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特許7298600車両用アンテナ、車両用アンテナ付き窓ガラス及びアンテナシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-19
(45)【発行日】2023-06-27
(54)【発明の名称】車両用アンテナ、車両用アンテナ付き窓ガラス及びアンテナシステム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20230620BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20230620BHJP
   H01Q 19/22 20060101ALI20230620BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALN20230620BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
H01Q13/08
H01Q19/22
H01Q1/22 C
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020516321
(86)(22)【出願日】2019-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2019016900
(87)【国際公開番号】W WO2019208453
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018083263
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】児玉 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】三鴨 公樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 文範
(72)【発明者】
【氏名】竹内 彰一
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/163521(WO,A1)
【文献】特公昭60-036641(JP,B1)
【文献】特開2002-158534(JP,A)
【文献】特開2019-129390(JP,A)
【文献】鍬之手 秀 Shu Kuwanote,電子情報通信学会2018年総合大会講演論文集 通信1 PROCEEDINGS OF THE 2018 IEICE GENERAL CONFERENCE,2018年03月06日,通信講演論文集1,p.40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 13/08
H01Q 19/22
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体板と、
前記導体板に対向して配置される放射板と、
前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、
前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、
前記放射板に対して車両の車幅方向の両側に互いに離れて配置される第1のエレメント及び第2のエレメントと、を備え、
前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置され
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントの少なくとも一方は、前記導体板に対して前記放射板が配置される側とは反対側に配置される、車両用アンテナ。
【請求項2】
導体板と、
前記導体板に対向して配置される放射板と、
前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、
前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、
前記放射板に対して車両の車幅方向の両側に互いに離れて配置される第1のエレメント及び第2のエレメントと、を備え、
前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置され
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントの少なくとも一方は、前記導体板と同じ層に配置される、車両用アンテナ。
【請求項3】
導体板と、
前記導体板に対向して配置される放射板と、
前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、
前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、
前記放射板に対して車両の車幅方向の両側に互いに離れて配置される第1のエレメント及び第2のエレメントと、を備え、
前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置され
車両の進行方向のアンテナ利得[dBi]-(-35[dBi])」を、A[dBi]とし、前記車両の車幅方向のアンテナ利得[dBi]-(-35[dBi])」を、B[dBi]とするとき、A:B=1:0.55~1:1.50の範囲である、車両用アンテナ。
【請求項4】
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントは、互いに同一平面上に配置される、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項5】
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントの少なくとも一方の一部は、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記導体板と重複する、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項6】
導体板と、
前記導体板に対向して配置される放射板と、
前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、
前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、
