えば、液体閉じ込め構造をクリーニングするための)クリーニングデバイス、のうちから、選択する1つ以上を含むことができる。
【0025】
[0034] 動作中、放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されるパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に存在するパターン(設計レイアウト)上に入射し、パターニングデバイスMAによってパターン付与される。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは基板Wのターゲット部分C上にビームを合焦させる。第2のポジショナPW及び位置センサIF(例えば、干渉デバイス、リニアエンコーダ、2-Dエンコーダ、又は静電容量センサ)の助けにより、基板テーブルWTは、例えば放射ビームBの経路内の合焦及び位置合わせされた位置で様々なターゲット部分Cを位置決めするように、正確に移動することができる。同様に、第1のポジショナPM及び別の位置センサ(
図1には明示的に示されていない)を使用して、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。パターニングデバイスMA及び基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせしてもよい。図に示されるように、基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分Cの間の空間内に位置してもよい(スクライブラインアライメントマークと呼ばれる)。
【0026】
[0035] コントローラ500は、リソグラフィ装置の動作全体を制御し、特に、下記で更に説明する動作プロセスを実施する。コントローラ500は、中央処理ユニット、揮発性及び不揮発性の記憶手段、キーボード及びスクリーンなどの1つ以上の入力及び出力デバイス、1つ以上のネットワーク接続、並びに、リソグラフィ装置の様々な部分への1つ以上のインターフェースを備える、適切にプログラミングされた汎用コンピュータとして具体化することができる。制御コンピュータとリソグラフィ装置との間に1対1の関係は必要ないことを理解されよう。1台のコンピュータが複数のリソグラフィ装置を制御することができる。複数のネットワーク化されたコンピュータを使用して、1つのリソグラフィ装置を制御することができる。コントローラ500は、リソグラフィ装置が一部を形成するリソセル又はクラスタにおいて、1つ以上の関連付けられたプロセスデバイス及び基板ハンドリングデバイスを制御するように構成されてもよい。コントローラ500は、リソセル又はクラスタの監視制御システム及び/又は製造工場の全体制御システムの下位となるように構成することもできる。局所液浸システムに対して提案された配置において、液体閉じ込め構造12は、投影システムPSの最終光学素子100と投影システムPSに対向するステージ又はテーブルの対向表面との間の液浸空間10の境界の少なくとも一部に沿って延在する。テーブルの対向表面は、テーブルが使用中移動し、ほとんど固定されないことから、このように呼ばれる。通常、テーブルの対向表面は、基板Wの表面、支持テーブルWT、例えば基板Wを取り囲む基板テーブルの表面、又はその両方である。こうした配置が
図2に示されている。図に示され下記で説明する配置は、上記で説明し
図1に示されたリソグラフィ装置に適用してもよい。
【0027】
[0036]
図2は、液体閉じ込め構造12を概略的に示す。液体閉じ込め構造12は、投影システムPSの最終光学素子100と支持テーブルWT又は基板Wとの間の、液浸空間10の境界の少なくとも一部に沿って延在する。一実施形態において、液体閉じ込め構造12と、基板W/支持テーブルWTの表面との間に、シールが形成される。シールは、ガスシール16(こうしたガスシールを伴うシステムは、欧州特許出願公開第EP-A-1,420,298号に開示されている)又は液体シールなどの、非接触シールであってよい。
【0028】
[0037] 液体閉じ込め構造12は、液浸流体、例えば液体を、液浸空間10に供給し、閉じ込めるように構成される。液浸流体は、液体開口のうちの1つ、例えば開口13aを介して液浸空間10内に運ばれる。液浸流体は、液体開口のうちの1つ、例えば開口13bを介して除去されてもよい。液浸流体は、少なくとも2つの液体開口、例えば開口13a及び開口13bを介して液浸空間10内に運ばれてもよい。液浸流体を供給するためにどちらの液体開口が使用されるか、及び任意選択として、液浸液を除去するためにどちらが使用されるかは、支持テーブルWTの移動方向に依存してよい。
