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特許7298150ポリカーボネート変性アクリル樹脂、塗料及び該塗料で塗装されたプラスチック成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】ポリカーボネート変性アクリル樹脂、塗料及び該塗料で塗装されたプラスチック成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/02 20060101AFI20230620BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230620BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C08F283/02
C08F2/44 C
C09D133/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018241085
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020100770
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】新地 円美
(72)【発明者】
【氏名】村川 卓
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/045562(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229941(US,A1)
【文献】特開2011-184621(JP,A)
【文献】特開2015-066543(JP,A)
【文献】特開2015-067740(JP,A)
【文献】国際公開第2021/124899(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/044487(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/00 - 283/14
C08F 2/44
C09D 133/00 - 133/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールを原料としたポリカーボネートジオール(A)の存在下、メチルメタクリレート、水酸基を有する不飽和単量体(b1)、及び脂環式構造を有する不飽和単量体(b2)を必須成分として含有する不飽和単量体混合物(B)をラジカル重合して得られるポリカーボネート変性アクリル樹脂の製造方法であって、前記ポリカーボネートジオール(A)と前記不飽和単量体混合物(B)との質量比[(A)/(B)]が、1/99~30/70の範囲であり、前記不飽和単量体混合物(B)中の前記不飽和単量体(b2)の質量比率が35~80質量%の範囲であることを特徴とするポリカーボネート変性アクリル樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記不飽和単量体混合物(B)中の、メチルメタクリレートの質量比率が10~50質量%の範囲であり、前記不飽和単量体(b1)の質量比率が1~40質量%の範囲である請求項1記載のポリカーボネート変性アクリル樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記ポリカーボネートジオール(A)由来の水酸基価(OHA)と、前記不飽和単量体混合物(B)由来の水酸基価(OHB)との水酸基価の比[(OHA)/(OHB)]が0.3~20の範囲である請求項1又は2記載のポリカーボネート変性アクリル樹脂の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の製造方法により得られたポリカーボネート変性アクリル樹脂及び硬化剤(C)を含有することを特徴とする塗料の製造方法
【請求項5】
請求項4記載の製造方法で得られた塗料で塗装されたことを特徴とするプラスチック成形品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート変性アクリル樹脂、塗料及び該塗料で塗装されたプラスチック成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオールの存在下、不飽和単量体を反応させることで得られるポリカーボネート変性アクリル樹脂が提案されており、その硬化塗膜は基材への付着性、機械物性等に優れることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、このポリカーボネート変性アクリル樹脂から得られる塗膜は、耐擦傷性等に優れるものの、近年、プラスチック用塗料等で要求される耐乳酸性及び耐オレイン酸性が不十分であるという欠点があった。そこで、従来の付着性等に加え、耐乳酸性及び耐オレイン酸性を付与することができる材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第WO2015/045562号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、プラスチック基材との高い付着性を有し、耐乳酸性及び耐オレイン酸性に優れる塗膜を得ることができるポリカーボネート変性アクリル樹脂、塗料及び該塗料で塗装されたプラスチック成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定のポリカーボネートジオールと、特定の不飽和単量体を必須成分として含有する不飽和単量体混合物との反応物であるポリカーボネート変性アクリル樹脂を用いることで、プラスチック基材との高い付着性を有し、耐水付着性及び耐芳香剤性に優れる塗膜を得ることができることを見出し、発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールを原料としたポリカーボネートジオール(A)と、メチルメタクリレート、水酸基を有する不飽和単量体(b1)、及び脂環式構造を有する不飽和単量体(b2)を必須成分として含有する不飽和単量体混合物(B)との反応物であるポリカーボネート変性アクリル樹脂であって、前記不飽和単量体混合物(B)中の前記不飽和単量体(b2)の質量比率が35~80質量%の範囲であることを特徴とするポリカーボネート変性アクリル樹脂、塗料及び該塗料で塗装されたプラスチック成形品に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリカーボネート変性アクリル樹脂は、プラスチック基材との高い付着性を有し、耐乳酸性及び耐オレイン酸性に優れる塗膜を得られることから、塗料に有用であり、該塗料を各種プラスチック成形品に塗装することができる。