前記放射板に対して車両の車幅方向の両側に互いに離れて配置される第1のエレメント及び第2のエレメントと、を備え、
前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置され
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントは、前記導体板に対して前記放射板が配置される側とは反対側に配置され、
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントは、互いに同一平面上に配置され、
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントの少なくとも一方の一部は、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記導体板と重複する、車両用アンテナ。
【請求項7】
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントは、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記導体板と重複しない、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項8】
前記第1のエレメントと、前記第2のエレメントと、前記導体板と、前記放射板とは、互いに平行である、請求項1からのいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項9】
導体板と、
前記導体板に対向して配置される放射板と、
前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、
前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、
前記放射板に対して車両の車幅方向の両側に互いに離れて配置される第1のエレメント及び第2のエレメントと、を備え、
前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置され
前記車幅方向で、前記導体板は、前記放射板よりも広い幅を有し、
前記第1のエレメントと、前記第2のエレメントと、前記導体板と、前記放射板とは、互いに平行であり、
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントは、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記導体板と重複しない、車両用アンテナ。
【請求項10】
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントの少なくとも一方は、板状又は膜状の導体である、請求項1から9のいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項11】
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントは、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記放射板の重心から離れて位置する、請求項1から10のいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項12】
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントは、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記放射板から離れて配置される、請求項1から11のいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項13】
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントは、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記接続導体が前記放射板に接続される接続点を通る対称軸に関して線対称の形状を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項14】
前記第1のエレメント及び前記第2のエレメントは、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置される、請求項1から13のいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項15】
導体板と、
前記導体板に対向して配置される放射板と、
前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、
前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、
前記導体板及び前記放射板から離れて配置され、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記放射板の重心から離れて位置する単一のエレメントとを備え、
前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置され
車両の進行方向のアンテナ利得[dBi]-(-35[dBi])」を、A[dBi]とし、前記車両の車幅方向のアンテナ利得[dBi]-(-35[dBi])」を、B[dBi]とするとき、A:B=1:0.55~1:1.50の範囲である、車両用アンテナ。
【請求項16】
前記エレメントは、前記放射板に対して車幅方向の一方の側に配置される、請求項15に記載の車両用アンテナ。
【請求項17】
前記導体板と前記放射板との間の媒質は、空間と誘電体基材の少なくとも一方を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項18】
前記放射板の重心は、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記導体板の重心と重複する、請求項1から17のいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項19】
5.9GHz帯の電波を送受可能な、請求項1から18のいずれか一項に記載の車両用アンテナ。
【請求項20】