【0029】
[0038] 液浸流体は使用中、液体閉じ込め構造12の底部とテーブルの対向表面(すなわち、基板Wの表面及び/又は支持テーブルWTの表面)との間に形成される、ガスシール16によって、液浸空間10内に封じ込めることができる。ガスシール16内のガスは、ガスインレット15を介して圧力下で、液体閉じ込め構造12と基板W及び/又は支持テーブルWTとの間のギャップに提供される。ガスは、ガスアウトレット14に関連付けられたチャネルを介して抽出される。ガスインレット15にかかる過度の圧力、ガスアウトレット14の真空レベル、及びギャップのジオメトリは、液浸流体を閉じ込める内側に向かう高速ガス流が存在するように配置される。液体閉じ込め構造12と基板W及び/又は支持テーブルWTとの間の液浸流体にかかるガスの力が、液浸流体を液浸空間10内に封じ込める。メニスカス320が液浸流体の境界に形成される。こうしたシステムは、米国特許出願公開第US2004-0207824号に開示されている。他の液体閉じ込め構造12が本発明の実施形態と共に使用可能である。
【0030】
[0039] リソグラフィ装置の多くのオブジェクトの表面は、塗布されたコーティング又は層を有する。コーティングは1つ以上の目的を有することができる。リソグラフィ装置内のコーティングの例示的目的は、液浸液の位置制御、特定の材料と液浸液との接触の防止、放射のビームの吸収、透過、又は反射を含む。本発明は、オブジェクト上に存在する任意の外側層に適用可能である。
【0031】
[0040] オブジェクト自体は、外側層に対する基板として作用し(すなわち、ウェーハとは反対に支持する下の物質又は層であり、異なる状況では基板と呼ばれることもあって、その上にデバイスが形成される)、オブジェクトは外側層の下に1つ以上の下側層を有してよい。下側層は必ずしも基板のすぐ上の層ではなく、外側層に対して下にある層である。下側層は基板と外側層との間にある。
【0032】
[0041] 本発明において、中間層(界面層と呼ばれることもある)を、外側層と基板との間、又は下側層が存在する場合は下側層との間に位置決めしてよい。
【0033】
[0042] 下記に、センサマークを参照しながら本発明を詳細に説明し、センサマークは、クォーツの基板、放射のビームと相互作用するための1つ以上の下側層、及び、親水性が制限された、例えば水が少なくとも75°、好ましくは少なくとも90°の後退接触角を有する、外側層(疎水性コーティング又はコーティングと呼ばれることもある)、を備える。
【0034】
[0043]
図3、
図4、及び
図5は、基板上、例えばクォーツ(SiO
2)板200上に形成される従来技術のセンサマークを示す。センサのマークは、クォーツ板200の頂部に堆積される薄膜のスタック300に統合される。クォーツ板200は、支持テーブルWTに統合される。薄膜のスタック300は、任意数の層を備えてよい。
図3、
図4、及び
図5に示されるように、スタック300は4つの層を備え、層310、320、及び330は図に示されるように、上からセンサマーク上に投影されるDUV放射を吸収するため、及び、DUV放射によって照射されるとき可視光を放出するクォーツ板200の下の材料600によって放出される可能性のある、クォーツ板200の下からの放射を吸収するための、層である。下側層350(外側層400に対して下にある)は、スタック300の層310、320、330の頂部に形成される。一実施形態において、下側層350はVIS及び/又はNIR及び/又はMIR放射に対して反射性である。
【0035】
[0044] いくつかの測定を提供するために、センサは液体閉じ込め構造12の下を通り、したがってセンサマークは液浸液に覆われる。これらの測定センサは液体閉じ込め構造12の下を再度通った後、液浸液から除去される。液体がセンサマーク上、又はマーク周辺のスタック300上に残るのを避けるために、親水性が制限された外側層400がセンサマーク及び/又はセンサマーク周辺に塗布される。
【0036】
[0045] 次に、リソグラフィ装置におけるセンサマークの使用に続き、これらの層及びそれらの製造の目的をより詳細に説明する。
【0037】
[0046] センサマークは、
深紫外線(DUV)のための透過型空間フィルタ(PARIS、ILIAS、TIS機能)、及び、