したがって、本発明のポリカーボネート変性アクリル樹脂は、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器の筐体;テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体;自動車、鉄道車輌等の各種車輌の内装材などの各種物品を塗装する塗料に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリカーボネート変性アクリル樹脂は、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールを原料としたポリカーボネートジオール(A)と、メチルメタクリレート、水酸基を有する不飽和単量体(b1)、及び脂環式構造を有する不飽和単量体(b2)を必須成分として含有する不飽和単量体混合物(B)との反応物であるポリカーボネート変性アクリル樹脂であって、前記不飽和単量体混合物(B)中の前記不飽和単量体(b2)の質量比率が35~80質量%の範囲であるものである。
【0010】
まず、ポリカーボネートジオール(A)について説明する。このポリカーボネートジオール(A)は、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールを原料としたポリカーボネートジオールであり、例えば、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールと、炭酸エステルまたはホスゲンとの反応により得られるものである。
【0011】
次に、前記不飽和単量体混合物(B)について説明する。この不飽和単量体混合物(B)は、メチルメタクリレート、水酸基を有する不飽和単量体(b1)、及び脂環式構造を有する不飽和単量体(b2)を必須成分として含有するものであり、前記不飽和単量体(b2)の質量比率が40~80質量%の範囲のものである。
【0012】
前記水酸基を有する不飽和単量体(b1)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、得られる塗膜の外観、耐乳酸性、耐オレイン酸性がより優れることから、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらの不飽和単量体(b1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0013】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいう。
【0014】
前記脂環式構造を有する不飽和単量体(b2)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、耐乳酸性及び耐オレイン酸性がより向上することから、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。また、これらの不飽和単量体(b2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0015】
さらに、前記不飽和単量体混合物(B)の成分として、上記の必須原料であるメチルメタクリレート、不飽和単量体(b1)、及び不飽和単量体(b2)以外のその他の不飽和単量体(b3)を用いても構わない。その他の不飽和単量体(b3)としては、例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、エチレングリコールジアクリレート等のジアクリレート化合物などが挙げられる。また、これらの不飽和単量体は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0016】
前記不飽和単量体混合物(B)は、前記不飽和単量体(b2)の質量比率が35~80質量%の範囲のものであるが、得られる塗膜の耐乳酸性及び耐オレイン性がより向上することから、40~75質量%の範囲が好ましく、50~70質量%の範囲がより好ましい。
【0017】
前記不飽和単量体混合物(B)は、上記不飽和単量体(b2)以外に、メチル(メタ)アクリレート、及び前記不飽和単量体(b1)を必須成分として含有するものであるが、得られる塗膜の耐乳酸性及び耐オレイン酸性がより向上することから、メチル(メタ)アクリレートの質量比率が10~50質量%の範囲であり、前記不飽和単量体(b1)の質量比率が1~40質量%の範囲であり、前記不飽和単量体(b3)の質量比率が0~30質量%の範囲であることが好ましく、メチル(メタ)アクリレートの質量比率が15~40質量%の範囲であり、前記不飽和単量体(b1)の質量比率が3~30質量%の範囲であり、前記不飽和単量体(b3)の質量比率が0~15質量%の範囲であることがより好ましい。
【0018】
また、前記不飽和単量体混合物(B)のFOXの式で計算されるガラス転移温度(以下、「設計Tg」と略称する。)は、得られる塗膜の耐乳酸性及び耐オレイン酸性がより向上することから、80~140℃の範囲が好ましく、100~140℃の範囲がより好ましい。
【0019】
なお、本発明において、FOXの式で計算されるガラス転移温度とは、
FOXの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
(Tg:求めるべきガラス転移温度、W1:成分1の重量分率、Tg1:成分1のホモポリマーのガラス転移温度)
に従い計算により求めたものである。各成分のホモポリマーのガラス転移温度の値は
、Polymer Handbook(4th Edition)J.Brandrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke著(Wiley Interscience)記載の値を用いた。
【0020】
本発明のポリカーボネート変性アクリル樹脂を得る方法としては、前記ポリカーボネートジオール(A)及び溶剤の存在下、前記不飽和単量体混合物(B)をラジカル重合する方法が簡便であることから好ましい。