車両の窓用のガラス板と、前記ガラス板に少なくとも一つ取り付けられる請求項1から18のいずれか一項に記載の車両用アンテナとを備える、車両用アンテナ付き窓ガラス。
【請求項21】
車両のフロントガラスとリアガラスとサイドガラスとのうちの少なくとも2つの窓ガラスと、前記少なくとも2つの窓ガラスの夫々に少なくとも一つ取り付けられる両用アンテナとを備え
前記車両用アンテナは、
導体板と、
前記導体板に対向して配置される放射板と、
前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、
前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、
前記放射板に対して車両の車幅方向の両側に互いに離れて配置される第1のエレメント及び第2のエレメントと、を備え、
前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置される、アンテナシステム。
【請求項22】
車両のフロントガラスとリアガラスとサイドガラスとのうちの少なくとも2つの窓ガラスと、前記少なくとも2つの窓ガラスの夫々に少なくとも一つ取り付けられる両用アンテナとを備え
前記車両用アンテナは、
導体板と、
前記導体板に対向して配置される放射板と、
前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、
前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、
前記導体板及び前記放射板から離れて配置され、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記放射板の重心から離れて位置する単一のエレメントとを備え、
前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置される、アンテナシステム。
【請求項23】
導体板と、前記導体板に対向して配置される放射板と、前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、前記放射板に対して車両の車幅方向の両側に互いに離れて配置される第1のエレメント及び第2のエレメントと、を備え、前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置される、車両用アンテナである第1のアンテナと、
前記放射板が前記導体板に対して車両前側に位置するように前記第1のアンテナが取り付けられるフロントガラスと、
前記車両用アンテナである第2のアンテナと、
前記放射板が前記導体板に対して車両後側に位置するように前記第2のアンテナが設置されるリアガラスとを備える、アンテナシステム。
【請求項24】
導体板と、前記導体板に対向して配置される放射板と、前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、前記導体板及び前記放射板から離れて配置され、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記放射板の重心から離れて位置する単一のエレメントとを備え、前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置される、車両用アンテナである第1のアンテナと、
前記放射板が前記導体板に対して車両前側に位置するように前記第1のアンテナが取り付けられるフロントガラスと、
前記車両用アンテナである第2のアンテナと、
前記放射板が前記導体板に対して車両後側に位置するように前記第2のアンテナが設置されるリアガラスとを備える、アンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンテナ、車両用アンテナ付き窓ガラス及びアンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、4G LTEから5G(sub6)への移行など、マイクロ波やミリ波の周波数帯を使用する高速・大容量の無線通信システムを利用するサービスが拡がる動きがある。例えば、車車間通信や路車間通信などのV2X(Vehicle to Everything)通信に用いられるアンテナとして、基板に設けられる複数のダイポールアンテナに、基板に設けられる平行2線の伝送線路で給電するアンテナ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/213243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用アンテナでは、所望の方向のアンテナ利得を十分に得ることが難しかった。
【0005】
そこで、本開示は、所望の方向のアンテナ利得を向上させた車両用アンテナを提供するとともに、少なくとも一つの当該車両用アンテナを備える車両用アンテナ付き窓ガラス及びアンテナシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
導体板と、
前記導体板に対向して配置される放射板と、
前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、
前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、
前記放射板に対して車両の車幅方向の両側に互いに離れて配置される第1のエレメント及び第2のエレメントとを備え、
前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置される、車両用アンテナを提供する。
【0007】
また、本開示は、
導体板と、
前記導体板に対向して配置される放射板と、
前記放射板に対して前記導体板が配置される側に位置する給電部と、
前記給電部と前記放射板とを接続する接続導体と、
前記導体板及び前記放射板から離れて配置され、前記導体板に対して前記放射板側からの視点で見ると、前記放射板の重心から離れて位置する単一のエレメントとを備え、
前記放射板は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置される、車両用アンテナを提供する。
【0008】
また、本開示は、少なくとも一つの当該車両用アンテナを備える車両用アンテナ付き窓ガラス及びアンテナシステムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、所望の方向のアンテナ利得が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両用アンテナ付き窓ガラスを例示する斜視図である。