VIS、NIR、MIRのための反射型空間フィルタ(SMASH機能)
として作用する。
【0038】
[0047] また、スタック300の頂部表面(マークなし領域)からの反射は、他のセンサによる使用が可能である。
【0039】
[0048] 現在、センサマークは、
図3に関連して下記の順序で生成される。
1)総厚み~100nm(例えば、50~200nm)の青色クロム(CrOx-Cr-CrOx)310、320、330の連続層が、クォーツ板200上に堆積される。青色クロム310、320、330は、クォーツ板200の下に配置された材料600からの可視光の二次反射を最小限にする必要がある。この材料600はDUVを可視光に変換し、可視光はセンサによってキャプチャされる。投影システムPSからのDUVは、青色クロム310、320、330内にパターン付与されたスルーホール100を通る。CrOxの組成は、Cr
2O
3、CrO
xN
y、又はCrO
xN
yC
zのいずれかである。青色クロム310、320、330内の層は、下層310 CrO
x=10~80nm厚さ、中層320 Cr=5~60nm厚さ、及び上層330 CrO
x=20~100nm厚さである。
2)PARIS/ILIAS/TIS/SMASHマーク(1D及び2D格子)のパターン及び他のマークは、リソグラフィ堆積され、その後、クォーツ表面が露光される(エッチング停止として作用する)まで、青色クロム310、320、330内でエッチングされる。スルーホール100がパターンを形成する。
3)総厚みが最大300nm又は100nm未満のTiNの層350が、青色クロム310、320、330及びクォーツ板200の頂部に堆積され、パターンに従う。この層350はVIS/NIR/MIRの反射を介して測定のためのマークを提供し、これらのマークを介して光がクォーツ(VIS/IR/DUV)から漏出することはない。この層は、放射遮断層とみなすことができる。
4)親水性が制限されたコーティングの外側層400(例えば、好ましくはLipocer(登録商標)などのメチル基を伴う、例えばSi-O-Si-O主鎖を伴う、無機ポリマ)が、(下側)層350の頂部に塗布される。以下ではLipocerについて言及する(ただし、限定することは意図していない)。例えば、外側層400は任意の無機及び/又は有機ケイ素ポリマを含んでよい。ポリマは、メチル、エチル、プロピル、フェニル、ビニルから選択された、1つ以上の基を有することができる。Lipocerは下側(TiN)層350上に堆積され、センサを伴う支持テーブルWTが液体閉じ込め構造12の下から移動する間の水分損失を最小限にする。外側(Lipocer)層は、典型的には1~300nmの厚みを有するが、それ以上、例えば500nmまで可能である。
5)測定手順に起因して高DUVドーズが予期される、センサ板上のいくつかのスポットにおいて、Lipocerは例えば除去されて存在しない(典型的には、スポットは~100×100μm
2であるが、それよりも大きい、例えば~2×2cm
2であってもよい)。
【0040】
[0049] いくつかのスポットは、DUVが青色クロム310、320、330内のスルーホール100を通ってクォーツ板200の表面に移動できるように、TiNも奪われることになる。こうしたスポットは、通常はTIS、ILIAS、及びPARISの上にある(
図3を参照)。
【0041】
[0050]
図3及び
図4において、
-格子は一定の縮尺ではなく、典型的なタイルサイズ(すなわち、パターンの正方形のサイズ)であり、格子のライン幅は1~10umである。
-DUV(レチクルマーク及びレンズを介して投影される)は、青色クロム310、320、330内のスルーホール100を通る。
-(SMASH測定システムの放射源からの)IR/VISは、主に界面Lipocer/TiNから反射され、一部の反射は界面TiN/青色クロムでも発生する可能性がある。
-レベルセンサは、Lipocerからの反射、及び/又はTiNからの反射に基づく。
【0042】
[0051]
図3は、PARISスタック(及びILIAS)を表す。
図4は、SMASHスタックを表す。
図5は、共通クォーツ板200上の、同じ製造シーケンスで製造されたPARISマーク及びSMASHマークを示す。
【0043】
[0052] (液体閉じ込め構造12のステンレス鋼との対を形成する)Crのガルバニック腐食を防ぐために、センサマーク全体が接地された液体閉じ込め構造12に対してバイアスされてよい。