【0021】
上記のラジカル重合法は、原料である各単量体を溶剤に溶解し、重合開始剤存在下で重合反応を行う方法である。この際に用いることができる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素化合物;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化合物;n-ブタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール化合物;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール化合物;ヘプタン、ヘキサン、オクタン、ミネラルターペン等の脂肪族炭化水素化合物などが挙げられる。
【0022】
前記重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド化合物;1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジtert-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-ヘキシルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール化合物;クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジtert-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物;ビス(tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート化合物;tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル化合物などの有機過酸化物と、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチル)ブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等のアゾ化合物とが挙げられる。
【0023】
また、前記ポリカーボネートジオール(A)と前記不飽和単量体混合物(B)との質量比[(A)/(B)]は、得られる塗膜の耐乳酸性及び耐オレイン性がより向上することから、1/99~50/50の範囲が好ましく、2/98~30/70の範囲が好ましく、3/97~10/90の範囲がさらに好ましい。
【0024】
本発明のポリカーボネート変性アクリル樹脂の水酸基価は、得られる塗膜の耐乳酸性及び耐オレイン酸性がより向上することから、10~120mgKOH/gの範囲が好ましく、20~90mgKOH/gの範囲がより好ましい。
【0025】
本発明のポリカーボネート変性アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、得られる塗膜の耐乳酸性及び耐オレイン酸性がより向上することから、5,000~100,000の範囲が好ましく、10,000~50,000の範囲がより好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
【0026】
本発明の塗料は、本発明のポリカーボネート変性アクリル樹脂を含有するものであるが、得られる塗膜の物性がより向上することから、硬化剤(C)を含有するものであることが好ましい。
【0027】
前記硬化剤(C)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂等が挙げられるが、得られる塗膜の耐乳酸性及び耐オレイン性が優れることから、ポリイソシアネート化合物が好ましい。また、これらの硬化剤(C)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0028】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、m-フェニレンビス(ジメチルメチレン)ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2-メチル-1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、2-メチル-1,5-ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0029】
また、前記ポリイソシアネート化合物として、上記のジイソシアネート化合物を多価アルコールと付加反応させて得られるイソシアネート基を有するプレポリマー;上記のジイソシアネート化合物を環化三量化させて得られるイソシアヌレート環を有する化合物;上記のジイソシアネート化合物を水と反応させて得られる尿素結合やビュレット結合を有するポリイソシアネート化合物;2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート等のイソシアネート基を有するアクリル単量体の単独重合体;前記イソシアネート基を有するアクリル単量体と、その他のアクリル単量体、ビニルエステル化合物、ビニルエーテル化合物、芳香族ビニル単量体、フルオロオレフィン等の単量体と共重合することによって得られるイソシアネート基を有する共重合体なども用いることができる。
【0030】
上記のポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0031】
前記硬化剤(C)がポリイソシアネート化合物である場合の配合量としては、高強度の塗膜が得られることから、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と、本発明のポリカーボネート変性アクリル樹脂中の水酸基との当量比(イソシアネート基/水酸基)で、0.5~2.0となる範囲が好ましく、0.7~1.3となる範囲がより好ましい。
【0032】
なお、上記のウレタン化反応は、反応の進行を促進させるため、ウレタン化触媒の存在下で行うこともできる。前記ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチルアミン等のアミン化合物、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、ジオクチル錫ジネオデカネート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル酸錫等の有機錫化合物、オクチル酸亜鉛(2-エチルヘキサン酸亜鉛)等の有機金属化合物などが挙げられる。