図2】車両用アンテナ付き窓ガラスを正面視で例示する部分拡大図である。
図3】車両用アンテナ付き窓ガラスを側面視で例示する部分拡大図である。
図4】車両用アンテナの構成の一部を例示する斜視図である。
図5】車両用アンテナの構成の一部を例示する断面図である。
図6】複数の車両用アンテナを備えるアンテナシステムを例示する図である。
図7】車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。
図8】車両用アンテナの第1の構成例を示す図である。
図9】車両用アンテナの第2の構成例を示す図である。
図10】車両用アンテナの第3の構成例を示す図である。
図11】車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。
図12】車幅方向のアンテナ利得の測定結果の一例を示す図である。
図13】車両用アンテナの第4の構成例を示す図である。
図14】車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。
図15】車幅方向のアンテナ利得の測定結果の一例を示す図である。
図16】車両用アンテナの第5の構成例を示す図である。
図17】車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。
図18】車両用アンテナの第6の構成例を示す図である。
図19】車両用アンテナの第7の構成例を示す図である。
図20】車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。
図21】車幅方向のアンテナ利得の測定結果の一例を示す図である。
図22】車両用アンテナの第8の構成例を示す図である。
図23】車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。
図24】車両用アンテナの第9の構成例を示す図である。
図25】車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態の説明を行う。なお、各形態において、平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0012】
本開示に係る実施形態の車両用アンテナは、マイクロ波やミリ波等の高周波帯(例えば、0.3GHz~300GHz、特には5.9GHz)の電波の送受に好適である。本開示に係る実施形態の車両用アンテナは、例えば、V2X通信システム、第5世代移動通信システム(いわゆる、5G)、車載レーダーシステムなどに適用可能であるが、適用可能なシステムはこれらに限られない。V2X通信システムの一例として、ETC(Electronic Toll Collection)システムがある。
【0013】
図1は、本開示に係る実施形態の車両用アンテナ付き窓ガラス101(以下、単に“窓ガラス101”とも称する)を例示する斜視図である。窓ガラス101は、車両80の窓用のガラス板70と、ガラス板70に取り付けられる車両用アンテナ110(以下、単に“アンテナ110”とも称する)とを備える。
【0014】
ガラス板70は、例えば、車両80の前側に設置されるフロントガラスである。ガラス板70は、水平面90に対して所定の設置角度θで車両80の前側の窓枠に取り付けられる。水平面90は、この例では、ZX平面に平行である。
【0015】
アンテナ110は、ガラス板70の内側に筐体等の不図示の部材を介して取り付けられており、この例では、ガラス板70の上側領域の中央部付近に取り付けられる。一枚のガラス板70に取り付けられるアンテナ110の数は、この例では、一つであるが、複数でもよい。
【0016】
図2は、窓ガラス101を正面視で例示する部分拡大図である。図3は、窓ガラス101を側面視で例示する部分拡大図である。アンテナ110は、導体板10と、放射板20と、第1のエレメント51と、第2のエレメント52とを備える。
【0017】
導体板10は、典型的には、その表面がXY平面に平行な平面状の層であり、アンテナ110のグランドとして機能する。導体板10は、板状又は膜状の導体である。導体板10に使用される導体の材料として、例えば、銀、銅などが挙げられるが、その材料は、これらに限られない。また、図示の導体板10の形状は、正方形であるが、正方形以外の多角形でもよいし、円等の他の形状でもよい。なお、ここでいう「板状又は膜状」とは、3次元的な形状を有するものでもよく、例えば、凸状、凹状、波状のものも含み、後述する放射板、誘電体基材、第1/第2のエレメント、単一のエレメントについても同様である。ただし、上述する「板状又は膜状」については、所定のアンテナ利得特性を予測しやすい点で平面形状(2次元形状)が好ましい。
【0018】
放射板20は、Z軸方向で導体板10に対向して配置される板状又は膜状の導体であり、その面積は導体板10よりも狭い。放射板20は、その表面がXY平面に平行な平面状の層であり、アンテナ110の放射素子として機能する。放射板20に使用される導体の材料として、例えば、銀、銅などが挙げられるが、その材料は、これらに限られない。また、図示の放射板20の形状は、正方形であるが、正方形以外の多角形でもよいし、円等の他の形状でもよい。
【0019】
放射板20は、導体板10から離れて配置されている。導体板10と放射板20との間の媒質は、空間と誘電体基材の少なくとも一方を含むものである。図2,3は、その媒質が誘電体基材60のみからなる場合を示す。なお、媒質が空間(空気)の場合、放射板20、導体板10、第1のエレメント51および第2のエレメント52(又は、いずれかの単一のエレメント)は、必要に応じて不図示の筐体によって固定されていればよい。
【0020】
誘電体基材60は、誘電体を主成分とする板状又は膜状の誘電体層である。誘電体基材60は、第1の表面61と、第1の表面61とは反対側の第2の表面62とを有する。表面61,62は、XY平面に平行である。誘電体基材60の一方の表面である表面61には、放射板20が設けられており、誘電体基材60の他方の表面である表面62には、導体板10が設けられている。
【0021】
誘電体基材60は、例えば、ガラスエポキシ基板等の誘電体基板でもよいし、誘電体シートでもよい。誘電体基材60に使用される誘電体の材料として、例えば、石英ガラス等のガラス、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマーなどが挙げられるが、その材料は、これらに限られない。