【0044】
[0053] Lipocerで作られる外側層400は、リソグラフィ装置内で劣化を被る。劣化は、DUVによる直接照射及び散乱照射に起因する。DUVによる(直接的又は間接的な)照射の結果として、Lipocerはより親水性になる。疎水性の低減は、結果として水の封じ込めがこれ以上保証できない状況が生じる、CH3基の分裂に起因することが考えられる。センサマーク上に水分が残る可能性がある。センサマーク上に水分が残ると、結果として、レベルセンサの読み取りエラーあるいは液滴又は汚染物の残存に起因して、フォーカスエラーが生じる可能性がある。液滴を乾燥させることで、結果として、液体の蒸発によるセンサマークの温度変動が生じる可能性があり、これがセンサの評判を落とすことにつながる。DUV放射からの高エネルギー光子が分子鎖を壊し、メタン基をLipocerから離れさせる可能性があることが考えられる。この化学反応によって、メチル基の代わりに、親水性のヒドロキシル末端基が残る。
【0045】
[0054] 追加又は代替として、DUVへの露光並びにセンサからの照射(特に、SMASHレーザ)は、Lipocer層の収縮を発生させる可能性がある。この収縮は、Lipocer層内の開口裂け目につながる可能性がある。このようにして、層350内の裂け目の下のTiNが酸化する可能性がある。酸化TiNはDUV放射を吸収し、それによって、温度変動に近する劣化プロセスを加速させる可能性がある。酸化TiNは、センサ読み取りにおいて容認できないドリフトを発生させる可能性がある。
【0046】
[0055] 上記の2つの問題は、主に、水及びDUV放射への露光に起因するLipocerの劣化に関連付けられる。劣化は、酸化又は収縮のいずれかによって生じる。収縮は、相対的に大きなメチル(非極性)基の除去の結果であり、メチル基は、より小さな極性のヒドロキシル(-OH)基に置き換えられ、したがってこれが環境内の他の極性基との相互作用によって余分な負荷も誘引することになる。
【0047】
[0056] 本発明において、外側層は希土類元素を含む組成物を有する。本発明者等は、希土類元素と共に形成される細長い結合長さ(例えば、希土類元素・酸素結合)に起因して、こうした外側層が疎水性であり、またDUV放射を伴う水環境においてもより堅固であることを発見した。こうしたコーティングは、DUV放射透過型でもある。
【0048】
[0057] 希土類元素と酸素(又は、例えばC、Si、B、Nなどの他の元素)との間の大きな原子間距離は、疎水性がLipocerとは異なる起源を有することを意味する。Lipocerでは、これはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、又はビニル基の存在であり、結果として疎水性が生じることになる。しかしながら、希土類元素が外側層400内で使用されるとき、疎水性は大きな原子間距離によって生じる。メチル基の極性の結果として疎水性が生じるLipocerとは対照的に、希土類元素酸化物(又は、転じて炭化物、ケイ化物、窒化物、及びホウ化物)の疎水性は、結晶格子内のセルのサイズ及び形状の結果である。したがって、Lipocerとは対照的に、メチル基の酸化又は水酸化物基との置換は、層の親水性に悪影響を与えることはない。こうした層は、水との相互作用により、少なくとも75°、更には少なくとも90°の後退接触角を与えることができる。
【0049】
[0058] 外側層が最初に作成されるとき、希土類元素は(少なくとも部分的に酸化された)酸素原子と結合することができる。代替又は追加として、希土類元素は使用中に酸素原子と結合することができる。代替又は追加として希土類元素は、使用前又は使用中に、部分的に窒化、ホウ化、炭化、又はケイ化することができ、こうした化合物は希土類元素酸化物と同様の属性を示す。
【0050】
[0059]
図8は、様々な異なる希元素酸化物及びそれらの関連する前進水接触角を示す。後退接触角は、前進水接触角に比例するものと予期することができる。したがって、疎水性に関して有望なほとんどの希土類元素は、セリウム、ジスプロシウム、エルビウム、ホルミウム、サマリウム、及びツリウムであり、これらの希土類元素が好ましい。しかしながら、いずれの希土類元素も疎水性を示すものと予期される。ランタン及びイットリウムは、より安価であるため好ましい場合がある。
【0051】