【0033】
本発明の塗料は、本発明のポリカーボネート変性アクリル樹脂及び硬化剤(C)を含有するものであるが、その他の配合物として、溶剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、顔料分散剤等の添加剤を使用することができる。また、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミニウム粉末、銅粉末、雲母粉末、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、トルイジンレッド、ペリレン、キナクリドン、ベンジジンイエロー等の顔料を使用することもできる。
【0034】
本発明の塗料は、プラスチック基材との高い付着性を有することから、各種プラスチック成形品を塗装する塗料として好適に用いることができるが、本発明の塗料を塗装することのできるプラスチック成形品としては、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器の筐体;テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体;自動車、鉄道車輌等の各種車輌の内装材などが挙げられる。
【0035】
本発明の塗料の塗装方法としては、例えば、スプレー、アプリケーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、ホイーラーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。また、塗装後、塗膜とする方法としては、常温~120℃の範囲で乾燥させる方法が挙げられる。
【実施例
【0036】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、本発明のポリカーボネート変性アクリル樹脂の水酸基価は、JIS試験方法K 0070-1992に準拠して測定したものである。また、重量平均分子量(Mw)は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0037】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0038】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0039】
(実施例1:ポリカーボネート変性アクリル樹脂(1)の合成)
冷却管、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を備えたフラスコに、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとを原料としたポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノールT5650J」、水酸基価139.5、数平均分子量800;以下、「ポリカーボネートジオール(A-1)」と略記する。)52.6質量部及び酢酸n-ブチル553.4質量部を加え、内温を120℃まで上げた。次いで、イソボルニルメタクリレート605質量部、メチルメタクリレート230質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート55質量部、n-ブチルメタクリレート110質量部、酢酸n-ブチル200質量部、及びtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート21質量部の混合物(設計Tg117℃)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後も同温度で17時間反応を継続した後、不揮発分60質量%になるように酢酸n-ブチルで希釈し、質量比[(A)/(B)]が5/95、重量平均分子量が15,000であるポリカーボネート変性アクリル樹脂(1)の溶液を得た。
【0040】
(実施例2:ポリカーボネート変性アクリル樹脂(2)の合成)
冷却管、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を備えたフラスコに、ポリカーボネートジオール(A-1)52.6質量部及び酢酸n-ブチル553.4質量部を加え、内温を120℃まで上げた。次いで、イソボルニルメタクリレート605質量部、メチルメタクリレート340質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート55質量部、酢酸n-ブチル200質量部、及びtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート21質量部の混合物(設計Tg130℃)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後も同温度で17時間反応を継続した後、不揮発分60質量%になるように酢酸n-ブチルで希釈し、質量比[(A)/(B)]が5/95、重量平均分子量が14,700であるポリカーボネート変性アクリル樹脂(2)の溶液を得た。
【0041】
(実施例3:ポリカーボネート変性アクリル樹脂(3)の合成)
冷却管、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を備えたフラスコに、ポリカーボネートジオール(A-1)52.6質量部及び酢酸n-ブチル553.4質量部を加え、内温を120℃まで上げた。次いで、イソボルニルメタクリレート605質量部、メチルメタクリレート230質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート55質量部、n-ブチルメタクリレート110質量部、酢酸n-ブチル200質量部、及びtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート10質量部の混合物(設計Tg117℃)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後も同温度で17時間反応を継続した後、不揮発分60質量%になるように酢酸n-ブチルで希釈し、質量比[(A)/(B)]が5/95、重量平均分子量が30,300であるポリカーボネート変性アクリル樹脂(3)の溶液を得た。