【0022】
図4は、導体板10及び放射板20が形成される誘電体基材60を示す斜視図である。図5は、導体板10及び放射板20が形成される誘電体基材60を示す断面図である。誘電体基材60は、給電部30と放射板20とを接続する接続導体40を備える。
【0023】
給電部30は、接触又は非接触で給電される箇所であり、不図示の給電線路の一端が接続される又は近接する部位である。給電線路の具体例として、同軸ケーブル、マイクロストリップラインなどが挙げられる。給電線路の他端は、アンテナ110を利用して車外と通信する通信装置に接続される。給電部30は、放射板20に対して導体板10が配置される側に位置する。
【0024】
接続導体40は、導体板10には接触していない。接続導体40は、その一端が給電部30に接続され、その他端が接続点22で放射板20に接続される。接続点22は、放射板20の重心21からずれており、図示の場合、重心21に対してY軸方向の負側に位置している。重心21は、放射板20が正方形のような対称図形の場合、その対称図形の中心に相当する。
【0025】
接続導体40の具体例として、Z軸方向に誘電体基材60を貫通するスルーホールの内部に形成された導体、同軸ケーブルの芯線、ピン状に形成された導体ピンなどがあるが、接続導体40は、これらに限られない。なお、導体板10と放射板20との間の媒質が空間を含む場合、接続導体40の具体例として、同軸ケーブルの芯線や導体ピンなどがあるが、接続導体40は、これらに限られない。
【0026】
図5に示すように、放射板20の重心21は、導体板10に対して放射板20側からの視点で見ると、導体板10の重心11と重複することが、導体板10側から放射板20側に向かう方向のアンテナ110のアンテナ利得を向上させる点で好ましい。この例では、導体板10に対して放射板20側からの視点とは、Z軸方向の正側からの視点を表し、導体板10側から放射板20側に向かう方向とは、Z軸方向の正側に向かう方向を表す。
【0027】
図2において、第1のエレメント51及び第2のエレメント52は、放射板20に対して車両の車幅方向(図示の場合、車幅方向となるX軸方向)の両側に互いに離れて配置される導体である。第1のエレメント51及び第2のエレメント52がこのように配置されることにより、アンテナ110の車幅方向のアンテナ利得が向上する。具体的には、第1のエレメント51及び第2のエレメント52を備えない場合、車幅方向に対して垂直な(車両の)進行方向のアンテナ利得は大きい一方で、車幅方向のアンテナ利得が相対的に小さくなる。そのため、第1のエレメント51及び第2のエレメント52を備えることで、進行方向のアンテナ利得を、車幅方向のアンテナ利得へと適度に分散させ、進行方向と車幅方向の両方において適切なアンテナ利得が得られる。このとき、「進行方向のアンテナ利得[dBi]-(-35[dBi])」=A[dBi]とし、「車幅方向のアンテナ利得[dBi]-(-35[dBi])」=B[dBi]とするとき、A:B=1:0.55~1:1.50の範囲であればよく、A:B=1:0.65~1:1.40の範囲が好ましく、A:B=1:0.70~1:1.30の範囲がより好ましく、A:B=1:0.80~1:1.20の範囲がさらに好ましい。ここで、車幅方向のアンテナ利得とは、ZX平面における各方向でのアンテナ利得のシミュレーション結果における、90°方向のアンテナ利得と、270°方向のアンテナ利得との平均値とする。
【0028】
第1のエレメント51及び第2のエレメント52の少なくとも一方は、例えば、その表面がXY平面に平行な平面状の層であり、アンテナ110の導波素子又は反射素子として機能する。この例では、第1のエレメント51及び第2のエレメント52は、互いに同じ層、すなわち、第1のエレメント51の表面及び第2のエレメント52の表面がXY平面と平行に配置され、導体板10に対して放射板20側からの視点で見ると、放射板20の重心21から離れて位置する。
【0029】
この例では、第1のエレメント51及び第2のエレメント52は、夫々、導体板10よりも狭く放射板20よりも広い面積を有するが、面積の広狭は、これに限られない。例えば、第1のエレメント51及び第2のエレメント52のうち少なくとも一方は、所望の指向性を満たせば、放射板20よりも狭い面積を有してもよい。
【0030】
第1のエレメント51及び第2のエレメント52に使用される導体の材料として、例えば、銀、銅などが挙げられるが、その材料は、これらに限られない。また、図示の第1のエレメント51及び第2のエレメント52の形状は、正方形であるが、正方形以外の多角形でもよいし、円等の他の形状でもよい。
【0031】
第1のエレメント51及び第2のエレメント52の少なくとも一方がZ軸方向を法線方向とする板状又は膜状の導体であることにより、アンテナ110のZ軸方向の正側へのアンテナ利得が向上する。図示の場合、第1のエレメント51及び第2のエレメント52の両方が、板状又は膜状の導体である。
【0032】
第1のエレメント51と、第2のエレメント52と、導体板10と、放射板20とは、互いに平行であることが、アンテナ110のそれらの法線方向におけるアンテナ利得を向上させる点で好ましい。図示の場合のそれらの法線方向は、Z軸方向であり、Z軸方向の正側へのアンテナ利得が向上する。
【0033】
第1のエレメント51及び第2のエレメント52は、例えば、図2に示すように、導体板10に対して放射板20側からの視点で見ると、接続導体40が放射板20に接続される接続点22を通る対称軸に関して線対称の形状を有するとき、アンテナ110のアンテナ利得向上の点で好ましい。この例では、車幅方向となるX軸方向のアンテナ利得が向上する。
【0034】
図6は、複数の車両用アンテナを備えるアンテナシステムを例示する部分断面図である。図6に示すアンテナシステム100は、フロントガラス71と、リアガラス72と、フロントガラス71に取り付けられるフロントアンテナ111と、リアガラス72に取り付けられるリアアンテナ112とを備える。フロントガラス71及びリアガラス72は、夫々、上述のガラス板70の一例であり、フロントアンテナ111及びリアアンテナ112は、夫々、上述のアンテナ110の一例である。フロントアンテナ111は、第1のアンテナの一例であり、リアアンテナ112は、第2のアンテナの一例である。
【0035】