[0060] 第1の実施形態において、希土類元素は、無機及び/又は有機ケイ素ポリマと共に外側層400内に存在する。こうしたポリマの一例がLipocerであり、Lipocerに関連して本発明を説明する。しかしながら本発明はLipocerに限定されず、特にLipocerのようにSi-O-Si-O主鎖に基づく、他の無機及び/又は有機ケイ素ポリマが使用可能である。
【0052】
[0061] 一実施形態において、希土類元素は、Si-O-Si-O主鎖において部分的にSiと置き換わる。
図6は典型的なLipocer構造を示し、
図7は、希土類元素(REM)が主鎖においてSi元素と置き換わるとき、この構造がどのように変化するかを示す。図を見ればわかるように、希土類元素と酸素との間の結合長さは、Siと酸素との間の結合長さよりも長い。これが疎水性に寄与する。
【0053】
[0062] Lipocerのステージ内の堆積は、下層が最も高密度であるように行うことができる。プラズマ内にかなりの量の酸素が存在する場合、より多くのCH
3基が除去され、純粋なSiO2(Aquacer)により近くなり、大量の酸素が存在しなければ、より多くのCH
3基が付着したままであり、これが実質的なLipocerである。
【化1】
プラズマ誘起重合の開始を上に示す。
【化2】
LipocerのHMDSOからの起こり得るプラズマ誘起重合反応を上に示す。
【0054】
[0063] 上記の化学反応(プラズマ誘起重合)は、酸素を多く含むプラズマにおける堆積が(CH3基の除去を介して)SiO2により近い組成につながることを示す。
【0055】
[0064] 一実施形態において、外側層の組成は、希土類元素と、Lipocerなどの無機及び/又は有機ケイ素ポリマとを含む。結果として生じる構造は、重合及び/又は混合希土類元素とすることができる。外側層は、純Lipocer層に比べてわずかに透明性が減少し得る。一実施形態において、外側層における希土類元素の濃度は0.1原子百分率から50原子百分率の間である。これにより、外側層の劣化性能を改善するために十分な希土類元素が存在するが、外側層の透過率を減少させるほど多過ぎないことが保証される。好ましくは、外側層の(垂直入射での)透過率は深紫外線放射の少なくとも50%であり、より好ましくは少なくとも90%である。好ましい実施形態において、外側層における希土類元素の濃度は、2.0原子百分率から30原子百分率の間である。こうした濃度は、改善された劣化性能と深紫外線放射の高透過率との間に最良のバランスを有する。
【0056】
[0065] 一実施形態において、希土類元素は、希土類元素のスパッタリングによって、又は金属蒸気アーク源、例えば希土類電極を使用することによって、Lipocerと(共)堆積することができる。ターゲットは、ポリマ堆積において使用される同じか又は異なるプラズマ源によって同時スパッタリングすることが可能であるか、あるいは、金属蒸気アーク源は、ポリマ堆積と同時に、又はポリマ堆積と交互に関わることができる。(同時堆積又は交互堆積の)いずれの場合にも、
図7と同様の構造が予期される。ポリマにおける希土類インプラントの浅い深度は、ポリマに入射する低エネルギーのイオン又は原子から示唆することができる。
【0057】
[0066] 一実施形態において、希土類元素は、スパッタリング又はイオン注入に代わって、物理気相堆積(PVD)及び/又は化学気相堆積(CVD)及び/又は原子層堆積(ALD)の技法によって堆積させることができる。PVD、CVD、及びALDにおいて、前駆体及び/又は反応性ガスのうちの少なくとも1つは、外側層内に堆積させるべき希土類元素を含む。
【0058】
[0067] 堆積の代替方法において、前述のように酸化プラズマにおいて生じるLipocerの堆積中、揮発性物質の形の希土類元素化合物がLipocerポリマ前駆体と共に導入される。希ガスも含めることができる。揮発性物質の形の希土類元素化合物の例には、トリスアセチルアセトナート、キレート、及び他の有機金属化合物が含まれる。こうした堆積は、結果として
図7に示すような構造を生じさせる。
【0059】
[0068] ポリマ対希土類金属の適切な比を選択することによって、接触角に関してポリマの経年の影響を低減させることが可能である。すなわち、メチル基が除去される際、初期に表面上にメチル基が存在することよりも、希土類元素・酸素結合が存在することによって、外側層の接触角はより多く駆動されることになる。加えて、ポリマの自己回復特性を改善することができる。これは、主鎖における希土類元素の存在(