【0042】
(実施例4:ポリカーボネート変性アクリル樹脂(4)の合成)
冷却管、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を備えたフラスコに、ポリカーボネートジオール(A-1)52.6質量部及び酢酸n-ブチル553.4質量部を加え、内温を120℃まで上げた。次いで、イソボルニルメタクリレート587質量部、メチルメタクリレート230質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート75質量部、n-ブチルメタクリレート108質量部、酢酸n-ブチル200質量部、及びtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート21質量部の混合物(設計Tg117℃)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後も同温度で17時間反応を継続した後、不揮発分60質量%になるように酢酸n-ブチルで希釈し、質量比[(A)/(B)]が5/95、重量平均分子量が15,000であるポリカーボネート変性アクリル樹脂(4)の溶液を得た。
【0043】
(実施例5:ポリカーボネート変性アクリル樹脂(5)の合成)
冷却管、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を備えたフラスコに、ポリカーボネートジオール(A-1)52.6質量部及び酢酸n-ブチル553.4質量部を加え、内温を120℃まで上げた。次いで、イソボルニルメタクリレート587質量部、メチルメタクリレート230質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート108質量部、n-ブチルメタクリレート75質量部、酢酸n-ブチル200質量部、及びtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート10質量部の混合物(設計Tg117℃)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後も同温度で17時間反応を継続した後、不揮発分60質量%になるように酢酸n-ブチルで希釈し、質量比[(A)/(B)]が5/95、重量平均分子量が30,000であるポリカーボネート変性アクリル樹脂(5)の溶液を得た。
【0044】
(実施例6:ポリカーボネート変性アクリル樹脂(6)の合成)
冷却管、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を備えたフラスコに、ポリカーボネートジオール(A-1)52.6質量部及び酢酸n-ブチル553.4質量部を加え、内温を120℃まで上げた。次いで、イソボルニルメタクリレート570質量部、メチルメタクリレート230質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート162質量部、n-ブチルメタクリレート38質量部、酢酸n-ブチル200質量部、及びtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート10質量部の混合物(設計Tg117℃)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後も同温度で17時間反応を継続した後、不揮発分60質量%になるように酢酸n-ブチルで希釈し、質量比[(A)/(B)]が5/95、重量平均分子量が30,000であるポリカーボネート変性アクリル樹脂(6)の溶液を得た。
【0045】
(実施例7:ポリカーボネート変性アクリル樹脂(7)の合成)
冷却管、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を備えたフラスコに、ポリカーボネートジオール(A-1)111質量部及び酢酸n-ブチル553.4質量部を加え、内温を120℃まで上げた。次いで、イソボルニルメタクリレート611質量部、メチルメタクリレート230質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート41質量部、n-ブチルメタクリレート118質量部、酢酸n-ブチル200質量部、及びtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート21質量部の混合物(設計Tg117℃)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後も同温度で17時間反応を継続した後、不揮発分60質量%になるように酢酸n-ブチルで希釈し、質量比[(A)/(B)]が10/90、重量平均分子量が14,600であるポリカーボネート変性アクリル樹脂(7)の溶液を得た。
【0046】
(比較例1:ポリカーボネート変性アクリル樹脂(R1)の合成)
冷却管、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を備えたフラスコに、ポリカーボネートジオール(A-1)52.6質量部及び酢酸n-ブチル553.4質量部を加え、内温を120℃まで上げた。次いで、イソボルニルメタクリレート555質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート215質量部、n-ブチルメタクリレート200質量部、メタクリル酸30質量部、酢酸n-ブチル200質量部、及びtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート43質量部の混合物(設計Tg96℃)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後も同温度で17時間反応を継続した後、不揮発分60質量%になるように酢酸n-ブチルで希釈し、質量比[(A)/(B)]が5/95、重量平均分子量が8,300であるポリカーボネート変性アクリル樹脂(4)の溶液を得た。
【0047】
(比較例2:ポリカーボネート変性アクリル樹脂(R2)の合成)