フロントアンテナ111の放射板20は、水平面90に直角な鉛直面91に対して±15°以下の傾き(傾斜角度α)で設置されると好適である。これにより、フロントアンテナ111に関して、水平面90に平行な方向へのアンテナ利得が向上するとともに、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が車幅方向の両側に互いに離れて配置されているので、車幅方向のアンテナ利得が向上する。一方、フロントアンテナ111の放射板20が、水平面90に直角な鉛直面91に対して±15°を超えて設置すると、水平面に平行な方向のアンテナ利得のバランスが崩れる、即ち、車両の進行方向の利得と車幅方向の利得の差が大きくなるおそれがある。
【0036】
同様に、リアアンテナ112の放射板20は、水平面90に直角な鉛直面91に対して±15°以下の傾き(傾斜角度α)で設置されると好適である。これにより、リアアンテナ112に関して、水平面90に平行な方向へのアンテナ利得が向上するとともに、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が車幅方向の両側に互いに離れて配置されているので、車幅方向のアンテナ利得が向上する。一方、リアアンテナ112の放射板20が、水平面90に直角な鉛直面91に対して±15°を超えて設置すると、水平面に平行な方向のアンテナ利得のバランスが崩れる、即ち、車両の進行方向の利得と車幅方向の利得の差が大きくなるおそれがある。
【0037】
フロントアンテナ111の放射板20は、水平面90に直角な鉛直面91に対して±10°以下の傾きで設置されると好ましく、±5°以下の傾きで設置されるとより好ましく、±1°以下の傾きで設置されるとさらに好ましく、0°で設置されると最も好ましい。同様に、リアアンテナ112の放射板20は、水平面90に直角な鉛直面91に対して±10°以下の傾きで設置されると好ましく、±5°以下の傾きで設置されるとより好ましく、±1°以下の傾きで設置されるとさらに好ましく、0°で設置されると最も好ましい。
【0038】
図6では、放射板20が導体板10に対して車両前側に位置するようにフロントアンテナ111がフロントガラス71に取り付けられており、放射板20が導体板10に対して車両後側に位置するようにリアアンテナ112がリアガラス72に取り付けられている。これにより、フロントアンテナ111は車両前方から車幅方向に亘る領域のアンテナ利得を向上させ、リアアンテナ112は車両後方から車幅方向に亘る領域のアンテナ利得を向上させる。よって、車両80を中心とする360°方向のアンテナ利得を向上できる。
【0039】
また、フロントアンテナ111の第1のエレメント51及び第2のエレメント52は、水平面90に直角な鉛直面91に対して±15°以下の傾き(傾斜角度β)で設置されると好適である。これにより、フロントアンテナ111に関して、水平面90に平行な方向へのアンテナ利得が向上するとともに、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が車幅方向の両側に互いに離れて配置されているので、車幅方向のアンテナ利得が向上する。リアアンテナ112の第1のエレメント51及び第2のエレメント52の傾斜角度βについても同様である。
【0040】
また、フロントアンテナ111の導体板10は、水平面90に直角な鉛直面91に対して±15°以下の傾き(傾斜角度γ)で設置されると好適である。これにより、フロントアンテナ111に関して、水平面90に平行な方向へのアンテナ利得が向上するとともに、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が車幅方向の両側に互いに離れて配置されているので、車幅方向のアンテナ利得が向上する。リアアンテナ112の導体板10の傾斜角度γについても同様である。
【0041】
フロントアンテナ111の導体板10は、水平面90に直角な鉛直面91に対して±10°以下の傾きで設置されると好ましく、±5°以下の傾きで設置されるとより好ましく、±1°以下の傾きで設置されるとさらに好ましく、0°で設置されると最も好ましい。同様に、リアアンテナ112の導体板10は、水平面90に直角な鉛直面91に対して±10°以下の傾きで設置されると好ましく、±5°以下の傾きで設置されるとより好ましく、±1°以下の傾きで設置されるとさらに好ましく、0°で設置されると最も好ましい。一方、フロントアンテナ111の導体板10が、水平面90に直角な鉛直面91に対して±15°を超えて設置すると、水平面に平行な方向のアンテナ利得のバランスが崩れる、即ち、車両の進行方向の利得と車幅方向の利得の差が大きくなるおそれがある。リアアンテナ112の導体板10の傾斜角度γについても同様である。
【0042】
なお、鉛直面91に対して0°で設置されるとは、鉛直面91に対して平行に設置されることを意味する。
【0043】
また、図6に示すアンテナシステム100では、車両用アンテナがフロントガラス71とリアガラス72に一つずつ取り付けられている。しかしながら、アンテナシステム100は、フロントガラス71とリアガラス72とサイドガラス73とのうちの少なくとも2つの窓ガラスと、当該少なくとも2つの窓ガラスの夫々に少なくとも一つ取り付けられる車両用アンテナとを備えるものでもよい。
【0044】
図7は、車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図であり、ZX平面における各方向でのアンテナ利得のシミュレーション結果を示す。90°,270°は、車幅方向を表し、0°は、車両前方を表し、180°は、車両後方を表し、指向性の測定結果を示す他のグラフについても同様である。なお、本シミュレーション結果は、車両用アンテナの放射板、エレメント及び導体板が水平面に直角な鉛直面に沿って(鉛直面に対して0°の傾きで)配置したときの結果であり、とくに断りがない限り、他のシミュレーション結果も同様に配置したときの結果を示す。
【0045】
図7において、実施例1は、図1~5,8に示される構成の場合を示し、比較例1は、実施例1の構成に対して第1のエレメント51及び第2のエレメント52が無い構成の場合を示す。車幅方向のアンテナ利得は、実施例1の場合、-1.37dBiと算出され、比較例1では、-9.85dBiと算出された。よって、実施例1の方が、比較例1に比べて、車幅方向のアンテナ利得が向上している。
【0046】
なお、図7のアンテナ利得を測定した時において、図1~6に示す各部の寸法は、単位をmmとすると、
L20:10
L21:10
L50:15
L51:15
L52:5
L53:20
L54:50
L55:1
L56:44
L5712
L58:5
L60:30
L61:30