図7を参照)が、近接するメチル基が回転するためのより多くの空間を残すためである。それにより、除去されたメチル基のギャップを満たすためにメチル基が回転する自由度が改善される。それにより、ポリマの自己回復特性が改善される。
【0060】
[0069] 一実施形態において、希土類元素の量を増加させ、それによって外側層の光学特性又は化学特性を変化させることが有利であり得る。一実施形態において、十分な希土類元素を追加することで、かすめ角で入射するDUV放射に対してポリマをより反射的にすること、又は酸化しにくくすることができる。その後、散乱したDUVと、例えば透過型センサマークの外側にあるUPWとの組み合わせによって駆動される外側層の劣化を、低減させることができる。
【0061】
[0070] 一実施形態において、LipocerはSiO2に置き換えられる。
【0062】
[0071] 一実施形態において、外側層は、ポリマ又はSiO2又はSiO2―x及び希土類元素の堆積が複数のステップで実施されるように、堆積される。希土類元素及び/又はポリマ又はSiO2又はSiO2―xの堆積は、スパッタリング、PVD、CVD、及び/又はALD、あるいはそれらの組み合わせを介して行うことができる。理想的には、例えば堆積キャンペーン間に層の周辺の真空を維持することによって、層を大気に晒すことなく、複数の堆積ステップが行われる。
【0063】
[0072] 一実施形態において、無機又は有機ケイ素ポリマがプラズマ誘起重合を介して堆積される、及び/又は、SiO2又はSiO2―xがスパッタリング又はALDによって堆積される。
【0064】
[0073] 使用中(空気又はUPWに晒した後)、スパッタリング又はALDによって堆積されたSiO
2/SiO
2―x層は、多くの-OH基によって終端する。これが
図9に示される。こうした層は親水性である(-OH基は極性があり、ホスト水分子に対して良好なアスペクト比を有する)。しかしながらこうした層は、良好な化学特性を有し、水の存在下でDUV照射に対して堅固であるため、有利である。希土類元素を追加することによって、機械特性及び化学特性を損なうことなく親水性が低下することになる。こうした構造が
図10に示される。したがって外側層は、希土類元素酸化物(及び、転じて、ホウ化物、窒化物、炭化物、ケイ化物)からなるものと見なすことができる。
【0065】
[0074] 一実施形態において、スパッタリング又は好ましくはALDによってSiO2を堆積した後、希土類元素が堆積される。代替として構造は、希土類元素と共にSiO2を同時堆積、例えば同時スパッタリングすることのいずれかによって、達成可能である。
【0066】
[0075] 希土類元素酸化物の十分に薄い層(例えば、1~30nm)は透明であり、またDUV又は視覚放射透過を歪めることはない。
【0067】
[0076] 一実施形態において、外側層の厚みを介して濃度勾配が設定される。例えば、希土類元素の濃度は、外側層の厚みを介して基板から遠くへ移動するにつれて増加する。これは、同時堆積の間、希土類元素の濃度を変化させること、又は、希土類元素の堆積と別の物質の堆積とが散在する実施形態において様々な堆積ステップの時間を変更することの、いずれかによって達成可能である。好ましくは、堆積は、外側層の外側表面における希土類元素の濃度が10原子%より大きく、これによって十分に高い疎水性レベルが保証されるものである。
【0068】
[0077] 好ましい実施形態において、SiO2の層がALDによって堆積され、スパッタリングによって堆積されたSiO2の層が続き、スパッタリングされたSiO2及びスパッタリングされた希土類元素酸化物の遷移層が続き、希土類元素酸化物の最終スパッタリング層が続く。
【0069】
[0078] 一実施形態において、ALD SiO2層の後にスパッタリングされたSiO2層が続き、スパッタリングによって堆積されたSiO2及びReOSの混合層が続く。濃度勾配は、混合層の外側の希土類元素酸化物の濃度が最高であるように混合層内で変化し得る。
【0070】
[0079] 一実施形態において、外側層が、原子層堆積によって堆積されたSiO2、スパッタリングによって堆積されたSiO2、及びスパッタリングによって堆積された希土類元素酸化物を含むことができるため、遷移層は不要である。
【0071】
[0080] 一実施形態において、希土類元素酸化物は、原子層堆積によって堆積されたSiO2層のすぐ上にスパッタリングによって堆積される。こうした実施形態において、SiO2層は50~100nmの厚みを有し、スパッタリングされた希土類元素酸化物は30nm未満、好ましくは10nm未満の厚みを有する。