冷却管、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を備えたフラスコに、ポリカーボネートジオール(A-1)52.6質量部及び酢酸n-ブチル553.4質量部を加え、内温を120℃まで上げた。次いで、メチルメタクリレート862質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート108質量部、エチルアクリレート30質量部、酢酸n-ブチル200質量部、及びtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート43質量部の混合物(設計Tg93℃)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後も同温度で17時間反応を継続した後、不揮発分60質量%になるように酢酸n-ブチルで希釈し、質量比[(A)/(B)]が5/95、重量平均分子量が8,500であるポリカーボネート変性アクリル樹脂(R2)の溶液を得た。
【0048】
(比較例3:ポリカーボネート変性アクリル樹脂(R3)の合成)
冷却管、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を備えたフラスコに、ポリカーボネートジオール(A-1)52.6質量部及び酢酸n-ブチル553.4質量部を加え、内温を120℃まで上げた。次いで、イソボルニルメタクリレート320質量部、メチルメタクリレート625質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート55質量部、n-ブチルメタクリレート75質量部、酢酸n-ブチル200質量部、及びtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート21質量部の混合物(設計Tg117℃)を4時間にわたって滴下した。滴下終了後も同温度で17時間反応を継続した後、不揮発分60質量%になるように酢酸n-ブチルで希釈し、質量比[(A)/(B)]が5/95、重量平均分子量が30,300であるポリカーボネート変性アクリル樹脂(R3)の溶液を得た。
【0049】
上記で得られたポリカーボネート変性アクリル樹脂(1)~(7)及び(R1)~(R3)の組成を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表中の略号は、それぞれ下記のものである。
MMA:メチルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
IBXMA:イソボルニルメタクリレート
nBMA:n-ブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
EA:エチルアクリレート
【0053】
(実施例8:塗料(1)の調製及び評価)
【0054】
[塗料の調製]
上記の実施例1で得られたポリカーボネート変性アクリル樹脂(1)の溶液(不揮発分60質量%、ジブチル錫ジラウレート及び硬化剤(住化コベストロウレタン株式会社製「スミジュール N-3300」)を均一に混合した。なお、ポリカーボネート変性アクリル樹脂(1)と硬化剤の配合比率は、ポリカーボネート変性アクリル樹脂(1)中の水酸基の当量と硬化剤中のイソシアネート基の当量とが1:1となる量とし、ジブチル錫ジラウレートの配合量は、ポリカーボネート変性アクリル樹脂(1)に対し、0.1質量%とした。次いで、粘度がアネスト岩田株式会社製「粘度カップNK-2」で9~11秒(23℃)になるように混合溶剤(ダイアセトンアルコール/酢酸イソブチル/酢酸ブチル/酢酸エチル=30/30/30/10(質量比))で希釈して塗料(1)を調製した。
【0055】
[評価用硬化塗膜の作製]
上記で得られた塗料(1)を、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)基材(50mm×70mm×2mm)に乾燥後の膜厚が10~15μmとなるようにスプレー塗装し、乾燥機にて80℃で30分間加熱乾燥した後、25℃で2日間乾燥して評価用硬化塗膜を作製した。
【0056】
[耐乳酸性の評価]
上記で得られた評価用硬化塗膜の表面に、イオン交換水で希釈した10質量%乳酸水溶液を0.2mL滴下し、恒温槽にて80℃で24時間放置した。その後、滴下痕をふき取り、外観を目視で観察し、下記基準により耐乳酸性を評価した。
◎:ブリスターなし
○:わずかにブリスターあり
△:塗膜がやや膨潤
×:塗膜が膨潤し、基材の素地が露出
【0057】
[耐オレイン酸性の評価]
上記で得られた評価用硬化塗膜の表面に、石油ベンジンで希釈した10質量%オレイン酸溶液を0.2mL滴下し、恒温槽にて80℃で24時間放置した。その後、滴下痕をふき取り、外観を目視で観察し、下記基準により耐乳酸性を評価した。
◎:ブリスターなし
○:わずかにブリスターあり
△:塗膜がやや膨潤
×:塗膜が膨潤し、基材の素地が露出
【0058】
(実施例9~14:塗料(9)~(14)の調製及び評価)
実施例8のポリカーボネート変性アクリル樹脂(1)を、ポリカーボネート変性アクリル樹脂(2)~(7)に変更した以外は実施例8と同様に操作することにより塗料を調製後、評価用硬化塗膜を作製し、各評価を行った。
【0059】
(比較例4~6:塗料(R1)~(R3)の調製及び評価)
実施例8のポリカーボネート変性アクリル樹脂(1)を、比較用樹脂(R1)~(R3)に変更した以外は実施例8と同様に操作することにより塗料を調製後、評価用塗膜を作製し、各評価を行った。
【0060】
上記で得られた塗料(1)~(7)、及び塗料(R1)~(R3)の評価結果を表3及び4に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
本発明のポリカーボネート変性アクリル樹脂である実施例1~7から得られる硬化塗膜は、耐乳酸性、及び耐オレイン性に優れることが確認された(実施例8~14)。
【0064】
比較例1は、不飽和単量体混合物中にメチルメタクリレートを含有しない例であるが、得られる硬化塗膜の耐乳酸性が劣ることが確認された(比較例4)。
【0065】
比較例2は、不飽和単量体混合物中に脂環式構造を有する不飽和単量体を含有しない例であるが、得られる硬化塗膜の耐乳酸性が劣ることが確認された(比較例5)。
【0066】
比較例3は、不飽和単量体混合物中の脂環式構造を有する不飽和単量体の質量比率が、本発明の下限である35質量%より小さい例であるが、得られる硬化塗膜の耐乳酸性が不十分であることが確認された(比較例6)。