L62:3
L63:16(導体板10と車両80のフランジとの距離)
L70:500
L80:515
L81:1000
L82:50
である。また、
θ:25°
α,β,γ:0°
である。
【0047】
図8~10は、車両用アンテナの第1~第3の構成例を示す図であり、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が、導体板10に対して放射板20が配置される側に配置される形態を示す。また、図8~10は、第1のエレメント51及び第2のエレメント52は、導体板10に対して放射板20側からの視点で見ると、放射板20から離れて配置され、且つ、少なくとも一部が導体板10と重複する形態を示す。図8では、第1のエレメント51及び第2のエレメント52の両方が、放射板20に対して導体板10が配置される側とは反対側(Z軸方向の正側)に配置されている。図9では、第1のエレメント51及び第2のエレメント52の両方が、放射板20と同じ層、すなわち、第1のエレメント51の表面、第2のエレメント52の表面及び放射板20の表面がXY平面と平行に配置されている。図10では、第1のエレメント51及び第2のエレメント52の両方が、放射板20に対して導体板10が配置される側(Z軸方向の負側)に配置されている。
【0048】
図11は、車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図であり、ZX平面における各方向でのアンテナ利得のシミュレーション結果を示す。L55=+1mmは、図8の構成(実施例1)を表す。L55=0mmは、図9の構成を表す。L55=-1mm,L55=-2mmは、図10の構成を表す。L55は、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が放射板20に対してZ軸方向の正側に位置するとき、正の値とし、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が放射板20に対してZ軸方向の負側に位置するとき、負の値とする。また、各部の寸法は、特に明示が無い限り、図7の測定時の上掲の寸法と同じである。
【0049】
図12は、図11の測定結果において、車幅方向のアンテナ利得を示すものである。L55が-1mmの場合、比較例1に比べて、車幅方向のアンテナ利得が向上している。L55が0mmの場合と+1mmの場合、比較例1に比べて、車幅方向のアンテナ利得が更に向上している。L58が+5mmで、L55が-2mmの場合、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が、導体板10と近づくことで、比較例1よりも大きな導体板として機能するため、車幅方向のアンテナ利得が低下している。
【0050】
図13は、車両用アンテナの第4の構成例を示す図であり、図10の第3の構成例に対して第1のエレメント51及び第2のエレメント52をX軸方向に沿って互いに更に離した形態を示す。図13は、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が、導体板10に対して放射板20側からの視点で見ると、導体板10から離れて配置される形態を示す。
【0051】
図14は、車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図であり、ZX平面における各方向でのアンテナ利得のシミュレーション結果を示す。図14における第3の構成例(図10)は、L55=-2mm、L58=+5mmの場合を示す。図14における第4の構成例(図13)は、L55=-2mm、L58=-3mmの場合を示す。L58は、Z軸方向からの視点で、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が導体板10に重複するとき、正の値とし、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が導体板10に重複しないとき、負の値とする。また、各部の寸法は、特に明示が無い限り、図7の測定時の上掲の寸法と同じである。
【0052】
図15は、図14の測定結果において、車幅方向のアンテナ利得を示すものである。第4の構成例の場合でも、比較例1に比べて、車幅方向のアンテナ利得が向上している。つまり、第1のエレメント51及び第2のエレメント52の位置を導体板10に対してX軸方向外側に移動させることで、L55が-2mmの場合でも、比較例1に比べて、車幅方向のアンテナ利得が向上する。
【0053】
図16は、車両用アンテナの第5の構成例を示す図であり、第1のエレメント51が、放射板20に対して導体板10が配置される側に配置され、第2のエレメント52が、放射板20に対して導体板10が配置される側とは反対側に配置される形態を示す。つまり、図16は、第1のエレメント51及び第2のエレメント52が放射板20に対して互い違いに配置される形態を示す。図16において、第1のエレメント51は、図13と同じ位置(L55=-2mm)に配置され、第2のエレメント52は、図8と同じ位置(L55=+1mm)に配置されている。また、第1のエレメント51は、L58=-1.5mm、第2のエレメント52は、L58=+1.5mmの場合を示す。
【0054】
図17は、車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図であり、ZX平面における各方向でのアンテナ利得のシミュレーション結果を示す。各部の寸法は、特に明示が無い限り、図7の測定時の上掲の寸法と同じである。第1のエレメント51及び第2のエレメント52が放射板20に対して互い違いに配置される形態でも、車幅方向のアンテナ利得が向上する。具体的に、90°方向のアンテナ利得は0.21dBiであり、270°方向のアンテナ利得は2.45dBiであった。
【0055】
図18は、車両用アンテナの第6の構成例を示す図であり、第1のエレメント51及び第2のエレメント52の両方が、導体板10と同じ層(同一平面上)に配置される形態を示す。なお、第1のエレメント51および第2のエレメント52は、L58=-1.5mmである。図19は、車両用アンテナの第7の構成例を示す図であり、第1のエレメント51及び第2のエレメント52の両方が、導体板10に対して放射板20が配置される側とは反対側に配置される形態を示す。なお、第1のエレメント51および第2のエレメント52は、L58=-1.5mmである。
【0056】