【0072】
[0081] 本発明は、下側層350、例えばTiN上に形成される外側層400に関して説明するが、同等の特性を伴う任意の他の窒化物(CrN、AlTiN、並びにTiAlN及びZrNなど)も使用可能である。追加又は代替として、例えばSiO2の更なる層を下側層350と外側層400との間に形成することができる。
【0073】
[0082] 上記では、センサマーク及び疎水性層、又は親水性が制限されたコーティングに関して本発明を説明している。しかしながら本発明は、センサの他の表面に、並びにセンサ以外のオブジェクト(例えば、レンズ素子、支持テーブルなど)に、適用可能である。
【0074】
[0083] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板プロセスツールに適用することができる。更に基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0075】
[0084] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nmもしくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
【0076】
[0085] 「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気及び静電光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はその組み合わせを指すことができる。
【0077】
[0086] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。本発明の他の態様は、以下の番号付けられた条項のように記載されている。
【0078】
1.液浸リソグラフィ装置であって、
オブジェクトを備え、オブジェクトが、
基板及び外側層を備え、外側層が、使用中、液浸液と接触し、
外側層が希土類元素を含む組成物を有する、
液浸リソグラフィ装置。
2.組成物が無機及び/又は有機ケイ素ポリマを更に含む、条項1の液浸リソグラフィ装置。
3.ポリマがSi-O-Si-O主鎖を有する、条項2の液浸リソグラフィ装置。
4.希土類元素の一部が主鎖においてSiと部分的に置き換わる、条項3の液浸リソグラフィ装置。
5.ポリマが、メチル、エチル、プロピル、フェニル、ビニルから選択された1つ以上の基を有する、条項2、3、又は4の液浸リソグラフィ装置。
6.希土類元素が少なくとも部分的に酸化、窒化、ホウ化、炭化、又はケイ化される、条項1から4のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
7.基板と外側層との間に中間層を更に備える、条項1から6のいずれか一項のリソグラフィ液浸装置。
8.中間層が、SiO2、SiO2-xのうちの1つ以上を含む、条項7のリソグラフィ液浸装置。
9.中間層が1nmから1μmの間、好ましくは10nmから300nmの間の厚みを有する、条項7又は8のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
10.外側層が、基板からの距離が増加するにつれて増加する層厚みを介する希土類元素の濃度勾配を有する、条項1から9のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
11.希土類元素が、0.1原子%から50原子%、好ましくは2.0原子%から30原子%の濃度(原子百分率)で外側層の外側表面内に存在する、条項1から10のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
12.希土類元素が、10原子%より大きい濃度で外側層の外側表面内に存在する、条項1から11のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
13.外側層が、1nmから300nmの間、好ましくは1nmから30nmの間の厚みを有する、条項1から12のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
14.基板上に形成されるスルーホールのパターン及び/又は内部に形成されるステップを含む、少なくとも1つのパターン付き層を備え、外側層がパターン付き層の少なくとも一部の上に形成される、条項1から13のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
15.外側層の下の基板上に形成された放射遮断層を更に備える、条項1から14のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
16.放射遮断層がTiNを含む、条項15の液浸リソグラフィ装置。
17.外側層が深紫外線放射に対して透過型であり、外側層の透過率は少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%である、条項1から16のいずれか一項の液浸リソグラフィ装置。
18.水が外側層と少なくとも75°の、好ましくは少なくとも90°の後退接触角を作る、条項1から17のいずれか一項の液浸リソグラフィ装置。
19.オブジェクトがセンサである、条項1から18のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
20.センサが深紫外線のための透過型空間フィルタを備える、条項19の液浸リソグラフィ装置。
21.センサが透過型イメージセンサ又は集積レンズ干渉計センサである、条項19又は20の液浸リソグラフィ装置。
22.オブジェクトがセンサマークである、条項1から19のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
23.センサマークが反射型空間フィルタである、条項22の液浸リソグラフィ装置。
24.センサマークがアライメントセンサのセンサマークである、条項22又は23の液浸リソグラフィ装置。
25.希土類元素が、セリウム(Ce)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ホルミウム(Ho)、サマリウム(Sm)、ツリウム(Tm)を含む基からの1つ以上の元素である、条項1から24のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
26.外側層が、使用中、深紫外線放射に直接的又は間接的に露光される、条項1から25のいずれかの液浸リソグラフィ装置。
27.リソグラフィ装置のためのオブジェクトであって、
基板及び外側層を備え、
水が外側層と少なくとも75°の後退接触角を作り、
外側層が希土類元素を含む組成物を有する、
リソグラフィ装置のためのオブジェクト。
28.基板をコーティングする方法であって、
基板を提供すること、
(a)少なくとも1つのスパッタリングターゲット材料が希土類元素を含む、スパッタリング、及び(b)前駆体ガス/反応性ガスのうちの少なくとも1つが希土類元素を含む、PVD及び/又はCVD及び/又はALD、及び(c)プラズマ誘起(共)重合、及び(d)イオン源が金属蒸気アーク源であり、また蒸気が少なくとも部分的に希土類を含む、イオン注入、のうちの少なくとも1つによって、希土類元素を含む組成物を有する外側層を基板上に堆積させること、
を含む、基板をコーティングする方法。
29.希土類元素を含む組成物の堆積が先行されるか、あるいは、組成物がポリマ又はSiO2を含むように、(a)無機/有機ケイ素ポリマの堆積、又は(b)SiO2又はSiO2-xの堆積の、いずれかと交互に起こる、条項28の方法。
30.希土類元素を含む組成物の堆積が先行されるか、あるいは、組成物がポリマを含むように、PVD及び/又はプラズマ誘起重合による無機/有機ケイ素ポリマの堆積と交互に起こる、条項29の方法。
31.希土類元素を含む組成物の堆積が先行されるか、あるいは、組成物がSiO2を含むように、スパッタリング又はALDによるSiO2又はSiO2-xの堆積と交互に起こる、条項29の方法。
32.希土類元素を含む組成物の堆積が、重合、及び/又は共重合、及び/又は混合された、希土類元素の堆積である、条項28の方法。
33.組成物が、PVD又はプラズマ誘起重合によって堆積された無機及び/又は有機ケイ素ポリマを更に含む、条項28又は32の方法。
34.希土類元素が、少なくとも部分的に酸化、窒化、ホウ化、炭化、又はケイ化される、条項28から33のいずれかの方法。
35.基板をコーティングする方法であって、
基板を提供すること、
それによって共重合及び/又は共有結合した無機単量体及び希土類元素を含む基板上に外側層を堆積させるために、揮発性物質の形の希土類元素及び無機/有機ケイ素ポリマ前駆体の化合物を含む、酸化性大気に基板を晒すこと、
を含む、基板をコーティングする方法。