図20は、車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図であり、ZX平面における各方向でのアンテナ利得のシミュレーション結果を示す。各部の寸法は、特に明示が無い限り、図7の測定時の上掲の寸法と同じである。L59=0mmは、図18の構成を表す。L59=1mm,4mm,7mm,10mmは、図19の構成を表す。L59は、第1のエレメント51及び第2のエレメント52と、導体板10とのZ軸方向での距離を表す。
【0057】
図21は、図20の測定結果において、車幅方向のアンテナ利得を示すものである。L59が0mm~10mmのいずれの場合でも、比較例1に比べて車幅方向のアンテナ利得が向上している。
【0058】
図22は、車両用アンテナの第8の構成例を示す図である。図22に示すアンテナ113は、車両用アンテナの一例である。アンテナ113は、導体板10及び放射板20から離れて配置され、導体板10に対して放射板20側からの視点で見ると、放射板20の重心21から離れて位置する単一のエレメント51を備える。エレメント51は、放射板20に対して車幅方向の負側のみに配置され、導体板10に対して放射板20側からの視点で見ると、放射板20から離れて配置されている。また、エレメント51は、導体板10に対して放射板20が配置される側に配置されている。放射板20、エレメント51及び導体板10は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置されている。
【0059】
なお、単一のエレメント51は、放射板20又は導体板10と同じ層に配置されてもよいし、導体板10に対して放射板20が配置される側とは反対側に配置されてもよい。
【0060】
図23は、図22の車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図であり、ZX平面における各方向でのアンテナ利得のシミュレーション結果を示す。各部の寸法は、単位をmmとすると、
L50:18
L51:10
L58(図2参照):1.5
L60:18
L61:18
である。その他の各部の寸法については、特に明示が無い限り、図7の測定時の上掲の寸法と同じである。図23に示されるように、単一のエレメント51でも、車幅方向のアンテナ利得が向上し、特に、エレメント51が配置されている側(X軸方向の負側)のアンテナ利得が向上している。
【0061】
図24は、車両用アンテナの第9の構成例を示す図である。図24に示すアンテナ114は、車両用アンテナの一例である。アンテナ114は、導体板10及び放射板20から離れて配置され、導体板10に対して放射板20側からの視点で見ると、放射板20の重心21から離れて位置する単一のエレメント52を備える。エレメント52は、放射板20に対して車幅方向の正側のみに配置され、導体板10に対して放射板20側からの視点で見ると、放射板20から離れて配置されている。また、エレメント52は、導体板10に対して放射板20が配置される側に配置されている。放射板20、エレメント52及び導体板10は、水平面に直角な鉛直面に対して±15°以内の傾きで設置されている。
【0062】
なお、単一のエレメント52は、放射板20又は導体板10と同じ層に配置されてもよいし、導体板10に対して放射板20が配置される側とは反対側に配置されてもよい。
【0063】
図25は、図24の車両用アンテナの指向性の測定結果の一例を示す図であり、ZX平面における各方向でのアンテナ利得のシミュレーション結果を示す。各部の寸法は、単位をmmとすると、
L50:18
L51:10
L58(図2参照):1.5
L60:18
L61:18
である。その他の各部の寸法については、特に明示が無い限り、図7の測定時の上掲の寸法と同じである。図25に示されるように、単一のエレメント52でも、車幅方向のアンテナ利得が向上し、特に、エレメント52が配置されている側(X軸方向の正側)のアンテナ利得が向上している。
【0064】
なお、上述のシミュレーション結果において、A:Bは、以下の結果が得られた。とくに、上記で定義したA:Bの比については、比較例1は、A:B=1:0.52であった。一方で、比較例1以外の各アンテナ(エレメント51及びエレメント52を備えたアンテナ110、単一エレメントを備えたアンテナ113,114)のA:Bについては、比較例1に比べ、進行方向に対する車幅方向の比率の大きなシミュレーション結果が得られ、アンテナ指向性のバランスが良好であった。
【0065】
【表1】
【0066】
以上、車両用アンテナ、車両用アンテナ付き窓ガラス及びアンテナシステムを実施形態により説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0067】
例えば、第1のエレメント51及び第2のエレメント52のうち、その両方が放射板20と同じ層に配置される場合(図9参照)に限られず、少なくとも一方が放射板20と同じ層に配置されてもよい。
【0068】
また、例えば、第1のエレメント51及び第2のエレメント52のうち、その両方が導体板10に対して放射板20が配置される側とは反対側に配置される場合(図19参照)に限られず、少なくとも一方が当該反対側に配置されてもよい。
【0069】
また、第1のエレメント51及び第2のエレメント52のうち、その両方の一部が、導体板10に対して放射板20側からの視点で見ると、導体板10と重複する場合(図8等参照)に限られない。例えば、第1のエレメント51及び第2のエレメント52のうちの一方の一部が、当該視点で見ると、導体板10と重複してもよい。
【0070】
本国際出願は、2018年4月24日に出願した日本国特許出願第2018-083263号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2018-083263号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0071】
10 導体板
11 重心
20 放射板
21 重心
22 接続点
30 給電部
40 接続導体
51 第1のエレメント
52 第2のエレメント
60 誘電体基材
70 ガラス板
71 フロントガラス
72 リアガラス
73 サイドガラス
80 車両
90 水平面
91 鉛直面
100 アンテナシステム
101 車両用アンテナ付き窓ガラス
110,113,114 車両用アンテナ
111 フロントアンテナ
112 リアアンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25